(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されたシリンダボア壁の保温構造体の場合、弾性部材が環状冷却水流路におけるシリンダボア壁の反対側に押し付けられ、かつ、枠部材または温度変化部材がシリンダボア壁に押し付けられることによって、当該保温構造体は環状冷却水流路内に保持される構造とされている。この場合、冷却水供給口から冷却水流路へ導入され冷却水排出口から排出される冷却水の水流の強さによっては、当該保温構造体が設置箇所からずれることも考えられ、更なる改善が望まれていた。
【0005】
本発明は、上記に鑑みなされたもので、材料量を低減させ、冷却媒体の水流れを制御しながらも、スペーサの位置ずれを抑制し得るスペーサを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るスペーサは、内燃機関の冷却流路内に部分的に配置されて冷却媒体の流通流量を調整するスペーサであって、前記冷却流路に沿うように形成されたスペーサ片と、該スペーサ片における前記冷却流路の外壁側の面に設けられるとともに該スペーサ片の厚さ方向に突出する第1係合部と、を備え、前記第1係合部は、前記冷却流路の外壁から
冷却流路内に突出するよう張り出す張り出し部に当接し係合可能とされ、
且つ、前記張り出し部を前記冷却媒体の流通方向に沿って間に挟むように一対設けられており、当該スペーサの前記冷却媒体の流通方向への移動を規制するよう構成されていることを特徴とする。
【0007】
これによれば、冷却媒体の流通流量を調整するスペーサとして、内燃機関の冷却流路内に部分的に配置されるスペーサを用いているので、材料量を低減させることができる。また、この第1係合部が、張り出し部に係合可能なので、スペーサの冷却媒体の流通方向への移動が規制され、スペーサの位置ずれを抑制することができる。また、第1係合部が、冷却流路の外壁に当接して係合することによって、スペーサ片と冷却流路の外壁との間における冷却媒体の流通が抑制され、冷却媒体の流通を制御することができる。
【0008】
また
、前記第1係合部は、前記張り出し部を間に挟むように一対設けられ
ているので、スペーサ片に対して作用する流れ方向に拘らず、スペーサ片の移動が規制され、スペーサの位置ずれを抑制することができる。
【0009】
また、本発明において、前記第1係合部は、前記スペーサ片の前記冷却媒体の流通方向と直交する方向の全域に亘って延びる突条とされていてもよい。
これによれば、第1係合部を、冷却媒体の流通方向と直交する方向に沿って長尺とすることができるので、スペーサ片と冷却流路の外壁との間における冷却媒体の流通をより抑制することができる。
【0010】
また、本発明において、
前記第1係合部は、前記スペーサ片に固定される基端部と、前記冷却流路の外壁に当接する可撓部とからな
り、前記可撓部は前記基端部の幅寸法より小さい幅寸法に形成されているものとしてもよい。
これによれば、第1係合部における冷却流路の外壁に係合する部位が可撓性を有するため、スペーサを冷却流路内に挿入する際におけるスペーサの組付け性を向上させることができる。
【0011】
また、本発明において、前記スペーサ片における前記冷却流路の内壁側の面に、前記内壁に当接する第2係合部が設けられていてもよい。
これによれば、第2係合部が冷却流路の内壁に当接することで、スペーサ片と冷却流路の内壁との間における冷却媒体の流通が抑制され、冷却媒体の流通を制御することができる。
【0012】
また、本発明において、前記スペーサ片には、前記スペーサ片の厚み方向に貫通する連通孔が設けられ、前記第1係合部と前記第2係合部とは、前記連通孔を介して一体に成形されていてもよい。
これによれば、第1係合部及び第2係合部は、スペーサ片と機械的に結合されることになるため、スペーサ片からの分離が抑制される。
【0013】
また、本発明において、前記第1係合部は、前記スペーサ片と一体に成形される弾性材からなるものとしてもよい。
これによれば、第1係合部を弾性変形する材料から構成しているので、スペーサの組み付け性をより向上させることができる。
【0014】
また、本発明において、前記スペーサ片は、冷却媒体を導入するために前記冷却流路の外壁に設けられた孔に対向するように配置され、前記スペーサ片に、前記冷却媒体が該冷却媒体の流通方向の一方向に流れるように誘導する誘導凹所を設けていてもよい。
これによれば、スペーサ片の誘導凹所によって、孔から冷却流路内に流入された冷却媒体が所望の方向に向かって流れるように、冷却媒体の流通方向を制御することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係るスペーサによれば、材料量を低減させ、冷却媒体の水流れを制御しながらも、スペーサの位置ずれを抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
図1〜
図4は、第1実施形態に係るスペーサ1の一例を模式的に示す図である。
本実施形態に係るスペーサ1は、
図1に示すように、内燃機関2における環状の冷却流路3内に部分的に配置されて冷却媒体の流通流量を調整する。また、本実施形態に係るスペーサ1は、
図2に示すように、冷却流路3に沿うように形成されたスペーサ片10と、スペーサ片10における冷却流路3の外壁3a側の面(外面)10aに設けられた一対の第1係合部13,13と、を備えている。また、本実施形態では、この一対の第1係合部13,13は、張り出し部4を冷却媒体の流通方向に沿って挟むように外壁3aに当接し係合可能とされ、スペーサ1の冷却媒体の流通方向への移動を規制するよう構成されている。
【0018】
本実施形態の内燃機関2は、3気筒エンジンであり、
図1は、当該エンジンを構成するシリンダブロック2を示している。このシリンダブロック2は、直列的に配列された3個のシリンダボア5,5,5を備えている。これらシリンダボア5,5,5は、平面視して円形状とされている。また、これらシリンダボア5,5,5は、それぞれ円筒状の壁部によって区画されており、これら壁部がシリンダボア5,5,5の配列方向に沿って連結されてシリンダボア壁6が構成されている。
また、シリンダブロック2におけるこれら3個のシリンダボア5,5,5のシリンダボア壁6の外周面側には、一連状のオープンデッキタイプの冷却流路(以下、ウォータジャケットと言う)3が設けられている。
このウォータジャケット3は、シリンダブロック2の上面(不図示のシリンダヘッドと合体される側の面)に向けて開口するように形成されている。また、このウォータジャケット3は、内壁(シリンダボア壁6の外周面)3b、外壁3a及び底部3cによって区画されている。
【0019】
シリンダブロック2には、ウォータジャケット3に流入される冷却媒体の給水口(孔)7が、ウォータジャケット3に連通するように設けられている。また、シリンダブロック2の上側部には、ウォータジャケット3内の冷却媒体が排出される排水口8が、ウォータジャケット3に連通するように設けられている。給水口7からウォータジャケット3内に流入した冷却媒体は、矢印aの方向にウォータジャケット3内を循環し、その一部が排水口8から逐次排出される構成とされている。
なお、シリンダブロック2は、アルミニウム合金等の鋳造品からなるものとしてもよい。また、冷却媒体としては、不凍液が混合された冷却水(LLC)等としてもよい。
【0020】
シリンダブロック2には、その上面に、シリンダヘッドをボルトにて締結一体とするための複数の雌ねじ穴2a…,2b…が形成されている。これら複数の雌ねじ穴2a…,2b…は、シリンダブロック2におけるウォータジャケット3の外方側(ウォータジャケット3のシリンダボア5,5,5の反対側)に設けられている。また、本実施形態では、3個のシリンダボア5,5,5のうち両側のシリンダボア5,5のそれぞれの近傍に、2個の雌ねじ穴2a,2aを、3個のシリンダボア5,5,5のそれぞれの平面視における円心を通る線(対称線)に対して対称となるように設けた例を示している。また、本実施形態では、これら3個のシリンダボア5,5,5における隣り合うシリンダボア5,5間に位置するように、上記対称線に対して対称となるように、それぞれ2個の雌ねじ穴2b,2b,2b,2bを設けた例を示している。また、本実施形態では、シリンダボア5,5,5のそれぞれの近傍に、円心からの間隔が略同寸法となるように、4個の雌ねじ穴2a,2a,2b,2bを設けた例を示している。
【0021】
シリンダブロック2におけるウォータジャケット3の外壁3aには、ウォータジャケット3内に突出する張り出し部4が、それぞれの雌ねじ穴2a…,2b…の近傍に設けられている。本実施形態では、両側のシリンダボア5,5の外方側に位置する雌ねじ穴2a,2a,2a,2aの近傍に、張り出し部4,4,4,4を設けた例を示している。また、本実施形態では、隣り合うシリンダボア5,5間に位置する雌ねじ穴2b,2b,2b,2bの近傍に、張り出し部4a,4a,4a,4aを設けた例を示している。また、張り出し部4,4,4,4の流通媒体の流通方向(矢印a方向)に沿う寸法(幅寸法)を、張り出し部4a,4a,4a,4aの幅寸法よりも小さい寸法とした例を示している。
【0022】
張り出し部4は、なだらかな両裾野部からウォータジャケット3内に突出する横断面形状が山形状とされている。
張り出し部4は、シリンダブロック2におけるウォータジャケット3の開口から底部3cまでの略全域に亘って設けられたものとしてもよく、または、ウォータジャケット3の開口から底部3cまでの一部分に設けられたものとしてもよい。
【0023】
スペーサ片10は、
図2に示すように、ウォータジャケット3の外壁3a及び内壁3bに沿うように湾曲した形状とされている。図例では、ウォータジャケット3の溝幅方向(外壁3aと内壁3bの対面方向)に見て、略矩形状とされたスペーサ片10を示している。スペーサ片10の外面10aは、スペーサ片10の内面(ウォータジャケット3の内壁3b側の面)10bよりも大きく湾曲している。また、スペーサ片10の厚さ寸法(外面10aと内面10bとの間の距離)は、ウォータジャケット3の溝幅寸法よりも小さい寸法とされている。また、このスペーサ片10の厚さ寸法は、ウォータジャケット3の張り出し部4における最大突出部の表面(外壁3a)と内壁3bとの間の寸法よりも小さい寸法とされている。
【0024】
本実施形態では、スペーサ片10は、
図2に示すように、冷却媒体を導入するためにウォータジャケット3に設けられた給水口(孔)7に対向するように配置される。また、本実施形態では、
図2に示すように、スペーサ片10に、冷却媒体が冷却媒体の流通方向の一方向に流れるように誘導する誘導凹所11を設けている。
誘導凹所11は、
図3に示すように、スペーサ片10の外面10aに設けられている。また、図例では、冷却媒体が矢印aの方向(
図1参照)に流れるように設けた誘導凹所11を示している。
本実施形態では、誘導凹所11を、スペーサ片10における冷却媒体の流通方向(矢印a方向)先側の部位に設けた例を示している。
誘導凹所11は、スペーサ片10における給水口7に対向する部位を含み、この部位より上端部10c側及び右側端部10d側にかけてスペーサ片10の厚みを薄くすることにより形成されている。
誘導凹所11は、ウォータジャケット3の外壁3a側を向く底部11aと、冷却媒体の流通方向(矢印a方向)先側を向く壁部11bと、スペーサ1の挿入方向の一方向側(図例では、上方側)を向く壁部11cと、によって区画されている。壁部11cは、
図3において、下方側に凹むような湾曲状に形成されている。
【0025】
また、本実施形態では、スペーサ片10には、
図4に示すように、スペーサ片10の外面10aと内面10bとを連通させる連通孔12が設けられている。
連通孔12は、スペーサ片10の厚さ方向に貫通するように設けられている。また、この連通孔12は、スペーサ片10の上下方向の途中位置に設けられている。
【0026】
スペーサ片10には、
図2に示すように、ウォータジャケット3の外壁3aからウォータジャケット3側に張り出す張り出し部4を冷却媒体の流通方向に沿って挟むように、一対の第1係合部13,13が設けられている。
一対の第1係合部13,13は、互いに略同寸同形状とされている。また、本実施形態では、これら一対の第1係合部13,13を、冷却媒体の流通方向に沿う方向に互いに間隔を空けて設けている。一対の第1係合部13,13は、スペーサ片10における誘導凹所11の冷却媒体の流通方向の後側に設けられている。
第1係合部13は、スペーサ片10の厚さ方向に沿う方向に突出するように設けられている。また、一対の第1係合部13,13は、張り出し部4を間に挟む程度の間隔を空けて配設されている。つまり、一対の第1係合部13,13における後記する可撓部15,15間の距離d2は、張り出し部4の幅寸法d1よりも大きい。従って、第1係合部13は、ウォータジャケット3の外壁3aに当接し係合可能とされている。
【0027】
本実施形態では、第1係合部13は、スペーサ片10の冷却媒体の流通方向と直交する上下方向の全域に亘って延びる突条とされている。
また、本実施形態では、この突条(第1係合部13)を、スペーサ片10に固定される基端部14と、ウォータジャケット3の外壁3aに当接する可撓部15とからなるものとしている。
【0028】
基端部14は、
図3に示すように、横断面形状が略矩形状でスペーサ片10の上下方向の略全域に亘って延びる長尺状とされている。
可撓部15は、
図3に示すように、基端部14のウォータジャケット3の外壁3a側の面に設けられている。また、可撓部15は、ウォータジャケット3の外壁3a側に向けて突出するとともに、基端部14の上下方向の全域に亘って延びる突状とされている。また、図例では、基端部14の幅方向(冷却媒体の流通方向に沿う方向)の略中央に設けた可撓部15を示している。可撓部15は、横断面形状が突出方向先側に向かうに従い幅狭となるようなリップ状とされている。また、可撓部15は、スペーサ片10の上下方向の全域に亘って、その冷却媒体の流通方向に沿う寸法(幅寸法)が略同寸法とされている。また、可撓部15の幅寸法は、基端部14の幅寸法よりも十分に小さい寸法とされている。ここで、第1係合部13が張り出し部4に係合する場合、可撓部15の側面が張り出し部4の側面に当接し係合する。
【0029】
本実施形態では、
図1に示すように、スペーサ片10の内面10bに、ウォータジャケット3の内壁3bに当接する第2係合部16が設けられている。
第2係合部16は、第1係合部13と概ね同様の構成とされている。また、本実施形態では、第2係合部16を、第1係合部13と略同寸同形状としている。
この第2係合部16は、ウォータジャケット3の内壁3bに当接可能とされている。
本実施形態では、一対の第2係合部16,16をスペーサ片10に設けている。また、本実施形態では、一対の第2係合部16,16を、その固定位置が冷却媒体の流通方向に沿う方向において一対の第1係合部13,13と略一致するように、スペーサ片10の内面10bに設けている。
【0030】
上記構成とされたスペーサ1は、
図2に示すように、その第1係合部13の突出方向先端から第2係合部16の突出方向先端までのスペーサ片10の厚さ方向に沿う寸法が、ウォータジャケット3の張り出し部4における最大突出部の表面(外壁3a)と内壁3bとの間の寸法よりも大きい。また、第1係合部13の突出方向先端から第2係合部16の突出方向先端までの寸法は、ウォータジャケット3の張り出し部4の近傍部位における外壁3aと内壁3bとの間の寸法と略同寸法、またはこの寸法よりも僅かに大きい寸法とされている。
【0031】
本実施形態では、
図4に示すように、第1係合部13と第2係合部16とは、スペーサ片10の連通孔12を介して一体に成形されている。これら第1係合部13と第2係合部16とは、スペーサ片10の連通孔12内の連結部19を介して一体に成形されている。
また、本実施形態では、
図4に示すように、第1係合部13及び第2係合部16は、スペーサ片10と一体に成形される弾性材からなる。
上記した第1係合部13、第2係合部16及び連結部19は、例えば、EPDM等のエラストマー系材料等の弾性変形が可能とされた材料からなるものとしてもよい。
また、上記構成とされたスペーサ片10は、合成樹脂系材料等から形成されたものとしてもよい。
また、これらスペーサ片10、第1係合部13、第2係合部16及び連結部19は、上記材料から2色成形によって一体に成形されたものとしてもよい。
【0032】
上記構成とされたスペーサ1は、誘導凹所11がシリンダブロック2の給水口7に対面するように、一対の第1係合部13,13が張り出し部4を流通媒体の流通方向に沿って挟むように、シリンダブロック2のウォータジャケット3内に挿入され、組み付けられる。この際、第1係合部13の可撓部15及び第2係合部16の可撓部18が、それぞれウォータジャケット3の外壁3a及び内壁3bに弾性変形を伴い当接するので、スペーサ1をウォータジャケット3内に挿入する際におけるスペーサ1の組付け性を向上させることができる。
【0033】
また、このようにスペーサ1が組み付けられたウォータジャケット3内に給水口7から冷却媒体が流入されると、冷却媒体はスペーサ1の誘導凹所11に衝突し、冷却媒体の流通方向の一方向に流れるように、その流通方向が誘導される(図例では、矢印aの方向)。このように流入した冷却媒体は、ウォータジャケット3内を矢印aの方向に流通し、その一部は排水口8から排出される。また、排水口8から排出されなかった冷却媒体は、ウォータジャケット3内を矢印aの方向に循環する。
【0034】
また、このように冷却媒体がウォータジャケット3内を循環した状態では、スペーサ1には、該スペーサ1を冷却媒体の流通方向に沿って移動させる力が作用しているが、一対の第1係合部13,13が、外壁3aに当接し係合することによって、スペーサ1の移動が抑制される。また、このように、第1係合部13,13が張り出し部4を挟むように外壁3aに当接し係合することによって、スペーサ片10とウォータジャケット3の外壁3aとの間における冷却媒体の流通が抑制され、冷却媒体の流通が制御される。これにより、冷却媒体が矢印a方向とは逆方向に流れることを抑制でき、ウォータジャケット3内において冷却媒体が矢印a方向に沿ってより循環し易くなる。また、スペーサ1の第2係合部16,16も、ウォータジャケット3の内壁3bに当接、または近接した状態となるので、スペーサ片10とウォータジャケット3の内壁3bとの間における冷却媒体の流通が抑制され、ウォータジャケット3内において冷却媒体が矢印a方向に沿ってより循環し易くなる。
【0035】
なお、上記第1実施形態では、第1係合部13、第2係合部16及び連結部19を同一の材料からなるものとした例を示しているが、このような態様に代えて、これら第1係合部13、第2係合部16及び連結部19を、それぞれ異なる材料で形成するようにしてもよい。
また、第1係合部13,13を、スペーサ片10と一体に成形される弾性材からなるものとした例を示しているが、この態様に限定されない。例えば、第1係合部13,13をスペーサ片10とは別体に成形した後、接着剤等を用いて第1係合部13,13をスペーサ片10に固定するようにしてもよい。
また、スペーサ片10に連通孔12を設け、第1係合部13と第2係合部16とを連通孔12を介して一体に成形した例を示しているが、この態様に限定されない。このような連通孔12を設けずに、例えば、接着剤等を用いてこれら第1係合部13と第2係合部16をそれぞれスペーサ片10に固定するようにしてもよい。
【0036】
次に、本発明に係る他の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
図5は、第2実施形態に係るスペーサ1Aを模式的に示す図である。なお、上記第1実施形態との相違点について主に説明し、同様の構成については、同一符号を付し、その説明を省略または簡略に説明する。
本実施形態に係るスペーサ1Aは、主に、第1係合部13A及び第2係合部16Aが、スペーサ片10Aの係止部10Aa,10Aaに圧入される点、及びスペーサ片10Aに連通孔12が設けられていない点が、上記第1実施形態と異なる。
スペーサ片10Aは、その外面10a及び内面10bに、それぞれ第1係合部13A及び第2係合部16Aを係止する係止部10Aa,10Aaを設けた構造とされている。本実施形態では、2個の第1係合部13A,13A及び2個の第2係合部16A,16Aのそれぞれが係止される4個の係止部10Aa,10Aa,10Aa,10Aaを設けた例を示している。これら係止部10Aa,10Aa,10Aa,10Aaは、略同様の構成とされているので、以下では、スペーサ片10Aの外面10aに設けられる係止部10Aaについて説明する。
【0037】
係止部10Aaは、一対の互いに向き合う横断面形状が略L形状の係止片部10Aa1,10Aa1からなる。この一対の係止片部10Aa1,10Aa1は、スペーサ片10Aの外面10aに、流通媒体の流通方向に間隔を空けてスペーサ片10Aの厚さ方向に沿って突出するように設けられている。また、この一対の係止片部10Aa1,10Aa1は、スペーサ片10Aの上下方向の略全域に亘って設けられており、一対の係止片部10Aa1,10Aa1とスペーサ片10Aの外面10aとによって、上下に開口し上下方向に延びる空洞部Sが形成されている。
この空洞部Sは、第1係合部13Aの基端部14をその長手方向に沿って圧入し得る大きさとされている。
また、一対の係止片部10Aa1,10Aa1の互いに対向する先端間の寸法は、第1係合部13Aの可撓部15が挿通され得る寸法とされている。
また、第1係合部13Aと第2係合部16Aとは、上記第1実施形態とは異なり、それぞれが別々に形成されている。すなわち、第1係合部13Aと第2係合部16Aとは、それぞれが一単位の係合部とされている。
【0038】
上記のような構成により、第1係合部13Aの基端部14を、空洞部Sの開口から空洞部S内へ圧入するとともに、可撓部15を一対の係止片部10Aa1,10Aa1の互いに対向する先端間に挿通させる。これによって、第1係合部13Aがスペーサ片10Aに固定される。なお、上記態様に加えて、適宜接着剤等を併用して第1係合部13Aをスペーサ片10Aに固定するようにしてもよい。また、第2係合部16Aの構成やスペーサ片10Aへの固定態様も、上記した第1係合部13Aと略同様である。
【0039】
上記構成とされたスペーサ1Aにおいても、上記第1実施形態に係るスペーサ1と概ね同様の効果を奏する。
また、本実施形態では、第1係合部13Aを、係止部10Aaとスペーサ片10Aの外面10aとによって構成される空洞部Sに嵌め込んで、スペーサ片10Aに固定するようにしている。また、第2係合部16Aを、係止部10Aaとスペーサ片10Aの内面10bとによって構成される空洞部Sに嵌め込んで、スペーサ片10Aに固定するようにしている。従って、例えば、スペーサ片10A、第1係合部13A及び第2係合部16Aを一体に成形するような場合と比べて、比較的に簡易に第1係合部13A及び第2係合部16Aをスペーサ片10Aに固定することができる。また、第1係合部13A及び第2係合部16Aを、それぞれ単一の部材として製造することができるので、取扱性を向上させることができる。
【0040】
次に、本発明に係るさらに他の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
図6は、第3実施形態に係るスペーサ1Bを模式的に示す図である。なお、上記第1実施形態及び第2実施形態との相違点について主に説明し、同様の構成については、同一符号を付し、その説明を省略または簡略に説明する。
本実施形態に係るスペーサ1Bは、主に、一連状とされた第1係合部13B及び第2係合部16Bがスペーサ片10Bに固定されている点が、上記第1実施形態及び第2実施形態と異なる。
スペーサ片10Bには、第1実施形態及び第2実施形態とは異なり、連通孔12が形成されておらず、また、第1係合部13Bと第2係合部16Bとは、スペーサ片10Bの連通孔12を介して一体に成形されてはいない。
本実施形態では、それぞれの固定位置が冷却媒体の流通方向に沿う方向において互いに一致するように設けられた第1係合部13Bと第2係合部16Bとは、それぞれの上端部同士及び下端部同士が、連結部19a,19aによって連結されている。
これら連結部19a,19aは、スペーサ片10Bの上端面及び下端面を覆うように設けられている。
【0041】
上記のような構成により、第1係合部13Bと第2係合部16Bとは、連結部19a,19aを介して一連状に形成されている。これにより、第1係合部13Bと第2係合部16Bとは、スペーサ片10Bの外面10a、内面10b及び上下端面を締め付けるようにスペーサ片10Bに固定される。なお、上記態様に加えて、適宜接着剤等を併用して第1係合部13B及び第2係合部16Bをスペーサ片10Bに固定するようにしてもよい。
【0042】
上記構成とされたスペーサ1Bにおいても、上記第1実施形態及び第2実施形態に係るスペーサ1,1Aと概ね同様の効果を奏する。
また、本実施形態では、第1係合部13Bと第2係合部16Bとは、連結部19a,19aを介して一連状に形成されている。従って、これら第1係合部13Bと第2係合部16Bを、スペーサ片10Bの外面10a、内面10b及び上下端面を締め付けるようにスペーサ片10Bに固定することができ、比較的強固にスペーサ片10Bに固定することができる。また、例えば、スペーサ片10B、第1係合部13B及び第2係合部16Bを一体に成形するような場合と比べて、比較的に簡易に第1係合部13B及び第2係合部16Bをスペーサ片10Bに固定することができる。また、これら第1係合部13Bと第2係合部16Bとを、両者が結合された単一の部材として製造することができるので、取扱性を向上させることができる。
【0043】
なお、上記第3実施形態では、第1係合部13Bの可撓部15と第2係合部16Bの可撓部18とは連結されていないが、このような態様に限られず、可撓部15と可撓部18とを連結する連結可撓部を形成してもよい。連結可撓部を、第1係合部13B及び第2係合部16Bの上下両端に設けた場合には、スペーサ片10Bをウォータジャケット3内に配置した場合に、連結可撓部によってスペーサ片10Bの上側及び下側に存在する隙間を塞ぐことができる。これにより、ウォータジャケット3内において冷却媒体が矢印a方向に沿ってより循環し易くなる。
【0044】
次に、上記第3実施形態に係るスペーサ1Bの一変形例について、図面を参照しながら説明する。
図7は、第3実施形態に係るスペーサ1Bの一変形例としてのスペーサ1Cを模式的に示す図である。なお、上記第1実施形態、第2実施形態及び第3実施形態との相違点について主に説明し、同様の構成については、同一符号を付し、その説明を省略または簡略に説明する。
本変形例に係るスペーサ1Cは、主に、スペーサ片10Cにゴム材等からなる突条10eを設けた点が、上記第1実施形態、第2実施形態及び第3実施形態と異なる。
本変形例では、スペーサ片10Cにおける誘導凹所11よりも下方側の部位に、外壁3a側に向かって突出する突条10eが設けられている。この突条10eは、第1係合部13B側から右側端部10d側に向かうに従い上方側に向かって延びるような略湾曲形状とされている。また、この突条10eは、スペーサ片10Cに固着される固着部10eaと、固着部10eaから外壁3a側に向かって突出するように設けられる突部10ebとを備えている。
上記のような構成により、冷却媒体は、給水口7からウォータジャケット3内に流入しスペーサ1Cの誘導凹所11に衝突すると、一部が突条10e側に向かうこともある。しかし、突条10e側に向かった冷却媒体は、突条10eの突部10ebによってその流れが流通方向の一方向に変化するようにガイドされる。つまり、冷却媒体は、突条10eが設けられていることによって、冷却却媒体の流通方向の一方向により流れ易くなるよう誘導される。
なお、このような突条10eを、上記第1実施形態のスペーサ片10や、第2実施形態のスペーサ片10Aに設けるようにしてもよい。
【0045】
なお、上記各実施形態では、冷却媒体を矢印aの方向に流通させた例を示しているが、このような態様に限定されない。冷却媒体を、矢印aとは逆の方向に流通させるようにしてもよい。この場合、誘導凹所11のスペーサ1,1A,1B,1Cにおける形成態様を適宜変更するようにしてもよい。つまり、冷却媒体を、矢印aとは逆の方向に流通させるために、誘導凹所11の形状を変更してもよいし、誘導凹所11の位置を変更してもよい。
【0046】
また、上記各実施形態では、スペーサ1,1A,1B,1Cに、冷却媒体が冷却媒体の流通方向の一方向に流れるように誘導する誘導凹所11を設けた例を示しているが、誘導凹所11の形状は、例示のものに限られず、冷却媒体を所望の方向に誘導できるものであればよい。例えば、誘導凹所11の壁部11cは、その幅が一定でなくともよく、冷却媒体の流通方向の一方向に沿って、徐々に幅が増大するように形成してもよい。
また、このような誘導凹所11を設けない態様としてもよい。
【0047】
また、上記各実施形態では、スペーサ1,1A,1B,1Cの内面10bに、ウォータジャケット3の内壁3bに当接する第2係合部16,16A,16Bを設けた例を示しているが、この態様に限定されず、このような第2係合部16,16A,16Bを設けなくてもよい。
また、上記各実施形態では、第1係合部13,13A,13Bを、スペーサ片10,10A,10B,10Cに固定される基端部14と、ウォータジャケット3の外壁3aに当接する可撓部15とからなるものとした例を示しているが、この態様に限定されない。第1係合部13,13A,13Bを、例えば、ウォータジャケット3の外壁3aに当接する部位が可撓性を有するとともに略一定の幅寸法(流通媒体の流通方向に沿う寸法)となるようにしてもよい。なお、第2係合部16,16A,16Bについても同様の態様となるように変更してもよい。
【0048】
また、上記各実施形態では、可撓部15を、基端部14の冷却媒体の流通方向と直交する方向の全域に亘って延びるように設けた例を示しているが、この態様に限定されない。可撓部15を、基端部14の冷却媒体の流通方向と直交する方向の一部分に設けるようにしてもよい。または、複数の可撓部15を、基端部14の冷却媒体の流通方向と直交する方向に互いに間隔を空けて設けるようにしてもよい。
また、上記各実施形態では、第1係合部13,13A,13Bを、スペーサ片10,10A,10B,10Cの冷却媒体の流通方向と直交する方向の全域に亘って延びる突条とした例を示しているが、この態様に限定されない。第1係合部13,13A,13Bを、スペーサ片10,10A,10B,10Cの冷却媒体の流通方向と直交する方向の一部分に設けるようにしてもよい。または、複数の第1係合部13,13A,13Bを、スペーサ片10,10A,10B,10Cの冷却媒体の流通方向と直交する方向に互いに間隔を空けて設けるようにしてもよい。
【0049】
また、スペーサ片10,10A,10B,10Cに設ける第1係合部13,13A,13Bの個数及び第2係合部16,16A,16Bの個数は特に限定されない。例えば、スペーサ片10,10A,10B,10Cに第1係合部13,13A,13B及び第2係合部16,16A,16Bをそれぞれ一つだけ設けてもよい。また、第2係合部16,16A,16Bを省略し、第1係合部13,13A,13Bだけを設けてもよい。
【0050】
また、冷却流路3においてスペーサ片10,10A,10B,10Cを配置する箇所は特に限定されない。例えば、給水口7から離れた箇所に存在する張り出し部4に第1係合部13を係合させ、スペーサ片10,10A,10B,10Cを給水口7から離れた箇所に配置してもよい。
また、スペーサ片10,10A,10B,10Cの形状は、湾曲した形状に限定されない。例えば、スペーサ片10,10A,10B,10Cが張り出し部4aに位置決めされるように配置される場合、それに伴って、ウォータジャケット3に沿う形状となるようにスペーサ片10,10A,10B,10Cの形状を適宜変更してもよい。