(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1溶断工程で溶断する第1溶断部は、前記長尺の部材の長手方向に直交する方向について、直前に溶断した前記第1溶断部よりもその前に溶断した前記第1溶断部に近く、
前記第2溶断工程で溶断する前記第2溶断部は、前記長尺の部材の長手方向に直交する方向について、直前に溶断した前記第2溶断部よりもその前に溶断した前記第2溶断部に近いことを特徴とする請求項4に記載の鉄道車両用長尺材の製造方法。
前記溶断工程において、前記長尺の部材の長辺端部に、凹部及び凸部の少なくとも一方が平面方向に形成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の鉄道車両用長尺材の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0025】
ここでは、本発明の第1実施形態である鉄道車両について、
図1〜
図5を参照しつつ以下に説明する。
【0026】
〔第1実施形態〕
鉄道車両100は、
図1に示すように、進行方向に長尺な直方体状に形成され、底部となる台枠10と、車両の長手方向に延在した側構体20,30と、車両幅方向に延在した妻構体40と、屋根構体50とを備えている。
【0027】
台枠10は、車両の長手方向に延在した側梁(長尺材)11,12と、車両の幅方向に延在した複数の横梁13とを有している。側梁11,12は、車両の幅方向両端部にそれぞれ配置されている。側梁11と側梁12とは同様な構成であり、以下では側梁11について詳細に説明する。なお、台枠10には端梁、中梁、枕梁等も設けられているが、
図1ではこれらを省略している。
【0028】
側梁11は、鉄道車両100の長手方向一端部から他端部まで延在し、約12〜15mの長尺材である。側梁11は、鉛直方向断面がコの字状に形成され(
図2(a)参照)、鉛直方向(上下方向)に互いに対向する上平板部21及び下平板部31を有している。側梁11は、鉄、アルミ、ステンレス等の金属材料からなる。
【0029】
上平板部21の長辺端部には、
図2(b)に示すように、2つの凸部22,23が形成されている。凸部22,23は、側梁11の長手方向に直交する方向に突出している。一方、下平板部31の長辺端部には、
図2(c)に示すように、2つの凹部32,33が形成されている。凹部32,33は、側梁11の長手方向に直交する方向に凹んでいる。上平板部21における2つの凸部22,23の間、及び下平板部31における2つの凹部32,33の間には、靴摺り、はしご、配管等の部材が配置される。また、凸部22,23には、配管を挿通可能な孔が形成されることがある。
【0030】
次に、
図3〜5を参照しつつ、側梁11の製造方法を説明する。
【0031】
先ず、
図3(a)に示すように、巻回された金属製のロール材60を引き出し、所定の長さに切断する(切断工程)。ここで、「所定の長さ」とは、側梁11の長辺(長手方向の長さ)より長い。
【0032】
次に、切断工程で得た金属板61をロール材60の引き出し方向に引っ張ることで、金属板61を矯正する(矯正工程、
図3(b)参照)。金属板61を矯正することで、金属板61の内部応力が開放される。なお、金属板61を矯正する方法は、金属板61を引っ張る方法に限定されない。また、矯正には、レベラーやストレッチャー等を用いてもよい。
【0033】
続いて、金属板61に3つの側梁11の外形70,80,90(境界)を描く(
図3(c)参照)。このとき、外形70,80,90の長辺端部に、それぞれ、凸部や凹部を形成しておく。凸部及び凹部は、側梁11の凸部22,23(
図2(b)参照)及び凹部32,33(
図2(c)参照)に対応する。なお、
図3(c)では、外形70,80,90の長手方向を金属板61の長手方向に延在させている。また、3つの外形70,80,90を金属板61の長手方向に直交する方向に順に並べている(
図4参照)。
【0034】
そして、
図4に示すように、外形70,80,90において、複数の第1溶断部71,72,73,74,75・・・(図中の太線部)を溶断する(第1溶断工程)。第1溶断部71,72,74は金属板61の長手方向に離れている。また、第1溶断部71,73,76も金属板61の長手方向に離れている。
【0035】
なお、第1溶断工程では、金属板61の長手方向に隣り合う2つの第1溶断部の間の部分(
図4における第2溶断部172,173・・・(細線部)に相当)を溶断せずに残しておく。溶断方法として、レーザー、ガス、プラズマ溶射等の熱を加える方法が挙げられる。
【0036】
また、第1溶断工程では、金属板61の長手方向について左端部から右端部に向かって溶断する。なお、金属板61の長手方向に直交する方向について複数の第1溶断部が重なって存在する場合、これらの溶断部については、直前に溶断した第1溶断部と隣り合わない溶断部から溶断することが好ましい。
【0037】
例えば、
図4では、外形70,80,90において、左端の第1溶断部71,81,91が、金属板61の長手方向に直交する方向について、上から順に存在する。
3つの第1溶断部71,81,91のうち、
[1]先ず、一番上の「第1溶断部71」を溶断した場合、
[2]次に、「第1溶断部71」と隣り合わない一番下の「第1溶断部91」を溶断し、
[3]最後に、真ん中の「第1溶断部81」を溶断する。
【0038】
続いて、第1溶断部71,81,91の右側にある第1溶断部72,73,82,83,92,93を溶断する。第1溶断部72,73,82,83,92,93は、金属板61の長手方向に直交する方向について、上から順に存在する。
6つの第1溶断部72,73,82,83,92,93のうち、
[4]先ず、一番上の「第1溶断部72」を溶断した場合、
[5]次に、「第1溶断部72」と隣り合わない一番下の「第1溶断部93」を溶断する。
[6]続いて、[4]で溶断した「第1溶断部72」及び[5]で溶断した「第1溶断部93」と隣り合わない「第1溶断部82」を溶断する。ここで、第1溶断部72,93と隣り合わない溶断部には「第1溶断部82」と「第1
溶断部83」とがあるが、直前の[5]で溶断した「第1溶断部93」からより遠い「第1溶断部82」を溶断する。これにより溶断時の高熱を外部に逃がしやすくできる。「第1溶断部82」は、直前の[5]で溶断した「第1溶断部93」よりその前の[4]で溶断した「第1溶断部72」に近い。
[7]次に、直前の[6]で溶断した「第1溶断部82」と隣り合わない「第1溶断部92」を溶断する。「第1溶断部92」は、直前の[6]で溶断した「第1溶断部82」よりその前の[5]で溶断した「第1溶断部93」に近い。
[8]続いて、直前の[7]で溶断した「第1溶断部92」と隣り合わない「第1溶断部73」を溶断する。
[9]最後に、直前の[8]で溶断した「第1溶断部73」と隣り合わない「第1溶断部83」を溶断する。
【0039】
次に、第1溶断部72,73,82,83,92,93の右側にある第1溶断部74,75,84,85,94,95を溶断する。第1溶断部74,75,84,85,94,95は、金属板61の長手方向に直交する方向について、上から順に存在する。
6つの第1溶断部74,75,84,85,94,95を溶断するときは、上述した第1溶断部72,73,82,83,92,93と同様な方法で、[10]第1溶断部74→[11]第1溶断部95→[12]第1溶断部84→[13]第1溶断部94→[14]第1溶断部75→[15]第1溶断部85の順に溶断する。
【0040】
このような方法で、第1溶断部を左側から右側へ順に溶断する。
図4には第1溶断部を溶断する順番を[1]〜[30]で示している。
【0041】
次に、外形70,80,90の残りの部分(第2溶断部)を溶断する(第2溶断工程)。第2溶断工程でも、第1溶断工程と同様に、金属板61の長手方向について左端部から右端部に向かって溶断する。また、金属板61の長手方向に直交する方向について複数の第2溶断部が重なって存在する場合、これらの溶断部については、直前に溶断した第2溶断部と隣り合わない溶断部から溶断する。
【0042】
例えば、
図5において、先ず、最も左にある第2溶断部172,173,182,183,192,193を溶断する。第2溶断部172,173,182,183,192,193は、金属板61の長手方向に直交する方向について、上から順に重なって存在する。
6つの第2溶断部172,173,182,183,192,193のうち、
[31]最初に、一番上の「第2溶断部172」を溶断した場合、
[32]次に、「第2溶断部172」と隣り合わない一番下の「第2溶断部193」を溶断する。
[33]続いて、[31]で溶断した「第2溶断部172」及び[32]で溶断した「第2溶断部193」と隣り合わない「第2溶断部182」を溶断する。ここで、第2溶断部172,193と隣り合わない溶断部には「第2溶断部182」と「第2用断部183」とがあるが、直前の[32]で溶断した「第2溶断部193」からより遠い「第2溶断部182」を溶断する。これにより溶断時の高熱を外部に逃がしやすくできる。「第2溶断部182」は、直前の[32]で溶断した「第2溶断部193」よりその前の[31]で溶断した「第2溶断部172」に近い。
[34]次に、直前の[33]で溶断した「第2溶断部182」と隣り合わない「第2溶断部192」を溶断する。「第2溶断部192」は、直前の[33]で溶断した「第2溶断部182」よりその前の[32]で溶断した「第2溶断部193」に近い。
[35]続いて、直前の[34]で溶断した「第2溶断部192」と隣り合わない「第2溶断部173」を溶断する。
[36]最後に、直前の[35]で溶断した「第2溶断部173」と隣り合わない「第2溶断部183」を溶断する。
【0043】
次に、第2溶断部172,173,182,183,192,193の右側にある第2溶断部174,175,184,185,194,195を溶断する。第2溶断部174,175,184,185,194,195は、金属板61の長手方向に直交する方向について、上から順に重なって存在する。これらを溶断するときは、上述した第2溶断部172,173,182,183,192,193と同様な方法で、[37]第2溶断部174→[38]第2溶断部195→[39]第2溶断部184→[40]第2溶断部194→[41]第2溶断部175→[42]第2溶断部185の順に溶断する。
【0044】
上述した方法で、第2溶断部を左側から右側へ順に溶断する。
図5には第2溶断部を溶断する順番を[31]〜[60]で示している。外形70,80,90を全て溶断すると、側梁11となる平板状の3つの長尺部材(長尺の部材)111が得られる(
図3(d)参照)。
【0045】
得られた長尺部材111にプレス加工を施し、長尺部材111をコの字状に曲げると、側梁(長尺材)11が得られる(プレス工程、
図3(e)参照)。
【0046】
以上に述べたように、本実施形態の鉄道車両用側梁の製造方法によると、側梁11,12のような長尺材でもプレス加工が可能となる。また、金属板61から側梁11となる長尺部材111を切り取る際、長尺部材111の長辺部に凸部及び凹部を形成することにより、従来、ロールフォーミング加工後に行っていた切り欠きや溶接を省略できる。これにより、手間とコストを大幅に低減できるとともに側梁11,12に熱変形や歪が発生することを抑止できる。また、金属板61の溶断時に所望の形状に溶断できるとともにプレス加工を利用することによって、多種多様な形状の側梁11,12を製造することができる。
このように、本実施形態では、側梁11,12としての高い強度を低下させることなく、多様な形状の側梁11,12を簡易に且つ安価に製造することができる。
【0047】
また、引張工程において金属板61を平面方向に引っ張り矯正することで、内部応力を開放させている。この状態で金属板61を溶断することにより、溶断時の熱による変形や歪を生じにくくすることができる。
【0048】
さらに、第1溶断工程及び第2溶断工程において、金属板61を長手方向一端部から他端部に向かって溶断することにより、溶断時の熱による変形や歪を生じにくくすることができる。
【0049】
また、第1溶断工程において、金属板61の長手方向に直交する方向に重なって配置された複数の第1溶断部72,73,82,83,92,93を溶断する際、直前に溶断した第1溶断部と隣り合わない第1溶断部を溶断している。
同様に、第2溶断工程においても、金属板61の長手方向に直交する方向に重なって配置された複数の第2溶断部172,173,182,183,192,193を溶断する際、直前に溶断した第2溶断部と隣り合わない第2溶断部を溶断している。
このように直前に溶断した溶断部と隣り合わない部分を溶断すると、溶断時の高熱を金属板の外部に逃がしやすくできるため、熱による変形、歪及び強度低下を抑止できる。
【0050】
さらに、第1溶断工程では、第1溶断部72,73,82,83,92,93のうち[6]第1溶断部82を溶断するとき、直前の[5]に溶断した第1溶断部93からより遠い第1溶断部82を溶断している。また、その次の溶断[7]でも、直前の[6]に溶断した第1溶断部92からより遠い第1溶断部82を溶断している。
同様に、第2溶断工程でも、第2溶断部172,173,182,183,192,193のうち[33]第2溶断部182を溶断するとき、直前の[32]に溶断した第2溶断部193からより遠い第2溶断部182を溶断している。また、その次の溶断[34]でも、直前に溶断した第2溶断部182からより遠い第2溶断部192を溶断している。
このように直前に溶断した溶断部からより遠い部分を溶断することにより、溶断時の高熱を金属板の外部により逃がしやすくできるため、熱による変形、歪及び強度低下を抑止できる。
【0051】
さらに、第1溶断工程及び第2溶断工程において、長尺部材111の長辺端部に凹部及び凸部を形成することで、従来のロールフォーミング加工後に行っていた切り欠きや溶接を省略できる。これにより、手間とコストを大幅に低減できるとともに多種多様な形状の側梁11,12を製造することができる。
【0052】
また、上述した方法によって得られた鉄道車両用側梁11,12は、製造時の熱変形、歪及び強度低下を抑止できているため、側梁として優れた性能を備えている。また、コの字状の一般的な形状でも、側梁として優れた性能を備えている。
【0053】
以上、本発明の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態に限定されるものでないと考えられるべきである。そして、本発明の範囲は上記した説明ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0054】
例えば、上述の実施形態では、金属板61を溶断する前に金属板61を引っ張る引張工程を行ったが、引張工程を省略してもよい。
【0055】
また、上述の実施形態では、第1溶断工程及び第2溶断工程において、外形70,80,90を金属板61の長手方向について左端から右端に向かって溶断したが、溶断方向は長手方向左端部から右端部に向かった方向に限られない。例えば、金属板61の右端部から左端部に向かって溶断してもよい。さらに、第1溶断工程と第2溶断工程とで溶断方向が異なってもよい。例えば、第1溶断工程では金属板61の左端部から右端部に向かって溶断し、第2溶断工程では金属板61の右端部から左端部に向かって溶断してもよい。
【0056】
また、上述の実施形態では、第1溶断工程において、金属板61の長手方向に直交する方向に重なって配置された複数の第1溶断部72,73,82,83,92,93を溶断する際、直前に溶断した溶断部と隣り合わない溶断部を溶断している。また、第2溶断工程においても、金属板61の長手方向に直交する方向に重なって配置された複数の第2溶断部172,173,182,183,192,193を溶断する際、直前に溶断した溶断部と隣り合わない溶断部を溶断している。しかし、溶断する順番は上記に限られず変更可能である。例えば、直前に溶断した溶断部と隣り合う溶断部を溶断してもよい。また、2つの溶断部を同時に溶断してもよい。
【0057】
さらに、上述の実施形態では、第1溶断工程において、第1溶断部72,73,82,83,92,93のうち[6]第1溶断部82を溶断するとき、直前の[5]に溶断した第1溶断部93からより遠い第1溶断部82を溶断している。また、その次の溶断[7]でも、直前の[6]に溶断した第1溶断部92からより遠い第1溶断部82を溶断している。
同様に、第2溶断工程でも、第2溶断部172,173,182,183,192,193のうち[33]第2溶断部182を溶断するとき、直前の[32]に溶断した第2溶断部193からより遠い第2溶断部182を溶断している。また、その次の溶断[34]でも、直前に溶断した第2溶断部182からより遠い第2溶断部192を溶断している。
しかし、溶断する順番は上記に限られない。例えば、直前に溶断した第1溶断部に近い部分を溶断してもよい。
【0058】
また、上述の実施形態では、側梁11,12の長辺部に凸部22,23及び凹部32,33が形成されているが、凸部や凹部が形成されていなくてもよい。
【0059】
さらに、上述の実施形態では、金属板61から3つの側梁11を製造したが、1枚の金属板から製造する側梁は3つに限られない。例えば、1つでもよく、2つでもよく、4つ以上でもよい。
【0060】
また、上述の実施形態では、長尺材を側梁11,12に用いたが、側梁に限られず、様々な部材として利用可能である。
【0061】
さらに、上述の実施形態では、金属板61から同一形状の3つの側梁11を製造したが、1枚の金属板から製造される側梁は異なる形状でもよい。
【0062】
また、上述の実施形態では、金属板61において長尺部材111の外形をロール材の引き抜き方向に延在するように描いたが、長尺部材111の外形をロール材の引き抜き方向に直交する方向に延在させてもよい。
【0063】
また、上述の実施形態では、側梁11,12は鉛直方向断面においてコの字状に形成されているが、鉛直方向断面はコの字状に限られない。例えば、側梁11,12の鉛直方向断面をチャンネル型、H型、Z型等に形成してもよい。
【0064】
また、上述の実施形態では、側梁11と側梁12とが同様な構成であるが、これらの構成が異なっていてもよい。