(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
体積中位径10μm以下の含硫アミノ酸粒子群が硬化パーム油に分散された分散液を、スプレークーリング法で造粒してなり、体積中位径が250〜850μmである、マイクロカプセル粒子群。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<マイクロカプセル粒子群>
本発明のマイクロカプセル粒子群は、体積中位径10μm以下の含硫アミノ酸粒子群が硬化パーム油に分散された分散液を、スプレークーリング法で造粒してなる。スプレークーリング法で造粒されることで、マイクロカプセル粒子群からの含硫アミノ酸の溶出の抑制が良好になる。
マイクロカプセル粒子群の体積中位径は、250〜850μmであり、好ましくは300〜700μm、より好ましくは300μm〜500μmである。前記範囲内とすることにより、マイクロカプセル粒子群からの含硫アミノ酸の溶出の抑制が良好になる。また、前記上限値以下とすることにより、服用しやすくなる。
なお、本明細書において体積中位径とは、体積基準で求めた粒度分布の全体積を100%とした累積体積分布曲線において50%となる点の粒子径、すなわち体積基準累積50%径(D50)を意味する。また、粒子径は、レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置(LS13320型、ベックマン・コールター(株)製)により測定される。
【0010】
[含硫アミノ酸粒子群]
含硫アミノ酸粒子群の体積中位径は、10μm以下であり、5μm以下が好ましく、3μm以下がより好ましい。前記上限値以下であれば、マイクロカプセル粒子群からの含硫アミノ酸の溶出の抑制が良好になる。一方、含硫アミノ酸粒子群の体積中位径の下限については、特に限定はされないが、0.1μm以上が好ましい。前記下限値以上であれば、粉砕時の取り扱いが容易である。
含硫アミノ酸の種類としては、システイン、メチオニン、シスチン、シスタチオニン、タウリン等が挙げられる。中でも、システイン、メチオニンが好ましく、システインが特に好ましい。
マイクロカプセル粒子群中の含硫アミノ酸粒子群の含有割合は、5〜40質量%が好ましく、より好ましくは10〜40質量%、さらに好ましくは20〜30質量%である。前記下限値以上であれば、含硫アミノ酸の溶出の抑制効果が良好になる。一方、前記上限値以下であれば、硬化パーム油に分散した際に分散液の粘度が高くなりすぎないため、スプレークーリングで造粒しやすい。
【0011】
[硬化パーム油]
硬化パーム油としては、ヨウ素価3.0以下のものが好ましい。なお、硬化パーム油のヨウ素価は、日本薬局方16局収載の方法で測定される。
硬化パーム油は、融点が50℃以上であるものが好ましく、より好ましくは55℃以上である。前記下限値以上であれば、マイクロカプセル粒子群からの含硫アミノ酸の溶出の抑制が良好になる。
【0012】
マイクロカプセル粒子群中の硬化パーム油の含有割合は、50〜95質量%が好ましく、より好ましくは60〜90質量%、さらに好ましくは70〜80質量%である。前記下限値以上であれば、含硫アミノ酸粒子群を分散させた際、分散液の粘度が高くなりすぎず、スプレークーリングが行いやすくなる。一方、前記上限値以下であれば、マイクロカプセル粒子群からの含硫アミノ酸の溶出の抑制が良好になる。
【0013】
[任意成分]
マイクロカプセル粒子群は、上記含硫アミノ酸粒子群及び硬化パーム油以外に、任意成分を含んでいてもよい。
該任意成分としては、例えば、ビタミン類、生薬、その他の機能成分、添加剤が挙げられる。
ビタミン類としては、ビタミンA及びその誘導体(レチノール、パルミチン酸レチノール等)、ビタミンB1以外のビタミンB及びその誘導体(チアミン塩酸塩等のビタミンB1、リン酸リボフラビンナトリウム等のビタミンB2、塩酸ピリドキシン等のビタミンB6、ビタミンB12、ニコチン酸アミド、パントテン酸カルシウム等のビタミンB5等)、ビタミンC及びその誘導体(アスコルビン酸等)、ビタミンD及びその誘導体、並びにビタミンE及びその誘導体(トコフェロール、酢酸トコフェロール等)等が挙げられる。
生薬としては、ヨクイニン、キョウニン、ケツメイシ、サンソウニン、トウニン、ニクズク、リュウガンニク、カンゾウ、エゾウコギ、オウセイ、オウギ、クコシ、及びカッカ等が挙げられる。
その他の機能成分としては、ローヤルゼリー、カフェイン、塩化カルニチン、γ−アミノ酪酸、グルコサミン、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、水溶性コラーゲン、及びカプサイシン等が挙げられる。
添加剤としては、各種甘味剤(白糖、エリスリトール、ソルビトール、キシリトール、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、スクラロース等)、保存剤(安息香酸等)、安定化剤(エデト酸ナトリウム、水溶性高分子等)、酸化防止剤、着香剤・香料、清涼化剤、着色剤、pH調整剤、及び緩衝剤等が挙げられる。
これら任意成分の含有割合は、本発明の効果を妨げない範囲で適宜設定することができる。
【0014】
<マイクロカプセル被覆粒子群>
マイクロカプセル被覆粒子群は、上記マイクロカプセル粒子群を融点50℃以上のワックスで被覆したものである。すなわち、該マイクロカプセル被覆粒子群は、マイクロカプセル粒子群中の個々の粒子が融点50℃以上のワックスにより被覆された、粒子の集合体である。
マイクロカプセル粒子群が融点50℃以上のワックスにより被覆されることにより、含硫アミノ酸の溶出がより長期に抑制される。
【0015】
[融点50℃以上のワックス]
融点50℃以上のワックスとしては、融点50℃以上であれば特に制限されず、例えば、高級脂肪酸と高級アルコールとのエステル、植物油やその水添脂、動物脂やその水添脂、脂肪酸、高級アルコール類、又はこれらのうち2種以上の混合物等が挙げられる。
具体的には、植物油やその水添脂としては硬化パーム油、硬化菜種油、動物脂やその水添脂としては硬化豚脂油(融点:55〜60℃)、硬化牛脂油(融点:50〜60℃)、脂肪酸としてはパルミチン酸(融点:63℃)、ステアリン酸(融点:70℃)、高級アルコール類としてはステアリルアルコール(融点:60℃)が挙げられる。中でも、マイクロカプセル粒子群からの含硫アミノ酸の溶出をより長期に抑制できる、硬化パーム油、硬化菜種油、ステアリルアルコールが好ましい。
なお、本明細書における融点は、日本薬局方16局収載の方法により測定される。
【0016】
ワックス被覆率は、30〜100質量部が好ましく、より好ましくは30〜50質量部である。ワックス被覆率が前記下限値以上であれば、液剤中でマイクロカプセル被覆粒子群からの含硫アミノ酸の溶出の抑制がより良好になる。一方、前記上限値以下であれば、服用後胃腸内でマイクロカプセル被覆粒子群から含硫アミノ酸がより放出しやすくなる。
なお、本明細書において「ワックス被覆率」とは、マイクロカプセル被覆粒子群を製造した際に、使用したマイクロカプセル粒子群100質量%に対する、被覆により増加した融点50℃以上のワックスの質量(後述する被覆操作において、使用したワックスの質量から被覆に使われなかったワックスの質量を差引いた質量に等しい。)の割合(質量%)である。
融点50℃以上のワックスには、任意成分が混在していてもよい。該任意成分としては、上述のマイクロカプセル粒子群における任意成分と、同じものが挙げられる。
【0017】
[マイクロカプセル被覆粒子群の体積中位径]
マイクロカプセル被覆粒子群の体積中位径は、500〜2000μmが好ましい。前記下限値以上であれば、マイクロカプセル被覆粒子群からの含硫アミノ酸の溶出の抑制が良好になる。一方、前記上限値以下であれば、服用性が良好になる。
【0018】
<マイクロカプセル粒子群の製造方法>
マイクロカプセル粒子群の製造方法は、体積中位径10μm以下の含硫アミノ酸粒子群を硬化パーム油に分散して分散液を得る分散工程と、該分散液をスプレークーリング法で造粒してマイクロカプセル粒子群を得る造粒工程と、を有する。
【0019】
[分散工程]
分散工程は、体積中位径10μm以下の含硫アミノ酸粒子群を硬化パーム油に分散して分散液を得る工程である。
体積中位径10μm以下の含硫アミノ酸粒子群は、市販されているものでもよいし、体積中位径10μm超の含硫アミノ酸粒子群を粉砕処理して得たものでもよい。
粉砕処理して得る場合の粉砕方法としては、ピンミル法、ジェットミル法、ビーズミル法等が挙げられる。中でも、処理速度と粉砕能力の点から、ピンミル法、ジェットミル法が好ましい。また、粉砕方式としては、マイクロカプセル粒子群からの含硫アミノ酸の溶出の抑制をより良好にする点から、乾式が好ましい。
粉砕処理は、これらの粉砕方法のうち1種のみ行ってもよく、2種以上を組合せて行ってもよい。
【0020】
分散液は、融解した硬化パーム油に含硫アミノ酸粒子群を加え、スターラー等を用いて撹拌することにより得られる。
硬化パーム油の融解は、例えば、使用する硬化パーム油の融点よりも10〜30℃高い温度まで加熱して行えばよい。硬化パーム油の融解における加熱温度が前記下限値以上であれば、硬化パーム油を充分に融解できる。一方、前記上限値以下であれば、硬化パーム油の分解を防げる。
【0021】
分散液中の含硫アミノ酸の量は、5〜40質量%が好ましい。分散液中の含硫アミノ酸の量が前期下限値以上であれば、含硫アミノ酸の配合量が少量になりすぎず、配合ぶれを抑えることができる。一方、前記上限値以下であれば、硬化パーム油に分散した際に分散液の粘度が高くなりすぎないため、スプレークーリングで造粒しやすくなる。
【0022】
分散液中の硬化パーム油の量は、50〜95質量%が好ましく、より好ましくは60〜95質量%である。分散液中の硬化パーム油の量が前記下限値以上であれば、含硫アミノ酸粒子群を分散させた際、分散液の粘度が高くなりすぎず、スプレークーリングが行いやすくなる。一方、前記上限値以下であれば、含硫アミノ酸の配合量が少量になりすぎず、配合ぶれを抑えることができる。
必要に応じて、分散液に任意成分を配合させることができる。
【0023】
[造粒工程]
造粒工程は、分散工程で得られた分散液をスプレークーリング法で造粒してマイクロカプセル粒子群を得る工程である。
スプレークーリング法とは、分散工程で得られた分散液を、噴霧しつつ、冷却凝固させることにより造粒する方法のことである。スプレークーリング法は、医薬品の製造において通常用いられる噴霧冷却機、例えば、OUDT−25型(大川原化工機社製)等を用いて行えばよい。
【0024】
スプレークーリング法においては、例えば、噴霧速度(噴霧液圧力)、冷却温度、噴霧方式等を調節することにより、マイクロカプセル粒子群の体積中位径、粒子の真球度等を制御することができる。
噴霧速度は、10〜500kg/時間が好ましい。噴霧速度が前記下限値以上であれば、マイクロカプセル粒子群の体積中位径を250μm以上にすることができる。一方、前記上限値以下であれば、マイクロカプセル粒子群の体積中位径を850μm以下にすることができる。なお、噴霧速度は、噴霧液圧力を調節することにより制御できる。例えば、マイクロカプセル粒子群の体積中位径を大きくするには、噴霧速度を前記範囲内で大きくすればよい。
冷却温度は、5〜50℃が好ましく、より好ましくは10〜40℃である。冷却温度が前記下限値以上であれば、ノズルのつまりの発生を抑えることができる。一方、前記上限値以下であれば、硬化できなかった噴霧液が装置に付着することを防げる。
噴霧方式は、マイクロカプセル粒子群からの含硫アミノ酸の溶出の抑制をより良好にする点から、加圧噴霧が好ましい。
【0025】
スプレークーリング法により得たマイクロカプセル粒子群は、その集合体の体積中位径が250〜850μmの範囲にあれば、そのまま本発明のマイクロカプセル粒子群とすることができる。
また、マイクロカプセル粒子群の体積中位径を所望の粒度分布にするために、医薬の製造で通常用いられる篩機を使用して、篩分してもよい。
【0026】
<マイクロカプセル被覆粒子群の製造方法>
マイクロカプセル被覆粒子群の製造方法は、上述のマイクロカプセル粒子群の製造方法における分散工程と造粒工程の他、上記マイクロカプセル粒子群を上記融点50℃以上のワックスで被覆する被覆工程を有する。
【0027】
[被覆工程]
被覆工程は、造粒工程で得られたマイクロカプセル粒子群を、融点50℃以上のワックスによって被覆する工程である。該被覆工程により、マイクロカプセル粒子群中の個々の粒子が融点50℃以上のワックスにより被覆された、粒子の集合体が得られる。
被覆方法としては、特に制限されず、例えば、メカノケミカル法、転動流動法、溶解析出法等が挙げられる。
ここで溶解析出法とは、以下の分散操作と被覆操作とを有する被覆方法である。
【0028】
(分散操作)
分散操作は、融点50℃以上のワックスが有機溶媒に加熱溶融された被覆液に、前記の溶融した融点50℃以上のワックスが析出し始める温度で、マイクロカプセル粒子群を分散する分散操作である。
被覆液の調整方法は、有機溶媒に融点50℃以上のワックスを加え、加熱し、ワックスの融点以上に加熱することで溶融する。必要に応じて、被覆液に任意成分を配合させてもよい。
有機溶媒としては、常温(25℃)では融点50℃以上のワックスを溶解せず、加熱することにより溶解する有機溶媒を用いる。そのような有機溶媒としては、例えば、エタノール、メタノール、イソプロパノール、アセトン、クロロホルム、ジエチルエーテル等が挙げられる。
【0029】
被覆液中の融点50℃以上のワックスの量は、1〜10質量%が好ましく、より好ましくは1〜5質量%である。被覆液中の融点50℃以上のワックスの量が前記下限値以上であれば、単回操作でのワックス被覆率を向上させることができる。一方、前記上限値以下であれば、不溶分として残るワックスを減らすことができる。
ここで、「単回操作」とは、分散操作から後述の被覆操作までの操作を一回行うことを意味する。
【0030】
分散操作において、分散するマイクロカプセル粒子群と被覆液との質量比(マイクロカプセル粒子群/被覆液)は、1/20〜1/4が好ましい。マイクロカプセル粒子群/被覆液が前記下限値以上であれば、単回操作で処理できる量を向上させることができる。一方、前記上限値以下であれば、単回操作でのワックス被覆率を向上させることができる。
【0031】
分散操作において、溶融した融点50℃以上のワックスが析出し始める温度は、用いるワックスごとに異なる。また、用いる有機溶媒によって、必ずしも融点が、溶融した融点50℃以上のワックスが析出し始める温度になるとは限らない。
分散操作においては、溶融した融点50℃以上のワックスが析出し始める温度が具体的に何℃であるかは重要ではなく、溶融した融点50℃以上のワックスが析出し始めたことを確認した時点の温度で被覆液を維持することが重要である。その温度で被覆液を維持している間にマイクロカプセル粒子群を充分に分散する。
【0032】
(被覆操作)
被覆操作は、マイクロカプセル粒子群が分散された前記被覆液を冷却し、前記マイクロカプセル粒子群を融点50℃以上のワックスで被覆する操作である。
冷却することにより、ワックスの析出が進み、マイクロカプセル粒子群中の個々の粒子が析出したワックスにより被覆される。このとき、被覆に使われなかったワックスは細かい粒子になる。その被覆に使われなかったワックスの粒子を取り除くため、例えば、目開き106μmのメッシュでろ過し、用いた有機溶媒にて洗浄を行う。その後、25℃恒温槽にて風乾し、本発明のマイクロカプセル被覆粒子群を得る。
【0033】
被覆操作での冷却温度は、マイクロカプセル粒子群を分散する際に維持した被覆液の温度から、5℃以上下げればよく、好ましくは、10℃以上である。冷却温度を5℃以上下げれば、単回操作でのワックス被覆率が向上する。
【0034】
被覆操作により得た被覆粒子は、そのまま本発明のマイクロカプセル被覆粒子群とすることができる。
また、マイクロカプセル被覆粒子群が、単回操作で所望のワックス被覆率、例えば、マイクロカプセル粒子群100質量部に対するワックスの質量の割合が30〜100質量部の範囲内に達しない場合、及び体積中位径、例えば、500〜2000μmの範囲内に達しない場合には、所望のワックス被覆率及び体積中位径になるまで、上述の分散操作と被覆操作を繰り返し行えばよい。
また、マイクロカプセル粒子群の体積中位径を所望の粒度分布とするために、医薬の製造で通常用いられる篩機を使用して、篩分してもよい。
【0035】
<経口液剤>
本発明の経口液剤は、上述のマイクロカプセル粒子群及びマイクロカプセル被覆粒子群のうちいずれか一方若しくは両方を含有する。
経口液剤としては、例えば、水を溶媒とするドリンク剤、シロップ剤等が挙げられる。
【0036】
[配合量]
経口液剤中のマイクロカプセル粒子群及びマイクロカプセル被覆粒子群のうちいずれか一方若しくは両方の配合量としては、0.1〜10質量%が好ましい。前記下限値以上であれば、外観的に分散均一性が保たれる。一方、前記上限値以下であれば、服用性が良好になる。
【0037】
[任意成分]
経口液剤は、マイクロカプセル粒子群又はマイクロカプセル被覆粒子群からの含硫アミノ酸の溶出を抑制する効果を損なわない範囲で、既知の薬効成分や液剤に通常配合する任意成分を含ませてもよい。
任意成分としては、例えば、ビタミン類、生薬、その他の機能成分、添加剤が挙げられる。
ビタミン類としては、ビタミンA及びその誘導体(レチノール、パルミチン酸レチノール等)、ビタミンB1以外のビタミンB及びその誘導体(チアミン塩酸塩等のビタミンB1、リン酸リボフラビンナトリウム等のビタミンB2、塩酸ピリドキシン等のビタミンB6、ビタミンB12、ニコチン酸アミド、パントテン酸カルシウム等のビタミンB5等)、ビタミンC及びその誘導体(アスコルビン酸等)、ビタミンD及びその誘導体、並びにビタミンE及びその誘導体(トコフェロール、酢酸トコフェロール等)等が挙げられる。
生薬としては、ヨクイニン、キョウニン、ケツメイシ、サンソウニン、トウニン、ニクズク、リュウガンニク、カンゾウ、エゾウコギ、オウセイ、オウギ、クコシ、及びカッカ等が挙げられる。
その他の機能成分としては、ローヤルゼリー、カフェイン、塩化カルニチン、γ−アミノ酪酸、グルコサミン、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、水溶性コラーゲン、及びカプサイシン等が挙げられる。
添加剤としては、各種甘味剤(白糖、果糖ブドウ糖液糖、ハチミツ、エリスリトール、ソルビトール、キシリトール、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、スクラロース等)、保存剤(安息香酸等)、安定化剤(エデト酸ナトリウム、水溶性高分子等)、可溶化剤(ノニオン界面活性剤等)、溶剤(エタノール、グリセリン等)、ポリオール類(プロピレングリコール、グリセリン、ポリエチレングリコール等)、酸化防止剤、着香剤・香料、清涼化剤、着色剤、pH調整剤、緩衝剤、及び水等が挙げられる。
これら任意成分の含有割合は、本発明の効果を妨げない範囲で適宜設定することができる。
【0038】
以上のように、本発明の構成を採用すれば、システイン、メチオニン等の含硫アミノ酸が液剤中に溶出しにくい、マイクロカプセル粒子群及びマイクロカプセル被覆粒子群が得られる。
これにより、該マイクロカプセル粒子群及び該マイクロカプセル被覆粒子群のうちいずれか一方若しくは両方を経口液剤の成分として用いれば、(1)服用の際、システイン、メチオニン等の含硫アミノ酸に特有の不快臭、不快味を回避することができる。また、(2)経口液剤中におけるシステイン、メチオニン等の含硫アミノ酸の安定性が高められ、(3)システイン、メチオニン等の含硫アミノ酸が他成分と反応してしまうことを防ぐこともできるため、システイン、メチオニン等の含硫アミノ酸を含有する経口液剤の保存性を高めることができる。
【実施例】
【0039】
以下に実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0040】
(実施例1)
「マイクロカプセル粒子群の製造」
システイン(日本プロテイン(株)製『L−システイン 日本薬局方「製造専用」』)を、ピンミル粉砕機(パウレック(株)製)を用いて乾式粉砕し、体積中位径3μmの含硫アミノ酸粒子群を得た。
硬化パーム油(理研ビタミン(株)製「スプレーファットPM」、融点:58℃)80質量部を80℃で融解し、ここに前記含硫アミノ酸粒子群20質量部を分散させて分散液を得た(分散工程)。この分散液における含硫アミノ酸粒子群と硬化パーム油との配合割合は、マイクロカプセル粒子群中の各成分の含有割合が、システイン20質量%、硬化パーム油80質量%となる割合である。
冷却噴霧機「OUDT−25型」(大川原化工機社製)を用いて、スプレークーリング法(噴霧液圧力0.15MPa)により、該分散液を造粒して、マイクロカプセル粒子群を得た(造粒工程)。得られたマイクロカプセル粒子群は、体積中位径が350μmであった。
【0041】
「評価方法」
得られたマイクロカプセル粒子群のうちから300mgを計りとり、経口液剤100mL(100mL中の組成:グルクロノラクトン1000mg、残部水)に加え、密栓後、40℃で1ヶ月間保存した。
保存の前後において、マイクロカプセル粒子群中の含硫アミノ酸量を定量した。定量手順としては、まず、定量分析用ろ紙「No.5C」(アドバンテック社製)を用いたろ過により、経口液剤からマイクロカプセル粒子群を分離・洗浄し、40℃で1時間乾燥させた。次いで、該マイクロカプセル粒子群にクロロホルムを加え、硬化パーム油を溶解させた。次いで、アスコルビン酸を5質量%含む水50mLを添加し、よく混合し、静置して、水相と油相に相分離させた。HPLC((株)島津製作所社製)を用いて、水相に分配した含硫アミノ酸量を定量した。保存前のマイクロカプセル粒子群中の含硫アミノ酸量を「A」、保存後のマイクロカプセル粒子群中の含硫アミノ酸量を「B」として、下式により含硫アミノ酸残存率(%)を算出した。
含硫アミノ酸残存率(%)=(B/A)×100
実施例1の製造条件と評価結果を以下の表1に示す。なお、含硫アミノ酸残存率は、値が高いほど、保存中に含硫アミノ酸が経口液剤に溶出した量が少ないことを意味する。
【0042】
【表1】
【0043】
(実施例2,3)
実施例2,3では、乾式粉砕を表1に示す体積中位径の含硫アミノ酸粒子群となるように行った以外は、上記実施例1と同様にしてマイクロカプセル粒子群を得、評価を行った。
【0044】
(実施例4〜8)
実施例4〜8では、スプレークーリング法において、噴霧液圧力をそれぞれ0.25、0.2.0.1、0.05、0.02MPaに変更して製造を行うことで、表1に示す体積中位径のマイクロカプセル粒子群を得た以外は、上記実施例1と同様にしてマイクロカプセル粒子群を得、評価を行った。
【0045】
(実施例9〜12)
実施例9〜12では、マイクロカプセル粒子群中のシステインと硬化パーム油の含有割合を表1に示すように配合を行った以外は、上記実施例1と同様にしてマイクロカプセル粒子群を得、評価を行った。
【0046】
(実施例13,14)
実施例13,14では、マイクロカプセル粒子群中のシステインの含有割合を表1に示すように減じ、代わりに、硬化菜種油(理研ビタミン(株)製「スプレーファットNR−100」、融点:68℃)を表1に示す含有割合で加えた以外は、上記実施例1と同様にしてマイクロカプセル粒子群を得、評価を行った。
【0047】
(実施例15,16)
実施例15,16では、マイクロカプセル粒子群中の硬化パーム油の含有割合を表1に示すように減じ、代わりに、硬化菜種油を表1に示す含有割合で加えた以外は、上記実施例1と同様にしてマイクロカプセル粒子群を得、評価を行った。
【0048】
(実施例17)
実施例17では、表1に示すように、システインの代わりにメチオニン(味の素(株)製『DL−メチオニン』)を用いた以外は、上記実施例1と同様にしてマイクロカプセル粒子群を得、評価を行った。
以上の実施例2〜17の評価結果を、表1に示す。
また、走査型電子顕微鏡((株)日立製作所製)により観察した実施例1のマイクロカプセル粒子群中の粒子の像を、
図1に示す。
【0049】
(比較例1)
比較例1では、乾式粉砕を以下の表2に示す体積中位径の含硫アミノ酸粒子群となるように行った以外は、上記実施例1と同様にしてマイクロカプセル粒子群を得、評価を行った。
【0050】
【表2】
【0051】
(比較例2,3)
比較例2,3では、スプレークーリング法により表2に示す体積中位径のマイクロカプセル粒子群を得た以外は、上記実施例1と同様にしてマイクロカプセル粒子群を得、評価を行った。
【0052】
(比較例4,5)
比較例4,5では、表2に示すように、硬化パーム油の代わりに、それぞれ硬化菜種油又は硬化ひまし油(伊藤製油(株)製「ヒマシ硬化油A」、融点:84〜87℃)を用いた以外は、上記実施例1と同様にしてマイクロカプセル粒子群を得、評価を行った。
【0053】
(比較例6,7)
比較例6,7では、スプレークーリング法の代わりに、表2に示す流動層造粒法又はコーミル粉砕法を採用した以外は、上記実施例1と同様にしてマイクロカプセル粒子群を得、評価を行った。
【0054】
比較例6の流動層造粒法は、「スパイラーフローSFC−15型」(フロイント(株)製)を用いて、硬化パーム油80g及び体積中位径3μmの含硫アミノ酸粒子群20gを55℃で30分間混合し、マイクロカプセル粒子群を得た。
比較例7のコーミル粉砕法は、「コーミル197型」((株)パウレック社製)を用い、硬化パーム油80質量部を80℃で融解し、ここに体積中位径3μmの含硫アミノ酸粒子群20質量部を分散させて分散液を得た。この分散液を金属バット上で冷却固化した後に、「スクリーン62G」((株)パウレック社製)を用い粗粉砕を行い、「スクリーン39R」((株)パウレック社製)も用いて粉砕を行い、マイクロカプセル粒子群を得た。
以上の比較例1〜7の評価結果を、表2に示す。
また、走査型電子顕微鏡により観察した比較例7のマイクロカプセル粒子群中の粒子の像を、
図2に示す。
【0055】
表1,2に示すように、実施例1〜3では、体積中位径がそれぞれ3、5、10μmの含硫アミノ酸粒子群を用いて得たマイクロカプセル粒子群の含硫アミノ酸残存率が、それぞれ95%、87%、75%であることが示された。
これに対し、比較例1では、体積中位径が20μmの含硫アミノ酸粒子群を用いて得たマイクロカプセル粒子群の含硫アミノ酸残存率は、30%と低かった。
このことから、含硫アミノ酸粒子群の体積中位径を10μm以下にすれば、マイクロカプセル粒子群からのシステインの溶出をより抑制できることが分かる。
【0056】
実施例4〜8では、体積中位径が250〜850μmの範囲内のマイクロカプセル粒子群の含硫アミノ酸残存率が、72%以上であることが示された。特に、マイクロカプセル粒子群の体積中位径が300〜700μmであれば、含硫アミノ酸残存率は82%以上となり、さらに、300〜500μmとすれば、92%以上と顕著に高くなった。
これに対し、比較例2,3では、体積中位径がそれぞれ200、1000μmのマイクロカプセル粒子群の含硫アミノ酸残存率がそれぞれ42%、64%と低かった。
このことから、マイクロカプセル粒子群の体積中位径を250〜850μmにすることで、マイクロカプセル粒子群からのシステインの溶出がより抑制されることが分かる。
【0057】
実施例9〜12では、システインの含有割合を増加させ、硬化パーム油の含有割合を減少させたマイクロカプセル粒子群の含硫アミノ酸残存率が、71%以上であることが示された。
また、実施例13,14では、システインの含有割合を減少させ、硬化菜種油を加えた実施例13,14のマイクロカプセル粒子群の残存率が、70%以上であることが示された。
また、実施例15,16では、硬化パーム油を減少させ、硬化菜種油を加えたマイクロカプセル粒子群の含硫アミノ酸残存率が、71%以上であることが示された。
これに対し、比較例4,5では、それぞれ硬化菜種油又は硬化ひまし油を用いて得たマイクロカプセル粒子群の含硫アミノ酸残存率は、それぞれ21%、34%と低かった。
これらの結果から、他の硬化油が存在していても、少なくとも硬化パームを充分に含ませていればマイクロカプセル粒子群からの含硫アミノ酸の溶出を顕著に抑制できることが分かる。
【0058】
システインの代わりにメチオニンを用いた実施例17のマイクロカプセル粒子群のメチオニン残存率は、98%と顕著に高かった。
このことから、システインだけでなくメチオニン等の他の含硫アミノ酸も、実施例1と同様の方法でマイクロカプセル粒子群を製造すれば、マイクロカプセル粒子群からの溶出が抑えられることが示唆される。
【0059】
(実施例18〜20)
「マイクロカプセル被覆粒子群の製造」
実施例18〜20では、実施例1で得たマイクロカプセル粒子群を、硬化パーム油により被覆した(被覆工程)。各実施例においては、実施例1で得たマイクロカプセル粒子群300mg(100質量部)に対して、それぞれ被覆した硬化パーム油が90mg(30質量部)、120mg(40質量部)、300mg(100質量部)となるように行った。
【0060】
被覆方法は、以下の分散操作と被覆操作により行った。
[分散操作]
まず、硬化パーム油を、無水エタノール(会津薬品工業(株)製)に分散し、60℃に保温して、硬化パーム油の被覆液を作製した。次いで、被覆液を、硬化パーム油が析出する温度(50℃)に維持した。次いで、実施例1で得たマイクロカプセル粒子群を被覆液に分散させた。
[被覆操作]
次いで、被覆液を撹拌しながら25℃まで冷却することで硬化パーム油を析出させて、マイクロカプセル被覆粒子群を得た。
【0061】
「評価」
実施例18〜20で得たマイクロカプセル被覆粒子群について、実施例1と同様にして、含硫アミノ酸残存率の評価を行った。また、実施例1の評価方法における40℃での保存期間を3ヶ月間にした評価も行った。
また、実施例19で得られたマイクロカプセル被覆粒子群の粒子について、光学顕微鏡(キーエンス社製)により得られた像を、
図3に示す。
【0062】
(実施例21,22)
実施例21,22では、被覆の際に用いた硬化パーム油の代わりに硬化菜種油、ステアリルアルコール(高級アルコール工業(株)製「ハイノール18SS」)を用いた以外は、実施例19と同様にしてマイクロカプセル被覆粒子群を得、評価を行った。
【0063】
(実施例23〜25)
実施例23〜25では、実施例18〜20の被覆方法に代えて、それぞれメカノケミカル法、転動流動法又はスプレークーリング法を採用した以外は、実施例19と同様にしてマイクロカプセル被覆粒子群を得、評価を行った。
【0064】
実施例23では、メカノケミカル法、すなわち、ハイスピードミキサー5L(深江パウテック社製)を用い、硬化パーム油120gとマイクロカプセル粒子群300gを、撹拌羽(直径14cm、高さ2cm)を400rpmで、チョッパー羽(直径5cm、高さ2cm)を2000rpmで回転させ、55℃で30分間処理する方法により、マイクロカプセル被覆粒子群を得た。
実施例24では、転動流動法、すなわち、転動流動コーティング装置「MP−01型」((株)パウレック製)を用い、硬化パーム油120gとマイクロカプセル粒子群300gを、撹拌羽(直径15cm、高さ1cm)を400rpmで回転させ、吸気風量0.3m3/分、55℃で30分間処理する方法により、マイクロカプセル被覆粒子群を得た。
実施例25では、冷却噴霧機「OUDT−25型」(大川原化工機社製)を用い、溶融した硬化パーム油120gにマイクロカプセル粒子群300gを加え、スプレークーリング法(噴霧液圧力0.15MPa)により、マイクロカプセル被覆粒子群を得た。
【0065】
実施例1,17〜25の被覆条件と評価結果を表3に示す
なお、表3中の被覆条件において、「融点50℃以上のワックスの被覆量」とは、マイクロカプセル被覆粒子群を製造した際に、使用したマイクロカプセル粒子群300mgあたりの、被覆により増加した融点50℃以上のワックスの質量(被覆操作において、使用したワックスの質量から被覆に使われなかったワックスの質量を差引いた質量に等しい。)である。また、被覆方法において、「MD法」は溶融析出法、「MC法」はメカノケミカル法、「TF法」は転動流動法、「SC法」はスプレークーリング法を意味する。
【0066】
【表3】
【0067】
表3に示すように、硬化パーム油により被覆した実施例18〜25のマイクロカプセル被覆粒子群を40℃で1ヶ月間保存した場合における含硫アミノ酸残存率は90%以上であり、実施例1,17と同程度であった。これは、1ヶ月間の保存期間であれば、マイクロカプセル粒子群からのシステインの溶出抑制に対し、硬化パーム油による被覆の有無による影響が少ないことを示している。
一方、硬化パーム油により被覆していない実施例1,17のマイクロカプセル粒子群を40℃で3ヶ月間保存した場合における含硫アミノ酸残存率は、75%であった。これに対し、硬化パーム油等の融点50℃以上のワックスにより被覆した実施例18〜25の3ヶ月後の含硫アミノ酸残存率は、85%以上であった。特に、被覆方法として実施例18〜20の方法を採用した場合は、95%であった。
これらの結果から、硬化パーム油等の融点50℃以上のワックスによる被覆を行えば、マイクロカプセル被覆粒子群からのシステインの溶出をより長期に抑制できることが分かる。被覆方法として実施例18〜20の方法を採用すれば、その効果が特に顕著であることが分かる。