(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
[第1実施形態]
本発明にかかる棒鋼受渡装置の第1実施形態について、
図1〜
図6を参照しつつ説明する。
【0012】
(全体構成)
図1に示す棒鋼受渡装置1は、不図示の搬送ラインから搬送されてくる熱間圧延された高温の棒鋼を受け取って、冷却床100の所定の溝に渡すための装置である。棒鋼受渡装置1は、主に、冷却床100の長手方向(
図1の左右方向)に沿って延びるシャフト10と、搬送ラインから棒鋼を受け取る棒鋼保持部20と、棒鋼保持部20を揺動させる揺動機構30と、棒鋼保持部20から受け取った棒鋼を冷却床100へ案内する案内部40と、シャフト10を駆動するための駆動機構50と、を具備して構成される。
【0013】
冷却床100は、
図2に示すように、棒鋼Sを受けるV状の溝が多数形成された固定レイク110と、固定レイク110の下方から上方にわたって円運動する可動レイク120とを有する。可動レイク120が円運動すると、固定レイク110の溝内にある棒鋼Sが可動レイク120により掬い取られて、下流側(
図2の左側)に順次送られる。こうして、棒鋼Sが下流側に送られていく過程で、高温の棒鋼Sは冷却される。
【0014】
(シャフト)
図1に示すように、シャフト10は、その全長が冷却床100の全長とほぼ同じ長さとなっており、詳細には複数のシャフトをカップリングで連結することで構成されている。シャフト10の軸方向には、複数の揺動機構30を介して棒鋼保持部20が連結されるとともに、シャフト10を軸周りに回転させる駆動機構50が複数設けられている。そして、駆動機構50がシャフト10を軸周りに回転させることで、最終的に棒鋼保持部20が上下方向に揺動する構成となっている。
【0015】
(棒鋼保持部)
棒鋼保持部20は、冷却床100の長手方向に沿って延びる樋状の部材であり、冷却床100の長手方向に連続的に設けられる。
図2に示すように、本実施形態では、棒鋼保持部20が上下方向に4段、そして各段に2つずつ設けられる構成となっている。以降、必要に応じて、各段に設けられている2つの棒鋼保持部20のうち、揺動機構30の先端側(
図2の左側)かつ下方に位置しているものを第1棒鋼保持部20Aと称し、揺動機構30の基端側(
図2の右側)かつ上方に位置しているものを第2棒鋼保持部20Bと称する。なお、各段の第1棒鋼保持部20Aおよび第2棒鋼保持部20Bは、同じ揺動機構30によって揺動させられる。
【0016】
棒鋼保持部20は、棒鋼Sを受け入れ可能な樋状の部材となっており、冷却床100の長手方向に直交する断面の形状は半円状、逆三角形状、あるいはこれらの中間的な形状等とすることができる。棒鋼保持部20の上部は開放されており、上部開口21aが形成されている。また、棒鋼保持部20の両側部(
図2における紙面垂直方向の両端部)も開放されて、側部開口21bが形成されており、不図示の搬送ラインより搬送されてきた棒鋼Sを、側部開口21bから受け入れるようになっている。棒鋼保持部20の上方には、不図示の装置フレームに固定された蓋部材21が設けられている。そして、棒鋼保持部20が蓋部材21に当接している状態では、上部開口21aは蓋部材21によって閉塞される。また、棒鋼保持部20が蓋部材21から離間することで、上部開口21aは開放される。
【0017】
(揺動機構)
揺動機構30は、シャフト10の軸周りの回転動作を、棒鋼保持部20の上下方向への揺動動作に変換する機構である。
図2に示すように、揺動機構30は、基端部がシャフト10と一体回転するように連結される第1アーム31と、第1アーム31の先端部と第2アーム33の基端部とを連結する連結ロッド32と、支軸34を中心に揺動する第2アーム33と、を備える。第2アーム33の先端側にはアーム部33aが延びており、分岐したアーム部33aの先端に第1棒鋼保持部20Aおよび第2棒鋼保持部20Bがそれぞれ取り付けられている。
【0018】
このような構成によれば、シャフト10が軸周りの回転動作を行うと、この回転動作とともに第1アーム31がシャフト10を中心に揺動し、それによって連結ロッド32が上下方向に揺動する。その結果、第2アーム33が支軸34を中心に揺動し、最終的に棒鋼保持部20が上下方向に揺動する。
【0019】
(案内部)
案内部40は、棒鋼保持部20から棒鋼Sを受け取り、その棒鋼Sを冷却床100の所定の溝へと案内する部位である。
図2に示すように、案内部40は、傾斜面および鉛直面を有するシュート41と、下端部が冷却床100の近傍に位置するように上下方向に延設されたガイド42、43と、を備える。
【0020】
シュート41は、棒鋼保持部20がシュート41の傾斜面よりも下方に揺動する際に、棒鋼保持部20に保持されている棒鋼Sを上部開口21aから押し出して、シュート41の傾斜面を転がさせる。上から1段目、2段目の棒鋼保持部20から送り出された棒鋼Sは、シュート41の傾斜面を転がった後、シュート41の鉛直面とガイド42との間を落下し、固定レイク110の溝110aで受け取られる。一方、3段目、4段目の棒鋼保持部20から送り出された棒鋼Sは、シュート41の傾斜面を転がった後、シュート41の鉛直面とガイド43との間を落下し、固定レイク110の溝110bで受け取られる。
【0021】
(駆動機構)
駆動機構50は、シャフト10に軸周りの回転動作をさせるための機構である。
図3に示すように、駆動機構50は、電動モータ51と、電動モータ51からの出力を減速する減速機52と、減速機52からの出力をシャフト10の軸周りの回転動作に変換する出力変換部60と、を備える。電動モータ51および減速機52は、諸条件に応じて適当なものを選択することができるが、例えば電動モータ51を回転式モータとし、減速機52を減速比の大きいウォーム減速機とすることができる。
【0022】
出力変換部60は、減速機52からの出力により回転するホイール61と、ホイール61の回転中心61aから偏心した位置に取り付けられるクランク62と、クランク62に連結される揺動ロッド63と、揺動ロッド63に連結されるエアシリンダ64と、ピン65を介して基端部がエアシリンダ64と連結されるとともに、先端部がシャフト10と一体回転するように連結されるレバー66と、を備える。
【0023】
このような構成によれば、電動モータ51が作動すると、減速機52で減速された電動モータ51からの出力によりホイール61が回転し、それによって揺動ロッド63が上下方向に揺動する。その結果、レバー66がシャフト10を中心に揺動し、その際に、レバー66の先端部によってシャフト10が軸周りに回転させられる。
【0024】
(棒鋼の受渡動作)
次に、
図4A〜
図4Cを参照しつつ、棒鋼Sの受渡動作について説明する。なお、
図4B、
図4Cにおいては、図を明瞭にするため、シュート41を破線で表示している。
【0025】
図4Aは、棒鋼保持部20の上部が蓋部材21に当接しており、上部開口21aが蓋部材21によって閉塞されている状態を示す。この状態で、不図示の搬送ラインより棒鋼Sが搬送され、棒鋼保持部20が側部開口21bを介して棒鋼Sを受け取る。このように、搬送ラインから棒鋼Sを受け取る、
図4Aに示す棒鋼保持部20の位置を、以降「受取位置」と称する。
【0026】
棒鋼保持部20が下方に揺動して蓋部材21から離間すると、上部開口21aが開放され、
図4Bに示すように、第1棒鋼保持部20Aの上部開口21aがシュート41の傾斜面とほぼ面一となる。このとき、第1棒鋼保持部20A内の棒鋼Sは、シュート41によって押し出され、上部開口21aを介して第1棒鋼保持部20Aからシュート41へと送り出される。このように、第1棒鋼保持部20Aから棒鋼Sが送り出される、
図4Bに示す棒鋼保持部20の位置を、以降「第1送出位置」と称する。
【0027】
さらに棒鋼保持部20が下方に揺動すると、
図4Cに示すように、第2棒鋼保持部20Bの上部開口21aがシュート41の傾斜面とほぼ面一となる。このとき、第2棒鋼保持部20B内の棒鋼Sは、シュート41によって押し出され、上部開口21aを介して第2棒鋼保持部20Bからシュート41へと送り出される。このように、第2棒鋼保持部20Bから棒鋼Sが送り出される、
図4Cに示す棒鋼保持部20の位置を、以降「第2送出位置」と称する。
【0028】
装置全体としては、次のようにして、棒鋼Sの受け渡しが行われる。
図2に示すように4段設けられた棒鋼保持部20のうち、まず、上から1段目と3段目の棒鋼保持部20に搬送ラインより棒鋼Sが搬送される。1段目と3段目の棒鋼保持部20の揺動が開始されると、まず第1棒鋼保持部20A内の棒鋼Sが送り出されて、固定レイク110の溝110a、110bにてそれぞれ受け取られる。続いて、第2棒鋼保持部20B内の棒鋼Sが送り出されて、固定レイク110の溝110a、110bにてそれぞれ受け取られる。なお、第2棒鋼保持部20Bから送り出された棒鋼Sを受け取る前に、溝110a、110b内の棒鋼Sは可動レイク120によって下流側に送られて、溝110a、110bは空き状態となっているものとする。
【0029】
このように1段目と3段目の棒鋼保持部20から棒鋼Sを送り出している間に、2段目と4段目の棒鋼保持部20に搬送ラインより棒鋼Sが搬送される。そして、1段目と3段目の棒鋼保持部20から棒鋼Sが送り出されると、2段目と4段目の棒鋼保持部20の揺動が開始され、1段目と3段目と同様に棒鋼Sを送り出す動作が行われる。このように、1段目および3段目の組と、2段目および4段目の組とで、交互に受渡動作が繰り返されることで、棒鋼Sを連続的に冷却床100へと送ることができる。
【0030】
(電動モータのトリップ防止)
以上説明してきたように、電動モータ51を作動させると、その出力が、駆動機構50、シャフト10、揺動機構30を経由して棒鋼保持部20に伝達され、棒鋼保持部20は受取位置、第1送出位置、第2送出位置の各位置にわたって揺動を繰り返すことになる。このとき、受取位置の棒鋼保持部20は、蓋部材21に押し付けられることによって、確実に蓋部材21に当接するようになっている。しかしながら、棒鋼保持部20が蓋部材21に押し付けられる状態では、蓋部材21からの反力により電動モータ51の負荷が大きくなり、電動モータ51がトリップするおそれがある。
【0031】
そこで、本実施形態では、電動モータ51のトリップを防止するため、駆動機構50にクッション部材としてエアシリンダ64を設けている。
図5に示すように、エアシリンダ64は、駆動機構50の揺動ロッド63に連結されるロッド641と、ロッド641と連結されるピストン642と、ピストン642に対してロッド641の反対側に流体室643aが形成されるシリンダ本体643と、を有している。なお、シリンダ本体643は、ロッド641とは反対側の端部において、レバー66に連結されている。
【0032】
このようなエアシリンダ64を設けることで、蓋部材21から反力を受けたときには、ピストン642が流体室643aに押し込まれることで反力を吸収することができ、電動モータ51のトリップを防止することが可能となっている。
【0033】
(棒鋼保持部の揺れ抑制)
上述のように、クッション部材としてのエアシリンダ64を設けることで、電動モータ51のトリップを防止することはできる。しかし、流体室643aへの供給圧力にもよるが、エアシリンダ64を設けることで、棒鋼保持部20が揺れやすくなってしまう。例えば、棒鋼Sを送り出すときに棒鋼保持部20が大きく揺れていると、棒鋼Sが曲がった状態で送り出されるなど、適切な送り出しができなくなるおそれがある。そこで、本実施形態では、棒鋼保持部20の揺れを防止するため、エアシリンダ64の流体室643aに供給する圧力を切り換える制御を行う。
【0034】
図5に示すように、エアシリンダ64の流体室643aには、圧力制御回路70が接続されている。圧力制御回路70には、高圧設定された減圧弁71と、低圧設定された減圧弁72と、切換弁73とが設けられている。切換弁73は、減圧弁71が配設された流路74と、減圧弁72が配設された流路75との間で、いずれの流路を流体室643aと連通させるかを切り換えるものである。
【0035】
切換弁73を作動させていない状態では、高圧設定された減圧弁71を有する流路74が流体室643aと連通し、流体室643aは高圧状態となる。一方、切換弁73を作動させた状態では、低圧設定された減圧弁72を有する流路75が流体室643aと連通し、流体室643aは低圧状態となる。なお、圧力制御回路70の構成はこれに限定されず、流体室643aの圧力状態を切り換えられるものであれば、どのような構成であってもよい。また、ここでの高圧、低圧とは比較の問題であり、絶対的に高圧、低圧である必要はない。
【0036】
図6を参照しつつ、エアシリンダ64の設定圧力の切換制御について説明する。なお、この制御は、不図示のコントローラによって実行される。
図6の横軸は時間軸となっており、「閉」は、棒鋼保持部20が蓋部材21に当接するタイミングを示し、「開動作開始」は、棒鋼保持部20が下方への揺動を開始し、蓋部材21から離間し始めるタイミングを示す。つまり、「閉」〜「開動作開始」の間は、棒鋼保持部20は
図4Aに示す受取位置にあり、蓋部材21に押圧された状態となっている。
【0037】
また、「第1送出し」は、棒鋼保持部20が
図4Bに示す第1送出位置まで揺動し、第1棒鋼保持部20Aから棒鋼Sが送り出されるタイミングを示す。「第2送出し」は、棒鋼保持部20が
図4Cに示す第2送出位置まで揺動し、第2棒鋼保持部20Bから棒鋼Sが送り出されるタイミングを示す。その後、棒鋼保持部20の揺動方向が下方から上方へと反転し、やがて蓋部材21に当接して再び「閉」の状態となる。
【0038】
本制御では、棒鋼保持部20が蓋部材21に当接する直前に切換弁73を作動させて、流体室643aを高圧状態から低圧状態へと切り換える。そして、棒鋼保持部20の開動作が始まるまで、低圧状態が維持される。つまり、棒鋼保持部20が蓋部材21に当接し、蓋部材21から反力を受けている間は、流体室643aを低圧状態に維持することで、エアシリンダ64のクッション作用を大きくし、電動モータ51のトリップをより確実に防止することができる。
【0039】
一方、棒鋼保持部20が開動作を開始した直後には、切換弁73の作動状態を解除し、流体室643aを低圧状態から高圧状態へと切り換える。そして、棒鋼保持部20が蓋部材21に当接する直前まで、高圧状態が維持される。つまり、棒鋼保持部20が揺動している間は、流体室643aを高圧状態に維持することで、エアシリンダ64のクッション作用を小さくし、棒鋼保持部20の揺れを抑制することができる。
【0040】
ところで、棒鋼保持部20が蓋部材21に当接した後は、蓋部材21からの反力が徐々に大きくなり最大値に達し、その後、徐々に小さくなると考えられる。したがって、「閉」〜「開動作開始」までの間、終始低圧状態を維持することは必須ではなく、最低限、電動モータ51のトリップが生じる可能性のある期間だけ低圧状態とすればよい。
【0041】
また、棒鋼Sを棒鋼保持部20から送り出す際には、その反動で棒鋼保持部20の揺れが大きくなりやすい。特に第1送出し時には、第2棒鋼保持部20B内に棒鋼Sが残存しており、揺れによって棒鋼Sが落下してしまうおそれがある。したがって、「開動作開始」〜「閉」までの間、終始高圧状態を維持することは必須ではなく、最低限、第1送出し時に、より好ましくは第1送出し時および第2送出し時に高圧状態となっていればよい。
【0042】
(効果)
本実施形態の棒鋼受渡装置1では、駆動機構50が電動モータ51を有して構成されている。電動モータ51の動作は、電気的調整により精度よく調整することが可能であるため、各駆動機構50の作動タイミングの微調整が容易となる。したがって、例えば、各駆動機構50の作動タイミングを一致させ、複数の棒鋼保持部20を同時に揺動させるといったことが容易となる。この場合、棒鋼Sを真っ直ぐな状態で送り出すことが可能となり、棒鋼Sの曲がりや溝移りを防止することができる。また、棒鋼Sをあえて中央部から先に冷却床100に落下させることによって、棒鋼Sの溝移りを防止する方法がとられることもあるが、このような場合にも、各駆動機構50の作動タイミングを少しずつずらすといった調整が容易となる。
【0043】
[第2実施形態]
本発明にかかる棒鋼受渡装置の第2実施形態について、
図7〜
図9を参照しつつ説明する。第2実施形態が第1実施形態と異なる点は、シャフト10の揺れを抑制することで、棒鋼保持部20の揺れを抑制するための揺れ抑制機構80を新たに設けている点にある。なお、その他の構成については、第1実施形態と同様であるので、ここでは揺れ抑制機構80についてのみ説明する。
【0044】
(揺れ抑制機構)
揺れ抑制機構80は、
図7に示すように、シャフト10の軸方向に不図示のレバーを介して複数設けられている。本実施形態では、隣り合う駆動機構50の中央位置に揺れ抑制機構80を1つずつ配置している。この中央位置ではシャフト10の揺れが最も大きくなりやすいため、揺れ抑制機構80をここに配置することで、効果的にシャフト10の揺れを抑制することができ、ひいては棒鋼保持部20の揺れを抑制することができる。ただし、揺れ抑制機構80を設ける位置や個数は適宜変更が可能である。
【0045】
揺れ抑制機構80は、
図8に示すように、両ロッド式のエアシリンダ81を具備して構成されている。エアシリンダ81は、シャフト10に不図示のレバー(
図3のレバー66と同様のもの)を介して連結されるロッド811と、もう1本のロッド812と、ロッド811、812と連結されるピストン813と、ピストン813の両側に流体室814a、814bが形成されるシリンダ本体814と、を有している。シリンダ本体814は、装置基台に対して、支持フレーム815を介して固定されている。
【0046】
流体室814a、814bは流路82によって接続されており、この流路82には、同様の構成を有する速度制御弁83、84が設けられている。速度制御弁83(84)は、可変絞り弁831(841)と逆止弁832(842)とからなる。可変絞り弁831、841を絞って流路82の流路抵抗を大きくすれば、ピストン813に対して移動抵抗を付与することができる。このため、ロッド811を介してピストン813に連結されているシャフト10も移動しにくくなり、シャフト10の揺れを抑制することができる。
【0047】
なお、本実施形態では、速度制御弁83(84)が有する可変絞り弁831(841)を絞ることで、シャフト10の揺れを抑制するものとしたが、流路の構成はこれに限定されない。例えば、流路82に単なる絞り弁を設けることで、シャフト10の揺れを抑制することも可能である。
【0048】
(変形例)
揺れ抑制機構80の変形例について、
図9を参照しつつ説明する。
図9に示す揺れ抑制機構80も、
図8と同様のエアシリンダ81を具備して構成されるが、流体室814a、814bに接続されている流路の構成が
図8のものとは異なる。つまり、この変形例では、流体室814a、814bを接続する流路として、第1流路85および第2流路86の2流路が形成されており、いずれの流路で流体室814a、814bを連通させるかを、切換弁87によって切り換えることができるよう構成されている。
【0049】
第1流路85には、特に絞り弁等は設けられておらず、流路抵抗の小さな流路となっている。一方、第2流路86には、同様の構成を有する速度制御弁88、89が設けられている。速度制御弁88(89)は、可変絞り弁881(891)と逆止弁882(892)とからなる。可変絞り弁881、891を絞って第2流路86の流路抵抗を大きくすれば、ピストン813に対して移動抵抗を付与することができる。このため、切換弁87を作動させて、第2流路86により流体室814a、814bを連通させれば、ロッド811を介してピストン813に連結されているシャフト10も移動しにくくなり、シャフト10の揺れを抑制することができる。
【0050】
ところで、切換弁87を作動させて、シャフト10の揺れを抑制している状態は、言い方を変えると、シャフト10の変形自由度が制限されている状態であり、その分、電動モータ51の負荷が大きくなるおそれがある。そこで、本変形例では、切換弁87を作動させない状態としておくことで、流路抵抗の小さな第1流路85により流体室814a、814bを連通させ、ピストン813の移動抵抗を小さくすることができる。その結果、シャフト10の変形自由度が向上し、電動モータ51の負荷を抑えることができる。
【0051】
既述のように、棒鋼保持部20の揺れが最も大きな問題となり得るのは第1送出し時である。したがって、例えば、第1送出しの直前に切換弁87を作動させて、その直後に切換弁87の作動状態を解除することで、必要最低限のときのみにシャフト10の揺れを抑制し、ひいては棒鋼保持部20の揺れを抑制することができる。一方、それ以外の期間は、切換弁87を作動させず、流路抵抗の小さな第1流路85により流体室814a、814bを連通させておけば、電動モータ51の負荷を抑えることができる。もちろん、必要に応じて、第1送出し時以外にも、切換弁87を作動させて、シャフト10の揺れを抑制するようにしてもよい。
【0052】
[その他の実施形態]
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上記実施形態の要素を適宜組み合わせまたは種々の変更を加えることが可能である。
【0053】
例えば、上記実施形態の棒鋼受渡装置1は、棒鋼保持部20が上下方向に4段、そして各段に2つずつ設けられる構成とした。しかしながら、棒鋼保持部20の段数、そして各段に設ける個数は適宜変更が可能である。
【0054】
上記実施形態では、クッション部材としてエアシリンダ64を設けたが、クッション部材はこれに限定されない。例えば、他の流体圧シリンダを採用してもよいし、適当なバネをクッション部材として用いることも可能である。また、クッション部材を設ける位置は、エアシリンダ64を設けた位置に限定されず、揺動機構30または駆動機構50の適宜の位置に設けることが可能である。
【0055】
その他にも、棒鋼受渡装置1の具体的構成は上記実施形態に示したものに限定されず、適宜変更が可能である。例えば、減速機52を省略してもよいし、棒鋼保持部20を揺動させるためのシャフト10の駆動動作を、回転動作以外の動作としてもよい。