【実施例1】
【0014】
図1に示すように、本実施例の眼科装置は、被検眼100を検査するための測定部10を有している。測定部10は、被検眼100から反射される反射光と参照光とを干渉させる干渉光学系14と、被検眼100の前眼部を観察する観察光学系50と、被検眼100に対して測定部10を所定の位置関係にアライメントするためのアライメント光学系(図示省略)を有している。アライメント光学系は、公知の眼科装置に用いられているものを用いることができるため、その詳細な説明は省略する。
【0015】
干渉光学系14は、光源12と、光源12からの光を被検眼100の内部に照射すると共にその反射光を導く測定光学系(24,72,48)と、光源12からの光を参照面22aに照射すると共にその反射光を導く参照光学系(24,22)と、光源12からの光を反射面(74a,74b)に照射すると共にその反射光を導く較正光学系(24,72,74)と、測定光学系により導かれた反射光と参照光学系により導かれた反射光とが合成された測定用干渉光と、較正光学系により導かれた反射光と参照光学系により導かれた反射光とが合成された較正用干渉光とを受光する受光素子26によって構成されている。
【0016】
光源12は、波長掃引型の光源であり、出射される光の波長(波数)が所定の周期で変化するようになっている。すなわち、本実施例の眼科装置では、光源12から出射される光を、その波長を変化(走査)させながら被検眼100に照射する。そして、被検眼100からの反射光と参照光との干渉光から得られる信号をフーリエ解析することで、被検眼100の深さ方向の各部位から反射される光の強度分布を得る。被検眼100の深さ方向の光強度分布が得られると、後述するように、被検眼100の内部の各部位(すなわち、水晶体104や網膜106)の位置を特定することが可能となる。なお、光源12から照射される光は、その波長が時間に対してリニア(直線的)に変化することが望ましいが、実際には多少の非線形性を有している。また、この非線形性は、光源12の経年変化によっても変化する。これを適時に補正するため、本実施例では、光源12の波長掃引の非線形性を補正するための較正用データが、使用者の作業無しで作成可能となっている。較正用データを定期的に取得することで、眼科装置が経年変化しても、被検眼100を適切に検査することができる。
【0017】
測定光学系は、ビームスプリッタ24と、ビームスプリッタ72と、ホットミラー48によって構成されている。光源12から出射された光は、ビームスプリッタ24、ビームスプリッタ72及びホットミラー48を介して被検眼100に照射される。被検眼100からの反射光は、ホットミラー48、ビームスプリッタ72及びビームスプリッタ24を介して受光素子26に導かれる。
【0018】
参照光学系は、ビームスプリッタ24と参照ミラー22によって構成されている。光源12から出射された光の一部は、ビームスプリッタ24で反射され、参照ミラー22の参照面22aに照射され、参照ミラー22の参照面22aによって反射される。参照ミラー22で反射された光は、ビームスプリッタ24を介して受光素子26に導かれる。参照ミラー22は移動可能となっている。本実施例では、測定を開始する前に参照ミラー22を移動して、測定光路長と参照光路長を一致させるようになっている。なお、本実施例のように、波長掃引型の光源12を用いたフーリエドメイン方式の場合は、その後の測定中において参照ミラー22は移動しない。
【0019】
較正光学系は、ビームスプリッタ24と、ビームスプリッタ72と、光学部材74によって構成されている。光源12から出射された光は、ビームスプリッタ24及びビームスプリッタ72を介して光学部材74に照射される。すなわち、光源12から出射された光は、ビームスプリッタ72によって測定光学系から分岐され、分岐された光が光学部材74に照射される。光学部材74は、その一端に設けられた第1反射面74aと、その他端に設けられた第2反射面74bを有している。したがって、光学部材74に照射される光の一部は、第1反射面74aで反射され、その残りが光学部材74内に入射する。光学部材74内に入射した光の一部は、第2反射面74bで反射され、残りは光学部材74から外部に照射される。第1反射面74aで反射された光と第2反射面74bで反射された光は、ビームスプリッタ72及びビームスプリッタ24を介して受光素子26に導かれる。なお、本実施例では、光源12の波長の非線形性を補正するための較正用データは、一方の反射面(例えば、第1反射面74a)から反射された反射光を利用して作成される。また、後述するように、第1反射面74a及び第2反射面74bで反射された反射光は、反射面間の距離が既知であることを利用し、被検眼100の眼軸長の較正に用いられる。
【0020】
ここで、本実施例の較正光学系では、光学部材74が光軸方向に移動可能となっている。具体的には、光学部材74は、第2駆動装置56(
図2に図示)が第2位置調整機構18(
図2に図示)を駆動することで、光軸方向の位置が調整可能となっている。これによって、光源12から各反射面74a,74bまでの光路長が調整可能となっている。例えば、光源12の非線形性を補正するための較正用データを取得する際は、ゼロ点から第1反射面74aまでの光路長が、ゼロ点から被検眼100(ただし、検査対象となる被検眼ではなく設計上の被検眼)の角膜又は網膜までの距離と略同一となるように、光学部材74が位置決めされる。これによって、被検眼100の断層画像を撮影するときに使用する周波数域に近い較正用データを取得することができる。一方、被検眼100の断層画像を撮影する際は、ゼロ点から第1反射面74aまでの光路長、及び、ゼロ点から第2反射面74bまでの光路長が、ゼロ点から被検眼100(実際に検査対象となる被検眼)の網膜までの距離よりも長くなるように、光学部材74が位置決めされる。これによって、被検眼100の断層画像を撮影する際に、光学部材74による影響を無くすことができる。ここで、ゼロ点とは、参照光学系の光路長(参照光路長)と物体光学系の光路長(物体光路長)とが同一となる点を意味する(
図3参照)。なお、ゼロ点から第1反射面74aまでの光路長と、ゼロ点から第2反射面74bまでの光路長の差は、光学部材74の一端の第1反射面74aから他端の第2反射面74bまでの長さによって決まる。後述する通り、この反射面間の距離が既知であること、つまり、光学部材の形状(長さ)が既知であることを利用し、計測された眼軸長を較正することができる。光学部材74の形状精度を高めることで、この光路長の差を精度良く管理することが可能となり、較正の精度を高めることができる。
【0021】
なお、光学部材74としては、例えば、光学ガラスを用いることができる。光源12からの光を光学ガラスに照射することで、光学ガラスの一端(入射面)を第1反射面として機能させ、光学ガラスの他端(出射面)を第2反射面として機能させることができる。光学部材74の他の例としては、例えば、光学プラスチック等を用いることができる。
【0022】
受光素子26は、参照光学系により導かれた光と測定光学系により導かれた光とを合成した測定用干渉光と、参照光学系により導かれた光と較正光学系により導かれた光とを合成した較正用干渉光を検出する。上述の説明から明らかなように、較正用干渉光には、第1反射面74aで反射された光(第1光路部により導かれた光)と参照光学系により導かれた光を合成した第1較正用干渉光と、第2反射面74bで反射された光(第2光路部により導かれた光)と参照光学系により導かれた光を合成した第2較正用干渉光が含まれる。したがって、受光素子26は、測定用干渉光と第1較正用干渉光と第2較正用干渉光を検出する。受光素子26としては、例えば、フォトダイオードを用いることができる。なお、後述するように、光源12の非線形性を補正するための較正用データを取得する際には、被検眼100の光断層画像を撮影してもよい。
【0023】
観察光学系50は、被検眼100にホットミラー48を介して観察光を照射すると共に、被検眼100から反射される反射光(すなわち、照射された観察光の反射光)を撮影する。ここで、ホットミラー48は、干渉光学系の光源12からの光を反射する一方で、観察光学系の光源からの光を透過する。このため、本実施例の眼科装置では、干渉光学系による測定と、観察光学系50による前眼部の観察を同時に行うことができる。なお、観察光学系50には、公知の眼科装置に用いられているものを用いることができるため、その詳細な構成については説明を省略する。
【0024】
なお、本実施例の眼科装置では、被検眼100に対して測定部10の位置を調整するための第1位置調整機構16(
図2に図示)と、その第1位置調整機構16を駆動する第1駆動装置54(
図2に図示)を備えている。第1駆動装置54を駆動することで、被検眼100に対する測定部10の位置が調整される。
【0025】
次に、本実施例の眼科装置の制御系の構成を説明する。
図2に示すように、眼科装置は演算装置64によって制御される。演算装置64は、CPU,ROM,RAM等からなるマイクロコンピュータ(マイクロプロセッサ)と高速演算用ゲートアレイによって構成されている。演算装置64には、光源12と、第1駆動装置54と、モニタ62と、第2駆動装置56と、観察光学系50が接続されている。演算装置64は、光源12のオン/オフを制御し、第1駆動装置54を制御することで第1位置調整機構16を駆動し、第2駆動装置56を制御することで第2位置調整機構18を駆動し、また、観察光学系50を制御して観察光学系50で撮像される前眼部像をモニタ62に表示する。また、演算装置64には、受光素子26が接続され、受光素子26で検出される干渉光(すなわち、測定用干渉光,第1較正用干渉光,第2較正用干渉光)の強度に応じた干渉信号が入力される。演算装置64は、受光素子26からの干渉信号を予め設定された一定の時間間隔でサンプリングし、そのサンプリングしたデータ群を用いる事で較正用データを作成する。また、較正用データによって等周波数間隔に較正された信号をフーリエ変換することによって、被検眼100の各部位(角膜102の前後面、水晶体104の前後面、網膜106の表面)及び光学部材74の反射面74a,74bの位置を特定し、これらを用いて被検眼100の眼軸長を算出する。なお、演算装置64による処理の詳細については後述する。
【0026】
次に、本実施例の眼科装置を用いて較正用データを作成する際の手順を説明する。
図9に示すように、まず、演算装置64は、較正用データを作成するために、較正用データを作成するための位置(較正用位置)に光学部材74を位置決めする(S10)。すなわち、演算装置64は、第2駆動装置56により第2位置調整機構18を駆動し、光学部材74を較正用位置に位置決めする。光学部材74が較正用位置に位置決めされると、ゼロ点から光学部材74の第1反射面74aまでの光路長が、ゼロ点から被検眼100(ただし、検査対象の被検眼ではなく、設計上の被検眼)の角膜または網膜までの距離と略同一となる。
【0027】
次に、演算装置64は、光源12から照射される光の周波数を変化させながら、受光素子26で検出される信号を取り込む(S12)。既に説明したように、較正用データを作成する際に、測定光学系に被検眼100が配置されていてもよい。ここでは、被検眼100が配置されていない場合を想定して説明するが、被検眼100の配置の有無は、較正用データ作成手順に影響しない。受光素子26は、第1較正用干渉光と第2較正用干渉光を検出し、それら較正用干渉光に基づく干渉信号を演算装置64に入力する。演算装置64は、受光素子26から入力する干渉信号を等時間間隔でサンプリングし、サンプリングしたデータに基づいて較正用データを作成する。以下、演算装置64による較正用データの作成処理について詳述する。
【0028】
演算装置64は、受光素子26から出力される干渉信号から、較正用データの作成に不要な周波数成分を除去することによって干渉信号を整形する。
図4に示すように、受光素子26から出力される干渉信号には、較正用干渉光による信号成分だけでなく、低周波のうなり成分がふくまれている。また、較正用データの作成は、1つの較正用干渉光のみを使用して行われるが、本実施例では2つの較正用干渉光が含まれている。そこで、受光素子26から出力される干渉信号をフーリエ変換し、
図5に示すように周波数成分に分解する。
図5に示す例では、低周波成分と、第1較正用干渉光による周波数成分と、第2較正用干渉光による周波数成分とに分解されている。本実施例では、第1較正用干渉光の周波数成分のみを切り出し、切り出した第1較正用干渉光から較正用データを作成する。なお、上述したように、ゼロ点から第1反射面74aまでの光路長は既知であるため、第1較正用干渉光の周波数成分も略一定の範囲となる。したがって、第1較正用干渉光の周波数成分のみの切り出しを容易に行うことができる。
【0029】
第1較正用干渉光の周波数成分のみの切り出しを行うと、次に、演算装置64は、切り出した周波数成分を逆フーリエ変換し、
図6に示すような第1較正用干渉光のみが含まれる干渉信号を取得する。
図6に示す干渉信号を生成すると、公知の方法により
図7に示すような較正用データを作成する。干渉信号(
図6)から較正用データ(
図7)を作成する処理の詳細は、例えば、特許文献1に開示されている。較正用データによって、周波数と時間の関係が得られるため、等時間間隔でサンプリングすることで得られる干渉信号(データ群)を、等周波数間隔の干渉信号(データ群)に変換することができる。
【0030】
較正用データを作成すると、次に、演算装置64は、被検眼100の光断層画像を撮影するための位置(撮影用位置)に光学部材74を位置決めする(S14)。すなわち、演算装置64は、第2駆動装置56により第2位置調整機構18を駆動し、光学部材74を撮影用位置に位置決めする。光学部材74が撮影用位置に位置決めされると、ゼロ点から第1反射面74aまでの光路長、及び、ゼロ点から第2反射面74bまでの光路長が、ゼロ点から被検眼100の網膜までの距離よりも長くなる。
【0031】
次に、被検眼100の検査を行うために、検査者は図示しないジョイスティック等の操作部材を操作して、被検眼100に対して測定部10の位置合わせを行う(S16)。すなわち、演算装置64は、検査者の操作部材の操作に応じて、第1駆動装置54により位置調整機構16を駆動する。これによって、被検眼100に対する測定部10のxy方向(縦横方向)の位置とz方向(進退動する方向)の位置が調整される。また、演算装置64は、図示しない焦点調整機構及びゼロ点調整機構を調整することで、光源12から被検眼100に照射される光の焦点の位置が被検眼100の所定の位置(例えば、網膜106)となり、また、物体光路長と参照光路長が一致するゼロ点の位置が被検眼100に対して所定の位置(例えば、角膜102の前面からわずかに光源12側にずれた位置)となる。なお、ゼロ点の位置は、網膜106に対して光源12側にわずかにずれた位置に調整してもよい。
【0032】
次に、演算装置64は、光源12から照射される光の周波数を変化させながら、受光素子26で検出される信号を取り込む(S18)。既に説明したように、被検眼100の光断層画像を撮影すると、受光素子26で受光する干渉光には、被検眼100の深さ方向の各部位から反射された光が含まれている。すなわち、受光素子26から出力される干渉信号は、
図8に示すように、信号強度が時間によって変化する信号となり、この信号には被検眼100の各部(角膜102の前面及び後面、水晶体104の前面及び後面、網膜106の表面)及び第1、第2反射面74a,74bから反射された各反射光と参照光とを合成した干渉波による信号が含まれているが、この干渉信号は等時間間隔でサンプリングされたものであるため、周波数の誤差を含んでいる。
【0033】
次に、演算装置64は、ステップS18で得られた干渉信号を、ステップS12で得られた較正用データで補正する(S20)。上述したように、較正用データによって、等時間間隔でサンプリングすることで得られる干渉信号(データ群)を、等周波数間隔の干渉信号(データ群)に変換することができる。したがって、ステップS18で得られた干渉信号(等時間間隔のサンプリングデータ群)を、較正用データを用いて等周波数間隔のデータ群に変換する。なお、較正用データによる干渉信号の補正は、公知の種々の方法で行うことができる。
【0034】
次に、演算装置64は、補正された干渉信号をフーリエ変換することで、被検眼100の各部(角膜102の前面及び後面、水晶体104の前面及び後面、網膜106の表面)及び第1、第2反射面74a,74bの位置を特定し、被検眼100の眼軸長(角膜表面から網膜までの長さ)を算出する(S22)。ここで、本実施例では、光学部材74を配置する位置をゼロ点に対して調整することで、
図8下段に示すように、被検眼100の各部の位置を表すピークと、第1、第2反射面74a,74bの位置を表すピークとが重ならないようになっている。したがって、フーリエ変換された信号成分から、被検眼100の各部の位置と、第1、第2反射面74a,74bの位置を容易に特定することができる。被検眼100の各部の位置が特定されると、演算装置64は、被検眼100の眼軸長(角膜表面から網膜までの長さ)を算出する。具体的には、演算装置64は、まず、被検眼100の網膜の位置から角膜表面の位置を減算することで、干渉光に基づく眼軸長を算出する。次いで、演算装置64は、第2反射面74bの位置から第1反射面74aの位置を減算することで、干渉光に基づく第1反射面74aから第2反射面74bまでの長さを算出する。ここで、第1反射面74aから第2反射面74bまでの長さは、光学部材74の長さに相当し、光学部材74の長さは既知である。したがって、干渉光から算出された眼軸長を、光学部材74の長さ(実値)と、干渉光から得られた光学部材74の長さ(測定値)により補正する。具体的には、次の式、すなわち、眼軸長(補正後)=干渉光から得られた眼軸長×(光学部材74の長さ(実値)/干渉光から得られた光学部材74の長さ(測定値))、により算出する。
【0035】
演算装置64は、ステップS22で眼軸長を算出すると、その算出した眼軸長をモニタモニタ62に表示する(S24)。また、ステップS20で補正された干渉信号から得られる被検眼100の光断層画像をモニタ62に表示する。これによって、演算装置64の処理が終了する。
【0036】
上述の説明から明らかように、本実施例に係る眼科装置では、較正光学系を備えているため、較正用冶具を用いることなく較正用データを取得することができる。このため、簡便に較正用データを取得することができる。また、被検眼100を撮影するための参照光を用いて較正用干渉光を生成し、また、測定用干渉光を検出するための受光素子26で較正用干渉光を検出する。したがって、光学系の一部が共通化され、装置構成を簡易にすることができる。
【0037】
また、測定光学系から較正光学系を分岐させるため、被検眼の近傍に較正光学系を配置することができる。このため、光学系の誤差要因(例えば、光ファイバーの分散)の影響を小さくすることができる。その結果、精度の高い較正用データを得ることができ、高精度の撮影及び測定を行うことができる。
【0038】
なお、本実施例では、較正光学系に2つの反射面74a,74bが設けられている。このため、2つの反射面74a、74bの光路差から較正用データの検証を行うことも可能となる。具体的には、上述したステップS22で、較正用データを用いて補正した干渉信号から被検眼100の各部及び第1反射面74aと第2反射面74bの位置を特定する。そして、干渉信号から得られる第1反射面74aから第2反射面74bまでの距離と、光学部材74の実際の長さ(第1反射面74aから第2反射面74bまでの距離)の相違(例えば、差分値)から、較正用データの正確性(精度)を評価する。そして、較正用データの正確性が予め設定された値を超えて低下すると、モニタ62に較正用データの精度が低下している旨を表示する。これによってユーザは較正用データの作成が必要なことを知ることができ、較正用データの作成作業を行うことができる。さらには、本実施例では、較正用の干渉信号を得るための物理的な作業(プローブの着脱等)が必要無いため、較正用データの正確性が予め設定された値を超えて低下した際に、全自動で較正用データの再作成を行うことも可能である。したがって、眼科装置10の経年変化等によって較正用データの精度が低下した状態で眼科装置10が使用され続けることを防止することができる。
【0039】
以上、実施例の光断層画像撮影装置について詳細に説明したが、これは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【0040】
例えば、上述した実施例では、較正光学系の光学部材74を光軸方向に移動可能に構成したが、このような形態に限られない。例えば、較正光学系の光学部材74を移動不能に固定することもできる。光学部材74を移動不能に固定すると、光学部材74を移動させる機構56,18が不要となる。また、受光素子26で検出される較正用干渉光の周波数が一定となるため、上述した較正用干渉光の切り出し処理等を簡易に行うことができる。
【0041】
また、上述した実施例では、主に1次元の断層像である眼軸長測定を行う眼科装置を例として説明したが、本明細書に開示の技術は、複数の1次元の断層像からなる2次元の断層像や、さらに複数の2次元の断層像からなる3次元断層像を得る眼科装置にも使用することができる。すなわち、2次元の断層像や3次元断層像はいずれも複数の1次元の断層像からなるため、2次元の断層像や3次元断層像を構成する複数の1次元の断層像のそれぞれに対して、本明細書に開示の較正技術を実施することにより、より精度の高い2次元断層像及び/又は3次元断層像を得ることができる。
【0042】
また、上述した実施例では、較正光学系に2つの反射面74a,74bが設けられていたが、較正光学系に設けられる反射面は1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。すなわち、較正光学系に反射面が少なくとも一つ備えられれば、較正用干渉光を得ることができるため、その較正用干渉光から較正用データを作成することができる。
【0043】
そして、上述した実施例のように較正光学系に2つ以上の反射面があれば、一度の干渉信号取得で、光源の波長掃引の非線形性の較正も、測定値(眼軸長や2次元断層画像、3次元断層画像における複数の1次元の断層像)の補正も同時に実施することができる。
【0044】
また、上述した実施例では、較正用データを取得する際に、被検眼100を測定光学系に配置しない構成であったが、演算装置64は、受光素子26から出力される干渉信号から第1較正用干渉光の周波数成分のみが抽出されるようになっている(段落[0028],[0029])。したがって、上述した実施例の眼科装置では、被検眼100が測定光学系に配置されている状態でも較正用データを作成することができる。このため、被検眼100を測定する場合において、波長掃引を行う毎に較正用データを作成するようにしてもよい。
【0045】
また、上述した実施例では、較正光学系を測定光学系から分岐させていたが、較正光学系は参照光学系から分岐していてもよい。また、上述した実施例は、人体の眼を検査する眼科装置であったが、本明細書に開示の技術は眼科装置以外の光断層画像装置に適用することができる。
【0046】
本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組み合わせによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。