(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
トラクタのPTO軸から動力を受ける駆動軸と、前記駆動軸に並設される従動軸と、前記駆動軸又は前記従動軸に取付けられるオイル撹拌用部材とを有し、支持フレームに支持される変速ギヤボックスと、
水平方向に延びる回転軸の軸周に多数の耕耘刃又は刈取り刃を装着されるロータリ作業
部と、
前記変速ギヤボックスの前記従動軸とは反対側に設けられ、前記変速ギヤボックスと共にオイルを収容する空間を形成するオイル撹拌冷却用の支持ケースと、
前記支持ケースの外面に設けられる放熱用のフィンと、を備え、
前記支持ケースは、一端部が前記変速ギヤボックスに取付けられ、他端部が水平方向に延在する前記支持フレームに取付けられる、
農作業機。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に係る農作業機の変速装置の一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、以下の説明においては、本発明に係る農作業機の変速装置が取付けられる農作業機が接続されたトラクタの前進方向を前方向とし、後進方向を後方向とする。また、該トラクタの耕耘する圃場面に対して平行な方向を水平方向とする。更に、圃場面に対して垂直な方向を上下方向とする。
【0014】
本発明に係る農作業機の変速装置は、例えば耕耘作業又は草刈り作業を行うためにトラクタの後部に連結されて成るロータリ作業機に取付けられる変速装置に適用することができる。本発明に係る農作業機の変速装置の一実施形態を適用可能な部位の一例として、
図1及び
図2にロータリ作業機1を示した。
図1は、ロータリ作業機1を後部側から見た状態の背面図である。また、
図2は、同平面図である。なお、
図1及び
図2には、トラクタのPTO軸からの動力を伝達する動力伝達軸(ユニバーサルジョイント)は図示していない。
図2にはトラクタTの後部の輪郭線が破線で示されている。
【0015】
図1に示すように、ロータリ作業機1は、3点リンクヒッチ機構2と、変速装置(変速ギヤボックス3)と、支持フレーム7と、伝動フレーム8と、側部フレーム9と、チェン伝動部(チェン伝動ケース10)と、シールドカバー13と、リヤカバー14と、ロータリ作業部4とを備えている。
【0016】
3点リンクヒッチ機構2は、ロータリ作業機1とトラクタの後部との接続部位である。3点リンクヒッチ機構2は、上側に1本のトップリンク連結部201と、下側に2本のロアーリンク連結部202とを有している。トップリンク連結部201及びロアーリンク連結部202はトラクタT(
図2参照)に対して着脱自在に接続されているので、3点リンクヒッチ機構2を介してロータリ作業機1は着脱自在となっている。また、3点リンクヒッチ機構2によって、ロータリ作業機1全体が昇降可能になっている。3点リンクヒッチ機構2は、本発明に係る農作業機の変速装置における3点リンクヒッチ機構の一例である。
【0017】
変速ギヤボックス3は、トラクタのPTO軸から動力を受ける部材である。変速ギヤボックス3は、トラクタのPTO軸から受けた動力を後述の伝動フレーム8内に挿通されて成る伝動軸19に伝達することができる。また、変速ギヤボックス3には、トラクタの前進方向に向かって右側に支持ケース5が付設されている。更に、円筒形状を成す支持ケース5の外周に放熱用のフィン6が設けられている。なお、変速ギヤボックス3及び支持ケース5の内部構造、及びフィン6については、
図3〜
図5を参照しつつ後述する。変速ギヤボックス3は、本発明に係る農作業機の変速装置における変速ギヤボックスの一例である。
【0018】
支持ケース5は、一端部が変速ギヤボックス3に取付けられ、他端部が水平方向に延在する支持フレーム7に取付けられる。また、一端部に支持ケース5が取付けられて成る変速ギヤボックス3における他端部には、水平方向に延在する伝動フレーム8が取付けられている。伝動フレーム8は、筒状部材であり、その内部をその軸線を中心にして回転可能な伝動軸19が挿通して成る、二重構造を有している。伝動軸19は、変速ギヤボックス3内の適宜のギヤの組合せによって、トラクタから伝達された動力をチェン伝動部に伝える部材である。支持フレーム7及び伝動フレーム8は、それぞれの軸線を延長すると一致するように配置されている。また、支持フレーム7及び伝動フレーム8は、ロータリ作業機1における上方の枠体として機能する。本発明に係る農作業機の変速装置において、農作業機における水平方向の大きさの大部分を決定付ける支持フレーム及び伝動フレームの軸線方向の大きさは、例えば農作業機の機種、農作業の種類、圃場の大きさ、トラクタの幅等に応じて適宜決定することができる。支持ケース5及びフィン6は、本発明に係る農作業機の変速装置における支持ケース及びフィンの一例である。
【0019】
一端部が支持ケース5に接続された支持フレーム7における他端部は、支持フレーム7に対して垂直又は略垂直となるように配設される側部フレーム9に取付けられている。また、一端部が変速ギヤボックス3に接続された伝動フレーム8における他端部は、伝動フレーム8に対して垂直又は略垂直となるように配設されるチェン伝動ケース10が取付けられている。側部フレーム9及びチェン伝動ケース10は、略平行にかつ対向するように配置されている。
【0020】
側部フレーム9は適宜の板体及びフレーム状部材等を組合せて成り、ロータリ作業機1を側方から支持する部材である。チェン伝動ケース10は、その内部に図示しない無端チェンを有している。上記伝動軸19の他端部と、ロータリ作業部4における回転軸11とが、図示しないスプロケットを介して該無端チェンに係合している。
【0021】
ロータリ作業部4は、水平方向に延びる回転軸11の軸周に多数の耕耘刃12を装着される。回転軸11は、その軸線を中心にして回転可能な棒状部材である。耕耘刃12は、刃縁を有する板体が湾曲して成り、回転軸11の周側面に適宜の固定手段によって装着されている。耕耘刃12は、圃場等を耕耘する機能を有する。なお、本発明に係る農作業機の変速装置を適用したロータリ作業機1においては、耕耘刃12に代えて、雑草等を刈り取る機能を有する草刈り刃を用いてもよく、また耕耘・草刈り兼用刃を用いても良い。回転軸11は、本発明に係る農作業機の変速装置における回転軸の一例である。
【0022】
回転軸11は、その軸線と、支持フレーム7及び伝動フレーム8の軸線とが平行になるように配置されている。また、回転軸11は、一端がチェン伝動ケース10に取付けられており、他端が側部フレーム9に取付けられている。
【0023】
ロータリ作業機1は、支持フレーム7及び伝動フレーム8近傍からロータリ作業部4までを覆うシールドカバー13及びリヤカバー14を有している。シールドカバー13及びリヤカバー14は、耕耘時の泥跳ね、及び草刈り時の草の飛散を防止することができ、更に作業者等の巻き込みを防止することもできる。なお、耕耘作業時には、リヤカバー14の下端部が耕土面に接した状態で作業する。
【0024】
変速ギヤボックス3の後端部には、カバー15が設けられている。該カバー15は、平面視形状が略台形を成し、下側縁辺部が変速ギヤボックス3に固定され、固定された縁辺部を中心にして回動するように開閉可能となっている。カバー15は、後述のチェンジギヤ及びアイドルギヤ等を挿抜する際に開くことができる蓋部材である。特に
図2から明らかなように、カバー15における開閉時に回動する上側の自由端部と、変速ギヤボックス3の外周面上側の後端部とが、ドローラッチ16によって固定状態となっている。カバー15が閉状態でドローラッチ16を施錠することにより、カバー15が耕耘時又は草刈り時の衝撃及び振動等によってもカバー15が開状態となることを防止可能である。また、カバー15を開状態とする際にはドローラッチ16を解錠すれば良い。
【0025】
続いて、
図3〜
図5を参照しつつ、変速ギヤボックス3及び支持ケース5の内部構造について詳述する。
図3は前記変速ギヤボックス3の断面図であり、
図4は
図3に示すX−X面において切断し、駆動軸17を約90°回転させた状態の断面矢視図である。
図5は
図3に示すY−Y面において切断した状態の断面矢視の概略図である。なお、
図3の上方、
図4の右方、及び
図5の図面手前から奥に向かう方向がトラクタの前進方向、つまり変速ギヤボックス3の前方向である。
【0026】
図3に示すように、変速ギヤボックス3には、2本の軸体が前後方向に挿通している。具体的には、トラクタのPTO軸から動力を直接受ける駆動軸17と、該駆動軸17に並設される従動軸18とが、変速ギヤボックス3内に配置されている。駆動軸17及び従動軸18はそれぞれの軸線を中心にしてそれぞれ回転可能である。また、駆動軸17及び従動軸18の後端側にチェンジギヤ191、192、193及び194を挿入差替え可能に設け、駆動軸17からチェンジギヤ191及び192を介して従動軸18に動力を伝達することができるようになっている。なお、本実施形態においてはチェンジギヤ193及び194は、駆動軸17及び従動軸18が回転しても不動であり、ギヤ収容部20に対して固定されている。駆動軸17及び従動軸18は、本発明に係る農作業機の変速装置における駆動軸及び従動軸の一例である。
【0027】
図3における駆動軸17の上端部、つまり駆動軸17の前端部は変速ギヤボックス3の前壁を貫通して突出しており、PTO軸(図示しない)に連結される。
図3における駆動軸17の下端部、つまり駆動軸17の後端部は変速ギヤボックス3の後壁を貫通して突出しており、チェンジギヤ191が駆動軸17に対して固定的に装着されている。また、
図3における従動軸18の下端部、つまり従動軸18の後端部は変速ギヤボックス3の後壁を貫通して突出しており、チェンジギヤ192が従動軸18に対して固定的に装着されている。もっとも、上述したようにチェンジギヤ191、192、193及び194は、上述したように挿入差替え可能であるので、装着されている状態では駆動軸17、従動軸18又はギヤ収容部20に対して固定的であるが、差替え時には固定状態を解除して脱離可能である。
【0028】
駆動軸17の後端部に装着されたチェンジギヤ191、及び、従動軸18の後端部に装着されたチェンジギヤ192は、変速ギヤボックス3の外側でかつ後面に固定的に取付けられて成る箱体のギヤ収容部20に収容される。ギヤ収容部20の後端側には、前記カバー15が開閉可能に装着されている。更に、チェンジギヤ191とチェンジギヤ192とは歯合している。
【0029】
図3における従動軸18の上端部、つまり従動軸18の前端部には、ピニオン21が従動軸18に対して固定的に装着されている。ピニオン21は変速ギヤボックス3に配設されている。また、伝動軸19における変速ギヤボックス3内に挿入された端部には、ベベルギヤ22が伝動軸19に対して固定的に装着されている。更に、ピニオン21とベベルギヤ22とは歯合している。
【0030】
駆動軸17は上述したようにその軸線を中心にして回転可能であるので、駆動軸17が回転すると、チェンジギヤ191は駆動軸17の回転に合わせて回転することになる。また、従動軸18は上述したようにその軸線を中心にして回転可能であるので、チェンジギヤ192が回転すると、従動軸18及びピニオン21はチェンジギヤ192の回転に合わせて回転することになる。更に、伝動軸19は上述したようにその軸線を中心にして回転可能であるので、ベベルギヤ22が回転すると、伝動軸19はベベルギヤ22の回転に合わせて回転することになる。
【0031】
駆動軸17、従動軸18及び伝動フレーム8はそれぞれ回転するので、固定されて成る変速ギヤボックス3の筐体と、駆動軸17、従動軸18及び伝動軸19との間には軸受Bがそれぞれ配置されている。また、駆動軸17、従動軸18、伝動軸19及びギヤ収容部20と、変速ギヤボックス3との接触部位には、ミッションオイル漏出防止の観点から、Oリング23、オイルシール24及びパッキン25等が取付けられている。
【0032】
図3に示すように、変速ギヤボックス3は、変速ギヤボックス本体31と、伝動フレーム8と、支持ケース5と、支持フレーム7とが装着されることにより密封可能な箱体となっている。変速ギヤボックス3内のミッションオイルを収容する空間と、有底円筒形状を成す支持ケース5内のミッションオイルを収容する空間とが連通し、一つのミッションオイルを収容する空間が形成されている。詳述すると、変速ギヤボックス本体31には、左右方向に貫通孔が設けられている。
該貫通孔の左側開口部からは左右方向の伝動フレーム8及び伝動軸19が挿入され、更に伝動フレーム8の端部の被覆部材Cにより、該開口部が閉状態となっている。また、前後方向に軸線が沿うようにして駆動軸17及び従動軸18が変速ギヤボックス3を挿通している。駆動軸17の前端部及び後端部と、従動軸18の前端部及び後端部とが挿入可能な孔が、変速ギヤボックス3の前後に2つずつ設けられている。
図3に示すように、変速ギヤボックス3の被覆部材Cで覆われた開口部から近い順に、伝動軸19、従動軸18及び駆動軸17が配置されている。また、支持ケース5は、変速ギヤボックス3の従動軸18とは反対側に設けられている。
【0033】
変速ギヤボックス3の内部でかつ駆動軸17の周側面には、オイル撹拌用部材26が取付けられている。更に言うと、オイル撹拌用部材26は、2〜3°程度の角度に屈曲した矩形板であり、駆動軸17の外側に張り出すようにして、駆動軸17の周側面にネジ止めされて固定的に取付けられている。
図3の上方には、駆動軸17の軸線に直交する面で切断した、駆動軸17及びオイル撹拌用部材26の断面図を示している。オイル撹拌用部材26は、本発明に係る農作業機の変速装置におけるオイル撹拌用部材の一例である。本発明に係る農作業機の変速装置において、オイル撹拌用部材の形状、大きさ、取付位置、取付数、及び材料は、オイル撹拌用部材が回転した時にミッションオイルにオイル撹拌用部材の一部が接触して積極的な撹拌が達成される限り特に限定されない。
【0034】
フィン6は、
図4に示すように、支持ケース5の軸線に沿う方向でかつ支持ケース5の軸線に直交する面で切断した時に放射状となるように配置されている。
【0035】
本発明に係る農作業機の変速装置において、支持ケース及びフィンを設ける位置は特に制限されないが、例えば種々の軸類及びギヤ類による動力の伝達、ミッションオイルの冷却、並びに、後述のチェンジギヤ及びアイドルギヤの挿抜作業等を妨げない位置であるのが好ましい。本発明に係る農作業機の変速装置において、支持ケース及びフィンは一体的に形成されていても良く、別体的に形成されて適宜の接合手段で相互に固定されていても良い。また、支持ケース及びフィンの材料は特に限定されず、例えば変速ギヤボックスと同種の金属、又は放熱量の多い材料を用いるのが良い。更に、本発明に係る農作業機の変速装置において、支持ケース及びフィンの形状及び大きさ、並びにフィンの数は、冷却効率が低下しない限り特に制限されない。
【0036】
駆動軸17が回転すると、オイル撹拌用部材26は駆動軸17の軸線を中心にして回転することになる。ここで、
図4及び
図5には、ミッションオイルを変速ギヤボックス3及び支持ケース5に所定量注入した場合における、ミッションオイルの油面Sを二点鎖線で示している。
図4及び
図5から明らかなように、ロータリ作業機1にトラクタからの動力が伝達されておらず、静置している状態のミッションオイルの油面Sは、駆動軸17及び従動軸18より下側に位置している。
図4に示すように、
図3の駆動軸17が約90°回転すると、オイル撹拌用部材26の先端部がミッションオイルに浸漬された状態と成る。
【0037】
本発明に係る農作業機の変速装置において、ミッションオイルの量の上限はオイル撹拌用部材が半分程度浸漬される量であるのが好ましい。もっとも、ミッションオイルを駆動軸及び従動軸が浸漬される程度の量、つまり油面が駆動軸及び従動軸より上側に位置するまで変速ギヤボックス及び支持ケース内に注入し、撹拌することにより冷却することはできる。しかしながら、オイル撹拌用部材及びミッションオイル自体が駆動軸の回転の抵抗となると共に、従動軸及び伝動フレームの回転の抵抗にもなり得る。更に、変速ギヤボックスの実施形態として
図3に示すような構造を採用した場合、変速ギヤボックス3とギヤ収容部20との間にオイルシールを設ける必要がある。したがって、静置時の油面が駆動軸及び従動軸より下側であって、多くともオイル撹拌用部材が半分程度浸漬される量のミッションオイルを変速ギヤボックス及び支持ケース内に注入するのが良い。
【0038】
ギヤ収容部20には、チェンジギヤ191、192、193及び194が収容されている。前記カバー15は、前記ドローラッチ16を解錠することにより開状態となり、ギヤ収容部20内に収容されるチェンジギヤ191、192、193及び194を抜き出す作業、歯数の異なる別のチェンジギヤに差替える作業、及びアイドルギヤを挿入する作業を行うことができる。アイドルギヤは、例えばチェンジギヤ191と、チェンジギヤ191に直接歯合して成るチェンジギヤ192との間に挿入可能な部材である。アイドルギヤを挿入してチェンジギヤ191とアイドルギヤとが歯合し、かつアイドルギヤとチェンジ192とが歯合した状態とすることにより、ギヤの数が一つ増えるので、チェンジギヤ192の回転方向を逆にすることができる。また、適宜の歯数及びピッチを有するアイドルギヤを挿入することにより、チェンジギヤ191からチェンジギヤ192に伝達される動力の大きさ、回転の速さを変更及び調整することができる。
【0039】
次に、ロータリ作業機1の動作及び作用について説明する。以下においては、ロータリ作業機1が耕耘又は草刈り作業を行う際のPTO軸から耕耘刃12までの動力の伝達及びその作用について説明した後に、変速ギヤボックス3内のミッションオイルの撹拌及びその作用について説明する。
【0040】
先ず、
図3に示す駆動軸17が、連結されたPTO軸からトラクタの動力を受ける。トラクタからの動力は回転となって駆動軸17に伝達される。駆動軸17は回転可能であるので、PTO軸の回転に合わせて駆動軸17が回転する。
【0041】
駆動軸17が回転すると、駆動軸17の後端部に固定的に取付けられて成るチェンジギヤ191は駆動軸17の軸線を中心にして回転する。チェンジギヤ191が回転すると、チェンジギヤ191に歯合して成るチェンジギヤ192はチェンジギヤ191の回転方向とは逆方向に、従動軸18の軸線を中心にして回転する。チェンジギヤ192が回転すると、チェンジギヤ192が後端部に固定的に取付けられて成る従動軸18がその軸線を中心にして回転する。従動軸18が回転すると、従動軸18の前端部に固定的に取付けられて成るピニオン21が従動軸18の軸線を中心にして回転する。ピニオン21が回転すると、ピニオン21に歯合して成るベベルギヤ22は伝動軸19の軸線を中心にして回転する。ベベルギヤ22が回転すると、ベベルギヤ22が一端部に固定的に取付けられて成る伝動軸19がその軸線を中心にして回転する。したがって、PTO軸から受けるトラクタの動力は、変速ギヤボックス3を介して伝動軸19に伝わることになる。
【0042】
図1及び
図2に示すチェン伝動ケース10の内部に配置される無端チェンと伝動軸19の他端部に設けられたスプロケットとが係合しているので、伝動軸19に伝達されたトラクタからの動力は、無端チェンに伝わることになる。無端チェンは回転軸11に設けられたスプロケットにも係合しているので、伝動軸19に伝達されたトラクタからの動力は、無端チェンを介して回転軸11に伝わることになる。回転軸11に伝わったトラクタからの動力によって、回転軸11はその軸線を中心にして回転する。
【0043】
回転軸11が回転すると、回転軸11の周側面に複数個装着された耕耘刃12は回転軸11の軸線を中心にして回転する。なお、
図1に示した耕耘刃12は、耕耘作業専用の刃である。なお、耕耘刃12に代えて使用可能な耕耘作業及び草刈り作業の兼用刃は、回転方向に応じて耕耘機能及び草刈り機能をそれぞれ発現することができるようになっている。つまり、耕耘作業及び草刈り作業の切り替えは回転軸の回転方向を切り替えることによって達成される。回転軸の回転方向の切り替える方法としては、例えばPTO軸の回転方向を切り替える方法、及びPTO軸の回転方向は維持しつつアイドルギヤを挿入することにより従動軸の回転方向を切り替える方法等を挙げることができる。
【0044】
以上により、PTO軸から耕耘刃12まで動力が伝達される。PTO軸からの動力が伝達され始めた時点で耕耘刃12が圃場面に若干埋没している状態で耕耘作業を行うことができる。また、草刈り作業は、耕耘刃12に代えて草刈り刃等を装着し、回転軸11の回転方向を切り替えた上で、圃場面に接した状態又は若干浮いた状態で行うことができる。
【0045】
PTO軸から動力を受けることにより駆動軸17が回転すると、駆動軸17の周側面に取付けられて成るオイル撹拌用部材26は駆動軸17の軸線を中心にして回転する。オイル撹拌用部材26における先端部は、
図4に示したように、回転軌道中の下死点に達するとミッションオイルに浸漬された状態と成るので、オイル撹拌用部材26が回転するとオイル撹拌用部材26が繰り返し油面Sに接触する。繰り返し接触が生じることによって、変速ギヤボックス3及び支持ケース5内でのミッションオイルの流れを形成することができる。
【0046】
更に、オイル撹拌用部材26がミッションオイルに浸漬され、オイル撹拌用部材26が回転によってミッションオイルの油面Sから離れたとしても、オイル撹拌用部材26の表面、特にミッションオイルに浸漬されていた部位にミッションオイルが少量付着したままとなる。オイル撹拌用部材26の表面に付着したままのミッションオイルは、オイル撹拌用部材26の回転から生じる遠心力によって、変速ギヤボックス3及び支持ケース5の内部空間に飛散する。つまり、オイル撹拌用部材26が回転すると、オイル撹拌用部材26がミッションオイルを少量掬い上げるようにして、ミッションオイルを変速ギヤボックス3及び支持ケース5の内部空間に飛散させる。
【0047】
したがって、オイル撹拌用部材26によってミッションオイルの一定の流れを形成し、更に変速ギヤボックス3及び支持ケース5内で飛散させるようにして、ミッションオイルを撹拌することができる。
図3及び
図5に示した破線状の矢印は、ミッションオイル中に形成される流れの方向、つまりミッションオイルの撹拌方向である。また、
図3及び
図5のオイル撹拌用部材26の先端部軌道円の周りに示される矢印は、オイル撹拌用部材26の回転方向である。もっとも、本発明に係る農作業機の変速装置においては、オイル撹拌用部材の取付方向はオイル撹拌用部材26と同一で、回転方向が逆であっても良い。
【0048】
また、飛散したミッションオイルは、変速ギヤボックス3及び支持ケース5の内壁面に付着する。変速ギヤボックス3及び支持ケース5の底部に貯留された状態よりも体積の小さい油滴として変速ギヤボックス3及び支持ケース5の内壁面に付着した方が冷却され易いので、冷却効率の観点から好ましい。なお、変速ギヤボックス3及び支持ケース5の内壁面に付着したミッションオイルは、後から飛散してくるミッションオイルと共に底部に貯留されたミッションオイル中に落下することになる。
【0049】
外周面に放熱用のフィン6が形成されている支持ケース5は、変速ギヤボックス3に比べて放熱量が多い。よって、オイル撹拌用部材26がミッションオイルを掬い上げ、支持ケース5の内壁面に向かって飛散させるように、オイル撹拌用部材26の取付方向及び大きさ等を適宜決定するのが好ましい。
【0050】
図3に示すように、変速ギヤボックス3内で伝動軸19、従動軸18及び駆動軸17がこの順で配設され、駆動軸17の従動軸18及び伝動軸19が配設された側とは反対側に支持ケース5が設けられている。仮に、耕耘作業時及び草刈り作業時においてPTO軸から駆動軸17に伝達される回転方向が変わらずに一定である場合は、
図3に示すようにオイル撹拌用部材26を設置し、オイル撹拌用部材26が変速ギヤボックス3から支持ケース5に向かう方向にミッションオイルを撹拌するのが良い。これにより、例えば作業形態を切り替えることを目的としてアイドルギヤを挿入したとしても、駆動軸17に装着されたオイル撹拌用部材26の回転方向は一定であるので、放熱量の多い支持ケース5に向かうミッションオイルの撹拌を常に実現することができるので好ましい。
【0051】
以上により、ロータリ作業機1における変速ギヤボックス3及び支持ケース5の内部に封入されたミッションオイルの撹拌が達成される。ロータリ作業機1における変速ギヤボックス3は、従来の農作業機における変速装置に比べると、ミッションオイル中により一層大きな流れを形成し、更に変速ギヤボックス3に付設される支持ケース5及びフィン6により放熱用の表面積を増大させているので、冷却効率が高い。
【0052】
農作業機における変速装置の冷却効率を高めることによって、変速装置内の軸類及びギヤ類がミッションオイルの過度の昇温に起因する摩耗及び損傷を防止することができる。結果として、変速装置内の軸類及びギヤ類の摩耗及び損傷を防止することによって、耕耘作業及び草刈り作業の作業効率が向上する。上述したように、ロータリ作業機1にはオイル撹拌用部材26、支持ケース5及びフィン6が設けられているので、良好な冷却効率が得られる。これにより、低回転数、中回転数及び高回転数を要する様々な農作業が可能となる。様々に作業形態を切り替える方法として、例えばチェンジギヤ191、192、193及び194の交換、及びアイドルギヤの挿抜等が挙げられる。ロータリ作業機1は、駆動軸17及び従動軸18におけるチェンジギヤ191、192、193及び194が取付けられている部位を、カバー15の開閉のみで容易に露出させ、上記作業形態の切り替えを簡便かつ迅速に行うことができる。よって、良好な冷却効率と、簡便かつ迅速な作業形態の切り替えによって、耕耘作業及び草刈り作業等の農作業に係る作業効率が向上する。
【0053】
以上、本発明者によってなされた発明を適用した実施形態について説明したが、この実施形態による本発明の開示の一部をなす論述及び図面により、本発明は限定されることはない。すなわち、この実施形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施形態、実施例及び運用技術等は全て本発明の範疇に含まれることは勿論であることを付け加えておく。