特許第6198515号(P6198515)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6198515
(24)【登録日】2017年9月1日
(45)【発行日】2017年9月20日
(54)【発明の名称】インパクト工具
(51)【国際特許分類】
   B25B 21/02 20060101AFI20170911BHJP
【FI】
   B25B21/02 G
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-165402(P2013-165402)
(22)【出願日】2013年8月8日
(65)【公開番号】特開2015-33738(P2015-33738A)
(43)【公開日】2015年2月19日
【審査請求日】2016年2月19日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000137292
【氏名又は名称】株式会社マキタ
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 喜樹
(74)【代理人】
【識別番号】100121142
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 恭一
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 竜之助
(72)【発明者】
【氏名】平林 徳夫
【審査官】 小川 真
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭53−062999(JP,U)
【文献】 特開2010−201543(JP,A)
【文献】 特開2012−011533(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25B 21/02
B25B 19/00
WPI
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータと、
前記モータにより回転するスピンドルと、
前記スピンドルに対して前後移動可能で、前記スピンドルに対向する内周部を有するハンマと、
前記ハンマによって回転方向に打撃され、前記ハンマの前方側に配置されるアンビルと、を備えたインパクト工具であって、
前記スピンドルの前部に有底孔を設け、
前記ハンマの前記内周部と前記スピンドルの前記有底孔とを連通させ、グリスを前記内周部に供給可能としたことを特徴とするインパクト工具。
【請求項2】
モータと、
前記モータにより回転するスピンドルと、
前記スピンドルに対して前後移動可能で、前記スピンドルに対向する内周部を有するハンマと、
前記ハンマによって回転方向に打撃されるアンビルと、を備えたインパクト工具であって、
前記ハンマに孔部を設け、
前記ハンマの内周部と前記ハンマの前記孔部とを連通させ、グリスを前記内周部に供給可能としたことを特徴とするインパクト工具。
【請求項3】
モータと、
前記モータにより回転するスピンドルと、
前記スピンドルに対して前後移動可能で、前記スピンドルに対向する内周部を有するハンマと、
前記ハンマによって回転方向に打撃されるアンビルと、を備えたインパクト工具であって、
前記ハンマの前記内周部にグリスを供給するためのグリス供給路を設けると共に、前記ハンマの前記内周部に周方向の凹溝を形成して、前記グリス供給路は、前記ハンマの前後方向の第1位置で前記凹溝と連通し、前後方向の第2位置で前記凹溝と連通しないことを特徴とするインパクト工具。
【請求項4】
前記ハンマの第1位置は、前記ハンマの後退位置であることを特徴とする請求項に記載のインパクト工具。
【請求項5】
前記ハンマの第1位置は、前記ハンマの前進位置であることを特徴とする請求項に記載のインパクト工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビットを保持するアンビルにハンマによって回転打撃力を付与可能なインパクト工具に関する。
【背景技術】
【0002】
インパクト工具は、特許文献1に示すように、モータから回転伝達されるスピンドルに、ボールを介してハンマを連結すると共に、スピンドルに外装されるコイルバネによって、ハンマを、ビットが装着されるアンビルと係合させて、アンビルへのトルクの高まりに応じて、ハンマをアンビルに係脱させて回転打撃力(インパクト)を間欠的に発生させる。
このようなインパクト工具においては、上記打撃機構を収容するハンマケース内にグリスを収容して各構成部の潤滑を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−119149号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来のインパクト工具においては、インパクトの発生時には、スピンドルに沿ってハンマが軸方向に摺動する。これにより、スピンドルの外周部とハンマの内周部との間のグリスが取り除かれ、潤滑性が失われるおそれがあった。
【0005】
そこで、本発明は、ハンマの内周部に確実にグリスを供給でき、好適な潤滑性を維持することができるインパクト工具を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、モータと、モータにより回転するスピンドルと、スピンドルに対して前後移動可能で、スピンドルに対向する内周部を有するハンマと、ハンマによって回転方向に打撃され、ハンマの前方側に配置されるアンビルと、を備えたインパクト工具であって、スピンドルの前部に有底孔を設け、ハンマの内周部とスピンドルの有底孔とを連通させ、グリスを内周部に供給可能としたことを特徴とするものである。
上記目的を達成するために、請求項2に記載の発明は、モータと、モータにより回転するスピンドルと、スピンドルに対して前後移動可能で、スピンドルに対向する内周部を有するハンマと、ハンマによって回転方向に打撃されるアンビルと、を備えたインパクト工具であって、ハンマに孔部を設け、ハンマの内周部とハンマの孔部とを連通させ、グリスを内周部に供給可能としたことを特徴とするものである。
上記目的を達成するために、請求項3に記載の発明は、モータと、モータにより回転するスピンドルと、スピンドルに対して前後移動可能で、スピンドルに対向する内周部を有するハンマと、ハンマによって回転方向に打撃されるアンビルと、を備えたインパクト工具であって、ハンマの内周部にグリスを供給するためのグリス供給路を設けると共に、ハンマの内周部に周方向の凹溝を形成して、グリス供給路は、ハンマの前後方向の第1位置で凹溝と連通し、前後方向の第2位置で凹溝と連通しないことを特徴とするものである。
請求項に記載の発明は、請求項の構成において、ハンマの第1位置は、ハンマの後退位置であることを特徴とするものである。
請求項に記載の発明は、請求項の構成において、ハンマの第1位置は、ハンマの前進位置であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ハンマの内周部に確実にグリスを供給でき、好適な潤滑性を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】インパクトドライバの一部縦断面図である。
図2】A−A線断面図である。
図3】B−B線断面図である。
図4】スピンドルの平面図である。
図5】グリス供給路の変更例を示す説明図である。
図6】グリス供給路の変更例を示す説明図である。
図7】グリス供給路の変更例を示す説明図である。
図8】グリス供給路の変更例を示す説明図である。
図9】グリス供給路の変更例を示す説明図である。
図10】グリス供給路の変更例を示す説明図である。
図11】ワッシャの保持構造の変更例を示す説明図で、(A)は前端部分の縦断面、(B)はC−C線断面をそれぞれ示す。
図12】ワッシャの保持構造の変更例を示す説明図で、(A)は前端部分の縦断面、(B)はD−D線断面をそれぞれ示す。
図13】正逆切替レバーの案内構造の変更例を示す一部縦断面図である。
図14】E−E線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、インパクト工具の一例であるインパクトドライバの一部縦断面図、図2はA−A断面図、図3はB−B断面図で、このインパクトドライバ1は、中心軸を前後方向(図1の右側を前方とする。)とする本体部2と、その本体部2から下方へ突出するグリップ部3とを有し、グリップ部3の下端に設けた図示しない取り付け部には、電源となるバッテリーパックが装着されている。グリップ部3の上部には、トリガ5を前方に突出させたスイッチ4が収容されている。
【0010】
本体部2には、後方から、モータ6、遊星歯車減速機構7、スピンドル8、打撃機構9の順で収容されて、アンビル10が本体部2の前端から前方へ突出している。本体部2は、図3に示される左右一対の半割ハウジング11a,11bを複数のネジ12,12・・によって組み付けてなる本体ハウジング11を有しており、モータ6はこの本体ハウジング11の後部に収容されている。なお、各半割ハウジング11a,11bには、グリップ部3を左右に分割したグリップハウジング3a,3bがそれぞれ一体に形成されて,グリップ部3も左右一対のグリップハウジング3a,3bを複数のネジ12,12・・によって組み付けることで形成されている。
【0011】
モータ6は、ステータ13とロータ14とを有するインナーロータ型のブラシレスモータである。まずステータ13は、固定子鉄心15と、固定子鉄心15の前後に設けられる前絶縁部材16及び後絶縁部材17と、前絶縁部材16及び後絶縁部材17を介して固定子鉄心15に巻回される複数のコイル18,18・・と、を有する。また、ロータ14は、軸心に位置する回転軸19と、回転軸19の周囲に配置される筒状の回転子鉄心20と、回転子鉄心20の外側に配置され、筒状で周方向に極性を交互に変えた永久磁石21と、これらの前側において放射状に配置された複数のセンサ用永久磁石22,22・・と、を有する。前絶縁部材16の前端には、ロータ14のセンサ用永久磁石22の位置を検出して回転検出信号を出力する3つの回転検出素子(図示せず)を搭載したセンサ回路基板23がネジ24によって固定されている。このセンサ回路基板23には、コイル18の端末が貫通状態で電気的に接続されている。なお、コイル18のスイッチングを行うスイッチング素子は、バッテリーパックの取り付け部の内部に設けられた図示しない制御基板に搭載されている。
【0012】
ステータ13は、本体ハウジング11の内面に突設されたリブ25によって本体部2と同軸で保持されている。本体ハウジング11の後面には、キャップ状の後ハウジング26が、後方から図示しないネジによって取り付けられており、この後ハウジング26に保持された軸受27が回転軸19の後端を軸支している。28は、軸受27の前方で金属製のインサートブッシュ29を介して回転軸19に取り付けられたモータ冷却用の遠心ファンで、ここでは中央部が前方へすり鉢状に膨出する膨出部30となっており、軸受27は膨出部30のすぐ後側で遠心ファン28とオーバーラップするように配置されている。後ハウジング26の側面には、遠心ファン28の径方向外側に位置する排気口31,31・・・・が形成されて、本体ハウジング11の側面でセンサ回路基板23の径方向外側には、図示しない吸気口が形成されている。
【0013】
一方、回転軸19の前端は、モータ6の前方で本体ハウジング11に保持されたベアリングリテーナ32を貫通して前方へ突出し、ベアリングリテーナ32の後部に保持された軸受33によって軸支されている。34は、回転子鉄心20と軸受33との間で回転軸19に外装されたスリーブ、35は回転軸19の前端に取り付けられたピニオンである。
ベアリングリテーナ32は、中央にくびれ部を形成した金属製の円盤状で、本体ハウジング11の内面に設けたリブ36がくびれ部に嵌合することで、ベアリングリテーナ32は前後方向への移動を規制された状態で本体ハウジング11に保持される。ベアリングリテーナ32の前後面には、放熱用の凹み部37,37がそれぞれ形成されている。
また、ベアリングリテーナ32の前面周縁には、外周に雄ネジ部を形成したリング壁38が前方へ向けて突設されて、このリング壁38に、スピンドル8及び打撃機構9を収容したハンマケース39の雌ネジ部が結合されている。
【0014】
ハンマケース39は、前半部が先細りとなって前筒部40が形成される金属製の筒状体で、後端内周に形成した雌ネジ部をリング壁38の雄ネジ部に螺合させることで、蓋となるベアリングリテーナ32によって後部が閉塞される。ハンマケース39の下面には、突起41が形成されて、組み付け状態では、左右の半割ハウジング11a,11bの内面に突設された図示しない押さえリブがそれぞれ突起41の側面に当接するようになっている。また、ハンマケース39の左右の側面には、図示しない突条が形成されており、この突条が、半割ハウジング11a,11bの内面に形成された図示しない凹溝に嵌合するようになっている。この突起41と押さえリブ、突条と凹溝との係合により、ハンマケース39の回転規制がなされる。
【0015】
ハンマケース39とスイッチ4との間には、モータ6の正逆切替レバー42が左右へスライド可能に設けられ、その前方には、アンビル10の前方を照射するLED43が斜め上向きに取り付けられている。正逆切替レバー42の前面中央には、スイッチ4の上面に設けた切替レバー4aと係合する係合突起44が形成されている。この係合突起44の上側には、半割ハウジング11aに突設された押さえ片45が位置することで、係合突起44の上面と押さえ片45の下端とが接触した状態で摺動することにより、係合突起44の左右のスライドを案内している。また、正逆切替レバー42の中央部は、上面に切欠部46が形成されて薄肉となっている。なお、半割ハウジング11a、11bには、正逆切替レバー42の切欠部46を除く左右の上面42aが摺動するガイド部11cがそれぞれ形成されている。
さらに、本体ハウジング11の前方には、ハンマケース39の前部から前筒部にかけて覆うカバー47が設けられ、カバー47の前端外周部には、ゴム製のバンパ48が装着されている。
【0016】
そして、ベアリングリテーナ32の前部には、軸受49が保持されて、軸受49によってスピンドル8の後端が軸支されている。このスピンドル8は、図4にも示すように、後部に中空で円盤状のキャリア部50を有し、後面から軸心に形成した有底孔51(貫通孔でもよい)内に、回転軸19の前端及びピニオン35を突出させている。
遊星歯車減速機構7は、内歯を有するインターナルギヤ52と、インターナルギヤ52に噛み合う外歯を有する3つのプラネタリーギヤ53,53・・と、を含む。インターナルギヤ52は、ベアリングリテーナ32のリング壁38の内側に同軸で収容されるギヤ部54と、そのギヤ部54の前部外周側に連設され、ギヤ部54より大径の前部55とを有し、前部55には、図3に示すように、周方向に等間隔をおいて4つの凸部56,56・・が前向きに突設されている。この各凸部56が、ハンマケース39の内周面で雌ネジ部の前方に形成された4つの凹部57,57・・にそれぞれ係合することで、インターナルギヤ52の回り止めがなされる。軸方向への移動は、前部55の後面がリング壁38に当接し、凸部56の前面が凹部57の前側に形成される段部58に当接することで規制される。
【0017】
59は、ギヤ部54の後端とベアリングリテーナ32の前面との間に介在されたゴム製のOリングで、このOリング59によって、インターナルギヤ52とベアリングリテーナ32との間がシールされると共に、インターナルギヤ52からベアリングリテーナ32への衝撃も緩和される。
プラネタリーギヤ53は、ピン60によってスピンドル8のキャリア部50内で回転可能に支持されて、回転軸19のピニオン35と噛合している。ピン60の外側でキャリア部50の前部外周には、リング状の立ち上がり部61が形成されている。
【0018】
打撃機構9は、スピンドル8に外装されるハンマ62と、そのハンマ62を前方へ付勢するコイルバネ63とを含む。まずハンマ62は、前面に一対の図示しない爪を有し、内面に形成した外側カム溝64,64と、スピンドル8の表面に形成した内側カム溝65,65とに跨がって嵌合されるボール66,66を介してスピンドル8と結合されている。また、ハンマ62の後面には、リング状の溝67が形成されて、ここにコイルバネ63の前端が挿入されている。溝67の底部には、複数のボール68,68・・及びワッシャ69が収容されてコイルバネ63の前端を受けるようになっている。また、溝67の後端外側には、後方へ行くに従って拡径するテーパ部70が形成されている。一方、コイルバネ63の後端は、立ち上がり部61の内側でキャリア部50の前面に当接している。
【0019】
アンビル10は、ハンマケース39の前筒部40に保持された軸受(ここではニードルベアリング)71によって軸支されて、後端には、ハンマ62の爪と回転方向で係合する一対のアーム72,72が形成されている。アーム72の前方で前筒部40の後面内周側には、図2に示すように、リング状の保持部73が突設され、その保持部73の外側に、アーム72を受ける樹脂製のワッシャ74が嵌合されている。こうして軸受71の後端部の径方向外側にワッシャ74が配置されているので、コンパクトになっている。特に、ニードルベアリングを使用しているので、アンビル10の軸心を芯出しするための保持幅が少なくて済む。
また、アンビル10の後面軸心には、嵌合部としての嵌合孔75が形成されて、ここにスピンドル8の前端が同軸で挿入されている。スピンドル8の前端軸心にも、前側有底孔76が形成されている。一方、アンビル10の前面軸心には、図示しないビットを受け入れる挿入孔77が形成され、アンビル10の前端には、挿入孔77に差し込まれたビットを抜け止めするボール78及びスリーブ79等からなるチャック機構が設けられている。
【0020】
そして、スピンドル8において、内側カム溝65の後方には、図4にも示すように、有底孔51と連通してスピンドル8の外周部に開口する一対のグリス供給路80,80が形成されている。このグリス供給路80は、有底孔51と直交状に形成されて、図1に示すハンマ62の前進位置で、スピンドル8の外周部側の開口にハンマ62の内周部が重なるようになっている。一方、ハンマ62の内周部には、インパクト発生時のハンマ62の後退位置でグリス供給路80の外側に位置する凹溝81が周方向に形成されている。よって、グリス供給路80の開口は、ハンマ62の前後動にかかわらず、常にハンマ62の内周部に位置することになる。
【0021】
以上の如く構成されたインパクトドライバ1においては、トリガ5を押し込んでスイッチ4をONさせると、モータ6に給電されて回転軸19が回転する。すなわち、制御基板のマイコンが、センサ回路基板23の回転検出素子から出力されるロータ14のセンサ用永久磁石22の位置を示す回転検出信号を得てロータ14の回転状態を取得し、取得した回転状態に応じて各スイッチング素子のON/OFFを制御し、ステータ13の各コイル18に対し順番に電流を流すことでロータ14を回転させる。
【0022】
すると、ピニオン35と噛合するプラネタリーギヤ53がインターナルギヤ52内で公転運動し、キャリア部50を介してスピンドル8を減速して回転させる。よって、ハンマ62も回転して爪が係合するアーム72を介してアンビル10を回転させ、ビットによるネジ締めが可能となる。ネジ締めが進んでアンビル10のトルクが高まると、ハンマ62が、ボール66をスピンドル8の内側カム溝65に沿って転動させながらコイルバネ63の付勢に抗して後退し、爪がアーム72から離れると、コイルバネ63の付勢と内側カム溝65の案内とにより、ハンマ62は前進しながら回転して爪を再びアーム72に係合させ、アンビル10に回転打撃力(インパクト)を発生させる。この繰り返しによってさらなる締め付けが可能となる。
【0023】
そして、ここではハンマケース39内に収容されるグリスがピニオン35とインターナルギヤ52とを潤滑するため、このグリスはスピンドル8の有底孔51内にも配置される。よって、インパクト発生時にハンマ62がスピンドル8に沿って前後退する際に、スピンドル8の外周部のグリスが取り除かれることがあっても、新たなグリスが有底孔51からグリス供給路80,80を介してハンマ62の内周部に供給される。特に、ハンマ62の凹溝81によってグリスがハンマ62の内周部に貯留しやすくなる。従って、インパクト発生時でもハンマ62の内周部の潤滑は維持される。
【0024】
このように、上記形態のインパクトドライバ1によれば、ハンマ62の内周部にグリスを供給するためのグリス供給路80を設けたことで、ハンマ62の内周部に確実にグリスを供給でき、好適な潤滑性を維持することができる。
【0025】
なお、上記形態では、グリス供給路80をスピンドル8の軸線と直交状に形成しているが、図5に示すように、グリス供給路80,80をスピンドル8の軸線から傾斜させて形成することもできる。この場合、スピンドル8の回転により、ハンマ62の内周部へ少しずつ供給される。また、図6に示すように、ハンマ62の前進位置でグリス供給路80の開口がハンマ62側の凹溝81と重なるように図5よりも前方に設けてもよい。このようにすれば凹溝81にグリスが溜まりやすい。
また、グリス供給路80の開口は必ずしも常にハンマ62の内周部と重なる構造に限らず、図7に示すように、グリス供給路80を図1よりも後方に設けて、ハンマ62の前進位置では開口がハンマ62の内周部と重ならず、二点鎖線で示すハンマ62の後退位置で開口が当該内周部と重なるようにしてもよい。
【0026】
さらに、スピンドル8の有底孔51側からに限らず、図8に示すように、スピンドル8の前側有底孔76を後方へ延ばして、そこから開口がハンマ62の内周部に達するグリス供給路80を傾斜状に形成してもよい。このようにすればアンビル10とスピンドル8の潤滑用のグリスがハンマ62内周部に供給される。
加えて、図9に示すように、有底孔51と前側有底孔76と連通してスピンドル8の軸心を貫通する貫通孔82を形成し、この貫通孔82から直交状にグリス供給路80を設けることもできる。この場合、スピンドル8の前側と後側との両方からグリスが供給されるし、スピンドル8の軽量化にも繋がる。但し、貫通孔82によってアンビル10の嵌合孔75に達したグリスがスピンドル8の前端を回り込んでハンマ62の内周部に達するため、スピンドル8のグリス供給路80は省略することもできる。
【0027】
そして、スピンドル8側にグリス供給路を形成する構造に限らず、図10に示すように、ハンマ62側に、ハンマ62の溝67と内周部とを連通させるグリス供給路83を直交状に形成することも考えられる。
なお、これらの各形態において、グリス供給路は一対に限らず、3カ所以上設けてもよいし、逆に1カ所だけ設けてもよい。また、ハンマ62の凹溝81はなくても良い。
【0028】
一方、アンビル10のアーム72を受けるワッシャ74の保持は、前筒部40の後端内周に保持部73を突設する構造に限らず、図11に示すように、前筒部40の後端外側に段部84を形成し、その段部84の内側にワッシャ74の外面を嵌合させることで行うこともできる。
また、このような保持部や段部を利用する構造に限らず、図12に示すように、軸受71を長くするか或いは後方へずらすかして軸受71の後端をハンマケース39の前筒部40の後端面よりも後方へ突出させ、その軸受71にワッシャ74を嵌合させて位置決めを図ることもできる。この場合、ハンマケース39の形状が図1図11の場合よりも簡略化し、アンビル10が高精度に回転できる構造を維持しつつ、軸長の短縮化が可能となる。
【0029】
そして、正逆切替レバー42の案内構造も、図13,14に示すように、正逆切替レバー42の後面中央に突起85を突設し、この突起85を、半割ハウジング11aから一体に突設したガイド片86の下面に接触した状態で摺動させることで実現することもできる。ここではガイド片86の下面に設けた凹部86aに突起85が嵌合し、凹部86a内の右壁86bと左壁86cとが正逆切替レバー42の左右のストッパとなっている。
このようにすれば、上面中央に切欠部46を形成してコンパクトにした正逆切替レバー42の左右の摺動性が向上する。
また、正逆切替レバー42は、ハンマケース39の下面と左右方向に重ならせても差し支えない。
これらの構造により、以下の構成も発明として捉えられる。
(1)ワッシャの内周側にニードルベアリングが配置される構成。
(2)正逆切替レバーを前部及び/又は後部でハウジングによりガイドする構成。
(3)ハンマケースの突起の下方に正逆切替レバーのガイド部を設ける構成。
(4)正逆切替レバーの係合突起をガイドする構成。
【0030】
その他、電動工具としてはインパクトドライバに限らず、ハンマによる打撃機構を備えたものであれば、インパクトレンチ等の他のインパクト工具にも本発明は適用可能である。また、上記(2)(4)の発明については、ドライバドリル等の電動工具にも適用できる。
【符号の説明】
【0031】
1・・インパクトドライバ、2・・本体部、3・・グリップ部、6・・モータ、7・・遊星歯車減速機構、8・・スピンドル、9・・打撃機構、10・・アンビル、11・・本体ハウジング、13・・ステータ、14・・ロータ、19・・回転軸、35・・ピニオン、39・・ハンマケース、40・・前筒部、42・・正逆切替レバー、51・・有底孔、62・・ハンマ、63・・コイルバネ、73・・保持部、74・・ワッシャ、76・・前側有底孔、80,83・・グリス供給路、81・・凹溝、82・・貫通孔。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14