(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6198516
(24)【登録日】2017年9月1日
(45)【発行日】2017年9月20日
(54)【発明の名称】フラットフック
(51)【国際特許分類】
F16B 45/02 20060101AFI20170911BHJP
A61G 3/08 20060101ALI20170911BHJP
【FI】
F16B45/02 A
A61G3/08 701
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-168919(P2013-168919)
(22)【出願日】2013年8月15日
(65)【公開番号】特開2015-36582(P2015-36582A)
(43)【公開日】2015年2月23日
【審査請求日】2016年2月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】594016768
【氏名又は名称】オールセーフ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118913
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 邦生
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(72)【発明者】
【氏名】中村 泰三
【審査官】
葛原 怜士郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−210312(JP,A)
【文献】
実開昭53−150365(JP,U)
【文献】
実開昭51−043759(JP,U)
【文献】
英国特許出願公開第02419572(GB,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 45/02
A61G 3/00,3/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗り物の床面に車椅子を固定するための車椅子固定装置に使用されるフラットフックであって、
平板状の金属材料から成り、一端に該平板状の金属材料を板厚方向に湾曲させてU字状に形成された引っ掛け部を有するフック本体と、
該フック本体の前記引っ掛け部の開口を開閉するように前記フック本体に移動可能に取り付けられる抜け止め部材と、
前記開口を閉じる方向に前記抜け止め部材を付勢する付勢部材とを備え、
前記車椅子固定装置が、前記車椅子を前記乗り物の床面に固定する時に該車椅子に引っ掛ける係合部材と、該係合部材が一端に連結されたベルトと、該ベルトをその他端側から巻取る巻芯を備え、該巻芯により前記ベルトを巻取る量によって該ベルトの長さを調整するリトラクタとを有するものであり、
前記平板状の金属材料から成る前記フック本体の他端側が、前記巻芯の長手軸を含む平面に交差する方向に延びる揺動軸線回りに揺動可能に、前記リトラクタに直接連結されており、
前記フック本体が、前記車椅子を前記乗り物の床面に固定する時に、該フック本体の前記他端側よりも下方に前記抜け止め部材が配置されるように、前記引っ掛け部が前記乗り物の床面に設置された被固定部に引っ掛けられるものであり、
前記抜け止め部材が、前記フック本体の幅方向外方に突出し、操作者により操作される操作部を備えるフラットフック。
【請求項2】
前記操作部が、前記フック本体の幅方向の両側に突出している請求項1に記載のフラットフック。
【請求項3】
前記抜け止め部材が、前記フック本体の幅方向に平行な揺動軸回りに揺動可能に設けられ、前記操作部が、前記抜け止め部材の揺動軸から揺動半径方向に離れた位置のみにおいて前記フック本体の幅方向に突出している請求項1または請求項2に記載のフラットフック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フラットフックに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、平板状の金属材料を板厚方向に湾曲させてU字状に形成された引っ掛け部を有するフラットフックが知られている(例えば、非特許文献1参照。)。このフラットフックは、引っ掛け部に対象物を引っ掛けて対象物と引っ掛け部の内面とが相互に押し合うように力をかけることにより、引っ掛けた状態を維持することができるようになっている。また、平板状の金属材料を打ち抜くことによりU字状に形成された引っ掛け部を有し、引っ掛け部の開口を開閉する抜け止め部材が設けられたスナップフックも知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【非特許文献1】アンクラジャパン総合カタログ Vol.10 2009年 p9,25
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、非特許文献1のフラットフックは、抜け止め部材を有していないため、引っ掛け部の開口が常に開放されており、対象物と引っ掛け部の内面とを相互に押し合わせる力が解除されると、簡単に対象物から引っ掛け部が外れてしまうという不都合がある。一方、スナップフックのように抜け止め部材を配置すれば、引っ掛け部が外れてしまうことを防止することができるが、その場合には以下の問題がある。
【0005】
すなわち、まず第1に、フラットフックは、平板状の金属材料を板厚方向に湾曲させて引っ掛け部を形成しているので、スナップフックと比べると比較的大きな幅を有しており、引っ掛け部が操作者から見て裏側にある状態で対象物に引っ掛けられている場合には、抜け止め部材の存在に気づき難く、引っ掛け状態を解除するのに手間がかかるという問題がある。
【0006】
第2に、抜け止め部材は、通常、バネによって閉じた状態に付勢されるため、引っ掛け部を開放させるには、バネの付勢力に抗して抜け止め部材を移動させる必要があり、操作者は適所に力を加える必要がある。しかし、上記のように引っ掛け部が操作者から見て裏側にある状態では、操作者が抜け止め部材のどの位置に力を加えればよいのかを判断することが困難であり、操作者は手探りで力をかける位置を探さなければならず、対象物からの取り外しに時間がかかるという問題がある。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、対象物を引っ掛けた状態に維持することができ、かつ、対象物からの取り外しも容易に行うことができるフラットフックを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
本発明の一態様は、
乗り物の床面に車椅子を固定するための車椅子固定装置に使用されるフラットフックであって、平板状の金属材料から成り、一端に該平板状の金属材料を板厚方向に湾曲させてU字状に形成された引っ掛け部を有するフック本体と、該フック本体の前記引っ掛け部の開口を開閉するように前記フック本体に移動可能に取り付けられる抜け止め部材と、前記開口を閉じる方向に前記抜け止め部材を付勢する付勢部材とを備え、
前記車椅子固定装置が、前記車椅子を前記乗り物の床面に固定する時に該車椅子に引っ掛ける係合部材と、該係合部材が一端に連結されたベルトと、該ベルトをその他端側から巻取る巻芯を備え、該巻芯により前記ベルトを巻取る量によって該ベルトの長さを調整するリトラクタとを有するものであり、前記平板状の金属材料から成る前記フック本体の他端側が、前記巻芯の長手軸を含む平面に交差する方向に延びる揺動軸線回りに揺動可能に、前記リトラクタに直接連結されており、前記フック本体が、前記車椅子を前記乗り物の床面に固定する時に、該フック本体の前記他端側よりも下方に前記抜け止め部材が配置されるように、前記引っ掛け部が前記乗り物の床面に設置された被固定部に引っ掛けられるものであり、前記抜け止め部材が、前記フック本体の幅方向外方に突出し、操作者により操作される操作部を備えるフラットフックを提供する。
【0008】
本態様に
係るフラットフックを用いて、乗り物の床面の被固定部にフラットフックを引っ掛けるには、操作者は、例えばフック本体においてリトラクタに直接連結された他端側よりも下方に抜け止め部材が配置されている姿勢で、被固定部に抜け止め部材の外面を押し付けて、付勢部材の付勢力に抗して抜け止め部材によって閉じられていたフック本体の引っ掛け部の開口を開放させ、引っ掛け部に被固定部を引っ掛ける。そして、被固定部がフック本体の開口から引っ掛け部内に入ると、被固定部が抜け止め部材から外れて、抜け止め部材を押していた力が解除されるので、抜け止め部材が付勢部材の付勢力によって引っ掛け部の開口を閉じる。これにより、引っ掛け部に力をかけ続けなくても、対象物にフラットフックを引っ掛けた状態に維持することができる。そして、フラットフックを対象物から取り外すときには、操作者は、操作部を操作して付勢部材に抗して抜け止め部材を移動させることにより、引っ掛け部の開口を開放する。これにより、フラットフックを対象物から容易に取り外すことができる。
【0009】
この場合において、引っ掛け部が操作者から見てフック本体の裏側にある場合にも、操作者は、フック本体の幅方向外方に突出している操作部を容易に目視で確認することができる。したがって、操作者は、視認できた抜け止め部材を容易に操作することができ、手探りで抜け止め部材の操作位置を探す必要がなく、対象物からのフラットフックの取り外しを容易に行うことができる。
【0010】
上記態様においては、前記操作部が、前記フック本体の幅方向の両側に突出していてもよい。
このようにすることで、操作者は、フック本体の幅方向両側に突出する2つの操作部を同時につかむように指をかけて操作することができ、抜け止め部材に力をかけ易くなり、フラットフックを対象物から取り外す際の操作性をさらに向上させることができる。
【0011】
上記態様においては、前記抜け止め部材が、前記フック本体の幅方向に平行な揺動軸回りに揺動可能に設けられ、前記操作部が、前記抜け止め部材の揺動軸から揺動半径方向に離れた位置のみにおいて前記フック本体の幅方向に突出していてもよい。
このようにすることで、引っ掛け部が操作者から見てフック本体の裏側にある場合においても、操作部の存在を容易に確認することができるのみならず、引っ掛け部を小さい力で揺動させるために適した位置に力をかけることができ、フラットフックの操作性をさらに向上させることができる。
【発明の効果】
【0012】
対象物を引っ掛けた状態に維持することができ、かつ、対象物からの取り外しも容易に行うことができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態に係るフラットフックの斜視図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係るフラットフック側面図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係るフラットフック正面図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係るフラットフックを被固定部に引っ掛けた状態の車椅子固定装置の全体正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の一実施形態に係るフラットフック1について、図面を参照して以下に説明する。
本実施形態に係るフラットフック1は、
図1から
図3に示されるように、U字状に形成された引っ掛け部2を有するフック本体3と、引っ掛け部2の開口4を開閉するようにフック本体3に、該フック本体3の幅方向に延びる揺動軸線回りに揺動可能に取り付けられた抜け止め部材5と、引っ掛け部2の開口4を閉じる方向に抜け止め部材5を付勢するばね部材6とを備えている。
【0015】
このフラットフック1は、例えば、自動車等の乗り物の床面Aに車椅子を固定するための車椅子固定装置30に使用される。該車椅子固定装置30は、
図4に示されるように、係合部材31と、該係合部材31が一端に連結される布製のベルト32と、該ベルト32をその他端から巻取る巻芯と、金属製の線材を湾曲させて形成された係合フック部33と、ベルト32を巻取る量によりベルト32の長さを調節するリトラクタ34と、巻芯の長手軸を含む平面に交差する方向に延びる揺動軸線回りに揺動可能にリトラクタ34に連結されるフラットフック1とを備えている。
【0016】
この車椅子固定装置30は、
図4に示されるように、フック本体3の引っ掛け部2を自動車等の乗り物の床面Aに設置された略U字形状の金属製の被固定部P(対象物)に引っ掛けると共に、フック本体3の一端に連結された係合部材31の係合フック部33を車椅子に引っ掛けることにより、車椅子と床面Aとを連結する。そして、リトラクタ34によりベルト32の長さを調節してベルト32に張力をかけることにより、車椅子を床面Aに固定することができるようになっている。
【0017】
フック本体3は、
図1および
図2に示されるように、平板状の金属材料の一端を板厚方向に湾曲させることによりU字状に形成された引っ掛け部2を有している。フック本体3の他端側には、板厚方向に貫通する貫通孔8と、フック本体3の幅方向の両側から引っ掛け部2と同じ方向に折り曲げて形成された一対の取付部9とが設けられている。
一対の取付部9間には、抜け止め部材5をその軸線回りに揺動可能に取り付ける揺動軸7が固定されている。
【0018】
抜け止め部材5は、
図1または
図3に示されるように、平板状の金属材料の一端を抜け止め部材5の幅方向の両側を板厚方向に折り曲げて形成された一対の折り曲げ部10を有している。
抜け止め部材5は、一対の折り曲げ部10に設けた貫通孔に揺動軸7を貫通させることにより、揺動軸7の軸線回りに揺動可能に取り付けられている。
【0019】
また、抜け止め部材5には、幅方向の両側に幅方向外方に向かって突出する一対の操作部11が設けられている。操作部11は、揺動軸7からその揺動半径方向に離れた位置のみにおいて、フック本体3の幅寸法より大きく突出させることにより構成されている。
【0020】
ばね部材6は、
図2に示されるように、揺動軸7に巻き付けられたコイルバネであり、両端がフック本体3と抜け止め部材5の対向する面に引っ掛けられ、これらの面間隔が広がる方向に付勢力を発生するようになっている。
【0021】
このように構成された本実施形態に係るフラットフック1の作用について以下に説明する。
本実施形態に係るフラットフック1を用いて、被固定部Pにフラットフック1を引っ掛けるには、操作者は、被固定部Pに抜け止め部材5の外面を押し付けて、抜け止め部材5をバネ部材6の付勢力に抗して揺動させることにより、抜け止め部材5によって閉じられていたフック本体3の開口4を開放させ、引っ掛け部2に被固定部Pを引っ掛ける。
【0022】
そして、被固定部Pがフック本体3の開口4から引っ掛け部2内に入ると、被固定部Pが抜け止め部材5から外れて、抜け止め部材5を押していた力が解除されるので、抜け止め部材5がばね部材6の付勢力によって開口4を閉じる方向に揺動し、引っ掛け部2の開口4が閉じられる。これにより、被固定部Pにフラットフック1を引っ掛けた状態に維持することができる。
【0023】
一方、フラットフック1を被固定部Pから取り外すときには、操作者は、抜け止め部材5に力を加えてフック本体3の開口4を開く方向に揺動させる。これにより、フラットフック1を被固定部Pから容易に取り外すことができる。
【0024】
この場合において、本実施形態に係るフラットフック1は、床面Aに設けられた被固定部Pに引っ掛け部2を引っ掛けるために引っ掛け部2が操作者から見てフック本体3の裏側に配置される形態で使用される。このフラットフック1によれば、抜け止め部材5に幅方向両側に突出する操作部11が設けられているので、引っ掛け部2が操作者から見てフック本体3の裏側にある場合においても、操作者は、フック本体3の幅方向外方に突出している操作部11を容易に目視で確認することができる。したがって、操作者は、視認した抜け止め部材5を容易に操作することができ、手探りで抜け止め部材5の操作位置を探す必要がなく、被固定部Pからのフラットフック1の取り外しをさらに容易に行うことができる。
【0025】
また、操作者は、フック本体3の幅方向両端に突出する2つの操作部11を同時につかむように指をかけて操作することができる。これにより、抜け止め部材5に力をかけ易くなり、フラットフック1を被固定部Pから取り外す際の操作性をさらに向上させることができる。
【0026】
さらに、操作部11は、揺動軸7から揺動半径方向に離れた位置のみにおいて幅方向に突出しているので、操作者は、操作部11に力をかけるだけで、抜け止め部材5を揺動させるのに十分なモーメントを発生させることができる。すなわち、操作部11によって、抜け止め部材5を小さい力で揺動させるために適した位置が指定されるので、フラットフック1の操作性をさらに向上させることができる。
【0027】
なお、本実施形態に係るフラットフック1においては、付勢部材としてばね部材6を例示しているが、付勢部材はこれに限定されるものではなく、開口4を閉じる方向に抜け止め部材5を付勢することができる部材であればよい。例えば、抜け止め部材5とフック本体3の他端側との対向する面の間に、これらの面に両端が接続されたゴム部材を配置し、ゴム部材が開口4を閉じる方向に抜け止め部材5を付勢するようにしてもよい。
【0028】
また、本実施形態においては、車椅子固定装置30に組み込まれて使用されるフラットフック1について説明したが、フラットフック1の用途はこれに限られるものではない。例えば、フラットフック1を布製ベルトの一端に取り付けたラッシングベルトに用いてもよい。
【符号の説明】
【0029】
1 フラットフック
2 引っ掛け部
3 フック本体
4 開口
5 抜け止め部材
6 ばね部材(付勢部材)
7 揺動軸
11 操作部