特許第6198545号(P6198545)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6198545
(24)【登録日】2017年9月1日
(45)【発行日】2017年9月20日
(54)【発明の名称】クローズドブリーザシステム
(51)【国際特許分類】
   F01M 13/00 20060101AFI20170911BHJP
   F02M 35/024 20060101ALI20170911BHJP
   F02M 35/10 20060101ALI20170911BHJP
【FI】
   F01M13/00 G
   F02M35/024 521E
   F02M35/10 311Z
   F01M13/00 H
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-199174(P2013-199174)
(22)【出願日】2013年9月26日
(65)【公開番号】特開2015-63973(P2015-63973A)
(43)【公開日】2015年4月9日
【審査請求日】2016年8月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005463
【氏名又は名称】日野自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000512
【氏名又は名称】特許業務法人山田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】戸部 邦治
(72)【発明者】
【氏名】木村 昌裕
(72)【発明者】
【氏名】頓宮 浩史
(72)【発明者】
【氏名】下地 敏央
(72)【発明者】
【氏名】間宮 直木
【審査官】 北村 亮
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭58−094808(JP,U)
【文献】 特開2004−011545(JP,A)
【文献】 特開2012−087684(JP,A)
【文献】 特開2012−007531(JP,A)
【文献】 特開2000−045748(JP,A)
【文献】 特開2007−016664(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01M 13/00
F02M 35/024
F02M 35/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン側から抜き出したブローバイガスをガス戻し管を介し吸気管に戻すようにしたクローズドブリーザシステムであって、吸気管におけるガス戻し管の接続箇所とエアクリーナとの間に前記吸気管の壁面を流れ落ちたオイルを収容するオイルピットが備えられ、このオイルピットが、前記吸気管の長手方向の適宜位置における最下端部に形成された開口部と、該開口部を下方から被覆するように吸気管の外周に装着され且つその底部にオイル排出口を備えたオイル回収容器とにより構成され、前記オイルピットの底部からオイルを流下させてエンジンのオイルパンに回収し得るよう該オイルパンと前記オイル回収容器のオイル排出口とが連絡管を介して接続されていることを特徴とするクローズドブリーザシステム。
【請求項2】
オイルピットの開口部をドリル加工により相互に重ならないよう間を空けて穿設した複数のドリル穴により構成したことを特徴とする請求項に記載のクローズドブリーザシステム。
【請求項3】
オイルピットの開口部の周囲を所要の余剰代分だけ大きめにオイル回収容器で被覆し、該オイル回収容器の上部開口の全周で前記余剰代の部分が内側に張り出してオイル返し部を成すように構成したことを特徴とする請求項1又は2に記載のクローズドブリーザシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クローズドブリーザシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
エンジンの圧縮行程と爆発行程においてピストンリングの間隙よりクランクケースへ漏れ出るブローバイガスは、クランクケース内及び該クランクケースと連通しているシリンダヘッドカバー内に充満してくるため、これらの内部から外部に抜き出す必要があるが、クランクケース内ではクランク軸及びコネクティングロッド等が高速で動いており、クランクケースと連通するシリンダヘッドカバー内においてもロッカアーム及びバルブ等が作動しているため、クランクケースやシリンダヘッドカバーの内部はオイルミストが充満した状態にある。
【0003】
このため、ブローバイガスをそのまま大気放出してしまうと、該ブローバイガスに混合しているオイルミストも外部へ排出されてしまう虞れがあるため、図6に示す如く、ブローバイガス1中のオイルミストを分離回収するための濾網又はラビリンス構造を内蔵したベンチレータ2(CCV:Closed Crankcase Ventilator)を設け、エンジン3のシリンダヘッドカバー4からガス抜出管5を介して抜き出したブローバイガス1を前記ベンチレータ2を通すことによりオイルミストを分離回収してからガス戻し管6を介して吸気管7に戻し、前記ベンチレータ2で回収したオイル8をオイル回収管9を介し図示しないオイルパンへと戻すようにしている。
【0004】
尚、図6中における10はエアクリーナ、11はターボチャージャ、11aはコンプレッサ、11bはタービン、12はインタークーラ、13は吸気、14は排気ガスを夫々示している。
【0005】
一般的に、前述の如きブローバイガス1をクローズドサーキットで処理するシステムはクローズドブリーザシステムと称されているが、この種のクローズドブリーザシステムに関連する先行技術文献情報としては下記の特許文献1等がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−278523号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、斯かる従来のクローズドブリーザシステムにおいては、ブローバイガス1に含まれるオイルミストをベンチレータ2で分離回収しているものの、該ベンチレータ2でオイルミストを完全に取り切ることは困難であり、取り切れなかった微量のオイルミストがブローバイガス1の流れに随伴して吸気管7に入り込み、該吸気管7の壁面に付着してオイルの液滴となってエアクリーナ10まで流下し、該エアクリーナ10から滴下して地面を汚してしまうという問題があった。
【0008】
特にトラック等の運搬車両では、エアクリーナ10がシャシ付けとなることから低い位置にレイアウトされるケースが多く、吸気管7におけるガス戻し管6の接続箇所からエアクリーナ10にかけての部位が下り勾配となり易かったため、車両を停止して荷の積み卸し作業を行っている間に得意先の敷地内を汚してしまうことがあり、エアクリーナ10からのオイルの滴下を防ぐ対策が求められている。
【0009】
本発明は上述の実情に鑑みてなしたもので、エアクリーナからオイルが滴下して地面を汚してしまう問題を防止し得るクローズドブリーザシステムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、エンジン側から抜き出したブローバイガスをガス戻し管を介し吸気管に戻すようにしたクローズドブリーザシステムであって、吸気管におけるガス戻し管の接続箇所とエアクリーナとの間に前記吸気管の壁面を流れ落ちたオイルを収容するオイルピットが備えられ、このオイルピットが、前記吸気管の長手方向の適宜位置における最下端部に形成された開口部と、該開口部を下方から被覆するように吸気管の外周に装着され且つその底部にオイル排出口を備えたオイル回収容器とにより構成され、前記オイルピットの底部からオイルを流下させてエンジンのオイルパンに回収し得るよう該オイルパンと前記オイル回収容器のオイル排出口とが連絡管を介して接続されていることを特徴とするものである。
【0011】
而して、このようにすれば、ブローバイガスの流れに随伴してオイルミストが吸気管に入り込み、該吸気管の壁面に付着してオイルの液滴となって流れ落ちても、そのオイルの液滴はエアクリーナに至るより先にオイルピットに収容され、該オイルピットの底部から連絡管を介し流下してエンジンのオイルパンに回収されるため、エアクリーナからのオイルの滴下が未然に防止されることになる。
【0013】
更に、このようにオイルピットを構成する場合には、オイルピットの開口部をドリル加工により相互に重ならないよう間を空けて穿設した複数のドリル穴により構成することが好ましく、このようにすれば、汎用のドリル工具を用いて簡単にオイルピットの開口部を穿設することが可能となり、しかも、各開口部相互の間に管肉部分が残ることで前記各開口部周囲の管内への反り返りが生じ難くなる。
【0014】
また、オイルピットの開口部の周囲を所要の余剰代分だけ大きめにオイル回収容器で被覆し、該オイル回収容器の上部開口の全周で前記余剰代の部分が内側に張り出してオイル返し部を成すように構成することが好ましく、このようにすれば、オイルピット内に収容されたオイルが車両振動により揺動しても、オイル返し部によりオイルの吸気管側への逆戻りが阻止されることになる。
【発明の効果】
【0015】
上記した本発明のクローズドブリーザシステムによれば、下記の如き種々の優れた効果を奏し得る。
【0016】
(I)本発明の請求項に記載の発明によれば、ブローバイガスの流れに随伴して吸気管内に入り込んだオイルの液滴をエアクリーナに至るより先にオイルピットに収容し、該オイルピットの底部から連絡管を介し流下させてエンジンのオイルパンに回収することができるので、エアクリーナからオイルが滴下して地面を汚してしまう問題を防止することができる。
【0017】
(II)本発明の請求項に記載の発明によれば、汎用のドリル工具を用いて簡単にオイルピットの開口部を穿設することができるので、オイルピットの加工費を安価に抑えることができ、しかも、各開口部相互の間に管肉部分が残ることで前記各開口部周囲の管内への反り返りを生じ難くすることができるので、このような反り返りによる圧力損失の上昇を回避することができる。
【0018】
(III)本発明の請求項に記載の発明によれば、オイルピット内に収容されたオイルが車両振動により揺動しても、オイル返し部によりオイルの吸気管側への逆戻りを阻止することができるので、より一層確実にエアクリーナからのオイルの滴下を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明を実施する形態の一例を示す側面図である。
図2図1のII−II方向の矢視図である。
図3】複数のドリル穴を部分的に重ねて開口部を加工した例を示す図である。
図4図3のIV−IV矢視の90°右回転した断面図である。
図5図2のV−V矢視の90°右回転した断面図である。
図6】従来例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
【0021】
図1は本発明を実施する形態の一例を示すもので、図6と同一の符号を付した部分は同一物を表わしている。
【0022】
図1及び図2に示す如く、本形態例においては、図6の場合と同様に、エンジン3(図6参照)側から抜き出したブローバイガス1をガス戻し管6を介し吸気管7に戻すようにしたクローズドブリーザシステムに関し、吸気管7におけるガス戻し管6の接続箇所とエアクリーナ10との間に前記吸気管7の壁面を流れ落ちたオイル8を収容するオイルピット15を設けると共に、該オイルピット15の底部からオイル8を流下させて所要場所に回収し得るように構成したところを特徴としており、より具体的には、吸気管7の長手方向の適宜位置における最下端部に形成された開口部16と、該開口部16を下方から被覆するように吸気管7の外周に装着され且つその底部にオイル排出口17を備えたオイル回収容器18とによりオイルピット15を構成し、前記オイル排出口17を連絡管19を介してエンジン3(図6参照)のオイルパン(図示せず)と接続するようにしている。
【0023】
ここで、オイルピット15の開口部16を加工するにあたっては、汎用のドリル工具を用いて簡単に穿設することができるが、図3及び図4に示すように、複数のドリル穴を部分的に重ねて開口部16を加工してしまうと、その重なり部分にできる先の尖った残部xが管内への反り返りを生じ、これが圧力損失の上昇を招いてしまうので、図2に鎖線で示す如く、ドリル加工により相互に重ならないよう間を空けて複数のドリル穴を穿設して開口部16とし、該各開口部16相互の間に管肉部分を残して前記各開口部16周囲の管内への反り返りを生じ難くしている。
【0024】
また、図2及び図5に示す如く、オイルピット15の開口部16の周囲は、所要の余剰代分だけ大きめにオイル回収容器18で被覆されるようになっており、該オイル回収容器18の上部開口の全周で前記余剰代の部分が内側に張り出してオイル返し部20を成すようになっている。
【0025】
而して、このようにすれば、ブローバイガス1の流れに随伴してオイルミストが吸気管7に入り込み、該吸気管7の壁面に付着してオイル8の液滴となって流れ落ちても、そのオイル8の液滴はエアクリーナ10に至るより先にオイルピット15に収容され、該オイルピット15の底部から連絡管19を介し流下してエンジン3(図6参照)のオイルパン(図示せず)に回収されるため、エアクリーナ10からのオイル8の滴下が未然に防止されることになる。
【0026】
更に、前述した通り、オイルピット15の開口部16をドリル加工により相互に重ならないよう間を空けて穿設した複数のドリル穴により構成しているので、汎用のドリル工具を用いて簡単にオイルピット15の開口部16を穿設することが可能となり、しかも、各開口部16相互の間に管肉部分が残ることで前記各開口部16周囲の管内への反り返りが生じ難くなる。
【0027】
また、オイルピット15の開口部16の周囲を所要の余剰代分だけ大きめにオイル回収容器18で被覆し、該オイル回収容器18の上部開口の全周で前記余剰代の部分が内側に張り出してオイル返し部20を成すように構成しているので、オイルピット15内に収容されたオイル8が車両振動により揺動しても、オイル返し部20によりオイル8の吸気管7側への逆戻りが阻止されることになる。
【0028】
従って、上記形態例によれば、ブローバイガス1の流れに随伴して吸気管7内に入り込んだオイル8の液滴をエアクリーナ10に至るより先にオイルピット15に収容し、該オイルピット15の底部から連絡管19を介し流下させてエンジン3(図6参照)のオイルパン(図示せず)に回収することができるので、エアクリーナ10からオイル8が滴下して地面を汚してしまう問題を防止することができる。
【0029】
また、汎用のドリル工具を用いて簡単にオイルピット15の開口部16を穿設することができるので、オイルピット15の加工費を安価に抑えることができ、しかも、各開口部16相互の間に管肉部分が残ることで前記各開口部16周囲の管内への反り返りを生じ難くすることができるので、このような反り返りによる圧力損失の上昇を回避することができる。
【0030】
更に、オイルピット15内に収容されたオイル8が車両振動により揺動しても、オイル返し部20によりオイル8の吸気管7側への逆戻りを阻止することができるので、より一層確実にエアクリーナ10からのオイル8の滴下を防止することができる。
【0031】
尚、本発明のクローズドブリーザシステムは、上述の形態例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0032】
1 ブローバイガス
3 エンジン
6 ガス戻し管
7 吸気管
8 オイル
10 エアクリーナ
15 オイルピット
16 開口部
17 オイル排出口
18 オイル回収容器
19 連絡管
20 オイル返し部
図1
図2
図3
図4
図5
図6