(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
主電源からの電力供給を受けて稼動する負荷に接続され、前記主電源の停止時に前記負荷に電力を供給するバックアップ電源システムであり、電池残量を検出可能とされた蓄電池と、出力が通常時の前記負荷の消費電力よりも低い燃料電池とを含んで構成された当該バックアップ電源システム、により実行される制御方法であって、
前記主電源の停止時に前記蓄電池の電池残量情報および前記負荷の稼動状況に関する情報を取得するステップと、
前記蓄電池の電池残量および前記負荷の稼動状況に応じて前記負荷の稼動を制限することで前記負荷の消費電力を低減させるよう制御するステップと、
を備え、
前記負荷は、無線通信ネットワークにおいて、電力により稼動する一般基地局、および、カバレッジエリアが複数の前記一般基地局の制御エリアを含んだエリアに拡大可能とされ災害時に商用電力以外の動力源により稼動可能とされた大ゾーン基地局、のうち、前記一般基地局であり、
前記取得するステップにおいて、前記バックアップ電源システムは、前記負荷の稼動状況に関する情報として、予め区分けされた複数の周波数帯域ごとの通信量に関する情報および前記大ゾーン基地局の当該時点の制御エリア情報を取得し、
前記制御するステップにおいて、前記バックアップ電源システムは、各周波数帯域の通信量が所定の基準値未満であり且つ前記大ゾーン基地局の当該時点の制御エリアが複数の前記一般基地局の制御エリアを含んだエリアに拡大されている場合に、各周波数帯域の無線通信サービスを制限可能と判断し、制限可能と判断された周波数帯域の無線通信サービスを制限する、
制御方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、特許文献1の技術には、負荷に消費電力カットの余地がある場合に負荷の消費電力をカットするといった発想は無く、通常時の負荷の消費電力をカバー可能な燃料電池を装備し、この燃料電池から負荷に(状況によっては、負荷と蓄電池の両方に)電力供給する技術と考えられ、バックアップ電源に費やすコストの高騰が懸念される。また、停電が長引いた場合のために、バックアップ時間をより長くすることがバックアップ電源に対し求められる。
【0005】
本発明は、上記課題を考慮し、負荷の消費電力およびバックアップ電源の出力を適切に制御することで、コストを削減しつつバックアップ時間の長期化を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るバックアップ電源システムは、主電源からの電力供給を受けて稼動する負荷に接続され、主電源の停止時に負荷に電力を供給するバックアップ電源システムであって、電池残量を検出可能とされた蓄電池と、出力が通常時の負荷の消費電力よりも低い燃料電池と、主電源の停止時に蓄電池の電池残量情報および負荷の稼動状況に関する情報を取得し、蓄電池の電池残量および負荷の稼動状況に応じて負荷の稼動を制限することで負荷の消費電力を低減させるよう制御する制御装置と、を備え、
負荷は、無線通信ネットワークにおいて、電力により稼動する一般基地局、および、カバレッジエリアが複数の一般基地局の制御エリアを含んだエリアに拡大可能とされ災害時に商用電力以外の動力源により稼動可能とされた大ゾーン基地局、のうち、一般基地局であり、制御装置は、負荷の稼動状況に関する情報として、予め区分けされた複数の周波数帯域ごとの通信量に関する情報および大ゾーン基地局の当該時点の制御エリア情報を取得し、各周波数帯域の通信量が所定の基準値未満であり且つ大ゾーン基地局の当該時点の制御エリアが複数の一般基地局の制御エリアを含んだエリアに拡大されている場合に、各周波数帯域の無線通信サービスを制限可能と判断し、制限可能と判断された周波数帯域の無線通信サービスを制限する。
【0007】
このような構成のバックアップ電源システムは、燃料電池として、出力が通常時の負荷の消費電力よりも低い燃料電池を備えている。燃料電池のコストは出力の大きさに概ね比例するため、このように出力が通常時の負荷の消費電力よりも低い燃料電池であれば、低コストで装備できる。また、上記バックアップ電源システムでは、制御装置が、主電源の停止時に蓄電池の電池残量情報および負荷の稼動状況に関する情報を取得し、蓄電池の電池残量および負荷の稼動状況に応じて負荷の稼動を制限することで負荷の消費電力を低減させるよう制御する。これにより、例えば、蓄電池の電池残量が少ない、負荷の稼動量が少ないといった状況にあり負荷の稼動を制限可能と判断できる場合に負荷の稼動を制限することで負荷の消費電力を低減させることができる。このように負荷の消費電力を低減できるため、バックアップ電源システムにおいて燃料電池と併用される蓄電池を小容量の蓄電池でまかなうことができ、さらにコスト削減を図ることができる。換言すれば、小容量の蓄電池を用いた場合でも、十分なバックアップ時間を確保することができる。
また、負荷は、無線通信ネットワークにおいて、電力により稼動する一般基地局、および、カバレッジエリアが複数の一般基地局の制御エリアを含んだエリアに拡大可能とされ災害時に商用電力以外の動力源により稼動可能とされた大ゾーン基地局、のうち、一般基地局としてもよく、制御装置は、負荷の稼動状況に関する情報として、予め区分けされた複数の周波数帯域ごとの通信量に関する情報および大ゾーン基地局の当該時点の制御エリア情報を取得し、各周波数帯域の通信量が所定の基準値未満であり且つ大ゾーン基地局の当該時点の制御エリアが複数の一般基地局の制御エリアを含んだエリアに拡大されている場合に、各周波数帯域の無線通信サービスを制限可能と判断し、制限可能と判断された周波数帯域の無線通信サービスを制限してもよい。
【0008】
以上のように本発明に係るバックアップ電源システムでは、燃料電池と蓄電池の併用によりバックアップ時間の長期化を図りつつ、同時に、コスト削減を図ることができる。
【0009】
上記の「負荷の稼動状況に関する情報」としては、負荷の稼動量の大きさに関する情報や、負荷が稼動している時刻(負荷の稼動時刻)に関する情報が含まれる。そのため、制御装置は、より具体的には、負荷の稼動状況に関する情報として、負荷の稼動量に関する情報または負荷の稼動時刻に関する情報を取得し、蓄電池の電池残量が所定の基準値未満であるか否か、および、負荷の稼動量が当該負荷の稼動を制限可能な所定のレベル未満であるか否か、または、負荷の稼動時刻が当該負荷の稼動を制限可能な所定の時間帯にあるか否か、に応じて、負荷の稼動を制限してもよい。このように負荷の稼動状況として、負荷の稼動量や負荷の稼動時刻といった容易に取得可能な情報に基づいて、負荷の稼動制限に係る制御を実行することができる。
【0010】
上記の「負荷」としては、無線通信ネットワークにおける通信装置を適用することができる。
【0011】
例えば「負荷」として、無線通信ネットワークにおける基地局を適用した場合、制御装置は、負荷の稼動状況に関する情報として、予め区分けされた複数の周波数帯域ごとの通信量に関する情報を取得し、各周波数帯域の通信量と所定の1つ以上の基準値との大小比較結果に基づいて、各周波数帯域の無線通信サービスを制限可能か否かを判断し、制限可能と判断された周波数帯域の無線通信サービスを制限してもよい。このように、複数の周波数帯域ごとに無線通信サービスを制限可能か否かを判断し、制限可能と判断された周波数帯域の無線通信サービスを制限する、といった応用が可能となる。
【0012】
また、無線通信ネットワークにおける基地局は、「一般基地局」と、複数の一般基地局の制御エリアを含んだカバレッジエリアを持ち災害時に商用電力以外の動力源により長時間の稼動が可能とされた「大ゾーン基地局」と、に分類できる。ここで、「負荷」として、無線通信ネットワークにおける一般基地局を適用した場合、制御装置は、負荷の稼動状況に関する情報として、さらに大ゾーン基地局の当該時点の制御エリア情報を取得し、大ゾーン基地局の当該時点の制御エリア情報もさらに基礎として、各周波数帯域の無線通信サービスを制限可能か否かを判断し、制限可能と判断された周波数帯域の無線通信サービスを制限してもよい。例えば、大ゾーン基地局の当該時点の制御エリアが、複数の一般基地局の制御エリアを含んでいるときには、当該複数の一般基地局による無線通信サービスは大ゾーン基地局によって代替可能である。そこで、このような状況をさらに踏まえた上で、各周波数帯域の無線通信サービスを制限可能か否かを適切に判断し、制限可能と判断された周波数帯域の無線通信サービスを制限することで、さらなるコスト削減を図ることができる。
【0013】
上述したバックアップ電源システムに係る発明は、バックアップ電源システムにより実行される制御方法に係る発明として捉えることができ、以下のように記述することができる。
【0014】
本発明に係る制御方法は、主電源からの電力供給を受けて稼動する負荷に接続され主電源の停止時に負荷に電力を供給するバックアップ電源システムであり、電池残量を検出可能とされた蓄電池と、出力が通常時の負荷の消費電力よりも低い燃料電池とを含んで構成された当該バックアップ電源システム、により実行される制御方法であって、主電源の停止時に蓄電池の電池残量情報および負荷の稼動状況に関する情報を取得するステップと、蓄電池の電池残量および負荷の稼動状況に応じて負荷の稼動を制限することで負荷の消費電力を低減させるよう制御するステップと、を備え、
負荷は、無線通信ネットワークにおいて、電力により稼動する一般基地局、および、カバレッジエリアが複数の一般基地局の制御エリアを含んだエリアに拡大可能とされ災害時に商用電力以外の動力源により稼動可能とされた大ゾーン基地局、のうち、一般基地局であり、取得するステップにおいて、バックアップ電源システムは、負荷の稼動状況に関する情報として、予め区分けされた複数の周波数帯域ごとの通信量に関する情報および大ゾーン基地局の当該時点の制御エリア情報を取得し、制御するステップにおいて、バックアップ電源システムは、各周波数帯域の通信量が所定の基準値未満であり且つ大ゾーン基地局の当該時点の制御エリアが複数の一般基地局の制御エリアを含んだエリアに拡大されている場合に、各周波数帯域の無線通信サービスを制限可能と判断し、制限可能と判断された周波数帯域の無線通信サービスを制限する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、負荷の消費電力およびバックアップ電源の出力を適切に制御することで、コストを削減しつつバックアップ時間の長期化を図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る実施形態を説明する。以下では、本発明の基本的な態様に関する第1実施形態と、大ゾーン基地局を含む通信システムに適用した例に関する第2実施形態とを説明する。
【0018】
[第1実施形態]
図1には、バックアップ電源システムおよび関連装置の全体構成を示す。このバックアップ電源システムは、例えば無線通信システムにおける基地局を負荷40として想定し、基地局のバックアップ電源として設置される。
図1に示すように、負荷(基地局)40には、主電源として、交流の商用電力源51が整流器52を介して接続されている。商用電力源51からの交流電力は整流器52によって直流電力に変換され、変換後の直流電力が負荷40に供給される。
【0019】
上記のような主電源(商用電力源51)に加え、停電発生時に負荷40に電力を供給するバックアップ電源システム1が設けられている。バックアップ電源システム1は、負荷40に対し互いに並列に接続された燃料電池30および蓄電池20と、後述するようにバックアップ電源システム1の動作を制御する制御装置10と、を含んで構成されており、制御装置10は負荷40および蓄電池20に接続されている。
【0020】
燃料電池30は、出力が通常時の負荷40の消費電力よりも低い燃料電池であり、停電発生時に自動的に起動し負荷40への電力供給を開始する。一方、蓄電池20は、電池残量を検出可能とされ、検出で得られた電池残量情報(いわゆるSOC:State Of Charge)を制御装置10へ送信する。蓄電池20は小規模なものであり、蓄電池20の容量は燃料電池30に対し十分に小さいものとする。
【0021】
図2に示すように、制御装置10は、蓄電池20の電池残量情報を蓄電池20から受信する蓄電池情報受信部11と、負荷40の稼動状況に関する情報を負荷40から受信する負荷情報受信部12と、蓄電池20の電池残量および負荷40の稼動状況に応じて負荷40の稼動を制限することで負荷40の消費電力を低減させる指令を負荷40に送信する負荷消費電力指令部13と、を備える。このような制御装置10による制御下で実行される処理は、
図4を用いて後述する。
【0022】
図3には、制御装置10のハードウェア構成の一例を示す。制御装置10は、ハードウェア構成としては一般的なコンピュータの構成を備えており、特別なハードウェアを必要とするものではない。即ち、制御装置10は、CPU10Aと、RAM10Bと、ROM10Cと、キーボード等から成る入力部10Dと、所定位置に挿入された記憶媒体Mに記憶されたデータや後述するプログラム等を読み取る読取部10Eと、外部との通信を行う通信部10Fと、補助記憶部10Gと、ディスプレイ等から成る表示部10Hと、を備える。前述した制御装置10の各機能ブロックの機能は、RAM10B等にプログラムやデータ等を読み込ませ、CPU10Aの制御の下でプログラムを実行することで実現される。なお、後述する第2実施形態における制御装置10のハードウェア構成も、上記
図3のハードウェア構成と同様である。
【0023】
図4には、バックアップ電源システム1において、制御装置10による制御下で実行される処理(本発明の制御方法に係る処理)を示す。なお、ここでは、負荷40として、無線通信ネットワークにおける基地局を適用した例を説明する。負荷(ここでは基地局)40の稼動を制限する方法としては、基地局40の消費電力を低減させるさまざまな方法を採用できるが、ここでは一例として、無線通信サービスに関する周波数帯域を、セクター数が同じ場合に消費電力が概ね均等になるように複数(ここでは例えば3つ)の周波数帯域a、b、cに予め区分けし、これら複数の周波数帯域のうち一部の周波数帯域について停波する例を説明する。
【0024】
基地局40の「稼動状況」に関する情報としては、複数の周波数帯域ごとの通信量(単位時間当たりの通信データ量)に関する情報が取得される。
図4の処理では、蓄電池20の電池残量および複数の周波数帯域ごとの通信量に応じて基地局40の稼動を制限する処理を示すが、このような制限を行うか否かを判断するための基準値(即ち、蓄電池20の電池残量に関する基準値、および周波数帯域ごとの通信量に関する1つ以上の基準値)は予め定められ、制御装置10内の負荷消費電力指令部13に記憶されている。ここでは、一例として、燃料電池30の出力が負荷(基地局40)の消費電力の50%であると想定し、複数(ここでは3つ)の周波数帯域a、b、cのうち一部の周波数帯域について停波しても、他の周波数帯域においてアクセス規制が生じないことを基準としている。具体的な例として、蓄電池20の電池残量に関する基準値は蓄電池20の「容量の30%」と予め定められており、また、周波数帯域ごとの通信量に関する基準値としては、各周波数帯域に関する「アクセス規制量の60%」および「アクセス規制量の30%」という閾値が予め定められている。以下、これら基準値を用いた処理を、
図4のフローチャートに沿って説明する。
【0025】
図4に示す処理は、停電発生、即ち、商用電力源51からの電力供給が停止したことをトリガーとして実行開始される。なお、制御装置10は、任意の方法で停電発生を検出すればよく、特定の方法に限定されない。例えば、基地局40からの停電発生に係るアラーム信号により停電発生を検出してもよいし、図示しないセンサにより商用電力源51からの電流又は電圧を測定することで停電発生を検出してもよい。
【0026】
さて、
図4に示す処理では、蓄電池情報受信部11が蓄電池20にて検出された蓄電池20の電池残量情報を受信するとともに、負荷情報受信部12が基地局40にて取得された複数の周波数帯域ごとの通信量(単位時間当たりの通信データ量)に関する情報を基地局40から受信する(ステップS1)。受信された蓄電池20の電池残量情報および複数の周波数帯域ごとの通信量に関する情報は、負荷消費電力指令部13へ転送される。
【0027】
次に、負荷消費電力指令部13は、蓄電池20の電池残量が容量の30%以上であるか否かを判断し(ステップS2)、蓄電池20の電池残量が容量の30%未満であれば、蓄電池20の電池残量に余裕が無いため基地局40の稼動を制限せざるを得ない(一部の周波数帯域について停波せざるを得ない)と判断し、後述のステップS7へ進む。
【0028】
一方、ステップS2で蓄電池20の電池残量が容量の30%以上であれば、負荷消費電力指令部13は、各周波数帯域の通信量がアクセス規制量の60%未満であるか否かを判断する(ステップS3)。ここで、1つ以上の周波数帯域の通信量がアクセス規制量の60%以上であれば(ステップS3でNO)、基地局40の稼動を制限すべきではないと判断し、後述のステップS6へ進む。
【0029】
また、ステップS3で各周波数帯域の通信量がアクセス規制量の60%未満であれば、負荷消費電力指令部13は、さらに、各周波数帯域の通信量がアクセス規制量の30%未満であるか否かを判断する(ステップS4)。ここで、1つ以上の周波数帯域の通信量がアクセス規制量の30%以上であれば(ステップS3でNO)、負荷消費電力指令部13は、基地局40の稼動を少し制限する余地があるものの、大きく制限することは困難と判断し、3つの周波数帯域a、b、cのうち1つの周波数帯域(例えば通信量が最も少ない周波数帯域c)を停波するよう基地局40へ指令を出力して(ステップS5)、後述のステップS6へ進む。
【0030】
上記のステップS3、S4で否定判断されるケースは、蓄電池20の電池残量が容量の30%以上で電池残量に余裕があり、且つ、基地局40の稼動が比較的繁忙な状況にあると判断できるため、ステップS6では、燃料電池30と蓄電池20の両方から基地局40へ電力が供給されるよう制御する。つまり、蓄電池20に蓄えられた電力は放電され、燃料電池30からの電力とともに、基地局40へ供給される。
【0031】
一方、ステップS4で各周波数帯域の通信量がアクセス規制量の30%未満であれば、負荷消費電力指令部13は、基地局40の稼動が繁忙な状況にはなく基地局40の稼動を制限する余地があると判断できるため、後述のステップS7へ進む。
【0032】
ステップS7において、負荷消費電力指令部13は、3つの周波数帯域a、b、cのうち2つの周波数帯域(例えば通信量が最も少ない周波数帯域cおよび2番目に少ない周波数帯域b)を停波するよう基地局40へ指令を出力し、ステップS8にて燃料電池30から負荷(基地局)40と蓄電池20の両方へ電力が供給されるよう制御する。つまり、燃料電池30からの電力は、基地局40へ供給されるとともに、蓄電池20に充電される。
【0033】
以上説明した第1実施形態では、バックアップ電源システム1の燃料電池30として、出力が通常時の負荷(基地局40)の消費電力よりも低い燃料電池を備えている。燃料電池のコストは出力の大きさに概ね比例するため、上記の燃料電池であれば低コストで装備できる。また、停電時に、
図4のように、蓄電池20の電池残量および基地局40の稼動状況に応じて、例えば、蓄電池20の電池残量が極めて少ない場合や基地局40の稼動を制限可能な余地があると判断できる場合に基地局40の稼動を制限することで基地局40の消費電力を低減させるよう制御する。このように基地局40の消費電力を低減できるため、バックアップ電源システム1において燃料電池30と併用される蓄電池20を小容量の蓄電池でまかなうことができ、さらにコスト削減を図ることができる。以上のようにして、燃料電池と蓄電池の併用によりバックアップ時間の長期化を図りつつ、同時に、コスト削減を図ることができる。
【0034】
上記バックアップ電源システム1は燃料電池と蓄電池とを併用するバックアップ電源システムであるが、従来より、燃料電池のみを使用するバックアップ電源システムも多数存在している。そこで、従来の燃料電池のみを使用するバックアップ電源システムに対するバックアップ電源システム1のコスト的な優位性を以下に説明する。
【0035】
図5には、負荷の容量の増加に伴いシステムコストがどのように増加するかを表すグラフが示されており、実線は従来システム(燃料電池のみを使用するバックアップ電源システム)に関するグラフを表す。バックアップ電源用の燃料電池の市場は小さく、製品としての燃料電池の出力ラインナップは限られている。例えば出力ラインナップの最小単位(1台の燃料電池の出力容量)がAとすると、負荷の容量が0〜Aの範囲であれば、1台の燃料電池(コストはB)でまかなうこととなり、システムコストはBとなる。そして、負荷の容量が増加してAを超えると(
図5のポイントP1)、1台の燃料電池ではまかなえなくなり、2台の燃料電池(コストはB×2)でまかなうこととなり、システムコストはBから2Bへ急激に増加する。以後、システムコストは、同様に増加していく。このように従来システムについては、負荷の容量がAの整数倍の値を超えた時点(
図5のポイントP1、P2)でシステムコストが急激に増加する階段状のグラフ(
図5の実線)となる。
【0036】
一方、バックアップ電源システム1は、燃料電池と蓄電池とを併用するため、負荷の容量が増加して燃料電池の出力容量を超えても、燃料電池の増設とはならず、超えた分(負荷の容量と燃料電池の出力容量との差)を蓄電池の出力でまかなう。このとき、蓄電池の必要最小容量は、おおむね以下の式(1)で表される。
蓄電池の必要最小容量=
(負荷の容量−燃料電池の出力容量)×必要バックアップ時間 ・・・(1)
ここで「燃料電池の出力容量」は固定値である。「必要バックアップ時間」は蓄電池が燃料電池を補う時間として蓄電池に求められる時間であり、例えば5時間といった固定値が想定される。従って、蓄電池の必要最小容量は、負荷の容量を変数とする一次式で表される。また、蓄電池のコストは、蓄電池の容量にほぼ比例する関係にあることが知られている。以上により、負荷の容量の増加分は、蓄電池の必要最小容量の増加分に比例し、さらに、蓄電池のコストの増加分にも比例すると言える。よって、
図5のポイントP1で負荷の容量がAを超えた直後では、負荷の容量の増加分と蓄電池のコストの増加分とが比例するため、
図5に破線で示すようにシステムコスト(燃料電池のコストと蓄電池のコストの和)が増加していく。このような傾向は、
図5のポイントP2で負荷の容量が2Aを超えた直後でも同様である。
【0037】
図5より明らかなように、負荷の容量がAを超えた直後および2Aを超えた直後において、破線で示すように、実線の従来システムと比較して、システムコストが低減される。
【0038】
[第2実施形態]
第2実施形態では、本発明に係るバックアップ電源システムを、大ゾーン基地局を含む通信システムに適用した例について説明する。
【0039】
図6には、第2実施形態におけるバックアップ電源システムの動作環境を示す。この
図6に示すように、第2実施形態の動作環境には、一般基地局40と、災害時に商用電力以外の動力源により長時間の稼動が可能とされた大ゾーン基地局41とが存在する。このうち大ゾーン基地局41は、例えば都市ガスを利用して稼動する大規模な燃料電池31から動力源を得ることができる。そのため、大ゾーン基地局41は、停電が発生し商用電源からの電力供給が停止しても、上記燃料電池31から動力源を得ることで、継続的に稼動できるよう構成されている。このような大ゾーン基地局41による制御エリアは、停電時に複数の一般基地局40の制御エリア内の通信量が極めて少ない(例えば通信量が
図4のステップS4の条件よりもさらに少ない)等の状況下にあり一般基地局40の稼動を制限可能な余地が十分にあると判断できる場合には、
図7に示す制御エリアR2S、即ち、複数の一般基地局40の制御エリアR1を含んだ広大なエリアに拡大される。ただし、大ゾーン基地局41による制御エリアは、停電時に必ず
図7の制御エリアR2Sに拡大されるわけではなく、複数の一般基地局40の制御エリア内の通信量が極めて少ないといった状況にない場合は、
図6に示す制御エリアR2、即ち、一般基地局40の制御エリアR1とほぼ同程度の大きさのエリアに設定され、これにより輻輳を抑制している。なお、大ゾーン基地局41の制御エリア情報は、大ゾーン基地局41から一般基地局40経由で制御装置10へ送信される。
【0040】
各一般基地局40を「負荷」とし、停電時にバックアップ電源となるバックアップ電源システムが各一般基地局40に対し設けられており、バックアップ電源システムはそれぞれ、第1実施形態と同様の構成とされている。即ち、バックアップ電源システムは、
図1のように、一般基地局40に対し互いに並列に接続された燃料電池30および蓄電池20と、バックアップ電源システムの動作を制御する制御装置10とを含んで構成され、燃料電池30は、出力が通常時の負荷(一般基地局40)の消費電力よりも低い燃料電池により構成されている。
【0041】
次に、
図8を用いて、第2実施形態のバックアップ電源システムにおいて実行される処理を説明する。
図8の処理は、第1実施形態で説明した
図4の処理と共通するステップが多く、それらは
図4と同じ符号を付している。そこで、以下では、
図4の処理と異なる
図8のステップS1A、S7A〜S7Cについて、重点的に説明する。
【0042】
第1実施形態の
図4では、ステップS1で蓄電池20の電池残量情報および複数の周波数帯域ごとの通信量情報を受信した後、ステップS2で蓄電池20の電池残量が容量の30%未満である(即ち、蓄電池20の電池残量に余裕が無い)と判断される場合、および、ステップS4で各周波数帯域の通信量がアクセス規制量の30%未満である(即ち、基地局40の稼動が繁忙な状況にはない)と判断される場合に、ステップS7にて、3つの周波数帯域a、b、cのうち2つの周波数帯域(例えば通信量が最も少ない周波数帯域cおよび2番目に少ない周波数帯域b)を停波するよう制御する例を説明した。
【0043】
これに対し、第2実施形態の
図8では、ステップS1Aで蓄電池20の電池残量情報、複数の周波数帯域ごとの通信量情報および大ゾーン基地局41の制御エリア情報を受信した後、ステップS2で蓄電池20の電池残量が容量の30%未満である(即ち、蓄電池20の電池残量に余裕が無い)と判断される場合、および、ステップS4で各周波数帯域の通信量がアクセス規制量の30%未満である(即ち、基地局40の稼動が繁忙な状況にはない)と判断される場合に、負荷消費電力指令部13は、大ゾーン基地局41の制御エリア情報に基づいて、当該時点で大ゾーン基地局41が
図7のようにエリア拡大した状態となっているか否かを判断する(ステップS7A)。
【0044】
ここで、大ゾーン基地局41がエリア拡大した状態となっていれば、大ゾーン基地局41が一般基地局40の機能を代替しており、一般基地局40の全ての周波数帯域a、b、cについて停波しても問題ないと判断できるため、負荷消費電力指令部13は、3つの周波数帯域a、b、cの全てについて停波するよう制御する(ステップS7B)。
【0045】
一方、ステップS7Aで大ゾーン基地局41がエリア拡大した状態となっていなければ、大ゾーン基地局41が一般基地局40の機能を完全には代替できておらず、一般基地局40の全ての周波数帯域a、b、cについて停波するのは適当でないと判断できるため、負荷消費電力指令部13は、3つの周波数帯域a、b、cのうち2つの周波数帯域(例えば通信量が最も少ない周波数帯域cおよび2番目に少ない周波数帯域b)を停波するよう制御する(ステップS7C)。
【0046】
このように第2実施形態では、上記ステップS7Aにより大ゾーン基地局41がエリア拡大した状態にあるか否か(即ち、一般基地局40の全ての周波数帯域a、b、cについて停波しても問題ないか否か)を判断し、全ての周波数帯域a、b、cについて停波しても問題ない場合に、3つの周波数帯域a、b、cの全てについて停波するよう制御することで、さらなるコスト削減を図ることができる。
【0047】
なお、負荷(基地局)の稼動状況に関する情報として、前述した第1、第2実施形態では、複数の周波数帯域ごとの通信量(単位時間当たりの通信データ量)に関する情報の例を説明し、第2実施形態では、さらに、大ゾーン基地局の制御エリア情報の例についても説明したが、これらに限定されるものではなく、負荷の「稼動時刻情報」を用いてもよい。一例として、一日の時間帯を、(1)日中(9時〜18時)、(2)早朝および夜間(6時〜9時、18時〜24時)、(3)深夜(0時〜6時)に予め区分けしておき、
図4の処理において、当該時点の時刻が日中(通信量が多い時間帯)の場合は周波数帯域の停波を行わず、当該時点の時刻が早朝および夜間(通信量が日中よりも少なく深夜よりも多い時間帯)の場合は1つの周波数帯域を停波し、当該時点の時刻が深夜(通信量が最も少ない時間帯)の場合は2つの周波数帯域を停波する、といった停波に係る制御を実行してもよい。
【0048】
また、負荷(ここでは基地局)の稼動を制限する方法として、無線通信サービスに関する複数の周波数帯域のうち一部の周波数帯域を停波する例を説明したが、これに限定されるものではなく、基地局の消費電力を低減させるさまざまな方法(例えば電波出力レベルを落とす等)を採用することができる。
【0049】
また、負荷として、無線通信ネットワークにおける基地局を適用した例を説明したが、これに限定されるものではなく、通信装置全般に適用してもよいし、さらに、電力供給を受けて稼動する機器全般に適用してもよい。
【0050】
また、蓄電池は、通常時ピークシフトや電気料金の削減を目的とし充放電を行うものが知られているが、上記の蓄電池としては、このような蓄電池を用いてもよい。