特許第6198557号(P6198557)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6198557
(24)【登録日】2017年9月1日
(45)【発行日】2017年9月20日
(54)【発明の名称】トラクタ
(51)【国際特許分類】
   B60K 20/02 20060101AFI20170911BHJP
   B60K 20/00 20060101ALI20170911BHJP
   G05G 1/01 20080401ALI20170911BHJP
【FI】
   B60K20/02 F
   B60K20/00 F
   G05G1/01 C
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-211553(P2013-211553)
(22)【出願日】2013年10月9日
(65)【公開番号】特開2015-74327(P2015-74327A)
(43)【公開日】2015年4月20日
【審査請求日】2016年6月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001878
【氏名又は名称】三菱マヒンドラ農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085394
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 哲夫
(74)【代理人】
【識別番号】100165456
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 佑子
(72)【発明者】
【氏名】内田 直樹
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 利宣
【審査官】 岩本 薫
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−014246(JP,A)
【文献】 特開2012−071736(JP,A)
【文献】 特開平02−276505(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 20/02
B60K 20/00
G05G 1/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転座席の外側方に、走行変速レバー及び作業機昇降操作レバーが配置されるサイドパネルを備えたトラクタにおいて、
前記サイドパネルの前側に、走行変速レバーと作業機昇降操作レバーを前後方向操作可能に並列して設けるにあたり、
走行変速レバーを外側かつ高い位置、作業機昇降操作レバーを内側かつ低い位置に設けて、両レバーの位置を側面視で上下にずらすとともに、
前記作業機昇降操作レバーを低い位置に設けることにより作業機昇降操作レバーの操作レンジ後方に形成される段差面が作業機昇降操作レバー側を向いた段部に、作業機を微小上下動作させる微小上下操作具を作業機昇降操作レバー側に突出するようにして設けたことを特徴とするトラクタ。
【請求項2】
前記走行変速レバーの操作レンジを外側かつ前側、作業機昇降操作レバーの操作レンジを内側かつ後側に設けて、両レバーの操作レンジを前後にずらすとともに、走行変速レバーの配設部を上方に膨出させ、作業機昇降操作レバーの配設部を前側ほど低くなるように形成したことを特徴とする請求項1に記載のトラクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転座席の外側方に、走行変速レバー及び作業機昇降操作レバーが配置されるサイドパネルを備えたトラクタに関する。
【背景技術】
【0002】
トラクタでは、オペレータが着座する運転座席の周囲に様々な操作具が配置されるが、走行中に操作される操作具は、ステアリングハンドルを握る手の持ち変えが発生しないように配置すること好ましい。例えば、特許文献1に示されるトラクタでは、運転座席の右外側方に設けられるサイドパネルに、走行変速レバー(副変速レバーと主変速用の増減速スイッチ)及び作業機昇降操作レバーを配置し、ステアリングハンドルを持ち換えなくても、走行変速操作や作業機昇降操作が行なえるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−1018号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、サイドパネルには、自動制御用の各種設定操作具やアームレストが設けられるので、配設空間に限りがあり、サイドパネルに走行変速レバーと作業機昇降操作レバーを配置すると、両レバーが互いの操作を邪魔する惧れがある。
【0005】
例えば、特許文献1では、サイドパネルの前側に、走行変速レバーと作業機昇降操作レバーを配置するにあたり、走行変速レバーを副変速レバー(通常、走行前に変速レンジを切換えるために操作され、走行中は操作されない)とし、走行中の主変速操作は、副変速レバーのグリップ部に設けた増減速スイッチで行なうようにしているため、走行変速レバーと作業機昇降操作レバーが互いの操作を阻害する可能性は低いが、サイドパネルに設けられる走行変速レバーを走行中に前後方向操作される主変速レバーとした場合は、走行変速レバーと作業機昇降操作レバーが互いの操作を邪魔する惧れがある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、請求項1の発明は、運転座席の外側方に、走行変速レバー及び作業機昇降操作レバーが配置されるサイドパネルを備えたトラクタにおいて、前記サイドパネルの前側に、走行変速レバーと作業機昇降操作レバーを前後方向操作可能に並列して設けるにあたり、走行変速レバーを外側かつ高い位置、作業機昇降操作レバーを内側かつ低い位置に設けて、両レバーの位置を側面視で上下にずらすとともに、前記作業機昇降操作レバーを低い位置に設けることにより作業機昇降操作レバーの操作レンジ後方に形成される段差面が作業機昇降操作レバー側を向いた段部に、作業機を微小上下動作させる微小上下操作具を作業機昇降操作レバー側に突出するようにして設けたことを特徴とするトラクタである。
請求項2の発明は、前記走行変速レバーの操作レンジを外側かつ前側、作業機昇降操作レバーの操作レンジを内側かつ後側に設けて、両レバーの操作レンジを前後にずらすとともに、走行変速レバーの配設部を上方に膨出させ、作業機昇降操作レバーの配設部を前側ほど低くなるように形成したことを特徴とするトラクタである。
【発明の効果】
【0007】
請求項1の発明によれば、サイドパネルの前側に、走行変速レバーと作業機昇降操作レバーを前後方向操作可能に並列して設けるにあたり、走行変速レバーを外側かつ高い位置、作業機昇降操作レバーを内側かつ低い位置に設けて、両レバーの位置を側面視で上下にずらしたので、左右方向の配設空間を拡大することなく、両レバーを互いに邪魔にならないように配置することができる。また、サイドパネルは、通常、リヤフェンダの内側に配置されるので、走行変速レバー、作業機昇降操作レバー及び微小上下操作具をリヤフェンダの内側傾斜に沿って省スペースに配置できるという利点がある。
また、請求項2の発明によれば、走行変速レバーの操作レンジを外側かつ前側、作業機昇降操作レバーの操作レンジを内側かつ後側に設けて、両レバーの操作レンジを前後にずらすとともに、走行変速レバーの配設部を上方に膨出させ、作業機昇降操作レバーの配設部を前側ほど低くなるように形成したので、走行変速レバーと作業機昇降操作レバーの操作軌跡を可及的に離し、両レバーが互いの操作を邪魔する可能性をさらに低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】(A)はトラクタの全体平面図、(B)はトラクタの全体左側面図である。
図2】トラクタの運転部を示す平面図である。
図3】トラクタのサイドパネルを示す斜視図である。
図4】トラクタのサイドパネルを示す平面図である。
図5】トラクタのサイドパネルを示す内側面図である。
図6】トラクタのサイドパネル内部を示す斜視図である。
図7】トラクタのサイドパネル内部を示す内側面図である。
図8】トラクタのサイドパネル内部を示す外側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。図1において、1はトラクタの走行機体であって、該走行機体1は、エンジン(図示せず)が搭載されるエンジン搭載部2と、エンジン動力を変速するトランスミッション3と、トランスミッション3から出力される走行動力で駆動する前輪4及び後輪5と、各種の作業機が連結される作業機連結部6と、オペレータが乗車する運転部7とを備えて構成されている。
【0010】
トランスミッション3には、エンジン動力を多段状又は無段状に変速する主変速機構(図示せず)と、主変速機構による変速レンジをシフトさせる副変速機構(図示せず)が組み込まれており、主変速レバー8(走行変速レバー)の操作に応じて主変速機構が変速操作され、副変速レバー9の操作に応じて副変速機構が変速操作される。また、非作業時(例えば、路上走行時)に選択される後述の自動変速状態(主変速レバー8を自動変速レンジAに操作した状態)では、アクセルペダル10の操作に応じて主変速機構が自動的に変速動作される。
【0011】
作業機連結部6は、作業機を昇降自在に支持する3点リンク機構、作業機を昇降させる昇降用油圧シリンダ、作業機を左右傾斜させる傾斜用油圧シリンダ、走行機体1のPTO軸(図示せず)から出力される作業動力を作業機に伝動する作業動力伝動機構などを備えて構成されており、作業機は、作業機昇降操作レバー11や微小上下操作スイッチ12(微小上下操作具)の操作に応じて昇降動作される。
【0012】
また、走行機体1には、各種の自動制御機能を実現するために制御装置(図示せず)が設けられている。例えば、本実施形態の制御装置は、作業機における耕深検出に応じて作業機を自動的に昇降制御する深さ自動制御や、作業機又は走行機体1における傾斜検出に応じて作業機を自動的に左右傾斜させる傾き自動制御を行なう。
【0013】
図1及び図2に示すように、運転部7は、左右のリヤフェンダ13間に配置される運転座席14、運転座席14の前方に配置されるステアリングホイール15、運転座席14の左外側方に配置される副変速レバー9、運転座席14の右外側方に配置されるサイドパネル16などを備える。サイドパネル16は、前述した主変速レバー8、作業機昇降操作レバー11、微小上下操作スイッチ12の他、自動制御用の設定操作具が配置される設定パネル部17や、オペレータの腕を支えるアームレスト18を備えており、右側リヤフェンダ13の内側に沿って設けられている。以下、本発明の要部であるサイドパネル16について、図3図5を参照して説明する。
【0014】
図3図5に示すように、主変速レバー8と作業機昇降操作レバー11は、サイドパネル16の前側に前後方向操作可能に並列配置されている。そして、作業機昇降操作レバー11は、前方操作で作業機を下降動作させ、後方操作で作業機を上昇動作させる。また、主変速レバー8の操作レンジには、ニュートラル位置Nと、ニュートラル位置Nよりも前方に行くほど増速側にトランスミッション3(主変速機構)を変速動作させる手動変速操作レンジMと、ニュートラル位置Nの後方位置に設定され、アクセルペダル10の操作に応じてトランスミッション3(主変速機構)を自動的に変速動作させる自動変速レンジAが設けられている。
【0015】
本発明の実施形態では、サイドパネル16の前側に、主変速レバー8と作業機昇降操作レバー11を前後方向操作可能に並列して設けるにあたり、主変速レバー8の操作レンジを外側かつ前側、作業機昇降操作レバー11の操作レンジを内側かつ後側に設けて、両レバー8、11の操作レンジを前後にずらすとともに、主変速レバー8の操作レンジ後端部に設定される自動変速レンジの前後方向の位置を、作業機昇降操作レバー11の下降操作レンジAとオーバーラップさせている。
【0016】
このようにすると、両レバー8、11の操作レンジを前後にずらすことにより、左右方向の配設空間を拡大することなく、両レバー8、11を互いに邪魔にならないように配置することができる。しかも、主変速レバー8と作業機昇降操作レバー11の操作レンジを一部オーバーラップさせるにあたり、主変速レバー8の操作レンジにおいて作業時には操作されない自動変速レンジAと、作業機昇降操作レバー11の操作レンジにおいて作業時にのみ操作される下降操作レンジとをオーバーラップさせたので、作業時及び非作業時(例えば、路上走行時)のいずれにおいても、両レバー8、11が互いに邪魔になる可能性を低減することができる。
【0017】
また、本発明の実施形態では、サイドパネル16の前側に、主変速レバー8と作業機昇降操作レバー11を前後方向操作可能に並列して設けるにあたり、主変速レバー8を外側かつ高い位置、作業機昇降操作レバー11を内側かつ低い位置に設けて、両レバー8、11の位置を側面視で上下にずらすとともに、作業機昇降操作レバー11を低い位置に設けることにより作業機昇降操作レバー11の操作レンジ後方に形成される段差面が作業機昇降操作レバー11側を向いた段部19に、図3、4、5から明らかなように作業機を微小上下動作させる微小上下操作スイッチ12を作業機昇降操作レバー11側に突出するようにして設けている。
【0018】
このようにすると、両レバー8、11の位置を側面視で上下にずらすことにより、左右方向の配設空間を拡大することなく、両レバー8、11を互いに邪魔にならないように配置することができる。また、このような操作具の配置構成によれば、サイドパネル16をリヤフェンダ13の内側に配置するにあたり、主変速レバー8、作業機昇降操作レバー11及び微小上下操作スイッチ12をリヤフェンダ13の内側傾斜に沿って省スペースに配置できるという利点がある。
【0019】
また、本発明の実施形態では、両レバー8、11の位置を前後及び上下にずらして配置するにあたり、主変速レバー8の配設部20を上方に膨出させ、作業機昇降操作レバー11の配設部21を前側ほど低くなるように形成している。このようにすると、側面視における主変速レバー8と作業機昇降操作レバー11の操作軌跡を可及的に離すことができるので、両レバー8、11が互いの操作を邪魔する可能性をさらに低減させることができる。
【0020】
設定パネル部17は、サイドパネル16の後部かつ外側に設けられている。これにより、主変速レバー8及び作業機昇降操作レバー11の後側で、かつ設定パネル部17の内側にアームレスト18の配設空間が確保される。そして、主変速レバー8及び作業機昇降操作レバー11の後側にアームレスト18を設けることにより、両レバー8、11の操作性を向上させることができる。
【0021】
本実施形態では、設定パネル部17に、傾き自動制御の目標傾斜を設定する傾き設定具22や、PTO回転を操作するPTO操作具23を設けているが、設定パネル部17に設けられる設定具や操作具に制限はない。例えば、本実施形態では、深さ自動制御の目標深さを設定する深さ設定具24を主変速レバー8の後方に配置しているが、設定パネル部17に深さ設定具24を設けてもよい。
【0022】
つぎに、主変速レバー8、作業機昇降操作レバー11及びアームレスト18の支持構造について、図6図8を参照して説明する。
【0023】
図6図8に示すように、サイドパネル16の内部には、サイドパネルフレーム25が設けられる。サイドパネルフレーム25は、機体フレーム側に取付けられる取付部26と、取付部26から立ち上がる支柱部27と、支柱部27の上端部から前方に延出するレバー支持部28と、支柱部27から後方に延出する後方延出部29とを一体的に備えており、アームレスト18は、支柱部27及び後方延出部29の上端部に取付けられる。
【0024】
レバー支持部28の前端部には、レバー支軸30を介して主変速レバー8が前後回動自在に支持されている。主変速レバー8の基部には、主変速レバー8の操作位置を検出するポテンショメータ31や、主変速レバー8を複数の操作位置で段階的に保持するディテント機構32が設けられている。
【0025】
また、レバー支持部28の中間部には、レバー支軸33を介して作業機昇降操作レバー11が前後回動自在に支持されており、作業機昇降操作レバー11の基部には、作業機昇降操作レバー11の操作位置を検出するポテンショメータ34が設けられている。
【0026】
叙述の如く構成された本実施形態によれば、運転座席14の外側方に、主変速レバー8及び作業機昇降操作レバー11が配置されるサイドパネル16を備えたトラクタにおいて、サイドパネル16の前側に、主変速レバー8と作業機昇降操作レバー11を前後方向操作可能に並列して設けるにあたり、主変速レバー8を外側かつ高い位置、作業機昇降操作レバー11を内側かつ低い位置に設けて、両レバー8、11の位置を側面視で上下にずらすとともに、作業機昇降操作レバー11の操作レンジ後方に形成される段部19に、作業機を微小上下動作させる微小上下操作スイッチ12を設けたので、左右方向の配設空間を拡大することなく、両レバー8、11を互いに邪魔にならないように配置することができるだけでなく、主変速レバー8、作業機昇降操作レバー11及び微小上下操作スイッチ12をリヤフェンダ13の内側傾斜に沿って省スペースに配置できるという利点がある。
【0027】
また、主変速レバー8の操作レンジを外側かつ前側、作業機昇降操作レバー11の操作レンジを内側かつ後側に設けて、両レバー8、11の操作レンジを前後にずらすとともに、主変速レバー8の配設部20を上方に膨出させ、作業機昇降操作レバー11の配設部21を前側ほど低くなるように形成したので、主変速レバー8と作業機昇降操作レバー11の操作軌跡を可及的に離し、両レバー8、11が互いの操作を邪魔する可能性をさらに低減させることができる。
【符号の説明】
【0028】
1 走行機体
3 トランスミッション
6 作業機連結部
7 運転部
8 主変速レバー
9 副変速レバー
10 アクセルペダル
11 作業機昇降操作レバー
12 微小上下操作スイッチ
13 リヤフェンダ
14 運転座席
15 ステアリングホイール
16 サイドパネル
17 設定パネル部
18 アームレスト
19 段部
20 配設部
21 配設部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8