特許第6198575号(P6198575)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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6198575加飾成形体の製法およびそれによって得られる加飾成形体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6198575
(24)【登録日】2017年9月1日
(45)【発行日】2017年9月20日
(54)【発明の名称】加飾成形体の製法およびそれによって得られる加飾成形体
(51)【国際特許分類】
   B44C 3/02 20060101AFI20170911BHJP
   B32B 33/00 20060101ALI20170911BHJP
   B32B 27/16 20060101ALI20170911BHJP
   B32B 9/00 20060101ALI20170911BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20170911BHJP
【FI】
   B44C3/02 Z
   B32B33/00
   B32B27/16 101
   B32B9/00 A
   B32B27/00 E
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-225566(P2013-225566)
(22)【出願日】2013年10月30日
(65)【公開番号】特開2015-85584(P2015-85584A)
(43)【公開日】2015年5月7日
【審査請求日】2016年10月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000158781
【氏名又は名称】紀伊産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079382
【弁理士】
【氏名又は名称】西藤 征彦
(74)【代理人】
【識別番号】100123928
【弁理士】
【氏名又は名称】井▲崎▼ 愛佳
(74)【代理人】
【識別番号】100136308
【弁理士】
【氏名又は名称】西藤 優子
(72)【発明者】
【氏名】古谷 健司
(72)【発明者】
【氏名】葛谷 輝博
【審査官】 奥隅 隆
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭61−053041(JP,A)
【文献】 特開2006−088500(JP,A)
【文献】 特開2011−000710(JP,A)
【文献】 特開2008−290416(JP,A)
【文献】 特開2014−233880(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B44C 3/02
B32B 1/00−43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の形状が付与された樹脂成形体を準備する工程と、この樹脂成形体の表面にアンダーコート層を形成する工程と、上記アンダーコート層の上に、蒸着により二酸化チタン膜と二酸化珪素膜とを交互に積層してオーロラ調蒸着膜を形成する工程と、上記オーロラ調蒸着膜の上にトップコート層を形成する工程とを備え、上記アンダーコート層を、紫外線硬化型アンダーコート用樹脂組成物の塗工、硬化によって形成し、その硬化の際にアンダーコート層に不規則な亀裂を生じさせ、その上に形成されるオーロラ調蒸着膜と相俟って、大きさおよび形状が不揃いの鱗片状模様を現出させるようにしたことを特徴とする加飾成形体の製法。
【請求項2】
上記トップコート層が透明であり、上記鱗片状模様を、上記トップコート層を透かして視認させるようにした請求項1記載の加飾成形体の製法。
【請求項3】
上記加飾成形体およびアンダーコート層が透明であり、上記鱗片状模様を、上記アンダーコート層および加飾成形体を透かしてその裏面側から視認させるようにした請求項1記載の加飾成形体の製法。
【請求項4】
上記紫外線硬化型アンダーコート用樹脂組成物が、紫外線硬化型アクリル系アンダーコート用樹脂組成物である請求項1〜3のいずれか一項に記載の加飾成形体の製法。
【請求項5】
請求項2に記載の製法によって得られる加飾成形体であって、所定の形状が付与された樹脂成形体の表面に、紫外線硬化型アンダーコート用樹脂組成物からなるアンダーコート層が形成され、その上に、二酸化チタン膜と二酸化珪素膜とを交互に積層してなるオーロラ調蒸着膜が形成され、さらにその上に、透明なトップコート層が形成されており、上記アンダーコート層に不規則な亀裂が生じ、その上に形成されたオーロラ調蒸着膜と相俟って、大きさおよび形状が不揃いの鱗片状模様が形成され、その鱗片状模様が、上記トップコート層を透かして視認されるようになっていることを特徴とする加飾成形体。
【請求項6】
請求項3記載の製法によって得られる加飾成形体であって、所定の形状が付与された透明な樹脂成形体の表面に、紫外線硬化型アンダーコート用樹脂組成物からなる透明なアンダーコート層が形成され、その上に、二酸化チタン膜と二酸化珪素膜とを交互に積層してなるオーロラ調蒸着膜が形成され、さらにその上に、トップコート層が形成されており、上記アンダーコート層に不規則な亀裂が生じ、その上に形成されたオーロラ調蒸着膜と相俟って、大きさおよび形状が不揃いの鱗片状模様が形成され、その鱗片状模様が、上記アンダーコート層および樹脂成形体を透かしてその裏面側から視認されるようになっていることを特徴とする加飾成形体。
【請求項7】
上記紫外線硬化型アンダーコート用樹脂組成物が、紫外線硬化型アクリル系アンダーコート用樹脂組成物である請求項5または6記載の加飾成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂成形体表面に特殊なオーロラ調蒸着膜の鱗片状模様が付与された加飾成形体の製法およびそれによって得られる加飾成形体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
化粧料を収容したコンパクト容器や口紅容器等には、単に機能性だけでなく、見栄えがよい、商品イメージを反映したデザインである、といった意匠性も要求される。このような要求に応えるために、例えば、コンパクト容器の蓋部に、転写、印刷、蒸着、インモールド成形等の技術を駆使して、色や模様のついた様々な装飾を施すことが、広く行われている。
【0003】
このような樹脂成形体に対する装飾技術の一つとして、例えば、金属光沢膜が微細にひび割れたような、亀裂模様のある装飾層を有する成形品が提案されている(特許文献1を参照)。このものは、樹脂成形体の表面にプライマー層を形成し、その上に金属薄膜を形成し、さらにその上にクリアー層を形成した後、上記クリアー層を加熱乾燥し、積層体を急冷することによって、上記金属薄膜に微細な亀裂を生じさせるようにしたものである。
【0004】
また、樹脂成形体表面に、特殊な組成のアンダーコート層を塗布、硬化させ、その上に金属蒸着層を形成することによって、虹彩色を発現させるようにしたものも提案されている(特許文献2を参照)。このものは、上記アンダーコート層の収縮に伴って金属蒸着層に微細な凹凸が生じ、それによって様々な角度に光が反射して虹彩色が発現するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−88500号公報
【特許文献2】特許第4863464号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、これらのものは、ごく薄い金属薄膜層に亀裂や凹凸を生じさせることによって、その光沢に変化を与えるようにしたものであるため、その亀裂や凹凸の程度によっては、金属薄膜層の一部が剥げて下地が見え、不良品となるおそれがある。このため、金属薄膜層の全面に、微細かつ均一に変化を与える必要があり、その加工条件のコントロールが極めてむずかしいという問題がある。また、金属薄膜に生じる亀裂や凹凸が微細であるため、模様の印象が弱いという問題もある。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、従来とは全く異なり、変化に富んだ亀裂模様とオーロラ調が相俟って美麗な鱗片状模様を有する加飾成形体の製法と、それによって得られる加飾成形体の提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため、本発明は、所定の形状が付与された樹脂成形体を準備する工程と、この樹脂成形体の表面にアンダーコート層を形成する工程と、上記アンダーコート層の上に、蒸着により二酸化チタン膜と二酸化珪素膜とを交互に積層してオーロラ調蒸着膜を形成する工程と、上記オーロラ調蒸着膜の上にトップコート層を形成する工程とを備え、上記アンダーコート層を、紫外線硬化型アンダーコート用樹脂組成物の塗工、硬化によって形成し、その硬化の際にアンダーコート層に不規則な亀裂を生じさせ、その上に形成されるオーロラ調蒸着膜と相俟って、大きさおよび形状が不揃いの鱗片状模様を現出させるようにした加飾成形体の製法を第1の要旨とする。
【0009】
また、本発明は、そのなかでも、特に、上記トップコート層が透明であり、上記鱗片状模様を、上記トップコート層を透かして視認させるようにした加飾成形体の製法を第2の要旨とし、上記加飾成形体およびアンダーコート層が透明であり、上記鱗片状模様を、上記アンダーコート層および加飾成形体を透かしてその裏面側から視認させるようにした加飾成形体の製法を第3の要旨とする。
【0010】
そして、本発明は、それらのなかでも、特に、上記紫外線硬化型アンダーコート用樹脂組成物が、紫外線硬化型アクリル系アンダーコート用樹脂組成物である加飾成形体の製法を第4の要旨とする。
【0011】
また、本発明は、上記第2の要旨である製法によって得られる加飾成形体であって、所定の形状が付与された樹脂成形体の表面に、紫外線硬化型アンダーコート用樹脂組成物からなるアンダーコート層が形成され、その上に、二酸化チタン膜と二酸化珪素膜とを交互に積層してなるオーロラ調蒸着膜が形成され、さらにその上に、透明なトップコート層が形成されており、上記アンダーコート層に不規則な亀裂が生じ、その上に形成されたオーロラ調蒸着膜と相俟って、大きさおよび形状が不揃いの鱗片状模様が形成され、その鱗片状模様が、上記トップコート層を透かして視認されるようになっている加飾成形体を第5の要旨とする。
【0012】
さらに、本発明は、上記第3の要旨である製法によって得られる加飾成形体であって、所定の形状が付与された透明な樹脂成形体の表面に、紫外線硬化型アンダーコート用樹脂組成物からなる透明なアンダーコート層が形成され、その上に、二酸化チタン膜と二酸化珪素膜とを交互に積層してなるオーロラ調蒸着膜が形成され、さらにその上に、トップコート層が形成されており、上記アンダーコート層に不規則な亀裂が生じ、その上に形成されたオーロラ調蒸着膜と相俟って、大きさおよび形状が不揃いの鱗片状模様が形成され、その鱗片状模様が、上記アンダーコート層および樹脂成形体を透かしてその裏面側から視認されるようになっている加飾成形体を第6の要旨とする。
【0013】
そして、本発明は、それらのなかでも、特に、上記紫外線硬化型アンダーコート用樹脂組成物が、紫外線硬化型アクリル系アンダーコート用樹脂組成物である加飾成形体を第7の要旨とする。
【発明の効果】
【0014】
すなわち、本発明は、樹脂成形体の表面に、不規則な亀裂が生じた特殊なアンダーコート層を形成し、さらにその上に、見る角度によって色が変化する、特殊なオーロラ調の蒸着膜を形成することにより、両者の相乗効果によって、従来にない、印象的な鱗片状模様を現出させるようにしたものである。
【0015】
上記の製法によって得られた加飾成形体は、従来にない、印象的な鱗片状模様で装飾されているため、美麗な外観を有し、アイキャッチ効果が高い。また、透明色や単一色の樹脂成形体である場合、手で触ると指紋や汚れが目立ちやすいが、本発明の加飾成形体によれば、その表面に見える鱗片状模様に紛れて、指紋や汚れが目立たないため、繰り返し手に取って使用するものであっても、美麗な外観を長期にわたって維持することができる。
【0016】
さらに、この加飾成形体は、特殊な積層構造からなるアンダーコート層およびオーロラ調蒸着膜に、不規則な亀裂があらゆる方向に複雑に延びた、特殊な構造を有するため、樹脂成形体に外から強い衝撃が加わっても、上記アンダーコート層およびオーロラ調蒸着膜においてその衝撃が吸収されやすく、樹脂成形体の受けるダメージを小さくすることができる。したがって、これを、例えば固形化粧料を充填した化粧料容器の本体や蓋体として用いたものは、容器自体が損傷しにくいとともに、内側に充填された化粧料にひび等が生じにくいという利点を有する。
【0017】
なお、本発明の製法のなかでも、特に、上記トップコート層が透明であり、上記鱗片状模様を、上記トップコート層を透かして視認させるようにしたものは、鱗片状模様が、加飾成形体のごく表面に近い位置に配置されるため、オーロラ調の輝きに優れ、華やかな印象が強いものが得られる。
【0018】
また、本発明のなかでも、特に、上記加飾成形体およびアンダーコート層が透明であり、上記鱗片状模様を、上記アンダーコート層および加飾成形体を透かしてその裏面側から視認させるようにしたものは、鱗片状模様が、加飾成形体の表面からやや内側に配置されるため、その鱗片状模様の陰影に奥行き感が生じ、比較的落ちついた印象のものが得られる。
【0019】
そして、それらのなかでも、特に、上記紫外線硬化型アンダーコート用樹脂組成物が、紫外線硬化型アクリル系アンダーコート用樹脂組成物であるものは、アンダーコート層に形成される不規則な亀裂がより鮮明でめりはりのあるものとなり、非常に美的な印象を与えるものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施の形態であるコンパクト容器の斜視図である。
図2】上記コンパクト容器における蓋体の分解斜視図である。
図3図1の、拡大されたX−X′断面図である。
図4】上記オーロラ調蒸着膜の構成の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
つぎに、本発明を実施するための形態について説明する。ただし、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではない。
【0022】
図1は、本発明の一実施の形態であるコンパクト容器の斜視図であり、図2は、その部分的な分解斜視図である。また、図3は、図1の拡大されたX−X′断面を示す説明図で、その厚みや形状は説明しやすいよう模式的に表現されている。これらの図において、1は本体部で、その内側にはファンデーション等の化粧料が収容保持されるようになっている。そして、上記本体部1の上部開口を蓋する蓋体2は、図2に示すように、蓋枠体3と、その蓋枠体3の上面に嵌合一体化される蓋板4とで構成されている。
【0023】
上記蓋枠体3の後端部には、下向きにヒンジ部3aが突設されており、このヒンジ部3aが本体部1の後端部と係合することにより、図1において鎖線で示すように、蓋体2が上方に開くようになっている。また、上記蓋枠体3の内側面には、鏡5が貼着されている。
【0024】
上記蓋板4は、図3に示すように、蓋板4の基本形状が賦形された樹脂成形体からなるベース層6と、その表面に形成される透明なアンダーコート層7と、その上に形成されるオーロラ調蒸着膜8と、さらにその上に形成される透明なトップコート層9とで構成されている。そして、上記アンダーコート層7およびオーロラ調蒸着膜8には、不規則な多数の亀裂が生じており、その2層が相俟って、大きさおよび形状が異なる不揃いの鱗片状模様Pが形成されている。
【0025】
上記鱗片状模様Pを有する蓋板4は、例えばつぎのようにして製造することができる。すなわち、まず、金型を用い、ベース層6の樹脂材料を射出成形して、蓋板4の基本形状が賦形されたベース層6を得る。このベース層6の樹脂材料としては、例えばアクリル樹脂、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、アクリロニトリル−スチレン共重合樹脂(AS)、ポリカーボネート(PC)等があげられる。特に、ベース層6を透明にする場合は、アクリル樹脂やAS樹脂を用いることが、透明感に優れており、好適である。
【0026】
そして、上記ベース層6の厚みは、樹脂成形体の大きさにもよるが、コンパクト容器の蓋板4として用いるという用途から考慮すれば、1〜3mm程度であることが好適である。
【0027】
つぎに、上記ベース層6の表面に、アンダーコート用樹脂組成物を塗工し、硬化させてアンダーコート層7を形成する。上記アンダーコート用樹脂組成物としては、紫外線硬化時に不規則な亀裂が生じる特徴を備えた紫外線硬化型アンダーコート用樹脂組成物が用いられ、例えば、紫外線硬化型アクリル系アンダーコート用樹脂組成物を用いることが、後述するオーロラ調蒸着膜8との密着性と生じる鱗片状模様Pの美麗さの点において、好適である。そして、上記特殊な鱗片状模様Pをベース層6側から透かして見る場合には、上記アンダーコート層7も透明であることが必要で、そのためには、透明な紫外線硬化型アンダーコート用樹脂組成物が用いられる。
【0028】
上記アンダーコート層7の紫外線硬化時に生じる亀裂の状態は、アンダーコート用樹脂組成物の組成や紫外線の照射条件にもよるが、美麗な鱗片状模様Pを得るには、亀裂によって区切られる区画が大小さまざまな大きさとなるような、複雑な亀裂であることが好ましい。
【0029】
つぎに、上記アンダーコート層7の上に、オーロラ調蒸着膜8を形成する。オーロラ調蒸着膜8は、図4に示すように、二酸化チタン(TiO2)膜10、二酸化珪素(SiO2)膜11、二酸化チタン膜10、の3層を、この順で形成したものである。蒸着は、真空蒸着法、スパッタ法、イオンプレーティング等、適宜の蒸着方法を用いることができる。ただし、膜厚制御性とコストの点で、真空蒸着法を用いることが好適である。
【0030】
上記オーロラ調蒸着膜8は、不規則で複雑な亀裂の生じたアンダーコート層7の表面に形成されるため、その亀裂にしたがって、大小さまざまな小区画に区切られた複雑な凹凸面になっており、その各区画の向きが微妙に異なっているため、結晶の配向のように、異なる様々な向きに光を反射して、印象的な鱗片状模様Pが現出する。
【0031】
なお、上記オーロラ調蒸着膜8は、二酸化チタン膜10と二酸化珪素膜11とを交互に重ねることによって構成されるが、上下両端が二酸化チタン膜10となるよう構成することが好ましい。そして、層の数が多いほど深みのあるオーロラ調蒸着膜8を得ることができるが、美麗な鱗片状模様Pを得るには、3〜5層構造にすることが好適である。
【0032】
つぎに、上記オーロラ調蒸着膜8の上に、トップコート用樹脂組成物を塗工し、硬化させて、透明なトップコート層9を形成する。上記トップコート用樹脂組成物としては、例えば、アクリル系、ウレタンアクリレート系、エポキシアクリレート系、ポリエステルアクリレート系、アクリルアクリレート系、ポリエーテルアクリレート系等の、透明な光硬化型樹脂を用いることが好適である。なかでも、上記オーロラ調蒸着膜8との密着性の点において、アクリル系のものを用いることが好適である。
【0033】
このようにして得られた蓋板4は、その表面の透明なトップコート層9から、その下の、鱗片状模様Pが形成されたオーロラ調蒸着膜8を透かして見えるため、従来にない、美麗な外観を有する。
【0034】
そして、この蓋板4を蓋体2に組み込んだコンパクト容器は、図1に示すように、蓋体2の表面に、従来にない、美麗な鱗片状模様Pが見えるため、アイキャッチ効果が高い。また、この蓋体2を、指で繰り返し開閉しても、上記鱗片状模様Pに紛れて、指紋や汚れが目立たないため、美麗な外観が長期にわたって維持されるという利点を有する。
【0035】
さらに、このコンパクト容器は、上記アンダーコート層7およびオーロラ調蒸着膜8(図3を参照)が、上記特殊な積層構造からなり、その積層構造において不規則な亀裂があらゆる方向に複雑に伸びているため、外から強い衝撃が加わっても、上記アンダーコート層7およびオーロラ調蒸着膜8がその衝撃を吸収しやすく、コンパクト容器全体が受けるダメージを小さくすることができる。したがって、容器自体が損傷しにくいとともに、内側に充填された化粧料にひび等が生じにくいという利点を有する。
【0036】
また、上記鱗片状模様Pが、ごく薄い上記トップコート層9を透かして見えるため、鱗片状模様Pにおいて、そのオーロラ調の輝きに優れ、華やかな印象が強い。
【0037】
なお、上記の例において、上記トップコート層9は、無色透明である必要はなく、着色されて色味のある透明であってもよい。そして、その「透明」の程度は、その下の鱗片状模様Pが透けて見えればよく、完全透明に限らず、やや鱗片状模様Pがぼやけて見えるような、半透明であっても差し支えない。例えば、トップコート層9として、マット調になるものを用い、艶消しされた表面から鱗片状模様Pが透けて見えるようにしてもよい。
【0038】
また、上記トップコート層9の上に、透明で単一色に着色された転写シートや、透明でしかも色のグラデーションがついた転写シート、あるいは透明なオーロラ転写シート等を重ねることによって、鱗片状模様Pの印象を変化させることができる。
【0039】
さらに、上記トップコート層9の上に、部分的に不透明な模様が形成された転写シートを重ねたり、金属薄膜を転写もしくは蒸着してその金属薄膜をレーザ加工によって部分的に除去したりすることによって、上記鱗片状模様Pを部分的に露出させるようにしてもよい。
【0040】
また、逆に、上記の例において、オーロラ調蒸着膜8の下のアンダーコート層7もしくはベース層6に着色し、その色を、オーロラ調蒸着膜8およびトップコート層9を透かして見せることによって、鱗片状模様Pの印象を変化させることができる。ただし、アンダーコート層7を着色させる場合、顔料等の着色剤を溶解させるために溶剤を用いると、アンダーコート層硬化時に生じる亀裂が不充分なものとなる傾向が見られるため、溶剤は、アンダーコート用樹脂組成物全体に対し7重量%を超えないように用いることが好ましい。
【0041】
さらに、ベース層6とアンダーコート層7の間に、着色層や金属薄膜層を形成して、それらの色を、オーロラ調蒸着膜8およびトップコート層9を透かして見せることによって、鱗片状模様Pの印象を変化させることもできる。
【0042】
したがって、本発明におけるベース層6、アンダーコート層7、オーロラ調蒸着膜8、トップコート層9の各層は、互いに直接上下に配置される以外に、各層の間に、鱗片状模様Pを透かして見ることが可能な範囲で、他の層を介在させた状態で上下に配置される場合を含んでいる。
【0043】
そして、上記の例では、図3において太矢印Aで示すように、透明なトップコート層9を透かして、その下のオーロラ調蒸着膜8を見せるようにしたが、樹脂成形体であるベース層6とアンダーコート層7とを透明にして、太矢印Bで示すように、透明なベース層6およびアンダーコート層7を透かして、その上のオーロラ調蒸着膜8を見せるようにしても差し支えない。
【0044】
このようにすると、オーロラ調蒸着膜8による鱗片状模様Pが、ベース層6の厚み分だけ内側になるため、トップコート層9側から見る場合に比べて、鱗片状模様Pの陰影に奥行き感が生じ、比較的落ちついた印象になる。
【0045】
その場合も、上記アンダーコート層7やベース層6に、上記鱗片状模様Pが透けて見える程度の透明さを損なうことなく着色したり、ベース層6の表面側(上記の例と反対に、アンダーコート層7が形成された側と反対側の面が表面側となる)に、前述の場合と同様、各種の転写シートを積層したり、金属薄膜を部分的に積層したりして、透けて見える鱗片状模様Pの印象を変えることができる。
【0046】
さらに、ベース層6、アンダーコート層7、オーロラ調蒸着膜8、トップコート層9の全てを透明にすれば、透明な生地でありながら鱗片状模様Pが透けてみえるため、これをそのまま蓋体2や本体部1に用いて、スケルトン仕様の、興趣に富むコンパクト容器とすることもできる。
【0047】
なお、これらの例は、本発明をコンパクト容器に適用したものであるが、本発明を適用する成形体は、容器に限らず、各種の樹脂成形体、あるいは樹脂成形体に他の部材を組み合わせたものがあげられる。例えば、携帯電話、文房具、家電製品、各種ケース等に広く適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、美麗な鱗片状模様を有する化粧料容器、携帯電話、文房具、家電製品、各種ケース等の加飾成形体の製法と、それによって得られる加飾成形体に広く利用することができる。
【符号の説明】
【0049】
4 蓋板
6 ベース層
7 アンダーコート層
8 オーロラ調蒸着膜
9 トップコート層
P 鱗片状模様
図1
図2
図3
図4