特許第6198587号(P6198587)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本電産サンキョー株式会社の特許一覧

特許6198587印刷システムおよび印刷システムの制御方法
<>
  • 特許6198587-印刷システムおよび印刷システムの制御方法 図000002
  • 特許6198587-印刷システムおよび印刷システムの制御方法 図000003
  • 特許6198587-印刷システムおよび印刷システムの制御方法 図000004
  • 特許6198587-印刷システムおよび印刷システムの制御方法 図000005
  • 特許6198587-印刷システムおよび印刷システムの制御方法 図000006
  • 特許6198587-印刷システムおよび印刷システムの制御方法 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6198587
(24)【登録日】2017年9月1日
(45)【発行日】2017年9月20日
(54)【発明の名称】印刷システムおよび印刷システムの制御方法
(51)【国際特許分類】
   B41J 17/36 20060101AFI20170911BHJP
   B41J 2/325 20060101ALI20170911BHJP
   G06F 3/12 20060101ALI20170911BHJP
【FI】
   B41J17/36 B
   B41J2/325 A
   G06F3/12 302
   G06F3/12 329
   G06F3/12 378
【請求項の数】6
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2013-241498(P2013-241498)
(22)【出願日】2013年11月22日
(65)【公開番号】特開2015-100939(P2015-100939A)
(43)【公開日】2015年6月4日
【審査請求日】2016年10月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】日本電産サンキョー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125690
【弁理士】
【氏名又は名称】小平 晋
(74)【代理人】
【識別番号】100090170
【弁理士】
【氏名又は名称】横沢 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100142619
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100153316
【弁理士】
【氏名又は名称】河口 伸子
(72)【発明者】
【氏名】星 朋宏
【審査官】 大関 朋子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−074484(JP,A)
【文献】 特開平06−115201(JP,A)
【文献】 特開平09−024664(JP,A)
【文献】 特開平10−029331(JP,A)
【文献】 特開平10−016186(JP,A)
【文献】 特開2013−222325(JP,A)
【文献】 特開2006−188068(JP,A)
【文献】 特開2006−212853(JP,A)
【文献】 特開2010−137929(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 17/36
B41J 2/325
B41J 15/04
B41J 3/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクリボンに塗布されたインクをカードに転写して印刷する印刷装置と、前記印刷装置が搭載される上位装置とを備え、
前記カードの片面の印刷に要する前記インクリボンの領域を1画面領域とすると、
前記インクリボンには、前記1画面領域が連続的に形成されるとともに、前記インクリボンの印刷可能領域の終端を検知するためのエンドマークが形成され、
前記印刷装置は、前記カードにインクが転写される前の前記インクリボンが巻回される供給ロールと、前記カードにインクが転写された後の前記インクリボンが巻き取られる巻取ロールと、前記巻取ロールを回転させて前記巻取ロールに前記インクリボンを巻き取るリボン巻取機構と、前記エンドマークを検知するためのエンドマーク検知機構と、不揮発性メモリを有するとともに前記リボン巻取機構および前記エンドマーク検知機構が接続される制御部とを備え、
前記上位装置は、前記制御部に接続される上位制御部を備え、
前記エンドマーク検知機構での検知結果に基づいて前記エンドマークが検知されると、前記上位制御部は、前記リボン巻取機構によって前記巻取ロールに前記インクリボンを巻取限界まで巻き取る全巻取動作を実行するための制御指令を前記制御部へ出力し、前記制御部は、前記全巻取動作を実行するとともに、前記全巻取動作が完了すると、前記全巻取動作が完了していることを示す巻取完了情報を前記不揮発性メモリに記憶し、
前記印刷装置の電源がオフからオンに切り替わると、前記上位制御部は、前記1画面領域が所定の基準位置に配置されるまで前記リボン巻取機構によって前記インクリボンを巻き取る初期化動作を実行するための制御指令を前記制御部に出力し、前記制御部は、前記初期化動作を実行し、
前記初期化動作が正常に完了しない場合に、前記上位制御部は、前記不揮発性メモリに前記巻取完了情報が記憶されているか否かを確認することを特徴とする印刷システム。
【請求項2】
インクリボンに塗布されたインクをカードの両面に順次転写して印刷する印刷装置と、前記印刷装置が搭載される上位装置とを備え、
前記カードの片面の印刷に要する前記インクリボンの領域を1画面領域とすると、
前記インクリボンには、前記1画面領域が連続的に形成されるとともに、前記インクリボンの最も終端側に配置される前記1画面領域よりも前記インクリボンの先端側に配置される前記1画面領域には、前記インクリボンの印刷可能領域の終端を検知するためのエンドマークが形成され、
前記印刷装置は、前記カードにインクが転写される前の前記インクリボンが巻回される供給ロールと、前記カードにインクが転写された後の前記インクリボンが巻き取られる巻取ロールと、前記巻取ロールを回転させて前記巻取ロールに前記インクリボンを巻き取るリボン巻取機構と、前記供給ロールから供給される前記インクリボンを加熱して前記カードに前記インクリボンのインクを転写し印刷するサーマルヘッドと、前記エンドマークを検知するためのエンドマーク検知機構と、不揮発性メモリを有するとともに前記リボン巻取機構、前記サーマルヘッドおよび前記エンドマーク検知機構が接続される制御部とを備え、
前記上位装置は、前記制御部に接続される上位制御部を備え、
前記カードの印刷中に前記エンドマーク検知機構での検知結果に基づいて前記エンドマークが検知されると、前記上位制御部は、前記エンドマークを検知したときの印刷動作であるマーク検知時印刷動作によって前記カードの両面への印刷が終了するのか、それとも、前記マーク検知時印刷動作によって前記カードの一方の面のみへの印刷が終了するのかを判断し、
前記マーク検知時印刷動作によって前記カードの両面への印刷が終了する場合には、前記上位制御部は、前記リボン巻取機構によって前記巻取ロールに前記インクリボンを巻取限界まで巻き取る全巻取動作を実行するための制御指令を前記制御部へ出力し、前記制御部は、前記全巻取動作を実行するとともに、前記全巻取動作が完了すると、前記全巻取動作が完了していることを示す巻取完了情報を前記不揮発性メモリに記憶し、
前記マーク検知時印刷動作によって前記カードの一方の面のみへの印刷が終了する場合には、前記上位制御部は、前記エンドマークよりも前記インクリボンの終端側に配置される前記1画面領域を使用して前記サーマルヘッドによって前記カードの他方の面への印刷を行う最終印刷を実行するための制御指令を前記制御部に出力し、前記制御部は、前記最終印刷を実行し、その後、前記上位制御部は、前記全巻取動作を実行するための制御指令を前記制御部へ出力し、前記制御部は、前記全巻取動作を実行するとともに、前記全巻取動作が完了すると、前記巻取完了情報を前記不揮発性メモリに記憶し、
前記印刷装置の電源がオフからオンに切り替わると、前記上位制御部は、前記1画面領域が所定の基準位置に配置されるまで前記リボン巻取機構によって前記インクリボンを巻き取る初期化動作を実行するための制御指令を前記制御部に出力し、前記制御部は、前記初期化動作を実行し、
前記初期化動作が正常に完了しない場合に、前記上位制御部は、前記不揮発性メモリに前記巻取完了情報が記憶されているか否かを確認することを特徴とする印刷システム。
【請求項3】
前記上位制御部は、前記初期化動作が正常に完了しない場合であって、かつ、前記不揮発性メモリに前記巻取完了情報が記憶されている場合に、交換されるべき前記インクリボンが交換されていないことを示すリボン交換エラー信号を生成することを特徴とする請求項1または2記載の印刷システム。
【請求項4】
前記上位制御部は、前記初期化動作が正常に完了すると、前記不揮発性メモリに記憶された前記巻取完了情報を消去する消去動作を実行するための制御指令を前記制御部に出力し、前記制御部は、前記消去動作を実行することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の印刷システム。
【請求項5】
塗布されたインクがカードに転写される前のインクリボンが巻回される供給ロールと、前記カードにインクが転写された後の前記インクリボンが巻き取られる巻取ロールと、前記巻取ロールを回転させて前記巻取ロールに前記インクリボンを巻き取るリボン巻取機構を備え、
前記カードの片面の印刷に要する前記インクリボンの領域を1画面領域とすると、
前記インクリボンには、前記1画面領域が連続的に形成されるとともに、前記インクリボンの印刷可能領域の終端を検知するためのエンドマークが形成されている印刷システムの制御方法であって、
前記エンドマークを検知するためのエンドマーク検知機構での検知結果に基づいて前記エンドマークが検知されると、前記リボン巻取機構によって前記巻取ロールに前記インクリボンを巻取限界まで巻き取る全巻取動作を実行するとともに、前記全巻取動作が完了すると、前記全巻取動作が完了していることを示す巻取完了情報を不揮発性メモリに記憶し、
前記印刷システムの電源がオフからオンに切り替わると、前記1画面領域が所定の基準位置に配置されるまで前記リボン巻取機構によって前記インクリボンを巻き取る初期化動作を実行し、
前記初期化動作が正常に完了しない場合に、前記不揮発性メモリに前記巻取完了情報が記憶されているか否かを確認することを特徴とする印刷システムの制御方法。
【請求項6】
インクリボンを加熱してカードに前記インクリボンに塗布されたインクを転写し印刷するサーマルヘッドと、前記カードにインクが転写される前の前記インクリボンが巻回される供給ロールと、前記カードにインクが転写された後の前記インクリボンが巻き取られる巻取ロールと、前記巻取ロールを回転させて前記巻取ロールに前記インクリボンを巻き取るリボン巻取機構とを備え、
前記カードの片面の印刷に要する前記インクリボンの領域を1画面領域とすると、
前記インクリボンには、前記1画面領域が連続的に形成されるとともに、前記インクリボンの最も終端側に配置される前記1画面領域よりも前記インクリボンの先端側に配置される前記1画面領域には、前記インクリボンの印刷可能領域の終端を検知するためのエンドマークが形成され、
前記カードの両面に印刷を行う印刷システムの制御方法であって、
前記エンドマークを検知するためのエンドマーク検知機構での検知結果に基づいて前記カードの印刷中に前記エンドマークが検知されると、前記エンドマークを検知したときの印刷動作であるマーク検知時印刷動作によって前記カードの両面への印刷が終了するのか、それとも、前記マーク検知時印刷動作によって前記カードの一方の面のみへの印刷が終了するのかを判断し、
前記マーク検知時印刷動作によって前記カードの両面への印刷が終了する場合には、前記リボン巻取機構によって前記巻取ロールに前記インクリボンを巻取限界まで巻き取る全巻取動作を実行するとともに、前記全巻取動作が完了すると、前記全巻取動作が完了していることを示す巻取完了情報を不揮発性メモリに記憶し、
前記マーク検知時印刷動作によって前記カードの一方の面のみへの印刷が終了する場合には、前記エンドマークよりも前記インクリボンの終端側に配置される前記1画面領域を使用して前記サーマルヘッドによって前記カードの他方の面への印刷を行う最終印刷を実行してから、前記全巻取動作を実行するとともに、前記全巻取動作が完了すると、前記巻取完了情報を前記不揮発性メモリに記憶し、
前記印刷システムの電源がオフからオンに切り替わると、前記1画面領域が所定の基準位置に配置されるまで前記リボン巻取機構によって前記インクリボンを巻き取る初期化動作を実行し、
前記初期化動作が正常に完了しない場合に、前記不揮発性メモリに前記巻取完了情報が記憶されているか否かを確認することを特徴とする印刷システムの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクリボンに塗布されたインクをカードに転写して印刷する印刷システムに関する。また、本発明は、かかる印刷システムの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インクリボンをサーマルヘッドで加熱してインクリボンに塗布されたインクを印刷媒体に転写し印刷する熱転写型の印刷装置が知られている(たとえば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の印刷装置で使用されるインクリボンには、リボンエンドを検出するためのエンドマークが形成されている。特許文献1に記載の印刷装置は、インクリボンの一端側が巻回される巻取軸と、インクリボンの他端側が巻回される送出軸と、エンドマークを検出するためのマーク検出手段とを備えている。
【0003】
特許文献1に記載の印刷装置では、マーク検出手段は、インクリボンを介して対向配置される発光素子と受光素子とを備えており、受光素子には、エンドマークの検出情報を記憶する不揮発性の記憶装置と、インクリボンの交換を促す表示装置とが接続されている。記憶装置には、エンドマークの検出情報が記憶装置に記憶されているか否かを判別する判別手段が接続されている。また、送出軸の一端部には、スリット板が取り付けられており、このスリット板の周縁部分の一部は、凹状をなすセンサの発光素子と受光素子との間に配置されている。このセンサには、送出軸におけるインクリボンの巻径を計測する計測手段が接続されている。インクリボンの巻径を計測する際には、規定数のパルスがセンサで得られるまでインクリボンが巻き取られる。また、インクリボンの巻取時に得られたパルスのレベルの切替時間に基づいて、インクリボンの巻径が算出される。
【0004】
特許文献1に記載の印刷装置では、マーク検出手段によってエンドマークが検出されると、インクリボンのエンド情報が記憶装置に記憶される。また、表示装置にインクリボンを交換すべき旨の情報が表示される。オペレータによってインクリボンが交換されると、印刷装置は、巻取軸を回転させインクリボンを所定量巻き取ってインクリボンの初期位置を設定する復帰動作を行う。このとき、判別手段は、記憶装置にエンド情報が記憶されているか否かを判別し、記憶装置にエンド情報が記憶されている場合には、復帰動作時に計測装置によって送出軸におけるインクリボンの巻径を計測する。計測された巻径が所定値以上であれば、印刷装置は、インクリボンの交換時に、新品のインクリボンに交換されたと判断する。一方、計測された巻径が所定値未満であれば、印刷装置は、インクリボンの交換時に、エンド状態にあるインクリボンが誤って再度セットされたと判断して、所定のエラー処理を実行する。
【0005】
インクリボンの交換時に、エンド状態にあるインクリボンが誤って再度セットされると、その後、マーク検出手段によってエンドマークを検知することができないため、印刷媒体の印刷時に、インクが塗布されていないインクリボンの領域が使用されてしまい、印刷媒体が無駄になるという問題が生じる。しかしながら、特許文献1に記載の印刷装置では、インクリボン交換後の復帰動作において、記憶装置にエンド情報が記憶されているか否かを判別し、記憶装置にエンド情報が記憶されている場合に、送出軸におけるインクリボンの巻径を計測しているため、インクリボンの交換時に、新品のインクリボンに交換されたのか、それとも、エンド状態にあるインクリボンが誤って再度セットされたのかを検知することが可能になる。したがって、この印刷装置では、印刷媒体が無駄になるといった問題の発生を防止することが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−74484号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述のように、特許文献1に記載の印刷装置では、インクリボンの交換時に、新品のインクリボンに交換されたのか、それとも、エンド状態にあるインクリボンが誤って再度セットされたのかを検知することが可能になる。また、この印刷装置では、復帰動作において、記憶装置にエンド情報が記憶されているか否かを判別し、記憶装置にエンド情報が記憶されている場合に、送出軸におけるインクリボンの巻径を計測しているため、エンドマークが検知された後に、インクリボンが交換されたか否かを検知することも可能である。また、この印刷装置では、不揮発性の記憶装置にエンド情報が記憶されているため、エンドマークが検出された後、電源がオフになり、その後、電源がオンになったときであっても、エンドマークが検知された後に、インクリボンが交換されたか否かを検知することも可能である。
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載の印刷装置では、所定量インクリボンを巻き取らないと、インクリボンの巻径を計測することができない。そのため、この印刷装置では、エンドマークが形成された位置からインクリボンの終端までの長さが短いと、インクリボンの巻径を計測することができない。すなわち、この印刷装置では、エンドマークが形成された位置からインクリボンの終端までの長さが短いと、エンドマークが検知された後に、インクリボンが交換されたか否かを検知することができない。
【0009】
そこで、本発明の課題は、インクリボンのエンドマークが形成された位置からインクリボンの終端までの長さが短くても、エンドマークが検知された後、電源がオフ、オンに順次切り替わったときに、インクリボンが交換されているか否かを検知することが可能な印刷システム、および、印刷システムの制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するため、本発明の印刷システムは、インクリボンに塗布されたインクをカードに転写して印刷する印刷装置と、印刷装置が搭載される上位装置とを備え、カードの片面の印刷に要するインクリボンの領域を1画面領域とすると、インクリボンには、1画面領域が連続的に形成されるとともに、インクリボンの印刷可能領域の終端を検知するためのエンドマークが形成され、印刷装置は、カードにインクが転写される前のインクリボンが巻回される供給ロールと、カードにインクが転写された後のインクリボンが巻き取られる巻取ロールと、巻取ロールを回転させて巻取ロールにインクリボンを巻き取るリボン巻取機構と、エンドマークを検知するためのエンドマーク検知機構と、不揮発性メモリを有するとともにリボン巻取機構およびエンドマーク検知機構が接続される制御部とを備え、上位装置は、制御部に接続される上位制御部を備え、エンドマーク検知機構での検知結果に基づいてエンドマークが検知されると、上位制御部は、リボン巻取機構によって巻取ロールにインクリボンを巻取限界まで巻き取る全巻取動作を実行するための制御指令を制御部へ出力し、制御部は、全巻取動作を実行するとともに、全巻取動作が完了すると、全巻取動作が完了していることを示す巻取完了情報を不揮発性メモリに記憶し、印刷装置の電源がオフからオンに切り替わると、上位制御部は、1画面領域が所定の基準位置に配置されるまでリボン巻取機構によってインクリボンを巻き取る初期化動作を実行するための制御指令を制御部に出力し、制御部は、初期化動作を実行し、初期化動作が正常に完了しない場合に、上位制御部は、不揮発性メモリに巻取完了情報が記憶されているか否かを確認することを特徴とする。
【0011】
また、上記の課題を解決するため、本発明の印刷システムの制御方法は、塗布されたインクがカードに転写される前のインクリボンが巻回される供給ロールと、カードにインクが転写された後のインクリボンが巻き取られる巻取ロールと、巻取ロールを回転させて巻取ロールにインクリボンを巻き取るリボン巻取機構を備え、カードの片面の印刷に要するインクリボンの領域を1画面領域とすると、インクリボンには、1画面領域が連続的に形成されるとともに、インクリボンの印刷可能領域の終端を検知するためのエンドマークが形成されている印刷システムの制御方法であって、エンドマークを検知するためのエンドマーク検知機構での検知結果に基づいてエンドマークが検知されると、リボン巻取機構によって巻取ロールにインクリボンを巻取限界まで巻き取る全巻取動作を実行するとともに、全巻取動作が完了すると、全巻取動作が完了していることを示す巻取完了情報を不揮発性メモリに記憶し、印刷システムの電源がオフからオンに切り替わると、1画面領域が所定の基準位置に配置されるまでリボン巻取機構によってインクリボンを巻き取る初期化動作を実行し、初期化動作が正常に完了しない場合に、不揮発性メモリに巻取完了情報が記憶されているか否かを確認することを特徴とする。
【0012】
本発明では、エンドマーク検知機構での検知結果に基づいてエンドマークが検知されると、リボン巻取機構によって巻取ロールにインクリボンを巻取限界まで巻き取る全巻取動作を実行するとともに、全巻取動作が完了すると、全巻取動作が完了していることを示す巻取完了情報を不揮発性メモリに記憶している。そのため、本発明では、エンドマークが検知された後の電源オフ時にインクリボンが交換されていないと、その後、電源がオフからオンに切り替わって初期化動作が行われても、初期化動作時にリボン巻取機構によってインクリボンを巻き取ることができず、初期化動作が正常に完了しない。また、本発明では、初期化動作が正常に完了しない場合に、不揮発性メモリに巻取完了情報が記憶されているか否かを確認している。したがって、本発明では、インクリボンが交換されていないために初期化動作が正常に完了しないのか、それとも、他の原因で初期化動作が正常に完了しないのかを容易に検知することが可能になる。すなわち、本発明では、初期化動作が正常に完了しない場合に、不揮発性メモリに巻取完了情報が記憶されていることを確認することで、エンドマークが検知された後の電源オフ時にインクリボンが交換されていないことを検知することが可能になる。したがって、本発明では、特許文献1に記載の印刷装置のようにインクリボンの巻径を計測しなくても、エンドマークが検知された後、電源がオフ、オンに順次切り替わったときに、インクリボンが交換されているか否かを検知することが可能になる。その結果、本発明では、エンドマークが形成された位置からインクリボンの終端までの長さが短くても、エンドマークが検知された後、電源がオフ、オンに順次切り替わったときに、インクリボンが交換されているか否かを検知することが可能になる。
【0013】
さらに、上記の課題を解決するため、本発明の印刷システムは、インクリボンに塗布されたインクをカードの両面に順次転写して印刷する印刷装置と、印刷装置が搭載される上位装置とを備え、カードの片面の印刷に要するインクリボンの領域を1画面領域とすると、インクリボンには、1画面領域が連続的に形成されるとともに、インクリボンの最も終端側に配置される1画面領域よりもインクリボンの先端側に配置される1画面領域には、インクリボンの印刷可能領域の終端を検知するためのエンドマークが形成され、印刷装置は、カードにインクが転写される前のインクリボンが巻回される供給ロールと、カードにインクが転写された後のインクリボンが巻き取られる巻取ロールと、巻取ロールを回転させて巻取ロールにインクリボンを巻き取るリボン巻取機構と、供給ロールから供給されるインクリボンを加熱してカードにインクリボンのインクを転写し印刷するサーマルヘッドと、エンドマークを検知するためのエンドマーク検知機構と、不揮発性メモリを有するとともにリボン巻取機構、サーマルヘッドおよびエンドマーク検知機構が接続される制御部とを備え、上位装置は、制御部に接続される上位制御部を備え、カードの印刷中にエンドマーク検知機構での検知結果に基づいてエンドマークが検知されると、上位制御部は、エンドマークを検知したときの印刷動作であるマーク検知時印刷動作によってカードの両面への印刷が終了するのか、それとも、マーク検知時印刷動作によってカードの一方の面のみへの印刷が終了するのかを判断し、マーク検知時印刷動作によってカードの両面への印刷が終了する場合には、上位制御部は、リボン巻取機構によって巻取ロールにインクリボンを巻取限界まで巻き取る全巻取動作を実行するための制御指令を制御部へ出力し、制御部は、全巻取動作を実行するとともに、全巻取動作が完了すると、全巻取動作が完了していることを示す巻取完了情報を不揮発性メモリに記憶し、マーク検知時印刷動作によってカードの一方の面のみへの印刷が終了する場合には、上位制御部は、エンドマークよりもインクリボンの終端側に配置される1画面領域を使用してサーマルヘッドによってカードの他方の面への印刷を行う最終印刷を実行するための制御指令を制御部に出力し、制御部は、最終印刷を実行し、その後、上位制御部は、全巻取動作を実行するための制御指令を制御部へ出力し、制御部は、全巻取動作を実行するとともに、全巻取動作が完了すると、巻取完了情報を不揮発性メモリに記憶し、印刷装置の電源がオフからオンに切り替わると、上位制御部は、1画面領域が所定の基準位置に配置されるまでリボン巻取機構によってインクリボンを巻き取る初期化動作を実行するための制御指令を制御部に出力し、制御部は、初期化動作を実行し、初期化動作が正常に完了しない場合に、上位制御部は、不揮発性メモリに巻取完了情報が記憶されているか否かを確認することを特徴とする。
【0014】
また、上記の課題を解決するため、本発明の印刷システムの制御方法は、インクリボンを加熱してカードにインクリボンに塗布されたインクを転写し印刷するサーマルヘッドと、カードにインクが転写される前のインクリボンが巻回される供給ロールと、カードにインクが転写された後のインクリボンが巻き取られる巻取ロールと、巻取ロールを回転させて巻取ロールにインクリボンを巻き取るリボン巻取機構とを備え、カードの片面の印刷に要するインクリボンの領域を1画面領域とすると、インクリボンには、1画面領域が連続的に形成されるとともに、インクリボンの最も終端側に配置される1画面領域よりもインクリボンの先端側に配置される1画面領域には、インクリボンの印刷可能領域の終端を検知するためのエンドマークが形成され、カードの両面に印刷を行う印刷システムの制御方法であって、エンドマークを検知するためのエンドマーク検知機構での検知結果に基づいてカードの印刷中にエンドマークが検知されると、エンドマークを検知したときの印刷動作であるマーク検知時印刷動作によってカードの両面への印刷が終了するのか、それとも、マーク検知時印刷動作によってカードの一方の面のみへの印刷が終了するのかを判断し、マーク検知時印刷動作によってカードの両面への印刷が終了する場合には、リボン巻取機構によって巻取ロールにインクリボンを巻取限界まで巻き取る全巻取動作を実行するとともに、全巻取動作が完了すると、全巻取動作が完了していることを示す巻取完了情報を不揮発性メモリに記憶し、マーク検知時印刷動作によってカードの一方の面のみへの印刷が終了する場合には、エンドマークよりもインクリボンの終端側に配置される1画面領域を使用してサーマルヘッドによってカードの他方の面への印刷を行う最終印刷を実行してから、全巻取動作を実行するとともに、全巻取動作が完了すると、巻取完了情報を不揮発性メモリに記憶し、印刷システムの電源がオフからオンに切り替わると、1画面領域が所定の基準位置に配置されるまでリボン巻取機構によってインクリボンを巻き取る初期化動作を実行し、初期化動作が正常に完了しない場合に、不揮発性メモリに巻取完了情報が記憶されているか否かを確認することを特徴とする。
【0015】
本発明では、エンドマーク検知機構での検知結果に基づいてエンドマークが検知されると、エンドマークを検知したときの印刷動作であるマーク検知時印刷動作によってカードの両面への印刷が終了する場合に、リボン巻取機構によって巻取ロールにインクリボンを巻取限界まで巻き取る全巻取動作を実行するとともに、全巻取動作が完了すると、全巻取動作が完了していることを示す巻取完了情報を不揮発性メモリに記憶している。また、本発明では、エンドマークが検知されると、マーク検知時印刷動作によってカードの一方の面のみへの印刷が終了する場合に、エンドマークよりもインクリボンの終端側に配置される1画面領域を使用してサーマルヘッドによってカードの他方の面への印刷を行う最終印刷を実行し、その後、全巻取動作を実行するとともに、全巻取動作が完了すると、巻取完了情報を不揮発性メモリに記憶している。そのため、本発明では、エンドマークが検知された後の電源オフ時にインクリボンが交換されていないと、その後、電源がオフからオンに切り替わって初期化動作が行われても、初期化動作時にリボン巻取機構によってインクリボンを巻き取ることができず、初期化動作が正常に完了しない。また、本発明では、初期化動作が正常に完了しない場合に、不揮発性メモリに巻取完了情報が記憶されているか否かを確認している。したがって、本発明では、インクリボンが交換されていないために初期化動作が正常に完了しないのか、それとも、他の原因で初期化動作が正常に完了しないのかを容易に検知することが可能になる。すなわち、本発明では、初期化動作が正常に完了しない場合に、不揮発性メモリに巻取完了情報が記憶されていることを確認することで、エンドマークが検知された後の電源オフ時にインクリボンが交換されていないことを検知することが可能になる。したがって、本発明では、特許文献1に記載の印刷装置のようにインクリボンの巻径を計測しなくても、エンドマークが検知された後、電源がオフ、オンに順次切り替わったときに、インクリボンが交換されているか否かを検知することが可能になる。すなわち、本発明では、エンドマークが形成された位置からインクリボンの終端までの長さが短くても、エンドマークが検知された後、電源がオフ、オンに順次切り替わったときに、インクリボンが交換されているか否かを検知することが可能になる。
【0016】
本発明において、たとえば、上位制御部は、初期化動作が正常に完了しない場合であって、かつ、不揮発性メモリに巻取完了情報が記憶されている場合に、交換されるべきインクリボンが交換されていないことを示すリボン交換エラー信号を生成する。
【0017】
本発明において、上位制御部は、初期化動作が正常に完了すると、不揮発性メモリに記憶された巻取完了情報を消去する消去動作を実行するための制御指令を制御部に出力し、制御部は、消去動作を実行することが好ましい。このように構成すると、エンドマークが検知された後、インクリボンが交換されて初期化動作が正常に完了するまで、不揮発性メモリに巻取完了情報を確実に保持し続けることが可能になる。
【発明の効果】
【0018】
以上のように、本発明では、インクリボンのエンドマークが形成された位置からインクリボンの終端までの長さが短くても、エンドマークが検知された後、電源がオフ、オンに順次切り替わったときに、インクリボンが交換されているか否かを検知することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施に形態にかかる印刷システムの概略構成を示すブロック図である。
図2図1に示す印刷装置の機械的な概略構成を側面から説明するための図である。
図3図2に示すインクリボンの終端側部分の平面図である。
図4図1に示す印刷システムにおいてエンドマークが検知されたときの制御フローの一例を示すフローチャートである。
図5図1に示す印刷システムにおいて電源がオフからオンに切り替わったときの制御フローの一例を示すフローチャートである。
図6】本発明の他の形態にかかる印刷システムにおいてエンドマークが検知されたときの制御フローの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
【0021】
(印刷システムの構成)
図1は、本発明の実施に形態にかかる印刷システム1の概略構成を示すブロック図である。図2は、図1に示す印刷装置5の機械的な概略構成を側面から説明するための図である。図3は、図2に示すインクリボン3の終端側部分の平面図である。
【0022】
本形態の印刷システム1は、カード2に文字、記号および図形等の画像を印刷するためのシステムである。具体的には、印刷システム1は、カード2の片面のみに印刷を行うためのシステムである。この印刷システム1は、インクリボン3に塗布されたインクをカード2に転写して印刷する熱転写方式の印刷装置5と、印刷装置5が搭載されるカード発行装置等の上位装置6とを備えている。
【0023】
印刷装置5は、カード2にインクが転写される前のインクリボン3が巻回される供給ロール9とカード2にインクが転写された後のインクリボン3が巻き取られる巻取ロール10とを有するインクリボンカートリッジ11(以下、「カートリッジ11」とする。)と、カートリッジ11が着脱可能に取り付けられる本体部12とから構成されている。また、印刷装置5は、カード2を搬送する複数の搬送ローラ13およびパッドローラ14と、供給ロール9から供給されるインクリボン3を加熱してカード2にインクリボン3のインクを転写し印刷するサーマルヘッド15と、巻取ロール10を回転させて巻取ロール10にインクリボン3を巻き取るリボン巻取機構16(図1参照)と、インクリボン3に形成される後述のエンドマーク3dを検知するためのエンドマーク検知機構17とを備えている。
【0024】
また、印刷装置5は、印刷装置5を制御する制御部18を備えている。制御部18は、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read−Only Memory)等の不揮発性メモリ19を備えている。また、制御部18には、サーマルヘッド15、リボン巻取機構16(具体的には、後述のリボン巻取モータ33)およびエンドマーク検知機構17が接続されている。上位装置6は、上位装置6を制御する上位制御部20を備えている。上位制御部20は、制御部18に接続されている。
【0025】
カード2は、たとえば、厚さが0.7〜0.8mm程度の塩化ビニール製のカードであり、略長方形状に形成されている。このカード2の表面には、たとえば、磁気データが記録される磁気ストライプが形成されている。なお、カード2の内部に、ICチップや通信用のアンテナが内蔵されても良い。また、カード2は、厚さが0.18〜0.36mm程度のPET(ポリエチレンテレフタレート)カードであっても良いし、所定の厚さの紙カード等であっても良い。
【0026】
インクリボン3は、帯状のフィルムにインクが塗布されることで形成されている。このインクリボン3は、カード2に転写される黒色のインクの層であるインク層が形成されるインク領域3aと、カード2に転写されたインクの表面を覆う透明なオーバーコート材の層であるオーバーコート領域3bとを備えている。また、本形態では、1つのインク領域3aと1つのオーバーコート領域3bとによって、カード2の片面の印刷が行われる。すなわち、1つのインク領域3aと1つのオーバーコート領域3bとによって、カード2の片面の印刷に要するインクリボン3の領域である1画面領域3cが構成されている。
【0027】
インク領域3aとオーバーコート領域3bとは、帯状に形成されるインクリボン3の長手方向において、交互に配列されている。すなわち、インクリボン3には、1画面領域3cが連続的に形成されている。インクリボン3の長手方向におけるインク領域3aの幅とオーバーコート領域3bの幅とは略等しくなっている。また、インクリボン3の長手方向におけるインク領域3aの幅およびオーバーコート領域3bの幅は、カード2の長手方向の幅と略等しくなっている。
【0028】
インクリボン3の最も終端側に配置される1画面領域3c(すなわち、供給ロール9の最も中心側に配置される1画面領域3c)よりもインクリボン3の先端側に配置される1画面領域3cには、インクリボン3の印刷可能領域の終端を検知するためのエンドマーク3dが形成されている。具体的には、最も終端側に配置される1画面領域3cの1つ手前の1画面領域3cを構成するオーバーコート領域3bにエンドマーク3dが形成されている。このエンドマーク3dは、たとえば、黒色のインク層によって構成されている。また、エンドマーク3dは、インクリボン3の長手方向に直交するインクリボン3の幅方向に細長い長方形状に形成されている。
【0029】
このように、インクリボン3では、最も終端側に配置される1画面領域3cの1つ手前の1画面領域3cを構成するオーバーコート領域3bにエンドマーク3dが形成されているため、仮に、印刷装置5においてカード2の両面に印刷が行われるとしても、カード2の片面のみの印刷終了後にインクリボン3を交換することなく、カード2の両面の印刷を終了させることが可能になる。すなわち、カード2の両面に印刷が行われる場合、エンドマーク3dが形成される1画面領域3cよりもインクリボン3の終端側にさらに1個の1画面領域3cがないと、エンドマーク3dを検知したときの印刷動作によってカード2の一方の面のみの印刷が終了しているが、他方の面の印刷が終了していないときに、インクリボン3を交換しないと、カード2の両面の印刷を終了させることはできないが、エンドマーク3dが形成される1画面領域3cよりもインクリボン3の終端側にさらに1個の1画面領域3cが形成されていると、カード2の片面のみの印刷終了後にインクリボン3を交換することなく、この1個の1画面領域3cを用いてカード2の両面の印刷を終了させることが可能になる。したがって、このインクリボン3は、カード2の片面のみの印刷を行う印刷装置5でも、カード2の両面の印刷を行う印刷装置5でも使用することが可能である。
【0030】
なお、以下の説明では、図2に示すように、互いに直交する3方向のそれぞれをX方向、Y方向およびZ方向とする。また、X方向を「前後方向」、Y方向を「左右方向」、Z方向を「上下方向」とし、Z1方向側を「上」側、Z2方向側を「下」側とする。本形態では、Z方向が鉛直方向と一致するように印刷装置5が設置されている。また、本形態では、略長方形状に形成されるカード2の長手方向が前後方向(X方向)と略一致するように、かつ、カード2の厚み方向が上下方向(Z方向)と略一致するように、カード2は、前後方向に搬送される。
【0031】
本体部12は、上側に配置される第1筺体23と、下側に配置される第2筺体24とから構成される筺体25を備えている。第2筺体24の前上端側には、左右方向を軸方向として配置される軸26が取り付けられている。第1筺体23の前端側は、軸26に回動可能に保持されており、第1筺体23は、軸26を中心に第2筺体24に対して回動可能となっている。また、第2筺体24に対して第1筺体23を回動させることで、筺体25へのカートリッジ11の着脱が可能になる。
【0032】
本体部12の内部には、カード2が搬送されるカード搬送路27が形成されている。カード搬送路27は、前後方向で印刷装置5を貫通するように、かつ、直線状に形成されている。複数の搬送ローラ13およびパッドローラ14は、カード搬送路27に臨むように、筺体25に取り付けられている。複数の搬送ローラ13は、プーリやタイミングベルト等から構成される動力伝達機構(図示省略)を介してモータ(図示省略)に連結されている。パッドローラ14は、搬送ローラ13に対向配置されるとともに、搬送ローラ13に向かって付勢されている。
【0033】
サーマルヘッド15は、印刷装置5の前後方向の略中心に、かつ、カード搬送路27の上側に配置されている。このサーマルヘッド15は、ヘッド保持部材28の下端側に固定されている。ヘッド保持部材28は、カード搬送路27を通過するカード2に近づく方向およびこのカード2から離れる方向へサーマルヘッド15を移動させるヘッド移動機構(図示省略)に連結されている。サーマルヘッド15の下方には、プラテンローラ29が配置されている。プラテンローラ29は、動力伝達機構(図示省略)を介して搬送ローラ13を駆動するモータに連結されており、搬送ローラ13と一緒に回転する。
【0034】
カード2およびインクリボン3は、上下方向において、サーマルヘッド15とプラテンローラ29との間を通過する。また、サーマルヘッド15は、ヘッド移動機構から伝達される動力によって、カード搬送路27に対して(具体的には、プラテンローラ29に対して)上下動する。このサーマルヘッド15は、インクリボン3を介してカード2の上面に所定の当接力で当接して、カード搬送路27を通過するカード2の上面に印刷を行う。
【0035】
前後方向におけるサーマルヘッド15の両側等には、印刷装置5内でインクリボン3を案内するためのガイド軸30が配置されている。ガイド軸30は、左右方向を軸方向として第1筺体23または第2筺体24に固定されている。このガイド軸30は、カード搬送路27の上方に配置されている。
【0036】
カートリッジ11は、カード搬送路27の上側に配置され、上側から筺体25に着脱可能となっている。供給ロール9および巻取ロール10は、その軸方向と左右方向とが一致するように配置されている。また、供給ロール9は、サーマルヘッド15よりも前側に配置されており、供給ロール9には、サーマルヘッド15に向かって供給される未使用のインクリボン3が巻回されている。巻取ロール10は、サーマルヘッド15よりも後ろ側に配置されており、巻取ロール10には、インクが転写された後の使用済みのインクリボン3が巻き取られる。
【0037】
リボン巻取機構16は、歯車等の動力伝達機構(図示省略)と、この動力伝達機構を介して巻取ロール10が連結されるリボン巻取モータ33(図1参照)とを備えている。リボン巻取モータ33には、インクリボン3に当接してインクリボン3を送るリボン送りローラ34が動力伝達機構(図示省略)を介して連結されている。リボン送りローラ34は、サーマルヘッド15の斜め後ろ上側に配置されており、サーマルヘッド15と巻取ロール10との間に配置されている。リボン送りローラ34には、パッドローラ35が対向配置されている。パッドローラ35は、リボン送りローラ34に向かって付勢されている。
【0038】
エンドマーク検知機構17は、発光素子と受光素子とを備える光学式のセンサである。エンドマーク検知機構17を構成する発光素子と受光素子とは、インクリボン3を挟むように互いに対向配置されている。また、エンドマーク検知機構17は、供給ロール9の上側に配置されており、エンドマーク検知機構17の発光素子と受光素子とは、供給ロール9から繰り出された直後のインクリボン3を挟むように配置されている。透明なオーバーコート領域3bに形成されたエンドマーク3dがこの発光素子と受光素子との間を通過すると、発光素子から受光素子へ向かう光が遮られるため、エンドマーク検知機構17の受光素子の受光量に基づいて、エンドマーク3dが検知される。
【0039】
また、本形態のエンドマーク検知機構17は、互いに対向配置される2対の発光素子および受光素子を備えており、2対の発光素子および受光素子は、インクリボン3の長手方向で隣接するように配置されている。また、本形態の印刷装置5は、一方の発光素子から受光素子へ向かう光がインク領域3aによって遮られ、かつ、このインク領域3aに隣接するオーバーコート領域3bを他方の発光素子から受光素子へ向かう光が通過するときに、インクリボン3の1画面領域3cが所定の基準位置に配置されるように構成されている。すなわち、エンドマーク検知機構17によってオーバーコート領域3bとインク領域3aとの境界3eが検知されたときに、1画面領域3cが基準位置に配置されるように印刷装置5が構成されている。本形態のエンドマーク検知機構17は、カード2への印刷開始時に1画面領域3cが基準位置に配置されているか否かを検知する機能も果たしており、エンドマーク検知機構17での検知結果に基づいて、インクリボン3の位置合わせが行われる。
【0040】
印刷システム1では、印刷システム1の電源がオフからオンに切り替わると(すなわち、印刷装置5の電源がオフからオンに切り替わると)、1画面領域3cが基準位置に配置されるまでリボン巻取機構16によってインクリボン3を巻き取る初期化動作が実行される。すなわち、印刷システム1の電源が投入されると、インクリボン3の位置合わせが行われる。具体的には、上位制御部20が初期化動作を実行するための制御指令を制御部18に出力し、制御部18がリボン巻取モータ33を駆動させて初期化動作を実行する。この初期化動作では、エンドマーク検知機構17での検知結果に基づいて、1画面領域3cが基準位置に配置されるまで、インクリボン3を巻き取る。また、初期化動作では、サーマルヘッド15の位置合わせ等の所定の動作を実行する。初期化動作が正常に完了すると、印刷システム1は、カード2への印刷が可能な状態になる。
【0041】
(エンドマーク検知時の印刷システムの制御方法)
図4は、図1に示す印刷システム1においてエンドマーク3dが検知されたときの制御フローの一例を示すフローチャートである。図5は、図1に示す印刷システム1において電源がオフからオンに切り替わったときの制御フローの一例を示すフローチャートである。
【0042】
印刷システム1は、カード2への印刷中に、エンドマーク検知機構17での検知結果に基づいてエンドマーク3dが検知されると、そのカード2への印刷終了後に、リボン巻取機構16によって巻取ロール10にインクリボン3を巻取限界まで巻き取る全巻取動作を実行する(ステップS1)。具体的には、カード2への印刷中にエンドマーク3dが検知されると、そのカード2への印刷終了後に、上位制御部20が全巻取動作を実行するための制御指令を制御部18へ出力し、制御部18が全巻取動作を実行する。また、印刷システム1は、全巻取動作が完了すると、全巻取動作が完了していることを示す巻取完了情報を不揮発性メモリ19に記憶する(ステップS2)。具体的には、全巻取動作が完了すると、制御部18が巻取完了情報を不揮発性メモリ19に記憶する。
【0043】
なお、電源がオフからオンに切り替わったときの初期化動作時のインクリボン3の巻取動作中に、エンドマーク3dが検知されると、印刷システム1は、全巻取動作を実行するとともに、全巻取動作が完了すると、巻取完了情報を不揮発性メモリ19に記憶する。また、制御部18は、リボンエンドエラー信号を生成して、上位制御部20へ出力する。
【0044】
また、印刷システム1は、電源がオフからオンに切り替わると、初期化動作を実行する(ステップS11)。その後、上位制御部20は、この初期化動作が正常に完了したか否かを判断する(ステップS12)。初期化動作が正常に完了すると(ステップS12において“Yes”であると)、カード2への印刷が可能な状態になる。一方、初期化動作が正常に完了しない場合には(ステップS12において“No”の場合には)、上位制御部20は、不揮発性メモリ19に巻取完了情報が記憶されているか否か確認する(ステップS13)。
【0045】
全巻取動作が完了している場合、エンドマーク3dが検知された後の電源オフ時にインクリボン3が交換されていないと(具体的には、カートリッジ11が交換されていないと)、その後、電源がオンに切り替わって初期化動作が行われても、初期化動作時にリボン巻取機構16によってインクリボン3を巻き取ってインクリボン3の位置合わせをすることができず、初期化動作が正常に完了しない。そのため、ステップS13で、全巻取動作が完了していることを示す巻取完了情報が不揮発性メモリ19に記憶されている場合(ステップS13で“Yes”の場合)には、エンドマーク3dが検知された後の電源オフ時にインクリボン3が交換されていないと判断されて、リボン交換エラーとなる。この場合には、たとえば、上位制御部20は、交換されるべきインクリボン3が交換されていないことを示すリボン交換エラー信号を生成する。また、上位制御部20は、このリボン交換エラー信号に基づいて、インクリボン3の交換を促す所定の表示を表示部(図示省略)に表示する等の所定の処理を実行する。
【0046】
なお、インクリボン3の交換を促す表示を確認したオペレータは、印刷システム1の電源をオフにして、インクリボン3を交換する。また、インクリボン3の交換後に印刷システム1の電源をオンにする。印刷システム1の電源がオンになると、ステップS11の初期化動作が実行される。
【0047】
一方、ステップS13で、不揮発性メモリ19に巻取完了情報が記憶されていない場合(すなわち、全巻取動作が行われていない場合、ステップS13で“No”の場合)には、印刷システム1の電源がオフになるときに、エンドマーク3dが検知される前のインクリボン3が印刷装置5にセットされており、初期化動作時にリボン巻取機構16によってインクリボン3を巻き取ってインクリボン3の位置合わせをすることが可能であるため、その他の原因で初期化動作が正常に完了しないと判断されてその他のエラーになる。この場合には、たとえば、上位制御部20は、所定のエラー信号を生成し、このエラー信号に基づく所定の処理を実行する。
【0048】
なお、初期化動作が正常に完了すると、不揮発性メモリ19に記憶された巻取完了情報は消去される。具体的には、初期化動作が正常に完了すると、上位制御部20が不揮発性メモリ19に記憶された巻取完了情報を消去する消去動作を実行するための制御指令を制御部18に出力し、制御部18が消去動作を実行する。
【0049】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態では、エンドマーク検知機構17での検知結果に基づいてエンドマーク3dが検知されると、印刷システム1は、リボン巻取機構16によって巻取ロール10にインクリボン3を巻取限界まで巻き取る全巻取動作を実行するとともに、全巻取動作が完了すると、巻取完了情報を不揮発性メモリ19に記憶している。そのため、本形態では、上述のように、エンドマーク3dが検知された後の電源オフ時にインクリボン3が交換されていないと、その後、電源がオフからオンに切り替わって初期化動作が行われても、初期化動作時にリボン巻取機構16によってインクリボン3を巻き取ることができず、初期化動作が正常に完了しない。
【0050】
また、本形態では、印刷システム1は、初期化動作が正常に完了しない場合に、不揮発性メモリ19に巻取完了情報が記憶されているか否かを確認している。したがって、本形態では、インクリボン3が交換されていないために初期化動作が正常に完了しないのか、それとも、他の原因で初期化動作が正常に完了しないのかを容易に検知することが可能になる。すなわち、本形態では、初期化動作が正常に完了しない場合に、不揮発性メモリ19に巻取完了情報が記憶されていることを確認することで、エンドマーク3dが検知された後の電源オフ時にインクリボン3が交換されていないことを検知することが可能になる。したがって、本形態では、インクリボン3の巻径を計測しなくても、エンドマーク3dが検知された後、電源がオフ、オンに順次切り替わったときに、インクリボン3が交換されているか否かを検知することが可能になる。すなわち、本形態では、エンドマーク3dが形成された位置からインクリボン3の終端までの長さが短くても、エンドマーク3dが検知された後、電源がオフ、オンに順次切り替わったときに、インクリボン3が交換されているか否かを検知することが可能になる。
【0051】
本形態では、初期化動作が正常に完了すると、不揮発性メモリ19に記憶された巻取完了情報が消去されている。そのため、本形態では、エンドマーク3dが検知された後、インクリボン3が交換されて初期化動作が正常に完了するまで、不揮発性メモリ19に巻取完了情報を確実に保持し続けることが可能になる。
【0052】
なお、本形態では、最も終端側に配置される1画面領域3cの1つ手前の1画面領域3cを構成するオーバーコート領域3bにエンドマーク3dが形成されている。そのため、エンドマーク3dが検知された後の電源オフ時にインクリボン3が交換されないまま印刷システム1の電源がオフからオンに切り替わって、初期化動作が行われると、初期化動作時に、エンドマーク3dが形成されるオーバーコート領域3bとこのオーバーコート領域3bよりもインクリボン3の終端側に配置されるインク領域3aとの境界3eがエンドマーク検知機構17に検知されて(すなわち、1画面領域3cが基準位置に配置されたことが検知されて)、初期化動作が正常に完了してしまうおそれがある。また、初期化動作が正常に完了すると、カード2への印刷が可能な状態になるが、これ以降の印刷システム1の動作では、エンドマーク3dを検知することができないため、カード2の印刷時に、インクが塗布されていないインクリボン3の領域が使用されてしまい、カード2が無駄になるおそれがある。しかしながら、本形態では、エンドマーク3dが検知されると、巻取ロール10にインクリボン3を巻取限界まで巻き取る全巻取動作が実行されるため、このような問題は生じない。
【0053】
(他の実施の形態)
上述した形態は、本発明の好適な形態の一例ではあるが、これに限定されるものではなく本発明の要旨を変更しない範囲において種々変形実施が可能である。
【0054】
上述した形態では、最も終端側に配置される1画面領域3cの1つ手前の1画面領域3cを構成するオーバーコート領域3bにエンドマーク3dが形成されている。この他にも
たとえば、最も終端側に配置される1画面領域3cのオーバーコート領域3bにエンドマーク3dが形成されても良い。また、最も終端側に配置される1画面領域3cの2つ以上手前の1画面領域3cを構成するオーバーコート領域3bにエンドマーク3dが形成されても良い。
【0055】
上述した形態では、印刷システム1は、カード2の片面のみに印刷を行うためのシステムである。この他にもたとえば、印刷システム1は、カード2の両面に印刷を行うためのシステムであっても良い。この場合には、カード2への印刷中に、エンドマーク検知機構17での検知結果に基づいてエンドマーク3dが検知されると、印刷システム1は、図6に示すように、エンドマーク3dを検知したときの印刷動作であるマーク検知時印刷動作によってカード2の両面への印刷が終了するのか、それとも、マーク検知時印刷動作によってカード2の一方の面のみへの印刷が終了するのかを判断する(ステップS21)。具体的には、カード2への印刷中にエンドマーク3dが検知されると、上位制御部20は、
マーク検知時印刷動作によってカード2の両面への印刷が終了するのか、それとも、マーク検知時印刷動作によってカード2の一方の面のみへの印刷が終了するのかを判断する。
【0056】
ステップS21において、マーク検知時印刷動作によってカード2の両面への印刷が終了する場合には、印刷システム1は、上述の全巻取動作を実行するとともに(ステップS22)、全巻取動作が完了すると、全巻取動作が完了していることを示す巻取完了情報を不揮発性メモリ19に記憶する(ステップS23)。具体的には、ステップS23において、上位制御部20が全巻取動作を実行するための制御指令を制御部18へ出力し、制御部18が全巻取動作を実行するとともに、全巻取動作が完了すると、制御部18が巻取完了情報を不揮発性メモリ19に記憶する。
【0057】
一方、ステップS21において、マーク検知時印刷動作によってカード2の一方の面のみへの印刷が終了する場合には、印刷システム1は、エンドマーク3dよりもインクリボン3の終端側に配置される1画面領域3cを使用してサーマルヘッド15によってカード2の他方の面への印刷を行う最終印刷を実行する(ステップS24)。具体的には、ステップS24において、上位制御部20が最終印刷を実行するための制御指令を制御部18に出力し、制御部18が最終印刷を実行する。その後、ステップS22へ進んで、印刷システム1が全巻取動作を実行するとともに、全巻取動作が完了すると、ステップS23へ進んで、印刷システム1が巻取完了情報を不揮発性メモリ19に記憶する。この場合であっても、上述した形態と同様の効果を得ることができる。
【0058】
なお、マーク検知時印刷動作によってカード2の両面への印刷が終了する場合、エンドマーク3dが検知された後の電源オフ時にインクリボン3が交換されないまま印刷システム1の電源がオフからオンに切り替わって、初期化動作が行われると、上述した形態と同様に、初期化動作が正常に完了してしまうおそれがあり、そのため、カード2の印刷時に、インクが塗布されていないインクリボン3の領域が使用されて、カード2が無駄になるおそれがある。しかしながら、この変形例でも、マーク検知時印刷動作によってカード2の両面への印刷が終了する場合、エンドマーク3dが検知されると、巻取ロール10にインクリボン3を巻取限界まで巻き取る全巻取動作が実行されるため、このような問題は生じない。
【0059】
上述した形態では、インク領域3aに黒色のインク層が形成されているが、インク領域3aに黒色以外のインク層が形成されても良い。また、上述した形態では、インクリボン3は、単色(具体的には、黒色)の印刷のみが可能なものであるが、インクリボン3は、複数色の印刷が可能なものであっても良い。さらに、上述した形態では、インクリボン3は、オーバーコート領域3bを備えているが、インクリボン3は、オーバーコート領域3bをいなくても良い。この場合には、インク領域3aが、カード2の片面の印刷に要する1画面領域となる。
【符号の説明】
【0060】
1 印刷システム
2 カード
3 インクリボン
3c 1画面領域
3d エンドマーク
5 印刷装置
6 上位装置
9 供給ロール
10 巻取ロール
15 サーマルヘッド
16 リボン巻取機構
17 エンドマーク検知機構
18 制御部
19 不揮発性メモリ
20 上位制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6