(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
有底筒状の外筒と、この外筒の軸心部に起立する筒状のシリンダと、このシリンダに出入りするピストンロッドと、このピストンロッドの先端部に保持されて上記シリンダ内に軸方向に移動可能に挿入されるピストンと、上記シリンダの反ピストンロッド側に固定されるベース部材と、上記シリンダ内に形成されて上記ピストンで区画され作動液が充填されるロッド側室及びピストン側室と、上記外筒の底部と上記ベース部材との間に形成されて作動液が充填されるボトム室と、このボトム室と連通するとともに上記シリンダ外に形成されて作動液が貯留されるリザーバと、上記ピストン側室から上記ロッド側室へ向かう作動液の流れのみを許容するピストン通路と、上記ボトム室から上記ピストン側室へ向かう作動液の流れのみを許容する吸込み通路と、上記ロッド側室と上記リザーバとを連通する排出通路と、この排出通路の途中に設けられる減衰弁とを備える緩衝器において、
上記外筒に外付けされて内部に上記リザーバが形成されるタンクと、このタンクと上記外筒とを接続する接続部材と、上記外筒と上記シリンダとの間に形成される筒状隙間と、上記外筒に形成されるとともに上記筒状隙間に開口し上記減衰弁が取り付けられる取付孔と、一端が上記ボトム室に連なるとともに他端に上記接続部材の一端が接続される第一ボトム通路と、一端が上記取付孔に連なるとともに他端が上記第一ボトム通路の途中に連なる第二ボトム通路とを備えており、
上記排出通路は、上記筒状隙間と、上記取付孔と、上記第二ボトム通路と、上記第一ボトム通路と、上記接続部材を通って上記リザーバに連通することを特徴とする緩衝器。
上記減衰弁を収容するバルブケースを備えるとともに、上記取付孔は、上記バルブケースが螺合する螺子孔を備えており、上記減衰弁は、上記バルブケースを介して上記外筒における上記取付孔に取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載の緩衝器。
上記取付孔は、上記外筒の筒部の軸心線に対して垂直方向に形成されており、上記外筒の外側に開口する挿入穴と、この挿入穴よりも小径に形成されて上記挿入穴の中心から上記筒状隙間に向けて上記外筒を貫通する上記螺子孔とを備えており、
上記バルブケースは、筒状に形成されて上記外筒に連結されるケース部材と、有底筒状に形成されて上記ケース部材の反外筒側開口を塞ぐキャップ部材とを備えており、
上記ケース部材は、上記螺子孔に螺合される螺子部と、この螺子部よりも大径に形成されるとともに上記挿入穴よりも小径に形成されて外周に環状通路を形成する中径部と、この中径部の反螺子部側に連なり上記取付孔の開口を塞ぐ大径部と、上記ケース部材の内側と上記環状通路とを連通する切欠きとを備えており、
上記第二ボトム通路の上記一端は、上記環状通路に連通していることを特徴とする請求項2に記載の緩衝器。
上記タンク内には、隔壁部材が設けられており、この隔壁部材は、上記リザーバを作動液が充填される液溜室と気体が圧縮されながら封入される気室とに区画するとともに、上記リザーバにおける上記液溜室と上記気室の容積比率を変更可能に設定されていることを特徴とする請求項1から請求項4の何れか一項に記載の緩衝器。
【背景技術】
【0002】
緩衝器の中には、ユニフロー型緩衝器と称されるものがある。例えば、特許文献1に開示のユニフロー型緩衝器は、
図5に示すように、有底筒状の外筒100と、この外筒100の軸心部に起立する筒状の中間筒101と、この中間筒101の軸心部に起立するシリンダ2とを備えて三重管構造となっている。さらに、上記緩衝器は、シリンダ2に出入りするピストンロッド3と、このピストンロッド3の先端部に保持されてシリンダ2内に軸方向に移動可能に挿入されるピストン4と、シリンダ2の反ピストンロッド側に固定されるベース部材5とを備えている。そして、シリンダ2内には、上記ピストン4で区画されるロッド側室20とピストン側室21が形成され、外筒100の底部とベース部材5との間には、ボトム室22が形成され、中間筒101と外筒100との間の筒状隙間には、リザーバRが形成されており、ロッド側室20、ピストン側室21及びボトム室23には、作動液が充填され、リザーバRには、作動液と気体が封入されている。
【0003】
ピストン4には、ピストン側室21からロッド側室20へ向かう作動液の流れのみを許容するピストン通路4aが形成されるとともに、ベース部材5には、ボトム室22からピストン側室21へ向かう作動液の流れのみを許容する吸込み通路5aが形成されている。また、ロッド側室20は、シリンダ2に形成される通孔2aと、シリンダ2と中間筒101との間に形成される筒状隙間200とを備えて構成される排出通路L2を介してリザーバRに連通しており、このリザーバRは、ベース部材5に形成される切欠き5bを介してボトム室22に連通している。また、排出通路L2の途中には、この排出通路L2を通過する作動液の流れに抵抗を与える減衰弁V2が設けられている。
【0004】
そして、緩衝器の伸長時には、縮小されるロッド側室20の作動液が排出通路L2を通ってリザーバRに移動するとともに、シリンダ2から退出したピストンロッド3体積分の作動液が、リザーバRからボトム室22に移動し、ボトム室22から吸込み通路5aを通って拡大するピストン側室21に移動する。反対に、緩衝器の圧縮時には、縮小されるピストン側室21の作動液がピストン通路4aを通って拡大するロッド側室20に移動するとともに、シリンダ2に進入したピストンロッド3体積分の作動液が排出通路L2を通ってリザーバRに排出される。
【0005】
上記構成によれば、緩衝器の伸長時と圧縮時の両方で、作動液が排出通路L2を通ってリザーバRに移動するので、緩衝器は、伸圧両側で減衰弁V2の抵抗に起因する減衰力を発生できる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に本発明の一実施の形態に係る緩衝器について、図面を参照しながら説明する。いくつかの図面を通して付された同じ符号は、同じ部品か対応する部品を示す。
【0013】
図1に示すように、本実施の形態に係る緩衝器Dは、有底筒状の外筒1と、この外筒1の軸心部に起立する筒状のシリンダ2と、このシリンダ2に出入りするピストンロッド3と、このピストンロッド3の先端部に保持されて上記シリンダ2内に軸方向に移動可能に挿入されるピストン4と、上記シリンダ2の反ピストンロッド側に固定されるベース部材5と、上記シリンダ2内に形成されて上記ピストン4で区画され作動液が充填されるロッド側室20及びピストン側室21と、上記外筒1の底部1bと上記ベース部材5との間に形成されて作動液が充填されるボトム室22と、このボトム室22と連通するとともに上記シリンダ2外に形成されて作動液が貯留されるリザーバRと、上記ピストン側室21から上記ロッド側室20へ向かう作動液の流れのみを許容するピストン通路4aと、上記ボトム室22から上記ピストン側室21へ向かう作動液の流れのみを許容する吸込み通路5aと、上記ロッド側室20と上記リザーバRとを連通する排出通路L1と、この排出通路L1の途中に設けられる減衰弁V1とを備えている。
【0014】
さらに、緩衝器Dは、上記外筒1に外付けされて内部に上記リザーバRが形成されるタンク6と、このタンク6と上記外筒1とを接続する接続部材7と、上記外筒1と上記シリンダ2との間に形成される筒状隙間23と、上記外筒1に形成されるとともに上記筒状隙間23に開口し上記減衰弁V1が取り付けられる取付孔8と、一端が上記ボトム室22に連なるとともに他端に上記接続部材7の一端が接続される第一ボトム通路24(
図2)と、一端25aが上記取付孔8に連なるとともに他端25bが上記第一ボトム通路24の途中に連なる第二ボトム通路25(
図2)とを備えている。そして、上記排出通路L1は、上記筒状隙間23と、上記取付孔8と、上記第二ボトム通路25と、上記第一ボトム通路24と、上記接続部材7を通って上記リザーバRに連通する。
【0015】
以下、詳細に説明すると、本実施の形態に係る緩衝器Dは、二輪車や三輪車等の鞍乗型車両において後輪を懸架するリアクッションに利用されている。本実施の形態において、リアクッションは、緩衝器Dと、この緩衝器Dの外周に設けられる懸架ばねSと、この懸架ばねSの端部を支持する上下一対のばね受けSS1,SS2と、車高調整用のジャッキ機構Jとを備えている。そして、上記懸架ばねSはコイルばねからなり、緩衝器Dを伸長方向に附勢して車体を弾性支持し、路面凹凸による衝撃を吸収する。
【0016】
本実施の形態において、ジャッキ機構Jは、非圧縮性の作動流体が充填されるジャッキ室10と、このジャッキ室10の下側開口を塞ぐとともに上側のばね受けSS1を支える上下動可能なジャッキピストン11と、ジャッキ室10とホースHで接続される図示しないポンプと、ばね受けSS1を懸架ばね側に附勢する補助ばね12とを備えており、ポンプでジャッキ室10に作動流体を給排し、ジャッキピストン11でばね受けSS1を昇降させて車高を調節する。また、本実施の形態においては、ばね受けSS1を補助ばね12でも支えているので、ジャッキ室10に作動流体を供給しやすい。なお、リアクッションの構成は、適宜変更することが可能であり、ジャッキ機構Jを廃するとしてもよい。また、本発明に係る緩衝器Dがリアクッション以外に利用されるとしてもよい。
【0017】
つづいて、緩衝器Dは、有底筒状に形成されるとともに底部1bを上側に向けて配置される外筒1と、この外筒1の軸心部に起立する筒状のシリンダ2と、このシリンダ2の上端と外筒の底部1bとの間に挟まれて固定されるベース部材5と、外筒1の下側開口端部に螺合する環状のキャップ13と、このキャップ13で抜け止めされてシリンダ2の下側開口部に固定される環状のロッドガイド9と、このロッドガイド9で軸支されながらシリンダ2に出入りするピストンロッド3と、このピストンロッド3の上端部(先端部)に保持されてシリンダ2内に軸方向に移動可能に挿入されるピストン4と、ロッドガイド9と外筒1との間を塞ぐ環状のシールリング90と、ロッドガイド9とピストンロッド3との間を塞ぐ環状のダストシール91及びオイルシール92と、外筒1の外側に配置され車体に固定されるタンク6と、このタンク6と外筒1とを接続する接続部材7とを備えている。
【0018】
そして、外筒1の上端とピストンロッド3の下端には、取付部材B1,B2がそれぞれ固定されており、上側の取付部材B1が車体の骨格となる車体フレームに連結され、下側の取付部材B2が後輪を支持するスイングアームに連結されるので、路面凹凸による衝撃が後輪に入力されるとピストンロッド3がシリンダ2に出入りして緩衝器Dが伸縮する。なお、本実施の形態において、シリンダ2が車体側に連結されるとともに、ピストンロッド3が車輪側に連結されて緩衝器Dが倒立型に設定されているが、シリンダ2が車輪側に連結されるとともに、ピストンロッド3が車体側に連結されて緩衝器Dが正立型に設定されるとしてもよい。
【0019】
外筒1の内側には、シリンダ2内に形成されてピストン4で区画されるロッド側室20及びピストン側室21と、外筒1の底部1bに形成される溝1cとベース部材5との間に形成されるボトム室22と、シリンダ2の外周に形成される筒状隙間23が形成されており、ロッド側室20、ピストン側室21、ボトム室22及び筒状隙間23に作動液が充填されている。
【0020】
また、外筒1に外付けされるタンク6の内部には、リザーバRが形成されており、このリザーバRは、タンク6内に設けられる隔壁部材60で液溜室61と気室62に区画されている、タンク6が外筒1に外付けされた状態とは、外筒1の内部にタンク6が収容されたり、タンク6の内部に外筒1が収容されたりしておらず、外筒1の外部にタンク6が配置され、且つ、タンク6の外部に外筒1が配置された状態をいうものである。なお。本実施の形態において、タンク6は、ホースや管路など、内部に図示しない通路が形成される接続部材7で外筒1と接続されており、当該接続部材7の図示しない通路を介して液溜室61とボトム室22が連通している。しかし、タンク6が外筒1に外付けされていれば、外筒1とタンク6が一体形成されていてもよい。この場合、タンク6と外筒1の接合部分が接続部材に相当し、この接合部分に液溜室61を後述の第一ボトム通路24(
図2)と連通する通路を形成すればよい。
【0021】
本実施の形態において、隔壁部材60は、弾性変形可能なブラダからなり、液溜室61と気室62とを区画しながらリザーバRにおける液溜室61と気室62の容積比率を変更できる。液溜室61には作動液が充填されるとともに、気室62には気体が圧縮されながら封入されている。なお、本実施の形態において、作動液は作動油からなるが、この限りではなく、作動油以外にも、減衰力を発揮可能な液体であれば作動液として利用することができる。また、気体は、空気からなるが、窒素等の不活性ガスからなるとしてもよい。また、隔壁部材60は、液溜室61と気室62とを区画しながらリザーバRにおける液溜室61と気室62の容積比率を変更できればブラダ以外であってもよく、例えば、フリーピストンやベローズであってもよい。
【0022】
ロッド側室20とピストン側室21は、ピストン4に形成されるピストン通路4aを介して連通している。ピストン通路4aには、逆止弁40が設けられているので、ピストン通路4aをピストン側室21からロッド側室20に向かう作動液の流れのみが許容され、反対方向の流れが阻止される。
【0023】
ピストン側室21とボトム室22は、ベース部材5に形成される吸込み通路5aを介して連通している。吸込み通路5aには、逆止弁50が設けられているので、吸込み通路5aをボトム室22からピストン側室21に向かう作動液の流れのみが許容され、反対方向の流れが阻止される。また、
図2に示すように、上記ボトム室22には、外筒1の底部1bに形成される第一ボトム通路24の一端が連なっている。この第一ボトム通路24の他端には、雌螺子加工がなされており、接続部材7の接続口7aが螺合できるようになっている。このため、ボトム室22とリザーバRは、第一ボトム通路24と接続部材7を介して連通している。
【0024】
もどって、
図1に示すように、ロッド側室20は、シリンダ2の下部に形成される通孔2aを介して筒状隙間23と連通する。また、この筒状隙間23には、外筒1の筒部1aと底部1bの境界部分に径方向に沿って形成される取付部8が開口している。この取付部8には、
図2に示すように、外筒1の底部1bに形成される第二ボトム通路25の一端25aが連なっており、この第二ボトム通路25の他端25bは、第一ボトム通路24の途中に連なっている。つまり、本実施の形態において、シリンダ2の通孔2aと、筒状隙間23と、取付孔8と、第二ボトム通路25と、第一ボトム通路24と、接続部材7内に形成される図示しない通路とを備えて、ロッド側室20とリザーバRとを連通する排出通路L1が構成されている。また、取付孔8には、排出通路L1を通過する作動液の流れに抵抗を与える減衰弁V1が取り付けられている。
【0025】
取付孔8と第一ボトム通路24は、それぞれ、外筒1の上部に形成されて外側に突出する肉厚部1dに、外筒1の筒部1aの軸心線に対して略垂直に形成されるとともに、
図3に示すように、取付孔8の中心を通る中心線x1と、第一ボトム通路24の中心を通る中心線x2が交わる角度θが90度以内になるように配置されている。このため、取付孔8と第一ボトム通孔24とをつなぐ第二ボトム通路25を短くするとともに、肉厚部1dの形状を簡易にし、肉厚部1dを小さくできる。さらに、減衰弁V1を取り付ける取付孔8と、接続部材7が接続される第一ボトム通孔24の他端(反ボトム室22側端)が接近するので、減衰弁V1と接続部材7を外筒1に取り付ける際の作業効率が良い。なお、取付孔8の中心線x1と第一ボトム通孔24の中心線x2のなす角度θは、上記の限りではなく、適宜変更することができる。また、本実施の形態において、
図1に示すように、ジャッキ機構JのホースHの接続口が、取付孔8の直上部になるように配置されている。このため、本実施の形態においては、減衰弁V1と、接続部材7と、ジャッキ機構JのホースHの取り付け位置が接近しており、これらの取り付け作業効率を良好にすることができる。
【0026】
つづいて、
図4に示すように、取付孔8は、外筒1の外側に面する大径な挿入穴8aと、この挿入穴8aの中心から筒状隙間12に向けて外筒1を貫通する小径な螺子孔8bとからなり、この螺子孔8bが形成される外筒1の内周面には、筒状隙間23側に雌螺子加工がなされている。そして、取付孔8に取り付けられる減衰弁V1は、本実施の形態において、バルブケースVCに収容されており、このバルブケースVCとともにバルブアッシーを構成し、一体化されている。バルブケースVCは、外筒1に連結される筒状のケース部材14と、このケース部材14の外側開口を塞ぐ有底筒状のキャップ部材15とで構成されている。
【0027】
ケース部材14は、上記したように、筒状に形成されており、シリンダ2側から順に連なり同軸上に配置される螺子部14aと、中径部14bと、大径部14cと、フランジ部14dと、スリーブ14eとを備えて構成されている。螺子部14aの先端部の外周面には、雄螺子加工がなされており、取付孔8における螺子孔8bに螺合するようになっている。中径部14bは、螺子部14a及び螺子孔8bよりも外径が大きく、挿入穴8aよりも外径が小さく形成されており、中径部14bの外周に作動液が移動可能な環状通路80を形成している。螺子部14aの基端部には、環状のシールリング16が取り付けられているので、作動液が減衰弁V1を介さずに環状通路80と筒状隙間23との間を移動できないようになっている。大径部14cは、中径部14bよりも外径が大きく形成されて挿入穴8aに挿入されている。そして、この大径部14cの外周に環状のシールリング17が取り付けられているので、大径部14cで取付孔8の外気側開口を塞ぎ、取付孔8の作動液が外側に漏れることを防いでいる。また、大径部14cの
図4中右端部には、周方向に沿って複数の切欠き14fが設けられており、ケース部材14の内側と環状通路80とを連通するようになっている。フランジ部14dは、大径部14c及び挿入穴8aよりも外径が大きく形成されて外筒1における肉厚部1dの
図4中左側面に当接している。スリーブ14eの外周面には、雄螺子加工がなされている。
【0028】
また、ケース部材14には、螺子部14aから中径部14bの軸方向の略中央にかけて形成されて筒状隙間12に開口する流入孔14gと、この流入孔14gに連なるとともに流入孔14gよりも大径であり中径部14bから大径部14cにかけて形成される保持孔14hと、この保持孔14hに連なるとともに保持孔14hよりも大径であり大径部14cからスリーブ14eにかけて形成されて外側に開口する収容孔14iが設けられている。そして、この収容孔14iが上記切欠き14fを介して、環状通路80と連通するようになっており、この環状通路80に、第二ボトム通路25の他端25b(
図2)が連なっている。
【0029】
上記ケース部材14とともにバルブケースVCを構成するキャップ部材15は、先端部の内周面に雌螺子加工がなされた筒部15aと、この筒部15aの
図4中左側開口を塞ぐ底部15bとを備えており、底部15bは、筒部15aの
図4中左端に加締め固定されている。
【0030】
上記バルブケースVCに収容される減衰弁V1は、如何なる構成を備えていてもよいので、詳細な説明を省略するが、先端部Vaを保持孔14hに嵌合するとともに、流入孔14gからケース部材14の内側に流入した作動液が、減衰弁V1を通過して収容孔14i内に流出し、切欠き14f、環状通路80、第二ボトム通路25の順に通ってリザーバRに排出されるように設定されるとともに、この作動液の流れに抵抗を与えることができるようになっている。本実施の形態において、減衰弁V1がソレノイドVsを備えているので、ソレノイドVsへの電流供給量を変更して上記抵抗を調節することができる。しかし、減衰弁V1による抵抗を、アジャスタ等を用いて手動で調節できるようにしてもよく、減衰弁V1の構成は適宜変更することが可能である。
【0031】
以下、本実施の形態に係る緩衝器Dの作動について説明する。
【0032】
ピストンロッド3がシリンダ2から退出する緩衝器Dの伸長時には、縮小されるロッド側室20の作動液が排出通路L1を通過してリザーバRに移動するとともに、シリンダ2から退出したピストンロッド3体積分の作動液が、接続部材7、第一ボトム通路24、ボトム室22及び吸込み通路5aを通過して拡大するピストン側室21に移動するので、リザーバRでは、液溜室61が縮小して気室62が拡大する。
【0033】
反対に、ピストンロッド3がシリンダ2に進入する緩衝器Dの圧縮時には、縮小されるピストン側室21の作動液がピストン通路4aを通過して拡大するロッド側室20に移動するとともに、シリンダ2に進入したピストンロッド3体積分の作動液が排出通路L1を通過してリザーバRに移動するので、リザーバRでは、液溜室61が拡大して気室62が縮小する。
【0034】
つまり、緩衝器Dは、伸長時、圧縮時の何れにおいても、作動液がピストン側室21、ロッド側室20、リザーバRを一方通行で循環するユニフロー型となっている。また、伸長時、圧縮時の何れにおいても、シリンダ2内の作動液が排出通路L1を、シリンダ2の通孔2a、筒状隙間23、流入孔14g、収容孔14i、切欠き14f、環状通路80、第二ボトム通路25、第一ボトム通路24、接続部材7の順に通ってリザーバRに排出されるようになっているので、緩衝器Dは、排出通路L1の途中に設けられる減衰弁V1の抵抗に起因する減衰力を発生する。また、本実施の形態において、ソレノイドVsで減衰弁V1の抵抗を変更し、減衰力を調節することができる。
【0035】
なお、ピストンロッド3の断面積をピストン4の断面積の二分の一にしておくことで、同振幅であればシリンダ2内から排出される作動液の量を伸圧両側で等しくできるため、減衰弁V1による抵抗を同じにしておくと、伸長時と圧縮時の減衰力を同じに設定することもできる。
【0036】
以下、本実施の形態に係る緩衝器Dの作用効果について説明する。
【0037】
本実施の形態において、タンク6内には、隔壁部材60が設けられており、この隔壁部材60は、リザーバRを作動液が充填される液溜室61と気体が圧縮されながら封入される気室62とに区画するとともに、上記リザーバRにおける上記液溜室61と上記気室62の容積比率を変更可能に設定されている。
【0038】
上記構成によれば、気室62内に封入される気体で作動液を加圧できるので、減衰力発生応答性を向上させることができる。本実施の形態において、隔壁部材60は、ブラダであるが、適宜変更することが可能であり、例えば、フリーピストンやベローズであってもよい。
【0039】
また、本実施の形態において、取付孔8の中心線x1と、第一ボトム通路24の中心線x2の交わる角度θが90度以内に設定されている。
【0040】
外筒1に通路や取付孔等、中空部を形成する場合、強度確保のため中空部に沿って肉厚部1dを設ける必要がある。このため、取付孔8や、第一ボトム通路24や、第二ボトム通路25が離間したり、長くなったりすると、肉厚部1dの形状が複雑になったり、肉厚部1dを設ける範囲が広がって外筒1を形成するための材料が増えたりするので、コスト高となる。しかし、上記構成によれば、取付孔8と第一ボトム通路24を接近させるとともに、第二ボトム通路25を短くできるので、肉厚部1dの形状を簡易にするとともに、肉厚部1dを小さくして外筒1を形成するための材料を削減し、コストを抑制することが可能となる。
【0041】
さらに、上記構成によれば、減衰弁V1の取り付け位置と、接続部材7の取り付け位置が接近するので、減衰弁V1や接続部材7を外筒1に取り付ける際の作業効率を一層向上させることが可能となる。
【0042】
また、本実施の形態において、取付孔8は、外筒1の筒部1aの軸心線に対して垂直方向に形成されており、外筒1の外側に開口する挿入穴8aと、この挿入穴8aよりも小径に形成されて挿入穴8aの中心から筒状隙間23に向けて外筒1を貫通する螺子孔8bとを備えている。また、バルブケースVCは、筒状に形成されて外筒1に連結されるケース部材14と、有底筒状に形成されてケース部材14の反外筒側開口を塞ぐキャップ部材15とを備えており、ケース部材14は、螺子孔8bに螺合される螺子部14aと、この螺子部14aよりも大径に形成されるとともに挿入穴8aよりも小径に形成されて外周に環状通路80を形成する中径部14bと、この中径部14bの反螺子部側に連なり取付孔8の開口を塞ぐ大径部14cと、ケース部材14の内側と環状通路80とを連通する切欠き14fとを備えている。そして、第二ボトム通路25の一端25aが上記環状通路80に連通している。
【0043】
上記構成によれば、筒状隙間23の作動液は、ケース部材14の螺子部14aからバルブケースVC内に流入し、減衰弁V1を通って切欠き14fからバルブケースVCの外側の環状通路80に流出し、第二ボトム通路25からリザーバRに移動できる。また、バルブケースVCを利用して取付孔8に環状通路80を形成し、この環状通路80に第二ボトム通路25を連ねているので、第二ボトム通路25と取付孔8との接続位置を比較的自由に選択することが可能となり、第二ボトム通路25の設計を容易にすることができる。
【0044】
また、本実施の形態において、緩衝器Dは、減衰弁V1を収容するバルブケースVCを備えるとともに、取付孔8は、バルブケースVCが螺合する螺子孔8aを備えている。そして、減衰弁V1は、バルブケースVCを介して外筒1における取付孔8に取り付けられている。
【0045】
上記構成によれば、タップを利用して外筒1に螺子孔8bを開け、この螺子孔8bに減衰弁V1を収容するバルブケースVCを螺合しているので、減衰弁V1の取り付け作業を極めて簡易にすることができる。しかし、減衰弁V1の取り付け方法は適宜変更することが可能である。例えば、専用工具を用いて外筒1をチャックし、旋盤で外筒1の肉厚部1dの外周面に雄螺子加工を施して、肉厚部1dにキャップ部材15を直接螺合すこともできる。しかし、この場合、外筒1を鋳造等で形成するなど、外筒1の寸法公差が大きい場合には、専用工具を用いで外筒1をチャックすることが困難であり、外筒1の肉厚部1dには、雄螺子加工を施すことが難しい。これに対して、タップで螺子孔8bを形成する場合、外筒1の寸法公差に関わらず加工が容易である。したがって、上記構成によれば、減衰弁V1の取り付けが極めて容易であるとともに、外筒1の製造方法が限定されることがない。
【0046】
また、本実施の形態において、緩衝器Dは、ユニフロー型緩衝器であるとともに、外筒1に外付けされて内部にリザーバRが形成されるタンク6と、このタンク6と外筒1とを接続する接続部材7と、外筒1とシリンダ2との間に形成される筒状隙間23と、外筒1に形成されるとともに筒状隙間23に開口し減衰弁V1が取り付けられる取付孔8と、一端がボトム室22に連なるとともに他端に接続部材7の一端が接続される第一ボトム通路24と、一端25aが取付孔8に連なるとともに他端25bが第一ボトム通路24の途中に連なる第二ボトム通路25とを備えている。そして、排出通路L1は、上記筒状隙間23と、上記取付孔8と、上記第二ボトム通路25と、上記第一ボトム通路24と、上記接続部材7を通ってリザーバRに連通する。
【0047】
上記構成によれば、緩衝器Dがユニフロー型に設定される場合であっても、内部にリザーバRが形成されるタンク6を外筒1に外付けして緩衝器Dを二重管構造にできるので、緩衝器Dの構成を簡易にすることができる。
【0048】
さらに、上記構成によれば、ユニフロー型の緩衝器Dにおいて、タンク6を外筒1に外付けしたとしても、筒状隙間23をリザーバRに連通する通路(本実施の形態においては、第二ボトム通路25)が、ボトム室22をリザーバRに連通する通路(本実施の形態においては、第一ボトム通路24)の途中に接続されているので、外筒1に形成される通路を簡素化することが可能となる。
【0049】
以上、本発明の好ましい実施の形態を詳細に説明したが、特許請求の範囲から逸脱することなく改造、変形及び変更を行うことができることは理解すべきである。