特許第6198602号(P6198602)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6198602
(24)【登録日】2017年9月1日
(45)【発行日】2017年9月20日
(54)【発明の名称】コンバインの前処理部
(51)【国際特許分類】
   A01D 61/00 20060101AFI20170911BHJP
   A01D 67/00 20060101ALI20170911BHJP
【FI】
   A01D61/00 302Z
   A01D67/00 D
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-271038(P2013-271038)
(22)【出願日】2013年12月27日
(65)【公開番号】特開2015-123033(P2015-123033A)
(43)【公開日】2015年7月6日
【審査請求日】2016年8月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001878
【氏名又は名称】三菱マヒンドラ農機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】門脇 剛史
(72)【発明者】
【氏名】森広 忠光
【審査官】 佐々木 創太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−117557(JP,A)
【文献】 特開平11−318170(JP,A)
【文献】 特開昭61−047113(JP,A)
【文献】 特開平02−211807(JP,A)
【文献】 実開昭58−158649(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01D 61/00
A01D 67/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行機体(2)の支持部から下向き前方に延設し上下移動自在に支持される前処理フレーム(13)の前部に、引起装置(22)及び株元搬送装置(23),(23a)並びに刈刃等からなる刈取部(7)を左右移動機構(10)を介して左右移動自在に設けると共に、刈取部(7)によって刈取られた穀稈を後方の脱穀部(6)のフィードチェーン(6a)に上下回動により扱深調節しながら搬送する扱深搬送体(8)を、前処理フレーム(13)の後部に軸支される扱深駆動軸(19)を回動支点に始端部側を側方回動自在に設け、且つ刈取部(7)の左右方向の移動に連動して扱深搬送体(8)を左右方向に回動させるように連結する連結機構(43)と、上記扱深搬送体(8)の搬送体フレーム(35)側から下向きに突出させた接当部材(45)と、それに接当する前処理フレーム(13)側に設けられるストッパ部(46)とで構成され、扱深搬送体(8)の下降下限位置を設定する扱深搬送体ストッパ機構(1)を備えるコンバインの前処理部(9)において、前記前処理フレーム(13)の上部にストッパ部(46)を突設し、該ストッパ部(46)の上部に接当部材(45)と接当する真直状の接当部であるストッパ(46b)を形成し、側面視において該ストッパ(46b)の傾斜を前処理フレーム(13)側の前記ストッパ部(46)が突設される取付面の傾斜より緩傾斜としたことを特徴とするコンバインの前処理部。
【請求項2】
前記ストッパ(46b)と接当部材(45)とを小径の丸棒形状となし、接当部材(45)をストッパ(46b)に点接触によってスライドさせながら扱深搬送体(8)の左右移動を行なわせることを特徴とする請求項1記載のコンバインの前処理部。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバインの前処理部に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、前処理部の前処理フレームの前部に刈取部を左右移動機構を介して左右移動自在に設け、該刈取部を左位置の通常刈り作業姿勢と右位置の中割り作業姿勢とに択一的に切換えることにより、圃場の形状並び植立穀稈の刈取り態様に適応した刈取作業を適正且つ能率よく行なうようにしたコンバインは既に公知である(例えば、特許文献1)。
上記コンバインの前処理部は、刈取部によって刈取られた穀稈を後方の脱穀部のフィードチェーンに上下回動により扱深調節しながら搬送する扱深搬送体を、前処理フレームの後部に軸支される扱深駆動軸を回動支点とし始端部側を上下及び左右移動(回動)自在に設けると共に、扱深搬送体を刈取部の左右移動に連動して連結機構を介し左右移動させるようにしている。そして、扱深搬送体の搬送体フレームから下向きに突出させた接当部材を、前処理フレーム(伝動ケース)側に接当させて扱深搬送体の下降下限位置(最深扱ぎ位置)を設定する扱深搬送体ストッパ機構を備えた構造にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−117557号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1で示されるコンバインは、扱深搬送体ストッパ機構の接当部材を前処理フレーム側に接当させた下限位置保持状態で刈取部の左右移動を行うとき、扱深搬送体の左右移動を始端側の大きな高さ変動を防止することができる利点がある。然しながらこの前処理部では、扱深搬送体から下向きに長く且つ屈曲させて延長される接当部材を、下向き急傾斜の前処理フレームに沿って固設される伝動ケースのパイプ斜面に直接的に接当させた状態で上下方向に向けてスライド(摺動)させるので、刈取部の右方向移動に基づく扱深搬送体の右回動移動時には、接当部材を扱深搬送体の重量に抗して急傾斜の前処理フレームに沿って持上げ移動させる際のスライド (摺動)抵抗が大きく、また接当部材は径大な伝動ケースのパイプ表面に交差して線的に接触(以下単に線状接触と言う)するので、広い接触面(摺動面)となって扱深搬送体を右方向に移動する際の移動抵抗も大きいため、刈取部を右移動する操作荷重を過大にする等の欠点がある。さらに、扱深搬送体の直下にある前処理フレーム側では、上記径大なパイプ表面に塵埃の付着固化や藁屑の堆積を伴うことから、これらが接当部材の上方スライド移動時に大きな摩擦抵抗となって、刈取部及び扱深搬送体を右移動させる操作荷重を大きくする。また接当部材は、扱深搬送体側から急傾斜の前処理フレームの伝動ケースに至る長さ及びその先端側を側方に向け屈曲させた接当代(スライド代)を十分に確保して形成しなければならないため、接当部材の撓み変形及び撓みに伴う振動等を防止するための剛体構造化を図る必要があり、部品の長大化や形状の複雑化を伴う等の課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために本発明は、第1に、走行機体2の支持部から下向き前方に延設し上下移動自在に支持される前処理フレーム13の前部に、引起装置22及び株元搬送装置23,23a並びに刈刃等からなる刈取部7を左右移動機構10を介して左右移動自在に設けると共に、刈取部7によって刈取られた穀稈を後方の脱穀部6のフィードチェーン6aに上下回動により扱深調節しながら搬送する扱深搬送体8を、前処理フレーム13の後部に軸支される扱深駆動軸19を回動支点に始端部側を上下及び側方回動自在に設け、且つ刈取部7の左右方向の移動に連動して扱深搬送体8を左右方向に回動させるように連結する連結機構43と、上記扱深搬送体8の搬送体フレーム35から下向きに突出させた接当部材45と、それに接当する前処理フレーム13側に設けられるストッパ部46とで構成され、扱深搬送体8の下降下限位置を設定する扱深搬送体ストッパ機構1を備えるコンバインの前処理部9において、
前記前処理フレーム13の上部にストッパ部46を突設し、該ストッパ部46の上部に接当部材45と接当する真直状の接当部であるストッパ46bを形成し、側面視において該ストッパ46bの傾斜を前処理フレーム13側の前記ストッパ部46が突設される取付面の傾斜より緩傾斜としたことを特徴としている。
第2に、前記ストッパ46bと接当部材45とを小径の丸棒形状となし、接当部材45をストッパ46bに点接触によってスライドさせながら扱深搬送体8の左右移動を行なわせることを特徴としている。
【発明の効果】
【0006】
請求項1の発明によれば、前処理フレームの前部に左右移動機構を介して刈取部を左右移動自在に設け、前処理フレームの後部に軸支される扱深駆動軸を回動支点に始端部側を側方回動自在に設け、且つ刈取部の左右方向の移動に連動して扱深搬送体を左右方向に回動させるように連結する連結機構と、上記扱深搬送体の搬送体フレーム側から下向きに突出させた接当部材と、それに接当する前処理フレーム側に設けられるストッパ部とで構成され、扱深搬送体の下降下限位置を設定する扱深搬送体ストッパ機構を備えるコンバインの前処理部において、前記前処理フレームの上部にストッパ部を突設し、該ストッパ部の上部に接当部材と接当する真直状の接当部であるストッパを形成し、側面視において該ストッパの傾斜を前処理フレーム側の前記ストッパ部が突設される取付面の傾斜より緩傾斜としたことにより、ストッパを扱深搬送体側に近接させながら緩傾斜にするため、刈取部の左右移動時に扱深搬送体を始端部側の高さを大きく変えることなく切換え移動させると共に、刈取部の右移動時にストッパに対する接当部材のスライド移動をスムーズにするので、刈取部の右移動を操作荷重軽減して容易に行うことができる。
請求項2の発明によれば、ストッパと接当部材とを小径の丸棒形状となし、接当部材をストッパに点接触によってスライドさせながら扱深搬送体の左右移動を行なわせることにより、接当部材を大きな摩擦面で接触させることなく、緩傾斜で且つ塵埃が付着し難いストッパ上で接当部材を、摩擦抵抗や塵埃等による移動抵抗の少ない連続的な点接触によってスライドさせるので、扱深搬送体の右回動移動をスムーズにし刈取部の右方移動時の操作荷重を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】コンバインの前方斜視図である。
図2】刈取部を右移動させた前処理部の平面図である。
図3】刈取部を左移動させた前処理部の平面図である。
図4】前処理部の構成を示す側面図である。
図5】前処理フレームと左右移動機構の構成を示す平面図である。
図6】扱深搬送体と扱深搬送体ストッパ機構の構成を示す平面図である。
図7】扱深搬送体ストッパ機構の構成を示す側面図である。
図8】扱深搬送体ストッパ機構の構成を示す要部の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図示する符号Aは本発明に係る扱深搬送体ストッパ機構1を備えたコンバインである。このコンバインAは、左右一対のクローラ式の走行部2aを備える走行機体2に、右側に前部から操縦部3と原動機部を介してグレンタンク5とを配設し、左側に脱穀部6を配設している。そして、脱穀部6の前方位置に刈取部7と扱深搬送体8等からなる前処理部9を昇降自在に支持し、作物の刈高さ調節並びに扱深調節を自在とするように設置し、且つ前処理部9の前部で刈取部7を後述する左右移動機構10を介して左右移動自在に設けている。これによりコンバインAは、圃場に植立する作物を前処理部9の刈取部7で刈取り、刈取った穀稈を株元挾持搬送体8aと穂先係止搬送体8b等からなる扱深搬送体8を介して脱穀部6のフィードチェン6aに継送搬送し、脱穀部6によって脱穀選別された穀粒をグレンタンク5に供給貯留して一連のコンバイン作業を行なう。
【0009】
以下前処理部9の詳細な構造について図2図8を参照し説明する。先ず、前処理部9に動力を伝動する前処理駆動ケース11は、走行機体2の前部に立設される支持フレーム12に回動可能に軸支しており、ケース中途部に前処理フレーム13を前方下方に向けて延設し、該前処理フレーム13の中途部を走行機体2側の昇降シリンダ14の伸縮作動によって前処理部9を昇降自在とするようにしている。上記前処理駆動ケース11内には、図5に示すように前処理部駆動軸15を回転自在に内装しトランスミッション(不図示)から入力プーリ16を介して動力を入力し、軸中間部及び軸端部からベベルギヤ伝動機構17を介して、後述する軸ケース29に軸支される刈取駆動軸18によって前処理部9を駆動すると共に、扱深駆動軸19によって扱深搬送体8を駆動するようにしている。
【0010】
即ち、前処理部駆動軸15は、刈取駆動軸18を介して刈取部7の後方下部に左右方向を向いて配設される刈取動力分配ケース20に内装される刈取動力分配軸(不図示)に動力を伝動する。この刈取動力分配軸は、刈取動力分配ケース20の左右両端に立設される筒状の引起ブラケット21内を経由して引起装置22に動力を伝動するとともに、刈取動力分配ケース20の中間部から上下段に配置される株元搬送装置23と株元搬送装置(スターホイル)23aに動力を伝動するようにしている。尚、刈取動力分配ケース20は前処理部9のメインフレームを兼用しており、刈取動力分配ケース20から前方に延出した複数のデバイダ支持フレーム25の先端にデバイダ25aを設け、中途部に引起装置22の下部を取付けている。
【0011】
扱深駆動軸19は従来のもの同様な扱深調節機構によって、前処理駆動ケース11に対し該扱深駆動軸19を軸支する扱深ケース部11aを、前処理部駆動軸15を中心に上下方向に回動自在となるようにしている。また株元挾持搬送体8aと穂先係止搬送体8bとは、扱深ケース部11a並びに後述する搬送体フレーム35を介して前処理部駆動軸15を中心に一体的に上下動作することができる。また扱深駆動軸19は扱深ケース部11aを介して、前処理駆動ケース11に対し正面及び平面視で所定の内向き角を有して軸支しており、軸の下部と上部に取付けられる駆動スプロケット26,26aから、扱深搬送体8の株元挾持搬送体8aと穂先係止搬送体8bとを駆動するようにしている。
【0012】
この扱深搬送体8は、扱深ケース部11aに突設したアーム部11bを、手動扱深調節手段並びに扱深自動制御手段等からなる扱深調節機構と連繋し、図4に示すような電動シリンダ27の伸縮作動によって扱深調節動作をする。これにより扱深調節機構によって上下移動する扱深搬送体8は、穀桿の長さが短い場合は深扱きとなるように扱深搬送体8を下降させ、穀桿の長さが長い場合は浅扱きとなるように扱深搬送体8を上昇させて、穀桿の長さに応じた扱深調整搬送を行う。尚、アーム部11bは従来のものと同様に、上下方向の長孔を有する融通連結機構27aを介して電動シリンダ27と連結している。従って、扱深搬送体8は設定される扱深調節位置において、前処理フレーム13が上昇しストッパ46bが接当部材45に接当したとき、当該接当を介して扱深搬送体8の追随上方回動を支障なく行うことができるものである。
【0013】
次に、図4図5を参照し前記左右移動機構10について説明する。先ず、前処理フレーム13は、前処理駆動ケース11と該前処理駆動ケース11から突設されて刈取駆動軸18を軸支する軸ケース29に一体的に取付けて前方下方に延出し、その前部に左右移動機構10を構成している。そして、左右移動機構10は、前処理フレーム13の先端部に構成される平行リンク機構30を介して刈取部7を左右移動自在に支持している。この平行リンク機構30は、前処理フレーム13の先端部に左右方向に固設したリンク支持フレーム31と刈取動力分配ケース20の左右端とを、左右一対のリンクアーム32で連結することによって構成している。
【0014】
また左右移動機構10は、平行リンク機構30に刈取部7を左右の所定位置に位置決めする図示しないストッパ機構を備えている。33は前処理駆動ケース11に支軸33aを介して左右揺動自在に連結すると共に、先端側を引起ブラケット21に前後摺動自在に設けられる連結フレームであり、刈取部7の上側を走行機体2側から防振構造を有して連結支持するようにしている。そして、左右移動機構10の切換操作レバー34は、左側の引起装置22の引起ブラケット21に取付けている。これにより切換操作レバー34は、操縦部3から前記ストッパ機構の固定と解除の切換操作と、固定解除時に刈取部7を左右移動する際の取っ手として利用するようにしている。
【0015】
次に、図4図8を参照し前記扱深搬送体8について説明する。前記駆動スプロケット26,26aから伝動駆動される株元挾持搬送体8aと穂先係止搬送体8bとは、在来のものと同様に扱深ケース部11aに取付固定される搬送体フレーム35を介し上下方向に所定の穀稈搬送間隔を有して設置し、搬送体フレーム35の先端部所定位置には各従動側スプロケット36,36aを軸支している。これにより株元挾持搬送体8aは、駆動スプロケット26と従動側スプロケット36とに株元搬送チェーン37を張設し、且つその搬送側面に穀稈挟持レール39を対設して構成される。
【0016】
また穂先係止搬送体8bは、駆動スプロケット26aと従動側スプロケット36aとに穂先搬送チェーン37aを張設し、且つその搬送側面に穀稈ガイドレール39aを対設して構成される。上記穀稈挟持レール39と穀稈ガイドレール39aとは、基部側が搬送体フレーム35に固設された下向きU字状パイプからなる支持杆40の先端部に取付けられる。さらに、扱深搬送体8は、搬送体フレーム35から前部に突設する昇降ガイド41を、右側の引起装置22の背後に固設される湾曲状のガイド体42にスライド自在に嵌挿係合させた連結機構43を備えている。
【0017】
これにより扱深ケース部11aから片持ち状態で、扱深駆動軸19に側方回動自在に支持される扱深搬送体8は、連結機構43の係合を介して先端側の上下作動を横方向の防振作用を有してスムーズに行うと共に、刈取部7が左右移動機構10を介して左右移動する際の追随作動を、扱深駆動軸19を中心にスムーズに行なわせるようにしている。そして、扱深搬送体8は、その下降下限位置を規定する扱深搬送体ストッパ機構1を前処理フレーム13との間に構成している。
【0018】
次に、図4図8を参照し上記扱深搬送体ストッパ機構1について説明する。この扱深搬送体ストッパ機構1は、前記扱深搬送体8の搬送体フレーム35の基部側から下向きに突設される接当部材45と、前処理フレーム13側に構成されるストッパ部46等からなる。即ち、図示例の接当部材45は断面円形状の棒材(丸棒)を曲げ加工をしてなり、搬送体フレーム35と一体に固設される支持杆40の基部側に沿って接当部材45の真直状の基部側を取付けると共に、該基部側から右方に屈曲して略水平状の接当代(ストッパ代)を有する接当部45aを形成している。一方、ストッパ部46は、前記軸ケース29の外周上面に前後方向に向けて立設したストッパベース46aと、該ストッパベース46aの上辺に沿って固設される断面円形状の真直状棒材(丸棒)からなるストッパ(接当部)46bとによって構成している。また上記接当部材45とストッパ46bとは、共に前処理フレーム13より小径な丸棒形状によって構成している。
【0019】
これによりストッパ部46は、扱深搬送体8が最下降して接当部材45の下面がストッパ46bの上面に接当した接当状態において、両者の円形断面を接触させた摩擦抵抗の小さい点接触状態で扱深搬送体8を下降下限位置に支持する。そして、扱深搬送体8は上記接当支持状態において刈取部7を左右切換移動するとき、連結機構43を介して扱深駆動軸19を中心に左右方向に追随回動する。このとき接当部材45は図6に矢印で示すように、ストッパ46bの上面(スライド部)に沿って、点接触による接当支持状態を維持しながらスムーズにスライド(摺接)移動をする。
【0020】
また図示例のストッパ部46は、ストッパベース46aを側面視で前方を高く後方を低くした3角形状板としており、その斜辺部に棒状のストッパ46bを設けるようにしている。尚、ストッパベース46aは、その前部にストッパ46bより上方に高く突出させた突起46cを設けている(図7図8)。この突起は46cは前記接当部45aの下方側への外れを規制するため、接当部材45の位置ずれを防止して扱深搬送体8の組付け及び取外し等の作業を行い易くするものである。これによりストッパ46bは図7に示すように、その上面と軸ケース29との間にストッパガイド角(上面傾斜角)θを形成して、前処理フレーム13の傾斜角に対し扱深搬送体8側に向け水平方向に近づけた緩傾斜にすることができる。つまり実施形態のストッパ部46は、ストッパ46bが搬送体フレーム35の急傾斜角にストッパガイド角θを加えた緩傾斜のスライド部にすることにより、扱深搬送体8の右側移動に伴う接当部材45の上方移動を大きな力を要することなくスムーズにスライドさせて行うことができる。
【0021】
またストッパ部46は、ストッパ46bを軸ケース29から上向き高さを有するストッパベース46aを介して扱深搬送体8側に接近させるため、接当部材45の支持長さを可及的に短くすることができ、従来のもののように接当部材45を径大で長いスパンにする等の長大化をさせることなく、径小で短い棒材によって軽量化を図りながら簡単安価な構造によって、撓みの防止や振動規制をするように構成することができる。
【0022】
尚、ストッパ部46は、十分な接当支持を行う高さの側面視3角形状板とし、その上辺に先鋭形状の断面加工を施すことにより、丸棒材を使用することなく鋭角な稜線部をストッパ46bにすることもできる。またストッパ部46は、1本の丸棒の前端側を長く後端側を短くするように下向きコ字状に屈曲させて前脚部と後脚部を形成し、両者の脚部下端を軸ケース29又は前処理フレーム13側に固設してもよいものである。この場合には両脚部がストッパベース46aになるため、両者間に前記ストッパベース46aと同じストッパガイド角θを有する緩傾斜のストッパ46bを形成する。
【0023】
次に、上記構成からなる扱深搬送体ストッパ機構1を備えるコンバインAの使用態様及び作用について説明する。このコンバインAは、前処理部9を上下移動させたり刈取部7を左右移動させたりする場合としては、走行機体2を畦際あるいは枕地にまで走行させたときや、中割作業および畦際刈り作業のときがある。この際、前処理部9の上下移動は、昇降シリンダ14を伸縮させて走行機体2の前部下方が基端となる前処理フレーム13を昇降させることにより行う。尚、前処理部9を所定の高さまで上昇させると、ストッパ部46のストッパ46bが接当部材45に当接し、前処理部9の上昇と共に扱深搬送体8を前記融通連結機構27aを介して追随上昇させるため、扱深搬送体8の始端側とスターホイル23aとは当接しないものである。
【0024】
一方、中割り作業又は畦際刈りや回刈り等の通常刈り作業を択一的に選択してコンバイン作業を行なう刈取部7の左右移動は、操縦部3から切換操作レバー34を切換操作し、固定解除時に平行リンク機構30のリンクアーム32を左側または右側に回動させることにより行う。このとき刈取部7の左右移動に基づき扱深搬送体8は、連結機構43を介して扱深駆動軸19を中心に左右方向に追随移動するため、扱深調節及び搬送を支障なく行うことができる。
【0025】
そして、扱深搬送体8を最下降させて接当部材45が前記ストッパ46bに当接した下降下限位置(最深扱ぎ姿勢)において、刈取部7を図3に示す左位置(通常刈り作業姿勢)から図2に示す右位置(中割り作業姿勢)に移動する際には、図6に示すように扱深搬送体8は、接当部材45が前記緩傾斜のストッパ46bの上部に沿って点接触しながら、側面視で上方に向けて平面視で円弧を描くように移動する。
【0026】
これにより実施形態のストッパ部46は、従来のコンバインのように、急角度で下向き傾斜している径大な伝動ケース や前処理フレーム13等に、接当部材45を大きな摩擦面で接触させる摩擦抵抗や、伝動ケースに付着した塵埃等による移動抵抗を伴うことなく、緩傾斜で且つ塵埃が付着し難いストッパ46b上で接当部材45を連続的な点接触によってスライドさせることができる。従って、刈取部7を右方移動する際の扱深搬送体8の右回動移動をスムーズにするので、刈取部7の右方移動時の操作荷重を軽減することができる。
【0027】
さらに、刈取部7の右方移動に伴い同方向に追随回動する扱深搬送体8は、接当部材45が前記ストッパガイド角θを有する緩傾斜のストッパ46bに支持され、扱深搬送体8の始端部とスターホイル23aとの接触を回避しながら、刈取部7が左方位置にあるときと略同じ高さに保持して、右方位置で行う中割り作業を穀稈の刈取り高さを異ならせることなくスムーズにする。また接当部材45は、前記支持長さを可及的に短くした剛性構造によって撓みの防止し扱深搬送体8の振動を規制する等の特徴がある
【0028】
またストッパ46bと接当部材45とを点接触によってスライドさせる断面形状となし、接当部材45をストッパ46bに点接触によってスライドさせながら扱深搬送体8の左右移動を行なわせることにより、接当部材45を大きな摩擦面で接触させることなく、緩傾斜で且つ塵埃が付着し難いストッパ46b上で接当部材45を、摩擦抵抗や塵埃等による移動抵抗の少ない連続的な点接触によってスライドさせるので、扱深搬送体8の右回動移動をスムーズにし刈取部7の右方移動時の操作荷重を軽減することができる等の特徴がある。
【符号の説明】
【0029】
A コンバイン
1 扱深搬送体ストッパ機構
2 走行機体
6 脱穀部
6a フィードチェーン
7 刈取部
8 扱深搬送体
9 前処理部
10 左右移動機構
13 前処理フレーム
19 扱深駆動軸
22 引起装置
23,23a 株元搬送装置
35 搬送体フレーム
43 連結機構
45 接当部材
46 ストッパ部
46a ストッパベース
46b ストッパ(接当部)
θ ストッパガイド角
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8