特許第6198622号(P6198622)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6198622
(24)【登録日】2017年9月1日
(45)【発行日】2017年9月20日
(54)【発明の名称】シリカ通気体
(51)【国際特許分類】
   C03C 27/10 20060101AFI20170911BHJP
   C03B 20/00 20060101ALI20170911BHJP
   C04B 37/04 20060101ALI20170911BHJP
【FI】
   C03C27/10 B
   C03B20/00 K
   C04B37/04
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-19016(P2014-19016)
(22)【出願日】2014年2月4日
(65)【公開番号】特開2015-145323(P2015-145323A)
(43)【公開日】2015年8月13日
【審査請求日】2016年9月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】507182807
【氏名又は名称】クアーズテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101878
【弁理士】
【氏名又は名称】木下 茂
(72)【発明者】
【氏名】菅野 晃
【審査官】 山田 頼通
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭63−002824(JP,A)
【文献】 特開2013−119488(JP,A)
【文献】 特開2005−289769(JP,A)
【文献】 特開昭48−034917(JP,A)
【文献】 特開平08−295534(JP,A)
【文献】 特表2008−511527(JP,A)
【文献】 特開2005−215266(JP,A)
【文献】 国際公開第98/001895(WO,A1)
【文献】 特開平04−343003(JP,A)
【文献】 特開昭61−127640(JP,A)
【文献】 特開昭57−160944(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0046075(US,A1)
【文献】 特開2012−140257(JP,A)
【文献】 特公昭47−036846(JP,B1)
【文献】 特開昭48−056715(JP,A)
【文献】 特開2013−166102(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/087894(WO,A1)
【文献】 特開2001−135680(JP,A)
【文献】 特開平09−148372(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 27/00−27/12
C03B 20/00
C04B 37/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端面から他端面にわたり、同一方向に貫通する隙間が複数形成され、前記隙間によって流体を流通させ物体を吸引保持するシリカ通気体であって、
透明なシリカガラスからなる複数の柱状体が、前記柱状体の軸線が同一方向になるように配置されると共に複数の柱状体が一体化され、前記複数の柱状体の両端面が前記一端面及び他端面を形成し、かつ、複数の柱状体において隣り合う前記柱状体の周面間に、前記柱状体の軸線と同一方向に貫通する隙間が複数形成され、
前記複数の柱状体によって少なくとも光が透過すると共に、前記隙間によって流体を流通させ、物体を一端面に吸引保持することを特徴するシリカ通気体。
【請求項2】
前記複数の柱状体及び前記隙間が、一端面から他端面にわたり連続的に形成されていることを特徴する請求項1に記載のシリカ通気体。
【請求項3】
前記複数の柱状体の軸線方向の直線透過率が50%以上、密度が2.0g/cm以上であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のシリカ通気体。
【請求項4】
前記複数の柱状体が無垢の柱状体、あるいは中心部に貫通孔を有する管状の柱状体であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のシリカ通気体。
【請求項5】
前記柱状体の軸線と直交な平面における前記隙間の形状が、前記隙間内側に突出した複数の円弧状部が接続された形状であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のシリカ通気体。
【請求項6】
前記複数の柱状体の一体化は、柱状体の周面同士が接合されることにより固着され、あるいは、前記隙間に形成されたシリカ質の多孔質体によって、柱状体の周面が固着されていることによってなされていることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載のシリカ通気体。
【請求項7】
前記シリカ質の多孔質体は気孔率が10%以上50%以下であることを特徴とする請求項6に記載のシリカ通気体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はシリカ通気体に関し、特に、光透過性と流体透過性を有するシリカ通気体に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、セラミックスや金属の精密加工、MEMSやLEDの製造分野において、真空チャックのように、光透過性と流体透過性を有する部材が用いられている。
このように、光透過性と流体透過性を有する真空チャックが用いられるのは、例えば、被加工物を吸引保持して被加工物の加工を行い、被加工物の吸引保持状態を維持しつつ、引き続いて被加工物の下方から光を照射することにより、微細なピンホールやウエハのエッジの状態等の検査を視覚的に行うためである。
【0003】
本出願人は、このような光透過性と流体透過性を有する部材として、特許文献1において、シリカ粒子の焼結体からなる真空チャック用シリカ多孔体を提案している。
【0004】
この真空チャック用シリカ多孔体は、平均粒子径が5〜300μm、かつ、粒子分布幅が前記平均粒子径の±50%以内にあるシリカ粒子の焼結体から形成されている。また、このシリカ多孔体は、気孔径が1〜100μm、気孔率が5〜45%、見掛け密度が2.1g/cm以上であり、断面における気孔の平均径が、該断面におけるシリカ粒子の平均粒子径の1/12以上3/4以下に構成され、波長350〜750nmの光の反射率が80%以上に形成されている。
【0005】
このようなシリカ多孔体を、例えば真空チャックに用いた場合には、被加工物を吸引保持して被加工物の加工を行い、被加工物の吸引保持状態を維持しつつ、引き続いて被加工物の下方から光を照射することにより、被加工物の検査等を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2013−121888号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、前記真空チャック用シリカ多孔体にあっては、光の反射率が80%以上であり、前記シリカ多孔体を直線透過する光が少ないために、例えば、微細なピンホールや被加工物のエッジ等の状態を精度よく、かつ容易に識別することができ難い場合があるという技術的課題があった。
この技術的課題を解決するために、前記シリカ多孔体の厚さを薄くすることによって、光透過量を増大させることができる。
しかしながら、被加工物を吸着した際、前記シリカ多孔体の厚さが薄いために前記シリカ多孔体(真空チャック)自体が変形し、加工精度が低下するという技術的課題があった。
【0008】
これを解決する一つの手段として、板状の透明なシリカガラス体にドリル等の機械加工を行い、前記シリカガラス体に貫通孔を形成し、前記貫通孔を流体透過部とすることが考えられる。
この場合、透明なシリカガラス体であるために、所定の機械的強度を有すると共に、光透過量を増大させることができる。
【0009】
しかしながら、前記貫通孔はドリル等の機械加工によって形成されるため、必然的に流体透過部の大きさには下限(ドリル径)があり、小径の流体透過部を形成することができないという技術的課題がある。
また前記貫通孔の間隔を狭くし、多数の流体透過部を形成する場合には、板状のシリカガラス体に多数の貫通孔を形成しなければならず、加工に要する時間が長くなるという新たな技術的課題を招来するものである。
【0010】
本発明は、前記したような状況に鑑みてなされたものであり、優れた光透過性を有すると共に、微細な流体透過部によって優れた流体透過性を有するシリカ通気体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記した課題を解決するためになされた本発明にかかるシリカ通気体は、一端面から他端面にわたり、同一方向に貫通する隙間が複数形成され、前記隙間によって流体を流通させ物体を吸引保持するシリカ通気体であって、透明なシリカガラスからなる複数の柱状体が、前記柱状体の軸線が同一方向になるように配置されると共に複数の柱状体が一体化され、前記複数の柱状体の両端面が前記一端面及び他端面を形成し、かつ、複数の柱状体において隣り合う前記柱状体の周面間に、前記柱状体の軸線と同一方向に貫通する隙間が複数形成され、前記複数の柱状体によって少なくとも光が透過すると共に、前記隙間によって流体を流通させ、物体を一端面に吸引保持することを特徴としている。
【0012】
このように、透明なシリカガラスからなる複数の柱状体が、前記柱状体の軸線が同一方向になるように配置されているため、照射された光は前記柱状体を通して透過されるため、優れた光透過性を有する。
また、複数の柱状体が一体化されているため、機械的強度を向上させることができる。
更に柱状体の周面間に、前記柱状体の軸線と同一方向に貫通する隙間が形成されているため、この隙間を流体透過部とすることにより、優れた流体透過性を有する。
尚、前記流体透過性は、空気のような気体のみならず、液体の透過性を含むものである。
【0013】
ここで、前記複数の柱状体及び前記隙間が、一端面から他端面にわたり連続的に形成されていることが望ましい。
このように、前記複数の柱状体が一端面から他端面にわたり連続的に形成されている場合には、光の減衰を抑制でき、優れた光透過性を有する。また、前記隙間が一端面から他端面にわたり連続的に形成されているため、圧損を抑制でき、優れた流体透過性を有する。
【0014】
ここで、前記複数の柱状体の軸線方向の直線透過率が50%以上、密度が2.0g/cm以上であることが望ましい。
前記直線透過率が50%未満の場合、検査等において光を照射した際、光の透過量が不十分となり、正確な検査を行うことができない。また、照射した光のエネルギーが熱として吸収されるため、その熱によりシリカ通気体が変形する虞があり好ましくない。
尚、直線透過率とは、表面反射や散乱光を除いた光の透過率を意味している。
【0015】
また、前記複数の柱状体が無垢の柱状体、あるいは中心部に貫通孔を有する管状の柱状体であることが望ましい。
複数の柱状体が無垢の柱状体である場合には、前記柱状体は光を透過する光透過性の機能のみを有し、中心部に貫通孔を有する管状の柱状体である場合には、光透過性及び流体を通す流体透過性の機能を有する。
【0016】
また、前記柱状体の軸線と直交する平面における前記隙間の形状が、前記隙間内側に突出した複数の円弧状部もしくは屈曲形状部が接続された形状であることが望ましい。
前記隙間が前記隙間内側に突出した複数の円弧状部もしくは屈曲形状部が接続された形状である場合、例えば、前記隙間外側に突出した複数の円弧状部が接続された形状(円形状)の隙間から吸引する場合に比べて、吸引する領域が拡がるため、吸引による被加工物の変形を抑制することができる。
【0017】
また、前記複数の柱状体の一体化は、柱状体の周面同士が接合されることにより固着され、あるいは前記隙間に形成されたシリカ質の多孔質体によって、柱状体の周面が固着されていることによってなされていることが望ましい。前記隙間にシリカ質の多孔体を形成した場合、吸引による被加工物や被加工物保持部材の変形を抑制することができる。
【0018】
また、前記シリカ質の多孔質体は気孔率が10%以上50%以下であることが望ましい。
前記隙間に形成されたシリカ質の多孔質体の気孔率が10%未満の場合には、10%未満であると圧損が大きくなり吸着の際に負荷が大きくなり、優れた流体透過性を得ることができない。また多孔質体の気孔率が50%を超える場合には、シリカ粒子同士の結合が弱いため粒子の脱落などの問題が生じるため好ましくない。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、優れた光透過性を有すると共に、微細な流体透過部によって優れた流体透過性を有するシリカ通気体を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施形態にかかるシリカ通気体を示す斜視図である。
図2】本発明の実施形態にかかるシリカ通気体の隙間(流体流体透過部)を示す拡大図である。
図3】本発明の実施形態にかかるシリカ通気体の隙間にシリカ質の多孔質体を形成した場合を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明にかかる実施形態について図1乃至図3に基づいて説明する。
本発明にかかるシリカ通気体1は、シリカガラスからなる複数の柱状体2が、前記柱状体1の軸線Lが同一方向になるように配置される。
これら柱状体1は、隣り合う柱状体2が固着され、隣り合う前記柱状体2の周面間に、前記柱状体2の軸線と同一方向に貫通する隙間3が複数形成されている。
【0022】
また、前記複数の柱状体2及び前記隙間3は、シリカ通気体1の一端面1aから他端面1bにわたり連続的に形成されている。尚、前記柱状体1は、1本の連続したシリカガラスである必要はなく、前記柱状体1が軸線方向に複数配置され、光が連続的に透過するものであっても良い。
但し、前記複数の柱状体2が、一端面1aから他端面1bにわたり連続的に形成されている場合には、光の減衰を抑制でき、優れた光透過性を有する。
【0023】
また、前記隙間3がシリカ通気体1の一端面1aから他端面1bにわたり連続的に形成されている。
このように、前記前記隙間3が、シリカ通気体1の一端面1aから他端面1bにわたり連続的に形成されている場合には、圧損をより抑制でき、優れた流体透過性を有する。
【0024】
前記シリカガラスからなる複数の柱状体2としては、前記軸線方向の直線透過率が50%以上、密度が2.0g/cm以上のものが用いられる。
前記柱状体2の軸線方向の直線透過率が50%未満、密度が2.0g/cm以下の場合には、光透過性が劣り、検査等で使用した際、認識度が低下するため、好ましくない。好ましくは、複数の柱状体2の直線透過率が80%以上、密度が2.15g/cm以上であることが望ましい。
【0025】
また、前記柱状体2のシリカガラス内部に含まれるOH基濃度は100wt・ppm以下が望ましい。100wt・ppmを超えると軟化点が下がってしまうため、前記柱状体2を加熱し、一体化する際、変形が生じる虞がある。好ましくは、OH基濃度が10wt・ppm以下であり、より好ましくは、5wt・ppm以下が良い。
【0026】
また、シリカガラスからなる複数の柱状体2の断面形状(軸線Lに対して直交する面の形状)は、柱状体2同士を密に配置した際に、隙間3が形成される形状であれば良い。例えば、円形、楕円形、5角形および7角形以上の多角形が好ましい。
前記柱状体2の断面形状が、三角形、四角形、六角形の場合には、複数の柱状体2を配置した際、隣り合う柱状体2の周面同士が密着し、隙間が形成されないため、好ましくない。
【0027】
また、図2に示すように、シリカガラスからなる複数の柱状体2の断面形状が円形、楕円形である場合、柱状体の軸線と直交する平面における隙間3の断面形状は、前記隙間内側に突出した複数の円弧状部2a,2b,2cが接続された形状に形成される。
尚、前記隙間3の断面形状は前記円弧状(円弧状部)以外に、隙間内側に突出した複数の直線が接続された屈曲状(屈曲形状部)に形成しても良い。
【0028】
このように、前記隙間3が隙間内側に突出した複数の円弧状部2a,2b,2cが接続された形状である場合、例えば、図2の点線で示す同一面積を有する円形状(隙間外側に突出した複数の円弧状部が接続された形状)の隙間3Aに比べて、被加工物を吸引する平面領域(X、Y,Z方向の長さ)を拡大することができ、吸引による被加工物の変形を抑制することができる。
特に、薄いシート状の保持部材を介して対象物を吸引、保持した場合、隙間3が円形状の場合には、前記隙間3部分に変形が生じる易いため、隙間3を隙間内側に突出した複数の円弧状部2a,2b,2cが接続された形状とすることは有効である。
【0029】
また、前記複数の柱状体2は、無垢の柱状体、あるいは中心部に貫通孔を有する管状の柱状体であっても良い。なお、管状の柱状体である場合は、貫通孔内をシリカ質の多孔質体で充填する。
また、柱状体2が均一な断面形状(柱状体2の軸線Lと直交する平面における断面形状)を有し、同一の径を有している場合には、隣り合う前記柱状体2の周面間に形成される隙間3は同一の形状、同一寸法に形成されるため、シリカ通気体1の表面全面に、均一な流体透過部(隙間)3を形成することができる。
【0030】
また、前記隙間3、即ち、流体透過部は、柱状体2の断面形状の径(柱状体の軸線と直交する平面における断面形状の大きさ)を大きくすることにより、柱状体2の軸線Lと直交する平面における、一つ当たりの流体透過部(隙間)3の面積を大きくすることができる。
一方、柱状体2の断面形状の径(柱状体の軸線と直交する平面における形状の大きさ)を小さくすることにより、柱状体の軸線と直交する平面における、一つ当たりの流体透過部3の面積を小さくすることができる。
したがって、流体の流量等を考慮して、柱状体2の断面形状の径を適宜選択することにより、流体透過部3の面積を選択することができる。
尚、異なる柱状体2を混在させることにより、柱状体2の軸線と直交する平面における流体透過部3の大きさ(面積)を変えることができる。
【0031】
また、隣り合う柱状体2の固着は、柱状体を加熱、溶融して接着(接合)しても良い。あるいは、隣り合う柱状体2の周面に、焼成によってシリカとなる接着剤(例えば、TEOS:オルトケイ酸テトラエチルなどオルトケイ酸類を含むスラリー)を塗布、接着し、その後、焼成することによって柱状体同士を接着(接合)しても良い。
【0032】
一方、前記隙間3(流体透過部)にシリカ質の多孔質体を形成する場合には、前記接着剤(例えば、TEOS:オルトケイ酸テトラエチルなどオルトケイ酸類を含むスラリー)にシリカ粒子を含有させ、柱状体2を接着(接合)し、その後、焼成することによって隙間3(流体透過部)にシリカ質の多孔質体を形成しても良い。
この場合、図3に示すように、前記隙間3に形成されたシリカ質の多孔質体4によって、柱状体2の周面が固着され、複数の柱状部2は一体化する。
【0033】
尚、前記隙間3(流体透過部)にシリカ質の多孔質体4を形成した場合は、光透過性が低下する虞があるが、前記柱状体2の側面からの光拡散により、従来のシリカ多孔体よりも散乱後の光量が大きくなる。
そのため、隙間3(流体透過部)にシリカ質の多孔質体4を形成した場合であっても、柱状体2の軸線方向の厚さを厚くすることができる。
しかも、シリカ通気体1にシリカ質の多孔質体4が形成されているため、前記隙間3(流体透過部)が空隙の場合比べて、シリカ通気体1の機械的強度をより増すことができ、耐変形性を有しながら、単位面積当たりの光透過量が高く、流体透過性を有するシリカ通気体1を得ることができる。
【0034】
前記シリカ多孔体は、気孔率が10%以上50%以下であることが望ましい。前記気孔率が10%未満であると圧損が大きくなり吸着の際に負荷が大きくなる。一方、前記気孔率が50%を超える場合には、シリカ粒子同士の結合が弱いため、シリカ粒子の脱落などの弊害が生じ、好ましくない。
【0035】
シリカ通気体1は、曲げ強度で30MPa以上の強度を有することが望ましい。
シリカ通気体1の表面に被加工物を載置し吸引した場合、シリカ通気体1の強度が30MPa未満では破損に至る虞があり、望ましくは60MPa以上の強度が必要である。
【0036】
次に、上記したようなシリカ通気体を製作する一例を示す。
まず、直径1.5mmのシリカガラス棒(柱状体)を長さ20mmに切り揃え、多数のシリカガラス棒を所定形状、例えば矩形形状の型内に立てて敷き詰める。
そして、前記型内に、例えば、TEOS等のオルトケイ酸類、純水、酸類などから構成されるスラリーを流し込み、所定の温度で焼成することによって、前記シリカガラス棒(柱状体)同士が固着した状態のシリカ通気体ができる。
このシリカ通気体は、使用目的、使用用途に応じて、所定の厚さに切断され、また研磨加工等で所定の表面状態に加工される。
【実施例】
【0037】
以下、本発明を実施例に基づいてさらに具体的に説明するが、本発明は、下記実施例により制限されるものではない。
【0038】
(実施例1)
直径1.5mm、OH基濃度40wt・ppm、密度2.2g/cm、直線透過率90%のシリカガラス無垢棒(柱状部)を長さ20mmに切り出し、直径150mmの樹脂型にセットした。
ここにTEOS、塩酸、純水からなるスラリーを流し込みこれを1200℃で焼成したところ曲げ強度で45MPaのシリカ通気体が得られた。またこのシリカ通気体の流体透過性は、100slm(1atom、0℃における1分間の流量)であった。
【0039】
またシリカ通気体で、アルミナプレートを吸引保持し、水を使わずにアルミナプレートの研磨加工を行い、またアルミナプレートを吸引保持した状態で、直径0.1mmの穴あけ加工を実施した。
その結果、前記シリカ通気体の温度は150度に達したが、加工終了後、アルミナプレート、シリカ通気体ともに破損等の問題は生じなかった。
更に、アルミナを吸着面に貼り付けたまま、前記シリカ通気体の下部より光を透過させ、ピンホールの状態やエッジのチッピングなどを確認した結果、適正な検査結果を確認することができた。
【0040】
(実施例2)
直径3mm、OH基濃度100wt・ppm、密度2.1g/cm、直線透過率85%のシリカガラス無垢棒(柱状部)を長さ20mmに切り出し、直径200mmの樹脂型にセットした。ここに、平均粒径20μmのシリカ粒子、TEOS、塩酸、純水からなるスラリーを流し込み、その後1250℃で焼成した。
得られたシリカ通気体の曲げ強度は60MPa、多孔体部分の気孔率が30%であった。またこのシリカ通気体の流体透過性は、300slm(1atom、0℃における1分間の流量)であった。
【0041】
また、前記シリカ通気体でアルミナプレートを吸引保持し、水を使わずにアルミナの研磨加工を実施した。
その結果、シリカ通気体の温度は120度に達したが、加工終了後、シリコンウェーハ、シリカ通気体ともに破損等の問題は生じなかった。
更に、アルミナを吸着面に貼り付けたまま、前記シリカ通気体の下部より光を透過させ、アルミナ内部の欠陥などを確認することができた。
【0042】
(実施例3)
直径3mm、OH基濃度300wt・ppm、密度2.1g/cm、直線透過率85%のシリカガラス無垢棒(柱状部)を長さ20mmに切り出し、直径200mmの樹脂型にセットした。
ここにTEOS、塩酸、純水からなるスラリーを流し込みこれを1250℃で焼成したところ曲げ強度で30MPaのシリカ通気体が得られた。またこのシリカ通気体の流体透過性は、80slm(1atom、0℃における1分間の流量)であった。
上記実施例1,2と比べると、流体透過性が80slmと低下することが認められた。これはシリカガラスからなる柱状部が変形し、隙間(流体透過部)が小さくなったためである。したがって、適切な隙間(流体透過部)を形成するためには、シリカガラスからなる柱状部のOH基濃度は100wt・ppm以下が望ましいことが確認された。
【0043】
(実施例4)
直径3mm、OH基濃度100wt・ppm、密度2.1g/cm、直線透過率85%のシリカガラス無垢棒(柱状部)と、直径1.5mm、OH基濃度3wt・ppm、密度2.2g/cm、直線透過率90%のシリカガラスパイプ(外径1.5mm、内径0.5mm)の貫通孔内に平均粒径15μmのシリカガラス粉末とTEOS、塩酸、純水からなるスラリーを流し込み、これを1300度で焼成して得た曲げ強度で70MPaの通気体(シリカ通気体)が充填したものを20mmの長さに切り出した。
そして、シリカガラス無垢棒(柱状部)とシリカガラスパイプを8:2の割合で混在させ、直径200mmの樹脂型にセットした。
ここにTEOS、塩酸、純水からなるスラリーを流し込みこれを1200℃で焼成したところ曲げ強度で45MPaのシリカ通気体が得られた。またこのシリカ通気体の流体透過性は、150slm(1atom、0℃における1分間の流量)であった。
【0044】
(実施例5)
直径1.5mm、OH基濃度5wt・ppm、密度2.2g/cm、直線透過率90%のシリカガラスパイプ(柱状体)を20mmの長さに切り出し直径200mmの樹脂型にセットした。
ここにTEOS、塩酸、純水からなるスラリーを流し込みこれを1300℃で焼成したところ曲げ強度で60MPaの吸着体(シリカ通気体)が得られた。またこのシリカ通気体の流体透過性は、150slm(1atom、0℃における1分間の流量)であった。
この吸着体をチャンバー内にセットし、上部にフッ素系のガスを流して熱処理を行った。その際、吸着板下部より光を照射することで石英ガラスとガスの反応の様子を確認することができた。
【0045】
(実施例6)
実施例4と同じ石英パイプに、平均粒径15μmのシリカガラス粉末とTEOS、塩酸、純水からなるスラリーを流し込み、これを1300度で焼成したところ、曲げ強度で70MPaの通気体(シリカ通気体)が得られた。またこのシリカ通気体の流体透過性は、60slm(1atom、0℃における1分間の流量)であった。
この通気体(シリカ通気体)に厚さ100μmのポリエチレンフィルムを吸着させたところ、微細な凹みもなく平面を保ったまま保持することができた。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明にかかるシリカ通気体は、真空チャック、シャワープレート等に好適に用いることができるほか、光を透過しつつも光の減衰、拡散が見られるため、光学的な拡散板にも使用することができる。
【符号の説明】
【0047】
1 シリカ通気体
2 柱状体
3 隙間(流体透過部)
図1
図2
図3