特許第6198624号(P6198624)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6198624
(24)【登録日】2017年9月1日
(45)【発行日】2017年9月20日
(54)【発明の名称】光透過性積層フィルム
(51)【国際特許分類】
   B32B 15/085 20060101AFI20170911BHJP
   C09J 7/02 20060101ALI20170911BHJP
【FI】
   B32B15/085 Z
   C09J7/02 Z
【請求項の数】10
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2014-22263(P2014-22263)
(22)【出願日】2014年2月7日
(65)【公開番号】特開2015-147372(P2015-147372A)
(43)【公開日】2015年8月20日
【審査請求日】2016年11月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000219602
【氏名又は名称】住友理工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002158
【氏名又は名称】特許業務法人上野特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100095669
【弁理士】
【氏名又は名称】上野 登
(74)【代理人】
【識別番号】100154483
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 和寛
(72)【発明者】
【氏名】後藤 修
(72)【発明者】
【氏名】竹脇 健司
(72)【発明者】
【氏名】楢▲崎▼ 徹司
(72)【発明者】
【氏名】竹内 哲也
(72)【発明者】
【氏名】別所 久美
【審査官】 中川 裕文
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−133721(JP,A)
【文献】 特開2013−061370(JP,A)
【文献】 特開2000−117871(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0105069(US,A1)
【文献】 特開2013−151103(JP,A)
【文献】 特開2000−191710(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00− 43/00
G02B 1/00− 1/18
5/20− 5/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィンフィルムの一方面上に、金属または金属酸化物を含有する金属含有層(銀含有層を除く)と、銀または銀合金を含有する銀含有層と、粘着剤層と、をこの順で有し、前記ポリオレフィンフィルムの他方面上に、有機無機ハイブリッド材料からなるハードコート層を有し、前記ポリオレフィンフィルムと前記金属含有層(銀含有層を除く)との間のJIS A5759に準拠して測定される密着力が50mN/25mm以上であることを特徴とする光透過性積層フィルム。
【請求項2】
前記ポリオレフィンフィルムが、二軸延伸ポリプロピレンフィルムであることを特徴とする請求項1に記載の光透過性積層フィルム。
【請求項3】
前記有機無機ハイブリッド材料を形成する無機成分の原料の配合比率が40〜70質量%であることを特徴とする請求項1または2に記載の光透過性積層フィルム。
【請求項4】
前記有機無機ハイブリッド材料を形成する有機成分の原料が硬化性樹脂からなり、その無機成分の原料が金属化合物からなることを特徴とする1から3のいずれか1項に記載の光透過性積層フィルム。
【請求項5】
前記硬化性樹脂が、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項4に記載の光透過性積層フィルム。
【請求項6】
前記無機成分の原料の金属化合物が、Si、Ti、Zrから選択される少なくとも1種の金属からなる金属化合物であることを特徴とする請求項4または5に記載の光透過性積層フィルム。
【請求項7】
前記金属含有層(銀含有層を除く)のポリオレフィンフィルム側の表面には、前記金属含有層(銀含有層を除く)の金属の酸化物が存在することを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の光透過性積層フィルム。
【請求項8】
前記金属含有層(銀含有層を除く)の金属および金属酸化物が、Si、Ti、Zrから選択される少なくとも1種の金属およびその酸化物であることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の光透過性積層フィルム。
【請求項9】
前記ポリオレフィンフィルムの金属含有層(銀含有層を除く)側の表面の酸素の原子組成比が1〜30atm%の範囲内であることを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の光透過性積層フィルム。
【請求項10】
前記ポリオレフィンフィルムのハードコート層側の表面の酸素の原子組成比が1〜30atm%の範囲内であることを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の光透過性積層フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光透過性積層フィルムに関し、さらに詳しくは、紙製品や布製品などの柔軟性に優れる部材に適用できる光透過性積層フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ビル・住宅等の建築物の窓ガラスや自動車等の車両の窓ガラスなどには日射を遮蔽する目的で遮熱性を有する光透過性積層フィルムが施工されることがある。この種の光透過性積層フィルムでは、硬い窓ガラスに適用されることから、遮熱機能性膜を形成する基材フィルムには高い光透過性や機械的強度が求められ、高透明でコシが強いポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)が基材フィルムとして用いられることが多い。
【0003】
しかし、紙製品や布製品などの柔軟性に優れる部材に遮熱機能を付与しようとした場合には、光透過性積層フィルムの基材フィルムのコシが強いと、光透過性積層フィルムを適用する柔軟性に優れる部材本来の柔軟性が失われてしまうため、窓ガラスに適用される従来の光透過性積層フィルムをそのまま柔軟性に優れる部材に適用することは困難である。つまり、例えばPETフィルムよりもコシの弱いフィルムを、遮熱機能性膜を形成する基材とする必要がある。
【0004】
この点に関し、柔軟性に優れる部材に適用する記載はなく、建物や乗物などの窓、植物などを入れる透明ケース、冷凍もしくは冷蔵のショーケースといった硬い部材に対して適用することが記載されているものであるが、特許文献1には、赤外線反射層と、赤外線反射層の1つの主面を支持するポリシクロオレフィン層と、赤外線反射層の他の主面に形成された接着層と、を備える赤外線反射フィルムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012−189683号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のようにポリシクロオレフィン層上に金属薄膜を形成する場合には、ポリシクロオレフィン層と金属薄膜との間の密着が悪く、これらの層間で剥離が生じやすい。また、特許文献1のように各層を構成する場合には、赤外線反射フィルムを窓などに貼り着けると、ポリシクロオレフィン層が表面に現れる。表面に現れたポリシクロオレフィン層は傷がつきやすい。そして、ポリシクロオレフィン層の表面に硬い保護層を形成する場合には、ポリシクロオレフィン層と保護層との間の密着が問題となる。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、紙製品や布製品などの柔軟性に優れる部材に適用でき、良好な断熱性、耐擦傷性、層間密着性を有する光透過性積層フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため本発明に係る光透過性積層フィルムは、ポリオレフィンフィルムの一方面上に、金属または金属酸化物を含有する金属含有層(銀含有層を除く)と、銀または銀合金を含有する銀含有層と、粘着剤層と、をこの順で有し、前記ポリオレフィンフィルムの他方面上に、有機無機ハイブリッド材料からなるハードコート層を有し、前記ポリオレフィンフィルムと前記金属含有層(銀含有層を除く)との間のJIS A5759に準拠して測定される密着力が50mN/25mm以上であることを要旨とするものである。
【0009】
この場合、前記ポリオレフィンフィルムは二軸延伸ポリプロピレンフィルムであることが好ましい。
【0010】
また、前記有機無機ハイブリッド材料を形成する無機成分の原料の配合比率は40〜70質量%であることが好ましい。
【0011】
そして、前記有機無機ハイブリッド材料を形成する有機成分の原料は、硬化性樹脂が好ましく、その無機成分の原料は、金属化合物が好ましい。硬化性樹脂としては、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂から選択される少なくとも1種が好ましく、前記金属化合物としては、Si化合物、Ti化合物、Zr化合物から選択される少なくとも1種が好ましい。
【0012】
そして、前記金属含有層(銀含有層を除く)のポリオレフィンフィルム側の表面には、前記金属含有層(銀含有層を除く)の金属の酸化物が存在することが好ましい。
【0013】
そして、前記金属含有層(銀含有層を除く)の金属および金属酸化物は、Si、Ti、Zrから選択される少なくとも1種の金属およびその酸化物であることが好ましい。
【0014】
また、前記ポリオレフィンフィルムの金属含有層(銀含有層を除く)側の表面の酸素の原子組成比は1〜30atm%の範囲内であることが好ましい。
【0015】
また、前記ポリオレフィンフィルムのハードコート層側の表面の酸素の原子組成比は1〜30atm%の範囲内であることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る光透過性積層フィルムによれば、ポリオレフィンフィルムの一方面上に、金属または金属酸化物を含有する金属含有層(銀含有層を除く)と、銀または銀合金を含有する銀含有層と、粘着剤層と、をこの順で有し、ポリオレフィンフィルムの他方面上に、有機無機ハイブリッド材料からなるハードコート層を有し、ポリオレフィンフィルムと金属含有層(銀含有層を除く)との間のJIS A5759に準拠して測定される密着力が50mN/25mm以上であることから、紙製品や布製品などの柔軟性に優れる部材に適用でき、良好な断熱性、耐擦傷性、層間密着性を有する。ポリオレフィンフィルムとハードコート層の層間密着性に優れるのは、ハードコート層に無機成分を添加したことでハードコート層の硬化収縮が抑えられたためと推察される。また、ポリオレフィンフィルムと金属含有層(銀含有層を除く)の層間密着性は、ハードコート層の硬化収縮が抑えられたことも影響していると推察される。
【0017】
そして、有機無機ハイブリッド材料を形成する無機成分の原料の配合比率が40質量%以上であると、ポリオレフィンフィルムとハードコート層の層間密着性が特に良好である。また、無機成分の原料の配合比率が70質量%以下であると、塗液の安定性に優れ、ハードコート層の光透過性の低下が抑えられる。
【0018】
そして、有機無機ハイブリッド材料を形成する有機成分の原料が硬化性樹脂であり無機成分の原料が金属化合物であると、ハードコート層の硬化収縮が抑えられ、ポリオレフィン層とハードコート層の層間密着性が向上する。
【0019】
そして、金属含有層(銀含有層を除く)のポリオレフィンフィルム側の表面に金属含有層(銀含有層を除く)の金属の酸化物が存在するものは、ポリオレフィンフィルムと金属含有層(銀含有層を除く)の層間密着性が特に良好である。
【0020】
そして、金属含有層(銀含有層を除く)の金属および金属酸化物がSi、Ti、Zrから選択される少なくとも1種の金属およびその酸化物であると、金属含有層(銀含有層を除く)のポリオレフィンフィルム側の表面に金属含有層(銀含有層を除く)の金属の酸化物が存在しやすくなり、ポリオレフィンフィルムと金属含有層(銀含有層を除く)の層間密着性を良好にしやすい。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施形態に係る光透過性積層フィルムの断面図である。
図2】本発明の他の実施形態に係る光透過性積層フィルムの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明に係る光透過性積層フィルムについて詳細に説明する。
【0023】
本発明に係る光透過性積層フィルムは、ポリオレフィンフィルムの一方面上に、金属または金属酸化物を含有する金属含有層(銀含有層を除く)と、銀または銀合金を含有する銀含有層と、粘着剤層と、をこの順で有し、ポリオレフィンフィルムの他方面上に、有機無機ハイブリッド材料からなるハードコート層を有する。
【0024】
図1には、本発明に係る光透過性積層フィルムの一実施形態を示す。図1(a)に示す光透過性積層フィルム10は、ポリオレフィンフィルム12の一方面上に、金属含有層(銀含有層を除く)14と、銀含有層16と、粘着剤層18と、をこの順で有し、ポリオレフィンフィルム12の他方面上に、有機無機ハイブリッド材料からなるハードコート層20を有している。金属含有層(銀含有層を除く)14は、ポリオレフィンフィルム12の一方面上に直接形成されている。銀含有層16は、金属含有層(銀含有層を除く)14の面上に直接形成されている。粘着剤層18は、銀含有層16の面上に直接形成されている。金属含有層(銀含有層を除く)14は、ポリオレフィンフィルム12と銀含有層16の両方に接している。銀含有層16は、金属含有層(銀含有層を除く)14と粘着剤層18の両方に接している。粘着剤層18は、銀含有層16に接している。ハードコート層20は、ポリオレフィンフィルム12の他方面上に直接形成され、ポリオレフィンフィルム12に接している。よって、光透過性積層フィルム10は、ポリオレフィンフィルム12と、ポリオレフィンフィルム12の一方面に接する金属含有層(銀含有層を除く)14と、金属含有層(銀含有層を除く)14に接する銀含有層16と、銀含有層16に接する粘着剤層18と、をこの順で有し、さらに、ポリオレフィンフィルム12の他方面に接するハードコート層20を有している。
【0025】
ポリオレフィンフィルム12は、金属含有層(銀含有層を除く)14および銀含有層16を形成するためのベースとなる基材である。基材は柔軟性に優れることが必要であり、このため、フィルムとしている。フィルムとは、薄い膜状のものであり、一般には200μm以下あるいは250μm以下の厚みのものである。ロール状に巻けるほどの柔軟性を有するものであればよく、そのようなものであれば、200μm以上あるいは250μm以上の厚いものであってもよい。フィルムは、一般にロール状物として供出される。
【0026】
ポリオレフィンフィルム12は、光透過性を有するものである。光透過性とは、波長領域360〜830nmにおける透過率の値が50%以上であることをいう。ポリオレフィンフィルム12のポリオレフィンとしては、鎖状ポリオレフィン、環状ポリオレフィンが挙げられる。鎖状ポリオレフィンとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−αオレフィン共重合体などが挙げられる。環状ポリオレフィンとしては、シクロオレフィンポリマーなどが挙げられる。ポリオレフィンとしては、光透過性、耐久性、加工性などの観点から、ポリプロピレンが好ましい。特に、光透過性などの観点から、二軸延伸ポリプロピレン(OPP)が好ましい。
【0027】
ポリオレフィンフィルム12は、これに接する金属含有層(銀含有層を除く)14やハードコート層20などとの層間密着性を向上させるなどの目的で、その一方あるいは両方の表面に表面処理が施されていてもよい。また、層間密着性を向上させるなどの目的で、その一方あるいは両方の表面に易接着層が設けられていてもよい。また、層間密着性を向上させるなどの目的で、その一方の表面に表面処理が施され、他方の表面に易接着層が設けられていてもよい。このような表面処理としては、コロナ処理、プラズマ処理などが挙げられる。これにより、ポリオレフィンフィルム12の表面に水酸基や酸素基が形成される。易接着層としては、極性基を有する変性ポリオレフィン層、アクリル樹脂層などが挙げられる。極性基としては、N、O、Sなどのヘテロ原子を有するものなどが挙げられる。変性ポリオレフィンとしては、極性基を有するポリプロピレンコポリマー、極性基を有するポリエチレン、極性基を有するポリイソプレン、極性基を有するポリイソブチレンなどが挙げられる。
【0028】
ポリオレフィンフィルム12は、層間密着性の観点から、その一方あるいは両方の表面に表面処理が施されている、その一方あるいは両方の表面に易接着層が設けられている、あるいは、その一方の表面に表面処理が施され、他方の表面に易接着層が設けられていることが好ましい。特に、その一方あるいは両方の表面に表面処理が施されていることが好ましい。
【0029】
そして、層間密着性を向上させる表面処理や易接着層などにより、ポリオレフィンフィルム12の金属含有層(銀含有層を除く)14側の表面の酸素の原子組成比は1〜30atm%の範囲内であることが好ましい。より好ましくは
1〜15atm%の範囲内である。また、ポリオレフィンフィルム12のハードコート層20側の表面の酸素の原子組成比は1〜30atm%の範囲内であることが好ましい。より好ましくは1〜15atm%の範囲内である。ポリオレフィンフィルム12の表面の酸素の原子組成比が1atm%以上であると、層間密着性を向上させる効果が高い。一方、ポリオレフィンフィルム12の表面の酸素の原子組成比が30atm%以下であると、ロール状に巻回されたポリオレフィンフィルム12の原反フィルムが層間で接着する(ブロッキング)のを抑えやすい。
【0030】
銀含有層16は、遠赤外線(熱線)を反射しやすい金属で構成されており、日射遮蔽層、断熱層として機能する。銀含有層16は、銀または銀合金を含有する層であるが、熱、光、水蒸気などの環境に対する耐久性が向上するなどの観点から、銀合金を含有する層であることが好ましい。なお、銀含有層16は、後述する後酸化処理などにより、銀含有層16の機能を損なわない範囲内で部分的に酸化されていても良い。
【0031】
銀合金としては、銀を主成分とし、銅、ビスマス、金、パラジウム、白金、チタンなどの金属元素を少なくとも1種以上含んだ合金などが挙げられる。銀合金としては、より好ましくは、銅を含む銀合金(Ag−Cu系合金)、ビスマスを含む銀合金(Ag−Bi系合金)、チタンを含む銀合金(Ag−Ti系合金)である。これらの合金は、銀の拡散抑制効果が大きい、コスト的に有利であるなどの利点がある。銀含有層16における銅、ビスマス、チタン等の副元素割合は、ICP分析法を用いて測定することができる。
【0032】
銅を含む銀合金を用いる場合、銅の含有量は、添加効果を得る観点から、好ましくは1原子%以上、より好ましくは2原子%以上、さらに好ましくは3原子%以上である。一方、高透明性を確保しやすくなる、スパッタターゲットが作製しやすい等の製造性などの観点から、好ましくは20原子%以下、より好ましくは10原子%以下、さらに好ましくは5原子%以下である。
【0033】
ビスマスを含む銀合金を用いる場合、ビスマスの含有量は、添加効果を得る観点から、好ましくは0.01原子%以上、より好ましくは0.05原子%以上、さらに好ましくは0.1原子%以上である。一方、スパッタターゲットが作製しやすい等の製造性などの観点から、好ましくは5原子%以下、より好ましくは2原子%以下、さらに好ましくは1原子%以下である。
【0034】
チタンを含む銀合金を用いる場合、チタンの含有量は、添加効果を得る観点から、好ましくは0.01原子%以上、より好ましくは0.05原子%以上、さらに好ましくは0.1原子%以上である。一方、膜にした場合、完全な固溶体が得られやすくなるなどの観点から、好ましくは2原子%以下、より好ましくは1.75原子%以下、さらに好ましくは1.5原子%以下である。
【0035】
銅、ビスマスあるいはチタンを含む銀合金を用いる場合、銀、銅、ビスマス、チタン以外にも、例えば、銀の凝集・拡散抑制効果に悪影響を与えない範囲内であれば、他の元素、不可避不純物を1種または2種以上含有していても良い。
【0036】
他の元素としては、Mg、Pd、Pt、Au、Zn、Al、Ga、In、Sn、Sb、Li、Cd、Hg、AsなどのAgに固溶可能な元素;Be、Ru、Rh、Os、Ir、Bi、Ge、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Re、Fe、Co、Ni、Si、Tl、Pbなど、Ag−Cu系合金中に単相として析出可能な元素;Y、La、Ce、Nd、Sm、Gd、Tb、Dy、Ti、Zr、Hf、Na、Ca、Sr、Ba、Sc、Pr、Eu、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、S、Se、TeなどのAgとの金属間化合物を析出可能な元素などが挙げられる。
【0037】
銀含有層16の膜厚は、安定性、熱線反射性などの観点から、好ましくは3nm以上、より好ましくは5nm以上、さらに好ましくは7nm以上である。一方、光透過性、経済性などの観点から、好ましくは30nm以下、より好ましくは20nm以下、さらに好ましくは15nm以下である。
【0038】
銀含有層16は、物理的気相成長法(PVD)、化学的気相成長法(CVD)などの気相法を用いて形成することができる。物理的気相成長法(PVD)としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、MBE法、レーザーアブレーションなどが挙げられる。化学的気相成長法(CVD)としては、熱CVD法、プラズマCVD法などが挙げられる。これらのうちでは、緻密な膜が得られる、膜厚制御が比較的容易であるなどの観点から、スパッタリング法が特に好ましい。スパッタリング法としては、DCマグネトロンスパッタリング法、RFマグネトロンスパッタリング法などが挙げられる。
【0039】
銀含有層16は、ポリオレフィンフィルム12の面上に直接形成するとポリオレフィンフィルム12との密着性に劣る。このため、ポリオレフィンフィルム12と銀含有層16の間に、金属含有層(銀含有層を除く)14を設けている。
【0040】
金属含有層(銀含有層を除く)14は、銀含有層16と同様、物理的気相成長法(PVD)、化学的気相成長法(CVD)などの気相法を用いて形成することができる。これにより、緻密な膜を形成できる、数nm〜数十nm程度の薄膜を均一な膜厚で形成できる。物理的気相成長法(PVD)としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、MBE法、レーザーアブレーションなどが挙げられる。化学的気相成長法(CVD)としては、熱CVD法、プラズマCVD法などが挙げられる。これらのうちでは、緻密な膜が得られる、膜厚制御が比較的容易であるなどの観点から、スパッタリング法が特に好ましい。スパッタリング法としては、DCマグネトロンスパッタリング法、RFマグネトロンスパッタリング法などが挙げられる。
【0041】
金属含有層(銀含有層を除く)14は、上述した気相法を利用し、ポリオレフィンフィルム12の一方面上に金属薄膜(銀薄膜および銀合金薄膜を除く)を成膜することにより得られる。金属薄膜は、雰囲気中の酸素やポリオレフィンフィルム12の表面の水酸基あるいは酸素基により部分的に酸化される。形成された金属薄膜は、後述する後酸化処理により酸化されて金属酸化物薄膜に変化していてもよい。この意味において、金属含有層(銀含有層を除く)14は、金属または金属酸化物を含有する層である。金属含有層(銀含有層を除く)14は、金属からなる層、金属および金属酸化物からなる層、金属酸化物からなる層のいずれであってもよい。後酸化処理は、例えば、大気中、高酸素雰囲気中、高湿度雰囲気中など酸素や水分の存在する雰囲気において光透過性積層フィルム10に対し加熱処理などを行うことにより実施することができる。
【0042】
金属含有層(銀含有層を除く)14の金属がポリオレフィンフィルム12の表面の水酸基あるいは酸素基と反応すると、金属含有層(銀含有層を除く)14のポリオレフィンフィルム12側の表面には、金属含有層(銀含有層を除く)14の金属の酸化物が形成され、ポリオレフィンフィルム12と金属含有層(銀含有層を除く)14の層間密着性がより高まる。この観点から、金属含有層(銀含有層を除く)14のポリオレフィンフィルム12側の表面には、金属含有層(銀含有層を除く)14の金属の酸化物が存在することが好ましい。
【0043】
金属含有層(銀含有層を除く)14が金属酸化物を含む層である場合、金属と酸素の原子モル比(M/O)としては、ポリオレフィンフィルム12と金属含有層(銀含有層を除く)14の層間密着性、光透過性などの観点から、好ましくは1.0/4.0以上、より好ましくは1.0/3.8以上、さらに好ましくは1.0/3.5以上、さらにより好ましくは1.0/3.0以上、最も好ましくは1.0/2.8以上である。また、可視光透過性などの観点から、好ましくは1.0/0.5以下、より好ましくは1.0/0.7以下、さらに好ましくは1.0/1.0以下、さらにより好ましくは1.0/1.2以下、最も好ましくは1.0/1.5以下である。
【0044】
金属含有層(銀含有層を除く)14における金属と酸素の原子モル比(M/O)は、当該薄膜の組成から算出することができる。当該薄膜の組成分析方法としては、極めて薄い薄膜の組成を比較的正確に分析することが可能な観点から、エネルギー分散型蛍光X線分析(EDX)を好適に用いることができる。
【0045】
金属含有層(銀含有層を除く)14は、ポリオレフィンフィルム12と銀含有層16の間の密着性を向上する。また、銀含有層16の金属がポリオレフィンフィルム12やハードコート層20などの他の層に移行するのを抑える。密着性を向上する観点から、金属含有層(銀含有層を除く)14の金属は、ポリオレフィンフィルム12の表面の水酸基あるいは酸素基と反応しやすい金属が好ましい。このような金属は、不動態を形成する金属であり、具体的には、Si、Ti、Zr、Al、Cr、Ni、Feなどが挙げられる。これらのうちでは、水酸基や酸素基との反応性、成膜加工性などの観点から、Si、Ti、Zrがより好ましい。
【0046】
金属含有層(銀含有層を除く)14の厚みは、ポリオレフィンフィルム12と金属含有層(銀含有層を除く)14の層間密着性、光透過性などの観点から、好ましくは1nm以上、より好ましくは1.5nm以上、さらに好ましくは2nm以上である。また、可視光透過性、経済性などの観点から、好ましくは15nm以下、より好ましくは10nm以下、さらに好ましくは8nm以下である。
【0047】
粘着剤層18は、光透過性積層フィルム10を紙製品や布製品などの被着体に貼り着けるためのものである。被着体に貼り着ける前においては、その粘着面を保護するため、粘着面はカバーフィルムで覆われていればよい。光透過性積層フィルム10の貼り直しなどに対応するため、粘着剤であることが好ましい。粘着剤は、表面の粘着性を利用して圧力をかけて接着するものであり、感圧接着剤として、固化により剥離抵抗力を発揮する接着剤とは区別される。粘着剤としては、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ゴム系粘着剤などが挙げられる。粘着剤層18は、粘着剤組成物を塗工することにより形成することができる。
【0048】
粘着剤層18の厚みは、特に限定されるものではないが、被着体への貼り付けし易さなどの観点から、100μm以下であることが好ましい。より好ましくは50μm以下である。また、柔軟性に優れる部材に適用しやすい、被着体の変形に対する追従性に優れるなどの観点から、1.5μm以上であることが好ましい。より好ましくは5μm以上である。
【0049】
ハードコート層20は、光透過性積層フィルム10を紙製品や布製品などの被着体に貼り着けたときに表面に現れる層であり、光透過性積層フィルム10の表面に傷が付くのを抑える。特に、基材であるポリオレフィンフィルム12が柔軟で比較的柔らかいものであるため、これに傷が付くのを抑える。
【0050】
ハードコート層20は、有機無機ハイブリッド材料で構成される。有機無機ハイブリッド材料は、有機材料(有機成分の原料)と無機材料(無機成分の原料)により形成され、有機材料と無機材料とがナノレベルあるいは分子レベルで複合化している。有機無機ハイブリッド材料は、例えば、有機材料中に分散させた無機材料と有機材料とが重合反応などの反応を起こし、化学結合を介して無機成分が有機成分中に高分散した網目状の架橋構造を有するものである。
【0051】
ハードコート層20が有機無機ハイブリッド材料で構成されたことにより、ポリオレフィンフィルム12とハードコート層20の層間密着性が良好となる。これは、ハードコート層20を形成する材料に無機成分を添加したことでハードコート層20の硬化収縮が抑えられたためと推察される。つまり、ハードコート層20の硬化収縮が抑えられることで積層体(光透過性積層フィルム10)の歪みが小さくなり、ポリオレフィンフィルム12とハードコート層20の層間で剥離させる応力が小さくなるためと推察される。
【0052】
また、ハードコート層20の硬化収縮は、積層体(光透過性積層フィルム10)の歪みに影響することから、ハードコート層20の硬化収縮は、積層体(光透過性積層フィルム10)に含まれるポリオレフィンフィルム12と金属含有層(銀含有層を除く)14の層間密着性にも影響を与える。つまり、ハードコート層20の硬化収縮が抑えられることで積層体(光透過性積層フィルム10)の歪みが小さくなり、その結果、ポリオレフィンフィルム12と金属含有層(銀含有層を除く)14の層間で剥離させる応力が小さくなる。したがって、ハードコート層20が有機無機ハイブリッド材料で構成されたことにより、ポリオレフィンフィルム12と金属含有層(銀含有層を除く)14の層間密着性が悪化するのを抑え、良好にする。
【0053】
有機無機ハイブリッド材料を形成する有機成分の原料としては、硬化性樹脂などが挙げられる。硬化性樹脂としては、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂などが挙げられる。これらは単独で用いられてもよいし、2種以上組み合わされてもよい。また、無機成分の原料としては、金属化合物などが挙げられる。金属化合物としては、Si化合物、Ti化合物、Zr化合物などが挙げられる。これらは単独で用いられてもよいし、2種以上組み合わされてもよい。金属化合物は、Si、Ti、Zrなどの無機成分を含有する化合物で、有機成分の原料と重合反応などの反応を起こすなどにより複合化できるものからなる。金属化合物としては、より具体的には、有機金属化合物などが挙げられる。有機金属化合物としては、シランカップリング剤、金属アルコキシド、金属アシレート、金属キレート、シラザンなどが挙げられる。
【0054】
有機無機ハイブリッド材料を形成する無機成分の原料の配合比率は、10質量%以上が好ましい。より好ましくは40質量%以上である。無機成分の原料の配合比率が10質量%以上で、ポリオレフィンフィルム12とハードコート層20の層間密着性が格段に向上する。また、無機成分の原料の配合比率が40質量%以上で、ポリオレフィンフィルム12とハードコート層20の層間密着性が特に良好となる。ポリオレフィンフィルム12とハードコート層20の層間密着性は、JIS K5600−5−6に準拠する碁盤目試験により評価することができる。
【0055】
また、有機無機ハイブリッド材料を形成する無機成分の原料の配合比率は、70質量%以下が好ましい。より好ましくは60質量%以下である。無機成分の原料の配合比率が70質量%以下であると、塗液の安定性に優れ、ハードコート層20の光透過性の低下が抑えられる。無機成分の原料の配合比率が60質量%以下であると、その効果にさらに優れる。
【0056】
さらに、有機無機ハイブリッド材料からなるハードコート層20に含まれる金属成分の含有比率は、5.9質量%以上が好ましい。より好ましくは23.7質量%以上である。金属成分の含有比率が5.9質量%以上であるとポリオレフィンフィルム12とハードコート層20の層間密着性が格段に向上する。また、有機無機ハイブリッド材料からなるハードコート層20に含まれる金属成分の含有比率は、41.4質量%以下が好ましい。より好ましくは35.5質量%以下である。金属成分の含有比率が41.4質量%以下であると、塗液の安定性に優れ、ハードコート層20の光透過性の低下が抑えられる。
【0057】
有機無機ハイブリッド材料からなるハードコート層に含まれる金属成分の含有量は、加熱残分量分析、X線光電子分光分析(XPS)などを用いて調べることができる。
【0058】
ハードコート層20の厚みは、断熱性に優れる(熱貫流率を低く抑える)などの観点から、2.0μm以下であることが好ましい。より好ましくは1.6μm以下、さらに好ましくは1.0μm以下である。また、耐擦傷性に優れるなどの観点から、0.4μm以上であることが好ましい。より好ましくは0.6μm以上、さらに好ましくは0.8μm以上である。
【0059】
光透過性積層フィルム10において、ポリオレフィンフィルム12と金属含有層(銀含有層を除く)14との間の密着力は50mN/25mm以上とする。この層間密着力は、JIS A5759に準拠して測定される密着力である。これにより、ポリオレフィンフィルム12と金属含有層(銀含有層を除く)14との間の密着力は良好である。
【0060】
この層間密着力を特定値以上とするには、例えば、ポリオレフィンフィルム12の金属含有層(銀含有層を除く)14が形成される表面に表面処理を行うか易接着層を形成するなどによりその表面に水酸基や酸素基などの官能基を形成し、その官能基を有する表面に金属含有層(銀含有層を除く)14の金属の薄膜をスパッタ等により形成するとよい。形成する金属薄膜の金属としては、水酸基や酸素基などの官能基と容易に反応して金属酸化物となりやすい金属(例えば不動態を形成する金属、Si、Ti、Zrなど)がよい。そして、金属薄膜を形成するポリオレフィンフィルム12の表面の酸素の原子組成比は1atm%以上であるとよい。このような構成とすることにより、ポリオレフィンフィルム12の表面の水酸基や酸素基などの官能基と金属薄膜の金属とが接触界面で結合を形成し、ポリオレフィンフィルム12と金属含有層(銀含有層を除く)14の層間密着性が良好となる。ポリオレフィンフィルム12と金属含有層(銀含有層を除く)14の層間密着性は、JIS K5600−5−6に準拠する碁盤目試験により評価することができる。
【0061】
そして、金属含有層(銀含有層を除く)14の表面に銀含有層16をスパッタ等で形成することにより、金属含有層(銀含有層を除く)14と銀含有層16の層間密着性は良好となり、銀含有層16をポリオレフィンフィルム12の面上に直接形成するよりも層間密着性が良好となる。
【0062】
光透過性積層フィルム10は、例えば、以下のようにして製造することができる。所定の薄膜形成手法によってポリオレフィンフィルム12の一方面上に金属含有層(銀含有層を除く)14および銀含有層16を順次積み上げて形成する。その後、必要に応じて、後酸化等の熱処理を行う。その後、銀含有層16の表面に、粘着剤組成物を塗工して粘着剤層18を形成する。そして、ポリオレフィンフィルム12の他方面上には有機無機ハイブリッド材料を形成する原料を塗工して塗工膜を形成するとともに、形成した塗工膜に対して硬化処理を行い、有機無機ハイブリッド材料よりなるハードコート層20を形成する。以上により光透過性積層フィルム10を得ることができる。
【0063】
以上の構成の光透過性積層フィルム10によれば、基材フィルムの柔軟性が確保されたことにより、紙製品や布製品などの柔軟性に優れる部材に適用することができる。そして、銀含有層16により良好な断熱性を発揮することができ、有機無機ハイブリッド材料よりなるハードコート層20により耐擦傷性を満足することができ、特定の層構成としたことにより層間密着性に優れる。
【0064】
このような特性を有する光透過性積層フィルム10は、紙製品や布製品などの柔軟性に優れる部材に適用することができる。柔軟性に優れる部材としては、壁紙、ロールスクリーン、カーテンなどが挙げられる。また、ビル・住宅等の建築物の窓ガラスや自動車等の車両の窓ガラスなどにも適用することができる。
【0065】
なお、光透過性積層フィルム10では、ハードコート層20はポリオレフィンフィルム12に接して設けられているが、密着性が確保されるのであれば、ポリオレフィンフィルム12とハードコート層20の間に層が1層以上設けられていてもよい。このような層としては、上述する易接着層や、接着剤層、金属含有層などが挙げられる。
【0066】
また、光透過性積層フィルム10では、ポリオレフィンフィルム12の一方面上には金属含有層(銀含有層を除く)14と銀含有層16と粘着剤層18とをこの順で有しているものが示されているが、本発明においては、銀含有層16と粘着剤層18との間に他の金属含有層(銀含有層を除く)を形成してもよい。
【0067】
図2には、他の実施形態に係る光透過性積層フィルム30を示している。図2に示すように、光透過性積層フィルム30は、ポリオレフィンフィルム12の一方面上に、金属含有層(銀含有層を除く)14と、銀含有層16と、他の金属含有層(銀含有層を除く)22と、粘着剤層18と、をこの順で有し、ポリオレフィンフィルム12の他方面上に、有機無機ハイブリッド材料よりなるハードコート層20を有している。他の金属含有層(銀含有層を除く)22は、金属含有層(銀含有層を除く)14と構成を同じくすればよい。他の金属含有層(銀含有層を除く)22は、銀含有層16の金属が粘着剤層18などに移行するのを抑えることができる。
【実施例】
【0068】
以下、実施例および比較例を用いて本発明を詳細に説明する。
【0069】
(実施例1)
ポリオレフィンフィルムとして東洋紡社製OPPフィルム(P2111、膜厚20μm、両面コロナ処理)を用いた。このポリオレフィンフィルムの一方面上に、DCマグネトロンスパッタ装置を用いてスパッタリングにより金属Ti薄膜を成膜した。次いで、この金属Ti薄膜上に、スパッタリングによりAg−Cu合金薄膜を成膜した。また、ポリオレフィンフィルムの他方面上に、UV硬化型の有機無機ハイブリッド材(大日精化工業社製TGシリーズ)を塗布し、UV硬化させてハードコート層を形成した。以上により、実施例1の光透過性積層フィルムを作製した。
【0070】
(実施例2)
さらに、Ag−Cu合金薄膜上に、スパッタリングにより金属Ti薄膜を成膜した以外は実施例1と同様にして、実施例2の光透過性積層フィルムを作製した。
【0071】
(実施例3〜7)
UV硬化型の有機無機ハイブリッド材の無機材料比率を変えた以外は実施例2と同様にして、実施例3〜7の光透過性積層フィルムを作製した。実施例3〜7の光透過性積層フィルムは、実施例2と同様、Ag−Cu合金薄膜上にスパッタリングにより金属Ti薄膜を成膜している。
【0072】
(実施例8)
東洋紡社製OPPフィルム(P2111、20μm、両面コロナ処理)に代えて王子エフテックス社製OPPフィルム(EM−201、膜厚50μm、片面コロナ処理)を用いた。予めコロナ処理されている面を、ハードコート層を形成する他方面とし、コロナ処理されていない面を、金属Ti薄膜を形成する一方面とした。そして、金属Ti薄膜を形成する前に、その一方面にコロナ処理を施し、所定の酸素比率とした後、そのコロナ処理面に金属Ti薄膜を形成した。これ以外は実施例2と同様にして、実施例8の光透過性積層フィルムを作製した。
【0073】
(実施例9〜10)
東洋紡社製OPPフィルム(P2111、20μm、両面コロナ処理)に代えて東レ社製OPPフィルム(Y562、膜厚50μm、片面コロナ処理)を用いた。実施例8と同様、予めコロナ処理されている面を、ハードコート層を形成する他方面とし、コロナ処理されていない面を、金属Ti薄膜を形成する一方面とした。そして、金属Ti薄膜を形成する前に、その一方面にプラズマ処理を施し、所定の酸素比率とした後、そのプラズマ処理面に金属Ti薄膜を形成した。これ以外は実施例2と同様にして、実施例9〜10の光透過性積層フィルムを作製した。
【0074】
(実施例11)
ポリオレフィンフィルムの一方面上に金属Ti薄膜/Ag−Cu合金薄膜/金属Ti薄膜を順次積層して得られた多層薄膜付フィルムを、加熱炉内にて、大気中、40℃で300時間加熱処理することにより、金属Ti薄膜を熱酸化させ、チタン酸化物薄膜とした。これ以外は実施例2と同様にして、実施例11の光透過性積層フィルムを作製した。
【0075】
(比較例1)
UV硬化型の有機無機ハイブリッド材に代えて、UV硬化型のアクリル樹脂(DIC(株)製、「UVTクリア−TEF046」)を用いてハードコート層を形成した以外は実施例2と同様にして、比較例1に係る光透過性積層フィルムを作製した。
【0076】
(比較例2)
東洋紡社製OPPフィルム(P2111、20μm、両面コロナ処理)に代えて王子エフテックス社製OPPフィルム(EM−201、膜厚50μm、片面コロナ処理)を用いた。予めコロナ処理されている面を、ハードコート層を形成する他方面とし、コロナ処理されていない面を、金属Ti薄膜を形成する一方面とした。そして、金属Ti薄膜を形成する前に、その一方面にコロナ処理を施し、所定の酸素比率とした後、そのコロナ処理面に金属Ti薄膜を形成した。その酸素比率を変えた以外は実施例8と同様にして、比較例2の光透過性積層フィルムを作製した。
【0077】
(ポリオレフィンフィルム表面の酸素の原子組成比の測定)
XPS測定機器(アルバック・ファイ製「PHI5000 VersaProbeII」)を用いて測定した。
【0078】
(Ti/O比の測定)
金属Ti薄膜を熱酸化させて形成したチタン酸化物薄膜については、EDX分析を行い、Ti/O比を次のようにして求めた。すなわち、薄膜層付きフィルムをミクロトーム(LKB(株)製、「ウルトロームV2088」)により切り出し、分析対象となるチタン酸化物薄膜を含む薄膜層の断面方向の厚みが100nm以下の試験片を作製した。作製した試験片の断面を、電界放出型電子顕微鏡(HRTEM)(日本電子(株)製、「JEM2001F」)により確認した。そして、EDX装置(分解能133eV以下)(日本電子(株)製、「JED−2300T」)を用い、この装置の電子銃から電子線を放出させ、分析対象となるチタン酸化物薄膜の膜厚中央部近傍に入射させ、発生した特性X線を検出して分析することにより、チタン酸化物薄膜の構成元素分析を行った。
【0079】
(Cu含有量の測定)
Ag−Cu合金薄膜中の副元素(Cu)含有量は、次のようにして求めた。すなわち、各成膜条件において、別途、ガラス基板上にAg−Cu合金薄膜を形成した試験片を作製し、この試験片を6%HNO溶液に浸漬し、20分間超音波による溶出を行った後、得られた試料液を用いて、ICP分析法の濃縮法により測定した。
【0080】
(薄膜の膜厚の測定)
各薄膜の膜厚は、上記電界放出型電子顕微鏡(HRTEM)(日本電子(株)製、「JEM2001F」)による試験片の断面観察から測定した。
【0081】
作製した各光透過性積層フィルムの特性評価を行った。具体的には、ポリオレフィンフィルム−金属Ti薄膜間の密着力(剥離強度)、耐擦傷性、ポリオレフィンフィルム−金属Ti薄膜間の密着性、ポリオレフィンフィルム−ハードコート層間の密着性、断熱性(熱貫流率)、可視光透過率を評価した。
【0082】
(ポリオレフィンフィルム−金属Ti薄膜間の密着力)
ポリオレフィンフィルムの一方面上に金属Ti薄膜を、他方面上にハードコート層を形成した試験片を用いた。その金属Ti薄膜の面にプロテクトフィルム(東洋包材製「PT♯25(M)」)の粘着面を貼り合わせ、卓上引張試験機(ミネベバ製「AGS−1kNG」)を用いてプロテクトフィルムの粘着面と金属Ti薄膜との界面で180°ピール試験(JIS A5759に準拠、引張速度300mm/分)を行い、剥離力を測定してこれを層間の密着力とした。
【0083】
(耐擦傷性)
スチールウール(日本スチール社製「Bon Star No.0000」)を用い、光透過性積層フィルムのハードコート層の表面に一定の荷重(20g/cm)をかけながらスチールウールを10往復擦り付けた。この際、目視にて傷が全く観測されなかった場合を良好「○」、傷が観測された場合を不良「×」とした。
【0084】
(ポリオレフィンフィルム−金属Ti薄膜間の密着性)
JIS K5600−5−6に準拠して測定した。金属Ti薄膜を形成したOPPフィルムの面に対して垂直になるように刃を当て、2mm間隔で6本の切り込みを入れた後、90度方向を変えて先の切り込みと直交する6本の切り込みを2mm間隔で入れて、25マスを作製した。その後、フィルムの格子にカットした部分にテープを貼り、テープ上をこすった。その後、テープを60度に近い角度で確実に引き剥がした上で、残マス数を目視にて確認した。残マス数が20以上であった場合を密着性が良好「○」、残マス数が25であった場合を密着性が特に良好「◎」、残マス数が20未満であった場合を密着性が不良「×」とした。
【0085】
(ポリオレフィンフィルム−ハードコート層間の密着性)
JIS K5600−5−6に準拠して測定した。ハードコート層を形成したOPPフィルムの面に対して垂直になるように刃を当て、2mm間隔で6本の切り込みを入れた後、90度方向を変えて先の切り込みと直交する6本の切り込みを2mm間隔で入れて、25マスを作製した。その後、フィルムの格子にカットした部分にテープを貼り、テープ上をこすった。その後、テープを60度に近い角度で確実に引き剥がした上で、残マス数を目視にて確認した。残マス数が20以上であった場合を密着性が良好「○」、残マス数が25であった場合を密着性が特に良好「◎」、残マス数が20未満であった場合を密着性が不良「×」とした。
【0086】
(熱貫流率)
作製した光透過性積層フィルムのAg−Cu合金薄膜あるいはこの上の金属Ti薄膜の面上に厚さ25μmのアクリル粘着シート(積水化学工業社製「5402」)を貼り付け、この粘着シートの粘着面を板ガラスの片面に貼り付けた。ハードコート層側から測定光を入射し、 JIS R3106に準拠し、ガラス面およびフィルム面の垂直放射率を求め、JIS A5759に準拠して熱貫流率(W/mK)を求めた。
【0087】
(可視光透過率)
JIS R3212に準拠して、分光光度計(島津製作所(株)製、「SolidSpec−3700」)を用いて、波長300〜1000nmの透過スペクトルを測定し、可視光透過率を計算することにより求めた。可視光透過率が大きいほど、透明性に優れる。
【0088】
表1、2に、各光透過性積層フィルムの層構成および評価結果を示す。
【0089】
【表1】
【0090】
【表2】
【0091】
比較例1では、ハードコート層の材料が硬化収縮の大きいUV硬化型のアクリル樹脂であるため、ポリオレフィンフィルム−ハードコート層間の密着性が悪い。また、ポリオレフィンフィルム−金属Ti薄膜間の密着性も悪い。これは、ハードコート層の影響であると推察される。そして、比較例2では、ポリオレフィンフィルム−金属Ti薄膜間の密着力が50mN/25mm未満であるため、ポリオレフィンフィルム−金属Ti薄膜間の密着性が悪い。
【0092】
これに対し、実施例では、ポリオレフィンフィルムの一方面上に、金属含有層(銀含有層を除く)と、銀含有層と、をこの順で有し、ポリオレフィンフィルムの他方面上に、有機無機ハイブリッド材料からなるハードコート層を有し、ポリオレフィンフィルムと金属含有層(銀含有層を除く)との間の密着力が50mN/25mm以上であることから、良好な断熱性、耐擦傷性、層間密着性を有することがわかる。
【0093】
また、実施例から、無機材料比率が40〜70質量%の範囲内にあると、ポリオレフィンフィルム−ハードコート層間の密着性が特に優れることがわかる。さらに、実施例から、金属含有層(銀含有層を除く)が金属酸化物層であると、ポリオレフィンフィルムと金属含有層(銀含有層を除く)との間の密着力および光透過性が向上することがわかる。
【0094】
以上、本発明の実施形態・実施例について説明したが、本発明は上記実施形態・実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改変が可能である。
【符号の説明】
【0095】
10 光透過性積層フィルム
12 ポリオレフィンフィルム
14 金属含有層(銀含有層を除く)
16 銀含有層
18 粘着剤層
20 ハードコート層
22 金属含有層(銀含有層を除く)
図1
図2