(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6198625
(24)【登録日】2017年9月1日
(45)【発行日】2017年9月20日
(54)【発明の名称】PCVバルブ加温装置
(51)【国際特許分類】
F01M 13/00 20060101AFI20170911BHJP
【FI】
F01M13/00 J
F01M13/00 L
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-23354(P2014-23354)
(22)【出願日】2014年2月10日
(65)【公開番号】特開2015-151864(P2015-151864A)
(43)【公開日】2015年8月24日
【審査請求日】2016年8月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】308013436
【氏名又は名称】小島プレス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083091
【弁理士】
【氏名又は名称】田渕 経雄
(74)【代理人】
【識別番号】100141416
【弁理士】
【氏名又は名称】田渕 智雄
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 直広
【審査官】
川口 真一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−251497(JP,A)
【文献】
特開2009−097386(JP,A)
【文献】
特開平11−081970(JP,A)
【文献】
特開2003−049625(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0132158(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01M 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
PCVバルブと、パイプと、を有し、
前記PCVバルブは、該PCVバルブと接触する金属製のブッシュを介して、樹脂製のオイルセパレータに装着されており、
前記パイプは、エンジン冷却水が流れる内部通路を備えており、
前記ブッシュは、前記パイプに沿って前記パイプの周方向に延びる延び部を備えており、該延び部により前記パイプと面接触しており、
前記パイプは、前記ブッシュの外周面に沿って該ブッシュの周方向に延びており前記ブッシュの外周面と面接触するパイプ側延び部を有しており、
前記PCVバルブは前記ブッシュの中に入り込んでおり外周面で前記ブッシュの内周面と面接触しており、
前記パイプ側延び部は、前記PCVバルブの外周面と前記ブッシュの内周面との面接触部分の外径側にある前記ブッシュの外周面部分と、面接触している、PCVバルブ加温装置。
【請求項2】
前記ブッシュと前記パイプとは互いに溶接されている、請求項1記載のPCVバルブ加温装置。
【請求項3】
前記ブッシュと前記パイプとは、樹脂カバーで覆われている、請求項1または請求項2記載のPCVバルブ加温装置。
【請求項4】
前記樹脂カバーは、前記オイルセパレータに固定されている、請求項3記載のPCVバルブ加温装置。
【請求項5】
前記ブッシュは、前記オイルセパレータの中に入り込んでいる、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のPCVバルブ加温装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂製オイルセパレータに装着されるPCVバルブを加温する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ブローバイガスなるものが、自動車用エンジンにおけるシリンダとピストンとの間隙よりクランクケースに漏れ出したガスである。このブローバイガスを吸気通路に還元することにより、燃費を向上できる。また、クランクケース内圧を負圧にすることができ、ピストンのポンピングロスを軽減できる。このブローバイガスにはミスト状のエンジンオイルが含まれているため、オイルセパレータにてブローバイガスからオイルを分離している。オイルが分離されたブローバイガスは、PCVバルブにより流量調整されて吸気通路に還元される。
【0003】
軽量化や低コスト化の点でオイルセパレータは樹脂製とされている。そのため、エンジンの熱がオイルセパレータを介してPCVバルブに伝わりにくくなっている。その結果、低温時にブローバイガス中の水分が凍り、PCV流路が閉塞するおそれがある。
【0004】
特開2009−150351号公報は、エンジンの熱が効果的にPCVバルブに伝わるようにするために、PCVバルブが取付けられるオイルセパレータ部分を熱伝導率の高い金属製とする技術を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−150351号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、エンジンからの受熱・伝熱ではなく、PCVバルブをエンジン冷却水(温水)で温めることができる、PCVバルブ加温装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成する本発明はつぎの通りである。
(1) PCVバルブと、パイプと、を有し、
前記PCVバルブは、該PCVバルブと接触する金属製のブッシュを介して、樹脂製のオイルセパレータに装着されており、
前記パイプは、エンジン冷却水が流れる内部通路を備えており、
前記ブッシュは、前記パイプに沿って前記パイプの周方向に延びる延び部を備えており、該延び部により前記パイプと面接触して
おり、
前記パイプは、前記ブッシュの外周面に沿って該ブッシュの周方向に延びており前記ブッシュの外周面と面接触するパイプ側延び部を有しており、
前記PCVバルブは前記ブッシュの中に入り込んでおり外周面で前記ブッシュの内周面と面接触しており、
前記パイプ側延び部は、前記PCVバルブの外周面と前記ブッシュの内周面との面接触部分の外径側にある前記ブッシュの外周面部分と、面接触している、PCVバルブ加温装置。
(2) 前記ブッシュと前記パイプとは互いに溶接されている、(1)記載のPCVバルブ加温装置。
(3) 前記ブッシュと前記パイプとは、樹脂カバーで覆われている、(1)または(2)記載のPCVバルブ加温装置。
(4) 前記樹脂カバーは、前記オイルセパレータに固定されている、(3)記載のPCVバルブ加温装置。
(5) 前記ブッシュは、前記オイルセパレータの中に入り込んでいる、(1)〜(4)のいずれか1つに記載のPCVバルブ加温装置。
【発明の効果】
【0008】
上記(1)
〜(5)のPCVバルブ加温装置によれば、PCVバルブが、ブッシュと接触しており、ブッシュが、パイプに沿って前記パイプの周方向に延びる延び部を備えており該延び部によりパイプと面接触しているため、つぎの効果を得ることができる。
エンジン冷却水によりパイプが温められると、パイプと面接触しているブッシュが温められ、ブッシュと接触しているPCVバルブが温められる。そのため、PCVバルブをエンジン冷却水で温めることができる。
また、ブッシュがパイプと面接触しているため、ブッシュがパイプと面接触していない場合に比べて効果的にブッシュを温めることができる。
【0009】
上記(2)のPCVバルブ加温装置によれば、ブッシュとパイプとが互いに溶接されているため、パイプからブッシュへの熱伝達を効率良く行うことができる。
【0010】
上記(3)のPCVバルブ加温装置によれば、ブッシュとパイプとが樹脂カバーで覆われているため、ブッシュとパイプとが樹脂カバーで覆われていない場合に比べて、ブッシュとパイプからの放熱を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明実施例のPCVバルブ加温装置の斜視図である。
【
図2】本発明実施例のPCVバルブ加温装置の、PCVバルブとその近傍の拡大平面図である。
【
図3】本発明実施例のPCVバルブ加温装置の、PCVバルブとその近傍の拡大側面図である。
【
図5】本発明実施例のPCVバルブ加温装置におけるPCVバルブが装着されるオイルセパレータの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明実施例のPCVバルブ加温装置を、図面を参照して、説明する。
本発明実施例のPCVバルブ加温装置10は、
図1に示すように、樹脂製オイルセパレータ1に装着されるPCVバルブ20を加温する装置である。
【0013】
オイルセパレータ1は、自動車用エンジン(図示略)のクランクケース(図示略)に発生するブローバイガス(オイルミスト混合ガス)からオイルを分離させるために設けられる。分離されたオイルは、クランクケースに戻される。オイルセパレータ1は、アッパ部品1aとロア部品1bを備えている。アッパ部品1aとロア部品1bとは振動溶着、接着等にて互いに固定されている。
【0014】
オイルセパレータ1は、
図5に示すように、内部スペース2と、内部スペース2にブローバイガスを導入するガス導入部3と、ブローバイガスからオイルを分離するオイル分離部4と、オイル分離部4により分離されたオイルを外部に排出するドレイン部5と、オイル分離部4によりオイルが分離されたブローバイガスを内部スペース2から排出するガス排出部6と、を備える。
【0015】
ガス導入部3とドレイン部5とガス排出部6は、1個ずつ設けられている。ガス導入部3とドレイン部5は、管状であり、ロア部品1bに設けられている。ガス排出部6は、管状であり、アッパ部品1aから上方に延びて設けられている。
図4に示すように、ガス排出部6のガス流れ方向下流側端部には、ガス排出部6の径方向外側に延びるフランジ部6aが設けられている。
【0016】
オイル分離部4は、
図5に示すような慣性衝突式であってもよく、サイクロン式(図示略)であってもよく、ラビリンス式(図示略)であってもよい。なお、慣性衝突式は、ガス導入部3から内部スペース2に流れてきたブローバイガスが衝突する衝突板4aを設け、衝突板4aにブローバーガス中のオイルを付着させてブローバイガスからオイルを分離する方式である。また、サイクロン式は、ガス導入部3から内部スペース2に流れてきたブローバイガスを旋回運動させ、旋回運動による遠心力によりブローバイガスからオイルを分離する方式である。また、ラビリンス式は、内部スペース2を部分的に仕切ることで
ブローバイガスの内部スペース2での流路長を長くしてオイルが自重で落下することを促すとともに、内部スペース2を部分的に仕切ることでブローバイガスの流速を高めてセパレータ1の壁面にオイルが衝突することを促す方式である。
【0017】
PCVバルブ加温装置10は、
図1に示すように、PCVバルブ20と、パイプ30と、を有する。
【0018】
PCVバルブ20は、内部スペース2からオイルセパレータ1の外部に排出されるガス量を調整するために設けられる。PCVバルブ20は、
図4に示すように、可動バルブ21と、スプリング22と、バルブボディ23を備える。可動バルブ21がバルブボディ23に対して動くことでバルブボディ23の内部流路23aの流路断面積が変わるため、PCVバルブ20はPCVバルブ20を流れるブローバイガスの流量を調整できる。
【0019】
バルブボディ23は、金属製であり、金属は、たとえば、鉄、鋼,銅、アルミニウムである。バルブボディ23は、外周面23bを備えている。外周面23bは、小径部23b1と、大径部23b3と、第2の大径部23b5と、を備える。大径部23b3は、小径部23b1よりガス流れ方向下流側にある。大径部23b3は、小径部23b1と段差部23b2で連なっており、小径部23b1より大径である。第2の大径部23b5は、大径部23b3よりガス流れ方向下流側にある。第2の大径部23b5は、大径部23b3と第2の段差部23b4で連なっており、大径部23b3より大径である。
【0020】
バルブボディ23は、バルブボディ23と接触するブッシュ40を介してオイルセパレータ1のガス排出部6に装着されている。ブッシュ40は、PCVバルブ加温装置10の構成部品である。
【0021】
ブッシュ40は、金属製であり、金属は、たとえば、鉄、鋼,銅、アルミニウムである。ブッシュ40は、ガス排出部6に圧入されている。ブッシュ40は、内周面41と、外周面42と、を備える。
【0022】
内周面41は、小径部41aと、大径部41cと、を備える。大径部41cは、小径部41aよりガス流れ方向下流側にある。大径部41cは、小径部41aと段差部41bで連なっており、小径部41aより大径である。
【0023】
バルブボディ23(PCVバルブ20)は、ブッシュ40の内周面41の小径部41aにねじ込まれている。ブッシュ40の内周面41の小径部41aは、バルブボディ23の外周面23bの小径部23b1と、面接触している。ブッシュ40の段差部41bは、バルブボディ23の段差部23b2と対向している。ブッシュ40の内周面41の大径部41cは、バルブボディ23の外周面23bの大径部23b3と、面接触している。バルブボディ23の外周面23bの大径部23b3と、ブッシュ40の内周面41の大径部41cとの間は、Oリング43でシールされている。ブッシュ40の内周面41の大径部41c部分におけるブッシュ40の厚みは、バルブボディ23の第2の段差部23b4の段差量と略同じである。
【0024】
ブッシュ40の外周面42は、オイルセパレータ1のガス排出部6の内周面6bと面接触している。ブッシュ40の外周面40とオイルセパレータ1のガス排出部6の内周面6bとの間は、Oリング44でシールされている。
【0025】
ブッシュ40は、延び部45を備える。延び部45は、ブッシュ40の外周面42からブッシュ40の径方向外側に延びている。延び部45は、ブッシュ40の外周面からブッシュ40とパイプ30との接触面積を大にする方向に延びている。延び部45は、パイプ30に沿ってパイプ30の周方向に延びている。ブッシュ40が延び部45を備えるため、ブッシュ40は、パイプ30の外周面と面接触している。
【0026】
パイプ30は、内部通路31を備える。エンジン(図示略)を冷却するためのエンジン冷却水(温水)が内部通路31を流れる。パイプ30は、金属製であり、金属は、たとえば、鉄、ステンレス鋼、銅、アルミニウムである。パイプ30は、ブッシュ40の外周面42に沿ってブッシュ40の周方向に延びるパイプ側延び部32を備える。パイプ側延び部32は、オイルセパレータ1の外側に位置する。パイプ側延び部32は、ブッシュ40の外周面42に接触している。パイプ側延び部32は、ブッシュ40の3/4周以上でブッシュ40の外周面42に接触していることが望ましい。この理由は、パイプ30からブッシュ40への熱伝導量はパイプ30とブッシュ40との接触面積に比例するため、パイプ30とブッシュ40との接触面積を大にするためである。
【0027】
パイプ30のパイプ側延び部32とブッシュ40とは、互いに溶接されている。パイプ30とブッシュ40との溶接は、入り組んだ奥まで溶接できるようにするため、ロウ付け溶接とされていることが望ましい。ロウ付け溶接によれば、パイプ30とブッシュ40との接触面積を大にすることができるからである。ただし、パイプ30とブッシュ40との溶接は、ティグ溶接、レーザ溶接等であってもよい。
【0028】
パイプ30のパイプ側延び部32とブッシュ40との、ガス排出部6によって覆われていない部分は、樹脂カバー50で覆われている。樹脂カバー50により、パイプ側延び部32とブッシュ40からの放熱を抑制することができる。
【0029】
樹脂カバー50は、PCVバルブ加温装置10の構成部品である。樹脂カバー50は、ガス排出部6のフランジ部6aに超音波溶着または接着等にて固定されている。樹脂カバー50は、パイプ30のパイプ側延び部32とブッシュ40との、ガス排出部6によって覆われていない部分の、全体を覆っていてもよく一部のみを覆っていてもよい。樹脂カバー50は、パイプ30のパイプ側延び部32に接触していてもよく非接触であってもよい。樹脂カバー50は、ブッシュ40に接触していてもよく非接触であってもよい。
【0030】
つぎに、本発明実施例の作用、効果を説明する。
【0031】
PCVバルブ20が、ブッシュ40と接触しており、ブッシュ40が、パイプ30に沿ってパイプ30の周方向に延びる延び部45を備えており該延び部45によりパイプ30と面接触しているため、つぎの作用、効果を得ることができる。
エンジン冷却水によりパイプ30が温められると、パイプ30と面接触しているブッシュ40が温められ、ブッシュ40と接触しているPCVバルブ20が温められる。そのため、PCVバルブ20をエンジン冷却水で温めることができる。
また、ブッシュ40がパイプ30と面接触しているため、ブッシュ40がパイプ30と面接触していない場合に比べて効果的にブッシュ40を温めることができる。
【0032】
PCVバルブ20がブッシュ40と面接触しているため、PCVバルブ20がブッシュ40と面接触していない場合に比べて効果的にPCVバルブ20を温めることができる。
【0033】
ブッシュ40とパイプ30とが互いに溶接されているため、パイプ30からブッシュ40への熱伝達を効率良く行うことができる。
【0034】
ブッシュ40とパイプ30とが樹脂カバー50で覆われているため、ブッシュ40とパイプ30とが樹脂カバー50で覆われていない場合に比べて、ブッシュ40とパイプ30からの放熱を抑制できる。また、樹脂カバー50がオイルセパレータ1に固定されるため、オイルセパレータ1のガス排出部6に圧入されているブッシュ40がオイルセパレータ1から外れることを抑制できる。
【0035】
パイプ30のパイプ側延び部32とブッシュ40との、ガス排出部6によって覆われていない部分が、樹脂カバー50で覆われているため、パイプ30からブッシュ40を介してPCVバルブ20へ熱伝達が行われる部分を完全(略完全を含む)に断熱性の高い樹脂部材内部で行なうことができる。そのため、パイプ30からPCVバルブ20へ熱伝達を効率良く行なうことができる。
【符号の説明】
【0036】
1 オイルセパレータ
1a アッパ部品
1b ロア部品
2 内部スペース
3 ガス導入部
4 オイル分離部
4a 衝突板
5 ドレイン部
6 ガス排出部
6a フランジ部
10 PCVバルブ加温装置
20 PCVバルブ
21 可動バルブ
22 スプリング
23 バルブボディ
23a 内部流路
23b バルブボディの外周面
30 パイプ
31 内部通路
32 パイプ側延び部
40 ブッシュ
41 ブッシュの内周面
42 ブッシュの外周面
43,44 Oリング
45 延び部
50 樹脂カバー