(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記記憶部は、前記サーマルヘッドの規定ライフに対する累積使用時間の比率が所定の閾値以上になることを前記強調表示取消条件として記憶する請求項1記載のサーマルプリンタ。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<実施形態1>
以下、本実施形態に係るサーマルプリンタについて図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本実施形態に係るサーマルプリンタ1の全体構成例を示す模式図である。このサーマルプリンタ1では、図の右側から左側に向けて用紙2が搬送されるので、以下の説明においては、図中右側を上流側とし、左側を下流側とする。
【0009】
用紙2は、巻軸3に巻回され、一方の面に感熱層4を有するロール状のシート材である。巻軸3は、サーマルプリンタ1に回転自在に支持されている。用紙2の下流側には、アイドラローラ5が回転自在に支持されている。アイドラローラ5の下流には、モータ(図示省略する)によって回転可能とされたプラテンローラ6と、このプラテンローラ6に対して用紙搬送路7を挟んで印字部8が対向配置されている。印字部8とプラテンローラ6は、協働して用紙2の感熱層4に印字を行う。
【0010】
また、印字部8は、サーマルヘッド9、ヒートシンク10、印字ヘッドベース11および印字ヘッドホルダ12で構成されている。
【0011】
サーマルヘッド9の表面には、発熱素子(図示省略する)が用紙2の幅方向に設けられており、後述する第2のドライバ56を介してMPU51からの駆動信号に則って発熱素子をON/OFFさせ、プラテンローラ6とサーマルヘッド9の間に挿入されている用紙2に印字を行う。サーマルヘッド9に設けられている発熱素子は、駆動信号を受けるとONになり、熱を発生する。この熱を放熱させないと発熱素子を破壊してしまうため、サーマルヘッド9に常時接触するように放熱用のヒートシンク10が固着されており、サーマルヘッド9において発生した熱はヒートシンク10を経由して放熱される。
【0012】
また、印字部8の印字ヘッドベース11は、サーマルプリンタ1のフレーム(図示省略する)に固定されている。この印字ヘッドベース11には、弾性部材で作られた印字ヘッドホルダ12の一端が固着されている。印字ヘッドホルダ12は、力を加えることにより変形可能である。一体化されたサーマルヘッド9およびヒートシンク10は、印字ヘッドベース11に嵌合されて固定されている。また、印字部8とサーマルヘッド9、ヒートシンク10と印字ヘッドベース11は接着剤等によりそれぞれ一体となっている。
【0013】
また、印字ヘッドベース11には、サーマルヘッド9およびヒートシンク10と嵌合させた際、サーマルヘッド9およびヒートシンク10が移動する事を防ぐ移動防止壁13が設けられている。
【0014】
印字部8の用紙搬送方向下流には、カッタ15が配置されている。カッタ15は固定刃および可動刃(図示省略する)を有しており、カッタ15に設けられているスリット(図示省略する)に挿入されてきた用紙2を固定刃に向け可動刃をカッターモータ(図示省略する)の駆動することによって切断する。ここで、カッタ15は固定刃に向けて可動刃がスライド移動する、いわゆるスライド式カッタの場合を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、固定刃に対して可動刃が回転することで用紙を切断する、いわゆるロータリー式カッタであってもよい。
【0015】
また、カッタ15の下流側には、駆動モータ(図示省略する)によって回転可能とされたフィードローラ16と、このフィードローラ16に対して用紙搬送路7を挟んでアイドラローラ17が対向配置されている。用紙2への印字が終了すると、カッタ15によって用紙2は切断される。その後、用紙2は、用紙排出口18よりサーマルプリンタ1の外部に排出される。表示部19は、用紙切れ、エラー表示を含めた各種情報を表示する。
【0016】
図2は、
図1に示すサーマルプリンタ1の制御系を示す図である。同図に示されるように、制御部50は、ホストコンピュータ71との連係および用紙搬送、印字、用紙切断、用紙排出の各種の制御の実行を行う、例えばマイクロコンピュータで構成されており、中央処理装置(MPU)51、ROM53、RAM54を有している。
【0017】
MPU51で実行する制御プログラムや制御または演算途上のデータ等を格納する主記憶手段としてROM53およびRAM54が設置されている。ROM53は、制御プログラムやテーブル等を持つ読出し専用メモリである。また、RAM54は、演算途上のデータ等を随時格納する書込み用のメモリである。MPU51は、プログラムに従って時間設定および時間制御を行う手段としてタイマ(図示省略する)を備えている。
【0018】
また、制御部50には、ホストコンピュータ71からの各種の入力データの取込みや、ホストコンピュータ71への制御部50の制御出力の取出しを行う入出力ユニット(I/O)55が設けられている。このI/O55に対し、MPU51、ROM53およびRAM54がシステムバスを介してそれぞれ接続されている。
【0019】
また、I/O55には、制御出力を取り出すための手段として、第1〜第5のドライバ52、56、57、58、59が接続されている。第1のドライバ52は、ホストコンピュータ71とネットワーク(図示省略する)を介して通信を行う通信部20を制御する。第2のドライバ56は、サーマルヘッド9およびプラテンローラ6の駆動を制御する。第3のドライバ57は、カッタ15の駆動を制御する。第4のドライバ58は、フィードローラ16の駆動を制御する。第5のドライバ59は、表示部19における表示制御を行う。
【0020】
次に、サーマルプリンタ1の動作の概要を説明する。制御部50は、ROM53に記憶されているプログラムに従って用紙搬送ならびに印字動作を行う。ユーザは、予め用紙2を引き出し、アイドラローラ5を経由後、その先端をサーマルヘッド9とプラテンローラ6との間に位置するようにセットする。この状態でホストコンピュータ71から印字データが入力されると、制御部50はプラテンローラ6を回転させ、サーマルヘッド9との協働により用紙2を搬送させる。
【0021】
制御部50は、ホストコンピュータ71からの印字データをサーマルヘッド9にて用紙2上に印字する。その後、印字された用紙2はカッタ15によって切断され、用紙排出口18からサーマルプリンタ1の外部に排出される。
【0022】
図3は、
図2に示す制御部50の機能ブロック図である。同図に示されるように、制御部50は、印字データ入力部50a、印字データ解析部50b、記憶部50c、強調表示取消部50d、印字制御部50e、カウント部50fおよび設定入力部50gを備えている。各部は、ROM53に記憶されたプログラムにより実装され、MPU51がRAM54に展開することで実行される。
【0023】
印字データ入力部50aは、印字データの入力を受け付け、印字データ解析部50bに引き渡す。印字データ解析部50bは、印字データ入力部50aから入力された印字データを解析し、強調表示に係る文字列の有無を判定する。強調表示に係る文字列が含まれる場合には、強調表示取消部50dを呼び出し、印字データを出力する。また、強調表示に係る文字列が含まれない場合には、印字データをそのまま印字制御部50eへ出力する。
【0024】
記憶部50cは、印字データに含まれる強調表示の指定を取り消すための強調表示取消条件を記憶する。本実施形態おける記憶部50cは、ホストコンピュータ71側でのユーザ選択によって強調表示の取消機能が予め選択されていることを強調表示取消条件とする。
【0025】
強調表示取消部50dは、印字データ解析部50bにおける解析結果が強調表示に係る文字列を含む印字データであり、かつ、印字開始時において記憶部50cから取得された強調表示取消条件を満たす場合に、印字データに含まれる強調表示の指定をサーマルヘッド9における印字実行前に取り消し、取消後の印字データを印字制御部50eへ出力する。
【0026】
印字制御部50eは、印字データ解析部50bまたは強調表示取消部50d側から入力された印字データに基づいてサーマルヘッド9を制御し、印字データを用紙2へ印字する。
【0027】
カウント部50fは、印字制御部50eにおける印字データの印字回数をカウントし、記憶部50cに記憶する。カウント部50fは、ジョブ単位で印字枚数をカウントする以外に、所望の期間(一日単位、月単位など)における累積印字枚数や各機器の駆動時間等もカウントし、記憶部50cに記憶する。設定入力部50gは、ホストコンピュータ71側でユーザが決定した設定情報を入力し、記憶部50cへ記憶する。
【0028】
図4は、
図2に示す制御部50の印字制御処理の具体例を示すフローチャートである。
【0029】
先ず、制御部50の印字データ50aは、ホストコンピュータ71からネットワーク(図示省略する)を介して印字データを入力すると(Act101)、印字データ解析部50bへ印字データを出力する。
【0030】
次に、制御部50の印字データ解析部50bは、印字データを解析し(Act102)、印字データ中に強調表示指定の文字列の有無を判定する(Act103)。ここで、印字データ解析部50bが印字データ中に強調表示指定の文字列が一つでも有ると判定した場合(Act103:YES)は、Act104へ進む。これに対し、印字データ解析部50bが強調表示指定の文字列が一つも無いと判定した場合(Act103:NO)は、Act108へ進む。
【0031】
Act104において、制御部50の強調表示取消部50dは、記憶部50cから強調表示取消条件として強調表示の取消機能のユーザ選択情報を取得する。
【0032】
次に、強調表示取消部50dは、ユーザ選択情報に基づいて強調表示の取消機能のON/OFFを判定する(Act105)。ここで、強調表示取消部50dが取消機能ONと判定した場合(Act105:YES)は、Act106へ進む。これに対し、強調表示取消部50dが、取消機能OFFと判定した場合(Act105:NO)は、Act107へ進む。
【0033】
Act106において、強調表示取消部50dは、印字データ中の強調表示の指定を全て取消した印字データを印字制御部50eへ出力する。
【0034】
Act107において、印字制御部50eは、強調表示の指定が取り消された印字データを用紙2に印字し、処理を終了する。
【0035】
Act108において、制御部50の印字制御部50eは、強調表示取消部50dまたは印字データ解析部50bから入力された印字データをそのまま用紙2に印字し、処理を終了する。
図5は、強調表示の取消機能のON/OFFの具体例を示す図である。
図5(A)は、強調表示の取消機能がOFFの場合の印字例を示しており、先頭行の“AAAA”のフォントが他の行よりも大きい強調表示、2行目の“2222”はアンダーラインによる強調表示、“7777”は太字による強調表示、3行目の“0000”は文字の網掛けによる強調表示がなされている。これに対し、
図5(B)は、強調表示の取消機能がONの場合に、
図5(A)と同一の印字データが入力された際の印字例を示しており、全ての強調表示が取り消され、同一サイズの文字列が規定の条件で印字されている。
【0036】
このように、本実施形態に係るサーマルプリンタ1によれば、印字データ中に強調表示指定の文字列が含まれる場合に、当該強調表示を取り消して印字することが可能となる。この結果、サーマルヘッド9が規定ライフ(寿命)に達するまでの期間を従来よりも延長でき、かつ、印字品質の低下を抑制することができる効果を奏する。また、ホストコンピュータ71側でユーザが選択した条件に基づいて強調表示の出力の有無を任意に切替えることができ、省エネルギー化を図ることもできる。
【0037】
<実施形態2>
本実施形態は、制御部50における印字制御処理および強調表示取消条件の内容が実施形態1と一部異なっているが、他の構成は共通しているため、相違点を詳細に説明する。実施形態1と共通する符号は、同一の対象を示すものとする。
【0038】
本実施形態の記憶部50cは、サーマルヘッドの規定ライフHLに対する累積使用時間Tの比率が所定の閾値X以上になることを強調表示取消条件として記憶している。したがって、例えば、閾値Xが0.9(90%)の場合、強調表示取消部50dは、強調表示取消条件であるT/HL≧Xを満たす場合に自動的に強調表示を取り消すこととなる。なお、当該強調表示の取消機能は、実施形態1の場合と同様に、ユーザがON/OFFを任意に切替えることができることが好ましい。
【0039】
図6は、実施形態2に係るサーマルプリンタ1における制御部50の印字制御処理の具体例を示すフローチャートである。
【0040】
先ず、制御部50の印字データ50aは、ホストコンピュータ71からネットワーク(図示省略する)を介して印字データを入力すると(Act201)、印字データ解析部50bへ印字データを出力する。
【0041】
次に、制御部50の印字データ解析部50bは、印字データを解析し(Act202)、印字データ中に強調表示指定の文字列の有無を判定する(Act203)。ここで、印字データ解析部50bが印字データ中に強調表示指定の文字列が一つでも有ると判定した場合(Act203:YES)は、Act204へ進む。これに対し、印字データ解析部50bが強調表示指定の文字列が一つも無いと判定した場合(Act203:NO)は、Act208へ進む。
【0042】
Act204において、制御部50の強調表示取消部50dは、記憶部50cから累積使用時間(T)、サーマルヘッド9の規定ライフ(HL)、強調表示取消条件を取得する。ここでは、T/HL≧0.95を強調表示取消条件とする。
【0043】
次に、強調表示取消部50dは、T/HLの演算結果と強調表示取消条件に基づいて強調表示の取消機能のON/OFFを判定する(Act205)。ここで強調表示取消部50dが取消機能ONと判定した場合(Act205:YES)は、Act206へ進む。これに対し、強調表示取消部50dが、取消機能OFFと判定した場合(Act205:NO)は、Act207へ進む。
【0044】
Act206において、強調表示取消部50dは、印字データ中の強調表示の指定を全て取消した印字データを印字制御部50eへ出力する。
【0045】
Act207において、制御部50の印字制御部50eは、強調表示の指定が取り消された印字データを用紙2に印字し、処理を終了する。
【0046】
Act208において、印字制御部50eは、強調表示取消部50dまたは印字データ解析部50bから入力された印字データをそのまま用紙2に印字し、処理を終了する。
【0047】
このように、本実施形態に係るサーマルプリンタ1によれば、実施形態1の効果に加えて、サーマルヘッド9の規定ライフ(寿命)が近づいた場合には、自動的に強調表示を取り消すことができる効果を奏する。
【0048】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。本実施形態およびその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。