【文献】
KUNG-CHENG LIU,BIOORGANIC & MEDICINAL CHEMISTRY,英国,2011年 6月27日,V19 N16,P4796-4802
【文献】
LI, W., et al.,Identification of GS 4104 as and Orally Bioavailable Prodrug of the Influenza Virus Neuraminidase In,Antimicrobial Agents and Chemotherapy,1998年,Vol.42, No.3,p.647-653
【文献】
JIUN-JIE SHIE,SYNTHESIS OF TAMIFLU AND ITS PHOSPHONATE CONGENERS 以下省略,JOURNAL OF TEH AMERICAN CHEMICAL SOCIETY,2007年10月 1日,V129 N39,P11892-11893
【文献】
KIM CHOUNG U,JOURNAL OF MEDICINAL CHEMISTRY,米国,1998年 6月 9日,V41 N14,P2451-2460
【文献】
WILLIAMS MATTHEW A,BIOORGANIC & MEDICINAL CHEMISTRY LETTERS,英国,ELSEVIER SCIENCE,1997年 7月22日,V7 N14,P1837-1842
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
インフルエンザ感染症の処置に使用される医薬組成物を調製するための、アミドキシム(3R,4R,5S)−4−アセトアミド−5−[N−(N’−ヒドロキシ)アセチミドアミド(acetimidamido)]−3−(1−エチルプロポキシ)シクロヘキサ−1−エン−1−カルボン酸エチルエステル、(3R,4R,5S)−4−アセトアミド−5−(N−アセチミドアミド(acetimidamido))−3−(1−エチルプロポキシ)シクロヘキサ−1−エン−1−カルボン酸、ヒドロキシグアニジン(3R,4R,5S)−4−アセトアミド−5−[N−(N’ヒドロキシ)グアニジノ]−3−(1−エチルプロポキシ)シクロヘキサ−1−エン−1−カルボン酸エチルエステル、または(3R,4R,5S)−4−アセトアミド−5−(N−グアニジノ)−3−(1−エチルプロポキシ)シクロヘキサ−1−エン−1−カルボン酸、およびそれらの薬学的に許容し得る塩、または溶媒和物の使用。
オセルタミビル(3R,4R,5S)−4−アセトアミド−5−アミノ−3−(1−エチルプロポキシ)シクロヘキサ−1−エン−1−カルボン酸エチルエステルを反応させることを含む、請求項1もしくは2に記載の化合物または請求項3もしくは4に記載の阻害剤を調製するための方法であって、以下の工程:
i)有機溶媒中、室温で、オセルタミビルをシアンブロミドと反応させること
ii)ジオキサン中、室温で、iで形成されたシアナミドをヒドロキシルアミンと反応させること
を含む、方法。
【背景技術】
【0002】
インフルエンザは、呼吸器の重症ウイルス感染症の代表的なものである。米国だけでも、人口の10%〜20%がこのウイルスに毎年感染していると考えられている。WHOによれば、このウイルスは300万人〜500万人の人々の疾患に関わっており、このウイルスまたは二次感染のいずれかによって直接引き起こされる1年間の死亡数は、25万〜50万人である。不規則に発生する伝染病または流行病によって、感染レベルおよび死亡数は、著しく増加している。前世紀では、3つの主要なインフルエンザパンデミック(1918〜19年のH1N1ウイルス(「スペインインフルエンザ」)、1957年のH2N2ウイルス、および1968年のH3N2ウイルスが、累積で約5000万人の死亡を引き起こした。「スペインインフルエンザ」は、これまでに最も重度のパンデミックの代表的なものであり、最初の年だけで約2000万人の人々の死亡を引き起こした。最後のパンデミックは2009年に起こり、「メキシコインフルエンザ」(H1N1、「ブタインフルエンザ」)として知られているが、死亡数の点では比較的無害であった。しかしながら、この数年間では、特に高病原性「鳥インフルエンザウイルス」(H5N1)が、とりわけ動物からヒトに容易に伝染するという理由により、懸念材料の原因となっている。
【0003】
現在のところ、インフルエンザを処置するかまたは感染を予防するための主な(そして承認されている)治療アプローチは2つある:
(1)ワクチン接種
(2)抗ウイルス有効成分の使用:
a.M2チャネル遮断薬、アダマンタン誘導体(アマンタジン、リマンタジン)
b.ノイラミニダーゼ阻害剤
【0004】
しかしながら、ノイラミニダーゼ阻害剤は、M2チャネル遮断薬よりも有意な利点を有する:
(1)インフルエンザAおよびBに対して有効であることから、広範囲の抗ウイルス効果があること。アダマンタン誘導体は、インフルエンザAに対してのみ有効である;
(2)ウイルス耐性機構を強力に誘導することはほとんどないこと;
(3)優れた忍容性;
(4)呼吸器イベントを軽減する優れた効果。
【0005】
インフルエンザウイルスは、ヌクレオカプシドを囲む外膜から構成される。糖タンパク質であるヘマグルチニンおよびノイラミニダーゼは、この外膜上に位置している。ウイルスが細胞に感染して、ウイルス複製が開始した後、シアル酸で被覆された新たなウイルス粒子(いわゆるビリオン)が形成される。シアル酸がビリオンに結合している限り、それらは、その他のビリオンのヘマグルチニン残基と凝集する。これらのビリオン凝集体はもはや、その他の細胞に侵入および感染することができない。したがって、ノイラミニダーゼの機能の1つは、ビリオンが体内を自由に循環してその他の細胞に感染することができるように、ビリオンからシアル酸残基を切断することである。したがって、ノイラミニダーゼ阻害剤の使用は、インフルエンザの処置における治療アプローチの代表的なものである。
【0006】
一方、ザナミビル、オセルタミビルおよびペラミビルなどのいくつかの非常に強力なノイラミニダーゼ阻害剤が開発され、インフルエンザの処置についての薬事承認を受けている。
【0007】
ノイラミニダーゼ阻害剤の分野では、新たな有効成分の候補を同定するために、多くの研究および開発事業が行われている。新たなリード構造の開発の他に、オセルタミビルおよびザナミビルの公知の構造を最適化または改変することを目的とする多数の試みが続いている。すべての探究の一般的な目標は常に、有効性またはバイオアベイラビリティのいずれかが改善された化合物を得ることである。そうすることで、両方の基準を完全に満たす化合物を開発することは不可能である。しかしながら、インフルエンザに対して非常に有効な化合物をもたらす、オセルタミビルおよびザナミビルについての様々な改変が説明された。既に説明されている改変の概要を以下に示す:
【化1】
【0008】
1位:
多くの研究が、イソペンチル側鎖の改変について言及している。今では、側鎖の改変により親油性を減少または増加させるのに役立つ多くの改変が知られており、これらは、ノイラミニダーゼに対する親和性にはわずかな影響しか与えない。
1加えて、イソペンチル側鎖の各位置でヒドロキシル化を行うことができることが示された。
2構造的に類似するザナミビルに基づいて、種々の置換脂肪族ラジカルおよび種々の(ヒドロキシル化および非ヒドロキシル化)環状側鎖が、この位置で許容可能であることが示された。
3Liらは、46個のオセルタミビル類似化合物の合理的設計によりこのアプローチを拡張し、1位の置換がノイラミニダーゼに対する親和性を増加させるのに意味のあることを示した。また、この研究では、様々な置換基−芳香族性および脂肪族性の両方−を同定することができた。さらに、酸素を窒素で置換することができた。
4これらのデータは、分子のこの位置における構造的な要件が比較的非特異的であり、種々の構造が許容されることを実証している。したがって、オセルタミビルの多くのその他の活性誘導体は、イソペンチル官能基を改変することによって合成することができ、以下の本発明の記載手順にしたがって得ることができる。
【0009】
4位:
例えば、オセルタミビルの4位の改変は、Wangらによって評価された。
6ノイラミニダーゼ親和性を最適化するために、この位置の置換は可能であることが示された。これらの置換基は、それぞれ炭素、酸素または窒素を介してシクロヘキセン骨格に連結された。
【0010】
5位:
この位置においても、種々の改変が可能である。したがって、例えば、その有効性を失うことなく、カルボキシル官能基をその他の類似官能基(ホスホン酸、ホスホン酸エステル、ホスホン酸アミドなど)で置換することができることが示された。
7,8カルボキシル炭素を硫黄で置換して、対応するスルホン酸誘導体にすることも想定され得る。
【0011】
6位および骨格:
さらなる改変は、オセルタミビルのシクロヘキセン骨格に関する。種々の研究グループが、元素の環状構造を変化させることなく、この中心的な構造的特徴をその他の構造で置換することに関心を寄せていた。芳香族系および5員環系は、同様の有効性を有することができることが見出された。
9,10加えて、種々の脂肪族置換基が6位で試験され、ノイラミニダーゼに対するそれらの親和性が示された。ザナミビルで行われたように、ヘテロ原子をこの環系で使用することも想定され得る。したがって、骨格の改変は、中心的な構造元素のサイズを変化させることができることだけではなく、オセルタミビルのシクロヘキセンの二重結合が必須ではないことも実証している。二重結合の数および位置の両方を検証することにより、強力なノイラミニダーゼ阻害剤がもたらされる。
10,11
【0012】
ノイラミニダーゼ阻害剤の開発分野における多大な開発努力により、オセルタミビルと同様の効果を有する多数のオセルタミビル類似構造が同定された。しかしながら、それらの全体的特性の点では、これらの誘導体はいずれもオセルタミビルよりも優れておらず、これらの類似体はいずれも有効成分として承認されていない。
【0013】
治療剤の成功に重要なのはその薬物動態プロファイルであり、これは、溶解性、潜在的なプロドラッグをそれらの活性型に活性化する能力、およびタンパク質結合の形成によって影響を受ける。生理学的条件下におけるその安定性が等しく重要である。
【0014】
有効成分が経口投与後にどの程度吸収されるかを示す、治療剤、医薬または薬物の経口バイオアベイラビリティも決定的に重要である。経口投与は、その他の投与形態と比較して、使用するのに最も容易なものの1つである。例えば、注入または注射時に必要な滅菌は不要である。加えて、投与量および適用は、吸入医薬品形態の場合よりもはるかに容易である。
【0015】
ドイツでは、ザナミビルおよびオセルタミビルは、インフルエンザの処置について現在承認されている。オセルタミビル(Tamiflu(登録商標))の利用可能な経口剤形は既にあるが、ザナミビル(Relenza(登録商標))の使用は、経口投与後のバイオアベイラビリティがわずかに2%であることから、吸入のみ可能である。加えて、その他の国では、パンデミックイベントにおける静脈内投与用の救急用薬物としてペラミビルが承認されている。最近、日本では、インフルエンザの吸入療法について、ラニナミビル(Inavir(登録商標))が承認された。
【0016】
パンデミックイベントの場合、経口剤形は、吸入剤形または静脈内投与剤形よりも利点を有すると思われる。
【0017】
抗インフルエンザ薬の重大な問題は、インフルエンザウイルス、特に主要なウイルス抗原(ヘマグルチニンおよびノイラミニダーゼ)が急速に突然変異して、既存の薬物に対する耐性を急速に生じることである。この突然変異は、インフルエンザAウイルスで特に顕著である。インフルエンザに対するワクチンを毎年(季節毎に)調整することが必要になる突然のいわゆる「抗原不連続変異」が起こり得る。特に、近年では、H274Y突然変異を有するオセルタミビル耐性A(H1N1)の発生率が増加していることが、懸念の原因である。さらに、いくつかの公知の突然変異に次いで、さらなる新たな耐性機構が発見されている。
【0018】
オセルタミビル(Tamiflu(登録商標))は、さらなるウイルス耐性に対しては効果がないはずであり、インフルエンザに対して有効な経口投与物質の有効量は不明である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本発明のノイラミニダーゼ阻害剤を合成するために、種々の合成戦略を追求したところ、非常に異なって置換された様々なオセルタミビル誘導体が同時に明らかになった。本発明の様々な有効成分につながる様々な合成経路の例を以下の概要に示す。
【化6】
【0038】
ノイラミニダーゼ阻害剤の合成の概要。A)アミジン系オセルタミビル誘導体3、および対応するアミドキシム4の合成経路;B)ヒドロキシグアニジン系オセルタミビル誘導体6への合成経路;C)さらなるヒドロキシグアニジン系オセルタミビル誘導体(8)への合成経路;D)オセルタミビル−グアニジン9およびそのエステルプロドラッグ10の構造式。
【0039】
アミジンを合成するためのアミド化試薬として、S−ナフチル−メチル−アセト−アミジニウム−ブロミドを使用した(2、3)(Aを参照のこと)。アミジンを調製するためのその他の試薬を使用することも可能である。オセルタミビルの前記N−置換によって、および別のチオアミジニウム塩を選択することによって、様々なアミジンがこの方法で入手可能である。アミジン官能基を作製するためのその他の公知の方法をここで使用することができる。好ましくは、アセトヒドロキシモイルクロリドを使用することによって、アミドキシム4を合成した。
【0040】
グアニジン系化合物の合成は、B)に示されている。置換または非置換ヒドロキシグアニジンを作製するための2つの異なるコンセプトをこれによって実行した。このように、非置換ヒドロキシグアニジン6は、シアナミド5の合成を介して入手可能である。非常に異なるO,N−置換ヒドロキシグアニジン(8)は、タイプ7のカルバモイル−置換チオ尿素を介して合成可能である(Cを参照のこと)。
【0041】
オセルタミビル−グアニジン9およびそのエステルプロドラッグ10も示されている。この合成は、Shieら[Shie,J.;Fang,J.;Wang,S.;Tsai,K.;Shyun,Y.;Cheng,E.;Yang,A.;Hsiao,S.;Su,C.;Wong,C.,Journal of American Chemical Society 2007,129,11892−93]にしたがって成功した。
【0042】
さらなる態様では、本発明は、一般構造式:
【化7】
(式中、R
1は、H、1〜12の鎖長を有する分岐状または非分岐状、飽和または不飽和、置換または非置換炭化水素鎖であり、R
7は、HまたはOHであり、R
8は、H、R
9、NH
2、NHR
9、N(R
9)
2またはNHCOOR
1であり、
R
9は、1個〜4個の炭素原子の鎖長を有する分岐状または非分岐状アルキルラジカルであり、
ここで、R
1およびR
9の可能な置換基は、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素、酸素、硫黄、アルコキシ、アシルオキシ、ヒドロキシル、メルカプト、シアノ、ニトロおよびチオアルコキシ基からなる群より選択されるか、または保護基でブロックされた官能基である)の新たなオセルタミビル誘導体、ならびに適切な溶媒和物、塩、R/Sエナンチオマーおよび/またはプロドラッグを提供することに関する。
【0043】
一実施形態では、本発明は、Liらによる刊行物(Antimicrobial Agents and Chemotherapy 42(1998),647−653)の第648頁に記載されている化合物GS4116およびGS4109(式中、とりわけ、R
1はHまたはCH
2CH
3であり、R
7はHであり、R
8はNH
2である)に関しない。
【0044】
さらなる実施形態では、本発明は、R
8がNH
2である場合に、R
7がOHである化合物に関する。
【0045】
さらなる実施形態では、本発明は、R
7がHであり、R
8がNH
2である場合に、R
1がHまたはCH
2CH
3ではない化合物に関する。
【0046】
好ましい実施形態では、本発明は、化合物アミドキシム(3R,4R,5S)−4−アセトアミド−5−[N−(N’−ヒドロキシ)アセチミドアミド(acetimidamido)]−3−(1−エチルプロポキシ)シクロヘキサ−1−エン−1−カルボン酸エチルエステル、もしくはヒドロキシグアニジン(3R,4R,5S)−4−アセトアミド−5−[N−(N’ヒドロキシ)−グアニジノ]−3−(1−エチルプロポキシ)シクロヘキサ−1−エン−1−カルボン酸エチルエステル、ならびに/またはそれらの薬学的に許容し得る塩、溶媒和物、R/Sエナンチオマー、および/もしくはプロドラッグに関する。
【0047】
好ましい実施形態では、本発明は、医薬品として使用するための、好ましくはインフルエンザ感染症を処置するための上記化合物およびノイラミニダーゼ阻害剤に関し、一実施形態では、本発明の医薬品は、Liらによる刊行物(Antimicrobial Agents and Chemotherapy 42(1998),647−653)に記載されているように、第648頁に記載されている上記一般構造式の化合物GS4116およびGS4109(式中、R
1はHまたはCH
2CH
3であり、R
7はHであり、R
8はNH
2である)を包含する。Liらの記述とは反対に、本発明のグアニジン誘導体(3および9)は、インフルエンザに対して非常に優れた有効性を示す。
【0048】
本発明にしたがって行われた実験では、アミン官能基をアミジンまたはグアニジン基で交換することにより、既存のインフルエンザ耐性機構を打倒することができることが示された。種々の抗ウイルスアッセイからの、本発明にしたがって行われた実験で得られた試験データは、アミジンおよびグアニジン誘導体が、インフルエンザA(H1N1)菌株に対してはオセルタミビルおよびザナミビルと同程度の効力であるが、オセルタミビル耐性インフルエンザA(H1N1)菌株に対しても有効であることを示している。それらはまた、種々のインフルエンザA(H3N2)菌株に対しても有効である。加えて、本発明の化合物は、細胞毒性アッセイで驚くほど低い毒性、優れた溶解性、活性型で優れた活性化、および生理学的条件下で非常に優れた安定性を示す。
【0049】
表1は、ノイラミニダーゼ(NA)阻害アッセイにおける本発明の物質(3および9)の有効性を、ザナミビルおよびオセルタミビルと比較して示す。試験の詳細な説明は、方法の説明で見ることができる。
【0050】
【表1】
表1の値は、3および9の両方が、ナノモル濃度の範囲で、試験したインフルエンザAウイルス8種のNA活性を阻害することを示している。NA阻害アッセイで決定したIC50値は、ザナミビルおよびオセルタミビルのものとほぼ同程度であった。
【0051】
オセルタミビルとは対照的に、3および9は、オセルタミビル耐性単離A/342/2009に対しても有効である。このウイルスについて定義される50%阻害濃度は、ザナミビルと比較して10倍(9)または50倍(3)高かった。
【0052】
ウイルス生成阻害アッセイでは、抗ウイルス効果も明らかである。試験結果を表2に示す。アミジン活性型(3)およびグアニジン活性型(9)は、ナノモル濃度の範囲で、インフルエンザウイルスA/Jena/5258/2009の力価を90%および95%減少させた。試験条件の詳細な説明は、方法の説明で見られる。
【0054】
cpE阻害アッセイにおいても、本発明の化合物の抗ウイルス活性の兆候がある。
【0055】
試験で使用したウイルスの複製は、非常に顕著な細胞変性効果(cpE)により、宿主細胞の完全破壊をもたらす。抗ウイルス活性物質を追加することによって(100μl/ウェル;3パラレル/濃度、希釈係数2)、ウイルス誘導性cpEを選択的に阻害することができる。試験では、物質で処置したおよび未処置の閉細胞層に一定用量のウイルスを接種したところ、未処置ウイルス対照では、感染48時間後に完全なcpEがもたらされる。
【0057】
アミジン活性型3およびグアニジン活性型9は、非細胞毒性の濃度範囲で、インフルエンザウイルスA/Jena/5258/2009およびA/342/2009のcpEを阻害し、50%阻害濃度は、2.0μMおよび12.2μM(誘導体3)ならびに1.1μMおよび4.1μM(誘導体9)であった。試験の試験条件の詳細な説明は、方法の説明で見られる。
【0058】
本発明の化合物の別の利点は、それらの低毒性である。これに関して、MDCK(メイディン・ダービー・イヌ腎臓)細胞層で試験物質の50%細胞毒性用量(CC
50)を決定するための細胞毒性アッセイにおいて、アミジン(3)およびグアニジン活性型(9)は、6.25〜200μg/mlの試験濃度範囲では非毒性であることが見出された。試験条件の詳細な説明は、方法の説明で見られる。
【0059】
本発明の化合物の別の好ましい特徴は、特に生理学的条件下におけるそれらの優れた安定性である。この試験により、各化合物は、pH2〜9の範囲内で非常に安定であることが示された(
図1)。化合物のいずれについても、6時間の試験期間内では、化合物の分解は観察されなかった。
【0060】
活性型3および9について、さらなる安定性試験を14日間行ったところ、両化合物は、生理学的なpHの下では、4℃および室温(RT)の両方で試験期間にわたって安定であることが示された(
図2)。溶液中での保存安定性は、0.2mg/mlの濃度で測定した。この目的のために、化合物を50mM KH
2PO
4緩衝液(pH7,4)またはAqua bidestに溶解し、室温(RT)(pH7.4)で、または冷蔵庫内に4℃(pH7.4またはAqua bidest)で試験期間にわたって保存した。12時間後、1日後、2日後、4日後、7日後および14日後に、HPLCによって活性型の濃度を測定した。
【0061】
マウスおよびヒトの血漿を用いたその他の試験により、エステル官能基(すべてのプロドラッグにおいて、カルボキシ官能基のエチルエステル)は、血漿酵素によって速やかに開裂されることが示された。エステル開裂は、生体内活性化における重要な工程であり、これらのインキュベーションによってこれを証明することができた。活性型3および9は、血漿酵素によって代謝されない。
【0062】
本発明の化合物の特定の利点は、それらの優れた溶解性である。化合物(2、3、6および10)のほとんどが、研究したpH値すべてにおいて、>50mMの濃度で可溶性である(表4)。加えて、すべての物質が、pH値2において50mM超で可溶性であることが見出された。したがって、すべての化合物は、胃内の酸性環境で非常によく溶解すると考えられる。加えて、しかしながら、より溶解性の低い物質(4、9)でも、すべてのpH値において20mM超で可溶性である。このように、すべての化合物が非常に優れた溶解特性を示しており、これは、それらを有効成分として使用することに関して好ましい要素である。したがって、例えば、経口投与形態に加えて、救急医療で必要とされる液体投与形態(注射、注入)もあり得る。
【0064】
本発明の化合物の別の利点は、化合物が、非常に穏やかな血漿タンパク質結合のみを形成するという事実である。行った実験により、すべての試験化合物は、40%未満のタンパク質結合を有することが示された(表5)。タンパク質結合が90%超の場合にのみ、臨床的に関連する医薬品の相互作用のリスクが増加することから、今回開発したプロドラッグおよび活性型のタンパク質結合による臨床的に関連する相互作用は予想されない。
【0066】
加えて、活性型オセルタミビル−アミジン(3)およびオセルタミビル−グアニジン(9)の両方のタンパク質結合をヒト血漿で調べた。この目的のために、4%アルブミン溶液に代えてヒト血漿を使用した。タンパク質結合は、測定した化合物3では3.7±1.4%および化合物9では8.6±3.0%であった。予想どおり、これらの値は、4%アルブミン溶液で得られた値よりもいくらか高く、アルブミンに加えてその他の血漿タンパク質(例えば、α
1酸性糖タンパク質)の存在が原因である。
【0067】
本発明の化合物の別の特定の利点は、既に確立したプロドラッグのコンセプトを使用することができるという事実である。エステルとして、カルボン酸を従来の形態で使用する。アミジンおよびグアニジン官能基について、現在十分に確立されているN−ヒドロキシコンセプトも使用した。記載されるプロドラッグ形態は、経口投与または非経口投与後における活性型の持続放出の観点からも興味深いものである。
【0068】
プロドラッグについて、安定性、溶解性および活性型への活性化に関するin vitro試験を行った。これらの結果により、化合物は十分な安定性、非常に優れた溶解性を示すこと、および活性型への活性化は様々な酵素調製物において良好な程度に起こることが示された。
【0069】
細胞内酵素調製物によって、プロドラッグのそれらの活性型への活性化をin vitroで測定した。酵素調製物として、ヒトおよびブタの肝臓組織由来の9000g上清、ミクロソームおよびミトコンドリアを使用した。インキュベーション混合物は、500μMプロドラッグ、500μM NADH、1Uエステラーゼおよび0.3mgの酵素調製物を150μlの100mMリン酸緩衝液(pH6.3)に溶解したものから構成されていた。インキュベーションは、振盪水浴中、37℃で30分間行った。150μlのアセトニトリルを追加することによって、インキュベーションを終了した。続いて、試料を10分間振盪し、沈殿したタンパク質を10,000rpmで15分間遠心分離した。HPLCによって、上清を測定した。
【0071】
in vitroで行った活性化研究により、開発したプロドラッグはすべて、活性型3および9に変換したことが示された(表4)。すなわち、ヒトおよびマウスの血漿における安定性研究で示されたように、エステル開裂が起こり、加えてこれらのインキュベーションでは、アミドキシムまたはN−OH−グアニジンの還元を検出することができた。要約すると、化合物2、4、6および10は、活性型3および9の適切なプロドラッグであると言うことができる。この研究は、化合物の生体内活性化が起こるという一般的な証明のみを提供する。変換速度は、in vivoで有意に高いはずである。
【0073】
プロドラッグ2および10について、カルボン酸エチルエステルの酵素加水分解をより詳細に分析した。ブタ肝臓由来の非特異的カルボキシルエステラーゼを酵素源として使用した。インキュベーション混合物は、200μlの100mMリン酸緩衝液(pH7.4)に溶解した200μMプロドラッグおよび3Uエステラーゼを含有していた。インキュベーションは、37℃で60分間行った。HPLCによって、試料を15分毎に分析した。
【0074】
インキュベーションにより、両プロドラッグは、エステラーゼによってそれらの各活性型に活性化されることが示された。変換速度は、0.83±0.14nmol/分/mgタンパク質(プロドラッグ2)および1.35±0.15nmol/分/mgタンパク質(プロドラッグ10)であった。
【0075】
本発明の化合物の特定の利点は、それらの優れたバイオアベイラビリティである。
【0076】
ラットの動物研究において、新たに開発したノイラミニダーゼ阻害剤をそれらの経口バイオアベイラビリティに関して試験した。これによって、すべての試験化合物は、それらが消化管から吸収されてそれらの活性型に代謝されることを示す。明確にするために、ノイラミニダーゼ阻害剤4および6の代謝を示す。
【化8】
【0077】
オセルタミビルアミドキシム誘導体(2、3および4)のバイオアベイラビリティ
最も高い血漿レベルは、オセルタミビルアミドキシム誘導体4の投与後に得られた。経口投与後、μモル範囲の活性型3の血漿レベルを、6時間の試験期間全体にわたって測定した。加えて、誘導体4を低スケールで投与した後、活性型3に代謝される中間代謝産物11を検出することができた。アミドキシム誘導体4のバイオアベイラビリティは31.3%であると決定した。3の血漿半減期は約112分間である(表2)。現在承認されている経口バイオアベイラビリティを有する唯一のノイラミニダーゼ阻害剤は、オセルタミビル(Tamiflu(登録商標))である。ラットの動物研究により、この化合物の経口バイオアベイラビリティは36%であり、血漿半減期は44分間であることが示された。[E.J.Eisenberg,A.Bidgood,K.C.Cundy,Antimicrob Agents Chemother 1997,41(9),1949−1952]。
【0078】
したがって、新たに開発した本発明の化合物4は、バイオアベイラビリティの点では同程度である。この化合物の決定的な利点は、一方では、半減期が延長していること(これは、長時間作用する血漿レベルを可能にする)であり、他方では、オセルタミビル耐性インフルエンザ菌株に対する有効性が明らかに優れていることである。
【0079】
同様に、その他の化合物(2、3)の投与は検出可能な血漿レベルの誘導体3を示したが、しかしながら、これらは4の投与後よりも低かった。
【0080】
誘導体3の静脈内投与の結果を以下の表および
図3に示す。
【0081】
誘導体3の静脈内投与後の全血漿レベルの平均値
【0082】
誘導体4の経口投与は、以下の血漿レベルの誘導体3をもたらした。
【0083】
誘導体4の経口投与後の誘導体3の全血漿レベルの平均値
【0085】
誘導体4の経口投与後、誘導体11が代謝産物として検出される。これは、
図5からも推測することができる。
【0086】
誘導体4の経口投与後の中間代謝産物11の全血漿レベルの平均値
【0087】
誘導体3の経口投与は、以下の血漿レベルをもたらす。
図6も参照のこと。
【0088】
誘導体3の経口投与後の誘導体3の全血漿レベルの平均値
【0089】
誘導体2の経口投与は、以下の血漿レベルをもたらす。
図7も参照のこと。
【0090】
誘導体2の経口投与後の誘導体3の全血漿レベルの平均値
【0091】
図8および以下の表は、アミジン系ノイラミニダーゼ阻害剤(2、3および4)の投与からの結果の概要を示す。
【0092】
【表7】
AUC=曲線下面積(area under the curve);t
max=最大血漿レベルが測定された時間。
c
max=決定された最大血漿濃度;MRT=平均滞留時間(Mean Residence Time)
t
1/2=血漿半減期;血漿半減期t
1/2と同様に、MRT(平均滞留時間:Mean Residence Time)は、体内における物質の滞留時間の尺度である。それは古典的な薬物動態の値であり、AUMC(1次モーメント曲線下面積:area under the first moment curve)をAUC(曲線下面積:area under the curve)で割ることによって得られる。
【0093】
オセルタミビルヒドロキシグアニジン誘導体(6、9、10)のバイオアベイラビリティ
血漿試料の分析により、すべての試験誘導体の投与後に、検出可能な血漿レベルの誘導体9が6時間にわたって提供された。しかしながら、オセルタミビルアミドキシム誘導体との比較では(aを参照のこと)、測定した血漿レベルは驚くほど低かった。3桁のナノモル範囲内で誘導体9の血漿濃度を測定したところ、誘導体4と比較して約10倍低い。誘導体6の投与後、活性型9に代謝される中間代謝産物12を検出することができた。
【0094】
ヒドロキシグアニジン誘導体6のバイオアベイラビリティは、1.7%であると決定した。9の血漿半減期は、約98分間である。その他の試験したグアニジン系オセルタミビル誘導体(9、10)の経口バイオアベイラビリティは、誘導体6と有意差がない。
【0096】
誘導体9の静脈内投与の結果を以下の表および
図9に示す。
【0097】
誘導体9の静脈内投与後の全血漿レベルの平均値
【0098】
誘導体9の経口投与は、以下の血漿レベルをもたらす。
図10も参照のこと。
【0099】
誘導体9の経口投与後の誘導体9の全血漿レベルの平均値
【0100】
誘導体6の経口投与は、以下の血漿レベルをもたらす。
図11も参照のこと。
【0101】
誘導体6の経口投与後の誘導体9の全血漿レベルの平均値
【0102】
誘導体6の経口投与後、誘導体12が代謝産物として検出される。これは、
図12からも推測することができる。
【0103】
誘導体6の経口投与後の中間代謝産物12の全血漿レベルの平均値
【0104】
図13は、グアニジン系ノイラミニダーゼ阻害剤(6、9、10)の投与の結果の概要を示す。
【0105】
材料および方法:実施形態
合成
(3R,4R,5S)−4−アセトアミド−5−(N−アセチミドアミド(acetimidamido))−3−(1−エチルプロポキシ)シクロヘキサ−1−エン−1−カルボン酸エチルエステルヒドロブロミド(2)
1gのオセルタミビル(3.2mmol)を10mlのエタノールに溶解し、混合物を0℃に冷却する。1.04gのS−(ナフチルメチル)アセチミドブロミド(acetimidobromid)(1.1当量)をこの溶液に追加し、次いで、室温で1時間撹拌する。続いて、混合物を真空で濃縮し、約80mlの水に溶解する。この溶液を少しのジエチルエーテルで洗浄し、真空で濃縮する。この時点では、生成物(85%)は少量の親化合物を依然として含有するが、これは、カラムクロマトグラフィー(DCM/MeOH、5〜10%)のみによって除去することができる。収量:960mg(71%)(白色の固体)。
DC:R
f=0.65(DCM/MeOH,9:1)
1H−NMR(DMSO−d
6,300MHz):
δ/ppm=0.79(t,
3J=7.4Hz,3H),0.85(t,
3J=7.4Hz,3H),1.23(t,
3J=7.1Hz,3H),1.44(m
c,4H),1.83(s,3H),2.11(s,3H),2.33(m
c,1H),2.67(dd,
2J=17.6Hz,
3J=4.7Hz,1H),3.42(quin,
3J=5.6Hz,1H),3.82(m
c,1H),4.05(m
c,1H),4.17(q,
3J=7.1Hz,2H),4.35,(m
c,1H),6.69(m
c,1H),8.04(br d,
3J=9.0Hz,1H),8.63(br s,1H),9.25,9.35(2xbr s,1H).
MS(ESI):m/z=354[M+H]
+
【0106】
(3R,4R,5S)−4−アセトアミド−5−(N−アセチミドアミド(acetimidamido))−3−(1−エチルプロポキシ)シクロヘキサ−1−エン−1−カルボン酸(3)
10mlのMeOHに溶解したオセルタミビルのアミジンエチルエステル(217mg、0.5mmol)を1.5mlの1MメタノールKOH(3当量)と混合し、出発物質がDCでもはや検出されなくなるまで40℃で1時間撹拌する。この溶液を水で希釈し、1M HClでpH値を7〜8に調整する。この溶液を濃縮乾固し、次いで、逆相フラッシュクロマトグラフィー(RP−18カラム、溶離液:水、検出:ヨウ素チャンバー)によって残留物を精製する。凍結乾燥後、生成物を白色の粉末として単離する。
収率:88%(白色の微粉末)。
1H−NMR(D
2O,300MHz):
δ/ppm=0.84(t,
3J=7.4Hz,3H),0.89(t,
3J=7.4Hz),3H,1.38−1.63(m,4H),2.03(s,3H),2.23(s,3H),2.43(m
c,1H),2.82(dd,
2J=17.5Hz,
3J=4.8Hz,1H,),3.53(quin,
3J=5.4Hz,1H),3.93−4.09(m,2H),4.36m
c,1H),6.71(br s,1H).
MS(ESI):m/z=348[M+Na]
+,326[M+H]
+.
HRMS(ESI):C
16H
27N
3O
4[M+H]
+のm/z計算値:326.20743、実測値:326.20737。
【0107】
(3R,4R,5S)−4−アセトアミド−5−[N−(N’−ヒドロキシ)アセチミドアミド(acetimidamido)]−3−(1−エチルプロポキシ)シクロヘキサ−1−エン−1−カルボン酸エチルエステル(4)
465mgのオセルタミビル(1.49mmol)、290mgのDIPEA(389μl、1.5当量)を5mlのジクロロメタンに溶解し、0℃に冷却する。新たに調製したアセトヒドロキシモイルクロリド(209mg、1.5当量)をこの溶液にゆっくりと追加(滴下)する。混合物を室温で4時間撹拌し、15mlの水と混合し、さらに1時間撹拌し、次いで、分離漏斗で分離する。所望のアミドキシムの収量を増加させるために、ジクロロメタンで水相を4回抽出する。合わせた有機相をNa
2SO
4で脱水し、真空で濃縮する。シリカゲルのカラムクロマトグラフィー(DCM/MeOH、9:1)によって、粗生成物を精製する。
収率:70%(無色の結晶性固体)
DC:R
f=0.29(DCM/MeOH,9:1)
1H−NMR(DMSO−d
6,300MHz):
δ/ppm=0.80(t,
3J=7.4Hz,3H),0.85(t,
3J=7.4Hz,3H),1.23(t,
3J=7.1Hz,3H),1.43(m
c,4H),1.80(s,3H),1.95(s,3H),2.38(m
c,1H),2.62(dd,
2J=17.4Hz,
3J=5.0Hz,1H),3.40(quin,
3J=5.6Hz,1H),3.65(m
c,1H)3.78(dd,
2J=17.4Hz,
3J=8.7Hz,1H),4.15(q,
3J=7.1Hz,2H),4.19(m
c,1H),6.67,(m
c,1H),6.81(br d,1H,
3J=9.1Hz),7.99(d,1H,
3J=8.6Hz),9.73(br s,1H).
MS(ESI):m/z=392[M+Na]
+,370[M+H]
+,354[M−OH+H]
+.
HRMS(ESI):C
18H
31N
3O
5[M+H]
+のm/z計算値:370.23365、実測値:370.23379。
【0108】
(3R,4R,5S)−4−アセトアミド−5−[N−(N’ヒドロキシ)グアニジノ]−3−(1−エチルプロポキシ)シクロヘキサ−1−エン−1−カルボン酸エチルエステル(6)
213mgのシアナミド(0.6mmol)を5mlの無水ジオキサンに溶解し、正確に1当量の遊離ヒドロキシルアミン(20mg)を追加する。それを室温で30分間撹拌し、濃縮し、ジクロロメタンおよびジエチルエーテルの追加および除去を数回行った後に、白色の固体が得られる。
収量:222mg(100%)(白色の固体)
DC:R
f=0.20(EtOAc/MeOH,6:4)
1H−NMR(DMSO−d
6,300MHz):
δ/ppm=0.80(t,
3J=7.3Hz,3H),0.84(t,
3J=7.4Hz,3H),1.24(t,
3J=7.1Hz,3H),1.40(m,4H),1.83(s,3H),1.99−2.07(m,1H),2.86(dd,
2J=16.7Hz,
3J=2.5Hz,1H),3.38(quin,
3J=5.5Hz,1H),3.49(m,1H),3.80(m,1H),4.01,(m,1H),4.14(q,
3J=7.1Hz,2H),4.24(m,1H),4.92(s,2H),6.64(m,1H),7.72(br s,1H),7.79(d,
3J=8.8Hz,1H).
MS(ESI):
m/z=741[2M+H]
+,393[M+Na]
+,386,371[M+H]
+.
HRMS(ESI):C
17H
30N
4O
5[M+H]
+のm/z計算値:371.22890、実測値:371.22911
【0109】
(3R,4R,5S)−4−アセトアミド−5−[N−(N’−n−ヘキシルオキシカルボニル)チオウレイド]−3−(1−エチルプロポキシ)−シクロヘキサ−1−エン−1−カルボン酸エチルエステル(7)
500mgのオセルタミビル(1.6mmol)を50mlの無水ジクロロメタンに溶解し、等モル量のヘキシルオキシカルボニルイソチオシアナート(約0.5Mジクロロメタン溶液)をゆっくりと滴下する。室温で2時間撹拌した後、1%HCl、水、NaCl溶液でそれを洗浄する。Na
2SO
4で有機相を脱水し、ロータリーエバポレータで濃縮する。粗生成物を細粉化することもできるし、またはシクロヘキサンで洗浄することもでき、これによって次の反応にとって十分に純粋なものになる。元素分析のために、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(Cy/EtOAc、6:4)によって、化合物をさらに精製した。
収量:600mg(75%)(白色〜黄色っぽい固体)
DC:R
f=0.20(Cy/EtOAc,6:4)
1H−NMR(DMSO−d6,300MHz):
δ/ppm=0.79(t,
3J=7.4Hz,3H),0.84(t,
3J=7.3Hz,3H),0.87(t,
3J=6.8Hz,3H),1.23(t,
3J=7.2Hz,3H),1.30(m
c,6H),1.45(m
c,4H),1.57(m
c,2H)1.80(s,3H),2.30(dd,1H,
2J=17.8Hz,
3J=6.8Hz),2.90(dd,1H,
2J=17.8Hz,
3J=5.0Hz),3,43(quin,1H,
3J=5.4Hz),4.07(m
c,4H),4.16(q,2H,
3J=7.1Hz),4.55(m
c,1H),6.74(br s,1H),7.91(br d,1H,
3J=8.0Hz),9.98(d,1H,
3J=7.6Hz),10.90(s,1H).
MS(ESI):
m/z=500[M+H]
+,483,412
【0110】
(3R,4R,5S)−4−アセトアミド−5−[N−(N’−n−ヘキシルオキシカルボニル)−(N”−(2−メトキシプロパン−2−イル)オキシ)グアニジノ]−3−(1−エチルプロポキシ)シクロヘキサ−1−エン−1−カルボン酸エチルエステル(8)
358mgのオセルタミビルヘキシルチオ尿素(0.72mmol)を10mlの無水ジクロロメタンに溶解し、151mgのO−(2−メトキシプロパン−2−イル)ヒドロキシルアミン(2当量)、251μlのDIPEA(2当量)、276mgのEDCI(2当量)を追加する。混合物を室温で1.5日間撹拌し、濃縮し、シリカゲルのカラムクロマトグラフィー(DCM/MeOH、0〜2%)によって処理する。
DC:R
f=0.39(DCM/MeOH,98:2)
収量:374mg(91%)(白色の固体)(これを−20℃で保存する)
1H−NMR(DMSO−d
6,300MHz):
δ/ppm=0.83(m
c,9H)1.27(m
c,12H),1.27(m
c,12H),1.45(m
c,4H),1.57(m
c,2H),1.80(s,3H),2.30(dd,1H,
2J=18.1Hz,
3J=7.1Hz),2.90(dd,1H,
2J=18.1Hz,
3J=5.2Hz),3.06(s,3H),3.43(quin,1H,
3J=5.6Hz),4.06(m
c,4H),4.16(q,2H,
3J=7.1Hz),4.55(m
c,1H),6.74(s,1H),7.91(d,1H,
3J=8.1Hz),9.98(d,1H,
3J=7.8Hz),10.90(s,1H).
HRMS(ESI):C
28H
50N
4O
8[M+H]
+のm/z計算値:571.37014、実測値:571.37034。
【0111】
(3R,4R,5S)−4−アセトアミド−5−(N−グアニジノ)−3−(1−エチルプロポキシ)シクロヘキサ−1−エン−1−カルボン酸(9)
A)阻害剤およびプロドラッグの薬物動態特性決定
1.アミジン活性型(3)およびそのプロドラッグ(2、4)ならびにグアニジン活性型(9)およびそのプロドラッグ(6、10)の6時間にわたる安定性研究
50mMカリウムリン酸緩衝液中、0.2mMの濃度で、安定性試験を行った。この目的のために、2mM原液を10mMカリウムリン酸緩衝液(pH7.4)で調製し、各pH値のリン酸緩衝液で1:10希釈した。pH2.0、7.4および9.0で、各化合物を試験した。この目的のために、HPLCによって試料を30分毎に分析し、安定性を6時間にわたって試験した。t=0分の濃度を100%として設定した。
【0112】
加えて、ヒトおよびマウスの血漿で、前記物質を試験した。この目的のために、630μlの血漿と、10mMリン酸緩衝液(pH7.4)に溶解した各化合物の2mM原液70μlとを混合した。インキュベーションは、振盪水浴中、37℃で実施した。15分、30分、45分、60分、90分および120分の時点において、100μlの試料を取り出し、100μlのアセトニトリルを追加することによって、インキュベーションを終了した。試料を遠心分離(12,000rpm/10分)し、HPLCによって上清を検査した。
【0113】
以下のHPLC法を使用して、安定性研究を分析した。
【0114】
HPLC法
HPLC−システム Waters Autosampler 717plus、Waters600制御器、Waters600ポンプ、Waters2487 Dual λ吸光度検出器およびEZChrom Elite Client/サーバ記録および分析ソフトウェア(バージョン2.8.3)
カラム: RP−select Bガードカラム(4x4mm)を備えるLiChrospher 60 RP−select B(125x4mm、5μm)。
流量: 1ml/分
溶離液: 3、9の場合には60%10mM KH
2PO
4/0.1%TFA pH3.0
40%MeOH、
2、4、6、10の場合には50%10mM KH
2PO
4/0.1%TFA pH3.0
50%MeOH
実行時間: 7.5分間
検出: 230nm
注入量: 10μl
保持時間: 4 4.2±0.1分間
9 4.4±0.2分間
3 4.5±0.2分間
6 4.6±0.1分間
2 4.8±0.1分間
10 3.7±0.1分間
【0115】
アミジン活性型(3)およびグアニジン活性型(9)の2週間にわたる安定性研究
pH7.4における研究:
0.2mg/mlの濃度で、溶解形態の保存安定性を測定した。この目的のために、化合物を50mM KH
2PO
4緩衝液(pH7.4)またはaqua bidestに溶解し、調査期間にわたって室温(RT)(pH7.4)で、または冷蔵庫内に4℃(pH7.4またはaqua bidest)で保存した。12時間後、1日後、2日後、4日後、7日後および14日後に、HPLCによって活性型の濃度を測定した。
【0116】
2.試験化合物の溶解性アッセイ
異なるpH値における溶解性の測定:
異なるpH値(2.0、7.4および9.0)のリン酸緩衝液で、化合物の溶解性を測定した。この目的のために、数mgの化合物を計量し、50mM溶液の各pH値の50mM KH
2PO
4緩衝液の一定容量と混合した。化合物が完全に溶解しなかった場合、懸濁液を30分間振盪した。続いて、10,000rpmで15分間遠心分離することによって、未溶解部分を除去し、HPLCによって上清の濃度を測定した。
【0117】
3.アミジン活性型(3)およびそのプロドラッグ(2、4)ならびにグアニジン活性型(9)およびそのプロドラッグ(6、10)のタンパク質結合の測定
3つの異なる濃度(10、25、および50μM)で、血漿タンパク質結合を行った。タンパク質溶液として、4%アルブミン溶液を使用した。各場合において、10倍濃縮した物質の溶液50μlを450μlのタンパク質溶液にピペッティングした。インキュベーションは、振盪水浴中、37℃で15分間行った。続いて、試料を限外ろ過ユニット(Vivaspin 500、10kDaカットオフ)に移し、10,000rpmで15分間遠心分離した。HPLCによって、ろ液を分析した。加えて、各濃度について対照を設けた(これは、タンパク質で処理せず、遠心分離しなかった)。しかしながら、タンパク質の上清を含まない別の対照をろ過ユニットで遠心分離したところ、このプロドラッグは膜によって保持されないことが示され、この手順を検証するのに使用した。
【0118】
加えて、2つの活性型(オセルタミビル−アミジン(3)およびオセルタミビル−グアニジン(9))のタンパク質結合をヒト血漿で調べた。この目的のために、4%アルブミン溶液に代えてヒト血漿を使用した。タンパク質結合は、化合物3では3.7±1.4%であり、化合物9では8.6±3.0%であると決定した。予想どおり、これらの値は、4%アルブミン溶液で得られた値よりもいくらか高く、アルブミンの他にその他の血漿タンパク質(例えば、α
1酸性糖タンパク質)の存在が原因である。
【0119】
4.種々のプロドラッグ(2、4、6、10)の生体内活性化の調査
様々な細胞内酵素系によるプロドラッグの活性化の測定:
細胞内酵素調製物によって、プロドラッグのそれらの活性型への活性化をin vitroで測定した。酵素調製物として、ヒトおよびブタの肝臓組織由来の9000G上清、ミクロソームおよびミトコンドリアを使用した。インキュベーション混合物は、500μMプロドラッグ、500μM NADH、1Uエステラーゼおよび0.3mgの酵素調製物を150μlの100mMリン酸緩衝液(pH6.3)に溶解したものから構成されていた。インキュベーションは、振盪水浴中、37℃で30分間行った。150μlのアセトニトリルを追加することによって、インキュベーションを終了した。その後、試料を10分間振盪し、10,000rpmで15分間遠心分離することによって、沈殿したタンパク質を除去した。HPLCによって、上清を測定した。
【0120】
活性型(3/9)およびプロドラッグ(2、4/6、10)の測定のためのHPLC法
HPLCシステム Waters e2695 XC分離モジュールを備えるWaters Alliance HPLCシステム、
Waters 2998フォトダイオードアレイ検出器およびEmpower2ソフトウェア
カラム: C18ガードカラム(4x4mm)を備えるLiChrospher 60 RP−select B(125x4mm、5μm)
流量: 1ml/分
移動相: 70%10mM KH
2PO
4/0.1%TFA pH6.5
30%MeOH
実行時間: 12分間
検出: 210nm
注入容量: 10μl
保持時間: 3 4.8±0.2分間
9 4.7±0.2分間
10 24.8±0.4分間
6 25.2±0.3分間
4 26.6±0.3分間
2 26.6±0.3分間
【0121】
抗ウイルス活性
化学発光ベースのノイラミニダーゼ(NA)−阻害アッセイにおける抗ウイルス活性の測定
以下のインフルエンザウイルスを研究に使用した:
H1N1ウイルス:A/Jena/5258/2009、A/Jena/5555/09、A/HH/1580/09、A/342/2009(オセルタミビル耐性)
H2N3ウイルス:香港/8/68、サクソニー/6/02、ベルリン/10/04、ラインラント−プファルツ/3911/03。
【0122】
市販のNA−Starキット(Tropix,Applied Biosystems,Darmstadt)を使用して、試験化合物3および9ならびに対照物質によるウイルスノイラミニダーゼの阻害を調べた。
【0123】
製造業者の推奨にしたがって、この後の阻害アッセイのための試験ウイルスの最適希釈物を予備試験で最初に測定した。この目的のために、ノイラミニダーゼ阻害剤(NAI)の非存在下で、ウイルス懸濁液をNA−Star緩衝液(希釈係数3)で希釈した。続いて、50%阻害濃度を決定するためのNA阻害アッセイでは、40:1のシグナルバックグラウンド比をもたらすウイルス希釈物を使用した。
【0124】
ウイルス対照6個/プレートのNA阻害アッセイでは、25μlのアッセイ緩衝液、または試験物質(3パラレル/希釈物)もしくは対照物質(2パラレル/希釈物)を含むアッセイ緩衝液中25μlを、96ウェルマイクロタイタープレートの個々のウェルにアプライした。次いで、25μlのウイルス希釈物を各ウェルに追加した。37℃での20分間のインキュベーション時間の後、アッセイ緩衝液で基質を1:500希釈し、10μlを各ウェルにそれぞれ追加した。30分後、プレートリーダ(マイクロタイタープレートルミノメータ、Dynex Technolgy)で、化学発光の測定を実施した。アッセイ評価のために、6個の未処置ウイルス対照について測定した化学発光の平均をNA活性の100%の値とし、前記物質で処置した個々のウェルの相対NA活性の計算に使用した。続いて、2回の独立したアッセイの得られた平均用量反応曲線から、EXCELの線形補間によって、試験物質および対照物質の50%阻害濃度(IC50)を計算した。
【0125】
ウイルス生成(VY)阻害アッセイにおける試験物質の抗ウイルス活性の測定
細胞: MDCK細胞
インフルエンザウイルス:a)A/Jena/5258/2009(流行性H1N1;オセルタミビル感受性)
b)A/342/2009(H1N1;オセルタミビル耐性)
【0126】
抗ウイルス剤を追加することによって(100μl/ウェル;3パラレル/濃度/試験物質および2パラレル/濃度/対照物質、希釈係数10)、ウイルス複製を選択的に阻害することができる。これは、上清中のウイルス力価の減少に基づいて、実験的に測定することができる。
【0127】
このアッセイでは、2日齢の閉細胞単層に一定用量のウイルスを接種したところ、3個の未処置ウイルス対照では、感染48時間後に不完全な細胞変性効果がもたらされる。37℃で1時間インキュベーションした後、各ウェルを3回連続して洗浄することによって、細胞に結合しなかったウイルスを除去し、100μlの試験培地(細胞およびウイルス対照)または前記物質の希釈物を追加した。37℃で48時間インキュベーションした後、上清のウイルス力価を測定するために、各ウェルの上清を回収した。
【0128】
ウイルス力価の測定は、マイクロタイタープレート中、2日齢のMDCK細胞単層で実施した。この目的のために、最初に、VY阻害アッセイからの上清から、対数連続希釈物(最大希釈係数10;最大希釈10
−7)を作製した。これらを細胞に接種し(それぞれ4ウェル/ウイルス希釈物)、37℃で4日間インキュベーションした。この期間の間に、細胞変性効果が形成された。クリスタルバイオレットホルマリン溶液で細胞を固定および染色した後、ライトボックス上で目視評価を行った。
【0129】
続いて、Reed and Muenchにしたがってウイルス力価を計算した。力価の減少を計算するために、3個のウイルス対照のウイルス力価の平均を100%とした。
【0130】
cpE阻害アッセイにおける試験物質の抗ウイルス活性の測定
アッセイで使用したウイルスの複製は、非常に顕著な細胞変性効果(cpE)により、宿主細胞の完全破壊をもたらす。抗ウイルス活性物質を追加することによって(100μl/ウェル;3パラレル/濃度、希釈係数2)、ウイルス誘導性cpEを選択的に阻害することができる。アッセイでは、未処置のおよび物質で処置した閉細胞層に一定用量のウイルスを接種したところ、未処置ウイルス対照では、感染48時間後に完全なcpEがもたらされる。この時点において、クリスタルバイオレット/ホルマリン溶液で残りの接着細胞を固定および染色した。色素を溶出した後、Dynatechプレートリーダで、ウイルス誘導性cpEの阻害を測光定量した。
【0131】
物質で処置したおよび未処置のウイルス感染細胞の光学密度を細胞対照の平均光学密度(100%として設定したもの)と比較することによって、抗ウイルス効果の計算を行った。2回の実験の平均用量反応曲線に基づいて、EXCELの線形補間によって、ウイルス誘導性cpEの形成を50%阻害した希釈(IC50)を計算した。
【0132】
MDCK(メイディン・ダービー・イヌ腎臓)細胞層における試験物質の50%細胞毒性用量(CC
50)を決定するための細胞毒性アッセイ
MDCK細胞をマイクロタイタープレートに播種し、5%CO
2、37℃および湿度95%のインキュベータ内で48時間インキュベーションして、閉細胞層を形成した。この目的のために、培地を除去し、前記物質を種々の濃度(100μl/ウェル、3パラレル/濃度、希釈係数2)で培養培地にアプライした。対照値の測定のために(6個の未処置細胞対照)、100μlの培地をそれぞれ使用した。物質を投与してインキュベーションした72時間後に、クリスタルバイオレット/メタノールで細胞の染色を行う。色素を溶出した後、Dynatech製のプレートフォトメータで各ウェルの光学密度(OD)を測定し(550/630nm)、細胞対照の平均と比較した。対照の平均を100%とした。
【0133】
動物研究
動物の取り扱い/準備
体重約300〜350gのスプラーグドーリー(SD)ラットを実験開始前に10日間馴化し、一定温度(20℃)および湿度50%の空調室内に置いた。この部屋では、明暗周期は12時間であった。暗期は毎日18時に始まり、6時に明期に切り替わった。馴化期間の間は、サイズ3の標準的なケージ(長さ:42cm、幅26cm、高さ:15cm)内にラットを置き、実験開始の3日前に、同一環境条件の特別な実験室に移した。ラットには、自由に維持食(ラットおよびマウス用の維持食;No.1320;Altromin)および水道水を与えた。
【0134】
本明細書に記載される動物実験は、Ministry of Agriculture,Environment and Rural Areas of Schleswig−Holsteinによる承認後に、実験動物の取り扱いおよび使用についての「NIHガイドライン」および対応する規定にしたがって行った。
【0135】
静脈内投与(i.v.)を受けたラットの大腿静脈および大腿動脈にカテーテルを埋め込んだ。物質の経口投与のみを受けたラットには、静脈内カテーテルのみを挿入した。
【0136】
ペントバルビタール(60mg/kg腹腔内(i.p.))でラットを麻酔し、麻酔深度が不十分な場合にはジエチルエーテルでさらに麻酔した。頸部および右鼠径部を悌毛した後、ラットを仰臥位にして電気加熱ステージ(EBERLE,type52102)上に置いて体温を維持し、後肢を固定した。鼠径部に沿って、長さ約1.5cmの切開を施した。続いて、大腿動脈、大腿静脈および大腿神経の血管束を長さ約1cmに切開した。
【0137】
大腿静脈の分離後、木綿糸をその周囲近くに設置し、血管を堅く縛ることによって可逆的に閉塞した。末端方向に約5mmの血管を2番目の糸で縛って鬱血を作り出した。血管用ハサミを用いて、鬱血領域内の血管に小さな切開を施し(末端結紮から鬱血の全長の約1/3)、ヘパリン溶液(250IU/ml)を充填したポリエチレンチューブ(長さ:26cm;ID:0.58mm、OD0.96mm)を、容器拡張器を用いて大静脈近くに3cm挿入した。近接および末端の糸で、カテーテルを血管に固定した。
【0138】
大腿静脈とは対照的に、最初に、末端結紮によって大腿動脈を閉塞し、次いで、糸を堅く縛ることによって近くに閉じ込めた。ここでも、上記のようにカテーテルを埋め込んだ。動脈の内径が小さいため、ポリエチレンチューブ(長さ:26cm、ID:0.58mm、OD0.96mm)および長さ3cmの溶接ポリエチレンチューブ(ID:0.28mm、OD:0.61mm)からなる特製の動脈カテーテルを使用した。
【0139】
カテーテルを組み入れた後、動物を腹臥位にして、幅5mmの切開を頸部に施した。金属のロッドおよびチューブを用いて、ワイヤーピンでシールされたカテーテルを頸部の突起から引き抜き、木綿糸で頸部を固定し、長さ約3cmに切断した。
【0140】
再び仰臥位にして、3〜4回の二重ボタン穴縫合で皮下脂肪および次いで表皮を最初に縫い合わせ、Betaisadonna(登録商標)溶液で消毒した。翌日、300μlのヘパリン溶液(250IU/ml)で、カテーテルを朝晩にそれぞれ洗浄した。手術したラットは、カテーテルを挿入した日から、寸法が高さ:20cm、幅:22cm、および長さ:25cmのプレキシグラス製実験ケージ、またはサイズ3の標準的なケージ内に個々に置いた。
【0141】
カテーテルを挿入した動物は、手術後に1日間実験室内に置き、そして個々にそれらの実験ケージ内に置いた。試験化合物の適用は、手術後2日目に行った。実験の日、試験1時間前にラットを計量し、300μlのヘパリン溶液で動脈カテーテルを洗浄した。続いて、化合物の静脈内(i.v.)投与または経口投与を行った。
【0142】
動物研究の実施
オセルタミビル誘導体3を10mg/kgの濃度で5匹のラットに静脈内投与した。5匹または6匹のラットに対して、50mg/kgの投与量で、ノイラミニダーゼ阻害剤(2、4)の経口投与を行った。加えて、誘導体3を3匹のラットに経口投与(50mg/kg)した。経口投与は、アラビアゴム(10%w/v)を含む懸濁液または溶液として経管栄養によって実施した。
【0143】
オセルタミビル誘導体9を10mg/kgの濃度で5匹のラットに静脈内投与した。4匹または5匹のラットに対して、50mg/kgの用量で、ノイラミニダーゼ阻害剤(6、10)の経口投与を行った。加えて、誘導体9を3匹のラットに経口投与(50mg/kg)した。経口投与は、アラビアゴム(10%w/v)を含む懸濁液または溶液として経管栄養によって行った。
【0144】
血漿試料は、静脈内(i.v.)投与後5分、10分、20分、45分、90分、150分、240分および360分の時点で採取し、経口投与後30分、60分、90分、120分、180分、240分および360分の時点で採取した。この目的のために、各場合において、インスリン注射器を使用して300μlの全血を採取し、EDTA−coated Microvettes CB 300(Sarstedt,Numbrecht)に移した。各回収後、100μlの0.9%生理食塩水または60分間毎にヘパリン溶液(250IU/ml)でそれを洗浄した。血液試料を簡単に振盪し、遠心分離(4℃;14000U/分;10分間)まで氷上に置いた。続いて、試料を−80℃で凍結した。
【0145】
薬物投与の6時間後に、ギロチンで断頭することによって屠殺を行った。続いて、器官を取り出した。すべての器官を消毒し、ドライアイスで冷却した2−メチルブタンで凍結した。肝臓、腎臓および肺を回収した。
【0146】
血漿試料の分析
血漿試料を加工し、HPLCによって分析した。この目的のために、血漿試料を室温で解凍した。各場合において、80μlのメタノール(+0.2%TFA)を調製し、続いて、80μlの血漿試料をピペッティングした。試料を45分間振盪して、血漿タンパク質を沈殿させた。試料を−80℃で凍結し、解凍し、さらに15分間振盪した。試料を13,000RPMで15分間遠心分離し、上清をHPLCバイアルに移した。各場合において、50μlをLC/MSによる測定に使用した。
【0147】
以下のLC/MS法を使用して、動物研究を評価した。
LC/MS法
HPLCシステム:Agilent1100バイナリポンプ、Agilent1100ダイオードアレイ検出器、Agilent1100ウェルプレートオートサンプラ、脱ガス装置G1322A
カラム: RP−selectを備えるLiChrospher 60 RP−select B(125x3mm、5μl);Bガードカラム(4x4mm)
質量分析計 Esquire−LC
インターフェイス:ESI(電子衝突イオン化)
ネブライザー: 0.28MPa(40.0psi)
乾性ガス: 8.0ml/分
乾燥温度: 350℃
HVキャピラリー 5000V
移動相:A 0.1%TFAのaqua bidest溶液(pH2.5)
B 0.1%TFAのMeOH溶液
勾配プロファイル:時間 A[%] B[%]
0 55 45
8 25 75
10 25 75
11 55 45
17 55 45
流量: 0.3ml/分
実行時間: 17分間
検出: PDA(190〜400nm)
注入量: 50μl
保持時間:
3 5.1±0.3分間
9 5.1±0.3分間
11 5.2±0.3分間
12 5.2±0.3分間
【0148】
参考文献
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