特許第6198744号(P6198744)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6198744
(24)【登録日】2017年9月1日
(45)【発行日】2017年9月20日
(54)【発明の名称】工作機械
(51)【国際特許分類】
   B23Q 11/08 20060101AFI20170911BHJP
   B23Q 41/04 20060101ALI20170911BHJP
   B23Q 7/04 20060101ALI20170911BHJP
【FI】
   B23Q11/08 Z
   B23Q41/04
   B23Q7/04 C
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-540808(P2014-540808)
(86)(22)【出願日】2013年9月30日
(86)【国際出願番号】JP2013076510
(87)【国際公開番号】WO2014057834
(87)【国際公開日】20140417
【審査請求日】2016年5月11日
(31)【優先権主張番号】特願2012-225152(P2012-225152)
(32)【優先日】2012年10月10日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000146847
【氏名又は名称】DMG森精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087619
【弁理士】
【氏名又は名称】下市 努
(72)【発明者】
【氏名】安田 浩
(72)【発明者】
【氏名】稲住 幸弘
(72)【発明者】
【氏名】川元 一廣
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 正二
(72)【発明者】
【氏名】長末 秀樹
【審査官】 山本 忠博
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2008/029485(WO,A1)
【文献】 特開2007−152506(JP,A)
【文献】 特開2009−107099(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3136412(JP,U)
【文献】 特開平07−290228(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 11/08,7/04,41/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業者が平面視略長方形状の機械本体内にアクセスするための開口を開閉する機械本体ドアと、作業者が前記機械本体内に配置されたワーク交換装置へのワークの搬入・搬出を行うための開口を開閉する段取りドアとを備えた複数の工作機械を配置ライン上に並列配置した加工ラインであって、
前記各工作機械において、作業者が前記段取りドアを開閉する際に向き合う段取りドア面は前記長方形の正面部分に配設され、前記作業者が前記機械本体ドアを開閉する際に向き合う機械本体ドア面は前記長方形の正面部分と側面部分とのコーナ部を切除することにより前記段取りドア面に対して斜めに交差するよう配設されており
前記複数の工作機械を並列配置した状態では、各工作機械の前記段取りドア面は前記配置ラインと平行な同一直線上に位置しており、前記各機械本体ドア面は互いに平行をなしており、前記各機械本体ドアは、段取りドア方向からみた際に視認可能で、かつ隣接する機械本体の側面とで作業スペースを形成している
ことを特徴とする加工ライン。
【請求項2】
請求項1に記載の加工ラインにおいて、
前記機械本体ドア面は、ワークを保持して回転駆動する主軸の軸線と略平行であり、前記段取りドア面は、前記軸線に対して斜めに配置されている
ことを特徴とする加工ライン。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の加工ラインにおいて、
前記ワーク交換装置は、前記機械本体に第1位置から第2位置へと移動可能に設けられた第1ワーク交換部と、該第1ワーク交換部に第3位置から第4位置へと移動可能に設けられた第2ワーク交換部とを有し、
前記第1ワーク交換部と前記第2ワーク交換部との動作を連動させて行うことにより、前記段取り部に搬入されたワークを前記ワーク保持部が保持可能の位置に移動させる
ことを特徴とする加工ライン。
【請求項4】
請求項3に記載の加工ラインにおいて、
前記第1ワーク交換部は、ワークを保持して回転駆動する主軸の軸線を含む平面と平行な第1平面上で動作を行い、前記第2ワーク交換部は、前記第1平面に直交する第2平面上で動作を行う
ことを特徴とする加工ライン
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業者が機械本体にアクセスする機械本体ドアと、作業者がワーク交換装置へのワークの段取りを行う段取りドアとを備えた工作機械に関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械においては、機械本体を機体カバーで囲むとともに、該機体カバーに開口を設け、該開口をドアで開閉するように構成するのが一般的である。
【0003】
例えば、前記機体カバーの正面に2つのドアを設け、一方のドアにより作業者が例えば内部のワーク交換装置へのワークの段取りをすることができ、他方のドアにより作業者が例えば機械本体にアクセスできるものがある(例えば特許文献1参照)。
【0004】
また前記機体カバーの正面に正面扉を設け、側面に側面扉を設け、一方の扉により例えば機械本体にアクセスし、他方の扉により例えばワークの段取りを可能としたものがある(例えば特許文献2参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−277069号公報
【特許文献2】特開平5−96433号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで前記特許文献1に記載の従来装置では、ワークの段取り作業を行う作業者と、機械本体にアクセスする作業者とが隣り合って位置するため干渉し易いという問題があり、また機械全体の幅寸法が大きくなるという問題もある。
【0007】
一方、前記特許文献2に記載の従来装置では、機械本体にアクセスする作業者とワークの段取り作業を行う作業者との干渉を回避できる。しかし前記工作機械を複数台並列配置して加工ラインを構成する場合、各工作機械の間に作業者が機械本体にアクセスする等の作業のためのスペースを確保する必要があり、そのため前記並列配置する各工作機械の間隔が広くなり、その結果、前記加工ライン長が長くなるといった問題が生じる。
【0008】
本発明は、前記段取り作業を行う作業者と機械本体にアクセスする作業者の干渉を回避できるとともに、前記作業スペースを確保しながら各工作機械の配置間隔を狭くでき、加工ラインを構成した場合のライン長を短縮できる工作機械を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の発明は、作業者が平面視略長方形状の機械本体内にアクセスするための開口を開閉する機械本体ドアと、作業者が前記機械本体内に配置されたワーク交換装置へのワークの搬入・搬出を行うための開口を開閉する段取りドアとを備えた複数の工作機械を配置ライン上に並列配置した加工ラインであって、
前記各工作機械において、作業者が前記段取りドアを開閉する際に向き合う段取りドア面は前記長方形の正面部分に配設され、前記作業者が前記機械本体ドアを開閉する際に向き合う機械本体ドア面は前記長方形の正面部分と側面部分とのコーナ部を切除することにより前記段取りドア面に対して斜めに交差するよう配設されており前記複数の工作機械を並列配置した状態では、各工作機械の前記段取りドア面は前記配置ラインと平行な同一直線上に位置しており、前記各機械本体ドア面は互いに平行をなしており、前記各機械本体ドアは、段取りドア方向からみた際に視認可能で、かつ隣接する機械本体の側面とで作業スペースを形成していることを特徴している。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1に記載の加工ラインにおいて、
前記機械本体ドア面は、ワークを保持して回転駆動する主軸の軸線と略平行であり、前記段取りドア面は、前記軸線に対して斜めに配置されていることを特徴としている。
【0011】
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載の加工ラインにおいて、
前記ワーク交換装置は、前記機械本体に第1位置から第2位置へと移動可能に設けられた第1ワーク交換部と、該第1ワーク交換部に第3位置から第4位置へと移動可能に設けられた第2ワーク交換部とを有し、前記第1ワーク交換部と前記第2ワーク交換部との動作を連動させて行うことにより、前記段取り部に搬入されたワークを前記ワーク保持部が保持可能の位置に移動させることを特徴としている。
【0012】
請求項4の発明は、請求項3に記載の加工ラインにおいて、
前記第1ワーク交換部は、ワークを保持して回転駆動する主軸の軸線を含む平面と平行な第1平面上で動作を行い、前記第2ワーク交換部は、前記第1平面に直交する第2平面上で動作を行うことを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
請求項1の発明によれば、複数の工作機械を、作業者が機械本体ドアを開閉する際に向き合う面が互いに平行で、かつ作業者が段取りドアを開閉する際に向き合う面が同一直線上に位置するように配置したので、前記各工作機械の配置間隔を狭くしても作業者が機械本体ドアの前に立って機械本体にアクセスする場合に必要な空間を確保し易い。従って必要な機械台数を確保しつつ、加工ライン長を短縮できる。
また、作業者が機械本体へアクセスするための機械本体ドアを開閉する際に向き合う面と、作業者がワークを搬入,搬出するための段取りドアを開閉する際に向き合う面とが斜めに交差するように配置されているので、機械本体ドアの前に立って機械本体にアクセスする作業者と、段取りドアの前に立ってワークの段取り作業を行う作業者とが干渉するのを回避できる。従って機械本体のメンテナンス中であってもワーク段取り作業を支障なく行うことができる。
【0015】
さらにまた、機械本体ドアと段取りドアとを同一直線をなすように隣接配置した場合に比較して、一方のドアが他方のドアに対して斜めになっている分だけ機械全体の幅を小さくできる。
【0016】
また請求項2の発明によれば、作業者が機械本体ドアの開閉時に向き合う面を主軸の軸線と略平行とし、作業者が段取りドア開閉時に向き合う面を前記軸線に対して斜めに配置したので、前記請求項1の構成を支障なく実現でき、該請求項1の作用効果を確実に得ることができる。
【0017】
請求項3の発明によれば、ワーク交換装置を、機械本体に第1位置から第2位置へと移動可能に設けられた第1ワーク交換部と、該第1ワーク交換部に第3位置から第4位置へと移動可能に設けられた第2ワーク交換部とを有するとしたので、段取り部に搬入されたワークの、ワーク保持部が保持可能の位置への移動経路の自由度を向上できる。
【0018】
また、第1ワーク交換部の第1位置から第2位置への移動と、第2ワーク交換部の第3位置から第4位置への移動とを連動させて、つまり第1位置から第2位置への移動と第3位置から第4位置への移動を同時進行的に行うようにしたので、段取り部に搬入されたワークをワーク保持部が保持可能の位置に短時間で移動させることができる。例えば従来装置のように、中立位置とワーク供給位置との間で前進又は後退させ、続いて前記中立位置とワーク渡し位置との間で回動させる場合はそれだけワーク交換に要する時間が長くなる。
【0019】
また、機械本体に第1ワーク交換部を設け、該第1ワーク交換部に第2ワーク交換部を設けたので、従来装置のように、ワーク搬入装置とワーク搬出装置を別個独立に設けた場合に比較して機械全体を小型化できる。
【0020】
請求項4の発明によれば、前記第1ワーク交換部は、ワークを保持して回転駆動する主軸の軸線を含む平面と平行な第1平面上で動作を行い、前記第2ワーク交換部は、前記第1平面に直交する第2平面上で動作を行うようにしたので、第1ワーク交換部の動作と第2ワーク交換部の動作とを、互いに干渉することなく連動させることができ、ワーク交換時間を確実に短縮できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の実施例1に係るタレット旋盤を複数台並列配置した加工ラインの模式平面図である。
図2】前記タレット旋盤の斜視図である。
図3】前記タレット旋盤の模式平面図である。
図4】前記タレット旋盤に備えられたワーク交換装置の斜視図である。
図5】前記ワーク交換装置の平面図である。
図6】前記ワーク交換装置の正面図である。
図7】前記ワーク交換装置の右側面図である。
図8】前記ワーク交換装置の左側面図である。
図9】前記ワーク交換装置の動作説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0024】
図において、1は1つの素材ワークに旋削加工や穴あけ加工等を順次加えて完成品ワークとする加工ラインである。この加工ライン1は、本実施例のタレット旋盤(工作機械)3を配置ラインL上に複数台並列配置した構成となっている。本実施例加工ライン1の場合、各タレット旋盤3,3間でのワークの受渡しは作業者M2 によって行われるが、勿論受渡し機構を設けて自動化しても良い。
【0025】
前記タレット旋盤3は、機械本体3aと、該機械本体3aにクーラントや動力の供給等を行う付帯装置3bとを有する。前記機械本体3aは、ベッド4上に主軸台5をZ軸(主軸5aの軸線5a′)方向及び該Z軸に直角のY軸(上下)方向に移動可能に配設し、刃物台6を前記Z軸及びY軸に直角のX軸(前後)方向に移動可能に配設し、周囲を機体カバー7で囲んだ概略構造を有する。
【0026】
前記主軸5aの先端部にはワークを保持するチャック5bが配設されており、該チャック5bは複数の爪を前記軸線5a′に直角方向に進退させることによりワークを保持し又は開放する。また前記刃物台6の先端部には多数の工具を有するタレット6aが回転割り出し可能に配設されている。前記主軸5aを、前記チャック5bにワークを保持して回転駆動しつつ該ワークに前記タレット6aの工具を作用させることで加工が行われる。
【0027】
ここで前記機械本体3aは、前記配置ラインLに対して前記主軸5aの軸線5a′が所定の角度θ、本実施例では45°をなすように配置されている。一方、前記機体カバー7は平面視で長方形状に形成され、その長辺が前記配置ラインLに対して90°をなすように配置されている。
【0028】
そして前記ベッド4及び前記機体カバー7には作業者M1が機械本体3aのメンテナンス等を行う際に位置する作業スペースAが、前記長方形のコーナ部を切り欠くようにして形成されている。また前記機体カバー7の前記作業スペースA部分には、作業者M1が機械本体3aのメンテナンス等を行う際に前記主軸台5や刃物台6等にアクセスするための開口7aが形成されており、この開口7aは左右にスライド可能に配設された機械本体ドア8で開閉される。
【0029】
ここで作業者M1が機械本体ドア8を開閉する際に向き合う面、具体的には前記機械本体ドア8の外表面8aは前記主軸台5の軸線5a′と平行になっている。
【0030】
また、前記機体カバー7の前記配置ラインLに面する部分には、作業者M2が段取り部22bにて前記ワーク交換装置2へのワークの搬入,搬出を行う開口7bが形成されており、該開口7bは上下にスライド可能に配置された段取りドア9で開閉される。
【0031】
ここで作業者M2が前記段取りドア9を開閉する際に向き合う面、具体的には閉位置にある前記段取りドア9の外表面9aは前記主軸台5の軸線5a′に対して45°をなしている。従って、前記機械本体ドア8の外表面8aと前記段取りドア9の外表面9aの延長線は45°の角度で斜めに交差している。
【0032】
このようにして前記加工ライン1は、各機械本体3aを、前記各機械本体ドア8の外表面8aが互いに平行をなし、また各段取りドア9の外表面9aが同一直線上に位置するように配置することにより構成されている。
【0033】
前記ワーク交換装置2は、前記機械本体3aのベッド4上に旋回可能に支持された第1ワーク交換部10と、該第1ワーク交換部10に回動可能に支持された第2ワーク交換部11とを有する。
【0034】
前記第1ワーク交換部10は、平面視でL字形状をなす第1アーム12と、該第1アーム12の横辺部12aの端部12a′を前記Y軸に平行な旋回軸a回りに水平方向に旋回可能に支持する軸受部13と、該軸受部13が固定された基板14と、該基板14に固定され、前記第1アーム12を旋回駆動する駆動モータ23とを有する。なお、前記基板14は前記ベッド4に固定されている。また前記第1アーム12の縦辺部12bの端部12b′には軸支部15が形成されている。
【0035】
前記第1アーム12は、前記主軸台5の軸線5a′と平行でかつ前記Y軸と直交する第1平面(図5の紙面と平行な面)上において、前記縦辺部12bが、前記軸線5a′に対して45°をなす第1位置(図9(a)に示す位置)から、前記軸線5a′と一致する第2位置(図9(c)に示す位置)へと移動可能となっている。
【0036】
前記第2ワーク交換部11は、前記第1アーム12の軸支部15に、前記第1平面と平行に配置された回動軸b回りに垂直方向に回動可能に支持された第2アーム16と、該第2アーム16にワークを把持可能に配設された完成品ハンド17及び素材ハンド18と、前記第2アーム16と前記基板14とを連結する駆動ロッド19とを有する。
【0037】
前記第2アーム16は、前記第1平面と直交し、かつ前記完成品ハンド17及び素材ハンド18の軸線同士を結ぶ直線16bを含む第2平面上において、前記第1アーム12の縦辺部12bと平行の第3位置(図6図9(a)に示す位置)から前記縦辺部12bに直角の第4位置(図9(c)に示す位置)へと移動可能に設けられている。
【0038】
前記完成品ハンド17は前記第2アーム16の上面に配設されたベース部17aと、該ベース部17aに、該ハンドの軸線と直角方向に移動可能に配設された3組の爪17bとを有する。前記素材ハンド18も同じ構造のベース部18a,3組の爪18bを有する。なお、前記ベース部17a,18aは該ベース部の軸方向に付勢して設けられており、これによりワーク交換時のショックを緩和するようになっている。
【0039】
前記駆動ロッド19は、前記第1ワーク交換部10の前記第1平面上での移動に連動させて前記第2ワーク交換部11を前記第2平面上で移動させるためのものである。前記駆動ロッド19の一端部19aは前記第2アーム16の先端から前記回動軸bを越えて突出する駆動アーム部16aにボールジョイント20aを介して連結軸dをなすように連結されている。また前記駆動ロッド19の他端部19bは前記基板14の先端部14aにボールジョイント20bを介して連結軸cをなすように連結されている。なお、19cは前記駆動ロッド19の長さを調節し、もって前記第2アーム16の角度位置を調節する調節ねじである。
【0040】
ここで前記駆動アーム部16aとボールジョイント20aとの連結点d′の、前記第1アーム12の旋回軸a回りの前記軸線5a′に近づく方向Bにおける旋回軌跡C1と、前記連結点d′の、前記駆動ロッド19の連結点c回りの前記方向Bにおける旋回軌跡C2とを比較すると、第1アーム12の旋回角度が大きくなるほど大きなずれDが生じる。
【0041】
その結果、第1アーム12の旋回角度が大きくなるに従って、前記駆動ロッド19が前記駆動アーム部16aを引っ張ることにより前記第2アーム16を回動軸b回りに回動させる。
【0042】
前記ずれDは、前記駆動ロッド19と基板14との連結軸cを、前記旋回軸aからの前記方向Bの反対側に偏位させている点、及び前記連結点d′と前記連結軸cとの水平距離(半径)R2を前記連結点d′と前記旋回軸aの水平距離(半径)R1より短く設定している点に起因して生じる。即ち、前記偏位が大きくなるほど、また前記半径R2を半径R1より小さく設定するほど前記ずれDは大きくなり、前記第1アーム12の旋回に対して第2アーム16が大きく回動する。本実施例では、前記偏位及び半径R1,R2を適宜設定することにより、前記第1アーム12が45°旋回する間に前記第2アーム16が90°回動するように構成されている。
【0043】
本実施例のタレット旋盤3では、機械加工中は、ワーク交換装置2は図9(a)又は図3に実線で示す段取り位置(第1位置)に位置しており、第1ワーク交換部10の第1アーム12が主軸5aの軸線5a′に対して45°をなしている。この状態で、作業者M2が段取りドア9を開けて完成品ハンド17から加工済みワークW1を取り出すとともに、素材ハンド18に未加工ワークW2をセットする。なお、この時点では、図3に示すように、段取り領域22bと加工領域22aとは仕切りプレート21で画成されており、機械加工中であっても安全にワークの搬入,搬出を行うことができる。
【0044】
前記機械加工が終了すると、前記仕切りプレート21が待機位置に移動し、ワーク交換装置2の第1ワーク交換部10の第1アーム12が駆動モータ23により旋回軸a回りに旋回駆動される。この旋回に伴って、前記駆動ロッド19が前記ずれDの分だけ前記第2ワーク交換部11の第2アーム16を回動させる(図9(b)参照)。
【0045】
前記第1アーム12が45°旋回されると、前記完成品ハンド17及び素材ハンド18が、前記主軸5のチャック5bに対向する位置、つまり加工済みワークを受取り可能で、未加工ワークを受け渡し可能の位置に移動する(図9(c)参照)。この状態で、主軸5が、Z軸方向及びY軸方向に移動し、チャック5bに保持されている加工済みワークW1が完成品ハンド17に移載され、続いて素材ハンド18に保持されている未加工ワークW2が前記主軸5のチャック5bに移載される。
【0046】
このように本実施例装置では、第1ワーク交換部10の第1アーム12の第1位置から第2位置への移動と、第2ワーク交換部11の第2アーム16の第3位置から第4位置への移動とを連動させて、つまり第1位置から第2位置への移動と第3位置から第4位置への移動を同時進行的に行うようにしたので、段取り部22bに搬入されたワークWを主軸5aのチャック5bが保持可能の位置に短時間で移動させることができる。例えば従来装置のように、中立位置とワーク供給位置との間で前進又は後退させ、続いて前記中立位置とワーク渡し位置との間で回動させる場合はそれだけワーク交換に要する時間が長くなる。
【0047】
また、機械本体3aに第1ワーク交換部10を設け、該第1ワーク交換部10に第2ワーク交換部11を設けたので、従来装置のように、ワーク搬入装置とワーク搬出装置を別個独立に設けた場合に比較して機械全体を小型化できる。
【0048】
また、前記第1ワーク交換部10の第1アーム12は、ワークを保持して回転駆動する主軸5aの軸線5a′を含む平面と平行な第1平面上で動作を行い、前記第2ワーク交換部11の第2アーム16は、前記第1平面に直交する第2平面上で動作を行うようにしたので、第1ワーク交換部10の動作と第2ワーク交換部11の動作とを、互いに干渉することなく連動させることができ、ワーク交換時間を確実に短縮できる。
【0049】
さらにまた、作業者M1が機械本体3aの主軸台5や刃物台6にアクセスするための機械本体ドア8を開閉する際に向き合う面、即ち該ドア8の外表面8aと、作業者M2がワークを搬入,搬出するための段取りドア9を開閉する際に向き合う面、即ち該ドア9の外表面9aとが斜めに交差するように前記機械本体ドア8及び段取りドア9を配置している。より具体的には、前記機械本体ドア8を主軸5aの軸線5a′と平行に配置し、前記段取りドア9を前記軸線5a′に対して斜めに配置したので、機械本体ドア8の前に立って機械本体3aにアクセスする作業者M1と、段取りドア9の前に立ってワークの段取り作業を行う作業者M2とが干渉するのを回避できる。従って機械本体3aのメンテナンス中であってもワーク段取り作業を支障なく行うことができる。
【0050】
また機械本体ドア8と段取りドア9とを同一直線をなすように隣接配置した場合に比較して、一方のドアが他方のドアに対して斜めになっている分だけ機械全体の幅を小さくできる。
【0051】
また、複数のタレット旋盤3,3・・を、作業者M1が機械本体ドア8を開閉する際に向き合う該ドアの外表面8aが互いに平行で、かつ作業者M2が段取りドア9を開閉する際に向き合う該ドアの外表面9aが同一直線上に位置するように配置したので、前記各タレット旋盤3,3の配置間隔を狭くしても作業者M1が機械本体ドア8の前に立って機械本体3aにアクセスする場合に必要な作業スペースAを確保し易い。従って必要な機械台数を確保しつつ、加工ライン長を短縮できる。
【0052】
なお、前記実施例では、第1アーム12の旋回角度が45°であり、第2アーム16の回動角度が90°である場合を説明したが、本発明における旋回角度,回動角度の設定は任意であり、前記実施例に限定されない。
【符号の説明】
【0053】
1 加工ライン
2 ワーク交換装置
3 タレット旋盤(工作機械)
3a 機械本体
5a 主軸
5a′ 軸線
5b チャック(ワーク保持部)
7a 機械本体にアクセスするための開口
7b ワークの搬入・搬出を行うための開口
8 機械本体ドア
8a 機械本体ドア開閉時に向き合う面
9 段取りドア
9a 段取りドア開閉時に向き合う面
10 第1ワーク交換部
11 第2ワーク交換部
22b 段取り部
M1,M2 作業者
W ワーク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9