(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、作業員の腰には依然として大きな負担がかかるため、作業員が大型の板材を持ち運ぶ作業を繰り返し行うことが困難であり、無理に作業を行うと作業員が腰を痛めてしまうおそれがある。その一方で、大型の板材の運搬作業が進まなければ、例えば、工事現場における作業の進捗に遅れが生じるおそれがある。
【0006】
本発明は、このような問題点を解決し、作業員の作業負担が軽減できる板材運搬補助機能付きベストを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、本発明は、次に記載する構成を備えている。
【0008】
(1) 腰椎付近に当てられる板状の腰椎保護部を有し、身体の胴回りに巻き付けられる第1ベルト部と、当該第1ベルト部における身体の背面側の所定部位に基端部が固定され、身体の肩部に掛け回され、身体の正面側に引き下ろされて前記第1ベルト部における所定部位に先端部が取り付けられる一対のベルト体からなる第2ベルト部と、当該第2ベルト部の先端部にそれぞれ取り付けられ、矩形の板材の下端部に係合する溝状の受け部を有する受け金具と、を備え
、
前記受け金具は、前記第2ベルト部の先端部から引出及び引込自在であり、
前記第2ベルト部は、引込んだ前記受け金具を収納する収納部を有する板材運搬補助機能付きベスト。
【0009】
(1)によれば、第1ベルト部を作業員の胴に巻き付けることにより、腰椎が腰椎保護部によって固定されるため、重量物を持ち上げて運ぶ際に作業員の腰に掛かる負担を軽減することができる。また、受け金具によって板状部材の下端部が支持されるため、作業員が手で板状部材の上部あるいは側部を支持することによって、板状部材を安定して持ち運ぶことが可能になる。このように、作業員の作業負担が軽減できる板材運搬補助機能付きベストを提供することが可能になる。
【0011】
また、(1)によれば、使用時以外において、受け金具を第2ベルト部に収納しておくことが可能になる。
【0012】
(2) (1)において、前記一対のベルト体における身体の胸部付近の部位に両端部がそれぞれ取り付けられ、前記一対のベルト体を互いに連結する第3ベルト部を備えることを特徴とする板材運搬補助機能付きベスト。
【0013】
(2)によれば、第2ベルト部が作業員の肩から落下しないように、第2ベルト部を作業員の肩に掛けた状態で維持することが可能になる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、作業員の作業負担が軽減できる板材運搬補助機能付きベストを提供することが可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態における板材運搬補助機能付きベスト1の外観を示す斜視図である。
【0017】
板材運搬補助機能付きベスト1は、第1ベルト部に相当する胴ベルト10と、第2ベルト部に相当する肩掛けベルト20と、当て布22と、第3ベルト部に相当する連結紐24と、受け金具30と、を備えている。
【0018】
胴ベルト10は、ベルト部12、12と、腰椎保護部14と、バックル16と、先端金具18と、を備えている。
ベルト部12、12は、作業員の胴に巻き付ける長尺の帯体である。腰椎保護部14は、作業員の腰椎に当てられる略長方形の板材からなり、作業員の腰椎付近に適合するように表面が湾曲している。
ベルト部12及び腰椎保護部14は、例えば、皮革によって構成されており、腰椎保護部14の長手方向に対向する両側の短辺の中央部から、ベルト部12、12が延びている。
バックル16は、片方のベルト部12の先端部に固定され、先端金具18は、もう片方のベルト部12の先端部に固定される。
【0019】
そして、腰椎保護部14を作業員の腰椎に当てた状態でベルト部12、12を作業員の正面に回し、先端金具18をバックル16に挿入してベルト部12、12を連結する。これにより、胴ベルト10が作業員の胴回りに装着される。
【0020】
なお、
図1に示す例においては、ベルト部12と腰椎保護部14とが一体であるが、それに限らず、ベルト部12と腰椎保護部14とが別体であってもよい、例えば、ベルト部12として高所の作業員が身につける安全帯の胴ベルトに使用する帯体を適用し、腰椎保護部14の長手方向両側部にスリットを形成してそのスリットにベルト部12を通してもよい。
【0021】
肩掛けベルト20は、一対のベルト体20a、20aと、収納部20b、20bと、を備えている。
【0022】
ベルト体20a、20aは、高所の作業員が身につける安全帯の胴ベルトに使用する帯体からなる。一対のベルト体20a、20aの基端部は、腰椎保護部14の上側両端部にそれぞれ固定される。また、ベルト体20a、20aの長さは、身体の肩部に掛け回されて、身体の正面側に引き下ろされた場合に、先端部が胴ベルト10に到達する程度に設定されている。ベルト体20a、20aの先端部は、ベルト部12、12にそれぞれ取り付けられる。このため、胴ベルト10を胴回りに装着してベルト部12、12を肩に掛けた場合に、ベルト体20a、20aの先端部は、作業員のへその下に位置付けられるバックル16の両側に配置される。
【0023】
収納部20b、20bは、下方が開放された筒状に形成されており、後述する受け金具30が収納される。収納部20b、20bは、ベルト体20a、20aにおける作業員の胸部の位置から他端までの部分に形成されており、ベルト体20aより若干太い布体における長手方向に延びる両端部を、ベルト体20aの長手方向に延びる両端部に縫い付けることによって構成される。
【0024】
当て布22は、作業員の背中に配置される略矩形の布からなり、当て布22の両端部に一対のベルト体20a、20aがそれぞれ縫い付けられる。
連結紐24は、2本の帯状の紐部24a、24aと、2本の紐部24a、24aを連結する連結部材24bとからなる。紐部24a、24aの一端部は、ベルト体20a、20aにおける作業員の胸部に相当する位置にそれぞれ縫い付けられる。連結部材24bは、互いに連結及び分離可能な係合部24cと被係合部24dとからなり、係合部24cは、一方の紐部24aの他端部に取り付けられ、被係合部24dは、他方の紐部24aの他端部に取り付けられる。
【0025】
受け金具30は、肩掛けベルト20の収納部20bに収納され、詳細については後述するが、石膏ボードのような矩形の大型の板材の下端部を受ける金属部材である。
【0026】
図2は、受け金具30の外観を示す斜視図である。受け金具30は、帯状の金属板からなり、長手方向の両端部が断面略L字状に形成されている。以下の説明の便宜上、受け金具30における下方のL字部分をボード受け部30a、上方のL字部分をフック部30b、金属板におけるボード受け部30aとフック部30bとの間の部分を本体部30c、と称することにする。
【0027】
ボード受け部30aは、金属板の長手方向の下端部を90度折り曲げ、更にこの下端部の先端部分を上方に90度折り曲げることによって溝状に構成される。ボード受け部30aの溝幅は、例えば石膏ボードの厚さよりも大きく設定されている。なお、ボード受け部30aの先端部には、曲げによって丸く形成されている。
【0028】
フック部30bは、金属板の長手方向の上端部を90度折り曲げ、更にこの上端部の先端部分を下方に90度折り曲げることによって鉤状に構成される。
【0029】
また、受け金具30には、受け金具30の幅より若干長い長孔を有するリング金具32が挿入される。このリング金具32は、フック部30bに係合する部材である。
【0030】
図3は、収納部20bの内部及び収納部20bの周辺の構成を示す側面図である。
図3(a)に示すように、収納部20b内において、リング金具32が、ベルト体20aの先端部に配置されている。具体的には、リング金具32は、長孔の方向がベルト体20aの長手方向に直角に交差するように配置され、布部材等によって揺動自在に取り付けられている。布部材等は、リング金具32における片方の長辺部分を支持しているため、リング金具32におけるもう片方の長辺部分は揺動可能である。
【0031】
このリング金具32の長孔に、受け金具30が通される。この時、ボード受け部30a及びフック部30bが正面側に向けられる。
これにより、受け金具30は、下方に引き出された場合に、
図3(b)に示すように、受け金具30のフック部30bがリング金具32に係合するまで引き出し可能になる。受け金具30を引き出す長さは、リング金具32の位置によって規定される。本実施形態によれば、作業員が胴ベルト10を胴に巻き付け、肩掛けベルト20を両肩に掛けた状態において受け金具30を引き出した場合に、ボード受け部30aが作業員の歩行の妨げにならないように、リング金具32の位置が設定されている。
【0032】
収納部20bに下部には、下部の開口を開閉する蓋部34が設けられている。蓋部34は、開口を開閉することが可能な程度の大きさの布部材36と、面ファスナ38とからなる。
【0033】
布部材36は、一端部が収納部20bの内部におけるベルト体20aの下部に縫い付けられ、他端部には、面ファスナ38におけるループ側が固定されている。また、収納部20bの外面の下部に面ファスナ38におけるフック側が固定されている。そして、面ファスナ38のループ側とフック側とを密着させることにより、収納部20bの下部の開口が布部材36によって閉鎖される。
【0034】
また、ベルト体20a、20aの先端部の裏側には、胴ベルト10の両端部の幅より若干長い紐状部材39がベルト体20aの長尺方向に沿って配置されており、この紐状部材39の両端部がベルト体20a、20aにそれぞれ縫い付けられている。そして、この紐状部材39の内側に胴ベルト10のベルト部12、12がそれぞれ通されることにより、肩掛けベルト20の先端部が胴ベルト10に取り付けられる。
【0035】
図4は、本実施形態における板材運搬補助機能付きベスト1を作業員が着用した状態を示す正面図である。
作業員は、肩掛けベルト20と胴ベルト10とからなる環状部分に手を通して、肩掛けベルト20を両肩に掛け、腰椎保護部14を作業員の腰椎付近に配置した後、先端金具18(
図1参照)をバックル16に挿入して作業員の胴に胴ベルト10を装着する。更に、連結部材24bの係合部24cと被係合部24dとを連結することにより、
図4に示すように、板材運搬補助機能付きベスト1が作業員に装着される。
【0036】
次に、本実施形態における板材運搬補助機能付きベスト1を用いた板材の運搬について説明する。なお、以下の説明においては、トラックの荷台に積載された矩形の石膏ボードを、作業員が運搬する場合を例として説明する。
【0037】
まず、作業員は、板材運搬補助機能付きベスト1を着用した後、受け金具30の本体部30cを下方に引き出してボード受け部30aを胴ベルト10の下方に位置付ける。
【0038】
次に、作業員は、トラックの荷台から石膏ボード100(
図5参照)を水平に引き出す。石膏ボード100が半分以上引き出されると、石膏ボード100の下端が自重によって下方に移動して、石膏ボード100が傾く。この時、作業員は、石膏ボード100の下端部を支持しながら、石膏ボード100の下端部を受け金具30のボード受け部30aに載せる。ここで、石膏ボード100の下端部がボード受け部30aに載せられると、胴ベルト10が前方に引っ張られるため、腰椎保護部14が腰椎部分に密着するようになり、以降の作業において、作業員の腰椎部分が腰椎保護部14によって固定される。
【0039】
そして、作業員は両手で石膏ボード100の側部あるいは上部を支持し、石膏ボード100の下端部を軸として、石膏ボード100の上端部を作業員側に引き寄せるように回動させる。これにより、石膏ボード100はボード受け部30a上に立てられる。そして、
図5に示すように、作業員が石膏ボード100の上部あるいは側部を両手で支持することにより、石膏ボード100は立てた状態で維持される。そして、作業員は、その状態を維持しながら石膏ボード100を運搬する。
【0040】
ところで、石膏ボード100の縦幅が長い場合には、石膏ボード100の上端部に作業員の手が届かないことがある。この場合、
図6に示す補助具102が用いられる。
図6に示すように、補助具102は、長尺の金属製のシャフト部103と、シャフト部103の基端部に設けられた略正三角形の環状の把持部104と、シャフト部103の先端部に形成された引掛部105と、把持部104に取り付けるグリップ106と、からなる。シャフト部103は、把持部104の一つの頂点を基端として、把持部104を形成する正三角形の仮想垂直二等分線に沿って延びている。グリップ106は、把持部104におけるシャフト部103が延びる頂点に対向する一辺を構成する棒状部分に固定されており、当該棒状部分の径を太くするものである。
【0041】
図7は、作業員が板材運搬補助機能付きベスト1及び石膏ボード100を用いて石膏ボード100を運搬する様子を示す説明図である。トラックの荷台から石膏ボードを水平に引き出して、石膏ボード100の下端部をボード受け部30aに載せた後、作業員は両手に補助具102のグリップ106をそれぞれ把持し、引掛部105を石膏ボード100の上部に引っ掛けて、石膏ボードの上端部を作業員側に引き寄せるように回動させる。これにより、
図7に示すように、石膏ボード100はボード受け部30a上に立てられる。そして、作業員が、補助具102を用いて石膏ボード100の上部を支持することにより、石膏ボード100はボード受け部30a状に立てた状態で維持される。そして、作業員は、その状態を維持しながら石膏ボード100を運搬する。
【0042】
なお、板材運搬補助機能付きベスト1を着用しない場合あるいは石膏ボード100を運搬しない場合には、受け金具30を肩掛けベルト20の収納部20bに収納しておくことが望ましい。これにより、ボード受け部30aのL字部分が外側に突出しないため、ボード受け部30aが他の部材に引っ掛かってしまうことが低減する。
【0043】
図8は、本発明の他の実施形態における板材運搬補助機能付きベスト2の要部構成を示す説明図である。なお、
図8に示す他の実施形態の板材運搬補助機能付きベスト2において、
図1〜5に示す板材運搬補助機能付きベスト1における部材と同一の部材あるいは同一機能の部材については、同一の符号を付して、詳細な説明は省略する。
図8に示す板材運搬補助機能付きベスト2は、
図1〜4に示す板材運搬補助機能付きベスト1における肩掛けベルト20及び受け金具30に係る構成が一部異なっている。
【0044】
板材運搬補助機能付きベスト2の肩掛けベルト20は、板材運搬補助機能付きベスト1の肩掛けベルト20における、収納部20bを構成する布体及びリング金具32がなく、一枚の帯状に形成されている。
【0045】
板材運搬補助機能付きベスト2の受け金具30は、
図2に示す板材運搬補助機能付きベスト1の受け金具30における上端部のフック部30bの代わりに、
図8に示すように、蝶番部30dを形成したものである。蝶番部30dは、肩掛けベルト20におけるベルト体20a、20aの先端部に固定されており、本体部30cは正面側に回動する。なお、受け金具30を構成する金属は、磁石が吸着可能なものとする。
【0046】
また、肩掛けベルト20には、磁石40が固定されている。この磁石40は、肩掛けベルト20における、本体部30cを回動させた場合にボード受け部30aが当接する部位に配置されている。
【0047】
そして、作業員は、石膏ボード100を運搬する作業を行う場合には、板材運搬補助機能付きベスト2を着用した後、受け金具30を下方に回動させて、受け金具30を肩掛けベルト20の先端部から引き出した状態とする。また、板材運搬補助機能付きベスト2を着用しない場合あるいは石膏ボード100を運搬しない場合に、受け金具30を上方に回動させて、
図9に示すように、ボード受け部30aを磁石40に吸着させておく。このように、受け金具30を回動自在に構成し、肩掛けベルト20に磁石40を固定した構成が、引込んだ受け金具30を収納する収納部に相当する。
【0048】
以上説明したように構成された本実施形態によれば、胴ベルト10を作業員の胴に巻き付けることにより、腰椎が腰椎保護部14によって固定されるため、重量物を持ち上げて運ぶ際に作業員の腰に掛かる負担を軽減することができる。また、受け金具30によって石膏ボードのような大型で重量のある矩形の板状部材の下端部が支持されるため、作業員は、手で板状部材の上部あるいは側部を支持することによって、板状部材を安定して持ち運ぶことが可能になる。このように、作業員の作業負担が軽減できる板材運搬補助機能付きベスト1を提供することが可能になる。
【0049】
また本実施形態によれば、受け金具30を、使用時以外において肩掛けベルト20に収納しておくことが可能になる。これにより、ボード受け部30aが外部に露出することが防止され、L字部分が他の部材に引っ掛かってしまうことを低減することが可能になる。特に他の実施形態においては、ボード受け部30aが磁石40に吸着した状態では、ボード受け部30aのL字部分が外側に突出しないため、ボード受け部30aが他の部材に引っ掛かってしまうことをより確実に低減することが可能になる。
【0050】
また本実施形態によれば、ベルト体20a、20aを連結紐24によって連結することにより、肩掛けベルト20が作業員の肩から落下しないように、肩掛けベルト20を作業員の肩に掛けた状態で維持することが可能になる。
【0051】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の実施形態は、上述した実施形態に限るものではない。例えば、上述した実施形態における板材運搬補助機能付きベスト1は、基本的にベルト材によって構成されているが、それに限らず、例えば、袖のない前開きの着衣の裏側あるいは表側に、板材運搬補助機能付きベスト1における胴ベルト10及び肩掛けベルト20を縫い付けて、作業着として使用可能にしてもよい。