特許第6198797号(P6198797)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6198797マトリクスメタロプロティナーゼ9に対する抗体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6198797
(24)【登録日】2017年9月1日
(45)【発行日】2017年9月20日
(54)【発明の名称】マトリクスメタロプロティナーゼ9に対する抗体
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/40 20060101AFI20170911BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20170911BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20170911BHJP
   C12N 15/09 20060101ALI20170911BHJP
   G01N 33/573 20060101ALI20170911BHJP
【FI】
   C07K16/40ZNA
   A61K39/395 P
   A61P35/00
   C12N15/00 A
   G01N33/573 A
【請求項の数】13
【全頁数】30
(21)【出願番号】特願2015-208653(P2015-208653)
(22)【出願日】2015年10月23日
(62)【分割の表示】特願2013-526186(P2013-526186)の分割
【原出願日】2011年8月26日
(65)【公開番号】特開2016-20389(P2016-20389A)
(43)【公開日】2016年2月4日
【審査請求日】2015年10月23日
(31)【優先権主張番号】61/377,886
(32)【優先日】2010年8月27日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512043588
【氏名又は名称】ギリアド バイオロジクス,インク.
【氏名又は名称原語表記】GILEAD BIOLOGICS,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100080816
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 朝道
(74)【代理人】
【識別番号】100098648
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 潔人
(74)【代理人】
【識別番号】100119415
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 充
(72)【発明者】
【氏名】マコーリー、スコット アラン
(72)【発明者】
【氏名】バイスバーグ、マリア
【審査官】 西 賢二
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/048432(WO,A1)
【文献】 国際公開第2009/111450(WO,A2)
【文献】 J. Mol. Biol.,2007年,Vol.371,p.989-1006
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00−15/90
C07K 1/00−19/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS/WPIX(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
免疫グロブリン重鎖ポリペプチドまたはその抗原結合フラグメント、および、免疫グロブリン軽鎖ポリペプチドまたはその抗原結合フラグメント、
を含むMMP9結合タンパク質であって、
当該MMP9結合タンパク質は、MMP9に特異的に結合するものであり;
MMP9に対する当該MMP9結合タンパク質の結合が、MMP9の酵素的な活性を阻害するものであり;
さらに当該MMP9の酵素的な活性の阻害は非競合的であること
MMP9結合タンパク質の免疫グロブリン重鎖ポリペプチドまたはその抗原結合フラグメントは、配列番号:13−15に規定される相補性決定領域(CDR)を含み、又は、当該MMP9結合タンパク質の免疫グロブリン軽鎖ポリペプチドまたはその抗原結合フラグメントは、配列番号:16−18に規定されるCDRを含み、及び、
当該MMP9結合タンパク質が、ヒトMMP9に対する結合に関して、配列番号:13−15に規定されるCDRを含む重鎖ポリペプチドおよび配列番号:16−18に規定されるCDRを含む軽鎖ポリペプチドを含む抗体と競合する
MMP9結合タンパク質。
【請求項2】
請求項1のMMP9結合タンパク質であって、当該MMP9結合タンパク質の免疫グロブリン重鎖ポリペプチドまたはその抗原結合フラグメントが、配列番号:13−15に規定される相補性決定領域(CDR)を含むMMP9結合タンパク質。
【請求項3】
請求項1のMMP9結合タンパク質であって、当該MMP9結合タンパク質の免疫グロブリン軽鎖ポリペプチドまたはその抗原結合フラグメントが、配列番号:16−18に規定されるCDRを含むMMP9結合タンパク質。
【請求項4】
請求項1からのいずれか1項に記載のMMP9結合タンパク質であって、当該MMP9結合タンパク質が、R162、E111、D113およびI198のアミノ酸残基を含むヒトMMP9のエピトープに結合するMMP9結合タンパク質。
【請求項5】
請求項1からのいずれか1項に記載のMMP9結合タンパク質であって、当該MMP9結合タンパク質の重鎖ポリペプチドが、配列番号:1、3、5、6、7、および8からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むMMP9結合タンパク質。
【請求項6】
請求項のMMP9結合タンパク質であって、当該MMP9結合タンパク質の重鎖ポリペプチドが、配列番号:3に規定されるアミノ酸配列を含むMMP9結合タンパク質。
【請求項7】
請求項のMMP9結合タンパク質であって、当該MMP9結合タンパク質の重鎖ポリペプチドが、配列番号:7に規定されるアミノ酸配列を含むMMP9結合タンパク質。
【請求項8】
請求項1からのいずれか1項に記載のMMP9結合タンパク質であって、当該MMP9結合タンパク質の軽鎖ポリペプチドが、配列番号:2、4、9、10、11、および12からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むMMP9結合タンパク質。
【請求項9】
請求項のMMP9結合タンパク質であって、当該MMP9結合タンパク質の軽鎖ポリペプチドが、配列番号:4に規定されるアミノ酸配列を含むMMP9結合タンパク質。
【請求項10】
請求項のMMP9結合タンパク質であって、当該MMP9結合タンパク質の軽鎖ポリペプチドが、配列番号:12に規定されるアミノ酸配列を含むMMP9結合タンパク質。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか1項に記載のMMP9結合タンパク質および医薬的に許容可能な担体を含む医薬組成物。
【請求項12】
MMP9活性を有する腫瘍または腫瘍関連組織を有する被検体において、MMP9活性を阻害する方法に用いるための医薬組成物であって、
当該方法は、当該被検体に請求項11の医薬組成物を、MMP9活性を阻害するのに有効な量で投与することを含み、当該MMP9活性が、当該被検体において阻害されることを特徴とする医薬組成物。
【請求項13】
被検体の組織におけるMMP9発現を検出する方法であって、当該方法が、
当該被検体からの組織サンプルを請求項1から10の何れか1項に記載の単離されたMMP9結合タンパク質と接触させること;及び
MMP9の存在または非存在を検出することを含み、
当該組織サンプルにおけるMMP9の存在が、組織において当該MMP9が発現されることを検出する
ことを特徴とする検出方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互引用】
【0001】
本出願は、2010年8月27日に出願された米国仮特許出願シリアル番号61/377,886号の優先権の利益を主張し、この出願は、それらの全体が引用によって本願に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本開示は、細胞外酵素、細胞外マトリクス酵素、プロテアーゼおよび免疫学の分野に関する。
【背景技術】
【0003】
マトリクスメタロプロティナーゼ(MMP)は、細胞外マトリクスの形成および再構築に関与する細胞外酵素のファミリーである。これらの酵素は、3つのヒスチジン残基により亜鉛原子が配位される、保存された触媒ドメインを含む。近年において、20を超えるこのファミリーのメンバーが知られ、コラゲナーゼ、ゼラチナーゼ、ストロメリシン、マトリリシン、エナメリシンおよび膜MMPを含む多くの群にまとめられる。
【0004】
MMP2およびMMP9は、マトリクスメタロプロティナーゼのゼラチナーゼ群に属する。シグナルペプチド、プロペプチド、および、大部分のMMPに共通する、触媒ドメイン、亜鉛結合ドメイン、および、ヘモペキシン様ドメインを含むことの他に、ゼラチナーゼはまた、複数のフィブロネクチン様ドメインおよびO−グリコシル化ドメインを含む。
【0005】
所定のMMPの異常な活性が、腫瘍成長、転移、炎症および血管疾病に関与することが分かっている。たとえば、Hu et al. (2007) Nature Reviews: Drug Discovery 6:480-498を参照。この理由から、特定の治療的な状況において1つ以上のMMPの活性を阻害することが望まれる。しかしながら、ある種の他のMMPの活性は、しばしば正常な機能が要求される。大部分のMMP阻害剤は、保存された触媒ドメインをターゲットとしているので、その結果、多くの異なったMMPを阻害し、これらの治療的な使用は、本質的で、病因と関係がないMMPの阻害に起因する副作用を引き起こしている。
【0006】
この問題にも関わらず、酵素的活性の阻害は、一般的に触媒ドメインをターゲットとする阻害剤を要求するという理由から、特定のMMPに特異的な阻害剤を開発することは困難であることが証明されている。それ故、マトリクスメタロプロティナーゼ酵素的活性の大部分の阻害剤は、それら[MMP]の触媒ドメインの相同性に起因して、2つ以上のMMPと反応する可能性がある。したがって、単一のMMPの触媒活性を特異的に阻害し、そして他のMMPと反応しない治療的な薬剤の必要性が依然として残っている。
[先行技術文献]
[非特許文献]
[非特許文献1]Hu et al. (2007) Nature Reviews: Drug Discovery 6:480-498
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本開示は、マトリクスメタロプロティナーゼ9(MMP9)タンパク質(MMP9はまた、ゼラチナーゼBとして知られる)に結合する、結合タンパク質(たとえば、抗体およびその抗原結合フラグメント)を含む組成物および使用の方法を提供し、この場合、結合タンパク質は、免疫グロブリン(Ig)重鎖(または、その機能的なフラグメント)およびIg軽鎖(または、その機能的なフラグメント)を含む。本開示は、さらに、MMP9に特異的に結合するが、他の関連するマトリクスメタロプロティナーゼには結合しない、”MMP9結合タンパク質”を提供する。そのようなMMP9結合タンパク質は、たとえば、他のマトリクスメタロプロティナーゼの活性に直接的に影響を及ぼさず、MMP9の特異的な調節(modulation)(たとえば、阻害)を得る必要がある、またはそれが望まれる適用分野における使用が見出される。したがって、本開示の或るいくつかの実施形態において、抗MMP9抗体は、MMP9の活性の特異的な阻害剤である。とりわけ、本願で開示されるMMP9結合タンパク質は、他の関連するマトリクスメタロプロティナーゼの正常な機能を許容する一方、MMP9の阻害に有用であろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かくて、本開示は、とりわけ以下の実施形態を提供する:
【0009】
1.免疫グロブリン重鎖またはその機能的なフラグメント、および免疫グロブリン軽鎖またはその機能的なフラグメントを含むMMP9結合タンパク質であって、当該タンパク質が、MMP9以外のマトリクスメタロプロティナーゼに結合しないMMP9結合タンパク質。
【0010】
2.実施形態1のタンパク質であって、当該重鎖が、配列番号:13−15のうち1つ以上から選択される相補性決定領域(complementarity-determining region,(CDR))を含み、および当該軽鎖が、配列番号:16−18のうち1つ以上から選択されるCDRを含むMMP9結合タンパク質。
【0011】
3.実施形態2のタンパク質であって、当該重鎖が、配列番号:3または5−8からなる群から選択される可変領域を含み、および当該軽鎖が、配列番号:4または9−12からなる群から選択される可変領域を含むMMP9結合タンパク質。
【0012】
4.実施形態1のタンパク質であって、当該重鎖が、IgGであるMMP9結合タンパク質。
【0013】
5.実施形態1のタンパク質であって、当該軽鎖が、カッパ鎖であるMMP9結合タンパク質。
【0014】
6.実施形態1のタンパク質であって、当該タンパク質のMMP9に対する結合が、MMP9の酵素的活性を阻害するMMP9結合タンパク質。
【0015】
7.実施形態6のタンパク質であって、当該阻害が、非競合的であるMMP9結合タンパク質。
【0016】
8.実施形態1のタンパク質であって、当該重鎖が、配列番号:19−22からなる群から選択されるヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドによってエンコードされており、および当該軽鎖が、配列番号:23−26からなる群から選択されるヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドによってエンコードされているMMP9結合タンパク質。
【0017】
9.配列番号:19−26からなる群から選択されるヌクレオチド配列を有する1つ以上のポリヌクレオチドを含むベクター。
【0018】
10.実施形態9のベクターを含む細胞。
【0019】
11.実施形態1のタンパク質を含む医薬組成物。
【0020】
12.実施形態9のベクターを含む医薬組成物。
【0021】
13.実施形態10の細胞を含む医薬組成物。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、重鎖のヒト化変異体(VH1-VH4)のアミノ酸配列と共に、ヒト化に起因するフレームワーク(framework)アミノ酸配列における違いを表すように整列させた、マウスモノクローナル抗MMP9抗体(AB0041)の重鎖可変領域のアミノ酸配列を表す。CDRはイタリックで表され、元(親)であるマウスモノクローナル[抗体]と比較して、ヒト化変異体において異なるアミノ酸に下線が引かれている。
【0023】
図2図2は、この軽鎖のヒト化変異体(Vk1-Vk4)のアミノ酸配列と共に、ヒト化に起因するフレームワークアミノ酸配列における違いを表すように整列させた、マウスモノクローナル抗MMP9抗体(AB0041)の軽鎖可変領域のアミノ酸配列を表す。CDRは、イタリックで表され、元であるマウスモノクローナル[抗体]と比較して、ヒト化変異体において異なるアミノ酸に下線が引かれている。
【0024】
図3図3は、MMP9タンパク質の概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
[詳細な説明]
本開示の実施には、他に示されない限り、細胞生物学、毒物学、分子生物学、生化学、細胞培養、免疫学、腫瘍学、組換えDNAの分野および、当該技術分野の技能に含まれる関連分野における標準的な方法および従来技術を採用する。その様な技術は、文献に記載されており、および、それ故、当該技術分野の技能者(当業者)に利用可能である。たとえば、Alberts, B. et al., "Molecular Biology of the Cell," 5th edition, Garland Science, New York, NY, 2008; Voet, D. et al. "Fundamentals of Biochemistry: Life at the Molecular Level," 3rd edition, John Wiley & Sons, Hoboken, NJ, 2008; Sambrook, J. et al., "Molecular Cloning: A Laboratory Manual," 3rd edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, 2001; Ausubel, F. et al., "Current Protocols in Molecular Biology," John Wiley & Sons, New York, 1987および定期的な更新; Freshney, R.I., "Culture of Animal Cells: A Manual of Basic Technique," 4th edition, John Wiley & Sons, Somerset, NJ, 2000; およびシリーズ"Methods in Enzymology," Academic Press, San Diego, CAを参照する。
【0026】
たとえば、2010年8月に最終更新された「Current Protocols in Immunology,」(R. Coico、シリーズの編集者)、Wileyも参照する。
【0027】
[MMP9結合タンパク質」
本開示は、マトリクスメタロプロティナーゼ9(MMP9)タンパク質(MMP9は、ゼラチナーゼBとしても知られている)に結合する結合タンパク質(たとえば、抗体およびその抗原結合フラグメント)を提供し、本開示の結合タンパク質は、一般的に免疫グロブリン(Ig)重鎖(またはその機能的なフラグメント)およびIg軽鎖(またはその機能的なフラグメント)を含む。
【0028】
本開示はさらに、MMP9に特異的に結合し、および、MMP1、MMP2、MMP3、MMP7、MMP10、MMP12、MMP13のような他のマトリクスメタロプロティナーゼに結合しないMMP9結合タンパク質を提供する。したがって、そのような特異的なMMP9結合タンパク質は、MMP9以外のマトリクスメタロプロティナーゼと、一般的に、有意なまたは検出可能な交差反応を有さない。MMP9に特異的に結合するMMP9結合タンパク質は、たとえば、他のマトリクスメタロプロティナーゼの活性に直接的に影響を及ぼさず、MMP9の特異的な調節(たとえば、阻害)を得る必要がある、または、それが望まれる、適用分野における使用が見出される。
【0029】
本開示の或るいくつかの実施形態において、抗MMP9抗体は、MMP9の活性の阻害剤であり、かくてMMP9の特異的な阻害剤であることができる。とりわけ、本願に開示されるMMP9結合タンパク質は、他の関連するマトリクスメタロプロティナーゼの正常な機能を許容する一方、MMP9の阻害に有用であろう。「MMPの阻害剤」または「MMP9活性の阻害剤」は、直接的または間接的にMMP9の活性を阻害する、抗体またはその抗原結合フラグメントであることができ、(たとえば、基質結合、基質開裂などを阻害することによって)基質上でのMMP9の活性を阻害することなどを、酵素的なプロセッシング(processing)に限定されずに含む。
【0030】
本開示はまた、ヒトMMP9、カニクイザルMMP9、およびラットMMP9のような非マウスMMP9に特異的に結合するMMP9結合タンパク質を提供する。
【0031】
本開示はまた、非競合的な阻害剤として働くMMP9結合タンパク質(たとえば、抗MMP9抗体およびその機能的なフラグメント)を提供する。「非競合的な阻害剤」とは、酵素の基質結合部位から離れた部位に結合する阻害剤を意味し、従って、酵素に結合でき、酵素がその基質に結合しているかいないかに拘らず、阻害活性をもたらすことができる。そのような非競合的な阻害剤は、たとえば、基質濃度から実質的に独立であることができる、阻害のレベルを提供することができる。
【0032】
本開示のMMP9結合タンパク質(たとえば、抗体およびその機能的なフラグメント)は、MMP9(特にヒトMMP9)に結合するものを含み、本願に開示される重鎖ポリペプチドに対して少なくとも約80%、85%、90%、95%以上のアミノ酸配列同一性を有する重鎖ポリペプチド(または、その機能的なフラグメント)を有する。
【0033】
本開示のMMP9結合タンパク質(たとえば、抗体およびその機能的なフラグメント)は、MMP9(特にヒトMMP9)に結合するものを含み、本願に開示される軽鎖ポリペプチドに対して少なくとも約80%、85%、90%、95%以上のアミノ酸配列同一性を有する軽鎖ポリペプチド(または、その機能的なフラグメント)を有する。
【0034】
本開示のMMP9結合タンパク質(たとえば、抗体およびその機能的なフラグメント)は、MMP9(特にヒトMMP9)に結合するものを含み、重鎖ポリペプチドの相補性決定領域(「CDR」)を有する重鎖ポリペプチド(または、その機能的なフラグメント)および、本願に開示されるような軽鎖ポリペプチドの相補性決定領域を有する軽鎖ポリペプチド(または、その機能的なフラグメント)を有する。
【0035】
核酸およびポリペプチドの文脈において、本願で使用される場合には、「相同性(homology)」または「同一性(identity)」または「類似性(similarity)」の用語は、それぞれアミノ酸配列または核酸配列のアライメント(alignment)を基にした、2つのポリペプチドまたは2つの核酸分子の間の関係を意味する。相同性および同一性は、比較の目的のために並べられる各配列におけるポジション(position)を比較することにより、それぞれ決定されることができる。比較される配列における対応する(equivalent)ポジションが、同一の塩基またはアミノ酸によって占められる場合、分子は、そのポジションにおいて同一であり;対応する部位が同一のまたは類似のアミノ酸残基(たとえば、立体的および/または電子的性質において類似する[残基])によって占められる場合、分子は、そのポジションにおいて相同(類似)であると言うことができる。相同性/類似性または同一性のパーセンテージでの表現は、比較される配列によって共有されるポジション(複数)における所定数の同一のまたは類似のアミノ酸の機能(function)を言う。2つの配列を比較する場合において、残基(アミノ酸または核酸)の不存在または余剰の残基の存在はまた、同一性および相同性/類似性を減少させる。
【0036】
本願において使用される場合、「同一性」は、配列が、配列マッチング(matching)が最大になるように並べられる(すなわち、ギャップおよび挿入を考慮する)場合の、2つ以上の配列において対応するポジションでの同一のヌクレオチドまたはアミノ酸残基のパーセンテージを示す。配列は、一般的に、指定された領域(たとえば、すくなくとも約20、25、30、35、40、45、50、55、60または65以上のアミノ酸またはヌクレオチドの長さの領域)にわたって、最大の一致となるように並べられ、そして、これは、参照アミノ酸またはヌクレオチドの全長の長さまであることができる。配列比較に関して、典型的に1つの配列が参照配列として働き、テスト配列が、それに対して比較される。配列比較アルゴリズムを使用する場合、テスト配列および参照配列は、コンピュータプログラムに入力され、必要な場合には、サブ配列コーディネート(subsequence coordinates)が指定され、そして配列アルゴリズムプログラムパラメータが指定される。配列比較アルゴリズムで、続いて、指定されたプログラムパラメータに基づいて、参照配列に対する、(1または複数の)テスト配列のパーセント配列同一性が計算される。
【0037】
パーセント配列同一性を決定するのに適しているアルゴリズムの例は、BLASTおよびBLAST2.0アルゴリズムであり、Altschulら、(1990)J.Mol.Biol.215:403−410およびAltschulら、(1977)Nucleic Acids Res.25:3389−3402にそれぞれ記載されている。BLAST解析を実行するためのソフトウェアは、National Center for Biotechnology Information(www.ncbi.nlm.nih.gov)を介して公に利用可能である。さらに、例示的なアルゴリズムは、www.ebi.ac.uk/Tools/clustalw/index.htmlで利用可能なClustalW(Higgins D., et al. (1994) Nucleic Acids Res 22: 4673-4680)を含む。
【0038】
同一でない残基ポジションは、保存的なアミノ酸置換によって(互いに)異なることができる。保存的なアミノ酸置換は、類似した側鎖を有する残基の互換性を意味する。たとえば、脂肪族側鎖を有するアミノ酸群は、グリシン、アラニン、バリン、ロイシンおよびイソロイシンである;脂肪族ヒドロキシル側鎖(aliphatic-hydroxyl side chains)を有するアミノ酸群は、セリンおよびスレオニンである;アミド含有側鎖を有するアミノ酸群は、アスパラギンおよびグルタミンである;芳香族側鎖を有するアミノ酸群は、フェニルアラニン、チロシンおよびトリプトファンである;塩基性側鎖を有するアミノ酸群は、リシン、アルギニンおよびヒスチジンである;および、含硫側鎖を有するアミノ酸群は、システインおよびメチオニンである。
【0039】
2つの核酸の間の配列同一性はまた、ストリンジェント(stringent)な条件下で、2つの分子の、お互いに対するハイブリダイゼーション(hybridization)に基づいて記載されることができる。ハイブリダイゼーション条件は、当該技術分野における次の標準の方法から選択される(たとえば、Sambrook, et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Second Edition, (1989) Cold Spring Harbor, N.Y.を参照)。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の例は、50℃またはそれより高い温度で、0.1×SSC(15mM 塩化ナトリウム/1.5mM クエン酸ナトリウム)でのハイブリダイゼーションである。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の他の例は、溶液:50%ホルムアミド、5×SSC(150mM NaCl、15mM クエン酸三ナトリウム)、50mM リン酸ナトリウム(pH7.6)、5×デンハルト溶液、10% 硫酸デキストラン、および20mg/ml 変性せん断化サケ精子DNAでの42℃での終夜インキュベーションであり、次いで、0.1×SSCで、約65℃でフィルターを洗浄することである。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は、少なくとも、上記の代表的な条件と同じ位ストリンジェントであるハイブリダイゼーション条件であり、この場合、上記の特別なストリンジェント条件の少なくとも約80%のストリンジェント、典型的には少なくとも90%ストリンジェントである場合は、条件は少なくともストリンジェントであると考えられる。
【0040】
加えて、本開示は、たとえば、少なくとも80%、85%、90%、95%またはそれ以上の、本願に記載される重鎖可変領域のアミノ酸配列(たとえば、配列番号:1または5−8)に対するアミノ酸配列同一性を有する重鎖可変領域ポリペプチド、および、少なくとも80%、85%、90%、95%またはそれ以上の、本願に記載されるような軽鎖ポリペプチドのアミノ酸配列(たとえば、配列番号:2または9−12)に対するアミノ酸配列同一性を有する可変軽鎖ポリペプチドを含む、抗体またはその抗原結合フラグメント、を提供する。
【0041】
本開示の抗MMP9抗体の例は、以下により詳細に記載される。
【0042】
[抗体]
MMP9結合タンパク質は抗体およびその機能的なフラグメントを含む。本願において使用される場合、用語「抗体」は、抗原エピトープを特異的に結合させるペプチド配列(たとえば、可変領域配列)を含む単離または組み換えポリペプチド結合剤(binding agent)を意味する。この用語は、最も広義に使用され、とりわけ、モノクローナル抗体(全長モノクローナル抗体を含む)、ポリクローナル抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、単一ドメイン抗体(nanobody)、二重特異性抗体(diabody)、多特異性(multispecific)抗体(たとえば二特異性(bispecific)抗体)、および、所望の生物学的活性を示す限りにおいて、Fv、scFv、Fab、Fab´、F(ab´)、およびFabを含むが、これらに限定されない抗体フラグメント、をカバーする。用語「ヒト抗体」は、潜在的な(possible)非ヒトCDR領域を除くヒト由来の配列を含む抗体を意味するが、この用語は、免疫グロブリン分子の全構造が存在することを意味せず、抗体がヒトにおいて最小の免疫原性効果を有すること(即ち、それ自身に対する抗体の産生を誘導しないこと)のみを意味している。
【0043】
「抗体フラグメント」は、全長抗体の部分、たとえば、全長抗体の抗原結合領域または可変領域を含む。そのような抗体フラグメントはまた、本願において、「機能的なフラグメント:」または「抗原結合フラグメント」と称され得る。抗体フラグメントの例としては、Fab、Fab´、F(ab´)、およびFvフラグメント;二重特異性抗体(diabody);線状抗体(linear antibody)(Zapata et al. (1995) Protein Eng. 8(10):1057-1062);単鎖抗体分子;および抗体フラグメント(複数)から形成される多特異性(multispecific)抗体を含む。抗体のパパイン消化により、それぞれ単一の抗原結合部位を有する「Fab」フラグメントと称される2つの同一の抗原結合フラグメントと、残余の「Fc」フラグメント(この名称は容易に結晶化する能力を反映している)が得られる。ペプシン処理により、2つの抗原結合部位を有し、抗原を架橋する能力を維持しているF(ab´)フラグメントが生じる。
【0044】
「Fv」は、完全な抗原‐認識および‐結合部位を含む最小の抗体フラグメントである。この領域は、緊密な非共有結合的結合(会合)状態にある1つの重鎖可変ドメインと1つの軽鎖可変ドメインのダイマーから構成される。この立体配置において、各可変ドメインの3つの相補性決定領域(CDR)が相互作用し、V−Vダイマーの表面の抗原結合部位を定義する。集合的に、6つのCDRが、抗体に、抗原結合特異性を与える。しかしながら、単一の可変ドメイン(または、抗原に特異的な6つのCDRのうち3つのみを含む単離VまたはV領域)でも、一般的に完全なFvフラグメントよりも低い親和性であるが、抗原を認識しかつ結合する能力を有する。
【0045】
「Fab」フラグメントはまた、重鎖および軽鎖可変領域に加えて、軽鎖の定常ドメインと重鎖の第1定常ドメイン(CH)を含む。Fabフラグメントは、当初、抗体のパパイン消化の後に観察された。Fab´フラグメントは、F(ab´)フラグメントが、抗体ヒンジ領域由来の1またはそれ以上のシステインを含む、重鎖CHドメインのカルボキシ末端にいくつかの追加的な残基を含むという点において、Fabフラグメントと相違する。F(ab´)フラグメントは、ジスルフィド結合によって、ヒンジ領域の近傍において、連結された2つのFabフラグメントを含み、当初は、抗体のペプシン消化の後に観察された。Fab´−SHは、定常ドメインの、(1または複数の)システイン残基が遊離チオール基を有するFab´フラグメントの本願における名称である。抗体フラグメントのその他の化学的結合体もまた知られる。
【0046】
任意の脊椎動物種に由来する抗体(免疫グロブリン)の「軽鎖」は、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、カッパおよびラムダと称される、2つの明確に区別されるタイプの一方に分類されることができる。重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に応じて、免疫グロブリンは、5つの主要クラス:IgA、IgD、IgE、IgGおよびIgMに分類されることができ、そして、これらのいくつかは、更に、サブクラス(アイソタイプ)、たとえばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1およびIgA2に分類され得る。
【0047】
「単鎖Fv」または「sFv」または「scFv」抗体フラグメントは、抗体のVおよびVドメインを含むが、この場合、これらのドメインは単一のポリペプチド鎖に存在する。いくつかの実施形態において、Fvポリペプチドは、更に、VドメインとVドメインとの間のポリペプチドリンカーを含むが、これは、sFvが抗原結合のための所望の構造を形成することを可能にさせる。sFvの概括(review)に関して、Pluckthun, in The Pharmacology of Monoclonal Antibodies, vol. 113 (Rosenburg and Moore eds.) Springer-Verlag, New York, pp. 269-315 (1994)を参照する。
【0048】
用語「二重特異性抗体(diabody)」は、2つの抗原結合部位を有する小さな抗体フラグメントを意味するが、このフラグメントは、同一のポリペプチド鎖(V−V)において、軽鎖可変ドメイン(V)に結合した重鎖可変ドメイン(V)を含む。同一の鎖の2つのドメイン間での対形成(pairing)を可能させるには長さが足りない(短い)リンカーを使用することにより、これらのドメインは他の鎖の相補的なドメインと対形成せざるを得ず、その結果、2つの抗原結合部位を形成する。二重特異性抗体(diabody)は、更に、たとえば、欧州特許公報第404,097;国際公開第93/11161号およびHollinger et al. (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:6444-6448に記載されている。
【0049】
「単離された(ないしは単離、isolated)」抗体は、その自然環境の成分から同定されかつ分離および/またはリカバーされた(recovered)抗体である。その自然環境の成分は、酵素、ホルモン、および他のタンパク性または非タンパク性溶質を含み得る。いくつかの実施形態において、単離抗体は、(1)ローリー法により決定される、抗体の95重量%を超える、たとえば99重量%を上回る重量%に、(2)たとえば、スピニングカップ配列決定装置(spinning cup sequenator)の使用によって、N末端または内部アミノ酸配列の少なくとも15残基を取得するのに十分な程度に、または(3)クマシーブルーまたは銀染色による検出を伴う、還元または非還元条件下でのゲル電気泳動(たとえばSDS−PAGE)によって均一性に、精製される。用語「単離抗体」は、組換え細胞内のインサイチュの抗体を含むが、これは、抗体の自然環境の少なくとも1つの成分が存在しないだろうという理由からである。或るいくつかの実施形態において、単離抗体は、少なくとも1つの精製ステップによって調製される。
【0050】
本願において使用される場合、「免疫反応性(immunoreactive)」は、アミノ酸残基の配列(「結合部位」または「エピトープ」)に特異的な抗体またはそのフラグメントを意味するが、他のペプチド/タンパク質と交差反応をする場合でも、これらは、ヒトへの使用における投与のために製剤化されるレベルにおいて有毒でない。「エピトープ」は、抗体または、その抗原結合フラグメントと結合相互作用を形成することが可能な抗原の部分を意味する。エピトープは、線状ペプチド配列(すなわち、「連続的である(continuous)」)であることができ、または、非連続な(noncontiguous)アミノ酸配列で構成されることができる(すなわち、「立体的である」または「不連続的である(discontinuous)」)。用語「優先的に(preferentially)結合する」は、関係のないアミノ酸配列に結合するよりも、より大きな親和性を有して結合部位に結合する結合剤を意味する。
【0051】
抗MMP9抗体は、重鎖および軽鎖のCDRに基づいて記載されることができる。本願において使用される場合、用語「CDR」または「相補性決定領域」は、重鎖および軽鎖ポリペプチドの両方の可変領域内に見出される非連続抗原結合部位を意味することが意図される。これらの特定の領域は、Kabat et al., J. Biol. Chem. 252:6609-6616 (1977); Kabat et al., U.S. Dept. of Health and Human Services, "Sequences of proteins of immunological interest" (1991); by Chothia et al., J. Mol. Biol. 196:901-917 (1987); および MacCallum et al., J. Mol. Biol. 262:732-745 (1996)によって記載されており、この場合、この定義は、お互いに比較した場合、アミノ酸残基のオーバーラップ(overlap)またはサブセットを含む。それにも拘らず、抗体または移植抗体、またはその変異体のCDRに言及するいずれの定義の適用も、本願で定義され、使用される用語の範囲内にあることが意図される。上述の引用文献のそれぞれによって定義されるような、CDRを包含するアミノ酸残基は、比較例として、下記の表1において記載される。
[表1:CDRの定義]
残基の番号付けは、上記のKabatらの命名に従う
残基の番号付けは、上記のChothiaらの命名に従う
残基の番号付けは、上記のMacCallumらの命名に従う
【0052】
本願において使用される如く、抗体可変領域に関して使用される場合、用語「フレームワーク」は、抗体の可変領域内におけるCDR領域の外側の全てのアミノ酸残基を意味することが意図される。可変領域フレームワークは、一般的に、長さが約100−120のアミノ酸の間の不連続なアミノ酸配列であるが、CDRの外側にあるこれらのアミノ酸のみを言及することが意図される。本願において使用される場合、用語「フレームワーク領域(framework region)」は、CDRによって分離されたフレームワークの各ドメインを意味することが意図される。
【0053】
いくつかの実施形態において、抗体は、ヒト化抗体又はヒト抗体である。ヒト化抗体は、ヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)であって、レシピエントの相補性決定領域(CDR)に由来する残基が、所望の特異性、親和性および能力を有する、マウス、ラット、またはウサギのような非ヒト種のCDR(ドナー抗体)に由来する残基で置き換えられているものを含む。したがって、非ヒト(例えば、マウス)抗体のヒト化形態は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小配列を含むキメラ免疫グロブリンである。非ヒト配列は、主として可変領域、特に相補性決定領域(CDR)に存在している。いくつかの実施形態において、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク残基は、対応する非ヒト残基で置き換えられる。ヒト化抗体はまた、レシピエント抗体にも、移入されたCDRまたはフレームワーク配列にも見られない残基を含むことができる。或るいくつかの実施形態において、ヒト化抗体は、少なくとも1つ(典型的には2つ)の可変ドメインの、実質的に全体を含み、この場合、CDRの全てまたは実質的に全ては、非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、そしてフレームワーク領域の全てまたは実質的に全ては、ヒト免疫グロブリンコンセンサス配列のものである。本開示の目的のため、ヒト化抗体はまた、Fv、Fab、Fab´、F(ab´)または抗体の他の抗原結合サブ配列のような免疫グロブリンフラグメントも含むことができる。
【0054】
ヒト化抗体はまた、(典型的には、ヒト免疫グロブリンの)免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部分を含むことができる。たとえば、Jones et al. (1986) Nature 321:522-525;Riechmann et al. (1988) Nature 332:323-329;およびPresta (1992) Curr. Op. Struct. Biol. 2:593-596を参照する。
【0055】
非ヒト抗体をヒト化するための方法は、当該技術分野において知られている。一般的に、ヒト化抗体は、ヒトでない供給源から導入された1つ以上のアミノ酸残基を有する。これらの非ヒトアミノ酸残基は多くの場合、典型的には「移入(import)」または「ドナー(donor)」可変ドメインから得られる、「移入」または「ドナー」残基と称される。たとえば、ヒト化は、Winter及び共同研究者の方法に従って、ヒト抗体の対応する配列にげっ歯類のCDRまたはCDR配列を置換させることによって、本質的には行われることができる。たとえば、上記のJones et al.,;Riechmann et al.,およびVerhoeyen et al. (1988) Science 239:1534-1536を参照する。加えて、そのような「ヒト化」抗体は、キメラ抗体を含み(米国特許第4,816,567号)、この場合、未処理のヒト可変ドメインより実質的に少ない[部分]が非ヒト種由来の対応配列によって置換されている。或るいくつかの実施形態において、ヒト化抗体は、いくつかのCDR残基および、任意にいくつかのフレームワーク領域残基がげっ歯類の抗体(たとえば、マウスモノクローナル抗体)の類似部位由来の残基によって置換された、ヒト抗体である。
【0056】
ヒト抗体はまた、たとえば、ファージディスプレイライブラリを使用して生成されることができる。Hoogenboom et al. (1991) J. Mol. Biol, 227:381;Marks et al. (1991) J. Mol. Biol. 222:581。ヒトモノクローナル抗体を調製するための他の方法は、Cole et al. (1985) "Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy," Alan R. Liss, p. 77およびBoerner et al. (1991) J. Immunol. 147:86-95によって記載されている。
【0057】
ヒト抗体は、ヒト免疫グロブリン遺伝子座を、内因性(endogenous)免疫グロブリン遺伝子が部分的にまたは完全に不活化されているトランスジェニック動物(例えば、マウス)に導入することによって作製されることができる。免疫学的なチャレンジ(challenge)をすると、遺伝子再編成、集合、および抗体レパートリーを含むあらゆる点で、ヒトにおいて見られるものと非常によく似たヒト抗体の生成が観察される。このアプローチは、たとえば、米国特許第5,545,807号;同第5,545,806号;同第5,569,825号;同第5,625,126号;同第5,633,425号;同第5,661,016号、並びに、次の科学刊行物:Marks et al. (1992) Bio/Technology 10:779-783 (1992);Lonberg et al. (1994) Nature 368: 856-859;Morrison (1994) Nature 368:812-813;Fishwald et al. (1996) Nature Biotechnology 14:845-851;Neuberger (1996) Nature Biotechnology 14:826;およびLonberg et al. (1995) Intern. Rev. Immunol. 13:65-93に記載されている。
【0058】
抗体は、前記のような既知の選択および/または突然変異誘発法を使用して、親和性が成熟されることができる。いくつかの実施形態においては、親和性成熟抗体は、成熟抗体が調製される出発抗体(一般的には、マウス、ウサギ、ニワトリ、ヒト化又はヒト[抗体])の親和性よりも5倍以上、10倍以上、20倍以上、または30倍以上の親和性を有する。
【0059】
抗体はまた、二特異性抗体であることができる。二特異性抗体は、モノクローナル抗体であり、少なくとも2つの異なる抗原に対する結合特異性を有するヒト抗体またはヒト化抗体であり得る。本願の場合では、これらの2つの異なる結合特異性は、2つの異なるMMP、または単一のMMP(たとえば、MMP9)における2つの異なるエピトープに向けられることができる。
【0060】
本願に開示されている抗体はまた、免疫複合体(immunoconjugate)であることができる。そのような免疫複合体は、レポーターのような第二の分子に複合された(たとえば、MMP9に対する)抗体を含む。免疫複合体には、化学療法薬、毒素(たとえば、細菌、真菌、植物、若しくは動物起源、またはそれらのフラグメントの酵素学的に活性な毒素)、あるいは放射性同位元素(すなわち、放射性複合体)のような、細胞傷害性薬剤に複合された抗体も含まれることができる。
【0061】
特定のポリペプチドまたは特定のポリペプチド上のエピトープ「に特異的に結合する(specifically binds to)」または「に対して特異的(specific for)」である抗体とは、他のいかなるポリペプチドまたはポリペプチドエピトープにも実質的に結合することなく、特定のポリペプチドまたはエピトープに対して結合する抗体である。いくつかの実施形態において、本開示の抗体は、モノクローナル抗体、scFv、Fabの形態で、または約4℃、25℃、37℃若しくは42℃の温度で測定される抗体の他の形態で;100nM以下、場合によっては10nM未満、場合によっては1nM未満、場合によっては0.5nM未満、場合によっては0.1nM未満、場合によっては0.01nM未満、あるいは場合によっては0.005nM未満の解離定数(K)で、ヒトMMP9に対して特異的に結合する。
【0062】
或るいくつかの実施形態において、本開示の抗体は、MMP9における1つ以上のプロセッシング部位(processing site、たとえば、タンパク質分解開裂部位)に対して結合し、それにより、触媒活性な酵素に対する、プロ酵素またはプレプロ酵素のプロセッシングを効果的にブロックし、そうして、MMP9のタンパク質分解活性を減少させる。
【0063】
或るいくつかの実施形態において、本開示に係る抗体は、他のMMPに対する結合親和性の少なくとも2倍、少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも25倍、少なくとも50倍、少なくとも100倍、少なくとも500倍、または少なくとも1000倍を超える親和性を有してMMP9に対して結合する。結合親和性は、当該技術分野に知られる任意の方法により測定されることができ、たとえば、on−rate、off−rate、解離定数(K)、平衡定数(Keq)または、当該技術分野における任意の用語として表現されることができる。
【0064】
或るいくつかの実施形態において、本開示に係る抗体は、MMP9の触媒活性の非競合阻害剤である。或るいくつかの実施形態において、本開示に係る抗体は、MMP9の触媒ドメイン内に結合する。追加の実施形態において、本開示に係る抗体は、MMP9触媒ドメインの外側に結合する。
【0065】
本開示はまた、MMP9に対する結合に関して、本願に記載される抗MMP9抗体またはその抗原結合フラグメントと競合する抗体又はその抗原結合フラグメントをも意図する。したがって、本開示は、たとえば、配列番号:1または5−8の任意の重鎖ポリペプチド、または、配列番号:2または9−12の軽鎖ポリペプチド、またはそれらの組み合わせを有する抗体と、結合に関して競合する抗MMP9抗体およびその機能的なフラグメントを意図する。一つの実施形態において、抗MMP9抗体またはその機能的なフラグメントは、ヒトMMP9に対する結合に関して、AB0041として本願に記載される抗体と競合する。
【0066】
[MMP9配列]
ヒトMMP9タンパク質のアミノ酸配列は次の通りである:
【0067】
タンパク質ドメインが、図3に概略的に表され、そして以下に示されている。
【0068】
成熟全長ヒトMMP9のアミノ酸配列(シグナルペプチドを含まない、配列番号:27のプロポリペプチドのアミノ酸配列である)は以下のとおりである:
この場合、シグナルペプチドのアミノ酸配列は、MSLWQPLVLV LLVLGCCFAA(配列番号:29)である。
【0069】
本開示は、MMP9(たとえば、ヒトMMP9)の任意の部分と、特に興味深い他のMMPと比較してMMP9に優先的に結合するMMP9結合タンパク質とを結合させるMMP9結合タンパク質を意図する。
【0070】
抗MMP9抗体およびその機能的なフラグメントは、当該技術分野でよく知られる方法にしたがって、生成されることができる。抗MMP9抗体の例は、以下に提供される。
【0071】
[マウスモノクローナル抗MMP9]
ヒトMMP9に対するマウスモノクローナル抗体は、実施例1に記載されるようにして得られた。この抗体は、マウスIgG2b重鎖およびマウスカッパ軽鎖を含み、これはAB0041と称される。
【0072】
AB0041重鎖のアミノ酸配列は次の通りである:
【0073】
シグナル配列には下線が引かれており、IgG2b定常領域の配列は、イタリックで表されている。
【0074】
AB0041軽鎖のアミノ酸配列は次の通りである:
【0075】
シグナル配列には下線が引かれており、カッパ定常領域の配列は、イタリックで表されている。
【0076】
次のアミノ酸配列は、AB0041のIgG2b重鎖の可変領域のフレームワーク領域および相補性決定領域(CDR)を含む(CDRには下線が引かれている):
【0077】
次のアミノ酸配列は、AB0041のカッパ軽鎖の可変領域のフレームワーク領域および相補性決定領域(CDR)を含む(CDRには下線が引かれている):
【0078】
[重鎖変異体]
AB0041重鎖および軽鎖の可変領域のアミノ酸配列は、重鎖可変領域および軽鎖可変領域のフレームワーク領域配列を変更することによって別々に修飾変更(modify)された。これら配列の変更の効果は、ヒトT細胞エピトープの抗体を激減させ、それによって、ヒトにおける、その免疫原性を減少させまたは無効にさせた(Antitope, Babraham, UK)。
【0079】
ヒンジドメインを安定させるS241Pアミノ酸変化を含むヒトIgG4重鎖バックグラウンドにおける、4つの重鎖変異体を構築し(Angal et al. (1993) Molec. Immunol. 30:105-108)、これは、VH1、VH2、VH3およびVH4と称する。これらのフレームワーク領域およびCDRのアミノ酸配列は次の通りである:
【0080】
図1は、ヒト化重鎖の可変領域のアミノ酸配列のアライメント(整列)を表し、4つの変異体の間のフレームワーク領域におけるアミノ酸配列の違いを示す。
【0081】
[軽鎖変異体]
ヒトカッパ鎖バックグラウンドにおける4つの軽鎖変異体を構築し、Vk1、Vk2、Vk3およびVk4と称する。これらのフレームワーク領域およびCDRのアミノ酸配列は次の通りである:

【0082】
図2は、ヒト化軽鎖の可変領域のアミノ酸配列のアライメントを表し、4つの変異体の間のフレームワーク領域のアミノ酸配列の違いを示す。
【0083】
ヒト化重鎖および軽鎖は、可能性のある全ての対状の(pair-wise)組み合わせで組み合わされ、多くの機能的なヒト化抗MMP9抗体を生じる。
【0084】
本願に開示される重鎖可変領域配列に75%以上、80%以上、90%以上、95%以上、または99%以上の相同性(homology)を有する追加の重鎖可変領域アミノ酸配列もまた提供される。さらには、本願に開示される軽鎖可変領域配列に75%以上、80%以上、90%以上、95%以上、または99%以上の相同性を有する追加の軽鎖可変領域アミノ酸配列もまた提供される。
【0085】
本願に開示される重鎖可変領域配列に75%以上、80%以上、90%以上、95%以上、または99%以上の配列同一性(sequence identity)を有する追加の重鎖可変領域アミノ酸配列もまた提供される。さらには、本願に開示される軽鎖可変領域配列に75%以上、80%以上、90%以上、95%以上、または99%以上の配列同一性を有する追加の軽鎖可変領域アミノ酸配列もまた提供される。
【0086】
[相補性決定領域(CDR)]
本願に開示される抗MMP9抗体の重鎖のCDRは、次のアミノ酸配列を有する:
【0087】
本願に開示される抗MMP9抗体の軽鎖のCDRは、次のアミノ酸配列を有する:
【0088】
[抗MMP9抗体をエンコードする核酸]
本開示は、抗MMP9抗体およびその機能的なフラグメントをエンコードする核酸を提供する。かくて、本開示は、本願に記載される抗体または抗原結合フラグメントをエンコードする単離ポリヌクレオチド(核酸)、その様なポリヌクレオチドを含むベクター、および宿主および、その様なポリヌクレオチドをポリペプチドに転写(tarnscribe)および翻訳するための発現系を提供する。
【0089】
本開示はまた、プラスミド、ベクター、少なくとも1つの上述のようなポリヌクレオチドを含む、転写物または発現カセットの形態のコンストラクト(construct)を意図する。
【0090】
本開示はまた、組み換え宿主における、(同一のまたは異なった宿主細胞における、および、同一または異なったコンストラクト由来の)重鎖ポリペプチドおよび軽鎖ポリペプチドをエンコードする核酸の発現を含む、本願に記載される抗体またはその抗原結合フラグメントの生成方法ならびに、上述のような1つ以上のコンストラクトを含む組み換え宿主細胞を提供する。発現は、核酸を含む組み換え宿主細胞を適切な条件下で培養することにより達成されることができる。発現による生成に続いて、抗体または抗原結合フラグメントは、任意の適切な技術を使用して単離されおよび/または精製され、そして、必要に応じて使用されることができる。
【0091】
様々な異なった宿主細胞におけるポリペプチドのクローニングおよび発現の系(system)が良く知られる。適切な宿主細胞は、細菌、哺乳類細胞、酵母およびバキュロウイルス系を含む。異種のポリペプチドの発現のために、当該技術分野で利用できる哺乳類細胞系列(line)は、チャイニーズハムスター卵巣細胞、HeLa細胞、乳児ハムスター腎細胞、NSOマウスメラノーマ細胞およびその他の多くのものを含む。一般的な細菌宿主は、大腸菌である。
【0092】
作用可能に連結されたプロモータ配列、終止配列、ポリアデニル化配列、エンハンサ配列、マーカー遺伝子および/または、必要に応じて他の配列を含む、適切な制御配列を含む、適切なベクターが選ばれまたは構築されることができる。必要に応じて、ベクターは、プラスミド、(例えばファージのような)ウイルス、またはファージミドであることができる。さらなる詳細として、たとえば、Molecular Cloning: a Laboratory Manual: 2nd edition, Sambrook et al., 1989, Cold Spring Harbor Laboratory Pressを参照する。核酸の操作に関する多くの既知の技術および手順(たとえば、核酸コンストラクトの調製、突然変異生成、シーケンシング、細胞へのDNAの導入、および遺伝子発現、およびタンパク質の解析)は、Short Protocols in Molecular Biology, Second Edition, Ausubel et al. eds., John Wiley & Sons, 1992に詳細に記載されている。Sambrookら、およびAusubelらの開示は、その全てが引用により、本願に組み込まれる。
【0093】
目的のポリペプチドをエンコードする核酸は、宿主細胞のゲノムに一体化され、または、安定的なまたは一時的なエピソームのエレメントとして維持されることができる。
【0094】
任意の広範な種類の発現制御配列([当該発現制御配列]に作用可能に連結されるDNA配列の発現を制御する配列)は、DNA配列を発現させるためのこれらのベクターに使用されることができる。例えば、目的のポリペプチドをエンコードする核酸は、プロモータに作用可能に連結され、組み換えMMP9タンパク質またはその部分の生成の方法に使用される発現コンストラクトに提供される。
【0095】
当業者は、本願に開示される抗体鎖をエンコードする核酸が、分子生物学における標準的な知識および手順を使用して合成されることができることを理解する。
【0096】
本願に開示される重鎖および軽鎖アミノ酸配列をエンコードするヌクレオチド配列の例は次の通りである:







【0097】
可変領域におけるCDRおよびフレームワーク領域の並置を含む抗体の構造、フレームワーク領域の構造、および重鎖および軽鎖定常領域の構造は当該技術分野においてよく知られているので、抗MMP9抗体をエンコードする関連する核酸を得ることは、当該技術分野の技術内で良くなされることである。かくて、本願に開示される任意のヌクレオチド配列に対して少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%および少なくとも99%の相同性を有する核酸配列を含むポリヌクレオチドもまた提供される。従って、本願に開示される任意のヌクレオチド配列に対して少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%および少なくとも99%の同一性を有する核酸配列を含むポリヌクレオチドもまた提供される。
【0098】
[医薬組成物]
MMP9結合タンパク質、並びにMMP9結合タンパク質をエンコードする核酸(例えばDNAまたはRNA)は、たとえば、医薬的に許容可能な担体または賦形剤と結合された、医薬組成物として提供されることができる。そのような、医薬組成物は、たとえば、インビボ(in vivo)またはエクスビボ(ex vivo)で被検体に投与するのに有用であり、および、MMP9結合タンパク質で被検体を診断し、および/または処置するのに有用である。
【0099】
医薬的に許容可能な担体は、投与される患者に生理学的に許容可能であり、そして、共に投与される抗体またはペプチドの治療的な特性を維持する。医薬的に許容可能な担体およびその製剤は、たとえば、Remington' pharmaceutical Sciences (18th Edition, ed. A. Gennaro, Mack Publishing Co., Easton, PA 1990)に大まかに記載されている。一つの例示的な医薬的な担体は、生理食塩水である。個々の担体は、製剤の他の成分と適合するという意味で「医薬的に許容可能」であり、かつ、患者に実質的に有害でないという意味である。
【0100】
医薬組成物は、全身的なまたは局所的な、特定の投与経路に適合可能であるように製剤化されることができる。従って、医薬組成物は、様々な経路による投与に適した、担体、希釈剤、または賦形剤を含む。
【0101】
医薬組成物は、医薬的に許容可能な添加剤を含むことができる。添加剤の例は、マンニトール、ソルビトール、グルコース、キシリトール、トレハロース、ソルボース、スクロース、ガラクトース、デキストラン、デキストロース、フルクトース、ラクトースのような糖および、それらの混合物を含むがこれらに限定されない。医薬的に許容可能な添加剤は、医薬的に許容可能な担体および/または、デキストロースのような賦形剤と結合されることができる。添加剤はまた、ポリソルベート20またはポリソルベート80のような界面活性剤を含む。
【0102】
製剤および輸送方法は、処置される部位および疾病に従って、一般的に適応されるだろう。例示的な製剤は、非経口投与に適するもの(たとえば、静脈内投与、動脈内投与、筋肉内投与、または皮下投与)を含むが、これらに限定されない。
【0103】
非経口的な輸送のための医薬組成物は、たとえば、水、塩類溶液(saline)、リン酸緩衝生理食塩水、ハンクス溶液、リンガー溶液、デキストロース/塩類溶液、およびグルコース溶液を含む。製剤は、緩衝剤、等張調節剤(tonicity adjusting agents)、湿潤剤、界面活性剤などの、生理学的な状態に近づけるための補助物質を含むことができる。添加剤はまた、殺菌剤、または安定剤のような、追加の活性成分を含むことができる。たとえば、溶液は、酢酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、ソルビタンモノラウレート(sorbitan monolaurate)またはトリエタノールアミンオレアート(triethanolamine oleate)を含むことができる。追加の非経口製剤および方法は、Bai (1997) J. Neuroimmunol. 80:65 75; Warren (1997) J. Neurol. Sci. 152:31 38;および Tonegawa (1997) J. Exp. Med. 186:507 515に記載される。非経口製剤は、アンプル、ガラスまたはプラスチック製の使い捨て注射器または複数回投与用バイアルに封入されることができる。
【0104】
皮内または皮下投与用の医薬組成物は、水、塩類溶液、固定油(fixed oils)、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールまたは他の合成溶媒のような、滅菌希釈剤;ベンジルアルコールまたはメチルパラベンのような抗菌剤;アスコルビン酸、グルタチオンまたは亜硫酸水素ナトリウムのような酸化防止剤;エチレンジアミン四酢酸のようなキレート剤;酢酸塩、クエン酸塩またはリン酸塩のような緩衝剤(buffer)、および塩化ナトリウムまたはデキストロースのような等張の調整用の薬剤、を含むことができる。
【0105】
注射のための医薬組成物は、水溶液(水溶性)または分散剤、および、滅菌の注射可能な溶液または分散剤の即時調製のための滅菌粉末を含む。静脈投与に関して適切な担体は、生理食塩水、静菌性の水、Cremophor ELTM(BASF, Parsippany, N.J.)または、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)を含む。担体は、たとえば、水、エタノール、ポリオール(たとえば、グリセロール、プロピレングリコールおよび液体ポリエチレングリコールなど)、および、それらの適切な混合物、を含む溶媒または分散媒体であることができる。流動性は、たとえば、レシチンのようなコーティングの使用によって、分散の場合に要求される粒子サイズの維持によって、および、界面活性剤の使用によって、維持されることができる。抗菌および抗真菌剤は、たとえば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸およびチメロサールを含む。等張剤(たとえば、糖、マンニトール、ソルビトールのようなポリアルコール、および塩化ナトリウム)が、組成物に含まれ得る。得られた溶液はそのまま使用するためにパッケージングされることができ、または、凍結乾燥されることができる;凍結乾燥された製剤は後に、投与前に滅菌溶液と混合されることができる。
【0106】
医薬的に許容可能な担体は、吸収またはクリアランス(clearance)を安定させ、増幅させ、または遅延させる化合物を含むことができる。そのような化合物は、たとえば、グルコース、スクロースまたは、デキストランのような炭水化物;低分子量タンパク質;ペプチドのクリアランスまたは加水分解を減少させる組成物;または、賦形剤または他の安定剤および/または緩衝剤を含む。吸収を遅らせる薬剤は、たとえば、アルミニウムモノステアラートおよびゼラチンを含む。界面活性剤はまた、医薬組成物の吸収を安定させ、または増加または減少させるために使用されることができ、リポソーム性担体を含む。消化から保護するために、化合物は、酸性な加水分解および酵素的な加水分解に対する耐性を与えるように組成物と複合化させることができ、または化合物は、リポソームのような適切な耐性担体に複合化させることができる。消化から、化合物を保護する手段は、当該技術分野で知られている(たとえば、Fix (1996) Pharm Res. 13:1760 1764; Samanen (1996) J. Pharm. Pharmacol. 48:119 135;および 、治療的な薬剤の経口輸送のための脂質組成物を記載する米国特許第5,391,377号を参照する)。
【0107】
本発明の組成物は、他の治療的な部分(ないしはモイエティ、moiety)または、本願で提供されるような造影部分(imaging moiety)/診断部分と結合されることができる。治療的な部分および/または造影部分は、別々の組成物として提供されることができ、またはMMP9結合タンパク質に存在するコンジュゲートされた部分として提供されることができる。
【0108】
インビボ投与のための製剤は、一般的に無菌である。ひとつの実施形態において、医薬組成物は、ヒトの患者への投与に許容可能なように、パイロジェンが含まれないように製剤化される。
【0109】
製剤のため、および使用のための様々な他の医薬組成物および技術は、本願の開示を踏まえて、当業者によく知られているだろう。適切な薬学的な組成物および関連する投与技術の詳細なリストに関して、あるものは、本願における詳細な教示事項(teachings)を参照することができ、レミントン:The Science and Practice of Pharmacy 20th Ed. (Lippincott, Williams & Wilkins 2003)のような文章によってさらに補足されることができる。
【0110】
医薬組成物は、処置を必要とする患者/被検体の身体的な特徴、投与の経路などを基にして製剤化されることができる。そのようなものは、病院および診療所への配布のための適切なラベルが付された、適切な医薬的なパッケージにパッケージされることができる。この場合、ラベルは、被検体の、本願に記載されるような疾患を処置することを指示するものである。薬剤は、注射器または複数のユニットとしてパッケージされることができる。本願発明の医薬組成物の容量および投与のための器具は、下記の医薬的なパッケージおよびキットで封入されることができる。
【0111】
[使用の方法]
本願に開示のMMP9結合タンパク質は、たとえば、サンプルにおけるMMP9の検出方法、処置の方法(たとえば、血管形成の阻害の方法のような方法)、および診断の方法に使用されることができる。使用方法の例は、以下に記載される。
【0112】
[処置の方法]
本願で提供されるものは、MMP9活性に関連する疾病および疾患を処置する方法である。疾病および疾患は、[MMP9を]発現する腫瘍またはMMP9を発現する組織において処置される腫瘍(たとえば、初期または転移性の[腫瘍])を含むがこれらに限定されない。
【0113】
本願で使用される場合、「処置する」または「処置」は、本願に記載される疾病または疾患に関連する症状の進行の、停止(stasis)または先送り(postponement)を意味する。該用語はさらに、既存の制御不能なまたは望まれない症状を回復させ、更なる症状を予防すること、および、このような症状の代謝の原因に内在するものを回復させまたは予防することを含む。したがって、この用語は、疾病および症状を有する、または、このような疾病もしくは症状が発生する可能性を有する哺乳動物被検体に、有益な結果が付与されたことを示す。反応(response)は、患者が、一部分または総合的な苦痛の軽減(alleviation)、または病気の兆候または症状の軽減、および特に、制限無しに、生存の延長を含む、経験をするときに、達成される。再発の数、疾病の段階、および他の因子を含む予後因子に依存して、予測される無進行生存期間(progression-free survival times)は、数ヶ月から数年間測定されることができる。
【0114】
本開示は、そのような方法と関連する使用のための医薬組成物を意図する。組成物は、任意の適切な経路による局所的なまたは全身的な投与に適合されることができる。
【0115】
一般的に、MMP9結合タンパク質は、治療的に有効な量(たとえば、被検体における腫瘍成長の阻害をもたらす量および/または転移を阻害する量)で投与される。
【0116】
本願において使用される場合、用語「治療的に有効な量」または「有効量」とは、被検体に単独でまたは他の治療的な薬剤と組み合わせて投与される場合に、疾病状態または疾病の進行を妨げまたは回復させるのに有効な治療的な薬剤の量を意味する。治療的に効果的な用量とはさらに、症状の回復(たとえば、処置、治癒(healing)、関連する医学的状態の予防または回復、あるいは、処置、治癒、その様な状態の予防または回復の速度の増幅)をもたらすのに十分な化合物の量を意味する。単一で投与される個々の活性成分に適用される場合、治療的に有効な用量は、単一の成分を意味する。複合物(combination)に適用される場合、治療的に有効な用量は、組合せ状態でか、順次もしくは同時に投与されたかどうかに拘らず、治療的な効果をもたらす活性成分の組み合わされた(ないし、混合された、combined)量を意味する。たとえば、抗MMP9抗体のインビボにおける投与が採用される場合、投与の経路に応じて、通常の投与量は、一日で、哺乳類体重で、約10ng/kgから100mg/kgまたはそれ以上まで、変化させることができ、好ましくは、約1μg/kg/日から50mg/kg/日で、任意には、約100μg/kg/日から20mg/kg/日、500μg/kg/日から10mg/kg/日、または、1mg/kg/日から10mg/kg/日で変化させることができる。
【0117】
選択される投薬計画は、MMP9結合タンパク質の活性、投与経路、投与時間、使用されている特定化合物の排出速度、処置の持続時間、使用される特定組成物と組み合わされて使用される他の薬剤、化合物および/または材料、処置されている患者の年齢、性別、体重、状態、全体的な健康および、過去の病歴、薬学分野でよく知られている同様の因子を含む様々な因子に依存するだろう。
【0118】
当該技術分野の通常の技術を有する臨床医は、要求される医薬組成物の有効量(ED50)を容易に決定できまた、処方できる。たとえば、医師または獣医師は、医薬組成物で使用される発明の化合物の用量を所望の治療的な効果を達成するために要求される用量よりも低いレベルで開始して、所望の効果が達成されるまで投薬量を徐々に増加させることができる。
【0119】
本願で使用される場合、用語「被検体(subject)」は、哺乳動物被検体を意味する。例示的な被検体は、ヒト、サル、イヌ、ネコ、マウス、ラット、ウシ、ウマ、ヤギおよびヒツジを含むがこれらに限定されない。いくつかの実施形態において、被検体は癌を有し、以下に記載されるような本願発明の薬剤で処置されることができる。
【0120】
癌処置について、もし必要であるならば、方法はさらに、MMP9結合タンパク質に加えて、癌の外科的切除および/または抗癌剤の投与または処置を含むことができる。そのような抗癌剤の投与または処置は、本願で開示される組成物の投与と併用されることができる。
【0121】
[MMP9の検出の方法]
本開示はまた、たとえば、MMP9を発現する腫瘍または腫瘍関連組織を検出するために、被検体におけるMMP9を検出する方法を意図する。したがって、MMP9活性を有する腫瘍を診断し、観察し、病期分類し(staging)、または検出する方法が提供される。
【0122】
MMP9の発現に関連する腫瘍を有すると疑われる個体からのサンプルが回収可能であり、MMP9結合タンパク質の結合の有無を検出することによって解析可能である。この解析は、本願で記載されたようなMMP9結合タンパク質を使用した処置の開始の前に行なわれることができ、または、癌の処置の進行の観察の一環として行なわれることができる。そのような診断的な解析は、組織、そのような組織から単離された細胞などを限定されずに含む任意のサンプルを使用して行なわれることができる。組織サンプルは、たとえば、ホルマリン固定され、または凍結された組織片を含む。
【0123】
MMP9の検出および解析の任意の適切な方法が採用される。当該技術分野で知られる様々な診断アッセイ技術は、競合結合アッセイ、直接または非直接的なサンドイッチアッセイおよび、不均一相あるいは均一相のどちらかにおいて行なわれる免疫沈降アッセイのような目的に適合されることができる。
【0124】
検出方法における使用のためのMMP9結合タンパク質は、検出可能な部分(ないしはモイエティ、moiety)でラベルされることができる。検出可能な部分は、検出可能なシグナルを直接的にまたは非直接的に生成する。たとえば検出可能な部分は、3H、14C、32P、35Sまたは125Iのような放射性同位体、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、テキサスレッド、シアニン、ホトシアン、ローダミンまたはルシフェリンのような蛍光化合物または化学発光化合物、または、アルカリフォスファターゼ、β‐ガラクトシダーゼまたは西洋ワサビペルオキシダーゼのような酵素のような本願で記載される任意のものであることができる。
【0125】
検出は、サンプルを、MMP9に対して結合するMMP9結合タンパク質に適した条件下で、接触させること、および、MMP9結合タンパク質−MMP9複合体の存在(たとえば、レベル)または非存在を評価することによって成し遂げられる。参照サンプルの[MMP9の]レベルと比較される、サンプルのMMP9のレベルは、MMP9活性を有する腫瘍または腫瘍関連組織の存在を示すことができる。参照サンプルは、より前の時点で被検体から得られるサンプルまたは他の個体由来のサンプルであることができる。
【実施例】
【0126】
[実施例1:ヒトMMP9に対する抗体の調製]
シグナルペプチドを欠く全長のヒトMMP9タンパク質(配列番号28)をマウスを免疫するために使用した。免疫したマウス由来の脾臓細胞を、骨髄腫細胞と融合させ、ハイブリドーマライブラリを生じさせた。モノクローナルなカルチャー(culture)を調製し、スクリーニングし、抗MMP9モノクローナル抗体を発現するカルチャーを同定した。
【0127】
抗体(AB0041)をカルチャーの1つから精製し、特徴付けした。抗体は、IgG2b重鎖およびカッパ軽鎖を含んでいた。特徴付けは、AB0041の、他のヒトMMPに対する結合および、カニクイザル、ラットおよびマウスを含む他の種由来のMMP9タンパク質に対する結合をテストすることを含んでいた。AB0041抗体は、ヒトおよびカニクイザルMMP9に対して強く結合したことが明らかになり、AB0041抗体は、ラットMMP9に強くは結合せず、マウスMMP9またはヒトのMMP9以外のマトリクスメタロプロティナーゼの多くには結合しなかった。
【0128】
表2 AB0041およびAB0045の交差反応
【0129】
追加の特徴付けには、特定のアミノ酸がヒトMMP9配列に、より近く対応するように変化させたマウスMMP9に対する抗体の結合の分析が含まれる。加えて、ヒトMMP9タンパク質を突然変異させ、そして、様々な変異体に、抗体が結合できるかをテストし、抗体結合に重要なアミノ酸を決定し、それにより、治療的なエピトープを定義した。この解析は、MMP9アミノ酸配列のポジション162のアルギニン残基(R162)が抗体結合に重要であると同定した。AB0041抗体の結合に重要なMMP9における他のアミノ酸残基は、E111、D113、およびI198を含む。最近のMMP9の結晶構造(解析)は、E111、D113、R162およびI198が、MMP9のCa2+イオン結合ポケットの周りでお互いに近くのものとしてグループ化されることを示した。如何なる特別な科学的な理論にも拘束されずに、AB0041は、これらの残基が存在するMMP9の領域に結合し得る。換言すれば、これらのMMP9残基は、AB0041と直接接触を有し得る。
【0130】
MMP9の酵素学的解析において、AB0041抗体は、非競合的阻害剤として働くことが明らかになった。
【0131】
[実施例2:ヒトMMP9に対する抗体のヒト化]
マウスAB0041抗体の重鎖および軽鎖のアミノ酸配列を、これらの可変領域のフレームワーク部分(すなわち、非CDR[部分])における特定の位置(location)で変化させ、ヒトにおいて免疫原性がより少ないタンパク質を発生させた。これらのアミノ酸配列の変更を、図1および図2に表した。ヒト化抗体(AB0045と称される)の交差反応を、上記の表2に表す。
以下に、本発明の好ましい態様を示す。
(態様1)免疫グロブリン重鎖ポリペプチドまたはその抗原結合フラグメント、および、免疫グロブリン軽鎖ポリペプチドまたはその抗原結合フラグメント、
を含むMMP9結合タンパク質であって、
当該MMP9結合タンパク質は、MMP9に特異的に結合するものであり;
MMP9に対する当該MMP9結合タンパク質の結合が、MMP9の酵素的な活性を阻害するものであり;
さらに当該MMP9の酵素的な活性の阻害は非競合的であること;
当該MMP9結合タンパク質の免疫グロブリン重鎖ポリペプチドまたはその抗原結合フラグメントは、配列番号:13−15に規定される相補性決定領域(CDR)を含み、又は、当該MMP9結合タンパク質の免疫グロブリン軽鎖ポリペプチドまたはその抗原結合フラグメントは、配列番号:16−18に規定されるCDRを含み、及び、
当該MMP9結合タンパク質が、ヒトMMP9に対する結合に関して、配列番号:13−15に規定されるCDRを含む重鎖ポリペプチドおよび配列番号:16−18に規定されるCDRを含む軽鎖ポリペプチドを含む抗体と競合する
MMP9結合タンパク質が提供される。
(態様2)態様1のMMP9結合タンパク質であって、当該MMP9結合タンパク質の免疫グロブリン重鎖ポリペプチドまたはその抗原結合フラグメントが、配列番号:13−15に規定される相補性決定領域(CDR)を含むMMP9結合タンパク質も好ましい
(態様3)態様1のMMP9結合タンパク質であって、当該MMP9結合タンパク質の免疫グロブリン軽鎖ポリペプチドまたはその抗原結合フラグメントが、配列番号:16−18に規定されるCDRを含むMMP9結合タンパク質も好ましい。
(態様4)態様1から3のいずれかのMMP9結合タンパク質であって、当該MMP9結合タンパク質が、R162、E111、D113およびI198のアミノ酸残基を含むヒトMMP9のエピトープに結合するMMP9結合タンパク質も好ましい。
(態様5)態様1から4のいずれかのMMP9結合タンパク質であって、当該MMP9結合タンパク質の重鎖ポリペプチドが、配列番号:1、3、5、6、7、および8からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むMMP9結合タンパク質も好ましい。
(態様6)態様5のMMP9結合タンパク質であって、当該MMP9結合タンパク質の重鎖ポリペプチドが、配列番号:3に規定されるアミノ酸配列を含むMMP9結合タンパク質も好ましい。
(態様7)態様5のMMP9結合タンパク質であって、当該MMP9結合タンパク質の重鎖ポリペプチドが、配列番号:7に規定されるアミノ酸配列を含むMMP9結合タンパク質も好ましい。
(態様8)態様1から4のいずれかのMMP9結合タンパク質であって、当該MMP9結合タンパク質の軽鎖ポリペプチドが、配列番号:2、4、9、10、11、および12からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むMMP9結合タンパク質も好ましい。
(態様9)態様8のMMP9結合タンパク質であって、当該MMP9結合タンパク質の軽鎖ポリペプチドが、配列番号:4に規定されるアミノ酸配列を含むMMP9結合タンパク質も好ましい。
(態様10)態様8のMMP9結合タンパク質であって、当該MMP9結合タンパク質の軽鎖ポリペプチドが、配列番号:12に規定されるアミノ酸配列を含むMMP9結合タンパク質も好ましい。
(態様11)態様1から10のいずれかのMMP9結合タンパク質および医薬的に許容可能な担体を含む医薬組成物も好ましい。
(態様12)MMP9活性を有する腫瘍または腫瘍関連組織を有する被検体において、MMP9活性を阻害する方法に用いるための医薬組成物であって、
当該方法は、当該被検体に態様11の医薬組成物を、MMP9活性を阻害するのに有効な量で投与することを含み、当該MMP9活性が、当該被検体において阻害されることを特徴とする医薬組成物も好ましい。
(態様13)被検体の組織におけるMMP9発現を検出する方法であって、当該方法が、
当該被検体からの組織サンプルを態様1から10の何れかの単離されたMMP9結合タンパク質と接触させること;及び
MMP9の存在または非存在を検出することを含み、
当該組織サンプルにおけるMMP9の存在が、組織において当該MMP9が発現されることを検出する、検出方法も好ましい。
更に、本発明において下記の形態可能である。
(形態1)
免疫グロブリン重鎖ポリペプチドまたはその機能的なフラグメント、および、免疫グロブリン軽鎖ポリペプチドまたはその機能的なフラグメント、
を含むMMP9結合タンパク質であって、
当該MMP9結合タンパク質は、MMP9に特異的に結合するものであり;
MMP9に対する当該MMP9結合タンパク質の結合が、MMP9の酵素的な活性を阻害するものであり;
さらに当該MMP9の酵素的な活性の阻害は非競合的であること;及び、
当該MMP9結合タンパク質は、R162、E111、D113およびI198のアミノ酸残基を含むヒトMMP9のエピトープに結合するものであるMMP9結合タンパク質。
(形態2)
当該免疫グロブリン重鎖ポリペプチドが、配列番号:13−15に規定される相補性決定領域(CDR)を含むMMP9結合タンパク質。
(形態3)
当該免疫グロブリン軽鎖ポリペプチドが、配列番号:16−18に規定されるCDRを含むMMP9結合タンパク質。
(形態4)
当該重鎖ポリペプチドが、配列番号:3、5、6、7、および8からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むMMP9結合タンパク質。
(形態5)
当該重鎖ポリペプチドが、配列番号:3に規定されるアミノ酸配列を含むMMP9結合タンパク質。
(形態6)
当該重鎖ポリペプチドが、配列番号:7に規定されるアミノ酸配列を含むMMP9結合タンパク質。
(形態7)
当該軽鎖ポリペプチドが、配列番号:4、9、10、11、および12からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むMMP9結合タンパク質。
(形態8)
当該軽鎖ポリペプチドが、配列番号:4に規定されるアミノ酸配列を含むMMP9結合タンパク質。
(形態9)
当該軽鎖ポリペプチドが、配列番号:12に規定されるアミノ酸配列を含むMMP9結合タンパク質。
(形態10)
当該MMP9結合タンパク質および医薬的に許容可能な担体を含む医薬組成物。
(形態11)
MMP9活性を有する腫瘍または腫瘍関連組織を有する被検体において、MMP9活性を阻害する方法であって、
当該方法は、当該被検体に当該医薬組成物を、MMP9活性を阻害するのに有効な量で投与することを含み、当該MMP9活性が、当該被検体において阻害されることを特徴とする阻害方法。
(形態12)
被検体の組織におけるMMP9発現を検出する方法であって、当該方法が、
当該被検体からの組織サンプルを当該単離されたMMP9結合タンパク質と接触させること;及び
MMP9の存在または非存在を検出することを含み、
当該組織サンプルにおけるMMP9の存在が、組織において当該MMP9が発現されることを検出する
ことを特徴とする検出方法。
図1
図2
図3
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]