特許第6198811号(P6198811)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6198811
(24)【登録日】2017年9月1日
(45)【発行日】2017年9月20日
(54)【発明の名称】プレート式熱交換器
(51)【国際特許分類】
   F28F 3/08 20060101AFI20170911BHJP
   B23K 35/363 20060101ALI20170911BHJP
   C22C 19/05 20060101ALI20170911BHJP
   C22C 19/07 20060101ALI20170911BHJP
   C22C 38/00 20060101ALI20170911BHJP
   F28F 21/08 20060101ALI20170911BHJP
   F28D 9/00 20060101ALI20170911BHJP
   B23K 1/00 20060101ALI20170911BHJP
   C22C 30/02 20060101ALN20170911BHJP
【FI】
   F28F3/08 311
   B23K35/363 Z
   C22C19/05 Z
   C22C19/07 Z
   C22C38/00 302Z
   F28F21/08 F
   F28D9/00
   F28F21/08 Z
   B23K1/00 330A
   !C22C30/02
【請求項の数】26
【全頁数】35
(21)【出願番号】特願2015-502360(P2015-502360)
(86)(22)【出願日】2013年3月28日
(65)【公表番号】特表2015-518555(P2015-518555A)
(43)【公表日】2015年7月2日
(86)【国際出願番号】EP2013056737
(87)【国際公開番号】WO2013144308
(87)【国際公開日】20131003
【審査請求日】2014年9月26日
(31)【優先権主張番号】12161742.7
(32)【優先日】2012年3月28日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】PCT/EP2013/056530
(32)【優先日】2013年3月27日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】PCT/EP2013/056604
(32)【優先日】2013年3月27日
(33)【優先権主張国】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】509005513
【氏名又は名称】アルファ−ラヴァル・コーポレート・アーベー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ペール・シェーディン
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン・ワルター
【審査官】 柿沼 善一
(56)【参考文献】
【文献】 特表2010−510067(JP,A)
【文献】 特表2010−510068(JP,A)
【文献】 特開2011−247466(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/015139(WO,A1)
【文献】 特開2002−107089(JP,A)
【文献】 特開2002−361479(JP,A)
【文献】 特開2003−048076(JP,A)
【文献】 特開2012−006027(JP,A)
【文献】 特開平03−110083(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28F 3/08
B23K 1/00
B23K 35/363
C22C 19/05
C22C 19/07
C22C 38/00
F28D 9/00
F28F 21/08
C22C 30/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
恒久的に接合されるプレート式熱交換器(1)を作り出すための方法であって、前記プレート式熱交換器(1)は、複数の金属製の伝熱プレート(2)を含み、前記複数の金属製の伝熱プレート(2)は、1100℃を上回る固相線温度を有し、互いに隣同士に設けられ、プレートパッケージ(3)を形成しており、前記プレートパッケージ(3)は、第1の媒体のための第1のプレート内部空間(4)と第2の媒体のための第2のプレート内部空間(5)とを備えており、前記第1のプレート内部空間(4)および前記第2のプレート内部空間(5)は、前記プレートパッケージ(3)の中で、交互の順序で設けられており、
それぞれの伝熱プレート(2)は、熱伝達エリア(10)と、前記熱伝達エリア(10)の周りに延在する縁部エリア(11)とを含み、
前記熱伝達エリア(10)は、隆起部(18)および陥凹部(19)のコルゲーションを含み、
前記伝熱プレートの前記コルゲーションは、前記伝熱プレート(2)をプレスすることによって設けられており、
前記方法は、
第1のプレート(21)の第1の面における隆起部(18)および陥凹部(19)の前記コルゲーションの表面(15)に溶融抑制組成物(20)を塗布するステップ(201)であって、前記溶融抑制組成物(20)は、
前記第1のプレート(21)の溶融温度を降下させるために、少なくとも40重量%のホウ素およびシリコンを含む溶融抑制成分、および
記第1のプレート(21)に前記溶融抑制組成物(20)を塗布する前記ステップ(201)を容易にするバインダー成分
を含む、ステップと、
前記伝熱プレートを積み重ねてプレートパッケージ(3)にすることによって、第2のプレート(22)の第2の面における隆起部(18)および陥凹部(19)の前記コルゲーションを、前記第1のプレート(21)の前記第1の面における隆起部(18)および陥凹部(19)の前記コルゲーション上の前記溶融抑制組成物(20)に接触させるステップ(202)と、
前記第1および第2のプレート(21、22)を、1100℃を上回る温度まで加熱するステップ(203)であって、当該ステップによって、前記第1のプレート(21)の前記第1の面における隆起部(18)および陥凹部(19)の前記コルゲーションの前記表面(15)は、前記第1のプレート(21)の表面(24)が溶融すると共に前記溶融抑制成分と合わさって溶融金属層(25)を形成するように、溶融し、前記溶融金属層(25)は、前記第1のプレート(21)と前記第2のプレート(22)との間の接触点(23)において、前記第2のプレート(22)の上の隆起部(18)および陥凹部(19)の前記コルゲーションに接触している、ステップと、
前記プレートパッケージ(3)における前記伝熱プレート(2)間の前記接触点(23)で接合部(26)が得られるように、前記溶融金属層(25)が凝固するようにさせるステップと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記ホウ素が、元素ホウ素、ならびに以下の化合物、すなわち、炭化ホウ素、ホウ化シリコン、ホウ化ニッケル、およびホウ化鉄のうちのいずれかから選択されるホウ素化合物のホウ素のうちのいずれかに由来する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記シリコンが、元素シリコン、ならびに以下の化合物、すなわち、炭化ケイ素、ホウ化シリコン、およびケイ素鉄のうちのいずれかから選択されるシリコン化合物のシリコンのうちのいずれかに由来する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記溶融抑制成分が、少なくとも85重量%のホウ素およびシリコンを含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
ホウ素が、溶融抑制化合物の前記ホウ素およびシリコン含有量の少なくとも10重量%を構成する、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
ホウ素が、溶融抑制化合物の前記ホウ素およびシリコン含有量の少なくとも55重量%を構成する、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記溶融抑制成分が、50重量%未満の金属元素を含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記溶融抑制成分が、10重量%未満の金属元素を含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記伝熱プレート(2)が、0.3〜0.6mmの厚さを有する、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記伝熱プレート(2)が、0.6〜1.0mmの厚さを含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記溶融抑制組成物(20)を塗布する前記ステップ(201)が、
前記溶融抑制組成物が前記第1のプレート(21)の前記表面(15)と結合するまで、前記伝熱プレート(2)を加熱するステップ(203)と、
前記溶融抑制組成物(20)中のすべてのホウ素およびシリコンが、前記第1のプレート(21)の中の金属とともに、化合物を形成する前に、前記伝熱プレート(2)の温度を降下させるステップと
を含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記溶融抑制組成物(20)を塗布する前記ステップ(201)が、スクリーン印刷によって行われる、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
第1の表面(15)は、前記接合部(26)を形成させるステップ(204)において前記溶融金属層(25)の中の金属が前記接触点(23)へ流れるように、前記表面(16)の上の前記接触点(23)によって画定される面積(A2)よりも大きい面積(A1)を有している、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記表面(15)の前記面積(A1)が、前記接触点(23)によって画定される前記面積(A2)よりも少なくとも10倍大きい、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記表面(15)の前記面積(A1)が、前記接合部(26)の断面積(A3)よりも少なくとも3倍大きい、請求項13または14に記載の方法。
【請求項16】
前記接合部(26)が、少なくとも50重量%の金属を含み、前記金属は、前記加熱するステップ(203)の前、前記伝熱プレート(2)のうちのいずれかの一部分であった、請求項1から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記伝熱プレート(2)が、>50重量%のFe、<13重量%のCr、<1重量%のMo、<1重量%のNi、および<3重量%のMnを含む、請求項1から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記伝熱プレート(2)が、>90重量%のFeを含む、請求項1から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記伝熱プレート(2)が、>65重量%のFe、および>13重量%のCrを含む、請求項1から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記伝熱プレート(2)が、>50重量%のFe、>15.5重量%のCr、および>6重量%のNiを含む、請求項1から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記伝熱プレート(2)が、>50重量%のFe、>15.5重量%のCr、1〜10重量%のMo、および>8重量%のNiを含む、請求項1から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記伝熱プレート(2)が、>97重量%のNiを含む、請求項1から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記伝熱プレート(2)が、>10重量%のCr、および>60重量%のNiを含む、請求項1から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記伝熱プレート(2)が、>15重量%のCr、>10重量%のMo、および>50重量%のNiを含む、請求項1から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記伝熱プレート(2)が、>70重量%のCoを含む、請求項1から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記第1のプレートが、>10重量%のFe、0.1〜30重量%のMo、0.1〜30重量%のNi、および>50重量%のCoを含む、請求項1から16のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレート式熱交換器を作り出すための方法、およびその方法によって作り出されるプレート式熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
高い溶融温度を有する合金を接合するには、様々な方法を使用することが可能である。この文脈では、「高い溶融温度」とは、900℃を上回る溶融温度である。溶接は一般的な方法であり、母材金属は、追加的な材料の有無にかかわらず溶融され、すなわち、鋳造製品が溶融および再凝固によって生成される。
【0003】
ろう付けは、450℃を超えて溶融する液体金属を導入することによって、固体金属を極めて接近させて接合するためのプロセスである。ろう付けされた接合部は一般に、適当なフィラー(filler)合金が選択されるときには、母材金属表面は、ろう付け合金の流動温度まで加熱する間、清浄であり、清浄に保たれ、適切な接合部設計が使用されるという結果をもたらす。プロセスの間に、ろう付け用フィラーは、450℃を上回る温度で溶融され、すなわち、液体界面が、接合されることとなる母材金属の液相線温度よりも低い温度で形成される。ろう付けを実現するために、液体界面は、良好な濡れ性および流動性を有しているべきである。
【0004】
はんだ付けは、フィラー金属(すなわち、はんだ)の溶融、および接合部への流動によって、2つ以上の金属アイテムが接合されるプロセスであり、はんだは、ワークピースよりも低い融点を有している。ろう付けでは、フィラー金属が、はんだよりも高い温度で溶融するが、ワークピース金属は溶融しない。はんだ付けとろう付けとの間の区別は、フィラー合金の溶融温度に基づく。450℃という温度が、通常は、はんだ付けとろう付けとの間の実践的な線引き(delineating)点として使用されている。
【0005】
一般に、ろう付けの手順は、接合されることとなる母材金属の間のギャップまたはクリアランスに接触して、ろう付け用フィラーを塗布することを必要とする。加熱プロセスの間に、ろう付け用フィラーは溶融し、接合されることとなるギャップを充填する。ろう付けプロセスでは、3つの主要な段階が存在しており、第1の段階は、物理的な段階と呼ばれる。物理的な段階は、ろう付け用フィラーを濡らすこと、および流動させることを含む。第2の段階は、通常、所与の接合温度で起こる。この段階の間に、固体-液体の相互作用が存在し、それは、実質的な質量移動を伴う。液体フィラー金属に直接に隣接する母材金属体積は、溶解するか、またはこの段階において、フィラー金属と反応させられる。それと同時に、液相からの少量の元素が、固体の母材金属の中へ侵入する。接合部エリアにおけるこの成分の再分布は、フィラー金属組成に対する変化を結果として生じさせ、ときには、フィラー金属の凝固の開始を生じさせる。最後の段階(それは、第2の段階と重複する)は、最終接合部の微細構造の形成によって特徴付けられ、接合部の凝固および冷却の間に進行する。
【0006】
2つの金属部分(母材)を接合するための別の方法は、過渡液相拡散ボンディング(TLPボンディング)であり、中間層からの融点抑制元素が、ボンディング温度で、金属部分の格子および粒界の中へ移動するときに、拡散が起こる。次いで、固体拡散プロセスは、ボンド界面における組成の変化につながり、異種中間層は、母材よりも低い温度で溶融する。したがって、薄い層の液体が、界面に沿って広がり、金属部分のいずれかの融点よりも低い温度で接合部を形成する。ボンディング温度の降下は、溶融物の凝固につながり、この相は、その後に、一定期間にわたってボンディング温度で保持することによって、金属部分の中へ拡散され得る。
【0007】
溶接、ろう付け、およびTLPボンディングなどの接合方法は、金属部分を上手く接合する。しかし、溶接は、非常に高価であるか、またはアクセスするのが困難であるときには、多数の接合部を生成することも不可能である可能性があるので、その限界を有する。ろう付けもまた、例えば、適正に塗布することが困難であるという点、または最も適切なフィラー金属を決定することさえ困難であるときもあるという点において、その限界を有する。異なる材料を接合するというときには、TLPボンディングは有利であるが、その限界を有する。例えば、適切な中間層を見出すことが困難であることが多く、TLPボンディング法は、大きいギャップが充填されるべき場所で、または比較的大きい接合部が形成されるべきときに、接合部を生成するのに全く適切ではない。
【0008】
したがって、特定の接合方法を選択する際には、多くの要因が関与する。また、極めて重要な要因は、コスト、生産性、安全性、プロセス速度、および金属部分を接合する接合部の特性、ならびに接合した後の金属部分自体の特性である。上述の方法は、それらの利点を有しているとしても、とりわけ、コスト、生産性、安全性、およびプロセス速度などの要因が考慮される場合には、その方法に対する補完物として使用されることとなる接合方法に対する要求が依然として存在している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開第2002/38327号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、上記の技法および従来技術を改善することである。とりわけ、プレート式熱交換器のプレート間に強い接合部を依然として作り出しながら、恒久的に接合されるプレート式熱交換器を簡単で信頼性の高い様式で作り出す方法を提供することが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
これらの目的を解決するために、恒久的に接合されるプレート式熱交換器を作り出すための方法であって、プレート式熱交換器は、複数の金属製の伝熱プレートを含み、複数の金属製の伝熱プレートは、1100℃を上回る固相線温度を有する、方法が提供される。プレートは、互いに隣同士に設けられ、プレートパッケージを形成しており、プレートパッケージは、第1の媒体のための第1のプレート内部空間と第2の媒体のための第2のプレート内部空間とを備えており、第1および第2のプレート内部空間は、プレートパッケージの中で、交互の順序で設けられている。それぞれの伝熱プレートは、熱伝達エリアと、熱伝達エリアの周りに延在する縁部エリアとを含む。熱伝達エリアは、隆起部および陥凹部のコルゲーションを含む。プレートの前記コルゲーションは、プレートをプレスすることによって実現されている。上記の方法は、
第1のプレートの第1の面における隆起部および陥凹部のコルゲーションの表面に溶融抑制組成物を塗布するステップであって、溶融抑制組成物は、
第1のプレートの溶融温度を降下させるために、少なくとも25重量%のホウ素およびシリコンを含む溶融抑制成分、および
随意的に、第1のプレートの上に溶融抑制組成物を塗布するステップを容易にするバインダー成分
を含む、ステップと、
プレートを積み重ねてプレートパッケージにすることによって、第2のプレートの第2の面における隆起部および陥凹部のコルゲーションを、第1のプレートの第1の面における隆起部および陥凹部のコルゲーション上の溶融抑制組成物に接触させるステップと、
第1および第2のプレートを、1100℃を上回る温度まで加熱するステップであって、当該ステップによって、第1のプレートの第1の面における隆起部および陥凹部のコルゲーションの前記表面は、第1のプレートの表面層が溶融すると共に溶融抑制成分と合わさって溶融金属層を形成するように、溶融し、溶融金属層は、第1のプレートと第2のプレートとの間の接触点において、第2のプレートの上の隆起部および陥凹部のコルゲーションに接触している、ステップと、
プレートパッケージにおけるプレート間の接触点で接合部が得られるように、溶融金属層が凝固するようにさせるステップと
を含む。
【0012】
プレートの金属は、一般的に、1100℃を上回る固相線温度を有するので、例えば、鉄ベースの金属合金、ニッケルベースの金属合金、およびコバルトベースの金属合金の形態を有することが可能である。プレートは、1100℃を上回る固相線温度を有さない純銅、銅ベースの合金、純アルミニウム、またはアルミニウムベースの合金とすることはできない。金属プレートの中の金属、またはさらに金属プレート自体も、「母材金属」または「母材」と称することが可能である。この文脈では、「鉄ベースの」合金とは、合金の中のすべての元素の中で鉄が最も大きい重量パーセンテージ(重量%)を有する合金である。また、対応する状況は、ニッケルベースの合金、コバルトベースの合金、クロムベースの合金、およびアルミニウムベースの合金にも当てはまる。
【0013】
示されているように、溶融抑制組成物は、少なくとも1つの成分を含み、それは、溶融抑制成分である。随意的に、溶融抑制組成物は、バインダー成分を含む。少なくとも第1のプレートの溶融温度を降下させるのに貢献する、溶融抑制組成物のすべての物質または溶融抑制組成物の一部分は、溶融抑制成分の部分であると見なされる。少なくとも第1のプレートの溶融温度を降下させるのには関与しないが、その代わりに、溶融抑制組成物を「結合させ」、例えば、ペースト、ペイント、またはスラリーなどを形成するようになっている溶融抑制組成物の一部分は、バインダー成分の部分であると見なされる。当然のことながら、溶融抑制成分は、少量のフィラー金属など、他の成分を含むことが可能である。しかし、溶融抑制成分の少なくとも25重量%は、ホウ素およびシリコンから構成されるので、そのようなフィラー金属は、溶融抑制成分の75重量%より多くに相当することはできない。フィラー金属が溶融抑制組成物に含まれる場合には、フィラー金属は、常に、溶融抑制成分の一部分である。
【0014】
この文脈では、「ホウ素およびシリコン」とは、重量%で計算したときの、溶融抑制成分中のホウ素およびシリコンの合計を意味している。ここで、重量%は、質量分率に100を掛けることによって決定される重量パーセンテージを意味している。知られているように、成分中の物質の質量分率は、成分の密度に対するその物質の質量濃度(成分の中のその物質の密度)の比率である。したがって、例えば、少なくとも25重量%のホウ素およびシリコンは、100gの溶融抑制成分のサンプルの中で、ホウ素およびシリコンの全重量が少なくとも25gであるということを意味している。明らかに、バインダー成分が溶融抑制組成物に含まれている場合には、溶融抑制組成物中のホウ素およびシリコンの重量%は、25重量%未満であることが可能である。しかし、少なくとも25重量%のホウ素およびシリコンが、常に、溶融抑制成分中に存在しており、また、溶融抑制成分は、示されているように、含まれ得る任意のフィラー金属も含み、すなわち、フィラー金属は、常に、溶融抑制組成物の一部分として見られる。
【0015】
「ホウ素」とは、溶融抑制成分中のすべてのホウ素を含み、それは、元素ホウ素、およびホウ素化合物中のホウ素を含む。それに対応して、「シリコン」とは、溶融抑制成分中のすべてのシリコンを含み、それは、元素シリコン、およびシリコン化合物中のシリコンを含む。したがって、ホウ素とシリコンの両方は、溶融抑制成分中の、様々なホウ素化合物およびシリコン化合物中のホウ素およびシリコンによって表すことが可能である。
【0016】
従来のろう付け物質は、ホウ素およびシリコンなどの溶融抑制物質よりもさらに多くの充填(filling)金属を有するので、明らかに、溶融抑制組成物は、従来のろう付け物質とは非常に異なる。概して、ろう付け物質は、18重量%未満のホウ素およびシリコンを有している。
【0017】
フィラー金属が、低減されるか、またはさらに排除され得るという点において、および様々な材料から作製されている金属プレートに塗布することが可能であるという点において、本方法は有利である。当然のことながら、溶融抑制組成物は、同様に、第2の金属プレートの上に塗布することも可能である。
【0018】
ホウ素は、元素ホウ素、ならびに少なくとも以下の化合物、すなわち、炭化ホウ素、ホウ化シリコン、ホウ化ニッケル、およびホウ化鉄のうちの任意のものから選択されるホウ素化合物のホウ素のうちのいずれかに由来することが可能である。シリコンは、元素シリコン、ならびに少なくとも以下の化合物、すなわち、炭化ケイ素、ホウ化シリコン、およびケイ素鉄のうちの任意のものから選択されるシリコン化合物のシリコンのうちのいずれかに由来することが可能である。
【0019】
溶融抑制成分は、少なくとも40重量%のホウ素およびシリコンを含むことが可能であり、または、さらに少なくとも85重量%のホウ素およびシリコンを含むことが可能である。これは、任意のフィラー金属が存在する場合に、そのフィラー金属は、それぞれ60重量%未満、または15重量%未満の量しか存在しないということを意味している。溶融抑制成分は、さらには、少なくとも95重量%のホウ素およびシリコンを含むことが可能である。
【0020】
ホウ素は、溶融抑制化合物のホウ素およびシリコン含有量の少なくとも10重量%を構成することが可能である。これは、溶融抑制成分が、少なくとも25重量%のホウ素およびシリコンを含むときに、溶融抑制成分が、少なくとも2.5重量%のホウ素を含むということを意味している。シリコンは、溶融抑制化合物のホウ素およびシリコン含有量の少なくとも55重量%を構成することが可能である。
【0021】
溶融抑制成分は、50重量%未満の金属元素、または10重量%未満の金属元素を含むことが可能である。そのような金属元素は、上記に議論されている「金属フィラー」に対応する。そのような少量の金属元素または金属フィラーは、溶融抑制組成物を、例えば、既知のろう付け組成物から完全に差別化する。なぜなら、既知のろう付け組成物は、少なくとも60重量%の金属元素を含むからである。ここで、「金属元素」とは、例えば、すべての遷移金属を含み、遷移金属は、周期表のdブロックの元素であり、それは、周期表の3〜12族を含む。これは、例えば、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、クロム(Cr)、およびモリブデン(Mo)が「金属元素」であるということを意味している。「金属元素」でない元素は、希ガス、ハロゲン、および以下の元素:ホウ素(B)、炭素(C)、シリコン(Si)、窒素(N)、リン(P)、ヒ素(As)、酸素(O)、硫黄(S)、セレン(Se)、およびテルル(Tu)である。例えば、ホウ素が化合物のホウ化ニッケルによりもたらされる場合には、この化合物のニッケル部分は、一実施形態では、50重量%未満であり、他の実施形態では、10重量%未満であるべきである金属元素中に含まれる金属元素であるということが留意されるべきである。
【0022】
プレートは、0.3〜0.6mmの厚さを備えることが可能であり、またはプレートは、0.6〜1.0mmの厚さを備えることが可能であり、またはプレートは、1.0mmを超える厚さを備えることが可能である。
【0023】
第1の表面は、接合部を形成させるステップにおいて溶融金属層の中の金属が接触点へ流れるように、前記第1の表面部分の上の接触点によって画定される面積よりも大きい面積を有することが可能である。そのような流れは、一般的に、毛細管作用によって引き起こされる。
【0024】
表面の面積は、接触点によって画定される面積の少なくとも10倍であることが可能である。表面の面積は、接触点によって画定される面積の少なくとも20倍または30倍などのように、さらに、より大きい(または接触点が相対的に小さい)ことが可能である。表面の面積とは、接合部を形成するために、溶融金属がそこから流れる表面の面積をいう。
【0025】
表面の面積は、接合部の断面積の少なくとも3倍であることが可能である。表面の面積は、接触点によって画定される面積の少なくとも6倍または10倍であるなど、さらに、より大きいことが可能である(または接合部の断面積が相対的に小さい)。接合部の断面積は、接合部がその最小の広がり(断面積)を有する場所において、接触点が位置している表面に平行な平面を横切る、接合部が有する断面積として定義することが可能である。
【0026】
接合部は、加熱前に、第1の金属部分および第2の金属部分のうちのいずれかの一部分であった、少なくとも50重量%の、または少なくとも85重量%の、または、さらに100重量%の金属(金属元素)を含むことが可能である。金属部分の金属を接触点へ流れさせ、接合部を形成させることによって、これは達成される。このように形成される接合部は、ろう付けによって形成される接合部とは非常に異なる。そのような接合部は、概して、ろう付け前に、接合部を形成するために使用されたろう付け物質のフィラー金属の一部分であった少なくとも90重量%の金属を含むためである。
【0027】
プレートは、以下のいずれかを含むことが可能である:
i)>50重量%Fe、<13重量%Cr、<1重量%Mo、<1重量%Niおよび<3重量%Mn
ii)>90重量%Fe
iii)>65重量%Fe、および>13重量%Cr
iv)>50重量%Fe、>15.5重量%Cr、および>6重量%Ni
v)>50重量%Fe、>15.5重量%Cr、1〜10重量%Mo、および>8重量%Ni
vi)>97重量%Ni
vii)>10重量%Cr、および>60重量%Ni
viii)>15重量%Cr、>10重量%Mo、および>50重量%Ni
ix)>70重量%Co
x)>10重量%Fe、0.1〜30重量%Mo、0.1〜30重量%Ni、および>50重量%Co
【0028】
上記は、第1のプレート(および第2のプレートも同様)が多数の異なる合金から作製することが可能であるということを意味している。明らかに、上記の例は、産業において一般的であるように、他の金属または元素とバランスがとられている。
【0029】
別の態様によれば、1100℃を上回る固相線温度を有する複数の金属製の伝熱プレートを含むプレート式熱交換器が提供される。プレートは、互いに隣同士に設けられ、プレートパッケージを形成しており、プレートパッケージは、第1の媒体のための第1のプレート内部空間と第2の媒体のための第2のプレート内部空間とを備えており、第1および第2のプレート内部空間は、プレートパッケージの中で、交互の順序で設けられている。それぞれの伝熱プレートは、熱伝達エリアと、熱伝達エリアの周りに延在する縁部エリアとを含む。熱伝達エリアは、隆起部および陥凹部のコルゲーションを含む。プレートの前記コルゲーションは、プレートをプレスすることによって実現されている。プレート式熱交換器は、上記の方法、またはその実施形態のいずれかによって作り出される。
【0030】
本発明の別の態様によれば、プレート式熱交換器が、接合部によって第2のプレートに接合されている第1のプレートを含み、これらのプレートが、1100℃を上回る固相線温度を有しており、接合部が、少なくとも50重量%の金属元素を含み、金属元素は、接合部を取り囲むエリア(A1)から引き寄せられたものであり、かつ第1のプレートおよび第2のプレートのうちのいずれかの一部分であった、プレート式熱交換器が提供される。
【0031】
方法、製品、および溶融抑制組成物の種々の目的、特徴、態様、ならびに利点は、以下の詳細な説明から、および図面から明らかになろう。
【0032】
ここで、本発明の実施形態が、例として、添付の概略図面を参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】従来技術のプレート式熱交換器の分解斜視図である。
図2図1によるプレート式熱交換器の断面図である。
図4】本発明の方法によるプレート式熱交換器において、プレートを接合するための方法のフローチャートである。
図5】どのように2つの金属部分が接合され得るかということを説明した多数の実施例の中で使用された、プレスされたプレートを示す図である。
図6図5に示されているプレートと平坦なプレートとの間の接合部の断面の写真である。
図7】溶融抑制組成物の塗布量(g/3500mm2)の関数として、測定された接合部の幅がプロットされた、傾向線を含むダイアグラムである。
図8】測定された幅に基づいて計算された充填される接合部の面積が、溶融抑制組成物の塗布量(g/3500mm2)の関数としてプロットされた、傾向線を含む別のダイアグラムである。
図9】接合部がプレート材よりも強くなったか、またはプレート材と同じであった、引張テストされたサンプルの%が、溶融抑制組成物の塗布量(g/3500mm2)の関数としてプロットされた、傾向線を含む別のダイアグラムである。
図10】接合された他のテストサンプルの写真である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
添付されている図を参照すると、プレート式熱交換器が開示されている(図1および図2をそれぞれ参照)。プレート式熱交換器1は、複数の伝熱プレート2を含み、複数の伝熱プレート2は、プレートパッケージ3を形成するために互いに隣同士に設けられており、プレートパッケージ3は、第1の媒体のための第1のプレート内部空間4、および第2の媒体のための第2のプレート内部空間5を備えている。第1のプレート内部空間4および第2のプレート内部空間5は、プレートパッケージ3の中で、交互の順序で設けられており、すなわち、1つおきのプレート内部空間が、第1のプレート内部空間4であり、1つおきのプレート内部空間が、第2のプレート内部空間5である(図3を参照)。
【0035】
図1図3に開示されているプレート式熱交換器1は、伝熱プレート2を有しており、伝熱プレート2は、恒久的に互いに接合されている。2つの最も外側の伝熱プレートが、エンドプレートを形成するか、またはエンドプレートに置き換えられることが可能である。
【0036】
また、プレート式熱交換器1は、入口部チャネル6と、出口部チャネル9とを含み、それらは、第1の媒体を、第1のプレート内部空間4の中へ搬送し、第1のプレート内部空間4から搬送し、かつ、第2の媒体を、第2のプレート内部空間5の中へ搬送し、第2のプレート内部空間5から搬送するように配置されている。それぞれの伝熱プレート2は、主要延在平面pに延在し、熱伝達エリア10と、熱伝達エリア10の周りに延在する縁部エリア11とを含む。また、それぞれの伝熱プレート2は、2つのポートホールエリア12および13を含み、それらはそれぞれ、伝熱プレート2の第1の端部1Aと、伝熱プレート2の第2の端部1Bとに設けられている。ポートホールエリア12および13は、縁部エリア11の内側に位置付けられており、より具体的には、縁部エリア11と熱伝達エリア10との間に位置付けられている。それぞれのポートホールエリア12、13は、それぞれの入口部チャネル6および出口部チャネル9と整合する少なくとも1つのポートホール14を含む。
【0037】
熱伝達エリア10は、隆起部18および陥凹部19のコルゲーションを含む。そのような陥凹部および隆起部は、例えば、隆線部および溝部またはディンプルとして形成することが可能である。
【0038】
プレート2は、一般的に、1100℃を上回る固相線温度を有するので、例えば、鉄ベースの金属合金、ニッケルベースの金属合金、およびコバルトベースの金属合金から作製することが可能である。プレートは、1100℃を上回る固相線温度を有さない純銅、純アルミニウム、またはアルミニウムベースの合金から作製することは可能でない。例えば、プレートは、一般的に、鉄ベースの合金、ニッケルベースの合金、およびコバルトベースの合金から作製することが可能である。
【0039】
プレート2の中の金属、またはプレート2自体も、「母材金属」または「母材」と称することが可能である。この文脈では、「鉄ベースの」合金とは、合金の中のすべての元素の中で鉄が最も大きい重量パーセンテージ(重量%)を有する合金である。また、対応する状況が、例えば、ニッケルベースの合金、銅ベースの合金、コバルトベースの合金、クロムベースの合金、およびアルミニウムベースの合金にも当てはまる。
【0040】
図4を参照すると、プレート式熱交換器1のためのプレート2を接合するための方法のフローチャートが図示されている。プレート2は、上記に説明されているように、様々な材料から作製することが可能である。
【0041】
第1のステップ201では、溶融抑制組成物20が、隆起部18および陥凹部19のコルゲーションの少なくとも一部分の上に塗布される。溶融抑制組成物20は、コルゲーションの一部分だけの上に、すなわち、接触点23の上に塗布することが可能である。
【0042】
塗布自体は、従来の技法によって、例えば、溶融抑制組成物がバインダー成分を含む場合には、スプレー法、スクリーン印刷法、ローリング法(rolling)、もしくはペインティング法によって、バインダー成分が使用されない場合には、PVDもしくはCVDによって、または融点抑制剤だけを用いて、行うことが可能である。
【0043】
溶融抑制組成物20は、少なくとも1つの成分を含み、それは、溶融抑制成分である。随意的に、溶融抑制組成物は、バインダー成分を含む。少なくとも第1の金属部分の溶融温度を降下させるのに貢献する、溶融抑制組成物のすべての物質または溶融抑制組成物の一部分は、溶融抑制成分の部分であるとみなされる。少なくとも第1の金属部分の溶融温度を降下させるのには関与しないが、その代わりに、溶融抑制組成物を「結合させ」、例えば、ペースト、ペイント、またはスラリーなどを形成するようになっている溶融抑制組成物の一部分は、バインダー成分の部分であるとみなされる。当然のことながら、溶融抑制成分は、少量のフィラー金属などの他の成分を含むことが可能である。しかし、溶融抑制成分の少なくとも25重量%は、ホウ素およびシリコンから構成されるので、そのようなフィラー金属は、溶融抑制成分の75重量%より多くに相当することはできない。フィラー金属が溶融抑制組成物に含まれる場合には、フィラー金属は、常に、溶融抑制成分の一部分である。
【0044】
この文脈では、「ホウ素およびシリコン」とは、重量%で計算したときの、溶融抑制成分中のホウ素およびシリコンの合計を意味している。ここで、重量%は、質量分率に100を掛けることによって決定される重量パーセンテージを意味している。知られているように、成分中の物質の質量分率は、成分の密度に対するその物質の質量濃度(成分中のその物質の密度)の比率である。したがって、例えば、少なくとも25重量%のホウ素およびシリコンは、100gの溶融抑制成分のサンプルの中で、ホウ素およびシリコンの全重量が少なくとも25gであるということを意味している。明らかに、バインダー成分が溶融抑制組成物に含まれている場合には、溶融抑制組成物中のホウ素およびシリコンの重量%は、25重量%未満であることが可能である。しかし、少なくとも25重量%のホウ素およびシリコンが、常に、溶融抑制成分中に存在しており、また、溶融抑制成分は、示されているように、含まれ得る任意のフィラー金属も含み、すなわち、フィラー金属は、常に、溶融抑制組成物の一部分として見られる。
【0045】
「ホウ素」とは、溶融抑制成分中のすべてのホウ素を含み、それは、元素ホウ素、およびホウ素化合物中のホウ素を含む。それに対応して、「シリコン」とは、溶融抑制成分中のすべてのシリコンを含み、それは、元素シリコン、およびシリコン化合物中のシリコンを含む。したがって、ホウ素とシリコンの両方は、溶融抑制成分中の、様々なホウ素化合物およびシリコン化合物中のホウ素およびシリコンによって表すことが可能である。
【0046】
従来のろう付け物質は、ホウ素およびシリコンなどの溶融抑制物質よりもさらに多くの充填金属を有するので、明らかに、溶融抑制組成物は、従来のろう付け物質とは非常に異なる。概して、ろう付け物質は、18重量%未満のホウ素およびシリコンを有している。
【0047】
フィラー金属が、低減されるか、またはさらに排除され得るという点において、および様々な材料から作製されている金属部分に塗布することが可能であるという点において、本方法は有利である。また、幅の広い範囲の用途の範囲内で、例えば、他の方法では例えば溶接または従来のろう付けによって接合される、熱伝達プレートまたは任意の適切な金属対象物を接合するために、本方法を使用することが可能である。
【0048】
本発明の別の実施形態では、溶融抑制組成物20が、コイルの上に塗布され、コイルが、その後に、プレート2へと切断される。
【0049】
次のステップ202では、プレートを積み重ねてプレートパッケージ3にすることによって、第2のプレート22の第2の面における隆起部18および陥凹部19のコルゲーションが、第1のプレート21の第1の面における隆起部18および陥凹部19のコルゲーション上の溶融抑制組成物20に接触するようにされる。第1のプレート21および第2のプレート22を積み重ねることによって、プレートパッケージ3が生成される。これは、従来の自動化された製造システムを用いることによって、手動でまたは自動的に行うことが可能である。当然のことながら、溶融抑制組成物20は、同様に、第2のプレート22に塗布することも可能である。
【0050】
ホウ素は、元素ホウ素、ならびに少なくとも以下の化合物、すなわち、炭化ホウ素、ホウ化シリコン、ホウ化ニッケル、およびホウ化鉄のうちの任意のものから選択されるホウ素化合物のホウ素のうちのいずれかに由来することが可能である。シリコンは、元素シリコン、ならびに少なくとも以下の化合物、すなわち、炭化ケイ素、ホウ化シリコン、およびケイ素鉄のうちの任意のものから選択されるシリコン化合物のシリコンのうちのいずれかに由来することが可能である。
【0051】
溶融抑制成分は、少なくとも40重量%のホウ素およびシリコンを含むことが可能であり、または、さらに少なくとも85重量%のホウ素およびシリコンを含むことが可能である。これは、任意のフィラー金属が存在する場合に、そのフィラー金属は、それぞれ60重量%未満、または15重量%未満の量しか存在しないということを意味している。溶融抑制成分は、さらには、少なくとも95重量%のホウ素およびシリコンを含むことが可能である。
【0052】
ホウ素は、溶融抑制化合物のホウ素およびシリコン含有量の少なくとも10重量%を構成することが可能である。これは、溶融抑制成分が、少なくとも25重量%のホウ素およびシリコンを含むときに、溶融抑制成分が、少なくとも2.5重量%のホウ素を含むということを意味している。シリコンは、溶融抑制化合物のホウ素およびシリコン含有量の少なくとも55重量%を構成することが可能である。
【0053】
溶融抑制成分は、50重量%未満の金属元素、または10重量%未満の金属元素を含むことが可能である。そのような金属元素は、上記に議論されている「金属フィラー」に対応する。そのような少量の金属元素または金属フィラーは、溶融抑制組成物20を、例えば、既知のろう付け組成物から差別化する。なぜなら、既知のろう付け組成物は、少なくとも60重量%の金属元素を含むからである。ここで、「金属元素」とは、例えば、すべての遷移金属を含み、遷移金属は、周期表のdブロックの元素であり、それは、周期表の3〜12族を含む。これは、例えば、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、クロム(Cr)、およびモリブデン(Mo)が「金属元素」であるということを意味している。「金属元素」でない元素は、希ガス、ハロゲン、および以下の元素:ホウ素(B)、炭素(C)、シリコン(Si)、窒素(N)、リン(P)、ヒ素(As)、酸素(O)、硫黄(S)、セレン(Se)、およびテルル(Tu)である。例えば、ホウ素が化合物のホウ化ニッケルによりもたらされる場合には、この化合物のニッケル部分は、一実施形態では、50重量%未満であり、他の実施形態では、10重量%未満であるべきである金属元素中に含まれる金属元素であるということが留意されるべきである。
【0054】
プレート2は、0.3〜0.6mmの厚さを有することが可能であり、またはプレート2は、0.6〜1.0mmの厚さを有することが可能であり、またはプレート2は、1.0mmを超える厚さを有することが可能である。
【0055】
接合部が形成させるときに、溶融金属層の中の金属が接触点へ流れるように、溶融抑制組成物を、接触点23によって画定される面積よりも大きい面積を有する表面に塗布することが可能である。そのような流れは、一般的に、毛細管作用によって引き起こされる。
【0056】
溶融する成分表面の面積は、接触点23によって画定される面積の少なくとも10倍であることが可能である。表面の面積は、接触点によって画定される面積の少なくとも20倍または30倍などのように、さらに、より大きい(または接触点が相対的に小さい)ことが可能である。表面の面積とは、接合部を形成するために、溶融金属がそこから流れる表面の面積をいう。
【0057】
表面の面積は、接合部の断面積の少なくとも3倍であることが可能である。表面の面積は、接触点によって画定される面積の少なくとも6倍または10倍であるなど、さらに、より大きいことが可能である(または接合部の断面積が相対的に小さい)。接合部の断面積は、接合部がその最小の広がり(断面積)を有する場所において、接触点が位置している表面に平行な平面を横切る、接合部が有する断面積として定義することが可能である。
【0058】
接合部は、加熱前に、プレート2のいずれかの一部分であった、少なくとも50重量%の、または少なくとも85重量%の、または、さらに100重量%の金属(金属元素)を含むことが可能である。プレートの金属が接触点23へ流れ、接合部を形成させることによって、これは達成される。このように形成される接合部は、ろう付けによって形成される接合部とは非常に異なる。そのような接合部は、概して、ろう付け前に、接合部を形成するために使用されたろう付け物質のフィラー金属の一部分であった少なくとも90重量%の金属を含むためである。
【0059】
第1のプレート2は、以下のいずれかを含むことが可能である:
i)>50重量%Fe、<13重量%Cr、<1重量%Mo、<1重量%Ni、および<3重量%Mn
ii)>90重量%Fe
iii)>65重量%Fe、および>13重量%Cr
iv)>50重量%Fe、>15.5重量%Cr、および>6重量%Ni
v)>50重量%Fe、>15.5重量%Cr、1〜10重量%Mo、および>8重量%Ni
vi)>97重量%Ni
vii)>10重量%Cr、および>60重量%Ni
viii)>15重量%Cr、>10重量%Mo、および>50重量%Ni
ix)>70重量%Co
x)>10重量%Fe、0.1〜30重量%Mo、0.1〜30重量%Ni、および>50重量%Co
【0060】
上記は、プレート2が多数の異なる合金から作製することが可能であるということを意味している。明らかに、上記の例は、産業において一般的であるように、他の金属または元素とバランスがとられている。
【0061】
次のステップ203では、プレートパッケージ3が、1100℃を上回る温度まで加熱される。正確な温度は、以下の例において見出すことが可能である。
【0062】
加熱するステップ203の間に、第1のプレート21の第1の面における隆起部18および陥凹部19のコルゲーションの表面15の溶融物が表面層24を形成して、溶融抑制成分と合わさって溶融金属層25を形成し、溶融金属層25は、第1のプレート21と第2のプレート22との間の接触点23において、第2のプレート22の上の隆起部18および陥凹部19のコルゲーションに接触している。これが発生すると、溶融金属層の金属が、接触点23に向かって流れる。
【0063】
最終ステップ204では、溶融金属層25が凝固することができるようになり、これによって、接合部26が、プレートパッケージ3におけるプレート間の接触点23において得られる。すなわち、接触点23へ流れた金属が凝固する。
【0064】
プレート2に溶融抑制組成物20を塗布するステップ201によって、驚くべきことに、ブレンドが一方の表面に塗布されたときだけ、プレートは、ろう付けの後に形状が変化するということが認められた。ブレンドが表面と合金になるときに、形状の変化が起こり、それはまた、合金化に起因して表面に圧縮応力が存在することになるということを意味している。圧縮応力は、例えば、疲労強度に対して有益である。ろう付けされている熱交換器における最も高い応力は、通常、ろう付け接合部およびろう付け接合部の周りに位置している。例えば、スクリーン印刷法またはローリング法によって、接触点および接触点の近くにのみブレンドを塗布することによって、ブレンド、および使用されるバインダーの量を最小化することが可能であるが、圧縮応力が最も有益であるエリアにおいては、圧縮応力の効果を依然として有している。ブレンドおよびバインダーの量を減少させることによって、コストは低減されることとなり、必要とされるバインダーの蒸発プロセスも低減される。塗布されるバインダーのすべてを蒸発させることは困難であり得るので、バインダーの蒸発は、重要となる可能性がある。そのうえ、蒸発は時間を消費し、かつ、すべてのバインダーが蒸発されない場合には、バインダー残留物(例えば、炭素)の問題が存在する可能性がある。炭素等のバインダー残留物は、次いで、母材および接合部における炭素含有量を増加させ、例えば、これにより、クロムを含有する材料に関して、炭化クロムの形成によって腐食特性が低下するおそれがある。
【0065】
凝固のステップは、一般的に、通常の室温まで温度を降下させる工程を含む。しかし、温度の降下前に、接合部エリアにおける成分(ホウ素およびシリコン)の再分布の物理的なプロセスの間にも、凝固は発生する。
【0066】
上記の説明から分かるように、本発明の様々な実施形態が説明され示されてきたが、本発明は、それに限定されず、以下の請求項において定められる対象事項の範囲内において、他の方式で具現化することも可能であるということになる。また、金属部分に関して、様々な溶融抑制組成物を様々な金属と組み合わせることも可能である。例えば、溶融抑制組成物(ブレンド)A3.3は、316鋼から作製された金属部分と組み合わせることが可能である。
【0067】
(実施例)
ここで、プレートに適切な材料、溶融抑制組成物20の組成物、どのくらいの量の溶融抑制組成物が使用されるべきか、適切な加熱温度、どのくらいの時間にわたり加熱がなされるべきかなどを説明するために、多数の実験および実施例が示されている。したがって、これらの実験および実施例の結果は、第1のプレート、第2のプレート、溶融抑制組成物、接触点、接合部などの、先述の構成要素に関して使用される。すなわち、すべての先述の構成要素は、下記の実験および実施例に関連して説明されているそれぞれの関連した特徴を組み込むことが可能である。以下では、溶融抑制組成物は、「ブレンド」と称される。金属プレートは、「母材金属」と称され得る。
【0068】
図5は、どのように2つの金属部分が接合され得るかということを例証するために使用されるプレート150を示している。プレート150は、円形のプレスされたプレートであり、直径が42mmであり、0.4mmの厚さを有し、316Lタイプ(SAE鋼グレード)のステンレス鋼から作製されている。プレスされたプレート150は、2つのプレスされたビームvおよびhを有しており、それぞれ、おおよそ20mmの長さである。ビームvは、左ビームを表しており、ビームhは、右ビームを表している。「v」および「h」は、下記の実施例5および実施例9において使用されている。
【0069】
図6は、図5に示されているタイプのプレート150と平坦なプレートとの間の接合部の断面を示している。プレート150のビームと平坦なプレートとの間の接触点において、接合部が作られている。接合部を形成する金属の量を推定するために、以下の近似および計算が行われてきた。
【0070】
接合部の中央部における体積は無視できると見積もられている。したがって、幅B(実施例では、1.21mm以下)のような幅にわたる接合部に関して生成される金属体積は、ゼロに設定される。ビームvの外側(それは、(X-B)/2の距離を有している)には、金属が蓄積されている。ブレンド(溶融抑制組成物)が、平坦なプレートの上に塗布されるときに、プレートが共に保持され、加熱されたプレートの表面層が溶融して、溶融された形態の金属が、毛細管作用によって隣接エリアから接合部のエリアへ運ばれ、このようにして接合部を構成する金属の体積部を形成する。
【0071】
接合部の中央部の両側に2つの三角形が形成されていると見積もることによって、面積を計算することが可能である。三角形の角度αは、28°と測定される。測定される全幅はXであり、中央部幅はBである。したがって、2つの三角形の全面積Aは、A=2・(((X-B)/2)・((X-B)/2)・tan(α))/2である。Bが1.21mmと測定される場合、A=2・(((X-1.21)/2)・((X-1.21)/2)・tan(28))/2である。接合部を形成するために隙間へ流れた、生成されるろう付け用合金の全体積は、面積と2つのビームv、hの長さとの積となる。形成されるろう付け用合金のいくらかは、隙間へ流れず、ブレンドが塗布された表面上に残されている。
【0072】
図7は、ブレンドの異なる実施形態の塗布量(g/3500mm2、すなわち、3500平方mm当たりのグラム)の関数として、測定された幅を傾向線と共に示すダイアグラムである。テストの結果は、Table 8(表7)およびTable 9(表8)(下記の実施例5を参照)、ならびに図7に示されている。図7の傾向線は、関数Y=K・X+Lに基づいており、ここで、Yは面積であり、Kは線の傾きであり、Xはブレンド塗布量であり、Lは定数である。測定された幅、および推定面積の結果が、図7によって図示されている。ブレンド塗布量は、0.06g/3500mm2〜0.96グラム/3500mm2であり、それは、おおよそ0.017mg/mm2〜0.274mg/mm2に対応する(Table 8(表7)およびTable 9(表8)を参照)。
【0073】
ブレンドに関する傾向線Y=K・X+Lが測定されており、ここで、Yは接合部の幅であり、Kは線の傾きであり、Xはブレンド塗布量であり、Lは定数である(図表面15 3を参照)。したがって、ろう付け接合部の幅は、以下の通りである:
Y(A3.3に関する幅)=1.554+9.922・(塗布されるブレンドA3.3の量)
Y(B2に関する幅)=0.626+10.807・(塗布されるブレンドB2の量)
Y(C1に関する幅)=0.537+8.342・(塗布されるブレンドC1の量)
Y(F0に関する幅)=0.632+7.456・(塗布されるブレンドF0の量)
【0074】
図7から認められるように、ブレンドA3.3、B2、C1、D0.5、E0.3、およびF0のうちのブレンドA3.3が、ブレンド塗布量の関数として、接合部におけるろう付け用合金の最大量を与えている。サンプルF0は、3500mm2当たり0.20グラム未満では、実質的な接合部を何ら与えなかった。
【0075】
図8は、塗布されるブレンド量(グラム/3500mm2)の関数として、測定された幅に基づいて計算されたろう付け接合部の充填される面積が、傾向線とともにプロットされた別のダイアグラムを示している。ブレンドに関する傾向線Y=K・X-Lが測定されており、ここで、Yは面積であり、Kは線の傾きであり、Xはブレンド塗布量であり、Lは定数である(図8を参照)。図7に関して、ろう付け接合部の面積は、以下の通りである:
Y(A3.3に関する面積)=4.361・(塗布されるブレンドA3.3の量)-0.161
Y(B2に関する面積)=3.372・(塗布されるブレンドB2の量)-0.318
Y(C1に関する面積)=2.549・(塗布されるブレンドC1の量)-0.321
Y(F0に関する面積)=0.569・(塗布されるブレンドF0の量)-0.093
【0076】
例えば、3500mm2当たり0.18グラムの量に関して、図8のダイアグラムに基づいて、生成される体積を推定することにより(ろう付け接合部が「ない」ため、サンプルF0を除いており、データがほとんどないため、サンプルD0.5を除いている)、プレート間の接合部に生成されるろう付け用合金の体積に関するサンプルのための値が得られる(以下を参照):
体積(A3.3)=0.63・長さ40(20・2)=25.2mm3
体積(B2)=0.30・長さ40(20・2)=12.0mm3
体積(C1)=0.12・長さ40(20・2)=4.8mm3
体積(E0.3)=0.10・長さ40(20・2)=4.0mm3
【0077】
図9は、別のダイアグラムを示しており、%(パーセント)は、ブレンド塗布量(すなわち、3500mm2当たりのグラム)の関数としての引張実験の成功率であり、ここで、%(パーセント)は、接合部がプレート材よりも強いか、またはプレート材と同じであったものの%(パーセント)である。プレートが接合部よりも強いときには、接合部の分裂がもたらされ、その場合は結果をゼロとした。接合部がプレート材よりも強かったサンプルに関しては、結果の相違は、統計的に有意でなかった。
【0078】
図10は、ブレンドで接合部を形成することによって接合するさらなるサンプルを示している。写真は、2つのプレートの間に形成された接合部が存在するということを示している。サンプルは、実施例10からのものである。
【0079】
以下では、より詳細な実施例が、本発明を説明するために示されている。
【0080】
これらの実施例についてのテストは、シリコンが母材金属のテストサンプルの表面に(すなわち、金属部分に)塗布されたときに、シリコン(Si)が、「ろう付け用合金」を生成することが可能であったかどうかを調査するために行われた。また、ろう付け用合金に関する融点を降下させるために、異なる量のホウ素(B)が加えられた。ホウ素は、ろう付け用合金の濡れ挙動を変化させるためにも使用されている。テストされるブレンドの特性も調査された。実施例では、重量%は、重量によるパーセントであり、原子%は、原子のパーセントである。ここで、「ろう付け用合金」とは、シリコンおよびホウ素が母材金属(金属部分)の一部分(または層)を溶融させるときに生成される合金をいう。したがって、「ろう付け用合金」は、ブレンドと母材金属からの金属元素とを含む。
【0081】
他に何も述べられていない場合には、すべてのテストに関する母材金属のテストサンプルは、シリコンおよびホウ素のブレンドのサンプルがテストサンプルに加えられる前に、食器洗いによって、およびアセトンを用いて、洗浄された。
【0082】
(実施例1)
実施例1は、テストされることとなるシリコンおよびホウ素のブレンドのサンプルの調製に関する。118.0グラムの結晶シリコン粉末(粒子サイズ325メッシュ、Alfa Aesar-Johnsson Matthey Company製の99.5%(金属含有率)の7440-21-3)と、13.06グラムの結晶ホウ素粉末(粒子サイズ325メッシュ、Alfa Aesar-Johnsson Matthey Company製の98%(金属含有率)の7440-42-8)、および77.0グラムのWall Colmonoy製のNicorobraz S-30バインダーとを、Busch & Holm製のVarimixer BEARの中で混合し、208グラムのペーストを作り出すことによって、ブレンドサンプル番号C1が調製された(サンプルC1を参照)。すべてのテストサンプルは、ブレンドサンプルC1と同じ手順に従って調製された。サンプルは、Table 2(表1)に要約されている。調製されたブレンドは、先述の「溶融抑制組成物」に対応している。ブレンド中のホウ素およびシリコンは、溶融抑制組成物の「溶融抑制成分」に対応しており、ブレンド中のバインダーは、溶融抑制組成物の「バインダー成分」に対応している。
【0083】
【表1】
【0084】
サンプルG15、H100、I66、およびJは、別のバインダーが使用されたという相違があるが、サンプルF0、E0.3、D0.5、C1、B2、およびA3.3と同じ方法で調製された。バインダーは、Wall Colmonoy製のNicorobraz S-20バインダーであった。これらのテストサンプルは、Table 3(表2)に要約されている。
【0085】
【表2】
【0086】
ブレンドサンプルに関して、Table 4(表3)に示されるように、比率、重量パーセント、および原子パーセントを示すために計算が行われた。
【0087】
【表3】
【0088】
(バインダー)
S-20およびS-30バインダー中のバインダーの(ポリマー性および溶媒の)含有物が測定された。ゲル内の「乾燥した」材料の含有量がテストされた。S-20バインダーおよびS-30バインダーのサンプルは、秤量され、その後、98℃で18時間にわたりオーブンの中に置かれた。サンプルは、オーブンから取り出された後に、再び秤量され、その結果が、Table 5(表4)に示されている。
【0089】
【表4】
【0090】
(実施例2)
実施例2は、ろう付けテスト、すなわち、ブレンドサンプルが金属部分(テスト部分、またはテストプレート)に配置されたテストに関する。金属部分は、直径83mmおよび厚さ0.8mmを有する円形テストピースの形態を有しており、金属部分は316Lタイプのステンレス鋼から作製されていた。2つの異なる量のブレンドが使用された(0.2gおよび0.4g)。ブレンドは、金属部分に塗布された。すべてのサンプルは、従来型の真空炉の中で、1210℃で1時間にわたりろう付けされた。二重のテストが実施された。2つのブレンドの量、二重のサンプル、および6つの異なるブレンドがあるので、2・2・6=24個のサンプルがあることになる。テストされたブレンドは、F0、E0.3、D0.5、C1、B2、およびA3.3である。ブレンドは、おおよそ10〜14mmの直径、すなわち、78〜154mm2の表面を有する金属部分の円形エリアに塗布された。この1mm2当たりおおよそ1.3〜5.1mgのブレンドが塗布された。
【0091】
金属部分の金属が溶融し、すなわち、溶融物が生成するのが観察された。いくつかの態様の溶融物は、流動性のあるろう付け用合金として現れるのも観察された。濡れた部分の大きさを測定することなく、増加された量のブレンド中のホウ素の量が増加すると、より良好な濡れ性がもたらされるように見えた。しかし、いくつかのサンプルに関して、金属部分の全厚さが溶融し、その結果、金属部分の中央にホールが生成されるのも見られた。「0.2グラムのサンプル」に関して、12個のテストピースのうちの5つがホールを有し、「0.4グラムのピース」に関して、12個のうちの10個がホールを有していた。さらなるテストによって、ホールを回避するためには、金属部分が0.3〜0.6mmの厚さを有している場合、1mm2当たり平均0.02〜0.12mgのホウ素およびシリコンを塗布することが適切であり得るということが示された。金属部分が0.6〜1.0mmの厚さを有している場合は、1mm2当たり0.02〜1.0mgのホウ素およびシリコンが適切であり得る。さらに適切な量は、実験的に決定することが可能である。
【0092】
(実施例3)
実施例3は、表面へのブレンドの塗布に関する。この実施例では、テストプレート(金属部分)が、フィレット(fillet)テスト、腐食テスト、および引張テストのために、同時に準備された。実施例2から、薄肉のプレートに点状または線状にシリコンおよびホウ素のブレンドを塗布することは、プレートの中にホールを生成するおそれがあるので、リスクになり得るということが結論付けられた。したがって、フィレットテスト、腐食テスト、および引張テストのために、SiおよびBの異なるブレンドを塗布するため、新しいテストサンプル(すなわち、テストプレート)が使用された。
【0093】
新しいテストサンプルは、316Lタイプのステンレス鋼から作製されたプレートであった。プレートの大きさは、100mmの幅、180〜200mmの長さであり、厚さは0.4mmであった。すべてのプレートは、SiおよびBのブレンドのサンプルの塗布の前に、食器洗いによって、およびアセトンを用いて、洗浄された。重量が測定された。それぞれのプレートの上で、短辺から35mmがマスキングされて、一部分が測定された。
【0094】
異なるテストブレンドA3.3、B2、C1、D0.5、E0.3、F0、G15、H100、およびI66が使用された。テストプレートは、プレートのマスキングされていない表面エリア(その表面エリアは、100mm×35mmの大きさを有する)の上に、(従来のブラシを使用することによって)が塗布された。バインダーはS-30であった。12時間を超える時間にわたり室温で乾燥させた後、マスキングテープが除去され、それぞれのプレートに関して、プレート重量が測定された。下記のTable 6(表5)に示されている重量は、100mm×35mm=3500mm2=35cm2の面積上のブレンド全量の重量である。実施例は、ブレンドが金属表面に容易に塗布されるということを示している。
【0095】
【表5】
【0096】
(実施例4)
実施例4は、腐食曲げテストに関する。テストプレートから、35mmの幅を有する(35mm×35mmの塗布される表面積を有するということを意味している)スライスが切り出された。この表面積の上に、円形プレスされたプレートが設置され(図13を参照)、プレスされたプレートは、316Lタイプのステンレス鋼から作製され、直径42mmおよび厚さ0.4mmの大きさを有していた。テストサンプルは、1時間にわたり1210℃で加熱された(「ろう付けされた」)。腐食テストのためにテストされたプレートは、ブレンドサンプルA3.3、B2、C1、D0.5、E0.3、H100、I66、およびJを塗布した(Table 4(表3)を参照)。
【0097】
サンプルは、ASTM A262「Standard Practices for Detecting Susceptibility to inter-granular Attack in Austenitic Stainless Steels」の腐食テスト方法に従ってテストされた。「Practice E - Copper - Copper Sulfate - Sulfuric Acid. Test for Detecting Susceptibility to Inter-granular Attack in Austenitic Stainless Steels」が、テスト方法から選択された。この腐食テストを選択する理由は、ホウ素が、主に粒界において、鋼の中のクロムと反応し、ホウ化クロムを生成し、そのため粒界腐食のリスクを増加させ得るというリスクが存在するからであり、規格の中で「practice」と称されるものが使用され、16%硫酸を硫酸銅と共に20時間沸騰させ、その後、規格の第30章に従って、曲げテストが行われた。
【0098】
以下の議論は、腐食曲げテスト、およびテストサンプルのセクショニング(sectioning)に由来する。テストピースは、規格の第30.1章の腐食テスト方法に従って、曲げテストされた。いずれのサンプルも、曲げられた表面を目で見て調べても、粒界腐食の兆候は見られなかった。ASTM調査の後、曲げられたテストサンプルは、切断され、研磨され、磨かれ、その断面が、EDS(すなわち、エネルギー分散分光法)で光学的顕微鏡において調べられた。結果は、Table 7(表6)に要約されている。
【0099】
【表6】
【0100】
明らかに、サンプルH100、J、I66に関して、大量のホウ素を加えた場合、壊れやすい相が表面に形成され、ホウ素の量とともに増加して、ほぼ確実にホウ化クロムの相が形成された。ほぼ確実に表面の腐食のため、壊れやすい相は、H100サンプルには見られなかった。また、ホウ化物の量が、ホウ素の量とともに増加した。このことは、腐食テストにおいて腐食されたサンプルH100に関しては、大量のホウ素を加えた場合、腐食特性が低下するおそれがあるということを考慮に入れなければならないということを意味している。ホウ素によるこの「マイナスの」効果は、より厚い母材金属、および/またはより長い拡散時間(接合部を形成させるために用いられる時間)を使用することによって、低減することが可能である。その場合、母材金属中のホウ素を希釈することが可能である。また、A3.3およびB2に関して、通常の量のホウ素についても、より薄く壊れやすい表面層が形成された。サンプル中のホウ素が少量である場合(サンプルE0.3)、非常に厚く壊れやすい表面層(概してシリコンが>5重量%という高いシリコン含有量を有する)が、A3.3、B2、H100、I66、およびJについての壊れやすい表面に関するものとは異なる性質で形成されるのが見られた。シリコンによる「マイナスの」効果は、より厚い母材金属、および/またはより長い拡散時間を使用することによって、低減することが可能である。その場合、母材金属中のシリコンを希釈することが可能である。
【0101】
(実施例5)
実施例5は、いくつかのサンプルのフィレットテストに関する。実施例3に従って作製されたテストサンプルから、プレートのスライスが、35mmの幅(35mm×35mmの塗布される表面を意味する)で切り出された。この表面に、316Lタイプのステンレス鋼から作製された直径42mmおよび厚さ0.4mmのプレスされた円形プレートが配置された(図5を参照)。プレスされたプレートは、2つのプレスされたビームを有しており、それぞれは、おおよそ20mmの長さであった。サンプルは、おおよそ1時間、おおよそ1200℃でろう付けされた。
【0102】
フィレットテストからの結果は、(その上にブレンドが塗布された)平坦な表面エリアと、図5に示されているテストサンプルのプレスされたビームとの間に生成される接合部エリアに、所定量のろう付け用合金が存在していたということを示している。ろう付け用合金の量は、2つの三角形が接合部の中央部の両側に形成されていると推定することによって面積を計算することで、近似によって計算された(図6を参照)。中央部分には、追加的に形成された「ろう付け合金」は存在しないか、または非常に少量の追加的に形成された「ろう付け合金」が存在している。高さ(h)および底辺(b)を測定することによって、2つの三角形を測定することが可能であり、2つの三角形が存在しているので、2つの三角形の全面積は、合計で(h)・(b)になる。この計算に伴う問題は、高さを測定することが困難であるということである。したがって、2つの三角形の面積を計算するために、以下の等式を使用する。
A=((X-B)/2)・((X-B)/2)・tanα
【0103】
Aは2つの三角形の全面積であり、Xは形成される接合部の全幅であり、Bは形成される接合部の一部分であり、ここで、接合部の中央部に形成されるろう付け合金の体積は無視できる。したがって、それぞれの三角形の底辺は、(X-B)/2である。高さは、角度αを測定することによって計算され、角度αは、底辺に対するプレスされたビームの接線の間の角度である。
【0104】
隙間へ流れて形成されたろう付け用合金の体積を計算するために、測定される表面に接触しているそれぞれの2つのビームの長さが、20mmと測定された。ビームの全長さが、全面積と掛けられた。
【0105】
2つの三角形の面積は、Table 8(表7)およびTable 9(表8)中のろう付け後の推定面積である。体積は、ビームのうちの一方の上に形成されたろう付け合金の体積である。フィレットテストからの結果は、Table 8(表7)およびTable 9(表8)、ならびに図7に示されている。Table 8(表7)およびTable 9(表8)において、vおよびhは、v=左ビーム、およびh=右ビームを表している。
【0106】
【表7】
【0107】
【表8】
【0108】
測定された幅、および推定面積の結果は、Table 8(表7)およびTable 9(表8)に示され、図7のダイアグラムに図示されている。塗布量は、0.06グラム/3500mm2〜0.96グラム/3500mm2であり、それは、おおよそ0.017mg/m2〜0.274mg/mm2に対応する(Table 8(表7)およびTable 9(表8)を参照)。
【0109】
ブレンドに関する傾向線Y=K・X+Lが測定されており、ここで、Yは接合部の幅であり、Kは線の傾きであり、Xはブレンド塗布量であり、Lは定数である(図7を参照)。したがって、ろう付け接合部の幅は、以下の通りである:
Y(A3.3に関する幅)=1.554+9.922・(塗布されるブレンドA3.3の量)
Y(B2に関する幅)=0.626+10.807・(塗布されるブレンドB2の量)
Y(C1に関する幅)=0.537+8.342・(塗布されるブレンドC1の量)
Y(F0に関する幅)=0.632+7.456・(塗布されるブレンドF0の量)
【0110】
ダイアグラムから認められるように、A3.3、B2、C1、D0.5、E0.3、およびF0のうちのブレンドA3.3が、ブレンド塗布量の関数として、接合部におけるろう付け用合金の最大量を与えている。サンプルF0は、3500mm2当たり0.20グラム未満では、実質的な接合部を何ら与えなかった。
【0111】
ブレンドに関する傾向線Y=K・X-Lが測定されており、Yは面積であり、Kは線の傾きであり、Xはブレンド塗布量であり、Lは定数である(図8を参照)。
Y(A3.3に関する面積)=4.361・(塗布されるブレンドA3.3の量)-0.161
Y(B2に関する面積)=3.372・(塗布されるブレンドB2の量)-0.318
Y(C1に関する面積)=2.549・(塗布されるブレンドC1の量)-0.321
Y(F0に関する面積)=0.569・(塗布されるブレンドF0の量)-0.093
【0112】
例えば、3500mm2当たり0.18グラムの量に関して、図8のダイアグラムに基づいて、生成される体積を推定することにより(ろう付け接合部が「ない」ため、サンプルF0を除いており、データがほとんどないため、サンプルD0.5を除いている)、2つのビームの間の接合部に生成されるろう付け用合金の体積に関するサンプルのための値が得られる(以下を参照)。
体積(A3.3)=0.63・長さ40(20・2)=25.2mm3
体積(B2)=0.30・長さ40(20・2)=12.0mm3
体積(C1)=0.12・長さ40(20・2)=4.8mm3
体積(E0.3)=0.10・長さ40(20・2)=4.0mm3
【0113】
また、より高い割合のホウ素を有するブレンドがテストされた(例えば、サンプルG15、H100、I66、およびJ)。テストされたサンプルは、生成されたろう付け用合金の体積に関して、ブレンドA3.3およびB2と非常に類似した働きをした。しかし、ろう付けされたサンプルの冶金学的断面は、ホウ化物の量がより多いことを示し、また、サンプルH100(すなわち、純ホウ素)に関して、脆性の高いクロム相が、先にブレンドが塗布された表面に見出されることを示した。硬質の相は、ほぼ確実にホウ化クロムであり、それは、周囲の材料のクロム含有量を減少させ、耐腐食性を低下させる。これは、良好な耐腐食性が望まれるときには問題となる可能性があるが、非腐食性の環境に対しては問題ではない。熱処理を変更することによって、および/またはより多くの量のホウ素を「吸収する」ことが可能なより厚い母材金属を使用することによって、ホウ素の効果を低減することが可能である。より厚い材料(≧1mm)の場合、母材金属体積に対する表面体積の割合は、薄い材料(<1mm、または<0.5mm)に関するものよりも遥かに小さいため、表面におけるこの効果も、より軽度なものとなる。より良好な耐摩耗性が望まれる場合には、ホウ化クロムは、利点となり得る。冶金学的調査は、サンプルF0(すなわち、純シリコン)に関して、相を含有する厚い脆性のシリコンが、調査されたサンプルのいくつかのエリアに関して、プレート厚さの>50%の厚さを有する状態で見出されることも示していた。同様の相は、接合部においても見出された。クラックは、プレート厚さの>30%の長さを有する状態で、この相に見出された。そのようなクラックは、接合された製品の機械的な性能を低下させることとなり、腐食および/または疲労クラックの開始点となることが可能である。その相の測定された平均硬度は、400HV(ビッカース)を超えていた。この脆性の相は、おそらくは、ホウ化物の相によるものと比較して、より厚い母材金属、または熱処理の変更を使用して減少させることがより困難であり得る。それでも、より厚い母材金属の場合、この効果はより軽度なものとなる可能性がある。
【0114】
(実施例6)
実施例6は、接合部の引張テストに関する。実施例3において使用されたものに対応するテストプレートは、スライスとなるように薄く切られた。薄く切られたサンプルの大きさは、おおよそ10mmの幅、180〜200mmの長さであり、0.4mmの厚さを有している。それぞれのスライスの塗布面積は、10mm×35mm=350mm2であった。塗布されるエリアに、316Lタイプのステンレス鋼製のより厚い部分(4mm)が、全体35mmの塗布表面のうちの30mmをカバーするように配置された。より厚い部分は、厚いプレートによってカバーされていない5mmの塗布表面を残して、スライスの端部に配置された。これを行うことによって、接合部がプレートよりも強い場合、引張テスト時に、塗布されるブレンドによるプレート材の強度の低下が検出されることとなる。より厚いプレートは、10mmのスライスより幅広でもあった。すべてのテストサンプルは、おおよそ1200℃で、おおよそ1時間にわたり、ろう付けされた(加熱された)。
【0115】
加熱後、厚い部分が、引張テストマシンに水平に載置された。スライスは、垂直方向へ90°までしっかりと曲げられた。サンプルは、水平方向に移動できるように載置された。次いで、サンプルは負荷をかけられ、接合部が分裂した。
【0116】
プレートが接合部よりも強く、その結果接合部が分裂したときは、結果はゼロとした。接合部がプレート材よりも強いサンプルに関しては、結果の相違は、統計的に有意ではなかった。結果は、塗布量の関数としての、テストされたサンプルのうち、接合部がプレートよりも強いか、またはプレートと同じであったもののパーセント(%)として示されており、これは、テストされたときに接合部が分裂しなかったということを意味している。結果が、Table 10(表9)、および図9のダイアグラムに要約されている。
【0117】
【表9】
【0118】
(実施例7)
ブレンド塗布量と、プレートを貫通するホールが生成するリスクとの間の関係を確立するために、新しいテストが実施された。すべてのテストに関して、ブレンドB2(Table 6(表5)を参照)が使用された。また、ブレンドB2は、バインダーS-30も含む。テストされたテストピースは、円形であり、0.8mmの厚さを有し、83mmの直径を有していた。テストプレートにおける母材金属は、316タイプのステンレス鋼であった。すべてのサンプルに関して、ブレンドが、テストサンプルの中央部に塗布された。塗布される面積は、28mm2であり、すなわち、6mmの直径を有する円形スポットであった。すべてのテストサンプルは、塗布の前後で秤量され、その結果は、Table 11(表10)に要約されている。その後、テストサンプルは、室温で12時間にわたり炉の中に置かれた。サンプルは、再び秤量された。
【0119】
テストサンプルは、すべて、炉の中に置かれ、かつ1210℃で、おおよそ1時間にわたり加熱された(「ろう付けされた」とも称される)。ろう付けの間、それぞれのサンプルの外側縁部だけが、固定材に接触しており、プレート中央部の底面は、ろう付けの間いかなる材料にも接触しないように維持された。プレート中央部の底面を接触がないように維持する理由は、中央部材料が固定材によって下から支持されている場合には、崩壊または溶け落ち(burn through)を防止することが可能であるからである。
【0120】
0.8mmのサンプルに関して、塗布量および溶け落ちの結果が、Table 11(表10)に要約されている。
【0121】
【表10】
【0122】
テストは、0.8mmの厚さを有するプレートに関して、サンプル10と11の間に溶け落ち(ホール)が存在するということを示している。サンプル10は、2.264mg/mm2のブレンド塗布量を有しており、サンプル11は、2.491mg/mm2を有している。1mm未満の厚さを有するプレートを接合するために、約2.830mg/mm2〜約3.114mg/mm2の範囲内の量には、プレートの溶け落ちをもたらすリスクが存在しており、この範囲の中央の量は、2.972mg/mm2である。したがって、1mm未満の厚さを有するプレートに関して、プレートの溶け落ちを回避するためには、2.9mg/mm2未満の量が適切であることとなる。
【0123】
(実施例8)
実施例8では、2つのプレスされた伝熱プレートの間のろう付け接合部が、3つの異なる方式で作製されている。伝熱プレートの厚さは、0.4mmである。
【0124】
第1および第2のテストサンプルでは、316タイプのステンレス鋼に近い組成を有する鉄ベースのろう付け用フィラーが使用された。ろう付け用フィラーに関しては、国際公開第2002/38327号を参照されたい。ろう付け用フィラーは、約10重量%までと量が増加したシリコン、約0.5重量%までの量のホウ素、および約10.5重量%と量が減じられたFeを有していた。第1のテストサンプルでは、ろう付け用フィラーが線状に塗布され、第2のテストサンプルでは、ろう付け用フィラーが表面に均一に塗布された。両方の場合において、プレス後にフィラーが塗布された。
【0125】
テストサンプル1のろう付けは、線状に塗布されたろう付け用フィラーが、ろう付け接合部に引き寄せられることを示した。ろう付け用フィラーのいくらかはろう付け接合部へ流れず、したがって、塗布された線において局所的に厚さを増加させた。テストサンプル2に関して、ろう付け用フィラーがろう付け接合部へ流れたが、ろう付け用フィラーのいくらかは表面に残り、厚さを増加させた。テストサンプル1および2では、ろう付け用フィラーの量は、おおよそ15重量%のプレート材の量に対応している。
【0126】
テストサンプル3では、A3.3ブレンドが使用された(Table 6(表5)を参照)。プレートに均一にプレスする前に、ブレンドが塗布された。ブレンドは、テストサンプル1および2と同様の大きさを有するろう付け接合部を生成するであろう量が塗布された。
【0127】
テストサンプル3には、プレート材のおおよそ1.5重量%の重量に対応する厚さを有する層が塗布された。ブレンドA3.3を塗布することによって、ろう付け用合金が母材金属(金属部分)から形成され、形成されたろう付け用合金が、ろう付け接合部へ流れる。したがって、表面に加えられたブレンドよりも多くの材料が、ろう付け接合部に引き寄せられたので、プレートの厚さが減少した。
【0128】
(実施例9)
実施例9は、異なるホウ素供給源およびシリコン供給源を有するテストに関する。実施例9の目的は、代替的なホウ素供給源およびシリコン供給源を調べることであった。ブレンドB2は、テストのためのリファレンスとして選択された(Table 6(表5)を参照)。代替的な供給源が、接合部を生成するそれらの能力に関してテストされた。それぞれの実験で、代替的なホウ素供給源または代替的なシリコン供給源のいずれかがテストされた。代替的な供給源を使用するときに、他の元素の影響はゼロであると仮定され、それは、「測定された」ものが、代替的な成分の中で、ホウ素またはシリコンの重量だけであったということを意味している(Table 12(表11)を参照)。リファレンスブレンドB2に関して、シリコンとホウ素との間の重量比率は、10グラム対2グラムであり、合計で12グラムになる。それぞれのブレンドは、S-30バインダーを含み、ブレンドは、実施例1による鋼プレートに塗布された。すべてのサンプルは、真空炉の中で、1210℃で、1時間にわたりろう付けされた。
【0129】
【表11】
【0130】
ブレンドB2に関する傾向線Y=K・X+Lが、測定されており、Yは接合部の幅であり、KはB2に関する線の傾きであり、Xはブレンド塗布量であり、Lは塗布されるブレンドB2の量がないときの定数である(図7を参照)。したがって、ろう付け接合部の幅は、Y=0.626+10.807・(ブレンド塗布量)である。
【0131】
Table 13(表12)では、実施例5のように、vおよびhは、v=左ビーム、およびh=右ビームを表している。
【0132】
【表12】
【0133】
Table 13(表12)の結果は、ホウ素に対する代替的な供給源として、B4C、NiB、およびFeBを使用することが可能であるということを示している。NiBが使用されたときには、生成される量は、純ホウ素に関するものより少なかった。しかし、Ni合金化効果が望まれる場合には、NiBを使用することが可能であろう。
【0134】
(実施例10)
実施例10では、多数の異なる母材金属、すなわち、図1の金属部分11および12に使用され得る金属がテストされた。軟鋼およびNi-Cu合金を除くすべてのテストが、「テストY」に従ってテストされた(下記参照)。
【0135】
テストYに関して、おおよそ0.8mmの厚さを有する2つのプレスされた円形テストピースが、互いに接するように配置された。それぞれのサンプルは、プレスされた円形ビームを有していた。ビームの上面は、ピース間に円形の隙間ができるように、互いに向かって配置された。それぞれのサンプルに対して、B2ブレンド(この実施例では、バインダーS-20を含む)が、ペイントブラシを用いて塗布された。ペイントブラシを用いての塗布時は、塗布が均質でなかったので、加えられた量のブレンドの重量は測定されなかった。接合した後のサンプルのうちの1つの写真が、図10に示されている。
【0136】
軟鋼サンプルおよびNi-Cuサンプルが、同じ方式で塗布されたが、軟鋼に関して、実施例5で行われたテストに従って「フィレットテスト」が行われ、Ni-Cuに関して、2つの平坦なテストピースを用いたテストが行われた。Ni-Cuを除くサンプルが、炉の中で、おおよそ1200℃で、すなわち、1210℃で、1hにわたり、真空雰囲気炉の中で「ろう付けされた」。Ni-Cuサンプルは、おおよそ1130℃で、おおよそ1hにわたり、同じ真空炉の中でろう付けされた。「ろう付け」後、すべてのテストに関して、接合部がピース間に形成された。また、生成された「ろう付け用合金」(母材金属から作製されている)の接合部への流れが、すべてのテストされたサンプルに関して観察された。結果が、Table 14(表13)に示されている。
【0137】
【表13】
【0138】
Table 14(表13)の結果は、それぞれのサンプル1〜20に関して、ろう付け用合金が、ブレンドと母材金属との間に形成されているということを示している。結果は、それぞれのテストされたサンプルに関して、接合部が生成されたということも示している。
【0139】
実施例は、十分な量のろう付け用合金を生成するためにホウ素が必要であったということを示しており、ろう付け用合金は、接合部を充填し、また、接合部における強度を生成することも可能である。実施例は、ホウ素を有さないサンプルに関して厚く壊れやすい相が見出されたので、ホウ素が微細構造のために必要であるということも示した。
【0140】
上記から、母材金属(すなわち、例えば図1に関連して説明されている金属部分)は、鉄(Fe)、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、モリブデン(Mo)、マンガン(Mn)、銅(Cu)などのような元素を含む合金から作製することが可能であるということになる。金属部分に使用されることとなる合金のいくつかの実施例が、Table 15(表14)のリスト中に見出される。
【0141】
【表14】
【0142】
ブレンド(すなわち、溶融抑制組成物)は、上記に説明されているように、ペインティングによって塗布することが可能である。また、ブレンドは、物理的蒸着法(PVD)、または化学的蒸着法(CVD)などのような手段によって塗布することも可能であり、その場合には、ブレンドは、バインダー成分を含む必要はない。ペインティングによって、またはPVDもしくはCVDによって、1つの層にシリコンを塗布し、および1つの層にホウ素を塗布することが可能である。それにもかかわらず、層に塗布される場合であっても、ホウ素とシリコンの両方が、溶融抑制組成物に含まれていると見なされる。なぜなら、それらは、さも塗布する前に混合されるように、加熱の間に相互作用することとなるからである。
【符号の説明】
【0143】
1 プレート式熱交換器
1A 第1の端部
1B 第2の端部
2 伝熱プレート
3 プレートパッケージ
4 第1のプレート内部空間
5 第2のプレート内部空間
6 入口部チャネル
9 出口部チャネル
10 熱伝達エリア
11 縁部エリア
12 ポートホールエリア
13 ポートホールエリア
14 ポートホール
15 コルゲーションの表面
16 第1の凸面表面
17 第2の凹面表面
18 隆起部
19 陥凹部
20 溶融抑制組成物
21 第1のプレート
22 第2のプレート
23 接触点
24 表面層
25 溶融金属層
26 接合部
150 プレート
201 ステップ
202 ステップ
203 ステップ
204 ステップ
A 全面積
B 中央部幅
X 全幅
v 左ビーム
h 右ビーム
p 平面
α 角度
図1
図2
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10