(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態(以下「実施形態」という)について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図において、共通する部分には同一の符号を付し重複した説明を省略する。
【0017】
≪第1実施形態≫
<スクロール圧縮機>
まず、第1実施形態に係るスクロール圧縮機Sについて
図1を用いて説明する。
図1は、第1実施形態に係るスクロール圧縮機Sの縦断面図である。
【0018】
図1に示すように、スクロール圧縮機Sは、密閉容器1と、旋回スクロール3、固定スクロール4およびフレーム5からなる圧縮機構部2と、クランク軸6と、オルダムリング7と、電動機部8と、下軸受9と、リリース弁装置10と、を備えている。
【0019】
密閉容器1は、円筒状のケース1aの上側に蓋チャンバ1bが溶接され、円筒状のケース1aの下側に底チャンバ1cが溶接されて構成されている。また、蓋チャンバ1bには吸込管1dが設けられており、ケース1aには吐出管1eが設けられている。ケース1a、蓋チャンバ1bおよび底チャンバ1cで構成される密閉容器1内の上部には、圧縮機構部2が配置され、密閉容器1内の下部には、電動機部8が配置されている。そして、密閉容器1の底部には、機油11(潤滑油)が貯留されている。
【0020】
圧縮機構部2は、旋回スクロール3と、固定スクロール4と、固定スクロール4にボルト等の締結具5bで締結され旋回スクロール3を支持するフレーム5と、を備えて構成されている。
【0021】
旋回スクロール3は、台板から上面側に渦巻状の旋回スクロールラップが立設し、下面側にはクランク軸6の偏心部6bが嵌合する旋回軸受3aが設けられている。固定スクロール4は、台板から下面側に旋回スクロールラップと互いにかみ合う固定スクロールラップが立設されている。旋回スクロール3は、固定スクロール4と相対向して旋回自在に配置されており、両者によって、吸込室12と圧縮室13が形成されている。
【0022】
フレーム5は、その外周側が溶接によって密閉容器1の内壁面に固定されており、クランク軸6の主軸6aを回転自在に支持する主軸受5aを備えている。また、旋回スクロール3とフレーム5との間には、背圧室(中間圧室)15が形成されている。
【0023】
オルダムリング7は、旋回スクロール3の下面側とフレーム5の間に配置されており、旋回スクロール3の下面側に形成された溝とフレーム5に形成された溝に装着されている。オルダムリング7は、旋回スクロール3を自転することなく、クランク軸6の偏心部6bの偏心回転を受けて公転運動をさせる働きをする。
【0024】
電動機部8は、ステータ8aおよびロータ8bを備えている。ステータ8aは、密閉容器1に圧入、溶接等により固定されている。ロータ8bは、ステータ8a内に回転可能に配置されている。また、ロータ8bにはクランク軸6が固定されている。
【0025】
クランク軸6は、前記のように主軸6aと偏心部6bとを備えて構成されている。クランク軸6の主軸6aは、上側がフレーム5に設けた主軸受5aに支持され、下側が下軸受9で支持されている。クランク軸6の偏心部6bは、主軸6aに対して偏心して一体に形成されており、旋回スクロール3の背面に設けた旋回軸受3aに嵌合されている。電動機部8を駆動して主軸6aを回転させると、偏心部6bは主軸6aに対して偏心回転運動し、旋回スクロール3を旋回運動させるようになっている。また、クランク軸6は、主軸受5a、下軸受9および旋回軸受3aへ機油11を導く給油通路6cが設けられ、下側の軸端に、機油11を吸い上げて給油通路6cに導く給油管6dが装着されている。
【0026】
電動機部8を駆動して旋回スクロール3を旋回運動させると、ガス冷媒は、吸込管1dから吸込室12を通り、旋回スクロール3および固定スクロール4により形成される圧縮室13に導かれる。そして、圧縮室13のガス冷媒は、旋回スクロール3と固定スクロール4との間で中心方向に移動するに従って容積を縮小して圧縮される。圧縮されたガス冷媒は、固定スクロール4の吐出ポート4aから密閉容器1内の空間である吐出圧室14に吐出され、吐出管1eを通って、外部へと流出していく。
【0027】
固定スクロール4には、起動時など液冷媒が大量に吸い込まれた時や吐出圧力と吸込圧力の圧力比「吐出圧力/吸込圧力」が低い条件の時などに、圧縮室13が吐出ポート4aと連通する前に、ガス冷媒を吐出圧室14に吐き出すリリース弁装置10が設けられている。
【0028】
リリース弁装置10が動作する圧力比を定量的に表すと次にようになる。
リリース弁装置10が動作するか否かは、スクロールラップの設計容積比と圧力比の関係で決まる。ここで、設計容積比とは、圧縮室13の最大容積と最小容積(圧縮室13が吐出ポート4aと連通する時の容積)の比であり、「最大容積/最小容積」である。つまり、リリース弁装置10が動作するか否かは、スクロールラップの形状と運転条件で決まり、圧力比と設計容積比は次の関係が成り立つ。
【0029】
吐出圧力/吸込圧力<(最大容積/最小容積)^断熱指数 ・・・(1)
(1)式の条件が成立するときは、リリース弁装置10が動作する。
吐出圧力/吸込圧力>(最大容積/最小容積)^断熱指数 ・・・(2)
(2)式の条件が成立するときは、リリース弁装置10が動作しない。
【0030】
<従来例のリリース弁装置>
ここで、第1実施形態に係るスクロール圧縮機S(
図1参照)が備えるリリース弁装置10(後述する
図2参照)を説明する前に、従来例に係るスクロール圧縮機が備えるリリース弁装置10Eについて
図9および
図10を用いて説明する。
図9は、従来例に係るリリース弁装置10Eの開弁状態の断面図である。
図10は、従来例に係るリリース弁装置10Eの閉弁状態の断面図である。なお、従来例に係るスクロール圧縮機は、第1実施形態に係るスクロール圧縮機S(
図1参照)と比較して、リリース弁装置10Eの構成が異なっている。その他の構成は、同様であり説明を省略する。
【0031】
従来例に係るリリース弁装置10Eは、固定スクロール4と一体に形成された弁シート面4dと、ばね10aと、弁板10bと、ストッパ10f5と、リテーナ10hと、を備えている。
【0032】
固定スクロール4の吐出圧室14(
図1参照)の側(反ラップ側)には、有底の収納孔4bが形成され、収納孔4bの底部から圧縮室13の側(ラップ側)へと連通するリリース孔4cが形成されている。これにより、圧縮室13から、リリース孔4cおよび収納孔4bを介して、吐出圧室14(
図1参照)へと連通する流路が形成されている。なお、リリース孔4cは、収納孔4bよりも小径に形成されている。また、リリース孔4cの収納孔4bの側(吐出圧室14(
図1参照)の側)の周縁部には、弁板10bと当接する弁シート面(弁座、突起部)4dが形成されている。即ち、従来例に係るリリース弁装置10Eの弁シート面4dは、固定スクロール4と一体に形成されている。
【0033】
ばね10a、弁板10bおよびストッパ10f5は、固定スクロール4に形成された収納孔4bの内部に配置されている。ばね10aは、一端がストッパ10f5に支持され、他端が弁板10bに当接し、弁板10bを弁シート面4d(リリース孔4c)の方向に付勢する。ストッパ10f5は、ばね10aの一端を支持するとともに、弁板10bの最大移動距離を規制する。リテーナ10hは、固定スクロール4の吐出圧室14(
図1参照)の側に取り付けられ、ストッパ10f5を固定する。
【0034】
圧縮室13の圧力が吐出圧力(吐出圧室14(
図1参照)の圧力)より低い場合、この圧力差とばね10aの付勢力(弾性力)よって、弁板10bが弁シート面4dに押し付けられ、リリース孔4cが塞がれた状態になる。即ち、リリース弁装置10Eは閉弁状態となる(
図10参照)。
【0035】
一方、前記(1)式の条件で、圧縮室13の圧力が吐出圧力(吐出圧室14(
図1参照)の圧力)より高くなると、流体力によって弁板10bが弁シート面4dから押し上げられて、リリース孔4cが開口する。即ち、リリース弁装置10Eは開弁状態となる(
図9参照)。
【0036】
ここで、リリース弁装置10Eが動作する場合(即ち、前記(1)式の条件が成立する場合)、クランク軸6の1回転につき1回、リリース弁装置10Eが開弁・閉弁する。換言すれば、リリース弁装置10Eが動作する場合、弁板10bと弁シート面4dは、クランク軸6の1回転につき1回衝突する。例えば、クランク軸6が1分間あたり3,000回転したとすると、弁シート面4dは1時間で18万回の衝突を繰り返す過酷な接触面であり、弁シート面4dの信頼性確保は重要な課題である。
【0037】
<第1実施形態のリリース弁装置>
次に、第1実施形態に係るスクロール圧縮機Sが備えるリリース弁装置10について、
図2を用いて説明する。
図2は、第1実施形態に係るリリース弁装置10の断面図である。
【0038】
第1実施形態に係るリリース弁装置10は、ばね10aと、弁板10bと、弁シート面10dおよびリリース孔10eを有する弁シート部材10cと、押え部10gを有するストッパ10fと、リテーナ10hと、を備えている。
【0039】
固定スクロール4の吐出圧室14(
図1参照)の側には、有底の収納孔4bが形成され、収納孔4bの底部から圧縮室13の側へと連通するリリース孔4cが形成されている。なお、リリース孔4cは、収納孔4bよりも小径に形成されている。
【0040】
そして、従来例に係るリリース弁装置10E(
図9、
図10参照)の弁シート面4dは、固定スクロール4と一体に形成されているのに対し、第1実施形態に係るリリース弁装置10の弁シート面10d(
図2参照)は、固定スクロール4とは別体の弁シート部材10cに形成されている。即ち、弁シート部材10cにはリリース孔10eが形成され、リリース孔10eの収納孔4bの側(吐出圧室14(
図1参照)の側)の周縁部には、弁板10bと当接する弁シート面(弁座、突起部)10dが設けられている。そして、弁シート部材10cを収納孔4bの底部に収納(配置)することにより、弁シート部材10cのリリース孔10eと、固定スクロール4のリリース孔4cが連通するようになっている。これにより、圧縮室13から、リリース孔4c、リリース孔10eおよび収納孔4bを介して、吐出圧室14(
図1参照)へと連通する流路が形成されている。
【0041】
図2に示すように、ばね10a、弁板10b、弁シート部材10cおよびストッパ10fは、固定スクロール4に形成された収納孔4bの内部に配置されている。ばね10aは、一端がストッパ10fに支持され、他端が弁板10bに当接し、弁板10bを弁シート面10d(リリース孔10e)の方向に付勢する。ストッパ10fは、ばね10aを支持するとともに、弁板10bの最大移動距離を規制する。
【0042】
リテーナ10hは、固定スクロール4の吐出圧室14(
図1参照)の側に取り付けられ、ストッパ10fを固定する。そして、ストッパ10fには環状(円筒状)の押え部10gが設けられており、弁シート部材10cは、この押え部10gと固定スクロール4(収納孔4bの底部)に挟みこまれて固定されている。
【0043】
第1実施形態に係るリリース弁装置10の基本的な開閉の動作は、前記した従来例に係るリリース弁装置10E(
図9、
図10参照)と同様であり、説明を省略する。
【0044】
<作用効果>
第1実施形態に係るリリース弁装置10を備えるスクロール圧縮機S(
図1、
図2参照)の作用効果について、従来例に係るリリース弁装置10E(
図9、
図10参照)を備えるスクロール圧縮機と対比しつつ説明する。
【0045】
前記したように、スクロール圧縮機Sの冷媒として次期冷媒(例えば、R32、R290、R1234ze)を用いた場合、スクロール圧縮機Sの小型化・高速化を行うために、旋回スクロール3をアルミニウム合金やマグネシウム合金などの軽量材料で形成する。また、線膨張係数の違いにより圧縮機内部の隙間が拡大し効率が低下することを防止するため、固定スクロール4は、旋回スクロール3と同じ材料、即ち、アルミニウム合金やマグネシウム合金などの軽量材料で形成する。一方、リリース弁装置10の弁板10bは、圧延鋼板等の材料で形成される。
【0046】
ここで、アルミニウム合金やマグネシウム合金は、ビッカース硬度(ビッカース硬さ)が150程度で、従来例に係るリリース弁装置10E(
図9、
図10参照)のように、弁シート面4dが固定スクロール4と一体形成されている場合、耐衝撃性が弱い。
【0047】
これに対し、第1実施形態に係るリリース弁装置10(
図2参照)は、弁シート面10dは、固定スクロール4とは別体の弁シート部材10cに形成されている。このため、弁シート部材10c(弁シート面10d)の材料を、固定スクロール4の材料(例えば、アルミニウム合金やマグネシウム合金)よりも衝突に強い材料にすることができる。
【0048】
即ち、固定スクロール4とは別体の弁シート部材10cに弁シート面10dを形成し、この弁シート部材10cの材料にビッカース硬度(ビッカース硬さ)が高い材料を用いることにより、弁シート面10dの信頼性を向上させることができる。特に、旋回スクロール3や固定スクロール4に、アルミニウム合金やマグネシウム合金などの軽量でビッカース硬度(ビッカース硬さ)が低い材料を用いた場合でも、リリース弁装置10の信頼性を確保することができる。
【0049】
ところで、従来例に係るリリース弁装置10E(
図9、
図10参照)を備えるスクロール圧縮機は、固定スクロール4の材料として、鋳鉄が広く用いられている。この実績を考えると、第1実施形態に係るリリース弁装置10(
図2参照)の弁シート部材10cの材料は、ビッカース硬度(ビッカース硬さ)が250以上の材料を用いることが望ましい。
【0050】
弁シート面10dを有する弁シート部材10cに用いる材料としては、例えば、鋳物材料を用いることができる。また、鋳物材料に窒化処理を行った材料を用いてもよい。また、鉄系材料や鉄鋼材料を用いてもよく、鉄系材料や鉄鋼材料に窒化処理を行った材料を用いてもよく、鉄系材料や鉄鋼材料に浸炭焼入処理を行った材料を用いてもよい。また、焼結材料にスチーム処理を行った材料を用いてもよく、焼結材料にスチーム処理と窒化処理を行った材料を用いてもよい。
【0051】
このように、第1実施形態に係るリリース弁装置10(
図2参照)を備えるスクロール圧縮機Sは、旋回スクロール3および固定スクロール4の材料として、アルミニウム合金やマグネシウム合金などの軽量材料を用いても、リリース弁装置10の信頼性を確保することができる。また、旋回スクロール3を軽量材料とすることにより、高速回転可能なスクロール圧縮機Sとすることができ、次期冷媒にも対応可能なスクロール圧縮機Sとすることができる。
【0052】
≪第2実施形態≫
次に、第2実施形態に係るスクロール圧縮機Sについて説明する。第2実施形態に係るスクロール圧縮機Sは、第1実施形態に係るスクロール圧縮機S(
図1参照)と比較して、リリース弁装置10Aの構成が異なっている。その他の構成は、同様であり説明を省略する。
【0053】
<第2実施形態のリリース弁装置>
第2実施形態に係るスクロール圧縮機Sが備えるリリース弁装置10Aについて、
図3を用いて説明する。
図3は、第2実施形態に係るリリース弁装置10Aの断面図である。
【0054】
第2実施形態に係るリリース弁装置10Aは、ばね(第1ばね)10aと、弁板10bと、弁シート面10dおよびリリース孔10eを有する弁シート部材10cと、押え部10g1を有するストッパ10f1と、押えばね(第2ばね)10i1と、リテーナ10hと、を備えている。
【0055】
リテーナ10hは、固定スクロール4の吐出圧室14(
図1参照)の側に取り付けられ、押えばね10i1を介して、ストッパ10f1を固定する。そして、ストッパ10f1には環状(円筒状)の押え部10g1が設けられており、弁シート部材10cは、この押え部10g1と固定スクロール4(収納孔4bの底部)に挟みこまれて固定されている。
【0056】
第2実施形態に係るリリース弁装置10Aのその他の構成および基本的な開閉の動作は、第1実施形態に係るリリース弁装置10(
図2参照)と同様であり、説明を省略する。
【0057】
<作用効果>
第2実施形態に係るリリース弁装置10A(
図3参照)を備えるスクロール圧縮機Sの作用効果について説明する。
【0058】
第2実施形態に係るリリース弁装置10A(
図3参照)は、ストッパ10f1の上に押えばね10i1が挿入されている。この押えばね10i1とストッパ10f1を、リテーナ10hで押えこむことにより、押えばね10i1が撓み、収納孔4bの加工精度が悪くても長さ寸法を吸収することができる。即ち、収納孔4bの長さが短い場合であっても、押えばね10i1が縮むことにより、リテーナ10hを取り付けた際、固定スクロール4の歯底部(固定スクロールラップの台板)が強く押し付けられることを防止し、歯底部の変形を防止し、ひいては、旋回スクロール3との摺動損失が増加することを防止する。また、収納孔4bの長さが長い場合であっても、押えばね10i1が伸びることにより、リリテーナ10hを取り付けた際、弁シート部材10cを固定して、弁シート部材10cが動いてしまうことを防止し、弁シート部材10cが動いて収納孔4bと擦れることにより発生するフレッチング摩耗など防止することができる。
【0059】
また、第2実施形態に係る固定スクロール4の収納孔4bの深さの加工精度は、第1実施形態のような高い加工精度が要求されないため、固定スクロール4の生産性、ひいては、スクロール圧縮機Sの生産性が向上する。
【0060】
≪第3実施形態≫
次に、第3実施形態に係るスクロール圧縮機Sについて説明する。第3実施形態に係るスクロール圧縮機Sは、第1実施形態に係るスクロール圧縮機S(
図1参照)と比較して、リリース弁装置10Bの構成が異なっている。その他の構成は、同様であり説明を省略する。
【0061】
<第3実施形態のリリース弁装置>
第3実施形態に係るスクロール圧縮機Sが備えるリリース弁装置10Bについて、
図4を用いて説明する。
図4は、第3実施形態に係るリリース弁装置10Bの断面図である。
【0062】
第3実施形態に係るリリース弁装置10Bは、ばね(第1ばね)10aと、弁板10bと、弁シート面10dおよびリリース孔10eを有する弁シート部材10cと、押え部10g2を有するストッパ10f2と、押えばね(第2ばね)10i2と、リテーナ10hと、を備えている。
【0063】
リテーナ10hは、固定スクロール4の吐出圧室14(
図1参照)の側に取り付けられ、ストッパ10f2を固定する。そして、ストッパ10f2には環状(円筒状)の押え部10g2が設けられており、押え部10g2と弁シート部材10cとの間には押えばね10i2が配置されている。これにより、弁シート部材10cは、押えばね10i2と固定スクロール4(収納孔4bの底部)に挟みこまれて固定されている。
【0064】
第3実施形態に係るリリース弁装置10Bのその他の構成および基本的な開閉の動作は、第1実施形態に係るリリース弁装置10(
図2参照)と同様であり、説明を省略する。
【0065】
<作用効果>
第3実施形態に係るリリース弁装置10B(
図4参照)を備えるスクロール圧縮機Sの作用効果について説明する。
【0066】
第3実施形態に係るリリース弁装置10B(
図3参照)は、ストッパ10f2(押え部10g2)の下に押えばね10i2が挿入されている。この押えばね10i2とストッパ10f2を、リテーナ10hで押えこむことにより、押えばね10i2が撓み、第2実施形態に係るリリース弁装置10A(
図2参照)と同様に、収納孔4bの加工精度が悪くても長さ寸法を吸収することができる。これにより、固定スクロール4の歯底部が変形することを防止し、また、弁シート部材10cが動くことを防止することができる。また、第3実施形態に係る固定スクロール4の収納孔4bの深さの加工精度は、第1実施形態のような高い加工精度が要求されないため、固定スクロール4の生産性、ひいては、スクロール圧縮機Sの生産性が向上する。
【0067】
≪第4実施形態≫
次に、第4実施形態に係るスクロール圧縮機Sについて説明する。第4実施形態に係るスクロール圧縮機Sは、第1実施形態に係るスクロール圧縮機S(
図1参照)と比較して、リリース弁装置10Cの構成が異なっている。その他の構成は、同様であり説明を省略する。
【0068】
<第4実施形態のリリース弁装置>
第4実施形態に係るスクロール圧縮機Sが備えるリリース弁装置10Cについて、
図5および
図6を用いて説明する。
図5は、第4実施形態に係るリリース弁装置10Cが備えるストッパ10f3の斜視図である。
図6は、第4実施形態に係るリリース弁装置10Cの断面図である。
【0069】
図6に示すように、第4実施形態に係るリリース弁装置10Cは、ばね10aと、弁板10bと、弁シート面10dおよびリリース孔10eを有する弁シート部材10cと、切欠き部10jが設けられた押え部10g3を有するストッパ10f3と、リテーナ10hと、を備えている。
【0070】
即ち、第1実施形態に係るリリース弁装置10(
図2参照)のストッパ10fには環状(円筒状)の押え部10gが設けられているのに対し、
図5に示すように、第4実施形態に係るリリース弁装置10Cのストッパ10f3には環状(円筒状)の押え部10g3に切欠き部10jが設けられている。
【0071】
第4実施形態に係るリリース弁装置10Cのその他の構成および基本的な開閉の動作は、第1実施形態に係るリリース弁装置10(
図2参照)と同様であり、説明を省略する。
【0072】
<作用効果>
第4実施形態に係るリリース弁装置10C(
図5、
図6参照)を備えるスクロール圧縮機Sの作用効果について、第1実施形態に係るリリース弁装置10(
図2参照)を備えるスクロール圧縮機Sと対比しつつ説明する。
【0073】
第1実施形態に係るリリース弁装置10(
図2参照)では、リリース弁装置10Eが動作する場合(即ち、前記(1)式の条件が成立する場合)、圧縮室13から吐出圧室14(
図1参照)へと流れる冷媒ガスの流路が最も絞られるのは、弁板10bとストッパ10f(押え部10g)の内周面との隙間部である。この隙間部の流路面積は、弁板10bの直径を小さくする等により確保することもできるが、弁板10bが弁シート面10dとの接触面から外れない、または、ストッパ10f内で弁板10bが傾き、ばね10aから外れないという制約条件を考慮すると、この隙間部をあまり大きくすることはできない。
【0074】
これに対し、第4実施形態に係るリリース弁装置10C(
図5、
図6参照)は、ストッパ10f3の環状(円筒状)の押え部10g3に、切欠き部10jが設けられている。この切欠き部10jを設けることにより、
図6に示すように、弁板10bとストッパ10f3との隙間部の流路面積を大きくすることができ、リリース弁装置10Cの圧力損失を低減することができる。
【0075】
なお、第4実施形態に係るリリース弁装置10C(
図5、
図6参照)は、第1実施形態に係るリリース弁装置10C(
図2参照)のストッパ10fの押え部10gに切欠き部10jを設けるものとして説明したが、これに限られるものではなく、第2実施形態に係るリリース弁装置10A(
図3参照)のストッパ10f1の押え部10g1に切欠き部10jを設けてもよい。
【0076】
≪第5実施形態≫
次に、第5実施形態に係るスクロール圧縮機Sについて説明する。第5実施形態に係るスクロール圧縮機Sは、第1実施形態に係るスクロール圧縮機S(
図1参照)と比較して、リリース弁装置10Dの構成が異なっている。その他の構成は、同様であり説明を省略する。
【0077】
<第5実施形態のリリース弁装置>
第5実施形態に係るスクロール圧縮機Sが備えるリリース弁装置10Dについて、
図7および
図8を用いて説明する。
図7は、第5実施形態に係るリリース弁装置10Dの展開斜視図である。
図8は、第5実施形態に係るリリース弁装置10Dの一部を切断した組立斜視図である。
【0078】
図7および
図8に示すように、第5実施形態に係るリリース弁装置10Dは、ばね10aと、弁板10bと、弁シート面10d、リリース孔10eおよび突起部10kを有する弁シート部材10c4と、溝10lが設けられた押え部10g4を有するストッパ10f4と、リテーナ(図示せず)と、を備えている。
【0079】
弁シート部材10c4の外周部には、突起部10kが設けられており、この突起部10kがストッパ10fに形成された溝10lに圧入等ではめ込む構造になっている。
【0080】
第5実施形態に係るリリース弁装置10Dのその他の構成および基本的な開閉の動作は、第1実施形態に係るリリース弁装置10(
図2参照)と同様であり、説明を省略する。
【0081】
<作用効果>
第5実施形態に係るリリース弁装置10D(
図7、
図8参照)を備えるスクロール圧縮機Sの作用効果について説明する。
【0082】
このような構造とすることにより、
図8に示すように、リリース弁装置10をアセンブリ化することができ、このアセンブリ部品を収納孔4bに挿入すればよいので、スクロール圧縮機Sの組立性が向上する。
【0083】
なお、第5実施形態に係るリリース弁装置10D(
図7、
図8参照)は、第1実施形態に係るリリース弁装置10C(
図2参照)と同様に、リテーナ(図示せず)がストッパ10f4を押さえるものとして説明したが、これに限られるものではなく、第2実施形態に係るリリース弁装置10A(
図3参照)のように、リテーナ(図示せず)とストッパ10f4の間に押えばね10i1(
図3参照)を配置してもよい。また、第4実施形態に係るリリース弁装置10C(
図5、
図6参照)のように、ストッパ10f4の押え部10g4のうち溝10lが設けられた位置とは異なる位置に切欠き部10j(
図3参照)を設けてもよい。また、これらを組み合わせてもよい。
【0084】
≪変形例≫
なお、本実施形態(第1〜第5実施形態)に係るスクロール圧縮機Sは、上記実施形態の構成に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の変更が可能である。
【0085】
以上の本実施形態(第1〜第5実施形態)では、リリース弁装置10,10A〜10Dを例に挙げたが、スクロール圧縮機Sに用いられるリリース弁装置10,10A〜10Dと同様な動作を行う弁装置に、本発明は適用できる。
【0086】
図1に示すように、スクロール圧縮機Sは、旋回スクロール3の背面に吐出圧力と吸込圧力の間の圧力の背圧室15を設けている。この背圧室15の圧力は、背圧室15と圧縮室13との流路に設けられた背圧制御弁16で調整されており、その構造は、リリース弁装置10と同じ、ばねを用いた逆止弁構造であり、弁シート面を有する。この背圧制御弁16も、クランク軸6の一回転に一回、開閉動作を行う弁装置であり、弁シート面の耐衝撃性が求められる。本発明は、この背圧制御弁16にも適用可能である。
【0087】
また、図示は省略するが、背圧室15の圧力が吐出圧力(吐出圧室14の圧力)よりも高くなった場合に開弁して、背圧室15と吐出圧室14とを連通する背圧リリース弁装置(図示せず、例えば、特許第5022010号公報の背圧リリーフ弁装置)が設けられているスクロール圧縮機Sもある。このような背圧リリース弁装置(図示せず)は、フレーム5に設けられる。ここで、フレーム5は、固定スクロール4と締結具5bで締結され、その内部に旋回スクロール3を収納するとともに、背圧室15を形成するものである。このため、線膨張係数の違いによる変形等を防止するため、フレーム5は、旋回スクロール3や固定スクロール4と同じ材料、即ち、アルミニウム合金やマグネシウム合金などの軽量材料で形成することが好ましい。背圧リリース弁装置(図示せず)の構造は、リリース弁装置10と同じ、ばねを用いた逆止弁構造であり、弁シート面を有する。本発明は、この背圧リリース弁装置(図示せず)にも適用可能である。
【0088】
もっとも、背圧リリース弁装置(図示せず)の動作頻度は、リリース弁装置10や背圧制御弁16と比較して、少ないため、本発明のリリース弁装置10,10A〜10Dの構造を適用せず従来例のリリース弁装置10E(
図9、
図10参照)と同様の構造のままとしてもよい。