(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6198874
(24)【登録日】2017年9月1日
(45)【発行日】2017年9月20日
(54)【発明の名称】発光装置および発光装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 33/62 20100101AFI20170911BHJP
H01L 33/60 20100101ALI20170911BHJP
【FI】
H01L33/62
H01L33/60
【請求項の数】14
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-58468(P2016-58468)
(22)【出願日】2016年3月23日
(62)【分割の表示】特願2014-529397(P2014-529397)の分割
【原出願日】2013年7月11日
(65)【公開番号】特開2016-106441(P2016-106441A)
(43)【公開日】2016年6月16日
【審査請求日】2016年3月23日
(31)【優先権主張番号】特願2012-174009(P2012-174009)
(32)【優先日】2012年8月6日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】特許業務法人あーく特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】幡 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】英賀谷 誠
(72)【発明者】
【氏名】石崎 真也
(72)【発明者】
【氏名】松田 誠
(72)【発明者】
【氏名】名田 智一
(72)【発明者】
【氏名】植村 豊徳
【審査官】
佐藤 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−079855(JP,A)
【文献】
特開2012−015329(JP,A)
【文献】
特開2010−205920(JP,A)
【文献】
国際公開第2011/002208(WO,A1)
【文献】
特開2004−207655(JP,A)
【文献】
国際公開第2012/057038(WO,A1)
【文献】
特開昭56−017386(JP,A)
【文献】
国際公開第2006/022098(WO,A1)
【文献】
特開2008−140889(JP,A)
【文献】
特開2002−050847(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0007112(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00−33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に配置された発光素子と、
前記基板上に配置され、前記発光素子の搭載領域を囲むように形成され、かつ、ワイヤが電気的に接続された導電体配線と、
前記基板上に配置されたアライメントマークと、
前記発光素子に電源を供給するための電極であり、前記基板上に配置されたランド部と、
前記ランド部近傍に形成され、金属材料と、前記基板に含有されるガラス成分と同一のガラス成分とが含まれている極性マークと、
前記発光素子を囲むように形成された光反射樹脂枠とを備えており、
前記導電体配線が前記光反射樹脂枠により完全に覆われており、
前記光反射樹脂枠の下方にのみ前記ワイヤが電気的に接続された前記導電体配線が配置され、かつ、上記アライメントマークの一部または全部が露出していることを特徴とする発光装置。
【請求項2】
請求項1に記載の発光装置であって、
前記アライメントマークが前記光反射樹脂枠に覆われていることを特徴とする発光装置。
【請求項3】
請求項1に記載の発光装置であって、
前記アライメントマークは、前記導電体配線の外側に配置され、
前記アライメントマークは前記光反射樹脂枠に覆われていないことを特徴とする発光装置。
【請求項4】
請求項1に記載の発光装置であって、
前記ランド部は、前記光反射樹脂枠の中心に対して対向して配置された一対のランド部として備えられており、
前記ランド部は前記光反射樹脂枠で覆われていないことを特徴とする発光装置。
【請求項5】
請求項1から4の何れか一項に記載の発光装置であって、
前記基板は、ガラス成分を含むセラミック基板であり、
前記導電体配線および前記アライメントマークは、前記基板に含有されるガラス成分と同一のガラス成分を含んでいることを特徴とする発光装置。
【請求項6】
請求項5に記載の発光装置であって、
前記導電体配線および前記アライメントマークは、ガラス成分を多く含み、基板に密着する第一層と、前記第一層の上に形成され、ガラス成分を含まないまたはガラス成分が少ない層である第二層との二層構造を有することを特徴とする発光装置。
【請求項7】
請求項5に記載の発光装置であって、
前記導電体配線は、ガラス成分を多く含み、基板に密着する第一層と、前記第一層の上に形成され、ガラス成分を含まないまたはガラス成分が少ない層である第二層との二層構造を有し、
前記アライメントマークは、ガラス成分を多く含み、基板に密着する第一層のみの単層構造を有することを特徴とする発光装置。
【請求項8】
請求項5に記載の発光装置であって、
前記ランド部は、ガラス成分を多く含み、基板に密着する第一層と、前記第一層の上に形成され、ガラス成分を含まないまたはガラス成分が少ない層である第二層との二層構造
を有することを特徴とする発光装置。
【請求項9】
基板と、
前記基板上に配置された発光素子と、
前記基板上に配置され、前記発光素子の搭載領域を囲むように形成され、かつ、発光素子と電気的に接続された導電体配線と、
アライメントマークと、
前記発光素子に電源を供給するための電極であり、前記発光素子の搭載領域に対して対向して配置されたランド部と、
前記ランド部近傍に形成され金属材料が含まれている極性マークと、
前記発光素子の搭載領域を囲むように形成された円環状の光反射樹脂枠とを備えており、
前記導電体配線が光反射樹脂枠により覆われていることを特徴とする発光装置。
【請求項10】
請求項9に記載の発光装置であって、
上記極性マークは、アノード電極およびカソード電極の極性を目視で認識可能とするためのマークであって、極性マークは、アノード電極の付近にプラス形状のマークを形成し、カソード電極の付近にマイナス形状のマークを形成されていることを特徴とする発光装置。
【請求項11】
請求項9または10に記載の発光装置であって、
上記極性マークは、前記発光素子の搭載領域に対して対向して配置され、ランド部の近傍であって、基板の隅部以外の広い領域に配置されていることを特徴とする発光装置。
【請求項12】
請求項9から11の何れか一項に記載の発光装置であって、
上記アライメントマークの一部または全部が、光反射樹脂枠に覆われることなく露出していることを特徴とする発光装置。
【請求項13】
請求項1から12の何れか一項に記載の発光装置であって、
上記導電体配線上に保護素子が配置されていることを特徴とする発光装置。
【請求項14】
基板上に、導電体配線とアライメントマークとを印刷法によって同時に形成する第1工程と、
基板上に、発光素子に電源を供給するためのランド部を、印刷法により面内均一な層として形成する第2工程と、
基板上に、前記ランド部近傍に形成され金属材料が含まれている極性マークを、印刷法により形成する第3工程と、
前記第1工程にて形成されたアライメントマークを用いて前記基板の位置合わせを行いながら、前記基板上に発光素子を搭載し、搭載された前記発光素子と前記導電体配線とをワイヤ接続する第4工程と、
前記発光素子の搭載領域を囲み、かつ、ワイヤが電気的に接続された前記導電体配線を完全に覆うように光反射樹脂枠を形成する第5工程と、
前記光反射樹脂枠により囲まれた領域に封止樹脂を充填する第6工程とを含むことを特徴とする発光装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照明装置および表示装置の光源などに利用可能な発光装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、発光素子(半導体発光素子とも言う)を光源として用いた照明装置および表示装置などが種々開発されている。このような発光装置として、基板上に配線パターンを形成し、さらに基板上に搭載された発光チップをダイボンディングによって配線パターンと接続した発光装置が知られている。また、このような発光装置では、発光チップのダイボンディング工程等において、基板の位置合わせが必要となるため、基板上にアライメントマークが形成される。
【0003】
また、上記アライメントマークは、従来では、配線パターンと同時にメッキにより形成されていた。しかしながら、メッキによるアライメントマークの形成方法では、アライメントマークの面積が小さいことにより、メッキ時にアライメントマーク形成箇所での電流密度が高くなり、メッキ層にメッキ斑を生じるという問題があった。そして、メッキ斑を生じると、アライメントマークの認識が良好に行われないという問題があった。
【0004】
これに対し、特許文献1には、アライメントマークを配線パターンと一体的に形成したり、面積の大きなアライメントマークを形成したりすることで、メッキ斑による不良を低減する技術が開示されている。
【0005】
また、面積の小さなアライメントマークは、基板からの剥がれを防止するために、基板に対して密着性を高めることが好ましい。特許文献2,3には、金属配線と絶縁基板との両方にガラス成分を含有させ、金属配線と絶縁基板との密着性を向上させる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】WO 2012/057038 A1
【特許文献2】特開2007−273914号公報
【特許文献3】特開平11−126971号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1における従来技術は、面積が小さいアライメントマークを形成しないことで、メッキ時にアライメントマーク形成箇所での電流密度が高くなることを回避し、メッキ斑を低減するものである。このため、上記特許文献1におけるメッキ形成方法では、ある程度面積が大きいアライメントマークでなければ形成することができない。
【0008】
このため、特許文献1における従来技術では、以下のような問題が生じる。
(A) アライメントマークの配置の自由度が減る。
(B) アライメントマークを光反射樹脂枠で覆う場合に、当該樹脂枠の幅が広くなり、発光装置の面積が大きくなる。
(C) アライメントマークを分離して、小さいアライメントマークを形成しようとする場合には、エッチングなどの新たな工程が必要となる。
(D) アライメントマークを配線パターンと一体的に形成する場合、アライメントマークが配線パターンの外側に形成され、アライメントマークが外側を向く。
【0009】
例えば、上記(A)の課題に関しては、メッキによってアライメントマークを形成するためには、
図5に示すように、メッキ時にアライメントマーク部分に電流を通すための支持体が必要となる。上記支持体は、他の配線パターンや発光素子の配置箇所と重ならないように形成される必要があるため、これにより、アライメントマークの配置箇所が制限される。また、
図5の場合、アライメントマークは分離形成できるが、エッチングなどの新たな工程が必要となる。
【0010】
また、上記(B)の課題に関して、
図6を参照して説明すると以下の通りである。
図6は、特許文献1において、面積の大きなアライメントマーク110,111を形成した場合の発光装置100の上面図である。
【0011】
発光装置100は、発光素子形成領域101とその両側に形成された給電パターン102とを有している。給電パターン102のさらに外側には、アライメントマーク110,111が形成されている。光反射樹脂枠103は、発光素子形成領域101と給電パターン102との周囲を囲むように形成され、光反射樹脂枠103により囲まれた領域に封止樹脂を充填することにより発光素子および給電パターン102が保護される。このとき、発光素子形成領域101は、アライメントマーク110,111を覆うように形成されることが好ましい。これは、アライメントマーク110,111が発光素子形成領域101によって覆われることなく枠内部の領域に露出していると、アライメントマーク110,111による光の吸収が生じ、発光装置100の光取り出し効率が低下するためである。しかしながら、アライメントマーク110,111の面積が大きければ、光反射樹脂枠103の形成面積も大きくなり、その結果、発光装置100自体が大面積化するといった問題が生じる。
【0012】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、メッキ斑による不良を発生させること無く、面積が小さく、配置の自由度が高いアライメントマークを備えた発光装置およびその製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題を解決するために、本発明の発光装置は、基板と、前記基板上に配置された発光素子と、前記基板上に配置され、前記発光素子の搭載領域を囲むように形成され、かつ、ワイヤが電気的に接続された導電体配線と、前記基板上に配置されたアライメントマークと、前記発光素子に電源を供給するための電極であり、前記基板上に配置されたランド部と、前記ランド部近傍に形成され金属材料が含まれている極性マークと、前記発光素子を囲むように形成された光反射樹脂枠とを備えており、前記導電体配線が前記光反射樹脂枠により完全に覆われており、前記光反射樹脂枠の下方にのみ前記ワイヤが電気的に接続された前記導電体配線が配置され、かつ、上記アライメントマークの一部または全部が露出していることを特徴としている。
【0014】
また、上記発光装置では、前記アライメントマークが前記光反射樹脂枠に覆われている構成とすることができる。
【0015】
また、上記発光装置では、前記アライメントマークは、前記導電体配線の外側に配置され、前記アライメントマークは前記光反射樹脂枠に覆われていない構成とすることができる。
【0016】
また、上記発光装置では、前記ランド部は、前記光反射樹脂枠の中心に対して対向して配置された一対のランド部として備えられており、前記ランド部は前記光反射樹脂枠で覆われていない構成とすることができる。
【0017】
また、上記発光装置では、前記基板は、ガラス成分を含むセラミック基板であり、前記導電体配線および前記アライメントマークは、前記基板に含有されるガラス成分と同一のガラス成分を含んでいる構成とすることができる。
【0018】
また、上記発光装置では、前記導電体配線および前記アライメントマークは、ガラス成分を多く含み、基板に密着する第一層と、前記第一層の上に形成され、ガラス成分を含まないまたはガラス成分が少ない層である第二層との二層構造を有する構成とすることができる。
【0019】
また、上記発光装置では、前記導電体配線は、ガラス成分を多く含み、基板に密着する第一層と、前記第一層の上に形成され、ガラス成分を含まないまたはガラス成分が少ない層である第二層との二層構造を有し、前記アライメントマークは、ガラス成分を多く含み、基板に密着する第一層のみの単層構造を有する構成とすることができる。
【0020】
また、上記発光装置では、前記ランド部は、ガラス成分を多く含み、基板に密着する第一層と、前記第一層の上に形成され、ガラス成分を含まないまたはガラス成分が少ない層である第二層との二層構造を有する構成とすることができる。
【0021】
上記の課題を解決するために、本発明の他の発光装置は、基板と、前記基板上に配置された発光素子と、前記基板上に配置され、前記発光素子の搭載領域を囲むように形成され、かつ、発光素子と電気的に接続された導電体配線と、アライメントマークと、前記発光素子に電源を供給するための電極であり、前記発光素子の搭載領域に対して対向して配置されたランド部と、前記ランド部近傍に形成され金属材料が含まれている極性マークと、前記発光素子の搭載領域を囲むように形成された円環状の光反射樹脂枠とを備えており、前記導電体配線が光反射樹脂枠により覆われていることを特徴としている。
【0022】
また、上記発光装置では、上記極性マークは、アノード電極およびカソード電極の極性を目視で認識可能とするためのマークであって、極性マークは、アノード電極の付近にプラス形状のマークを形成し、カソード電極の付近にマイナス形状のマークを形成されている構成とすることができる。
【0023】
また、上記発光装置では、上記極性マークは、前記発光素子の搭載領域に対して対向して配置され、ランド部の近傍であって、基板の隅部以外の広い領域に配置されている構成とすることができる。
【0024】
また、上記発光装置では、上記アライメントマークの一部または全部が、光反射樹脂枠に覆われることなく露出している構成とすることができる。
【0025】
また、上記発光装置では、上記導電体配線上に保護素子が配置されている構成とすることができる。
【0026】
上記の課題を解決するために、本発明の発光装置の製造方法は、基板上に、導電体配線とアライメントマークとを印刷法によって同時に形成する第1工程と、基板上に、発光素子に電源を供給するためのランド部を、印刷法により面内均一な層として形成する第2工程と、基板上に、前記ランド部近傍に形成され金属材料が含まれている極性マークを、印刷法により形成する第3工程と、前記第1工程にて形成されたアライメントマークを用いて前記基板の位置合わせを行いながら、前記基板上に発光素子を搭載し、搭載された前記発光素子と前記導電体配線とをワイヤ接続する第4工程と、前記発光素子の搭載領域を囲み、かつ、ワイヤが電気的に接続された前記導電体配線を完全に覆うように光反射樹脂枠を形成する第5工程と、前記光反射樹脂枠により囲まれた領域に封止樹脂を充填する第6工程とを含むことを特徴としている。
【発明の効果】
【0027】
本発明は、極性マークを金属材料で形成することで、耐環境性の向上と工程の簡略化とを図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明の発光装置の構成例を示す上面図である。
【
図2】(a)〜(d)は、
図1に示す発光装置の製造手順を示す図である。
【
図3】本発明の発光装置の他の構成例を示す上面図である。
【
図4】(a)は本発明の発光装置の他の構成例を示す上面図であり、(b)は上記発光装置において導電体配線を二層構造とした例を示す側面図であり、(c)は上記発光装置においてアライメントマークを二層構造とした例を示す側面図であり、(d)は上記発光装置においてアライメントマークを単層構造とした例を示す側面図である。
【
図5】従来の発光装置の構成例を示す上面図である。
【
図6】従来の発光装置の他の構成例を示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。本発明に係る発光装置は、照明装置および表示装置などの光源として利用することが可能である。なお、以下の説明では、
図1の平面視を上面視とする。
【0030】
〔発光装置の構成〕
図1は、本実施の形態に係る発光装置10の一構成例を示す上面図である。発光装置10は、発光素子(半導体発光素子とも言う)を用いた発光装置であり、概略的には、基板11、発光素子12、光反射樹脂枠13および封止樹脂を備えている。
【0031】
基板11は、セラミックからなる単層構造のセラミック基板である。基板11は、上面視で矩形の外形形状を有している。基板11の一方の面(以下、表面と称する)に、発光素子12、光反射樹脂枠13、および封止樹脂が設けられる。また、基板11の表面には、導電体配線14、ランド部としてのアノード電極15およびカソード電極16、アライメントマーク18、および極性マーク19等が直接形成されている。
【0032】
導電体配線14は、ワイヤボンディングにより発光素子12と電気的に接続される電極であり、電気的な接続を行うために引き回された配線である。アノード電極15およびカソード電極16は、発光素子12に電源を供給するための電極(ランド部)であり、発光装置10の外部電源と接続可能となっている。アノード電極15およびカソード電極16は、基板11の表面における、対角線上の各隅付近(
図1中の左上および右下)に配置されている。すなわち、アノード電極15およびカソード電極16は、光反射樹脂枠の中心に対して対向して配置された一対のランド部として形成されている。
【0033】
また、基板11の表面には、さらに保護素子(図示せず)を形成してもよい。保護素子は、発光素子12を静電耐圧から保護するための抵抗素子として形成されるものであり、複数の発光素子12が直列接続された回路と並列接続されるように形成される。また、上記保護素子は、例えば、印刷抵抗にて形成するか、あるいはツェナーダイオードにより形成することができる。保護素子にツェナーダイオードを用いる場合には、該ツェナーダイオードが配線パターン上にダイボンドされ、さらにワイヤボンディングによって所望の配線と電気接続される。この場合も、ツェナーダイオードが複数の発光素子12が直列接続された回路と並列接続される。
【0034】
アライメントマーク18は、主にボンディング工程時(ダイボンディングまたはワイヤボンディング)の基板11の位置合わせ等に用いられるマークである。アライメントマーク18は光反射性を有するように金属膜にて形成され、製造装置(ボンディング装置等)がアライメントマーク18からの反射光を読み取ることによって基板11の位置が認識される。
【0035】
極性マーク19は、アノード電極15およびカソード電極16の極性を目視で認識可能とするためのマークである。このため、極性マーク19は、アノード電極15の付近にプラス形状のマークを形成し、カソード電極16の付近にマイナス形状のマークを形成することが好ましい。
【0036】
発光素子12は、例えば、発光ピーク波長が450nm付近の青色発光素子であるが、これに限るものではない。発光素子12としては、例えば、発光ピーク波長が390nm〜420nmの紫外(近紫外)発光素子を用いてもよく、これにより、さらなる発光効率の向上を図ることができる。発光素子12は、基板11の表面に、所定の発光量を満たすような所定の位置に複数(本実施例では20個)搭載されている。発光素子12の電気的接続は、ワイヤ20を用いたワイヤボンディングによって行われている。ワイヤ20は、例えば金ワイヤを用いることができる。
【0037】
光反射樹脂枠13は、発光素子12からの光を反射するとともに、導電体配線14による光の吸収を防止するものである。また、光反射樹脂枠13は導電体配線14の押さえにもなる。光反射樹脂枠13は、全ての発光素子12が搭載される搭載領域を囲むように、例えば、上面視で円環状に設けられている。また、光反射樹脂枠13が導電体配線14を覆うように形成されることで、導電体配線14による光の吸収が防止される。このため、光反射樹脂枠13が円環状に形成される場合は、導電体配線14も上記円環の一部の円弧状となるように形成される。また、印刷抵抗からなる保護素子(もしくは保護素子の一部)が形成される場合には、該印刷抵抗からなる保護素子も上記円環の一部の円弧状となるように形成され、光反射樹脂枠13によって覆われる。これにより、光反射樹脂枠13は、保護素子による光の吸収をも防止することができる。光反射樹脂枠13は、例えばアルミナフィラー含有シリコーン樹脂からなるが、これに限らず、光反射特性を持つ絶縁性樹脂を用いればよい。また、光反射樹脂枠13、導電体配線14および保護素子の形状は、上述のような円環状(円弧状)に限定されるものではなく、任意の形状とすることができる。
【0038】
封止樹脂は、透光性樹脂からなる封止樹脂層であり、光反射樹脂枠13により囲まれた領域に充填されて形成されている。すなわち、封止樹脂は、発光素子12の搭載領域上に形成され、発光素子12、ワイヤ20等を封止する。
【0039】
上記封止樹脂には蛍光体を含有させることができる。上記蛍光体としては、発光素子12から放出された1次光によって励起され、1次光よりも長波長の光を放出する蛍光体が用いられ、所望の白色の色度に応じて適宜選択することができる。例えば、昼白色や電球色の組合せとして、YAG黄色蛍光体と(Sr、Ca)AlSiN
3:Eu赤色蛍光体との組合せや、YAG黄色蛍光体とCaAlSiN
3:Eu赤色蛍光体との組合せがあり、高演色の組合せとして、(Sr、Ca)AlSiN
3:Eu赤色蛍光体とCa
3(Sc、Mg)
2Si
3O
12:Ce緑色蛍光体との組合せなどがある。但し、これらに限らず、他の蛍光体の組み合わせでもよく、擬似白色としてYAG黄色蛍光体のみを含む構成でもよい。
【0040】
〔発光装置の製造方法〕
次に、上記構成を有する発光装置10の製造方法について説明する。なお、発光装置10は、複数の発光装置群からなる一体ものとして形成され、製造工程の最後に個々の発光装置の周囲(四方)がダイシングにて分割されることで、個々の発光装置として形成される。但し、以下の説明では、説明の便宜上、適宜ある1つの発光装置に着目して説明および図示する。
【0041】
<導電体配線形成工程>
図2(a)〜(d)は、発光装置10の製造手順を示す図である。
【0042】
まず、
図2(a)に示すように、基板11上に、導電体配線14、導電体配線14とランド部とを電気的に接続するための導電部の一部、およびアライメントマーク18を形成する。本実施の形態においては、これらは印刷法によって形成される。具体的には、金ペーストによる印刷後(膜厚2μm以上)、乾燥工程、および850℃以上での焼成工程を経て、導電体配線14、上記導電部およびアライメントマーク18が形成される。
【0043】
本実施の形態に係る発光装置10は、アライメントマーク18が印刷によって形成される点に特徴を有する。すなわち、アライメントマーク18が印刷によって形成されることで、メッキにてアライメントマークを形成する場合のメッキ斑の問題を回避でき、良好な認識が可能なアライメントマークを形成できる。また、面積の小さなアライメントマークを配置の制限を受けることなく、任意の箇所に形成可能であり、アライメントマークによる光吸収を低減して、発光装置10における光の取り出し効率を向上させることができる。
【0044】
次に、
図2(b)に示すように、基板11上に、ランド部(すなわち、アノード電極15およびカソード電極16)、導電体配線14とランド部とを電気的に接続するための導電部の一部を形成する。本実施の形態においては、これらは印刷法によって形成される。具体的には、銀(または銀白金、銀パラジウム)ペーストによる印刷後(膜厚18μm以上)、乾燥工程、および850℃以上での焼成工程を経て、ランド部および上記導電部が形成される。
【0045】
さらに、印刷法によって極性マーク19を形成する。極性マークは、金ペーストによる印刷後(膜厚18μm以上)、乾燥工程、および850℃以上での焼成工程を経て形成される。また、極性マークの形成時には、同時に基板の型番を示す記号を形成しても良い。
【0046】
尚、保護素子を形成する場合には、印刷および焼成を含む製造工程により、印刷抵抗として保護素子を基板11上に形成すればよい。印刷工程では、抵抗成分を含むペーストを、導電体配線14の端に重ねるように(導電体配線14上に一部が接触するように)所定の位置にスクリーン印刷する。上記ペーストは、二酸化ルテニウム(RuO
2、導電粉末としてルテニウム)、団結剤、樹脂、および溶剤により構成される。そして焼成工程によって、印刷したペーストを基板11上に定着させることにより、保護素子を形成する。なお、導電粉末としては、ルテニウムに限らず、焼成温度以下では軟化しない金属または酸化物であればよい。
【0047】
<発光素子搭載工程>
続いて、
図2(c)に示すように、発光素子12を基板11に実装する。具体的には、まず、発光素子12を、例えばシリコーン樹脂などの接着樹脂を用いてダイボンディングする。本実施の形態では、発光素子12は、導電体配線14で囲まれる領域に20個配置される。
【0048】
発光素子12は、上面視長方形の外形形状を有するチップであり、例えば、厚みが100〜180μmである。発光素子12の長方形の上面には、アノード用およびカソード用の2つのチップ電極が、長手方向に対向するように設けられている。発光素子12は、ほぼ列状に並べられており、本実施の形態では、1列につき4個の発光素子12が5列配置されている。
【0049】
続いて、ワイヤ20を用いて、ワイヤボンディングを行う。このとき、導電体配線14に隣接して配置された発光素子12には、その導電体配線14とチップ電極との間でワイヤボンディングを行う。導電体配線14を挟んでいない、隣接する発光素子12は、両者のチップ電極間をワイヤボンディングにより直接接続する。これにより、アノード電極15とカソード電極16との間において、4個の発光素子12が直列に接続された直列回路部が、5個並列に接続される。
【0050】
<第2光反射樹脂層形成工程>
続いて、
図2(d)に示すように、光反射樹脂枠13を、導電体配線14を覆うように形成する。具体的には、例えば樹脂吐出装置(図示せず)を用いて、液状のアルミナフィラー含有シリコーン樹脂を、丸形状の開口部を持つノズルから吐出しながら、所定の位置に描画する。そして、硬化温度:120℃、硬化時間:1時間の条件で加熱硬化処理を施すことにより、光反射樹脂枠13を形成する。なお、硬化温度および硬化時間は一例であり、これに限定されない。
【0051】
光反射樹脂枠13は、例えば、幅が0.9mmである。光反射樹脂枠13の最上部の高さは、発光素子12の上面の高さよりも高く、かつ、発光素子12間を接続するワイヤ20(ワイヤーループ)よりも高くなるように設定されている。これにより、発光素子12とワイヤ20とを露出しないように封止樹脂を形成することが可能となり、これらを保護することが可能となる。
【0052】
また、導電体配線14に接続されたワイヤ20は、光反射樹脂枠13によって、少なくとも一部が覆われる。これにより、ワイヤ剥がれを低減したり、ワイヤ剥がれを防止することが可能となっている。また、ランド部(すなわち、アノード電極15およびカソード電極16)は、光反射樹脂枠13によって覆われない。
【0053】
また、本実施の形態に係る発光装置10では、アライメントマーク18を光反射樹脂枠13の形成領域に配置し、光反射樹脂枠13によってアライメントマーク18を覆う構造としても良い。アライメントマーク18を光反射樹脂枠13によって覆う場合、発光装置10の外観が良くなるだけでなく、アライメントマーク18による光の吸収を防止して光の取り出し効率を向上させることができる。尚、アライメントマーク18は、必ずしも光反射樹脂枠13によって覆われている必要は無い。アライメントマーク18が光反射樹脂枠13によって覆われていない場合であっても、本実施の形態に係る発光装置10では、面積の小さなアライメントマーク18を形成することで、アライメントマーク18による光の吸収を最小限にすることができる。
【0054】
樹脂吐出装置には、丸形状の開口部を持つノズルを用いたが、これに限らず、例えば、光反射樹脂枠13の描画形状(ここでは、円環状)に合わせた開口部を持つノズルを用いてもよい。このようなノズルを用いる場合においては、開口部から一度に樹脂が吐き出されるので、継ぎ目の無い環状の光反射樹脂枠13を短時間で作製することができる。つまりは、継ぎ目部の膨らみが抑えられ、封止樹脂の漏れを低減することが可能な光反射樹脂枠13を形成することができる。
【0055】
<封止樹脂形成工程>
続いて、封止樹脂を基板11上に形成する。具体的には、液状の透光性樹脂に蛍光体を分散させたものである蛍光体含有樹脂を、光反射樹脂枠13により囲まれた領域を満たすよう注入する。蛍光体含有樹脂を注入した後は、所定の温度および時間で硬化させる。これによって、発光素子12およびワイヤ20が封止樹脂によって覆われて保護される。
【0056】
<基板分割工程>
最後に、複数の発光装置10が作りこまれた一枚の基板から、これを分割ラインに沿って分割し、個々の発光装置10を得る。分割方法としては、分割ラインに沿って基板11の裏面に設けられた分割溝の上方を、表面側から分割ブレードにより剪断する方法がある。この方法によれば、基板11は分割溝に沿って割れるので、容易に分割することができる。分割することにより、個片化された発光装置10を作製し得る。
【0057】
〔変形例〕
図1に示す発光装置10では、アライメントマーク18を導電体配線14の内側に形成した例を示したが、
図3に示す発光装置30のように、アライメントマーク18を導電体配線14の外側に形成しても良い。尚、アライメントマーク18を導電体配線14の外側に形成する場合には、アライメントマーク18は光反射樹脂枠13によって覆われない方が良い場合もある。これは、アライメントマーク18が導電体配線14の外側に離れて形成される場合には、アライメントマーク18を光反射樹脂枠13によって覆おうとすると、光反射樹脂枠13の幅が広くなりすぎるためである。また、アライメントマーク18を導電体配線14の外側にある場合は、光反射樹脂枠13によって覆わなくてもアライメントマーク18による光の吸収が生じず、光反射樹脂枠13によって覆う必要がないためでもある。
【0058】
ここで、
図1に示すように基板11上に搭載される発光素子数が多い場合、発光素子搭載領域の面積が大きくなりすぎ、チップダイボンド時にアライメントマーク識別装置の認識領域から外れ、アライメントマーク18が認識できないことが起こりうる。このような場合、導電体配線14の内側(光反射樹脂枠13の枠内)にアライメントマーク18を配置することで上記認識不良を低減することができる。また、
図3に示すように発光素子数が少ない場合は、発光素子搭載領域の面積が小さいため、アライメントマーク18は導電体配線14の外側(光反射樹脂枠13の枠外)にあってもよい。すなわち、アライメントマーク18の配置箇所を調整することで、発光素子搭載領域の面積の大小に係らず同じ識別装置が使用できる。このため、本実施の形態に係る発光装置10のように、印刷によって面積の小さなアライメントマーク18が形成でき、アライメントマーク18の配置が自由になることは極めて重要なことである。
【0059】
また、
図3に示す発光装置30では、発光素子12の配置が
図1に示す発光装置10と異なっている。具体的には、発光装置10では、図面の最上列および最下列における発光素子12の配列が、光反射樹脂枠13の形状に沿って円弧状となっているが、発光装置30では、全ての発光素子12の列が直線状の配列となっている。このような発光素子の配列は、発光装置に要求される光の均一性等に応じて任意に設計することが可能である。
【0060】
また、本実施の形態に係る発光装置10および30では、基板11をセラミック基板とし、印刷によって形成される導電体配線14やランド部やアライメントマーク18は、基板11に含有されるガラス成分と同一のガラス成分を含むことが好ましい。この場合、印刷後の焼成工程において、基板11中のガラス成分と、導電体配線14やランド部やアライメントマーク18中のガラス成分とが相互拡散する。これにより、導電体配線14、ランド部およびアライメントマーク18の基板11に対する密着性が向上する。本実施の形態のように、面積の小さなアライメントマーク18が形成される場合には、基板11に対する密着性を向上させることによってアライメントマーク18の剥がれを防止でき、製造歩留まりを向上させることができる。
【0061】
また、導電体配線14およびアライメントマーク18に、基板11に含有されるガラス成分と同一のガラス成分を含ませる場合には、
図4(a)〜(c)に示すように、導電体配線14およびアライメントマーク18は二層構造としても良い。この場合、導電体配線14およびアライメントマーク18は、基板11側に密着する第一層をガラス成分が多い層とし、その上に金属のみ(すなわち、ガラス成分を含まない)またはガラス成分が少ない層である第二層を形成する。このような二層構造とすることで、導電体配線14は、基板11に対する密着性と、発光素子12とのワイヤボンディングの良好性とを兼ね備えることができる。すなわち、導電体配線14の表面は、発光素子12との電気接続のためにワイヤボンディングされるため、ガラス成分が含まれてないことが好ましい(ガラス成分が多いと、ワイヤ剥がれが発生し易く、ワイヤの付きが悪いことが生じる)。導電体配線14を、
図4(b)に示すような二層構造とすることで、導電体配線14の表面層(第二層)でのガラス成分をなくすか、もしくは少なくすることができ、ワイヤボンディングにおけるワイヤ剥がれを防止できる。または、ワイヤボンディングの際の弾きによる(密着性不良)ワイヤが付かないという不良が低減できる。
【0062】
さらには、
図4(b)に示すように、ランド部(アノード電極15およびカソード電極16)を同様の二層構造としても良い。ランド部においても、基板11側に密着する第一層をガラス成分が多い層とし、その上に金属のみ(すなわち、ガラス成分を含まない)またはガラス成分が少ない層である第二層を形成することで、ランド部での半田付けの際に半田とランド部の第二層とで半田付きがよくなり、半田付きが悪いと言う不良が低減される。また、第二層はガラス成分の相互拡散の影響が少なく、金属本来の電気抵抗率を有することになり発光装置におよぼす電気的影響が少なくなる。
【0063】
尚、アライメントマーク18は、導電体配線14と同じ印刷工程で形成されるため、
図4(c)に示すような二層構造とすることもできる。但し、アライメントマーク18は、導電体配線14とは異なり、電気的な機能を持たす必要がないため、
図4(d)に示すような単層構造(ガラス成分を多く含む層)としても良い。この場合、導電体配線14の第一層を印刷するときに同時にアライメントマーク18を印刷し、導電体配線14の第二層を印刷するときにはアライメントマーク18を印刷しなければよい。
【0064】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0065】
10,30 発光装置
11 基板
12 発光素子
13 光反射樹脂枠
14 導電体配線
15 アノード電極
16 カソード電極
18 アライメントマーク
19 極性マーク