(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る誘導加熱調理器の実施の形態を、図面を参照して説明する。なお、以下に示す図面の形態によって本発明が限定されるものではない。また、各図において同一の構成には同一の符号を付している。
【0012】
実施の形態.
[誘導加熱調理器の構成]
図1は、実施の形態に係る誘導加熱調理器100の外観斜視図である。実施の形態に係る誘導加熱調理器100は、キッチンキャビネット内に収容されて使用されるビルトイン型の誘導加熱調理器であり、上面を開口した箱状の筐体1と、筐体1の上に載置され筐体1の上面の開口(
図7の開口部18参照)を覆う天板部2とを備える。天板部2は、本実施の形態では、例えばセラミック製のプレート(天板)2aとプレート2aの外周を囲む金属製のプレート枠2bとを主要な構成要素としている。筐体1及び天板部2は、誘導加熱調理器100の外郭を構成しており、天板部2の上には鍋等の被加熱物が載置される。本実施の形態の誘導加熱調理器100には3つの加熱口3が設けられており、天板部2には、被加熱物を載置する目安の位置が加熱口3ごとに印刷等によって表示されている。天板部2の手前側には、各加熱口3に対応して設けられ押しボタンまたはタッチパネルで構成された操作部4と、誘導加熱調理器100の動作状態や各加熱口3における加熱条件等の各種情報を表示する液晶画面やランプ等で構成された表示部5が設けられている。
【0013】
筐体1内であって天板部2の下方には、内部に電気ヒーター等の加熱手段を有し前面が引き出し式の扉で覆われたグリル部6と、グリル部6の上側に設置され加熱口3に載置される被加熱物を加熱する加熱手段(
図1には図示せず)が設けられている。本実施の形態では、3つの加熱口3のうち前側の左右2つの加熱口3にそれぞれ対応して加熱手段としての加熱コイル7(
図1には図示せず。
図3参照。)が設けられ、中央後方の加熱口3に対応してラジエントヒーター(図示せず)が設けられている。ラジエントヒーターは、商用周波数の交流電力が供給されてヒーターそのものが発熱することにより輻射熱で被加熱物を加熱するものである。なお、すべての加熱口3に加熱コイル7を設けてもよい。
【0014】
筐体1の周囲を構成する周壁は、使用者と対面する側(前側)に設けられた前壁11と、前壁11と対向して後方に設けられた後壁12(
図1には図示せず。
図3参照。)と、前壁11と後壁12の左右の両端部を奥行き方向に結ぶ左右の側壁13とを備える。
【0015】
後壁12及び右側の側壁13の一部には、背面吸気口14が形成されている。本実施の形態の背面吸気口14は、筐体1の周壁を構成する板金に形成された複数の開口部によって構成されている。なお、背面吸気口14の大きさ及び形状は図示のものに限定されない。
また、筐体1の前部下方には、前面吸気口カバー16が取り付けられており、この前面吸気口カバー16に覆われた筐体1の前壁11に、前面吸気口15(
図3参照)が形成されている。背面吸気口14及び前面吸気口15は、外部から筐体1内への空気の流入口である。
【0016】
天板部2の後部、より詳しくは天板部2の一部を構成するプレート枠2bの後部には、筐体1内から外部への空気の流出口となる排気口17が形成されている。本実施の形態では、天板部2の幅方向に延びる2つの排気口17が設けられている。排気口17の上側には、板金等の耐熱性の高い材料で構成され通気可能な開口部を有する排気口カバー(図示せず)が載置され、排気口17内への異物の侵入が抑制される。なお、本実施の形態では、プレート2aとプレート枠2bとを主要な構成要素とする天板部2を設け、プレート枠2bに排気口17を形成した例を示すが、天板部2の具体的構成及び排気口17が形成される具体的な部材はこれに限定されない。例えば、プレート枠2bを設けずプレート2aに排気口17を形成してもよく、誘導加熱調理器100の外郭の上面を構成する部材に、筐体1内と連通する排気口17を形成すればよい。
【0017】
図2は、実施の形態に係る誘導加熱調理器100のキッチンキャビネット200への設置態様を説明する図である。
図2(A)は、誘導加熱調理器100がキッチンキャビネット200に設置された状態を示し、
図2(B)は、誘導加熱調理器100をキッチンキャビネット200に設置する途中の状態を示している。
【0018】
まず、キッチンキャビネット200の構成について簡単に説明する。キッチンキャビネット200には、誘導加熱調理器100の筐体1が嵌め込まれる空間である落とし込み穴205が形成されている。落とし込み穴205は、キャビネット天板部201と、キャビネット後壁202と、キャビネット底板203と、キャビネット側板204(
図4参照)とによって囲まれている。キャビネット天板部201には、天板部2の面積よりも小さくかつ筐体1の上部の面積よりもやや大きいキャビネット開口部206が形成されており、このキャビネット開口部206から落とし込み穴205内へ筐体1が嵌め込まれる。筐体1の上面の開口部18の奥行き寸法をA、キャビネット開口部206の奥行き寸法をB、天板部2の奥行き寸法をCとすると、A<B<Cの関係が成り立つ。また、図示しないが、筐体1の上面の開口部18の幅寸法、キャビネット開口部206の幅寸法、及び天板部2の幅寸法についても、奥行き寸法と同様の関係が成り立つ。
【0019】
図2(B)に示すように、誘導加熱調理器100をキッチンキャビネット200に設置する際には、筐体1の前側部分をキッチンキャビネット200のキャビネット開口部206に先に入れ、続けて、筐体1の後側部分を上下方向に回転させながら筐体1を落とし込み穴205に入れる。筐体1の後壁12の下部は、筐体1の後部側を回転させたときにキッチンキャビネット200のキャビネット後壁202に当たるのを回避するため、角が落とされている。
【0020】
図2(A)に示すように、誘導加熱調理器100がキッチンキャビネット200に設置された状態においては、天板部2の周縁が、キャビネット天板部201のキャビネット開口部206の周縁の上に載置される。キャビネット開口部206と誘導加熱調理器100との隙間は、シール部材で封止される。キッチンキャビネット200に誘導加熱調理器100が組み込まれた状態において、落とし込み穴205の内部とキッチンキャビネット200の外部とは、吸気用開口部207を介して連通しており、また、落とし込み穴205の内面と筐体1の外面との間には通風可能な隙間が形成される。
【0021】
筐体1の前壁11は、前壁上部111に対して前壁下部112が手前側(使用者と対面する側。
図2の紙面左側。)に位置しており、前壁上部111の下端と前壁下部112の上端は、奥行き方向に延びる張り出し壁113で接続されている。前壁下部112が手前側に張り出しているため、筐体1の前壁11が同一平面状の壁で構成されている場合と比べて筐体1内の容積を大きくすることができる。また、筐体1内に組み込まれるグリル部6(
図1参照)の扉のハンドルを、使用者側に近づけることができるので、使用者はグリル部6の扉の開閉を容易に行うことができる。
【0022】
図3は、実施の形態に係る誘導加熱調理器100の概略断面図であり、
図1のZ−Z線に沿う断面を示す図である。
図4は、実施の形態に係る誘導加熱調理器100の概略断面図であり、
図3のY−Y線に沿う断面を示す図である。なお、
図3、
図4には、誘導加熱調理器100が据え付けられるキッチンキャビネット200も併せて図示している。また、
図3では、冷却ファン43が動作することによって生じる空気の流れを矢印で概念的に示している。
【0023】
図3に示すように、筐体1の内部であって天板部2の下側には、コイル保持台に載置された加熱コイル7が配置されている。加熱コイル7よりも下側には、基板保持台41の上に載置されたインバーター回路基板20が配置され、インバーター回路基板20よりも下側には、電源基板保持台44の上に載置された電源基板30が配置されている。インバーター回路基板20の上側は、基板カバー42で覆われている。インバーター回路基板20よりも後方寄りの位置には、筐体1に形成された背面吸気口14との間に隙間を介して冷却ファン43が設置されている。冷却ファン43の上方には、ダクト形成部材50が設けられている。
図4に示すように、筐体1の内部において、左に寄った位置にグリル部6が配置され、他方にインバーター回路基板20及びその周辺部材が配置されている。なお、
図4に示す左右の位置関係を反転させてグリル部6を右に寄せて配置してもよい。
【0024】
インバーター回路基板20は、基板21と、基板21に実装され加熱コイル7に高周波電力を供給するインバーター回路を構成するスイッチング素子22と(
図4参照)、スイッチング素子22に取り付けられたヒートシンク23とを備える。スイッチング素子22を備えたインバーター回路基板20は、電源基板30よりも発熱量が大きい。
【0025】
電源基板30は、基板31と、基板31に実装された電源回路部品32とを備える。基板31にはノイズフィルター回路も実装される。電源基板30は、インバーター回路基板20及び冷却ファン43等に電源を供給する。電源基板30からインバーター回路基板20に供給された商用電源は、インバーター回路基板20によって高周波電力に変換され、加熱コイル7に供給される。加熱コイル7に高周波電力が供給されると、加熱コイル7の周囲に高周波磁界が発生し、天板部2の上に載置された被加熱物に渦電流が生じ、被加熱物自体が発熱する。電源基板30は、加熱コイル7の下側に配置されたインバーター回路基板20よりもさらに下側に設置されており、加熱コイル7と距離が離れているため、電源基板30は加熱コイル7から発せられるノイズの影響を受けにくく、ノイズのある電力供給を減らすことができる。
【0026】
なお、ここでは特に説明しないが、基板21及び基板31には、誘導加熱調理器100が必要とする機能に応じた部品が適宜実装される。
【0027】
冷却ファン43は、本実施の形態では軸流ファンで構成されており、回転軸が前後方向に概ね水平に向くようにして、基板保持台41の上に設置されている。冷却ファン43の吐出側はインバーター回路基板20と対面しており、冷却ファン43から送出された冷却風は、被冷却部品であるインバーター回路基板20に向かって流れる。本実施の形態では、冷却ファン43の吐出断面を含む面上にインバーター回路基板20を投影した領域が冷却ファン43の吐出断面の領域の範囲内となるようにインバーター回路基板20が配置されており、冷却ファン43から送出される冷却風をインバーター回路基板20に向けて吹き付けることができる。
【0028】
また、冷却ファン43の吐出側の下端は、インバーター回路基板20の下端と同一平面上に配置されている。冷却ファン43の吐出側の下端とインバーター回路基板20の下端とを同一平面上に配置することで、冷却ファン43から送出された冷却風を無駄なくインバーター回路基板20に供給することができる。また、インバーター回路基板20及び冷却ファン43の下側に凹凸の少ないスペースを確保できるので、本実施の形態のように誘導加熱調理器100の動作に必要な回路基板の一部(電源基板30)を設置することができる。このため、筐体1内のスペースを有効活用でき、また、電源基板30の近傍を流れる冷却風の妨げにもなりにくい。また、誘導加熱調理器100の動作に必要な回路基板を複数に分けて配置することができるので、一枚の基板上の部品の密集度を低減でき、各基板に実装される部品の通風抵抗の増加を抑制できる。なお、「同一平面上」とは、完全に同一平面上であることを意味するものではなく、冷却ファン43から送出された冷却風が大きく妨げられない程度の多少の段差の存在を許容するものである。
【0029】
また、冷却ファン43の吐出面の上部は、基板カバー42よりも上側に突出しており、冷却ファン43から送出される冷却風は、基板カバー42の下側と上側とに分流する。本実施の形態では、基板カバー42の下側に位置する冷却ファン43の吐出側の面積は、基板カバー42の上側に位置する面積よりも大きく、基板カバー42の下側に流れる冷却風の方が上側に流れる冷却風よりも風量が大きい。
【0030】
ダクト形成部材50は、筐体1の後壁12の内面から筐体1の内方に向かって概ね庇状に突出し、冷却ファン43の吸引側の空間、冷却ファン43、及び基板カバー42の一部の上側を覆う。ダクト形成部材50は、排気口17と冷却ファン43の吸引側との間を上下に仕切っている。ダクト形成部材50の後端部は、筐体1の後壁12の内面の背面吸気口14よりも上側に当接しており、ダクト形成部材50の下側には、冷却ファン43に吸引される空気及び冷却ファン43から送出される空気が通過するダクトが形成される。ダクト形成部材50の下面と基板カバー42の上面との間には、高さ方向に隙間があり、冷却ファン43から送出された冷却風はこの隙間を通過することができる。ダクト形成部材50の前端部よりも前方には、加熱コイル7に通じる隙間が形成されており、この隙間から出た冷却風は加熱コイル7に向かって流れる。
【0031】
ダクト形成部材50の上側には、天板部2の下面との間に通風可能な隙間が設けられている。ダクト形成部材50の上側の隙間は排気口17に通じており、ダクト形成部材50の上側を流れる空気は、排気口17から誘導加熱調理器100の外部へと流出する。
【0032】
ダクト形成部材50は、冷却ファン43の上流側の空間であって上から見たときに排気口17と重なる領域を覆っており、排気口17から筐体1内に蒸気、油煙、または液体が流入した場合であってもそれらが冷却ファン43から送出される冷却風に混入しにくくなっている。
【0033】
ダクト形成部材50の上面には、上方に突出するリブ54が設けられている。リブ54は加熱コイル7よりも後方寄りに設けられており、仮に排気口17から液体やゴミ等の異物が筐体1内に流入した場合であってもリブ54がそれらをせき止め、液体やゴミ等の異物が加熱コイル7や基板カバー42内のインバーター回路基板20等に到達するのを抑制する。
【0034】
誘導加熱調理器100の内部を冷却する冷却風の流れる風路構成を、
図3を参照して説明する。
図3に示すように、背面吸気口14と冷却ファン43の吸引側との間に形成される風路を、第一吸気風路61という。また、基板保持台41と筐体1の底板との間に形成され、前面吸気口15から冷却ファン43の吸引側に至る風路を、第二吸気風路62という。第一吸気風路61及び第二吸気風路62は、冷却ファン43の吸引側に連通しており、第一吸気風路61と第二吸気風路62とは冷却ファン43の上流側において合流する。
【0035】
冷却ファン43の吐出側と連通する風路であって、基板カバー42の内部に形成される風路を、第一吹出風路63という。また、冷却ファン43の吐出側と連通し、基板カバー42の上側とダクト形成部材50との間に形成される風路を、第二吹出風路64という。
【0036】
[風路ユニットの構成]
本実施の形態では、基板保持台41、基板カバー42、及び冷却ファン43がユニット化されて、筐体1内に収容される。これらユニット化されたものを風路ユニット40と称する。風路ユニット40及びこれに関連する構成を、
図5及び
図6を参照して説明する。
図5は、実施の形態に係る風路ユニット40の斜視図である。
図6は、実施の形態に係る風路ユニット40及び風路ユニット40に付帯する部品の分解斜視図である。
【0037】
基板保持台41は、インバーター回路基板20が載置される概ね平板状の支持板411と、支持板411の前及び左右の周縁部から上方に起立する上部周壁412と、支持板411の左右の周縁部から下方に向かって延びる下部周壁413とを主な構成要素としている。支持板411の後端部の上側は周壁によって囲まれておらず、冷却ファン43の吐出側と連通する。
また、支持板411の前端部の下側には周壁が設けられておらず保持台下部流入口414が形成されており、風路ユニット40が筐体1内に組みこまれた状態においては、保持台下部流入口414は前面吸気口15と連通する。また、支持板411の後端部の下側には周壁が設けられておらず、冷却ファン43の吸引側と連通する。
支持板411の下側には、支持板411及び下部周壁413の内面で囲まれたトンネル状の風路が形成され、本実施の形態では、このトンネル状の風路の中に、電源基板保持台44及びこれに保持された電源基板30が収容される。また、本実施の形態では、電源基板30及び電源基板保持台44は、基板保持台41に取り付けられ、風路ユニット40に一体化される。
【0038】
基板カバー42は、基板保持台41の上部に組み付けられ、基板保持台41との間にインバーター回路基板20を収容する。基板カバー42の上面には、冷却風吹出口421が開口している。冷却風吹出口421は、基板カバー42の前方寄りであって冷却ファン43から離れた位置に開口しており、基板カバー42内を後から前に向かう冷却風が流れる距離を長くしている。
【0039】
図6に示すように、ダクト形成部材50は、冷却ファン43の上側を覆うダクト上板51と、ダクト上板51の左右端部から下側に延び冷却ファン43の左右を覆うダクト側板52とを主要な構成要素としている。ダクト上板51及びダクト側板52の内側には、概ねトンネル状の風路が形成され、この風路内に冷却ファン43が配置される。
【0040】
ダクト上板51の後側の一部は、前後方向及び左右方向に傾斜したダクト上板傾斜面53が形成されている。ダクト上板傾斜面53は、ダクト形成部材50が筐体1内に組み込まれた状態においては、排気口17の下側(上から見たときに排気口17と重なる位置)に位置する。このため、吹き零れた液体や油煙、ゴミ等の異物が排気口17から筐体1内に流入した場合であっても、流入した異物がダクト上板傾斜面53の上に落下して傾斜面に沿って流れ、図示しない異物の排出口に流れる。したがって、異物がダクト形成部材50の上に蓄積したりダクト形成部材50の下に流入したりすることを抑制できる。なお、ダクト上板傾斜面53の傾斜方向は、異物の排出口に向かう方向であればいずれの方向でもよい。
【0041】
また、ダクト上板51には、上側に突出するリブ54がダクト形成部材50の幅方向にわたって設けられている。このため、ダクト上板51の上に吹き零れ等の液体やゴミ等の異物が落下した場合であっても、それらが前方に向かって流れるのをリブ54がせき止める。
【0042】
図7は、実施の形態に係る誘導加熱調理器100の筐体1と風路ユニット40の寸法関係を説明する図である。
図7に示すように、風路ユニット40の奥行き方向の外形寸法をD、筐体1の内部の下部の奥行き方向の内寸法をEとすると、DとEは略同寸である。ここで、外形寸法Dと内寸法Eとが「略同寸」とは、風路ユニット40を筐体1内の下部に収容したときに、風路ユニット40が筐体1の内面によって前後方向に位置決めされるようにDとEとが等しいか、またはDの方がやや小さいことをいう。このように風路ユニット40の奥行き方向の外形寸法Dと筐体1の内部下部の奥行き方向の内寸法Eとを略同寸にすることで、風路ユニット40を筐体1内に組み込んだときに、風路ユニット40の奥行き方向におけるガタ付きを抑制することができる。したがって、例えばネジ等の別部材を用いて風路ユニット40と筐体1とを奥行き方向に固定する必要がなくなる。このため、部品点数が削減できて誘導加熱調理器100の重量を低減させることができ、また、組み立て作業の工数も削減できる。
【0043】
図8は、実施の形態に係る風路ユニット40の筐体1への組み付け動作を説明する図である。
図8(A)は、風路ユニット40を筐体1に組み付ける途中の状態を示し、
図8(B)は、風路ユニット40が筐体1に組み付けられた状態を示している。
風路ユニット40を筐体1に組み付ける際には、
図8(A)に示すように、風路ユニット40の前側部分を、開口部18から筐体1内に先に入れ、風路ユニット40の後側部分を上下方向に回転させながら風路ユニット40を筐体1内に入れる。そうすると、
図8(B)に示すように、筐体1内の下部に風路ユニット40が収まる。
【0044】
図8(B)に示すように筐体1内に風路ユニット40が組み付けられた状態においては、筐体1の張り出し壁113の下側に形成される空間に、風路ユニット40が挿入される。したがって、筐体1の張り出し壁113の下側の空間をデッドスペースにすることなく、有効に活用することができる。
【0045】
図9は、実施の形態に係る風路ユニット40の基板保持台41と基板カバー42のネジ止め位置を説明する図であり、筐体1を上から見た状態の主要部を示している。風路ユニット40の一部を構成する基板保持台41と基板カバー42は、上下に合わされてネジ45で止められる。本実施の形態では、4本のネジ45で基板保持台41と基板カバー42が止められる。ネジ45の止め位置は、
図9に示すように、上から見た状態において筐体1の開口部18の内側である。すなわち、ネジ45は、筐体1の前壁上部111よりも後方(
図9の紙面上側)かつ後壁12よりも前方(
図9の紙面下側)にて止め付けられ、上から見たときに張り出し壁113で隠れない。このため、誘導加熱調理器100を組み立てる際には、組み立て作業者は筐体1の開口部18を上からのぞき込むことで、ネジ45の締め忘れの確認を容易に行うことができる。また、誘導加熱調理器100のメンテナンスを行うメンテナンス作業者は、筐体1の開口部18からドライバーを挿入してネジ45を外すことで、風路ユニット40全体を筐体1から取り出すことなく、基板カバー42を取り外して基板カバー42内の部品を確認することができるので、作業効率がよい。
【0046】
[誘導加熱調理器の動作及び作用]
次に、実施の形態に係る誘導加熱調理器100の動作及び作用を説明する。ここでは、
図3を参照して、冷却ファン43が動作することによって生じる冷却風の流れを中心に説明する。
加熱コイル7が設けられた加熱口3で加熱調理を行う場合、使用者が天板部2の加熱口3の上に鍋等の被加熱物を載置して操作部4に加熱開始の指示を入力すると、インバーター回路基板20から加熱コイル7に高周波電力が供給され、天板部2の上に載置された被加熱物が誘導加熱される。そして、冷却ファン43が動作を開始する。
【0047】
図3に示すように、冷却ファン43が動作すると、冷却ファン43の吸引作用により、筐体1の外側の空気が背面吸気口14から筐体1の内部へと吸い込まれ、第一吸気風路61内に冷却ファン43へ向かう空気の流れが形成される。筐体1とキッチンキャビネット200の落とし込み穴205との間には通風可能な空間が設けられており、落とし込み穴205内の空気が筐体1内へと吸い込まれる。また、落とし込み穴205は吸気用開口部207を介してキッチンキャビネット200の外部と連通しているため、キッチンキャビネット200の外部の空気、すなわちキッチン内の空気が、背面吸気口14から筐体1内へと吸い込まれることになる。
【0048】
また、冷却ファン43が動作すると、冷却ファン43の吸引側と連通する前面吸気口15にも吸引力が生じ、筐体1の外部の空気が前面吸気口15を通って筐体1の内部へと吸い込まれ、第二吸気風路62内に冷却ファン43へ向かう空気の流れが形成される。第二吸気風路62内には、電源基板30が配置されており、第二吸気風路62内を流れる冷却風が電源基板30の周囲を通過することで電源基板30が冷却される。なお、第二吸気風路62内の冷却風の流れ方向と直交する方向における電源基板30の断面積(最大値)は、同方向における第二吸気風路62の断面積よりも小さく、電源基板30が第二吸気風路62内の冷却風の流れをせき止めることはない。本実施の形態では、冷却ファン43の吸引側が筐体1の後方寄りに配置されているのに対し、第二吸気風路62の入口である前面吸気口15は筐体1の前面に形成されているので、第二吸気風路62の距離を確保することができ、筐体1内の張り出し壁113の下側の空間を、被冷却部品の冷却のためのスペースとして有効に活用できる。
【0049】
第二吸気風路62を流れ、電源基板30の周囲を通過するときに電源基板30の熱で加温された空気は、冷却ファン43の吸引側において第一吸気風路61を流れる空気に合流する。第一吸気風路61を流れる空気は、筐体1の外部から吸引された比較的低温の空気(室温)であるので、第二吸気風路62を通過し加温された空気よりも低温化された空気が、冷却ファン43から送出される。このため、冷却ファン43の吐出側に配置された部品を、効率よく冷却することができる。
【0050】
冷却ファン43から送出された冷却風の一部は、第一吹出風路63、すなわち基板カバー42の内部を流れ、インバーター回路基板20の周囲を通過する。インバーター回路基板20の周囲を冷却風が通過することで、インバーター回路基板20に実装されたヒートシンク23が冷却され、これによってスイッチング素子22も冷却されて高温化が抑制される。インバーター回路基板20のスイッチング素子22は、誘導加熱調理器100内の部品の中でも特に高温化しやすいものであるが、冷却ファン43の吐出側にインバーター回路基板20が配置されているため、冷却ファン43から送出される冷却風の多くがインバーター回路基板20に供給され、インバーター回路基板20を効率的に冷却することができる。そして、第一吹出風路63を通過した冷却風は、基板カバー42の上面に形成された冷却風吹出口421から吹き出される。冷却風吹出口421は、風路ユニット40が筐体1に組み込まれた状態において筐体1の張り出し壁113よりも後方位置に開口しており、冷却風吹出口421から吹き出された冷却風が張り出し壁113に衝突することなくスムーズに加熱コイル7に流れる。
【0051】
冷却風吹出口421から吹き出された冷却風は、冷却風吹出口421の上に配置された加熱コイル7に吹き付けられて加熱コイル7の近傍を通過し、加熱コイル7の近傍を通過する冷却風によって加熱コイル7が冷却される。
【0052】
また、冷却ファン43から送出された冷却風の一部は、第二吹出風路64、すなわち基板カバー42とダクト形成部材50との間に形成された風路を流れ、その後、ダクト形成部材50の前端部よりも前側に形成された隙間から上に向かって進み、加熱コイル7に吹き付けられて加熱コイル7の近傍を通過する。第二吹出風路64から送られる冷却風が加熱コイル7の近傍を流れることで、加熱コイル7が冷却される。第二吹出風路64内には発熱部品が配置されていないため、第二吹出風路64から加熱コイル7に供給される冷却風は、第一吹出風路63から加熱コイル7に供給される冷却風よりも低温であり、加熱コイル7を効率よく冷却することができる。また、冷却ファン43から送出された冷却風は、第一吹出風路63と第二吹出風路64に一旦は分流するものの、その後合流して加熱コイル7に吹き付けられるので、加熱コイル7を効率よく冷却することができる。また、第一吹出風路63を通過する際にインバーター回路基板20の熱で加温された冷却風は、第二吹出風路64から吹き出される比較的低温の冷却風と混ざって低温化するため、加熱コイル7の冷却効率の低下を抑制できる。
【0053】
加熱コイル7の周囲を通過する冷却風は、天板部2の下面に沿って排気口17が形成された天板部2の後方に向かって流れる。排気口17の下側に設けられたダクト形成部材50が、冷却ファン43の吸引側の上方を覆っているので、冷却ファン43から吹き出されインバーター回路基板20や加熱コイル7等の熱で加温された冷却風が冷却ファン43の吸引側に再吸気されるのを防ぐことができる。また、ダクト形成部材50を設けたので、風路ユニット40の上方にも排気口17を設けた場合であっても、その排気口17から筐体1内に流入した液体や異物が筐体1内の部品に影響を与えるのを抑制することができる。したがって、筐体1内の部品の故障が低減され、長期間にわたって使用することのできる誘導加熱調理器100を得ることができる。また、風路ユニット40の上方に排気口17を設けることができるので、
図1に示したように天板部2の左右両側にわたって排気口17を形成することができる。したがって、天板部2の左右いずれか一方にのみ排気口17を形成する従来の誘導加熱調理器と比べて排気口17の面積を拡大することができるので、圧力損失が低下して風量が増加し、冷却効率を高めることができる。また、圧力損失が低下するため、冷却ファン43の回転数を低くすることができ、冷却ファン43の運転に伴う騒音を低減することができる。
【0054】
そして、天板部2の下面に沿って後方に流れた冷却風は、排気口17から誘導加熱調理器100の外部へと流出する。排気口17は天板部2の後方に設けられているため、排気口17から流出する空気はキッチン内を循環しやすく、キッチンの部分的な温度上昇を抑制することができる。また、本実施の形態では、天板部2の後方に設けられた排気口17から排気が行われるのに対し、筐体1内に冷却風として供給される空気は誘導加熱調理器100の前方の空気であるので、誘導加熱調理器100から排気された高温の空気が高温のまま吸気されるということも生じにくく、冷却効率の低下を抑制することができる。また、筐体1内には室温に近い空気がほぼ定常的に供給されるので、冷却効率を安定的に維持することができる。
【0055】
また、天板部2には吸気口を設けていないため、天板部2に吸気口と排気口の両方を設ける場合と比べて、排気口17の開口面積を大きくすることができる。特に本実施の形態では、2つの排気口17の幅寸法の合計は、筐体1の幅寸法と同程度である。このように排気口17の開口面積を大きくすることで、開口面積が小さい場合よりも排気口17における円滑な排気が行え、効率よく冷却風を循環させることができる。
【0056】
また、背面吸気口14と前面吸気口15という2つの吸気口が設けられているので、1つの吸気口を設けた場合よりも吸気面積を拡大されて冷却風量が増加し、冷却効率を向上させることができる。また、背面吸気口14と前面吸気口15は、天板部2とは異なる方向に面しているので、加熱調理によって天板部2の上側に生じる蒸気や油煙が背面吸気口14及び前面吸気口15から吸い込まれにくい。したがって、蒸気や油煙が冷却風と一緒にインバーター回路基板20や電源基板30等の部品の周囲を流れることによる部品の故障を抑制することができる。
【0057】
また、背面吸気口14と前面吸気口15という複数の吸気口を設けるとともに、それぞれを入口とする第一吸気風路61と第二吸気風路62という複数の吸気風路を設けているが、冷却ファン43は吸引側を一箇所のみ有する軸流ファンであるため、複数の吸気風路を通過した空気は冷却ファン43の吸引側(上流)で混合される。したがって、複数の吸気風路のいずれかを被冷却部品を冷却するための風路として利用した場合であっても、被冷却部品によって加温された空気がその温度のまま冷却ファン43から送出されることはなく、冷却ファン43の吐出側に配置された被冷却部品の冷却効率への影響を小さくすることができる。
【0058】
また、上記のように本実施の形態の誘導加熱調理器100は、筐体1の内部の被冷却部品を効率よく冷却できるので、冷却ファン43の回転数を抑制することができる。したがって、冷却ファン43の消費電力及び騒音を抑制することができる。
【0059】
なお、本実施の形態では、筐体1の後壁12に背面吸気口14を設ける例を示したが、背面吸気口14を設けなくてもよいし、筐体1の側壁13にさらに別の吸気口を形成してもよい。吸気面積を増やすと圧力損失が低減されて冷却効率を高めることができるため、筐体1内の部品の冷却に必要な冷却風量を考慮して、筐体1の後壁12及び側壁13に吸気口を設ければよい。
【0060】
また、本実施の形態では、第二吸気風路62に電源基板30を配置した例を示したが、基板保持台41と基板カバー42との間に電源基板30を設置するスペースがある場合にはそのスペースに電源基板30を配置してもよい。
また、第二吸気風路62に、例えば複数の加熱コイル7のうちの一部を駆動するインバーター回路基板等の被冷却部品を設置してもよい。
また、第二吸気風路62に、前面吸気口15から外部の空気を吸い込んで冷却ファン43の吸引側に向けて送る第二の冷却ファンを設置してもよい。
【0061】
また、上記実施の形態では、冷却ファン43として軸流ファンを設ける例を示したが、複数の風路から吸引される空気をファンの上流側にて合流させることのできる風路構成であれば、他のファン(送風装置)を用いることができる。