(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6198919
(24)【登録日】2017年9月1日
(45)【発行日】2017年9月20日
(54)【発明の名称】球面継手
(51)【国際特許分類】
B63B 35/00 20060101AFI20170911BHJP
F16C 11/06 20060101ALI20170911BHJP
F03D 13/25 20160101ALI20170911BHJP
【FI】
B63B35/00 T
F16C11/06 L
F03D13/25
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-195478(P2016-195478)
(22)【出願日】2016年10月3日
(62)【分割の表示】特願2014-54749(P2014-54749)の分割
【原出願日】2014年3月18日
(65)【公開番号】特開2017-47899(P2017-47899A)
(43)【公開日】2017年3月9日
【審査請求日】2016年10月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】510314895
【氏名又は名称】町筋 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100076406
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 勝徳
(74)【代理人】
【識別番号】100117097
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 充浩
(72)【発明者】
【氏名】町筋 賢治
【審査官】
前原 義明
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−7380(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2003/0068193(US,A1)
【文献】
実開平3−58327(JP,U)
【文献】
特開昭62−155322(JP,A)
【文献】
特開平11−301582(JP,A)
【文献】
特開2006−131025(JP,A)
【文献】
特開昭47−11863(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63B 35/00
F03D 13/25
F16C 11/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
浮力を確保するための複数の浮体、及び前記浮体を連結する複数の連結梁を含む複数の被結合部材を備えた浮揚式構造物の少なくとも2つの被結合部材の位置関係を変更可能に連結する球面継手であって、
球面をなす外面、前記外面と同心の球面からなる内壁を備えた内室、及び前記内室と前記外面とを連絡する少なくとも2個の円錐孔を有する球形ソケットと、
前記内室に収容される中心球と、
前記中心球と前記内室の内壁との間に挿設され内面が前記中心球の表面を摺動するとともに外面が前記内室の内壁を摺動する球面板、及び前記球面板の外面から前記円錐孔を貫通するよう延出する連結桿を有する球面スタッドと、
前記球形ソケットの外面に密着する凹球面を有し前記凹球面により前記球形ソケットを面摺動可能に挟持するとともに、前記球面スタッドを固定支持する少なくとも2個の球座と、
前記球面スタッド、及び前記球座を固定支持する少なくとも2個の連結フランジと、
を備え、
前記中心球は、前記内室より小径かつ前記円錐孔の内室側開口より大径に形成され、
前記球面スタッドの球面板の外周端は、前記円錐孔の内室側開口より大径の円形に形成されていることを特徴とする球面継手。
【請求項2】
前記球形ソケットは、外面と内壁の間の部分が中空構造になっておりウレタンフォームが充填されている請求項1に記載の球面継手。
【請求項3】
前記球面継手は、
前記球座と前記連結フランジの間に弾性部材を有し、
前記球座が、前記連結フランジに対し、離接可能に前記連結フランジに支持されている請求項1、又は請求項2に記載の球面継手。
【請求項4】
前記球面継手は、
前記少なくとも2個の連結フランジ間に設けられる筒状の蛇腹部材により水密に被包されている請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の球面継手。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、洋上で風力発電装置等を支持する浮揚式構造物が波から受ける力を緩衝する球面継手に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、風力発電事業は、陸上に比べ安定して強い風力が得られる洋上に活路を見出し、遠浅海域の少ない日本においては、コスト高となる着床式に代えて浮体式風力発電装置の実証実験が進められている。
【0003】
ところが、現在進められている浮体式風力発電装置は、コスト面の問題を除いたその他の技術的問題を解決するための実証実験であり、商業ベースに乗せるための課題の多くを今後に残している。
【0004】
そこで、本発明者は、このコスト的課題を解決するために鋭意検討を行ったところ、現在実証実験が進められている風力発電装置は、風車や変電所等の設備を1つずつ別の浮体に載置する形式(特許文献1参照)であることがコスト高の一因であると考え、複数の浮体を水平梁にて連結した複数の設備を載置可能な浮揚式構造物に想到した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012−201192号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、かかる構造では浮体を連結する梁に大きな波の力が加わるため、継手部に多大な強度が要求されるという問題が有る。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、複数の風車や変電所を載置可能な大きさを備えるとともに、波から大きな力が加わっても破損しにくい浮揚式構造物を可能にする球面継手の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するためになされた本発明に係る球面継手は、浮力を確保するための複数の浮体、及び前記浮体を連結する複数の連結梁を含む複数の被結合部材と、前記複数の被結合部材のうち複数の被結合部材の位置関係を変更可能に当該複数の被結合部材を連結する複数の可動継手を備える浮揚式構造物の当該可動継手に用いられる。
【0008】
このように、可動継手を用いた浮揚式構造物は、可動継手により浮体や連結梁等の被結合部材が互いの位置関係を変更可能に構成されているため、波のうねりに合わせて浮揚構造物の全体形状を変形させて波からの力を緩衝することができる。
【0009】
前記複数の可動継手のうち少なくとも一部が球面継手であることが好ましい。こうすることで、当該可動継手に連結される被結合部材を連結方向に角度を有する前後左右全ての方向へ揺動させることができる。
【0010】
前記複数の可動継手のうち少なくとも一部が弾性部材を備え、前記弾性部材により連結方向に伸縮可能に構成される伸縮継手であることが好ましい。こうすることで、当該可動継手に連結される被結合部材間において連結方向に加わる引張り力や圧縮力を緩衝することができる。
【0011】
前記複数の可動継手のうち少なくとも一部が、球面継手であり、かつ弾性部材を備え、前記弾性部材により連結方向に伸縮可能に構成される伸縮継手を兼ねる球面継手であることが好ましい。こうすることで、可動継手に連結される被結合部材の位置関係をより自在に変更することが可能であるため、波による力をより効率的に緩衝することができる。
【0012】
本発明の球面継手を用いた浮揚式構造物は、前記複数の浮体が平面視で正三角形の3つの頂点に配設された3つの外側浮体を含み、前記複数の連結梁は、当該正三角形の頂点に配設された浮体を連結する外枠用連結梁を含み、前記外側浮体と、前記外枠用連結梁とが前記伸縮継手を兼ねる球面継手で連結されていることが好ましい。こうすることで、当該正三角形をなす構成が変形可能となり、効率的に波の力を緩衝することができる。
【0013】
前記複数の浮体は、前記正三角形の重心位置に配設される中央浮体をさらに含み、前記外枠用連結梁は、長さ方向の両端部をなす外枠両端部連結梁と、中間部分をなす外枠中間部連結梁とからなり、前記外枠両端部連結梁と前記外枠中間部連結梁とが前記伸縮継手を兼ねる球面継手により連結されており、前記複数の連結梁は、前記中央浮体から外側方へ放射状に延出して前記中央浮体と前記外枠中間部連結梁とを連結する内側連結梁とを含み、前記中央浮体と前記内側連結梁とが前記球面継手により連結されていることが好ましい。こうすることで当該正三角形の構造により大きい浮力と大きい強度を持たせることが可能となり、より多くの設備を載置することができる。
【0014】
そして、本発明の球面継手は、浮力を確保するための複数の浮体、及び前記浮体を連結する複数の連結梁を含む複数の被結合部材を備えた浮揚式構造物の少なくとも2つの被結合部材の位置関係を変更可能に連結する球面継手であって、球面をなす外面、前記外面と同心の球面からなる内壁を備えた内室、及び前記内室と前記外面とを連絡する少なくとも2個の円錐孔を有する球形ソケットと、前記内室に収容される中心球と、前記中心球と前記内室の内壁との間に挿設され内面が前記中心球の表面を摺動するとともに外面が前記内室の内壁を摺動する球面板、及び前記球面板の外面から前記円錐孔を貫通するよう延出する連結桿を有する球面スタッドと、前記球形ソケットの外面に密着する凹球面を有し前記凹球面により前記球形ソケットを面摺動可能に挟持するとともに、前記球面スタッドを固定支持する少なくとも2個の球座と、前記球面スタッド、及び前記球座を固定支持する少なくとも2個の連結フランジと、を備え、前記中心球は、前記内室より小径かつ前記円錐孔の内室側開口より大径に形成され、前記球面スタッドの球面板の外周端は、前記円錐孔の内室側開口より大径の円形に形成されていることを特徴とする。
前記球形ソケットは、外面と内壁の間の部分が中空構造になっておりウレタンフォームが充填されていることが好ましい。
【0015】
このように、本発明に係る球面継手は、球面スタッドが中心球の表面を摺動するように構成され、球面スタッドの連結桿が連結フランジに連結されているため、当該球面継手により連結された被結合部材に回転方向の力が加わった際に、連結フランジが中心球の回りに揺動し、被結合部材に加わる外力を緩衝することができる。また、本発明に係る球面継手は、中心球の表面を摺動する球面スタッドの球面板が外側から球形ソケットに覆われており、中心球は、内室より小径かつ円錐孔の内室側開口より大径に形成され、球面スタッドの球面板の外周端は、円錐孔の内室側開口より大径の円形に形成されているため、球面スタッドが球体ソケットから抜け難く、引っ張り方向の力に強い。
【0016】
本発明の球面継手は、前記球座と前記連結フランジの間に弾性部材を有し、前記球座が、前記連結フランジに対し、離接可能に前記連結フランジに支持されていることが好ましい。こうすることで球面継手の連結方向に加わる引張り力や圧縮力を緩衝することができる。
【0017】
本発明の球面継手は、前記少なくとも2個の連結フランジ間に設けられる筒状の蛇腹部材により水密に被包されていることが好ましい。こうすることで、球面継手の海水による腐食や貝類等の付着を抑制して耐用期間を延長できる。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように、本発明の球面継手によれば、より多くの設備を載置可能な浮揚式構造物を提供することができるため、洋上風力発電装置のコストを大きく低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の第1実施形態の球面継手を用いた浮揚式構造物の平面図である。
【
図3】
図1に示した浮揚式構造物の外側浮体周辺を示す(a)部分平面図、(b)部分正面図である。
【
図4】
図1に示した中央浮体周辺を示す(a)部分平面図、(b)部分正面図である。
【
図5】本発明の第1実施形態に係る球面継手を示す断面図である。
【
図6】
図5に示した球面継手が屈曲した様子を示す断面図である。
【
図7】本発明の第1実施形態に係る伸縮継手を兼ねる球面継手の断面図である。
【
図8】
図7の伸縮継手を兼ねる球面継手が伸長した様子を示す断面図である。
【
図9】
図7の伸縮継手を兼ねる球面継手が収縮した様子を示す断面図である。
【
図10】
図7の伸縮継手を兼ねる球面継手が屈曲した様子を示す断面図である。
【
図11】本発明の第2実施形態に係る球面継手を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、適宜図面を用いながら本発明の実施形態について詳述する。
(第1実施形態)
図1、
図2は、本発明の第1実施形態に係る球面継手6、及び球面継手7を用いた、風力発電装置W及び変電所Tを載置するための浮揚式構造物100を示している。浮揚式構造物100は、
図1に示すように、平面視で略正三角形をなし、該正三角形の頂点に位置する3つの外側浮体1と、該正三角形の略重心部に位置する中央浮体2と、該正三角形の辺に相当する外枠を構成し、隣り合う外側浮体1を連結する外枠両端部連結梁3及び外枠中間部連結梁4からなる外枠用連結梁と、中央浮体2を外枠中間部連結梁4に連結する内側連結梁5と、中央浮体2を内側連結梁5に連結する3つの球面継手6と、外側浮体1を外枠両端部連結梁3に、又は外枠両端部連結梁3を外枠中間部連結梁4に連結する計12個の伸縮継手を兼ねた球面継手7と、を主に備えている。
【0021】
図1、
図2に仮想線で示すように、外側浮体1に風力発電装置Wが載置される。3台の風力発電装置Wの風車部分は、風上側(
図1の手前側、
図2の左右)の風車の後流が、風下側(
図1の奥側、
図2の中央)の風車に干渉しないよう、左右の風車を低くし、
図2中央の風車を高くしている。また、外側浮体1及び中央浮体2は、係留索9及びアンカー10により海底に係留されている。尚、図中符号Fは、浮揚式構造物100が設置される海
域を、より有効に利用するための養魚網を示している。
【0022】
外側浮体1は、
図3(b)に示すように、上下端が密封された中空円筒状をなし海面に対し垂設される浮体本体11と、浮体本体11の側面から外側方へ放射状に延出する6本の連結枝12と、連結枝12を支持する傾斜梁13,14を備えている。連結枝12の突出方向先端には、球面継手7を連結するための盲フランジ121が設けられている。浮体本体11、連結枝12.及び傾斜梁13,14は、端部や連結部が密封されて内部にウレタンフォームが充填されている。このように、浮体本体11、連結枝12.及び傾斜梁13,14は、内部にウレタンフォームを充填することで、内部に水が侵入しても浮力を維持することができる。尚、
図3の仮想線は、浮体本体11の上に立設される風力発電装置Wのタワー部である。
【0023】
中央浮体2は、
図4に示すように、外側浮体1と概ね同様の構成を有し、変電所T(図中の仮想線参照)を載置する床板部25を備えている。
【0024】
外枠両端部連結梁3、外枠中間部連結梁4及び内側連結梁5は、
図5乃至
図11に示すように、鋼管の両端部を盲フランジ31,41,51で密封して形成され内部にウレタンフォームが充填されている。
【0025】
球面継手6は、
図5に示すように、球形ソケット61と、球形ソケット61の内部に格納される中心球62と、中心球62を挟んで対向配置される1対の球面スタッド63,63と、球形ソケット61を支承する一対の球座64,64と、球座64を支持するとともに、中央浮体2や内側連結梁5に連結される一対の連結フランジ65,65とを主に備える他、一対の連結フランジ65,65間に設けられる筒状の蛇腹部材66を備えている。
【0026】
球形ソケット61は、球体をなし、外面61aと同心の球面からなる内壁61bを備えた内室61cと、内室61cを挟んで対向する一対の円錐孔61d,61dとを有している。円錐孔61dは内室61c側から拡径しながら外面61a側へ貫通している。球形ソケット61は、
図5に示すように、内壁61bと外面61aの間の部分が中空構造になっており、内部にウレタンフォーム61eが充填されている。また、内室61cと円錐孔61dには、中心球62、球面スタッド63、及び球形ソケット61の互いの摩擦を緩和するために、グリス材61fが充填されている。
【0027】
中心球62は中実の鉄球からなり、一対の球面スタッド63,63に挟持された状態で球形ソケット61の内室61cに格納されている。中心球62は、内室61cより小径に形成され、かつ円錐孔61dの内室側開口61gより大径に形成されている。
【0028】
球面スタッド63は、
図5に示すように、球形ソケット61の内室61cの内壁61bと、中心球62との間に挿設される球面板63aと、球面板63aの外面から円錐孔61dを通って連結フランジ65の方向へ延出する連結桿63bとを有している。球面板63aの外周端は、円錐孔61dの内室側開口61gより大径の円形に形成され、球面継手6に連結方向(
図5の上下方向)の引張力が加わっても球面スタッド63が球形ソケット61から抜けないように構成されている。球面スタッド63は、球面板63aの内面が中心球62の表面を摺動し、外面が内室61cの内壁61bを摺動することで、
図6に示すように、連結桿63bが対向する連結桿63bに対し揺動する。連結桿63bは、連結方向に対し角度を有する前後左右のあらゆる方向に揺動可能である。
【0029】
球座64は、
図5に示すように、球形ソケット61を挟んで連結方向に対向配置され、球形ソケット61の外面61aを挟持するとともに支承する凹球面64aを有している。球座64の先端周縁には、球形ソケット61の円錐孔61dからのグリス材61fの漏れを防止するパッキン64bが設けられている。また、球座64には、球面スタッド63の連結桿63bが固定されており、球座64と球面スタッド63とは一体的に摺動する。
【0030】
連結フランジ65は、
図5に示すように、円板状の盲フランジ部65aと、盲フランジ部65aから球座64を外側から覆うように延出する外筒部65bとを備えている。一対の連結フランジ65,65の外筒部65b,65bは、球形ソケット61を外側から覆う合成ゴム製からなる筒状の蛇腹部材66により水密に連結されている。盲フランジ部65aは、球座64を固定支持するとともに周縁部に設けられたボルト穴により隣接する中央浮体2や内側連結梁5の盲フランジ121、51に連結される。盲フランジ部65aと盲フランジ121,51は、
図5に示すように、カバー8により水密に被覆される。
【0031】
伸縮継手を兼ねた球面継手7は、
図7乃至
図10に示すように、球形ソケット61と、中心球62と、球面スタッド73,73と、球形ソケット61を挟持する一対の球座74,74と、外側浮体1や外枠両端部連結梁3,外枠中間部連結梁4に連結される一対の連結フランジ75,75と、球座74と連結フランジ75の間に配設される片側8個ずつ計16個のコイルバネ(弾性部材)77(図では片側4個ずつ計8個のみ表れる。)と、一対の連結フランジ75,75間を連結する筒状の蛇腹部材76と、を備えている。尚、球面継手7において球面継手6と共通する部材については、共通する符号を付して説明を省略する。
【0032】
連結フランジ75は、
図7に示すように、盲フランジ部75aと、外筒部75bと、外筒部75bの内部を軸方向に並ぶ2室に仕切る仕切部材75cとを備えている。盲フランジ部75aと仕切部材75cの間には4本の支柱75e(
図7には2本のみ表れる)が固設されている。
【0033】
球座74は、凹球面74aと凹球面74aの反対側に延出する円筒状部を備えた球座本体部74cと、盲フランジ部75aと仕切部材75cの間を摺動する有底円筒状の摺動板74dと、仕切部材75cに設けられた摺動孔75dを貫通し球座本体部74cと摺動板74dを連結する4本の支柱74e(
図7には2本のみ表れる)とを備えている。尚、
図7中、符号74f,74gは、球座本体部74cと仕切部材75cの衝突や摺動板74dと仕切部材75c、又は盲フランジ部75aの衝突を緩和する樹脂製のクッション材である。
【0034】
球面スタッド73は、球面板73aと連結桿73bとを備え、連結桿73bは、球座74の球座本体部74cと摺動板74dの両方を貫通するよう設けられるとともに、球座本体部74cと摺動板74dに固設されており、
図7乃至
図9に示すように、球面スタッド73、球座本体部74c、及び摺動板74dは、一体的に連結フランジ75の外筒部75bの内部を軸方向に摺動する。
【0035】
コイルバネ77は、球座74の球座本体部74cと仕切部材75cの間に4つ、摺動板74dと盲フランジ部75aの間に4つの計8つ(
図7では4つのみ表れる)が、支柱74e及び支柱75eに外環挿することで連結棹73dの周囲に等角度間隔となるよう配設されている。
【0036】
上述した構造を有する浮揚式構造物100に波の力が加わると、内側連結梁5及び外枠両端部連結梁3が一体的に球面継手6の周りに回動し外枠両端部連結梁3が球面継手7の周りに回動することにより、例えば、浮揚式構造物100が、
図1、又は
図2に仮想線で示した形状に変形し、浮揚式構造物100に加わる力が緩衝される。
【0037】
浮揚式構造物100は、
図1に仮想線で示したように、複数を横一列に並べて連結することで、より多数の風力発電装置を搭載することができる。浮揚式構造物100は、このように複数を連結した場合であっても、波の力に応じて変形するため、波から受ける力を緩衝することができる。
【0038】
(第2実施形態)
図11は、本発明の第2実施形態に係る球面継手206を用いた浮揚式構造物200において、球面継手206の周辺部を示している。浮揚式構造物200では、浮揚式構造物100の中央浮体2を設けず、3本の内側連結梁5を球面継手206により連結している。尚、浮揚式構造物200は、
図11に示した部分以外は、第1実施形態と共通するため、図示や説明は省略する。
【0039】
球面継手206は、
図11に示すように、球形ソケット261と、球形ソケット261の内部に格納される中心球62と、平面視において、中心球62の周りに等角度間隔で配置される3個の球面スタッド63と、球形ソケット261を支承する3個の球座64と、球座64を支持するとともに、内側連結梁5に連結される3個の連結フランジ65とを主に備える他、3個の連結フランジ65間に設けられる蛇腹部材266を備えている。尚、球面継手206において、球面継手6と共通する部材については、同一符号を付して説明を省略する。
【0040】
本発明の球面継手を用いた浮揚式構造物は、上記の実施形態に限らず、例えば平面視形状が、正三角形に限らず、他の多角形状を有していてもよい。可動継手は、球面継手に限らず、他の公知の継手により被結合部材どうしを揺動させるようにしてもよい。伸縮継手の弾性部材には、オイルダンパー等の他の弾性部材を用いることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明の球面継手は、波の力を効率的に緩衝することができるので、洋上風力発電装置等、洋上に設置されて、波の力を受ける全ての浮揚式構造物に好適に採用できる。
【符号の説明】
【0042】
100,200 浮揚式構造物
1 外側浮体(浮体、被結合部材)
2 中央浮体(浮体、被結合部材)
3 外枠両端部連結梁(連結梁、被結合部材)
4 外枠中間部連結梁(連結梁、被結合部材)
5 内側連結梁(連結梁、被結合部材)
6,206 球面継手(可動継手)
7 伸縮継手を兼ねる球面継手(可動継手、球面継手、伸縮継手)
61,261 球形ソケット
61a 外面
61b 内壁
61c 内室
61d 円錐孔
62 中心球
63,73 球面スタッド
63a,73a 球面板
63b,73b 連結桿
64,74 球座
64a,74b 凹球面
65,75 連結フランジ
66,76,266 蛇腹部材
77 弾性部材