(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
基体表面に塗布され、ペルオキソチタン酸及び赤外線遮蔽剤の微粒子粉末を含むアンダーコート層と、前記アンダーコート層の上に形成されたアナターゼ型酸化チタンの微粒子を含む光触媒層と、を有し、
前記赤外線遮蔽剤の基体表面への塗布量が、0.05g/m2乃至20g/m2(但し0.05g/m2は除く)であり、
前記アンダーコート層に含まれるペルオキソチタン酸の酸化チタンに換算した前記基体への塗布量が、0.05g/m2乃至20g/m2であり、
前記光触媒層のアナターゼ型酸化チタンの前記基体への塗布量が、0.05g/m2乃至20g/m2であることを特徴とする可視光を透過し紫外線、赤外線を遮蔽する光触媒複合塗膜。
前記光触媒層の前記基体表面への塗布量は、アナターゼ型酸化チタンの塗布量と、前記ペルオキソチタン酸層の酸化チタンに換算した質量と、を合計した塗布量が、0.05g/m2乃至20g/m2であり、前記光触媒層のアナターゼ型酸化チタンの質量と、ペルオキソチタン酸の質量と、の比率が、1:0乃至1:2の範囲(但し0は除く)であることを特徴とする請求項4に記載の可視光を透過し紫外線、赤外線を遮蔽する光触媒複合塗膜。
前記アンダーコート液製造工程において、前記赤外線遮蔽剤が、酸化アンチモン、酸化錫、酸化インジューム、酸化ガリウム、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化ニオブ、及びフッ素をドープした金属酸化物から選ばれる1以上であることを特徴とする請求項6に記載の可視光を透過し紫外線、赤外線を遮蔽する光触媒複合塗膜の製造方法。
前記アンダーコート液製造工程において、前記赤外線遮蔽剤が、アンチモンドープ酸化錫、アンチモンドープ酸化亜鉛、ガリウムドープ酸化亜鉛、インジュームドープ酸化錫、及びフッ素ドープ酸化錫から選ばれる1以上であることを特徴とする請求項7に記載の可視光を透過し紫外線、赤外線を遮蔽する光触媒複合塗膜の製造方法。
前記アンダーコート液製造工程において、前記ペルオキソチタン酸水溶液に含まれるペルオキソチタン酸の含有率は、前記ペルオキソチタン酸水溶液の質量を100質量%とし、前記ペルオキソチタン酸の質量を酸化チタンの質量に換算した場合に、0.1質量%乃至10質量%であることを特徴とする請求項6に記載の可視光を透過し紫外線、赤外線を遮蔽する光触媒複合塗膜の製造方法。
前記光触媒液製造工程において、前記光触媒液に含まれるアナターゼ型酸化チタンの含有率は、前記光触媒液の質量を100質量%とした場合に、0.1質量%乃至10質量%であることを特徴とする請求項6に記載の可視光を透過し紫外線、赤外線を遮蔽する光触媒複合塗膜の製造方法。
前記光触媒液製造工程において、前記光触媒液が、更に前記ペルオキソチタン酸水溶液を含むことを特徴とする請求項6に記載の可視光を透過し紫外線、赤外線を遮蔽する光触媒複合塗膜の製造方法。
前記光触媒液製造工程において、前記光触媒液の質量を100質量部とし、前記光触媒溶液に含まれるペルオキソチタン酸の質量を酸化チタンの質量に換算した場合に、アナターゼ型酸化チタンの質量と、ペルオキソチタン酸の質量との合計が0.1質量部乃至20質量部であり、アナターゼ型酸化チタンの質量とペルオキソチタン酸の質量の比率が、1:0乃至1:2の範囲(ただし0は除く)であることを特徴とする請求項11に記載の可視光を透過し紫外線、赤外線を遮蔽する光触媒複合塗膜の製造方法。
【背景技術】
【0002】
太陽光は、地球上の全生命を支える貴重なものであるが、可視光線のエネルギーは太陽光エネルギーの45%に過ぎず、赤外線を50%、紫外線を5%含む。赤外線は熱線であって地球を暖めてくれているが、場合によっては温度を過度に上昇させることがあり、また紫外線は肌にダメージを与えて日焼けさせ、皮膚がんの原因にもなることがあるという問題を有する。
【0003】
一方、通常のガラスは、可視光線だけでなく、赤外線や紫外線も透過させるため、過剰な赤外線及び紫外線の照射は、建造物の窓ガラスのみならず、自動車や列車等の車両の窓ガラス窓でも重大な問題を生じることがある。このため、ガラスに、可視光線のみを透過して紫外線及び赤外線を遮蔽するような機能を付与することが望まれている。
【0004】
太陽光線中の可視光線を透過させつつ赤外線及び紫外線を遮蔽する方法としては、ガラス自体に赤外線と紫外線を遮蔽する作用を付与するか、またはガラスに赤外線及び紫外線を遮蔽する機能を備えた透明フィルム、透明塗料等を適用することが考えられる。
しかし、赤外線と紫外線を遮蔽する機能を備えたガラスは高価であるし、既設の建造物には適用し難い。
【0005】
従来から、赤外線を遮蔽する赤外線遮蔽剤としては、酸化亜鉛と酸化チタンがサンクリームとして使われている。また、金属酸化物である酸化アンチモン、酸化錫、酸化インジューム、酸化ガリウム、酸化イリジウム、及び酸化亜鉛が赤外線遮蔽作用を有することが知られている。中でも、インジュームドープ酸化錫、アンチモンドープ酸化錫、ガリウムドープ酸化亜鉛、及びフッ素ドープ酸化錫のような組成物が優れた性質を示すことが開示されている(例えば
特許文献1を参照)
【0006】
一方、紫外線の遮蔽材は、化粧品の日焼け止めの分野や色素・感光材分野で多くの有機化合物が開示された(例えば特許文献2を参照)。しかし、直射日光に数年間も晒されるという窓ガラスの使用環境を考慮すると、有機化合物は安定性に問題がある。
【0007】
ところで、紫外線遮蔽効果を有する無機物として、アナターゼ型酸化チタンがある。アナターゼ型酸化チタンは、そのバンドギャップより大きいエネルギーを有する光を吸収して酸素を活性酸素に変換する光触媒機能を有し、生成した活性酸素の強力な酸化力に基づき多様な作用効果を示す。例えば建造物の外壁や窓ガラスの外面に塗布・成膜すると、光触媒膜は自己清浄作用を示し、内面に使用すると消臭、殺菌、及び空気清浄作用を示すことが知られている。
【0008】
しかし、市販されている「ナノサイズの酸化チタン粉末」は、1次粒子の粒径はナノスケールであるが、2次粒子は1次粒子が数千個会合した粉末であって粒径が大きく、可視光の透過性に問題があるものが多い。更に、光触媒が生成する活性酸素がフィルムや塗料の基材である高分子樹脂を酸化分解してしまうので、塗料やフィルムにアナターゼ型酸化チタンを配合することができないという問題もある。
【0009】
ここで、特許文献3にはアナターゼ型酸化チタンと、アンチモンドープ酸化錫を含む無機酸化物と、シリカ及びアルミナを含む無機材料と、高分子樹脂樹脂と、からなる組成物が開示され、アナターゼ型酸化チタンが紫外線を吸収して生成する活性酸素が樹脂を破壊するのを無機材料が防御すると記載されている。しかし、開示された無機材料は何れも粉末であって膜を形成するものは含まれていないので、それら無機材料が有機物の樹脂を活性酸素から保護する能力は十分なものではない。
上記のように、遮蔽効果、製造の容易さ、及び価格の観点から満足できる紫外線及び赤外線を同時に遮蔽するガラス用塗膜は開発されていない
。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、かかる問題を解決するためになされたものであって、可視光線を透過し赤外線と紫外線とを遮蔽すると共に光触媒活性を有し、自己洗浄性作用、防汚作用、抗菌作用、防臭作用、空気清浄化作用などを有する複合塗膜を提供することを課題とする。
【0012】
また、本発明の複合塗膜は、光触媒が生成する活性酸素に侵襲されないような複合塗膜を提供することを課題とする。
また本発明は、高温を使用せずに容易で安価な工程によって可視光を透過させ紫外線、赤外線を遮蔽する光触媒複合塗膜の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
かかる課題を解決するための本発明の可視光を透過し紫外線、赤外線を遮蔽する光触媒複合塗膜は、基体表面に塗布され、ペルオキソチタン酸及び赤外線遮蔽剤の微粒子粉末を含むアンダーコート層と、前記アンダーコート層の上に形成されたアナターゼ型酸化チタンの微粒子を含む光触媒層と、を有し、
前記赤外線遮蔽剤の基体表面への塗布量が、0.05g/m
2乃至20g/m
2(但し0.05g/m
2は除く)であり、前記
アンダーコート層に含まれるペルオキソチタン酸の酸化チタンに換算した前記基体への塗布量が、0.05g/m
2乃至20g/m
2であり、前記光触媒層のアナターゼ型酸化チタンの前記基体への塗布量が、0.05g/m
2乃至20g/m
2であることを特徴とする。
【0014】
前記赤外線遮蔽剤が、酸化アンチモン、酸化錫、酸化インジューム、酸化ガリウム、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化ニオブ、及びフッ素から選ばれる1以上であることが好ましい。
前記赤外線遮蔽剤がアンチモンドープ酸化錫、アンチモンドープ酸化亜鉛、ガリウムドープ酸化亜鉛、インジュー
ムドープ酸化錫、及びフッ素ドープ酸化錫から選ばれる1以上であることができる。
【0015】
前記光触媒層のアナターゼ型酸化チタンの塗布量は、0.05乃至20g/m
2であることを特徴とする。
前記アンダーコート層のペルオキソチタン酸の酸化チタンに換算した塗布量は、0.05乃至20g/m
2であることが好ましい。
【0016】
前記光触媒層は、更にペルオキソチタン酸を含むことができる。
前記光触媒層の基体表面への塗布量は、アナターゼ型酸化チタンの塗布量と、ペルオキソチタン酸の酸化チタンに換算した質量と、を合計した塗布量が、0.05乃至20g/m
2であり、アナターゼ型酸化チタンの質量とペルオキソチタン酸の酸化チタンに換算した質量との比率が、1:0乃至1:2の範囲(但し0は除く)であることを特徴とする。
【0017】
また本発明の可視光を透過し紫外線、赤外線を遮蔽する光触媒複合塗膜の製造方法は、チタン原料からペルオキソチタン酸水溶液を製造するペルオキソチタン酸水溶液製造工程と、前記ペルオキソチタン酸水溶液の質量100質量部に対して、0.05質量部乃至20質量部の赤外線遮蔽剤の微粒子を加えてアンダーコート液を製造するアンダーコート液製造工程と、前記アンダーコート液を、基体表面
に塗布し、70℃未満の温度で乾燥して前記ペルオキソチタン酸と前記赤外線遮蔽剤とを含むアンダーコート層を形成するアンダーコート層形成工程と、前記ペルオキソチタン酸水溶液を70℃乃至200℃に加熱してアナターゼ型酸化チタン微粒子の水分散液を含む光触媒液を製造する光触媒液製造工程と、
前記光触媒液を、前記アンダーコート層の上に塗布し乾燥して光触媒複合塗膜を形成する光触媒複合塗膜製造工程と、を有
し、
前記アンダーコート層形成工程において、前記赤外線遮蔽剤の塗布量が0.05g/m2乃至20g/m2(但し0.05g/m2は除く)であり、酸化チタンに換算した前記ペルオキソチタン酸の質量が、0.05g/m2乃至20g/m2になるように前記アンダーコート液を前記基体表面に塗布し、前記光触媒複合塗膜製造工程において、前記光触媒液の塗布量は、酸化チタンの質量が、0.05g/m2乃至20g/m2になるように前記光触媒液液を前記アンダーコート層上に塗布することを特徴とする。
【0018】
前記アンダーコート液製造工程において、赤外線遮蔽剤が、酸化アンチモン、酸化錫、酸化インジューム、酸化ガリウム、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化ニオブ、及びフッ素
をドープした金属酸化物から選ばれる1以上であることができる。
前記アンダーコート液製造工程において、赤外線遮蔽剤が、アンチモンドープ酸化錫、アンチモンドープ酸化亜鉛、ガリウムドープ酸化亜鉛、インジュームドープ酸化錫、及びフッ素ドープ酸化錫から選ばれる1以上であることが好ましい。
【0019】
前記ペルオキソチタン酸水溶液製造工程において、ペルオキソチタン酸水溶液に含まれるペルオキソチタン酸の含有率は、ペルオキソチタン酸水溶液の質量を100質量%とした場合に、ペルオキソチタン酸の質量を酸化チタンの質量に換算し、0.1乃至10質量%であることが好ましい。
前記アンダーコート層形成工程において、ペルオキソチタン酸水溶液中の酸化チタンに換算したペルオキソチタン酸の質量が、0.05乃至20g/m
2になるように、アンダーコート液を基体表面に基材に塗布することが好ましい。
【0020】
前記光触媒複合塗膜製造工程において、光触媒液に含まれるアナターゼ型酸化チタンの含有率は、光触媒液の質量を100質量%とした場合に、0.1乃至10質量%であることが好ましい。
前記光触媒複合塗膜製造工程において、アナターゼ型酸化チタンの塗布量は、0.05乃至20g/m
2になるように光触媒液をアンダーコート層表面に塗布することが好ましい。
【0021】
前記光触媒液製造工程において、光触媒液が、更にペルオキソチタン酸水溶液を含むことを特徴とする。
前記光触媒液製造工程において、光触媒液の質量を100質量部とし、光触媒溶液に含まれるペルオキソチタン酸の質量を酸化チタンの質量に換算した場合に、アナターゼ型酸化チタンの質量と、ペルオキソチタン酸の質量との合計が0.1乃至20質量部であり、アナターゼ型酸化チタンの質量とペルオキソチタン酸の質量の比率が、1:0乃至1:2の範囲(但し0は除く)であることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の可視光を透過し紫外線、赤外線を遮蔽する光触媒複合塗膜は、可視光を透過し紫外線、赤外線を遮蔽するので、太陽光を取り入れながら有害な紫外線と過剰な赤外線を遮蔽することができる。これによって、肌の日焼けを防ぎ、夏季の冷房費を節減できる。特にガラスの広いビルディングや自動車、電車のような乗り物に有効である。
【0023】
本発明の複合塗膜は、光触媒作用を示すので、建造物の外面に塗布すれば光触媒の生成する活性酸素によって外壁の自己清浄化作用を示し、建造物の外見を美しく保つことができる。また室内に適用すれば、塗付した面を清浄に美しく保つ共に、殺菌、消臭、及び空気清浄化作用を示す。
更に、光触媒層にペルオキシチタン酸を加えることによって、光触媒層の強度を増加させることができる。
【0024】
また、本発明の製造方法によれば、光触媒複合塗膜を70℃
〜200℃、より好ましくは100℃以下で容易に製造できる。また、原料も従来使用されていたアルコ
キシチタンよりは安価な原料、例えば四塩化チタンを使用することができ、安価にかつ容易に製造できる。また、本発明の複合塗膜は、既設のガラス構造物にも塗布することができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
(微粒子粉末について)
本発明で「微粒子」は、「大きさが可視光線の波長(380〜780nm)より小さく、屈折率の異なる透明溶液に分散した場合でも分散液が可視光を透過させるような大きさの粒子」という意味で用いる。概略的には「微粒子粉末」は、「大きさが1μm以下の粒子からなる粉末」がこれに相当する。
本発明で用いる酸化チタン微粒子は、例えば特許文献5に記載された粒子径8〜20nmのアナターゼ型酸化チタンであって、水分散液を塗布、乾燥することによって透明な塗膜を形成する。また、ペルオキソチタン酸は水溶液であって塗布、乾燥することによって非結晶性の透明塗膜を形成する。また、酸化チタン微粒子にペルオキソチタン酸を加ええることによって光触触媒の塗膜を強化することができる。赤外線遮蔽剤の微粒子粉末は、市販品を購入することができる。
【0027】
以下に、本発明の実施形態に係る可視光を透過し紫外線、赤外線を遮蔽する光触媒複合塗膜およびその製造方法を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施例に係る可視光を透過し紫外線、赤外線を遮蔽する光触媒複合塗膜の縦断面図である。
図1に示すように、本発明の光触媒複合膜は、透明な基体3に塗布されたペルオキソチタン酸及び赤外線遮蔽剤の微粒子粉末を含むアンダーコート層2と、アンダーコート層2の上に塗布されたアナターゼ型酸化チタン微粒子を含む光触媒複合塗膜1と、を有する。
【0028】
(赤外線遮蔽剤)
本発明で用いる赤外線遮蔽剤は、入射する可視光線は透過させるが赤外線は反射又は/及び吸収することによって遮蔽する無機化合物であれば、特に制限されない。多くの金属酸化物がこのような性質を有することが知られている。好ましい例として酸化アンチモン、酸化錫、酸化インジューム、酸化ガリウム、酸化イリジウム、酸化亜鉛、酸化チタン、及び酸化ニオブを含む金属酸化物を挙げることができるが、本発明の金属酸化物は、これに限らない。
【0029】
前記金属酸化物は、更に少量の金属酸化物又はフッ素をドープすることができる。特に好ましい具体例として、アンチモンドープ酸化錫(ATO)、アンチモンドープ酸化亜鉛、ガリウムドープ酸化亜鉛、酸化インジ
ュームドープ酸化錫(ITO)、及びフッ素ドープ酸化チタン(FTO)を挙げることができる。
【0030】
本発明の紫外線、赤外線遮蔽光触媒複合膜に含まれる赤外線遮蔽剤の量は、好ましくは、0.05乃至20g/m
2であり、より好ましくは0.1乃至15質量部である。赤外線遮蔽剤の量が0.05質量部未満では、充分な赤外線遮蔽効果を示さないことがあり、20質量部を越えても赤外線遮蔽効果はそれ以上増加せず、アンダーコート層の強度が低下することがあり、好ましくない。
【0031】
(ペルオキソチタン酸)
本発明で用いるペルオキソチタン酸は、本発明の実施に支障のないものであれば、何れの方法によって製造したものでも使用することができる。
例えば、特許文献4に記載したように、チタン原料含有水溶液に、反応当量より過剰の
過酸化水素水を加え、次いでアンモニア水を加えて中和し、得られた黄色溶液を放置してペルオキソチタン酸塩を沈殿させ、沈殿をろ取、洗浄し、水に懸濁させて過酸化水素水を加えると、黄色透明なペルオキソチタン酸水溶液が得られる。塗布され、70℃以下で乾燥されて製造されたペルオキソチタン酸は、FT−IRでペルオキソ基の吸収を有し、強い接着性を有する強固な塗膜を形成する非晶質の固体である。
【0032】
(アナターゼ型酸化チタン)
ペルオキソチタン酸水溶液を70℃乃至200℃において、2時間乃至40時間加熱処理してアナターゼ型酸化チタン分散液を製造することができる。
特許文献5に記載されているように、ペルオキソチタン酸水溶液を加熱処理した液を塗布し固化させて形成された膜のX線解析スペクトルは、アナターゼ型酸化チタンに基づくピークを有する。
特許文献5によれば、分散しているアナターゼ型酸化チタンの粒径は8〜20nmである。
【0033】
アンダーコート層の塗布量は、アンダーコート液に含まれるペルオキソチタン酸の質量を酸化チタンの質量に換算して0.05乃至20/m
2になるように塗付することが好ましく、0.1乃至15g/m
2であることがより好ましい。ペルオキソチタン酸の酸化チタン換算塗布量が0.05g/m
2未満ではアンダーコート層として充分な作用を示すことができないことがあり、20g/m
2を越えても製造するのが大変になり、成膜性が低下するだけで効果が上がらないことがある。
【0034】
光触媒層のアナターゼ型酸化チタン微粉末の塗布量は、0.05乃至20g/m
2であることが好ましく、0.1乃至15g/m
2であることがより好ましい。アナターゼ型酸化チタンの塗布量が0.05g/m
2未満では、充分な光触媒活性を示さないことがあり、20g/m
2を越えて塗布しても、塗付するのが大変になり成膜性が低下するだけで、それ以上光触媒活性が増えないことがあり、好ましくない。
【0035】
本発明の他の実施形態は、アナターゼ型酸化チタン微粉末からなる光触媒層に更にペルオキソチタン酸を含ませることによって、光触媒層の成膜性と膜の強度を増加させることができる。
この実施例の光触媒層の塗布量は、アナターゼ型酸化チタンの塗布量と、前記ペルオキソチタン酸層の酸化チタンに換算した質量と、を合計した塗布量が、0.05乃至20g/m
2であることが好ましい。合計した塗布量が0.05g/m
2未満では、充分な光触媒活性を示さないことがあり、20g/m
2を越えて塗布しても、塗付するのが大変になるだけでそれ以上光触媒活性が増えないことがある。
【0036】
また、光触媒層のアナターゼ型酸化チタンの質量とペルオキソチタン酸の質量との比率が、1:0乃至1:2の範囲(但し0は除く)であることが好ましい。ペルオキソチタン酸の比率が小さすぎると、光触媒層の成膜性と膜の強度を増加させることができない場合があり、アナターゼ型酸化チタンの質量とペルオキソチタン酸の質量との比率が1:2を越えると、光触媒効果及び紫外線の遮蔽効果が低くなる可能性がある。
【0037】
以下に、本発明の1実施例に係る光触媒膜複合膜の製造方法について説明する。
図2は、本発明の可視光を透過し紫外線、赤外線を遮蔽する光触媒複合塗膜の製造方法を示すブロック図である。
図2に示すように、本発明は、チタン材料からペルオキソチタン酸水溶液を製造するペルオキソチタン酸水溶液製造工程と、ペルオキソチタン酸水溶液と赤外線遮蔽剤を混合してアンダーコート液を製造するアンダーコート液製造工程と、ペルオキソチタン酸水溶液を加熱してアナターゼ型酸化チタン微粉末の水分散液を製造する光触媒液製造工程と、基体の上にアンダーコート液を塗布し乾燥させるアンダーコート層形成工程
と、該アンダーコート層の上に光触媒液を塗布して乾燥させる光触媒複合塗膜製造工程と、を有する。
【0038】
(ペルオキソチタン酸水溶液製造工程)
本発明でアンダーコート層の製造に用いるペルオキソチタン酸水溶液は、本発明の実施に支障のないものであれば、何れの方法によって製造したものでも使用することができる。例えば、特許文献6に記載されているように、チタン原料含有水溶液に、反応当量より過剰の過酸化水素水を加え、次いでアンモニア水を加えて中和し、得られた黄色溶液を放置してペルオキソチタン酸塩を沈殿させ、沈殿をろ取・洗浄し、水に懸濁させて過酸化水素水を加えると、黄色透明なペルオキソチタン酸水溶液が得られる。
ペルオキソチタン酸水溶液を塗布し、乾燥して得た塗膜は、赤外線吸収スペクトルでペルオキソ基に基づく吸収を示す非結晶性固体である。
【0039】
ペルオキソチタン酸水溶液に含まれるペルオキソチタン酸の含有率は、前記ペルオキソチタン酸水溶液の質量を100質量%とした場合に、ペルオキソチタン酸の質量を酸化チタンの質量に換算し、0.1乃至10質量%であることが好ましい。ペルオキソチタン酸の含有量が0.1質量%未満では、ペルオキソチタン酸の量が少なすぎて十分な厚さのアンダーコート層を形成することができないことがある。一方、ペルオキソチタン酸水溶液の濃度は高い方が好ましいが、ペルオキソチタン酸濃度が10質量%を越えるようなペルオキソチタン酸を製造するのは困難な場合がある。
【0040】
(アンダーコート液製造工程)
ペルオキソチタン酸水溶液に赤外線遮蔽剤の微粒子粉末を加えてアンダーコート液を製造する。アンダーコート液に含まれる赤外線遮蔽剤の量は、アンダーコート液の質量を100質量部とした場合に、0.1乃至20質量部であることが好ましい。赤外線遮蔽剤の量が0.05質量部以下では、充分な赤外線遮蔽効果を示さないことがあり、20質量部を越えて加えても赤外線遮蔽効果はそれ以上増加せず、アンダーコート層の強度が低下することがあり、好ましくない。
【0041】
(光触媒液製造工程)
本発明で光触媒液であるアナターゼ型酸化チタン微粉末の水分散液を製造する工程は、ペルオキソチタン酸水溶液を70℃乃至200℃において、2時間乃至40時間、好ましくは80乃至120℃で3乃至30時間、最も好ましい実例として90℃乃至100℃未満で5乃至20時間の加熱処理をしてアナターゼ型酸化チタン微粉末の分散液を製造することができる。加熱温度が70℃以下では、反応に時間がかかりすぎて好ましくなく、200℃以上に加熱しても、反応が速くなりすぎて制御が困難になると共に、水の沸騰を抑える加圧装置が大掛かりになるだけでそれに見合う効果がない。
特許文献5に記載されているように、ペルオキソチタン酸水溶液を加熱処理した液を塗布し固化させて形成された膜のX線解析スペクトルは、アナターゼ型酸化チタンに基づくピークを有する。
【0042】
光触媒液に含まれるアナターゼ型酸化チタンの含有率は、光触媒液の質量を100質量%とした場合に、0.1乃至10質量%であることが好ましい。アナターゼ型酸化チタンの含有量が0.1質量%未満では、アナターゼ型酸化チタンの量が少なすぎて十分な厚さの光触媒層を形成することができないことがあり、アナターゼ型酸化チタンが10質量%を越えるようなアナターゼ型酸化チタン水溶液は、製造するのは困難な場合がある。
【0043】
(アンダーコート層製造工程)
アンダーコート液を基体に塗布し70℃以下で乾燥させてアンダーコート層を製造することができる。アンダーコート液の塗布量は、基体の表面積1平方メートル当たり前記アンダーコート液を、酸化チタンに換算したペルオキソチタン酸の質量が、0.05乃至20gになるように塗布することが好ましく、1平方メートル当たり0.1乃至15gになるように塗付することがより好ましい。基体の表面積1平方メートル当たり0.05g未満では十分な厚さ及び強度を有するアンダーコート層を形成できないことがあり、均一に塗布するのも困難である。また、1平方メートル当たり20gを超える量を塗布するためには複数回重ね塗りしなければならないので、製造された塗膜の成膜性が悪くなって塗膜が不均一になり、経済的にも好ましくない。
【0044】
(光触媒複合塗膜製造工程)
アンダーコート層の上に光触媒液を塗布し乾燥させて光触媒複合塗膜を形成することができる。光触媒液の塗布量は、前記光触媒液を前記アンダーコート層に、酸化チタンの質量が基体の表面積1平方メートル当たり0.05乃至20gになるように塗布することが好ましく、1平方メートル当たり0.1乃至15gであることがより好ましい。0.05g/m
2未満では十分な厚さ及び強度を有する光触媒層を形成できないことがあり、均一に塗布するのも困難である。また、1平方メートル当たり20g/m
2を超える量を塗布するためには複数回重ね塗りしなければならないので、製造された塗膜が不均一になり、塗膜に裂け目が入る恐れがあり、経済的にも好ましくない。
【0045】
[製造例1]
<5.0質量%濃度のペルオキソチタン酸水溶液の製造>
四塩化チタンの60%(質量/容量)水溶液39.6mLを蒸留水で4000mLとした溶液に、2.5%(質量/容量)のアンモニア水440mLを滴下して水酸化チタンを沈殿させた。沈殿物をろ取し、蒸留水で洗浄後、蒸留水を加えて80mLとした水酸化チタン懸濁液に、30%(質量/容量)の過酸化水素水、80mLを加えて攪拌した。7℃において24時間放置して余剰の過酸化水素水を分解させさらに水を加えて、酸化チタン換算で5質量%濃度のペルオキソチタン酸水溶液200gを得た。
【0046】
[製造例2]
<1.0質量%濃度のペルオキソチタン酸水溶液の製造>
四塩化チタンの60%(質量/容量)水溶液39.6mLを蒸留水で4000mLとした溶液に、2.5%(質量/容量)のアンモニア水、440mLを滴下して水酸化チタンを沈殿させた。沈殿物をろ取し、蒸留水で洗浄後、蒸留水を加えて720mLとした水酸化チタン懸濁液に、30%(質量/容量)の過酸化水素水、80mLを加えて攪拌した。7℃において24時間放置して余剰の過酸化水素水を分解させ、更に水を加えて、酸化チタン換算で1.0質量%濃度のペルオキソチタン酸水溶液1000gを得た。なお、0.1質量%濃度のペルオキソチタン酸水溶液は、1.0質量%濃度のペルオキソチタン酸水溶液を水で希釈して製造した。
【0047】
[製造例3]
<10質量%濃度のペルオキソチタン酸水溶液の製造>
四塩化チタンの60%(質量/容量)水溶液39.6mLを蒸留水で4000mLとした溶液に2.5%(質量/容量)のアンモニア水、440mLを滴下して水酸化チタンを沈殿させた。沈殿物をろ取し、蒸留水で洗浄後、30%(質量/容量)の過酸化水素水、80mLを加えて攪拌した。7℃において24時間放置して余剰の過酸化水素水を分解させ、更に水を加えて、酸化チタン換算で10質量%濃度のペルオキソチタン酸水溶液100gを得た。
【0048】
[製造例4]
<1.0質量%濃度のアナターゼ型酸化チタン分散液の製造>
製造例1で得た1.0質量%ペルオキソチタン酸水溶液1000gを耐圧ガラス容器に密閉し、水浴中で12時間煮沸(98〜100℃)して、淡黄色半透明の1.0質量%のアナターゼ型酸化チタン水分散液1000gを得た。なお、0.1質量%濃度のアナターゼ型酸化チタン分散液は、1.0質量%濃度のアナターゼ型酸化チタン分散水溶液を水で希釈して製造した。
【0049】
[製造例5]
<5.0質量%濃度のアナターゼ型酸化チタン分散液の製造>
製造例2で得た5.0質量%ペルオキソチタン酸水溶液200gを耐圧ガラス容器に密閉し、水浴中で12時間煮沸(98〜100℃)して、淡黄色半透明の5.0質量%のアナターゼ型酸化チタン水分散液200gを得た。
【0050】
[製造例6]
<10質量%濃度のアナターゼ型酸化チタン分散液の製造>
製造例3で得た10質量%ペルオキソチタン酸水溶液100gを耐圧ガラス容器に密閉し、水浴中で12時間煮沸(98〜100℃)して、淡黄色半透明の10質量%のアナターゼ型酸化チタン水分散液100gを得た。
【0051】
[製造例7]
<赤外線遮蔽剤の製造−1、アンチモンドープ酸化錫:ATO>
酸化錫微粒子(SN−100P、石原産業、粒子径0.01〜0.03μm)9.0質量部に、メノウ乳鉢で粉末化した三酸化アンチモン1.0質量部を加え撹拌機で撹拌、混合してアンチモンドープ酸化錫10.0質量部を製造した。
[製造例8]
<赤外線遮蔽剤の製造−2、インジュームドープ酸化錫:ITO>
酸化錫微粒子(SN−100P、石原産業、粒子径0.01〜0.03μm)9.0質量部に、メノウ乳鉢で粉末化した酸化インジューム1.0質量部を加え撹拌機で撹拌、混合して10質量部のインジュームドープ酸化錫を製造した。
【0052】
[実施例1]
<アンダーコート液製造工程−1>
製造例1で製造した5.0質量%濃度のペルオキソチタン酸水溶液100gに製造例7で製造した赤外線遮蔽剤5gを加え、撹拌機で撹拌してアンダーコート液105gを製造した。
<アンダーコート層製造工程−2>
前記アンダーコート液105gを、面積が1平方メートルの清浄な硝子板にスプレーコーターを用いて塗布し、40℃以下で乾燥してアンダーコート層を製造した。
<光触媒複合塗膜製造工程>
面積が1平方メートルの前記アンダーコート層に、製造例5で製造した5.0質量%濃度のアナターゼ型酸化チタン分散液100gを、スプレーコーターを用いて均一に塗布し、40℃以下で乾燥して実施例1の光触媒複合塗膜を製造した。
【0053】
[実施例2〜10]
実施例1と同様に、但し表1に示すように、塗膜を構成するペルオキソチタン酸水溶液の濃度(質量%)、液量(g)、成分量(g/m
2)と、アンダーコート液の濃度の赤外線遮蔽剤(g/m
2)、液量(g)と、光触媒液の濃度(質量%)、液量(g)、成分量(g/m
2)と、を変更して実施例2〜10の光触媒複合塗膜を製造した。
【0055】
[比較例1〜6]
実施例1と同様に、但し表1に示すよう
に、塗膜を構成するペルオキソチタン酸水溶液の濃度(質量%)、液量(g)、成分量(g/m
2)と、アンダーコート液の濃度の赤外線遮蔽剤(g/m
2)、液量(g)と、光触媒液の濃度(質量%)、液量(g)、成分量(g/m
2)と、を変更して比較例1〜6の光触媒複合塗膜を製造した。
【0056】
[実施例11]
実施例1と同様に、但し製造例7で製造した赤外線遮蔽剤(ATO)の代わりに製造例8で製造した赤外線遮蔽剤(ITO)を用いて実施例11の光触媒複合塗膜を製造した。
【0057】
[実施例12]
<アンダーコート液製造工程及びアンダーコート層製造工程>
製造例1と同じ。
<光触媒複合塗膜製造工程>
面積が1平方メートルの前記アンダーコート層に、製造例5で製造した5.0質量%濃度のアナターゼ型酸化チタン分散液70gと、製造例1で製造した5.0質量%濃度のペルオキソチタン酸水溶液30gとを混合し、スプレーコーターを用いて塗布し、40℃以下で乾燥して実施例12の光触媒複合塗膜を製造した。
【0058】
(試験用試料片の作成)
試験用ガラス片を、自動洗浄機を用いて洗浄後水切りをしても水玉ができなくなるまで洗浄し、熱風乾燥器(60℃)で乾燥した。この試験用ガラス片にスプレーコーターを用いて実施例1〜12及び比較例1〜6の塗料組成物を塗布し、室温暗所にて10日間自然乾燥させて試験用試料片を作成した。
【0059】
(可視光透過性)
本発明の複合塗膜を塗布したガラス片を透過した可視光の強度(VIS
0)と、複合塗膜を塗布しないガラス片を透過した可視光の強度(VIS)を測定し、式(1)を用いて可視光遮蔽率(%)を計算した。
(式1) 可視光遮蔽率(%)=(VIS/VIS
0)×100
可視光遮蔽率80%以上を○、60〜80%未満を△、60%未満を×とし、△以上を合格とした。
【0060】
(赤外線遮蔽試験)
赤外線ランプ及び赤外線測定器を用いて,本発明の複合塗膜を塗布したガラス片を透過した赤外線の強度(IR)と、複合塗膜を塗布しないガラス片を透過した赤外線の強度(IR
0)を測定し、式(2)を用いて赤外線遮蔽率(%)を計算した。
(式2)赤外線遮蔽率(%)={(IR
0−IR)/IR
0}×100
赤外線遮蔽率80%以上を○とし、60〜80%未満を△とし、60%未満を×とし、△以上を合格とした。
【0061】
(紫外線遮蔽試験)
中圧紫外線ランプ(出力波長200〜600nm)及び紫外線測定器を用いて,本発明の複合塗膜を塗布したガラス片を透過した紫外線の強度(UV)と、複合塗膜を塗布しないガラス片を透過した紫外線の強度(UV
0)を測定し、式(3)を用いて赤外線遮蔽率(%)を計算した。
(式3)紫外線遮蔽率(%)={(UV
0−UV)/UV
0}×100
赤外線遮蔽率80%以上を○とし、60〜80%未満を△とし、60%未満を×とし、△以上を合格とした。
【0062】
(光触媒活性試験)
直径7cmのガラス製シャーレに水15mL、0.01Mアンモニア水1mL及び数滴のフェノールフタレイン指示薬を加え、試験用試料片の試料塗装面を下向きにしてシャーレを覆い、上方から10Wの紫外線ランプを照射して、光触媒が発生させた過酸化酸素がアンモニアを酸化してフェノールフタレインの呈色が消えるまでの時間を測定した。
光触媒が活性化されるまでには多少のタイムラグがあるので、フェノールフタレイン呈色の消失時間が20分未満のものを○とし、20分以上30分未満を△とし、30分を超えたものを×とし、△以上を合格とした。
【0063】
[耐蝕性試験]
試験用試料片から50cm離れたところから50Wの中圧紫外線ランプ(出力波長200〜600nm)を200時間照射し、試験片の外観を照射前後で比較した。目視により、紫外線照射前後に変化なしを○とし、僅かに着色したものを△とし、着色または濁りを生じたものを×とし、△以上を合格とした。
【0064】
カッターナイフを用いて試験片表面の塗膜を縦横1mm
間隔で格子状に傷つけ、1mm角の塗膜ブロックを100個形成し、その表面にセロハンテープ(ニチバン製)を貼付したのち剥離し、剥がれた塗膜ブロックの数を数えた。剥がれた塗膜ブロックが0を○とし、5以下を△とし、6以上を×とし、△以上を合格とした。
【0066】
表2に示すように、実施例1〜4、及び比較例1,2は、光触媒の塗布量を変化させて紫外線遮蔽率、光触媒活性、及び成膜性(耐蝕性、密着性及び可視光線透過性)を比較したものである。
比較例1に示すように光触媒の塗布量が0.01g/m
2では弱い光触媒活性は認められるものの紫外線の遮蔽効果が合格しなかった。一方、実施例2に示すように光触媒の塗布量が0.05g/m
2では、紫外線の遮蔽効果がやや弱いながら合格し、充分な光触媒活性を示した。
【0067】
また、実施例4に示すように光触媒の塗布量が20g/m
2では、20g/m
2の光触媒を塗布するために複数回塗り重ねなければならず、作業量が多いばかりでなく、成膜性が不十分で、可視光透過性、耐蝕性、及び密着性が合格範囲ではあるもののやや低下する傾向がみられた。
また比較例2に示すように、30g/m
2の光触媒を塗布すると、成膜性が不十分になり、耐蝕性、及び密着性が不合格となった。
【0068】
実施例1、5〜8、及び比較例3,4は、アンダーコート液中のペルオキソチタン酸の塗布量を変化させて成膜性(耐蝕性、密着性及び可視光線透過性)を比較したものである。
比較例3に示すように、ペルオキソチタン酸の塗布量が0.01g/m
2では、アンダーコート層の厚さが不足して成膜性を示す耐蝕性及び密着性が不合格となったが、実施例5に示すようにペルオキソチタン酸の塗布量が0.05g/m
2では、耐蝕性及び密着性は合格の範囲になった。
【0069】
一方、実施例8に示すように、ペルオキソチタン酸の塗布量が20g/m
2とするためには複数回塗り重ねなければならないので、可視光透過性、耐蝕性、及び密着性が合格範囲ではあるもののやや劣る傾向がみられた。
また、比較例4に示すように、30g/m
2のペルオキソチタン酸を塗布すると、成膜性が不十分で、耐蝕性、及び密着性が不合格となった。
【0070】
実施例1、9、10、及び比較例5、6はアンダーコート液中の赤外線遮蔽剤の塗布量を変化させて赤外線遮蔽効果と成膜性を比較したものである。比較例5に示すように、赤外線遮蔽剤の塗布量が0.05g/m
2では、赤外線遮蔽剤の塗布量が不足したが、実施例9に示すように0.1g/m
2の塗布量では、赤外線遮蔽率が合格範囲になった。
【0071】
実施例10に示すように、赤外線遮蔽剤の塗布量が20g/m
2の赤外線遮蔽剤を塗布した場合は、アンダーコート層の製膜性が、合格範囲ではあるものの、やや低下する傾向がみられ、比較例6に示すように赤外線遮蔽剤の量が30g/m
2の赤外線遮蔽剤を塗布すると、成膜性が不十分で、耐蝕性、及び密着性が不合格となった。
【解決手段】基体3の上に形成されたペルオキソチタン酸及び赤外線遮蔽剤の微粒子粉末を含むアンダーコート層2と、該アンダーコート層の上に形成されたアナターゼ型酸化チタンを含む光触媒層1と、を有し、前記赤外線遮蔽剤が、酸化アンチモン、酸化錫、酸化インジューム、酸化ガリウム、酸化イリジウム、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化ニオブ、及びフッ素から選ばれる1以上であることを特徴とする。