【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の上記課題は独立請求項の主題により解決され、更なる実施態様は従属請求項に含まれている。以下に記載される本発明の態様は、動き得る物体の位相コントラスト撮像及び/又は暗視野撮像のための格子装置、干渉計ユニット、位相コントラスト及び/又は暗視野撮像システム、位相コントラスト及び/又は暗視野撮像方法、コンピュータプログラム要素及びコンピュータ読取可能な媒体にも当てはまることに注意されたい。
【0009】
本発明によれば、動き得る物体の位相コントラスト撮像及び/又は暗視野撮像のための格子装置が提供される。該格子装置は、格子ユニット、作動ユニット、動き検出ユニット及び制御ユニットを有する。
【0010】
上記作動ユニットは、格子ユニットを動き得る物体に対して異なるサンプリング位置に配置(位置決め)するように構成される。
【0011】
上記動き検出ユニットは、動き得る物体の動きを検出するように構成される。
【0012】
上記制御ユニットは、作動ユニットを、格子ユニットを動き得る物体の検出された動きに基づいて異なるサンプリング位置に位置決めするように制御するよう構成される。
【0013】
結果として、動く物体の位相コントラスト撮像及び/又は暗視野撮像のためのアプローチが提供され、位相コントラスト及び/又は暗視野撮像の応用分野が動き得る物体にまで拡大される。
【0014】
上記動き得る物体は、例えば、心臓、肺臓、呼吸運動に加わる筋肉、血管、冠動脈、肺動脈及び/又はこれらの一部等であり得る。この方法は、位相コントラスト・ステント強調アプリケーションを実現するために使用することもできる。
【0015】
一例において、動き得る物体の検出される動きは繰り返し運動である。動き得る物体の斯かる繰り返し運動は、該動き得る物体を1サイクルの間において開始位置から該開始位置へと戻す動きであり得る。該動きは、例えば、周期的、巡回的、準周期的、準巡回的又はそれ以外のものであり得る。一例において、動き得る物体の検出される動きは、胸部スキャンの間における心周期、呼吸周期又は息止めの失敗である。
【0016】
一例において、前記検出される動きのデータは、吸収画像データ、ECGデータ、動きセンサデータ、ビデオデータ及びこれらの組み合わせの群のうちの少なくとも1つである。
【0017】
動き得る物体の検出された動きに基づく当該格子ユニットの異なるサンプリング位置への配置(位置決め)は、これらサンプリング位置が当該動き得る物体の検出された動きに対応する、相関する及び/又は依存するものと理解することができる。言い換えると、本発明は、格子ユニットの動きを、例えば心周期内に又は複数の心周期にわたって分布させることを提案している。
【0018】
一例において、上記異なるサンプリング位置は、当該動き得る物体の検出される動きの異なる周期における1つの運動状態に対応する。言い換えると、格子ユニットの動きは、種々のサンプリング位置が異なる心周期における1つの同一の運動状態に対応するようなものである。このアプローチは、後に更に詳細に説明されるであろう。
【0019】
一例において、上記異なるサンプリング位置は、当該動き得る物体の検出される動きの1つの周期における異なる運動状態に対応する。言い換えると、格子ユニットの動きは、種々のサンプリング位置が1つの同一の心周期における異なる運動状態に対応するようなものである。このアプローチも、後に更に詳細に説明されるであろう。
【0020】
一例においては、種々のサンプリング位置で画像を取得して、位相回復、即ち当該物体により生じた位相ズレの決定を可能にするために、1つの撮像の実行の間に少なくとも3つの互いに異なるサンプリング位置が存在する。
【0021】
一例において、位置決めされるべき当該格子ユニットは、タルボ型干渉計の格子であり、アナライザ格子、位相格子及びソース格子の群のうちの少なくとも1つのものであり得る。該位置決め運動は、変位、回転、傾動又はこれらの組み合わせとすることができる。上記アナライザ格子及び位相格子は、全投影像又はその一部のみをカバーすることができる。
【0022】
サンプリング位置は複数の心周期にわたり分布させることができ、最終的な位相コントラスト画像は異なる心周期において取得されたフレームから例えばECG相関を用いて合成することができる。言い換えると、各格子ユニット位置において発生された種々の画像を相関させるためにECGを同時に記録することができる。従って、一例において、前記制御ユニットは、位相コントラスト画像のために、当該動き得る物体の検出された動きを異なるサンプリング位置の間で相関させるように構成される。また、検査されるべき物体の生体構造又は介入装置上のマーカ等を、該動き得る物体の検出された動きの異なるサンプリング位置の間での相関のために用いることができる。
【0023】
本発明の一例を以下に更に詳細に説明する。心臓X線蛍光透視法においては、多数のX線投影像が例えば毎秒30フレーム等の時間系列で取得される。心臓の準周期的動きは、当該生体構造を各心周期において殆ど同一の運動状態に戻す。例えば格子ユニットとしてのアナライザ格子の動きが心臓の動きと比較して遅いと仮定すると、単一の心周期内で心臓の同一の運動状態における異なるアナライザ格子位置による全ての投影像を得ることは不可能であろう。このように、例えばアナライザ格子を規則的ステップでずらすことによる規則的位相間隔での画像収集である位相歩進(phase stepping)は、複数の心周期にわたって分布させることができ、最終的な位相コントラスト画像(及び暗視野画像)は異なる心周期において取得された投影像から例えばECG相関を用いて得ることができる。言い換えると、各アナライザ格子位置において発生された種々の投影像を相関させるためにECGを同時に記録することができる。
【0024】
所謂“異なる周期アプローチ(different cycles approach)”は以下のように実行することができる。即ち、当該心臓の一連の位相コントラスト投影像を収集することができ、並行してECGを測定することができる。位相歩進は、後続の心周期において同一の心臓運動状態を取得する際に、格子ユニットとしてのアナライザ格子が異なるサンプリング位置となるように選択することができる。位相コントラスト及び暗視野画像は、異なる心周期において取得された投影像から得る(計算する)ことができる。
【0025】
位相歩進の場合、格子ユニットのサンプリング位置は異ならなければならず、且つ、非冗長でなければならない。この場合、非冗長とは、位相格子に対するアナライザ格子の位置がサンプリング位置の各々に対して異なるということを意味する。位相歩進に対してはサンプリング位置のみが関連するから、位相歩進は平均心拍数に整合させることができ、周期長の小さな変動は結果としての画像に影響しない。
【0026】
心臓の実際の運動状態は、吸収画像を介して当該運動状態の対応度をチェックすることにより、位相コントラスト及び暗視野画像を計算する前に決定することができる。このように、心臓の空間的位置に良好に対応する測定フレームを選択することができる。
【0027】
動き補正された位相コントラスト画像を達成するための代替の“1周期アプローチ”は、位相コントラスト及び暗視野画像を計算する前の吸収投影像に対する画像に基づく位置合わせに基づくものとすることができる。このアプローチによれば、位相コントラスト及び暗視野画像を発生するために、異なる格子ユニット位置による一連の(例えば、3つの)連続して取得された投影像を用いることができる。例えば心運動の間において斯かる投影像の間で発生し得る動きは、部分的吸収画像から推定することができ、従って最終的画像の計算の前に補正することができる。サンプリング位置の間における心臓の動きは、吸収画像に基づいて補償することができる。
【0028】
例示として、例えばバイタルサイン・カメラの出力のようなビデオ信号等の、代替的な動きセンサも考えられる。
【0029】
本発明によれば、干渉計ユニットも提供される。該干渉計ユニットは、X線検出器、並びに前記動き得る物体の位相コントラスト及び/又は暗視野撮像のための格子装置を有する。上記X線検出器は、上記格子装置を通過するX線ビームを検出するよう構成される。当該格子装置は、格子ユニット、作動ユニット、動き検出ユニット及び制御ユニットを有する。該格子ユニットは、前記動き得る物体の検出される動きに基づいて異なるサンプリング位置へ位置決めされる。前記X線検出器は、検出するために、即ち当該格子装置により発生される干渉パターンを十分に解像するために十分に小さなピッチを、従って十分に大きな解像度を備えることができる。この目的のために、上記X線検出器は、50マイクロメートル若しくはそれ以上の空間解像度を有する既知の高解像度X線検出器、又は参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2014/0177795号公報に記載されたタイプのX線検出器とすることができる。他の例として、当該格子装置が光学経路において上記X線検出器の前側に配置されたアナライザ格子を備える場合、該X線検出器は、より低い解像度を有することができる。
【0030】
本発明によれば、位相コントラスト及び/又は暗視野撮像システムも提供される。該位相コントラスト及び/又は暗視野撮像システムは、X線源と、上述した干渉計ユニットとを有する。上記X線源は、物体及び前記干渉計ユニットを通過するX線ビームを供給するように構成される。該位相コントラスト及び/又は暗視野撮像システムは、動く物体(被検体)の位相コントラスト及び/又は暗視野撮像を可能にする。該動き得る物体は、例えば、心臓、肺臓、呼吸運動に関わる筋肉、血管、冠動脈、肺動脈及び/又はこれらの一部とすることができる。
【0031】
本発明によれば、位相コントラスト及び/又は暗視野撮像方法も提供される。該方法は、この順序である必要はないが、以下のステップを有する:
a)動き得る物体の動きを検出するステップ、及び
b)前記動き得る物体の検出される動きに基づいて、該動き得る物体に対して異なるサンプリング位置への格子ユニットの位置決めを制御するステップ。
【0032】
一例において、前記動き得る物体の検出される動きは、繰り返し運動である。該繰り返し運動は、例えば、周期的、巡回的、準周期的又は準巡回的運動であり得る。該動き得る物体の繰り返し運動は、当該動き得る物体を1周期の間において開始点から該開始点に戻すような運動であり得る。一例において、動き得る物体の検出される動きは、心周期又は呼吸周期である。
【0033】
一例において、前記異なるサンプリング位置は、前記動き得る物体の検出される動きの異なる周期における1つの運動状態に対応する。他の例において、前記異なるサンプリング位置は、前記動き得る物体の検出される動きの1つの周期における異なる運動状態に対応する。
【0034】
本発明によれば、コンピュータプログラム要素も提供され、該コンピュータプログラム要素は、装置の独立請求項に記載された格子装置に、該コンピュータプログラムが該格子装置を制御するコンピュータ上で実行された場合に、前記位相コントラスト及び/又は暗視野撮像方法のステップを実行させるプログラムコード手段を有する。
【0035】
尚、前記格子装置、干渉計ユニット、位相コントラスト及び/又は暗視野撮像システム、位相コントラスト及び/又は暗視野撮像方法、上記装置を制御するためのコンピュータプログラム要素、及び上記コンピュータプログラム要素を記憶したコンピュータ読取可能な媒体は、特に従属請求項に記載されたような類似の及び/又は同一の好ましい実施態様を有すると理解されるべきである。更に、本発明の好ましい実施態様は、従属請求項と各独立請求項との如何なる組み合わせとすることもできると理解されるべきである。
【0036】
本発明の上記及び他の態様は、後述する実施態様から明らかとなり、斯かる実施態様を参照して解説されるであろう。