特許第6198989号(P6198989)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6198989動き得る物体の位相コントラスト及び/又は暗視野撮像のための格子装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6198989
(24)【登録日】2017年9月1日
(45)【発行日】2017年9月20日
(54)【発明の名称】動き得る物体の位相コントラスト及び/又は暗視野撮像のための格子装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/00 20060101AFI20170911BHJP
【FI】
   A61B6/00 300J
   A61B6/00 335
   A61B6/00ZDM
【請求項の数】14
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-504636(P2017-504636)
(86)(22)【出願日】2015年10月1日
(65)【公表番号】特表2017-521197(P2017-521197A)
(43)【公表日】2017年8月3日
(86)【国際出願番号】EP2015072747
(87)【国際公開番号】WO2016058838
(87)【国際公開日】20160421
【審査請求日】2017年1月27日
(31)【優先権主張番号】14188641.6
(32)【優先日】2014年10月13日
(33)【優先権主張国】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】KONINKLIJKE PHILIPS N.V.
(74)【代理人】
【識別番号】110001690
【氏名又は名称】特許業務法人M&Sパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】グラス ミカエル
(72)【発明者】
【氏名】シェーファー ダーク
(72)【発明者】
【氏名】ケーラー トーマス
【審査官】 田中 洋行
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−203067(JP,A)
【文献】 特許第5796908(JP,B2)
【文献】 特開2012−143548(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0070062(US,A1)
【文献】 特開2005−287949(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00 − 6/14
G01T 1/20 − 1/24
G01T 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
動き得る物体の位相コントラスト撮像及び/又は暗視野撮像のための格子装置であって、
− 格子ユニットと、
− 作動ユニットと、
− 動き検出ユニットと、
− 制御ユニットと、
を有し、
前記作動ユニットは、前記格子ユニットを前記動き得る物体に対して異なるサンプリング位置に位置させ、
前記動き検出ユニットは、前記動き得る物体の動きを検出し、
前記制御ユニットは、前記作動ユニットを、前記動き得る物体の検出された動きに基づいて前記格子ユニットを前記異なるサンプリング位置に位置させるように制御する、
格子装置。
【請求項2】
前記動き得る物体の検出される動きが、繰り返し運動である、請求項1に記載の格子装置。
【請求項3】
前記動き得る物体の検出される動きが、心周期又は呼吸周期である、請求項1又は請求項2に記載の格子装置。
【請求項4】
前記異なるサンプリング位置が、前記動き得る物体の検出される動きの異なる周期における1つの運動状態に対応する、請求項1ないし3の何れか一項に記載の格子装置。
【請求項5】
前記異なるサンプリング位置が、前記動き得る物体の検出される動きの1つの周期における異なる運動状態に対応する、請求項1又は請求項2に記載の格子装置。
【請求項6】
前記制御ユニットが、位相コントラスト画像のために、前記動き得る物体の検出された動きを前記異なるサンプリング位置の間で相関させる、請求項1ないし5の何れか一項に記載の格子装置。
【請求項7】
前記動きのデータが、吸収画像データ、ECGデータ、動きセンサのデータ及びビデオデータの群のうちの少なくとも1つである、請求項1ないし6の何れか一項に記載の格子装置。
【請求項8】
前記格子ユニットがタルボ型干渉計の格子である、請求項1ないし7の何れか一項に記載の格子装置。
【請求項9】
1つの撮像の実行の間に少なくとも3つの互いに異なるサンプリング位置が存在する、請求項1ないし8の何れか一項に記載の格子装置。
【請求項10】
請求項1ないし9の何れか一項に記載の格子装置と、
X線検出器と、
を有する干渉計ユニットであって、
前記X線検出器が、前記格子装置を通過するX線ビームを検出する、
干渉計ユニット。
【請求項11】
請求項10に記載の干渉計ユニットと、
X線源と、
を有する位相コントラスト及び/又は暗視野撮像システムであって、
前記X線源が前記干渉計ユニットを通過するX線ビームを供給する、
位相コントラスト及び/又は暗視野撮像システム。
【請求項12】
a)動き得る物体の動きを検出するステップと、
b)前記動き得る物体の検出される動きに基づいて、該動き得る物体に対して異なるサンプリング位置への格子ユニットの位置決めを制御するステップと、
を有する、位相コントラスト及び/又は暗視野撮像方法。
【請求項13】
請求項1ないし11の何れか一項に記載の装置を制御するコンピュータプログラムであって、処理ユニットにより実行された場合に請求項12に記載の方法のステップを実行する、コンピュータプログラム。
【請求項14】
請求項13に記載のコンピュータプログラムを記憶した、コンピュータ読取可能な媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動き得る物体の位相コントラスト撮像及び/又は暗視野撮像のための格子装置、干渉計ユニット、位相コントラスト及び/又は暗視野撮像システム、位相コントラスト及び/又は暗視野撮像方法、斯様な装置を制御するためのコンピュータプログラム要素、並びに斯様なコンピュータプログラム要素を記憶したコンピュータ読取可能な媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
古典的X線撮像法は物体(被写体)により生じるX線の吸収を測定するが、位相コントラスト撮像法は、X線が検査されるべき物体を通過する際に受ける位相ズレの検出を目的とする。位相コントラスト撮像及び/又は暗視野撮像の場合、当該物体が(コヒーレントな)X線により照射される際に強度極大及び極小の干渉パターンを生じさせるために該物体の背後に位相格子(位相グレーディング)が配置される。当該物体によりもたらされるX線波の如何なる位相ズレも、干渉パターンの幾らかの特徴的変位を生じさせる。従って、これらの変位を測定することは、当該物体の位相ズレを再現することを可能にする。このような位相格子を用いれば、更に、デコヒーレントなX線小角散乱から導出する画像データの発生が可能にされ、後者のタイプの撮像は“暗視野撮像”とも称される。
【0003】
ヨーロッパ特許出願公開第EP1731099号は、1つの位相格子及び1つの振幅格子を有するX線干渉計装置を開示している。この干渉計は、標準的X線管により位相コントラスト画像を得るために使用することができる。更に、該干渉計は個別のサブX線源(サブソース)のアレイからなるX線源(ソース)を使用することができる。該サブソースのアレイは、ソースの近くにスリットのアレイ、即ち追加の振幅格子を配置することにより発生させることができる。
【0004】
米国特許出願公開第2010/0322380号は、感知素子のアレイ並びに2つの異なる感知素子の前側に異なる位相及び/又は周期で配置された少なくとも2つのアナライザ格子を有するX線検出器を開示している。互いに異なる位相を持つ上記アナライザ格子を感知素子の前側に配置することができる。該検出器は位相コントラスト画像を発生するX線装置に適用することができる。
【0005】
結果として、位相コントラスト撮像は、検査中の物体によるX線の吸収を示す画像のみならず、該物体の暗視野及び該物体によるX線ビームの位相ズレを示す付加的画像も提供する。
【0006】
位相コントラスト撮像のためには、例えば3つの異なる格子を備えた設備が必要とされる。これら格子のうちの2つは当該患者の背後に設置され、これら2つのうちの1つ(所謂、アナライザ格子)は種々のサンプリング位置で位相ズレをサンプリングするために撮像の間において再配置されねばならない。従って、位相コントラスト撮像を実行する場合、当該物体は動いていないと仮定される。しかしながら、これは、例えば冠動脈系又は肺臓系の一部等の動く物体を撮像する場合、正確な仮定とはならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、一層広い応用分野において使用することができる位相コントラスト及び/又は暗視野撮像のための改善された格子装置を提供する必要性が存在し得る。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の上記課題は独立請求項の主題により解決され、更なる実施態様は従属請求項に含まれている。以下に記載される本発明の態様は、動き得る物体の位相コントラスト撮像及び/又は暗視野撮像のための格子装置、干渉計ユニット、位相コントラスト及び/又は暗視野撮像システム、位相コントラスト及び/又は暗視野撮像方法、コンピュータプログラム要素及びコンピュータ読取可能な媒体にも当てはまることに注意されたい。
【0009】
本発明によれば、動き得る物体の位相コントラスト撮像及び/又は暗視野撮像のための格子装置が提供される。該格子装置は、格子ユニット、作動ユニット、動き検出ユニット及び制御ユニットを有する。
【0010】
上記作動ユニットは、格子ユニットを動き得る物体に対して異なるサンプリング位置に配置(位置決め)するように構成される。
【0011】
上記動き検出ユニットは、動き得る物体の動きを検出するように構成される。
【0012】
上記制御ユニットは、作動ユニットを、格子ユニットを動き得る物体の検出された動きに基づいて異なるサンプリング位置に位置決めするように制御するよう構成される。
【0013】
結果として、動く物体の位相コントラスト撮像及び/又は暗視野撮像のためのアプローチが提供され、位相コントラスト及び/又は暗視野撮像の応用分野が動き得る物体にまで拡大される。
【0014】
上記動き得る物体は、例えば、心臓、肺臓、呼吸運動に加わる筋肉、血管、冠動脈、肺動脈及び/又はこれらの一部等であり得る。この方法は、位相コントラスト・ステント強調アプリケーションを実現するために使用することもできる。
【0015】
一例において、動き得る物体の検出される動きは繰り返し運動である。動き得る物体の斯かる繰り返し運動は、該動き得る物体を1サイクルの間において開始位置から該開始位置へと戻す動きであり得る。該動きは、例えば、周期的、巡回的、準周期的、準巡回的又はそれ以外のものであり得る。一例において、動き得る物体の検出される動きは、胸部スキャンの間における心周期、呼吸周期又は息止めの失敗である。
【0016】
一例において、前記検出される動きのデータは、吸収画像データ、ECGデータ、動きセンサデータ、ビデオデータ及びこれらの組み合わせの群のうちの少なくとも1つである。
【0017】
動き得る物体の検出された動きに基づく当該格子ユニットの異なるサンプリング位置への配置(位置決め)は、これらサンプリング位置が当該動き得る物体の検出された動きに対応する、相関する及び/又は依存するものと理解することができる。言い換えると、本発明は、格子ユニットの動きを、例えば心周期内に又は複数の心周期にわたって分布させることを提案している。
【0018】
一例において、上記異なるサンプリング位置は、当該動き得る物体の検出される動きの異なる周期における1つの運動状態に対応する。言い換えると、格子ユニットの動きは、種々のサンプリング位置が異なる心周期における1つの同一の運動状態に対応するようなものである。このアプローチは、後に更に詳細に説明されるであろう。
【0019】
一例において、上記異なるサンプリング位置は、当該動き得る物体の検出される動きの1つの周期における異なる運動状態に対応する。言い換えると、格子ユニットの動きは、種々のサンプリング位置が1つの同一の心周期における異なる運動状態に対応するようなものである。このアプローチも、後に更に詳細に説明されるであろう。
【0020】
一例においては、種々のサンプリング位置で画像を取得して、位相回復、即ち当該物体により生じた位相ズレの決定を可能にするために、1つの撮像の実行の間に少なくとも3つの互いに異なるサンプリング位置が存在する。
【0021】
一例において、位置決めされるべき当該格子ユニットは、タルボ型干渉計の格子であり、アナライザ格子、位相格子及びソース格子の群のうちの少なくとも1つのものであり得る。該位置決め運動は、変位、回転、傾動又はこれらの組み合わせとすることができる。上記アナライザ格子及び位相格子は、全投影像又はその一部のみをカバーすることができる。
【0022】
サンプリング位置は複数の心周期にわたり分布させることができ、最終的な位相コントラスト画像は異なる心周期において取得されたフレームから例えばECG相関を用いて合成することができる。言い換えると、各格子ユニット位置において発生された種々の画像を相関させるためにECGを同時に記録することができる。従って、一例において、前記制御ユニットは、位相コントラスト画像のために、当該動き得る物体の検出された動きを異なるサンプリング位置の間で相関させるように構成される。また、検査されるべき物体の生体構造又は介入装置上のマーカ等を、該動き得る物体の検出された動きの異なるサンプリング位置の間での相関のために用いることができる。
【0023】
本発明の一例を以下に更に詳細に説明する。心臓X線蛍光透視法においては、多数のX線投影像が例えば毎秒30フレーム等の時間系列で取得される。心臓の準周期的動きは、当該生体構造を各心周期において殆ど同一の運動状態に戻す。例えば格子ユニットとしてのアナライザ格子の動きが心臓の動きと比較して遅いと仮定すると、単一の心周期内で心臓の同一の運動状態における異なるアナライザ格子位置による全ての投影像を得ることは不可能であろう。このように、例えばアナライザ格子を規則的ステップでずらすことによる規則的位相間隔での画像収集である位相歩進(phase stepping)は、複数の心周期にわたって分布させることができ、最終的な位相コントラスト画像(及び暗視野画像)は異なる心周期において取得された投影像から例えばECG相関を用いて得ることができる。言い換えると、各アナライザ格子位置において発生された種々の投影像を相関させるためにECGを同時に記録することができる。
【0024】
所謂“異なる周期アプローチ(different cycles approach)”は以下のように実行することができる。即ち、当該心臓の一連の位相コントラスト投影像を収集することができ、並行してECGを測定することができる。位相歩進は、後続の心周期において同一の心臓運動状態を取得する際に、格子ユニットとしてのアナライザ格子が異なるサンプリング位置となるように選択することができる。位相コントラスト及び暗視野画像は、異なる心周期において取得された投影像から得る(計算する)ことができる。
【0025】
位相歩進の場合、格子ユニットのサンプリング位置は異ならなければならず、且つ、非冗長でなければならない。この場合、非冗長とは、位相格子に対するアナライザ格子の位置がサンプリング位置の各々に対して異なるということを意味する。位相歩進に対してはサンプリング位置のみが関連するから、位相歩進は平均心拍数に整合させることができ、周期長の小さな変動は結果としての画像に影響しない。
【0026】
心臓の実際の運動状態は、吸収画像を介して当該運動状態の対応度をチェックすることにより、位相コントラスト及び暗視野画像を計算する前に決定することができる。このように、心臓の空間的位置に良好に対応する測定フレームを選択することができる。
【0027】
動き補正された位相コントラスト画像を達成するための代替の“1周期アプローチ”は、位相コントラスト及び暗視野画像を計算する前の吸収投影像に対する画像に基づく位置合わせに基づくものとすることができる。このアプローチによれば、位相コントラスト及び暗視野画像を発生するために、異なる格子ユニット位置による一連の(例えば、3つの)連続して取得された投影像を用いることができる。例えば心運動の間において斯かる投影像の間で発生し得る動きは、部分的吸収画像から推定することができ、従って最終的画像の計算の前に補正することができる。サンプリング位置の間における心臓の動きは、吸収画像に基づいて補償することができる。
【0028】
例示として、例えばバイタルサイン・カメラの出力のようなビデオ信号等の、代替的な動きセンサも考えられる。
【0029】
本発明によれば、干渉計ユニットも提供される。該干渉計ユニットは、X線検出器、並びに前記動き得る物体の位相コントラスト及び/又は暗視野撮像のための格子装置を有する。上記X線検出器は、上記格子装置を通過するX線ビームを検出するよう構成される。当該格子装置は、格子ユニット、作動ユニット、動き検出ユニット及び制御ユニットを有する。該格子ユニットは、前記動き得る物体の検出される動きに基づいて異なるサンプリング位置へ位置決めされる。前記X線検出器は、検出するために、即ち当該格子装置により発生される干渉パターンを十分に解像するために十分に小さなピッチを、従って十分に大きな解像度を備えることができる。この目的のために、上記X線検出器は、50マイクロメートル若しくはそれ以上の空間解像度を有する既知の高解像度X線検出器、又は参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2014/0177795号公報に記載されたタイプのX線検出器とすることができる。他の例として、当該格子装置が光学経路において上記X線検出器の前側に配置されたアナライザ格子を備える場合、該X線検出器は、より低い解像度を有することができる。
【0030】
本発明によれば、位相コントラスト及び/又は暗視野撮像システムも提供される。該位相コントラスト及び/又は暗視野撮像システムは、X線源と、上述した干渉計ユニットとを有する。上記X線源は、物体及び前記干渉計ユニットを通過するX線ビームを供給するように構成される。該位相コントラスト及び/又は暗視野撮像システムは、動く物体(被検体)の位相コントラスト及び/又は暗視野撮像を可能にする。該動き得る物体は、例えば、心臓、肺臓、呼吸運動に関わる筋肉、血管、冠動脈、肺動脈及び/又はこれらの一部とすることができる。
【0031】
本発明によれば、位相コントラスト及び/又は暗視野撮像方法も提供される。該方法は、この順序である必要はないが、以下のステップを有する:
a)動き得る物体の動きを検出するステップ、及び
b)前記動き得る物体の検出される動きに基づいて、該動き得る物体に対して異なるサンプリング位置への格子ユニットの位置決めを制御するステップ。
【0032】
一例において、前記動き得る物体の検出される動きは、繰り返し運動である。該繰り返し運動は、例えば、周期的、巡回的、準周期的又は準巡回的運動であり得る。該動き得る物体の繰り返し運動は、当該動き得る物体を1周期の間において開始点から該開始点に戻すような運動であり得る。一例において、動き得る物体の検出される動きは、心周期又は呼吸周期である。
【0033】
一例において、前記異なるサンプリング位置は、前記動き得る物体の検出される動きの異なる周期における1つの運動状態に対応する。他の例において、前記異なるサンプリング位置は、前記動き得る物体の検出される動きの1つの周期における異なる運動状態に対応する。
【0034】
本発明によれば、コンピュータプログラム要素も提供され、該コンピュータプログラム要素は、装置の独立請求項に記載された格子装置に、該コンピュータプログラムが該格子装置を制御するコンピュータ上で実行された場合に、前記位相コントラスト及び/又は暗視野撮像方法のステップを実行させるプログラムコード手段を有する。
【0035】
尚、前記格子装置、干渉計ユニット、位相コントラスト及び/又は暗視野撮像システム、位相コントラスト及び/又は暗視野撮像方法、上記装置を制御するためのコンピュータプログラム要素、及び上記コンピュータプログラム要素を記憶したコンピュータ読取可能な媒体は、特に従属請求項に記載されたような類似の及び/又は同一の好ましい実施態様を有すると理解されるべきである。更に、本発明の好ましい実施態様は、従属請求項と各独立請求項との如何なる組み合わせとすることもできると理解されるべきである。
【0036】
本発明の上記及び他の態様は、後述する実施態様から明らかとなり、斯かる実施態様を参照して解説されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1図1は、本発明による動き得る物体の微分位相コントラスト撮像のための位相コントラスト及び/又は暗視野撮像システムの一例の概略図を示す。
図2図2は、本発明による動き得る物体の微分位相コントラスト撮像のための干渉計ユニットの一実施態様を概略的且つ例示的に示す。
図3図3は、本発明による動き得る物体の位相コントラスト及び/又は暗視野撮像のための格子装置の一実施態様を概略的且つ例示的に示す。
図4図4は、心電図及び異なるサンプリング位置にアナライザ格子を備える位相コントラスト装置の概略図を示す。
図5図5は、位相コントラスト及び/又は暗視野撮像方法の一例の基本的ステップを示す。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下に、本発明の例示的実施態様を、添付図面を参照して説明する。
【0039】
図1には、微分位相コントラスト撮像のための位相コントラスト及び/又は暗視野撮像システム10が概略的に示されている。該位相コントラスト及び/又は暗視野撮像システム10は、X線源(X線ソース)18、干渉計ユニット20、処理ユニット14及びインターフェースユニット16を有している。干渉計ユニット20は、図2を参照して詳細に説明されるが、格子装置及びX線放射の強度変化を記録するように構成された検出器を有している。上記格子装置は、例えばアナライザ格子、位相格子又はソース格子とすることができる格子ユニットを有している。
【0040】
検査されるべき物体(被検体;図示略)を受けるためにテーブル22が配置されている。X線源18及び干渉計ユニット20は、テーブル22をX線源18と干渉計ユニット20との間に配置することができるようにCアーム装置24上に少なくとも部分的に取り付けられており、かくして、上記物体はX線源18と干渉計ユニット20との間に位置させることができる。
【0041】
Cアーム装置24は、視角を調整することができるように該Cアーム装置24の被写体の周りの運動が可能となるように設けられる。更に、テーブル22が取り付けられるベース26が設けられる。該ベース26は、例えば検査室の床上に配置される。一例として、処理ユニット14及びインターフェースユニット16は該ベース内に配置される。更に、例えば外科医等のユーザに対し情報を提供するためにディスプレイ28がテーブル22の近傍に配置される。インターフェースユニット30は、当該システムを更に制御する可能性を提供するために配置される。
【0042】
例えば患者等の前記被検体は、放射手順の間にX線源18と干渉計ユニット20との間に位置させることができる。干渉計ユニット20はインターフェースユニット16を介して処理ユニット14にデータを送信し、該処理ユニット14に検出された生の画像データを供給する。勿論、処理ユニット14及びインターフェースユニット16は、例えば別の研究室又は制御室等の他の場所に配置することもできる。
【0043】
更に、図示された例は、所謂、C型X線画像収集装置であることに注意されたい。勿論、例えばCTシステム、及び固定又は可動X線源18及び干渉計ユニット20を備える静止システム等の他のX線画像収集装置を設けることもできる。勿論、可動X線装置を設けることもできる。
【0044】
図2は、格子装置及びX線放射の強度変化を記録するための検出器26を有する干渉計ユニット20を概略的に示す。該格子装置は、図3で詳細に説明されるように、格子ユニット51(ここでは、アナライザ格子24である)を有している。図2は、更に、X線源18、ソース格子32及び位相格子22も示している。更に、図2には、被検体34も概略的に示されている。
【0045】
X線源18は、多色スペクトルのX線ビーム36を発生する。被検体34に供給されるX線ビーム36に十分なコヒーレンス(可干渉性)を付与するために、ソース格子32はX線源18のX線放射を少なくとも部分的にコヒーレントなX線放射に分割する各格子構造により構成される。このように、X線ビーム36は、ソース格子32を通過し、次いで調整されたX線ビーム38として供給される。結果として、アナライザ格子24の位置において干渉が観測され得る。
【0046】
図2に示された固有の例において、ソース格子32、位相格子22及びアナライザ格子24は、所謂“通常の幾何学構造”で配置されている。該通常の幾何学構造において、ソース格子32と位相格子22との間の距離は位相格子22とアナライザ格子24との間の距離よりも大きい。他の例として、ソース格子32、位相格子22及びアナライザ格子24は、所謂“逆幾何学構造”で配置することもできる。該逆幾何学構造において、ソース格子32と位相格子22との間の距離は位相格子22とアナライザ格子24との間の距離よりも小さい。従って、逆幾何学構造において、撮像されるべき物体は、典型的に、位相格子22とアナライザ格子24との間に配置される。他のオプションとして、ソース格子32、位相格子22及びアナライザ格子24は、所謂“対称幾何学構造”で配置することもできる。該対称幾何学構造において、ソース格子32と位相格子22との間の距離は位相格子22とアナライザ格子24との間の距離に等しい。更なる情報(参照により、本明細書に組み込まれる)に関しては、JOURNAL OF APPLIED PHYSICS 106, 054703, 2009のTilman Donath他による“Inverse geometry for grating based x-ray phase contrast imaging”を参照されたい。
【0047】
他の例示的実施態様によれば、更に図示されることはないが、前記ソース格子が省略される一方、X線源18は例えばシンクロトロン又はマイクロフォーカスX線管により十分にコヒーレントなX線放射を供給するように構成され、アナライザ格子24の位置において干渉を観測することができるようにする。
【0048】
更なる例示的実施態様によれば、更に図示されることはないが、前記格子ユニット51も位相格子22又はソース格子32とすることができる。
【0049】
図2には、ソース18、ソース格子32、位相格子22、アナライザ格子24及び検出器26が光学経路に沿って配置されることが示されている。このように、検出器26は被検体34の画像情報40を記録する。
【0050】
図3は、本発明による動き得る物体34の位相コントラスト及び/又は暗視野撮像のための格子装置50の一実施態様を概略的且つ例示的に示す。該格子装置50は、格子ユニット51、作動ユニット52、動き検出ユニット53及び制御ユニット54を有している。作動ユニット52は、格子ユニット51を動き得る物体34に対して異なるサンプリング位置に位置させる。動き検出ユニット53は動き得る物体34の動きを検出する。該動き得る物体34の検出される動きは、ここでは、繰り返し運動である。制御ユニット54は、作動ユニット52を制御して、格子ユニット51を動き得る物体34の検出された動きに基づいて異なるサンプリング位置に位置させる。これにより、動き得る物体34の位相コントラスト及び/又は暗視野撮像のための格子装置50がもたらされる。
【0051】
上記動き得る物体34は、例えば、心臓、肺臓、呼吸運動に関わる筋肉、血管、冠動脈、肺動脈及び/又はこれらの一部であり得る。上記動きは、例えば、周期的、巡回的、準周期的又は準巡回的運動であり得る。該動きのデータは、吸収画像データ、ECGデータ、動きセンサデータ及びビデオデータの群のうちの少なくとも1つであり得る。格子ユニット51は、ここでは、アナライザ格子24である。動き検出ユニット53はECGであり得る。この場合、該動き検出ユニット53は前記可動Cアーム装置24上には配置されない。
【0052】
本発明は、格子ユニット51の動きを、動きの1サイクル内に又は動きの複数サイクルにわたって分布させることを提案するものである。図4は、心電図、並びにアナライザ格子24が異なる心周期における同一の運動状態において異なるサンプリング位置にある位相コントラスト装置(左側)及びアナライザ格子24が同一の心周期において取得された3つの異なる投影像に対して異なるサンプリング位置にある位相コントラスト装置(右側)の概略図を示す。図4は、更に、一定に位置された位相格子22及び検出器26も示している。
【0053】
図4の左側の例において、上記異なるサンプリング位置は、検出される動きの異なる周期における当該動き得る物体34の1つの運動状態に対応している。言い換えると、格子ユニット51の動きは、種々のサンプリング位置が異なる心周期における1つの同一の運動状態に対応するようなものである。所謂“異なる周期アプローチ”は、当該心臓の一連の位相コントラスト投影像が取得されると共に、並行して例えばECGが測定されるように実行される。位相歩進は、連続する心周期において同一の心運動状態を取得する際にアナライザ格子24が異なるサンプリング位置にあるように選択される。次いで、異なる心周期において取得されたフレームからの位相情報が、ECG情報に基づいて組み合わされる。
【0054】
図4の右側の例において、前記異なるサンプリング位置は、検出される動きの1つの周期における当該動き得る物体34の異なる運動状態に対応している。言い換えると、格子ユニット51の動きは、種々のサンプリング位置が1つの同一の心周期における異なる運動状態に対応するようなものである。動き補正された位相コントラスト画像を達成するための所謂“1周期アプローチ”は、位相コントラスト及び暗視野画像を計算する前の吸収投影像への画像に基づく位置合わせに基づくものであり得る。この方法によれば、位相コントラスト及び暗視野画像を発生するために、異なる格子ユニット位置による一連の(例えば、3つの)連続して取得された画像が用いられる。心運動の間に斯かる画像の間で発生し得る動きは、部分的吸収画像から推定され、従って、最終画像の計算の前に補正される。次いで、サンプリング位置の間における当該心臓の動きが、吸収画像に基づいて補償される。
【0055】
図5は、位相コントラスト及び/又は暗視野撮像方法のステップの概要図を示す。該方法は以下のステップを有する(必ずしも、この順序通りである必要はない)。
− ステップS1において、動き得る物体34の動きを検出し、
− ステップS2において、動き得る物体34に対して異なるサンプリング位置への格子ユニット51の位置決めを該動き得る物体34の検出された動きに基づいて制御する。
【0056】
本位相コントラスト及び/又は暗視野撮像方法は、動く物体34の位相コントラスト及び/又は暗視野撮像を可能にする。該動き得る物体34は、例えば、心臓、肺臓、呼吸運動に関わる筋肉、血管、冠動脈、肺動脈及び/又はこれらの一部であり得る。その動きは繰り返し運動であり得る。該動きは、例えば、周期的、巡回的、準周期的又は準巡回的運動であり得る。一例において、動き得る物体34の検出される動きは、心周期又は呼吸周期である。
【0057】
一例において、前記異なるサンプリング位置は、動き得る物体34の検出される動きの異なる周期における1つの運動状態に対応する。他の例において、前記異なるサンプリング位置は、動き得る物体34の検出される動きの1つの周期における異なる運動状態に対応する。
【0058】
本発明の他の例示的実施態様においては、コンピュータプログラム又はコンピュータプログラム要素が提供され、該コンピュータプログラム又はコンピュータプログラム要素は上述した実施態様のうちの1つによる方法の方法ステップを適切なシステム上で実行するように構成されることを特徴とする。
【0059】
従って、当該コンピュータプログラム要素は、本発明の一実施態様の一部でもあり得るコンピュータユニットに記憶することができる。このコンピュータユニットは、上述した方法を実行する又は該方法のステップの実行を含むように構成することができる。更に、該コンピュータユニットは前述した装置の構成要素を動作させるように構成することができる。該コンピュータユニットは、自動的に動作する及び/又はユーザの指令を実行するように構成することができる。コンピュータプログラムは、データプロセッサの作業メモリにロードすることができる。このようにして、該データプロセッサは本発明の方法を実行するように装備することができる。
【0060】
この本発明の例示的実施態様は、本発明を最初から使用するコンピュータプログラム及び更新により既存のプログラムを、本発明を使用するプログラムに変えるコンピュータプログラムの両方をカバーする。
【0061】
更に、当該コンピュータプログラム要素は、前述した方法の例示的実施態様の手順を満たす全ての必要なステップを提供することができる。
【0062】
本発明の更なる例示的実施態様によれば、CD−ROM等のコンピュータ読取可能な媒体も提供され、該コンピュータ読取可能な媒体は先の段落で説明されたコンピュータプログラム要素を記憶している。
【0063】
コンピュータプログラムは、光記憶媒体又は他のハードウェアと共に若しくは他のハードウェアの一部として供給される固体媒体等の適切な媒体により記憶及び/又は分配することができるのみならず、インターネット又は他の有線若しくは無線の通信システムを介して等のように他の形態で分配することもできる。
【0064】
しかしながら、当該コンピュータプログラムは、ワールドワイドウエブ等のネットワークを介して提供することもでき、斯様なネットワークからデータプロセッサの作業メモリにダウンロードすることもできる。本発明の更なる例示的実施態様によれば、本発明の前述した実施態様の1つによる方法を実行するように構成されたコンピュータプログラム要素を、ダウンロードのために利用可能にさせる媒体も提供される。
【0065】
本発明の実施態様は異なる主題に関して説明されたことに注意すべきである。特に、幾つかの実施態様は方法のタイプの請求項に関して説明されている一方、他の実施態様は装置のタイプの請求項に関して説明されている。しかしながら、当業者であれば上記及び下記の説明から、そうでないと明記しない限り、或るタイプの主題に関するフィーチャの間の全ての組み合わせに加えて、異なる主題に関するフィーチャの間の任意の組み合わせも本出願に開示されていると見なされることが分かるであろう。しかしながら、全てのフィーチャは各フィーチャの単なる寄せ集め以上の相乗効果を提供するように組み合わせることができるものである。
【0066】
以上、本発明を図面及び上記記載において詳細に図示及び説明したが、斯かる図示及び説明は解説的又は例示的であり、限定するものではないと見なされるべきである。即ち、本発明は開示された実施態様に限定されるものではない。開示された実施態様に対する他の変形例は、当業者によれば、請求項に記載された本発明を実施するに際し、図面、当該開示及び従属請求項の精査から理解し、実施することができるものである。
【0067】
尚、請求項において、“有する”なる文言は他の要素又はステップを排除するものではなく、単数形は複数を排除するものではない。また、単一のプロセッサ又は他のユニットは、請求項に記載された幾つかの項目の機能を充足することができる。また、特定の手段が相互に異なる従属請求項に記載されているという単なる事実は、これら手段の組み合わせを有利に使用することができないということを示すものではない。また、請求項における如何なる符号も、当該範囲を限定するものと見なしてはならない。
図1
図2
図3
図4
図5