特許第6199021号(P6199021)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ テールズの特許一覧

特許6199021サービスを提供するよう適合された少なくとも2つの衛星からなる1組の衛星を制御する方法およびシステム
<>
  • 特許6199021-サービスを提供するよう適合された少なくとも2つの衛星からなる1組の衛星を制御する方法およびシステム 図000002
  • 特許6199021-サービスを提供するよう適合された少なくとも2つの衛星からなる1組の衛星を制御する方法およびシステム 図000003
  • 特許6199021-サービスを提供するよう適合された少なくとも2つの衛星からなる1組の衛星を制御する方法およびシステム 図000004
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6199021
(24)【登録日】2017年9月1日
(45)【発行日】2017年9月20日
(54)【発明の名称】サービスを提供するよう適合された少なくとも2つの衛星からなる1組の衛星を制御する方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
   B64G 1/10 20060101AFI20170911BHJP
【FI】
   B64G1/10
【請求項の数】7
【外国語出願】
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-235542(P2012-235542)
(22)【出願日】2012年10月25日
(65)【公開番号】特開2013-95416(P2013-95416A)
(43)【公開日】2013年5月20日
【審査請求日】2015年10月7日
(31)【優先権主張番号】1103290
(32)【優先日】2011年10月28日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】505157485
【氏名又は名称】テールズ
(74)【代理人】
【識別番号】100071054
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 高久
(72)【発明者】
【氏名】サンク、エルベ
(72)【発明者】
【氏名】アマルリック、ジョエル
(72)【発明者】
【氏名】バッサレー、ピエール
(72)【発明者】
【氏名】ロジェ、グザヴィエ
【審査官】 諸星 圭祐
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第07270299(US,B1)
【文献】 米国特許第07720604(US,B1)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0027595(US,A1)
【文献】 特開2004−333391(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64G 1/10− 1/12
B64G 1/24− 1/38
B64G 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
他者に使用されるサービスを提供するよう適合された少なくとも2つの衛星からなる1組の衛星を制御するための方法であって、前記サービスは、所定の瞬間に前記1組の衛星自身の少なくとも一部によって使用される、方法であり、連続的または疑似連続的に、各衛星のそれぞれの昇交点赤経(Ω(t))の平均値(Ω(t))が計算され、各衛星に対し、前記平均値(Ω(t))と等しいセットポイントになるような前記昇交点赤経(Ω(t))の調整によって前記衛星の軌道の修正が制御される、方法。
【請求項2】
前記衛星の前記昇交点赤経(Ω(t))はそれぞれ、衛星がその地上管制局から見える所に位置する際に測定される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記衛星と前記地上管制局は、通信ネットワークを介して接続される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
単一の地上管制局は、前記1組の衛星に対して使用される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記衛星が前記サービスの提供に参加する際に適用される衛星の前記軌道を修正するための制御は、もはや前記衛星が前記サービスの提供に参加しなくなる瞬間まで保留することができる、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記計算および制御は、前記1組の衛星によって自律的に行われ、後者は、前記平均値の前記計算に必要なそれらの昇交点赤経値を同報通信するため、任意選択的に、互いに通信し合うことができる、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
他者に使用されるサービスを提供するよう適合された少なくとも2つの衛星からなる1組の衛星(S1、S2、S3)を制御するためのシステムであって、前記サービスは、所定の瞬間に前記1組の衛星自身の少なくとも一部によって使用されるシステムであり、連続的または疑似連続的に、各衛星のそれぞれの昇交点赤経(Ω(t))の平均値(Ω(t))を計算するための手段と、各衛星に対し、前記平均値(Ω(t))と等しいセットポイントになるような前記昇交点赤経(Ω(t))の調整によって前記衛星の軌道の修正を制御する手段とを備える、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サービスを提供するよう適合された少なくとも2つの衛星からなる1組の衛星を制御するための方法であって、サービスは、所定の瞬間に前記1組の衛星の少なくとも一部によって使用される方法に関する。
【背景技術】
【0002】
1組の衛星によって提供されるサービスは、例えば、通信または観測サービスであり得る。
【0003】
全く同一の軌道上またはある特定の軌道パラメータを共有する軌道上に打ち上げられる際に衛星団と呼ばれる場合が多い、1組の衛星を制御するシステムは公知である。
【0004】
人工衛星は、人間によって製造される物体であり、発射装置の補助の下で宇宙に送り出され、惑星または月などの天然衛星の周りに引き寄せられる。衛星のロケットに速度を与えることで、衛星は、天体の周りで軌道を描きながら、衛星自体を事実上無期限に宇宙に滞在させることができる。衛星のミッションに応じて定義される後者の軌道は、回帰軌道、静止軌道、楕円軌道、円軌道などの異なる形状を呈してもよく、低軌道、中軌道または高軌道などに分類されるおおよその高度に位置してもよい。
【0005】
人工衛星は、人工衛星が遂行しなければならないミッション用に特別に定義されたペイロードと、標準化されて、エネルギー、推進、熱制御、方向維持および通信の提供などの支援機能を実行する場合が多いプラットホームからなる。衛星は、指令を送信したり、地球局のネットワークによって収集されたデータを集めたりする地上管制センターによってモニタされる。ミッションを遂行するため、衛星は、衛星自体を基準軌道上に維持し、その機器を正確に方向付けなければならない。すなわち、地球衛星の事例では、特に重力場の不規則性、太陽と月の影響および低軌道に存在する大気によって生み出される抗力によって生じる軌道の自然な乱れを修正するには、定期的に作業を行う必要がある。
【0006】
1組の衛星によって提供されるサービスの運用期間は、装荷される燃料の質量およびその消費量に関連する。
【0007】
衛星に装荷されるこの燃料によって供給されるエネルギーの大部分は、標準軌道上にその軌道を維持する際およびその機器を方向付ける際に役立つ。
【0008】
宇宙ミッションの期間を制約する要因の1つは、燃料などの装荷された再生不可能な資源の使用である。これは、燃料に代表されよう過度のコストが原因で、ある特定の軌道関連の解決策が事実上利用できないほどの影響を与える。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的の1つは、とりわけ、サービスを提供できる状態にする1組の衛星の各衛星の燃料の消費量を制限して、前記衛星が、全く同一の量の燃料を衛星に装荷した状態でより長い期間このサービスを提供できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様によれば、サービスを提供するよう適合された少なくとも2つの衛星からなる1組の衛星を制御するための方法であって、サービスは、所定の瞬間に前記1組の衛星の少なくとも一部によって使用される、方法であり、連続的または疑似連続的に、各衛星のそれぞれの昇交点赤経の平均値が計算され、各衛星に対し、前記現時点における平均値と等しいセットポイントになるような昇交点赤経の調整によって衛星の軌道の修正が制御される方法が提案される。
【0011】
したがって、衛星は、衛星のそれぞれの軌道上に維持されないが、各衛星のそれぞれの昇交点赤経の現時点における平均値と等しいセットポイントになるように、それぞれの昇交点赤経を維持しながらドリフトすることができる。
【0012】
したがって、サービス提供を維持しながら、各衛星の燃料の消費量は、衛星のそれぞれの初期軌道上に1組の衛星を維持する場合と比較して、大いに削減される。
【0013】
提案される方法は、ドリフトさせる各衛星の個別の軌道パラメータを確実なものにすることによって衛星団または衛星群の事例における「燃料」制約を緩和する工程からなるが、その理由は、単に各衛星が衛星団の永年ドリフトの全体平均付近で制御されていれば、軌道パラメータが変化した場合であっても、いくつかの衛星の同時存在により、提供すべきサービスの中継が可能となるためである。
【0014】
図1の説明では、昇交点赤経が定義される。
【0015】
一実施形態によれば、前記衛星の昇交点赤経はそれぞれ、衛星がその地上管制局から見える所に位置する際に測定される。
【0016】
したがって、セットポイントの計算に必要なこの測定値は、セットポイントを調整する遠隔制御が衛星に向けて作動するまさにその位置で利用可能である。
【0017】
一実施形態では、地上管制局は、通信ネットワークによって接続される。
【0018】
したがって、地上管制局が通信ネットワークによってリンクされるという事実により、それぞれがその平均値の計算に必要なすべての昇交点赤経の測定値を有することができるため、衛星は、地理的に異なる局により制御できる。
【0019】
一実施形態によれば、単一の地球管制局は、前記1組の衛星に対して使用される。
【0020】
したがって、もはや昇交点赤経値を転送する必要はなく、この単一の局は平均値の計算を直接行うことができる。
【0021】
一実施形態では、前記衛星が前記サービスの提供に参加する際の衛星の軌道を修正するための制御は、もはや衛星が前記サービスの提供に参加しなくなる瞬間まで保留することができる。
【0022】
したがって、通常、サービスの使用不能につながる軌道修正(例えば、速度を修正するためのジェットの方向付けに起因する不整合のためなど)は、サービスがこの衛星上で使用されなくなる瞬間に行われるため、衛星の運用上の利用可能性が増加される。
【0023】
一実施形態によれば、計算および制御は、1組の衛星によって自律的に行われ、後者は、前記平均値の計算に必要なそれらの昇交点赤経値を同報通信するため、任意選択的に、互いに通信し合うことができる。
【0024】
また、本発明の別の態様によれば、サービスを提供するよう適合された少なくとも2つの衛星からなる1組の衛星を制御するためのシステムであって、サービスは、所定の瞬間に前記1組の衛星の少なくとも一部によって使用される、システムであり、連続的または疑似連続的に、各衛星のそれぞれの昇交点赤経の平均値を計算するための手段と、各衛星に対し、前記現時点における平均値と等しいセットポイントになるような昇交点赤経の調整によって衛星の軌道の修正を制御する手段とを備えるシステムが提案される。
【0025】
前述の説明のすべてにおいて、「疑似連続的」という用語は、衛星の軌道周期と比較して、モニタされたパラメータ(昇交点赤経)の変化が遅いことを意味する。言い換えれば、いくつかの衛星に対するこれらのパラメータの平均を計算するために、同じ時間に行われる完全同時測定を必要としない。例えば、軌道周回中に分散された測定は、十分に使用可能である。したがって、平均値を得るため、単に前記衛星が衛星のそれぞれの局の視野に入る際にこれらの測定を行うことによって、全く同一の日のうちに各衛星に対して異なる瞬間に行われた測定の平均を使用することに納得することができる。これこそが、「疑似連続的」と呼ばれる必ずしも同時ではない測定から平均値を計算するプロセスである。
【0026】
本発明は、非限定的な例として説明され、添付の図面で示される複数の実施形態をよく調べることでより良く理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】使用される物理的パラメータを概略的に示す。
図2】本発明の一態様による方法の工程を概略的に示す。
図3】本発明の一態様による制御システムの一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
異なる図面において、同一の参照番号を有する要素は同様のものである。
【0029】
図1では、衛星軌道の定義に使用される従来の変数を示す。
【0030】
非常に正確に完全な軌道を計算できる状態にする6つのパラメータに従って、宇宙空間における衛星の楕円軌道ELを定義することができる。これらのパラメータの2つ、すなわち、離心率および軌道長半径は、一平面における軌道を定義し、他の3つのパラメータ、すなわち、軌道傾斜角i、昇交点NA赤経ΩNAおよび近地点引数ωは、宇宙空間における平面配向を定義し、最後のパラメータ、すなわち、近地点通過時刻は、衛星の位置を定義する。
【0031】
軌道長半径aは、遠地点と近地点との間を隔てる距離の半分である。このパラメータは、楕円軌道または円軌道の絶対寸法を定義する。
【0032】
楕円の離心率eは、楕円の中心に相対的な焦点の距離、すなわち、中心から一焦点までの距離と軌道長半径の比率を測定する。軌道が楕円であれば、離心率は0<e<1である。
【0033】
軌道傾斜角iは軌道面が基準面となす角度であり、この例では、基準面は赤道EQ面である。
【0034】
昇交点NA赤経ΩNAは、春分点PVの方向と、昇交点NAと降交点NDを結ぶ交線との間の角度であり、赤道面内にある。春分点PVの方向は、太陽と春分点PV(春分の日の太陽の位置に相当する天文学上の基準点)を含む直線である。交線は、昇交点(物体が北向きに赤道を通過する交点)および降交点(物体が南向きに赤道を通過する交点)が属する直線である。
【0035】
近地点引数ωは、交線と近地点の方向(惑星(または、主要な天体)と物体の軌道上の近地点が属する直線)によって形成される角度であり、軌道面内にある。近地点経度Ωは、昇交点NA赤経ΩNAと近地点引数の合計である。
【0036】
図2は、サービスを提供するよう適合された少なくとも2つの衛星からなる1組の衛星を制御するための方法であって、サービスは、所定の瞬間に前記1組の衛星の少なくとも一部によって使用される、本発明の一態様による方法の工程を概略的に示す。
【0037】
連続的または疑似連続的に、添字iの各衛星のそれぞれの昇交点赤経Ω(t)の平均
値Ω(t)が計算され(工程21)、各衛星に対し、前記現時点における平均値ΩM(
t)と等しいセットポイントになるような昇交点赤経Ω(t)の調整によって衛星の軌道の修正が適用される(工程22)。
【0038】
前記衛星の昇交点赤経Ω(t)はそれぞれ、衛星がその地上管制局から見える所に位置する際に測定される。
【0039】
通信ネットワークによって地上管制局をリンクすることができる。前記1組の衛星に対し、単一の地上管制局を使用することができる。
【0040】
衛星がサービスの提供に参加する際に予定される衛星の軌道の修正は、もはや衛星が前記サービスの提供に参加しなくなる瞬間まで保留することができる。したがって、サービスの提供が中断されることはない。
【0041】
変形例として、計算および制御は、1組の衛星によって自律的に行われ、地上局を必要としない場合がある。
【0042】
図3は、15年の衛星群耐用年数に対する、120度の角度で隔てられた3つの軌道面上の3つの衛星群S1、S2およびS3の一例を示す。この例では、昇交点赤経Ω(t)に関して制御を行う、すなわち、位置維持により、衛星群全体の移動の共通部分または平均Ω(t)、未修正の移動の共通部分または平均に対する逸脱のみを修正する。
【0043】
この位置維持戦略により、位置維持の年間平均コストをかなり削減することができる。この例では、コストは、1年あたり150〜180m/sから1年あたりたったの15〜30m/sまで削減される。
【0044】
こうして直接達成された燃料(消耗燃料)の節約により、衛星の潜在的な耐用年数が増大し、これは、同じ耐用年数でより軽量の(より少ない燃料の)衛星を設計することができるか、または、既存の衛星もしくは既に打ち上げられた衛星に本発明を適用することによって、より長い耐用年数を得ることができるかのいずれかを意味する。
【0045】
既存の衛星団の事例では、本発明により、衛星の位置維持のための手順が変更され、結果的に、例えば、異なる操作タイミング図がもたらされ、異なる瞬間での異なる操作が実現され、概して燃料の消費量が削減される。
【符号の説明】
【0046】
21 工程
22 工程
図1
図2
図3