(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1層に混合されるフッ素樹脂の混合率は、10〜50重量%であって、前記第2層に混合されるフッ素樹脂の混合率は3〜30重量%である請求項1又は2に記載の空気マグネシウム電池。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された空気電池では、撥水膜を触媒シートに圧着することによって、撥水性及び密着性に優れたカソード体を得ることができる。しかし、撥水膜は比較的に薄く破れ易く、使用中に破断した部位から反応液が漏れ出て充放電を十分に行うことができなくなるという問題があった。
【0005】
本発明の課題は、従来の技術における空気マグネシウム電池の改良であって、
撥水性、通気性及び耐漏液性に優れるとともに、すぐに放電反応のピークに到達して比較的長時間一定の大きさの電流を放電することのできる空気マグネシウム電池の提供に関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明は、
縦断方向と横断方向とを有し、外枠体と、前記外枠体に固定されて
前記縦断方向へ延びるカソード体と、前記外枠体の内部に位置
して前記縦断方向へ延び、前記外枠体から前記縦断方向の外側へ延出する端部を有するアノード体とを含む空気マグネシウム電池を対象とする。
【0007】
本発明に係る空気電池は、
前記外枠体は、前記カソード体と前記アノード体との間にイオン化反応を生じさせるための反応液が注液されて注液域が形成される内部空間を有し、前記カソード体は、導電性のカーボン材とフッ素樹脂とを混合して形成された多孔質体からなる第1層と、前記外枠体内の
前記反応液と接するように前記第1層の一方面に接合された、活性炭とフッ素樹脂とを混合して形成された多孔質体からなる第2層とから構成されており、前記外枠体は、
前記横断方向において断面凸状であって、
前記内部空間において互いに連通する幅狭部と幅広部とを有し、前記アノード体と前記カソード体とは、前記幅狭部及び前記幅広部のうちのいずれか一方において互いに対向して位置する。
【0008】
本発明の実施態様の一つとして、前記第1層の前記一方面の反対側に位置する他方面に、導電性の金属材料から形成された第3層が接合される。
【0009】
本発明の他の実施態様の一つとして、前記第1層に混合されるフッ素樹脂の混合率
は、10〜50重量%であって、前記第2層に混合されるフッ素樹脂の混合率
は3〜30重量%である。
【0010】
本発明の他の実施態様一つとして、前記第2層は前記第1層よりもその外形寸法が小さく、かつ、前記第3層は前記第2層よりも幅狭である。
【0011】
本発明のさらに他の実施態様の一つとして、前記第3層は、多孔質体である。
【0012】
本発明のさらに他の実施態様の一つとして、前記外枠体は、内部に注入された反応液からなる注液域と、該注液域の上方に位置するスペースと、前記注液域の液面に浮かぶフロートと前記内部の発生ガスを排気するための通気管とを備える通気システムとを有し、前記通気管の一方端は前記外枠体の外面に形成された開口に連結され、前記通気管の他方端は前記フロートを貫通するジョイントに連結されており、前記ジョイントの開口端が前記スペースに位置する。
【0014】
本発明のさらに他の実施態様の一つとして、外枠体の内部において、前記幅狭部と前記幅広部との間に互いに離間対向する一対の
内壁が設けられる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る空気マグネシウム電池によれば、カソード体は、導電性のカーボン材とフッ素樹脂とを混合して形成された多孔質体からなる第1層と、外枠体内の反応液と接するように第1層の一方面に接合された、活性炭とフッ素樹脂とを混合して形成された多孔質体からなる第2層とから構成されており、撥水性及び通気性に優れるとともに、カソード体が第1層又は第2層のみから形成される場合に比して、早期に放電反応のピークに到達して比較的長時間一定の電流を発生させることができる。また、カソード全体が多孔質体から形成されることによって、比表面積が大きくなって酸素を多く取り込むことができるので、より大きな電流を発生させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<第1実施形態>
図1及び2を参照すると、本実施形態に係る空気マグネシウム電池10は、縦断方向Y及び横断方向X、それらに直交する厚さ方向Zとを有し、縦断方向Yにおいて互いに対向する第1及び第2面11,12と、厚さ方向Zにおいて互いに対向する第3及び第4面13,14と、横断方向Xにおいて互いに対向する第5面15及び第6面16とを有する角状の外枠体17を含む。空気マグネシウム電池10は、縦断方向Yの寸法L1が約50〜100mm、厚さ方向Zの寸法W1が約20〜70mm、横断方向Xの寸法W2が約20〜70mmであって、約1.0〜2.0Vの起電力を発生させることができる。空気マグネシウム電池10は、船舶等の大型タンカーに備え付けられた電気機械装置の動力源や災害等の緊急時における電力源としても使用可能であって、かかる場合には、各寸法L1,W1,W2は、数メートル以上の大きさを有し、それらを複合的に組み合わせることによってより大きな電力を発生させることもできる。
【0018】
外枠体17は、硬質のプラスチック材料から形成されており、第3面13には矩形薄板状のカソード体(空気極)20が位置しており、外枠体17内には、棒状のアノード体21が挿抜可能に挿入される。外枠体17内には、所要量の反応液24が注入可能であって、その内部には、外枠体17内全体の許容容積の約60〜80%の容量の液体が注入されてなる注液域25と、注液域25の上方に位置するスペースSとが形成される。外枠体17の第1面11には中央に開口を有する蓋体26が取り外し可能に螺着されており、開口には、アノード体21の端部21aが挿通された状態で固定される。アノード体21の端部21aには透孔が設けられており、該透孔にはリード線28が取り付けられる。また、カソード体20には、リード線29が取り付けられ、外枠体17の外部に延出している。
【0019】
かかる構成を有する空気マグネシウム電池10において、外枠体17の内部に反応液24が注入されることによって、反応液24が酸化触媒として作用してカソード体20とアノード体21との間にイオン化反応が生じる。イオン化したアノード体21から発生した電子がカソード体20で酸素と反応液中の水と反応して放電反応が生じて、カソード体20とアノード体21との間に電位差が生じて所定の起電力を発生する。かかる電気化学反応が発生することによって、外枠体17内には水酸化マグネシウムと反応ガス(水素ガス)が生成される。反応液は、水の他に塩水等の電解液を用いることができる。蓋体26を取り外すことによって、アノード体21が外枠体17内から抜き出されて電気化学反応が終わり起電力を生じなくなる。また、蓋体26を取り外すことによって、外枠体の内部に水等の液体を注入したり、新たな液体を注入するために内部の液体を排出したりすることができる。アノード体21は、イオン化傾向の比較的に大きな電極活物質、例えば、金属マグネシウム、アルミニウム、亜鉛等を用いることができる。
【0020】
カソード体20は、複数の層が積層されて形成されたものであって、カーボン材等の導電性材料から形成された第1層(電極層)31と、第1層31の一方面に取り付けられた活性炭等の正極活物質から形成された第2層(活性層)32と、第1層31の他方面31bに取り付けられた、導電性金属から形成された板状の第3層(集電層)33とから構成される。カソード体20は、第2層32の配置された側が外枠体17内に位置しており、第2層32の表面全体及び第2層32の外周から延出して位置する第1層31の一方面31aが外枠体17内において反応液24に接している。
【0021】
第1層31は、通気不透液性のカーボン材にフッ素樹脂を所定の比率で混合して生成した多孔質体のシート形状を有するものであって、フッ素樹脂の混合率(重量比)は、約3〜50重量%、好ましくは約10〜50重量%、さらに好ましくは約20〜40重量%である。フッ素樹脂の混合率が50重量%以上の場合には、第1層31全体の絶縁性が高くなり、電極膜としての導電性を十分に発揮できなくなるおそれがあるからである。第1層31に用いるカーボン材としては、例えば、撥水性かつ電気導電性を有する黒鉛やカーボンブラック等を用いることが好ましく、カーボンブラックを使用する場合には、例えば、アセチレンブラック、チャネルブラック、ファーネスブラック、ケッチェンブラック等の公知の材料を用いることができる。第1及び第2層31,32に用いるフッ素樹脂としては、せん断力が作用すると繊維状に転化する性質のものが好ましく、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン等を用いることができる。
【0022】
第1層31における「多孔質体」とは、粒状のカーボン材にバインダーとしてフッ素樹脂を混合してシートを形成した場合、バインダーとして熱可塑性合成樹脂等を使用した場合に比して粒子間の間隙が維持され、通気性が確保されることを意味する。また、第1層は多孔質体であることによって通気性が確保される一方、フッ素樹脂を混合したものであるから所要の防水性能を有し、反応液の漏出を効果的に防ぐことができる。また、第1層31の「通気不透液性」とは、多孔質体であるとともに、反応液に接する第2層32から反応液が浸出して外部に漏れるのを防ぐ役割を備えることを意味する。このとき、第1層31のフッ素樹脂の配合率が第2層32のフッ素樹脂の配合率に比して高い場合には、より高い防水性機能を発揮することができる。
【0023】
第2層32は、活性炭とフッ素樹脂とを所定の比率で混合した粉末状又は複数の開孔が形成されたシート状等の多孔質体であって、第1層31の一方面31aに塗布された導電性の接着剤を介して固定される。フッ素樹脂の混合率(重量比)は、約3〜50重量%,好ましくは約3〜30重量%,さらに好ましくは約5〜20重量%である。かかる混合率が30%以上になると必然的に活性炭の含有量が減少して電気容量が低下し、撥水性が極度に高まって濡れ性が悪化し、活性層として電気特性を発揮できなくなるおそれがあるからである。活性炭は、この種の電極材料として一般的に用いられているものであって、賦活により比表面積が極めて大きくなっていることによって、単位体積当たりの電気容量が大きな電極を形成することができる。第2層32の「多孔質体」とは、活性炭にバインダーとしてフッ素樹脂を混合してシートを形成した場合、バインダーとして熱可塑性合成樹脂等を使用した場合に比して粒子間の間隙が維持され、通気性が確保されるとともに、活性炭表面の細孔構造が維持されて吸着性に優れることを意味する。
【0024】
第3層33は、必要に応じて設けられるものであって、銅、ニッケル、アルミニウム、ステンレス、チタン等の少なくとも一種の金属材料から形成された箔状、板状、シート状のものであって、第1層31の他方面31bに塗布された導電性の接着剤を介して固定される。第3層33には、ステンレス鋼(SUS)等の導電性金属材料に金、等の良導電性金属を被膜した複合材を用いることもでき、また、金属材料をパンチング加工等によって、メッシュ状、ネット状に成形した多孔質体とすることもできる。第3層33を多孔質体(層)に形成した場合には、第1〜第3層31,32,33のすべてが多孔質体から形成されるので通気性に優れ、より多くの酸素を取り込むことができるとともに、第3層33を第1層31の他方面31bに接着の代わりに圧着によって接合することができる。第3層33は、第1層31と第2層32との間に配置することも可能であるが、本実施形態のように、第2層32が位置する一方面31aと反対側の他方面31bに配置することによって、第3層33が電解液で濡れることはなく、また、第1及び第2層31,32の通気性を阻害することがないので、より高い放電流を得ることができる。なお、第3層33は、多孔質体のほかに、第2層32より幅狭であることによって、第1層31及び第2層32への通気を十分に確保することができる。
【0025】
図3を参照すると、カソード体20において、第2層32は、反応液24と接する側に配置される。このように第2層32を外枠体17内に配置することによって、第2層32を用いずに直接に第1層31が反応液24と接する場合に比してより放電反応がピークに到達するまでの時間を短くすることができ、より大きな電流を得ることができる。すなわち、カーボン材等に比して活性炭にはより多くの酸素が吸着されており電子と素早く反応することによって、ピークに到達するまでの時間を短くすることができ、かつ、より大きな電流を発生させることができる。また、活性炭とフッ素樹脂とをシート状に成形した第2層32のみの場合には、次第に電解液が第2層32に浸透して内部に空気が流入し難くなることから放電反応が弱くなるおそれがあるところ、外側に通気不透液性の第1層31が配置されることによって、反応液24の浸透を防ぎ、カソード体20全体において効率よく空気を透過させることができるので、第2層32における放電反応の寿命、ひいては、カソード体20の電極としての寿命を長期化させることができる。また、第2層32の外周の外方に位置する第1層31の延出部分の一部35が、注液域25の上方のスペースSに位置している。かかる場合には、内部に充満した発生ガスが該部位35を介して外部に放出され、外枠体17内が高圧になるのを防止しうる。
【0026】
本実施形態においては、カソード体20を構成する各層の各寸法について言えば、縦断方向Yの寸法L2が約50〜90mm、横断方向Xの寸法W3(幅寸法)が約20〜60mm、厚さ方向Zの寸法が約1.0〜1.5mmである。第2層32は、第1層31よりも全体的に一回り小さく、その縦断方向Yの寸法L3は、約30〜70mm、横断方向Xの寸法W4は、約15〜55mmである。第3層33は第1層31とほぼ同じ縦断方向Yの寸法を有する一方、第1及び第2層31,32に比べて幅狭であって、その横断方向Xの寸法(幅寸法)W5は約15〜30mmである。第3層33が第1及び第2層31,32に比べて幅狭であることによって、第3層33によって第1及び第2層31,32への空気の透過が阻害されることはなく、一定の電流を得ることができる。
【0027】
既述のとおり、第3層33はオプションであって、カソード体20は第1層31と第2層32との2層構造から形成されていてもよい。また、本実施形態の構成は、通常の単3形、単1形等の各種の大きさの電池や船舶や半導体工場等における大型の電源供給装置にも利用することができる。
【0028】
図4は、カソード体20の変更例を示すものであって、カソード体20は、第1〜第3層31,32,33が積層された3層構造であって、第2層32の表面側を除く外周が第1層31に被覆されている。かかる構成における第1及び第2層31,32の積層は、第2層32の上にそれよりもひと回り大きな外形を有する第1層31を積層して、それらを圧延することによって形成することができる。本実施例におけるカソード体20においては、第2層32の表面を除く外周が第1層31に被覆されていることによって、第2層32全体に反応液24が浸出するのを防ぐとともに、反応液24が外枠体17の外部へ漏出するのを有効に防止することができる。
【0029】
図5は、第1層(電極層)のみ(比較例1〜3)、第2層(活性層)のみ(比較例4)、第1層と第2層との2層構造(実施例1及び2)からそれぞれなるカソード体を使用した場合における、発生した電流値(mA)と経過時間(h)とを示す表である。なお、本測定に使用した空気マグネシウム電池の各寸法についていえば、外枠体17の各寸法L1,W1,W2がそれぞれ、約100mm,約60mm,約60mm,カソード体20の各寸法L2,L3,W3,W4,W5がそれぞれ、約72mm,約60mm,約40mm,約30mm,約20mmである。
【0030】
<実施例1>
実施例1には、77重量%のカーボン材と23重量%のフッ素樹脂との混合から形成された第1層と、95重量%の活性炭と5重量%のフッ素樹脂との混合から形成された第2層との2層構造から構成されたカソード体を使用した。
【0031】
<実施例2>
実施例2には、77重量%のカーボン材と23重量%のフッ素樹脂との混合から形成された第1層と、79重量%の活性炭と6重量%のカーボン材と、15重量%のフッ素樹脂との混合から形成された第2層との2層構造から構成されたカソード体を使用した。
【0032】
<比較例1>
比較例1には、カソード体が95重量%のカーボン材と、5重量%のフッ素樹脂とを混合して形成された第1層のみからなるカソード体を使用した。
【0033】
<比較例2>
比較例2は、カソード体が77重量%のカーボン材と、23重量%のフッ素樹脂とを混合して形成された第1層のみからなる。
【0034】
<比較例3>
比較例3は、カソード体が50重量%のカーボン材と、50重量%のフッ素樹脂とを混合して形成された第1層のみからなる。
【0035】
<比較例4>
比較例4は、カソード体が79重量%の活性炭と、6重量%のカーボン材と、15重量%のフッ素樹脂とを混合して形成された第2層のみからなる。
【0036】
<比較例5>
比較例5には、77重量%のカーボン材と23重量%のフッ素樹脂との混合から形成された第1層と、40重量%の活性炭と60重量%のフッ素樹脂との混合から形成された第2層との2層構造から構成されたカソード体を使用した。
【0037】
図5のグラフに示すとおり、実施例1及び2においては、比較的に早期(開始から約1〜2分)に電流値がピーク値(約200mA)となり、40〜50時間まで安定して高い電流値を発生させることができた。実施例1のピーク値の時間が実施例2のそれよりも短くなっているのは、活性炭を比較的に多く含有させることによって、アノード体とのイオン化反応が進み、アノード体が早く消費されたためと考えられる。一方、比較例1〜3においては、アノード体が消費されるまで、比較的に長時間(約80時間)に亘って一定の電流値を発生することができるが、ピーク値が実施例のピーク値の0.3〜0.7倍であった。比較例4においては、活性炭に水が浸透したために約15時間経過後から次第に電流値が下がり始めて、50時間経過後にはピーク時の約半分の電流値となっていた。比較例5においては、第2層におけるフッ素樹脂の混合割合が高く、活性炭の割合が大幅に減少して十分な酸素を取り込むことができず電子移動がスムーズに行われなったために、非常に微弱な電流が発生したのみであった。
【0038】
このように、第1層と第2層との2層構造から構成されたカソード体は、第1層のみ又は第2層のみから構成される場合に比して、比較的に早期に所定の大きさのピーク電流まで到達し、第2層への水の浸透や電流値の低下を招くことなく、
比較的に長時間その状態を維持することができる。50時間経過後には、電流値が徐々に下がり始めるが、アノード体と反応液(水)とを交換することによって、再びピーク時の電流値を得ることができる。
【0039】
<第2実施形態>
図6,7を参照すると、本実施形態において、空気マグネシウム電池10は、外枠体17の第3面13と第4面14とにそれぞれ位置する一対のカソード体20A,20Bと、外枠体17内に挿入されたアノード体21と、外枠体17内の発生ガスを排出するための通気システムとを有する。一対のカソード体20A,20Bがアノード体21を挟み込むように配置させることによって、1つのカソード体20Aのみを用いる場合に比して、より大きな電流を発生させることができる。
【0040】
外枠体17の第1面11の外面に位置する通気用及び貯水用タンク41と、タンク41に連結されるシリコーンゴム等の軟質部材から形成された通気管42とを有する。タンク41は、第1面11に設けられた開口(取付孔)にゴム製の止水シール43を介して挿入される延出部44を有する。タンク41は、延出部44を軸として外枠体17に対して360度回転可能に取り付けられており、使用を重ねることによって延出部44と止水シール43との摺動が繰り返されて後者が摩耗したときには、それを交換することができる。タンク41は、通気管42からタンク41に流れ込んできた発生ガスを排気するための通気孔45と、タンク41内に流れ込んできた反応液24を排出するための排水孔46とを有し、排水孔46は栓47で封止される。タンク41内には、通気孔45と排水孔46との間に分離壁48が設けられており、分離壁48の排水孔46側に通気管42に浸入してタンク41に移動した反応液24が貯められる。また、タンク41の内壁と分離壁48の先端部48aとの間にはクリアランス50が形成されており、タンク41の排水孔46側には、金属製のウエイト52が配置される。
【0041】
図8を参照すると、既述のとおり、タンク41は、外枠体17に回転可能に連結されているところ、ウエイト52が排水孔46側に位置することから、外枠体17の第5面15が上方に位置する態様から上下を逆にして第6面16が上方に位置するように配置したとしても、ウエイト52の自重によってタンク41が回転して排水孔46側が下方に位置する。
【0042】
通気管42の他端には、ゴム製又はプラスチック製のフロート54がその中央部を貫通するジョイント55を介して連結される。フロート54内は中空であって、通気管42の他端側には金属製のウエイト56が配置されている。ウエイト56は、その質量がフロート54の約半分が反応液24の液面24aから露出するように調整されている。ジョイント55のフロート54を貫通する側の端部は先細状であって、開口端55aを有する。本実施形態において、互いに連結されるタンク、通気管及びジョイントは別体から構成されているが、それらの一部又は全部が一体に成形されていてもよい。
【0043】
本実施形態の場合には、フロート54が液面上に浮き上がってジョイント55の開口端55aがスペースS内に位置していることから、開口端55aからスペースS内の発生ガスの一部が通気管42内に流入してタンク41内に移動し、クリアランス50を通過して外部に放出される。それにより、外枠体17内の圧力を下げることができるので、発電時間の経過とともに多量に発生ガスが発生しても、それによる内圧によって外枠体17がひび割れ等するのを防止することができる。
【0044】
<第3実施形態>
図9,10を参照すると、本実施形態に係る空気マグネウム電池10は、断面凸状の外枠体17と、その第3面13に位置するカソード体20と、外枠体17内に挿入されたアノード体21と、通気システムとを有する。外枠体17は、アノード体21が挿通された幅狭部60と、幅狭部60の下方に位置する幅広部61とから構成される。幅狭部60と幅広部61との内部は連通されており、外枠体17内には反応液24が注入され、その液面24a上にはフロート54が浮いている。
【0045】
既述のとおり、アノード体21とカソード体20とにおける電気化学反応によって、外枠体17の内部には水素ガスが発生するほかに、水酸化マグネシウムが沈殿物64として溜まる。該沈殿物64がアノード体21に接触したりそれを被覆するような状態にある場合には、アノード体21のイオン化が妨げられ、所要の起電力を発生させることができなくなるおそれがある。本実施形態の場合には、幅狭部60の内部にアノード体21が位置し、幅狭部60よりもより広い内部スペースを有する幅広部61に沈殿物64が溜まるので、それが堆積してアノード体21に接触することはない。本実施形態においては、通気システムはオプションであるが、外枠体17がかかる形状を有し、かつ、外枠体17に通気システムが配置されることによって、電気化学反応により生じるガスと沈殿物64とによる問題を解決することができる。なお、かかる効果を奏する限りにおいて、アノード体21とカソード体20とは、ともに幅狭部60ではなく幅広部61に位置していてもよい。ただし、電気化学反応が有効に行われるためには、アノード体21とカソード体20との離間寸法Rは、約2〜30mmであることが好ましい。
したがって、離間寸法Rが一定の範囲内である必要から、カソード体20及びアノード体21を幅狭部60に配置し、幅広部61をより大きな収容スペースを有するものにしてもよい。
【0046】
図11を参照すると、外枠体17内の内部において、幅狭部60と幅広部61との間に互いに離間して対向する一対の内壁68a,68bを設けることもできる。かかる場合には、該内壁68a,68b間に位置する離間部位69を介して沈殿物64が幅広部61に移動し堆積される。離間部位69の幅寸法は幅狭部60の幅寸法よりも小さく、幅狭部60が下方に位置する態様で配置されたとしても、多量の沈殿物64が幅狭部60に移動するおそれはない。
【0047】
空気マグネシウム電池10を構成する各部材としては、前記の材料以外に、この種の物品に用いられる材料を制限なく用いることができる。また、各実施形態における各構成部材の各種寸法は、必要な起電力の大きさに合せて適宜変更することができる。