(54)【発明の名称】無線電力伝送によって電力供給される被給電機器の受電電圧制御方法、当該受電電圧制御方法によって調整された無線電力伝送装置、及び、その無線電力伝送装置の製造方法
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記給電コイルと前記給電共振器との間における結合係数k12、前記給電共振器と前記受電共振器との間における結合係数k23、及び、前記受電共振器と前記受電コイルとの間における結合係数k34の値の少なくとも1つを調整することにより、前記被給電機器の受電電圧を調整することを特徴とする請求項1に記載の受電電圧制御方法。
前記各結合係数k12、k23、k34の値は、それぞれ前記給電コイルと前記給電共振器との間の距離、前記給電共振器と前記受電共振器との間の距離、及び、前記受電共振器と前記受電コイルとの間の距離の少なくとも1つを変化させることにより調整されることを特徴とする請求項2に記載の受電電圧制御方法。
前記コイルL1、前記コイルL2、前記コイルL3、及び、前記コイルL4におけるインダクタンスの値の少なくとも1つを調整することにより、前記被給電機器の受電電圧を調整することを特徴とする請求項1に記載の受電電圧制御方法。
前記給電モジュール及び前記受電モジュールを構成する前記複数の回路素子の各素子値からなる複数のインピーダンスの各インピーダンス、及び、複数の相互インダクタンスの各インダクタンスをパラメータとして、当該パラメータをそれぞれ変えることにより、前記給電モジュールに供給する電力の前記駆動周波数に対する伝送特性の値が、前記共振周波数よりも低い駆動周波数帯域及び前記共振周波数よりも高い駆動周波数帯域にそれぞれピークを有するように設定し、
前記給電モジュールに供給する電力の駆動周波数は、前記共振周波数よりも低い駆動周波数帯域に現れる伝送特性のピーク値に対応する帯域、又は、前記共振周波数よりも高い駆動周波数帯域に現れる伝送特性のピーク値に対応する帯域であることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の受電電圧制御方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
もっとも、特許文献3の背景技術(段落[0008]〜[0010]参照)、特許文献4のワイヤレス電力伝送システムの明細書中にも記載されているように、給電装置に供給する電力の駆動周波数に、給電装置及び受電装置が備える共振器が有する共振周波数を一致させる(若しくは、駆動周波数を、給電装置及び受電装置が備える共振器が有する共振周波数に一致させる)ことにより、ワイヤレス給電における電力伝送効率を最大とすることができることが一般的に知られており(特許文献4の段落[0013]参照)、電力伝送効率の最大化を求めてこのような設定にするのが一般的である。そして、このような給電装置及び受電装置における共振器は、それぞれLC共振回路を含む構成にされているため、電力伝送効率を最大にするには、給電装置及び受電装置におけるLC共振回路はそれぞれの共振周波数が駆動周波数に一致するような値(コンデンサやコイルなどの容量:共振条件 ωL=1/ωC)に必然的に決定されてしまう(特許文献4の段落[0027]参照)。
【0010】
このように、ワイヤレス給電における電力伝送効率を最大化するために、給電装置に供給する電力の駆動周波数を共振周波数と一致させることが一般的であるが、LC共振回路のコンデンサやコイルなどの容量が予め決まってしまい、LC共振回路のコンデンサやコイルなどの容量を、被給電機器に印加される受電電圧を制御するパラメータとして自由に変更できなくなってしまう。即ち、被給電機器に印加される受電電圧を制御するために、LC共振回路のコンデンサやコイルなどの容量を自由に設定できないことは、携帯性・コンパクト化・低コスト化が求められる携帯型の電子機器の設計に対する自由度が低いことを意味する。
【0011】
そこで、本発明の目的は、無線電力伝送を行う給電装置及び受電装置に設けられた回路素子の容量などを自由に調整することにより、被給電機器に印加される受電電圧を制御することができる受電電圧制御方法、当該受電電圧制御方法によって調整された無線電力伝送装置、及び、その無線電力伝送装置の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するための発明の一つは、無線電力伝送装置を構成する給電モジュールから受電モジュールに対して磁界を変化させて電力を供給し、当該供給された電力を前記受電モジュールに接続された被給電機器に給電する際の前記被給電機器の受電電圧の制御方法であって、前記給電モジュールに供給する電力の駆動周波数が、前記給電モジュール及び前記受電モジュールにおける共振周波数とはならない値で供給し、前記給電モジュール及び前記受電モジュールを構成する複数の回路素子の各素子値をパラメータとして、当該パラメータをそれぞれ変えることにより、前記被給電機器の受電電圧を調整することを特徴としている。
【0013】
上記方法によれば、給電モジュールに供給する電力の駆動周波数を、給電モジュール及び受電モジュールにおける共振周波数とはならない値で供給することにより、給電モジュール及び受電モジュールを構成する複数の回路素子の各素子値を、被給電機器の受電電圧を調整するパラメータとして自由に変更することができるようになる。そして、当該パラメータをそれぞれ変えることにより、被給電機器の受電電圧を調整することができる。このように被給電機器の受電電圧を調整することができれば、受電電圧を被給電機器が有する耐電圧以下、且つ、受電電圧を被給電機器が有する駆動電圧以上に保持することができる。
また、被給電機器の受電電圧を制御するために、給電モジュール及び受電モジュールを構成する複数の回路素子の各素子値をパラメータとして自由に設定できることになり、無線電力伝送装置の設計自由度を高めて、無線電力伝送装置自体の携帯性・コンパクト化・低コスト化を実現することができる。
【0014】
また、上記課題を解決するための発明の一つは、少なくとも給電コイル及び給電共振器を備えた給電モジュールから、少なくとも受電共振器及び受電コイルを備えた受電モジュールに対して共振現象によって電力を供給し、当該供給された電力を前記受電コイルに接続された被給電機器に給電する際の前記被給電機器の受電電圧の制御方法であって、
前記給電モジュールに供給する電力の駆動周波数が、前記給電モジュール及び受電モジュールにおける共振周波数とはならない値で供給し、前記給電コイルを構成する、コイルL
1を含む各回路素子が有する合計のインピーダンスをZ
1、前記給電共振器を構成する、コイルL
2を含む各回路素子が有する合計のインピーダンスをZ
2、前記受電共振器を構成する、コイルL
3を含む各回路素子が有する合計のインピーダンスをZ
3、前記受電コイルを構成する、コイルL
4を含む各回路素子が有する合計のインピーダンスをZ
4、前記被給電機器の合計の負荷インピーダンスをZ
L、前記給電コイルのコイルL
1と前記給電共振器のコイルL
2との間の相互インダクタンスをM
12、前記給電共振器のコイルL
2と前記受電共振器のコイルL
3との間の相互インダクタンスをM
23、前記受電共振器のコイルL
3と前記受電コイルのコイルL
4との間の相互インダクタンスをM
34、前記給電コイルに入力される入力電流をI
1、とし、前記給電コイル、前記給電共振器、前記受電共振器、及び、前記受電コイルを構成する複数の回路素子の各素子値、及び、前記相互インダクタンスをパラメータとして、当該パラメータをそれぞれ変えることにより、下記関係式により導出される前記被給電機器の受電電圧V
Lを制御することを特徴としている。
【0015】
上記方法によれば、少なくとも給電コイル及び給電共振器を備えた給電モジュールから、少なくとも受電共振器及び受電コイルを備えた受電モジュールに対して共振現象によって電力を供給し、供給された電力を受電コイルに接続された被給電機器に給電する際の被給電機器の受電電圧の制御方法に関して、上記関係式を満たすようにパラメータをそれぞれ変えることにより、被給電機器の受電電圧を調整することができる。このように、被給電機器の受電電圧を調整するために、給電モジュール及び受電モジュールを構成する複数の回路素子の各素子値をパラメータとして、上記関係式を満たすように自由に設定できることになり、無線電力伝送装置の設計自由度を高めて、無線電力伝送装置自体の携帯性・コンパクト化・低コスト化を実現することができる。
【0016】
また、上記課題を解決するための発明の一つは、前記給電コイルと前記給電共振器との間における結合係数k
12、前記給電共振器と前記受電共振器との間における結合係数k
23、及び、前記受電共振器と前記受電コイルとの間における結合係数k
34の値の少なくとも1つを調整することにより、前記被給電機器の受電電圧を調整することを特徴とする受電電圧制御方法である。
【0017】
上記方法によれば、少なくとも給電コイル及び給電共振器を備えた給電モジュールから、少なくとも受電共振器及び受電コイルを備えた受電モジュールに対して共振現象によって電力を供給し、供給された電力を受電コイルに接続された被給電機器に給電する際の被給電機器の受電電圧を制御することを目的に、給電コイルと給電共振器との間における結合係数k
12、給電共振器と受電共振器との間における結合係数k
23、及び、受電共振器と受電コイルとの間における結合係数k
34の値を調整することによって、被給電機器の受電電圧を調整することができる。
【0018】
また、上記課題を解決するための発明の一つは、前記各結合係数k
12、k
23、k
34の値は、それぞれ前記給電コイルと前記給電共振器との間の距離、前記給電共振器と前記受電共振器との間の距離、及び、前記受電共振器と前記受電コイルとの間の距離の少なくとも1つを変化させることにより調整されることを特徴とする受電電圧制御方法である。
【0019】
上記方法によれば、給電コイルと給電共振器との間の距離を変化させることにより、結合係数k
12の値を変化させることができ、給電共振器と受電共振器との間の距離を変化させることにより、結合係数k
23の値を変化させることができ、受電共振器と受電コイルとの間の距離を変化させることにより、結合係数k
34の値を変化させることができる。これによれば、給電コイルと給電共振器との間の距離、給電共振器と受電共振器との間の距離、及び、受電共振器と受電コイルとの間の距離を物理的に変化させるという簡易な作業により、それぞれのコイル間の結合係数の値を変えることができる。即ち、給電コイルと給電共振器との間の距離、給電共振器と受電共振器との間の距離、及び、受電共振器と受電コイルとの間の距離を物理的に変化させるという簡易な作業によって、被給電機器の受電電圧を調整することができる。
【0020】
また、上記課題を解決するための発明の一つは、前記給電共振器と前記受電共振器との間の距離、及び、前記受電共振器と前記受電コイルとの間の距離を固定した場合、前記被給電機器の受電電圧は、前記給電コイルと前記給電共振器との間の距離を短くするにつれて、前記給電コイルと前記給電共振器との間における前記結合係数k
12の値が大きくなり、前記結合係数k
12の値が大きくなるにつれて、当該被給電機器の受電電圧が小さくなる特性に基づいて調整されることを特徴とする受電電圧制御方法である。
【0021】
上記方法によれば、給電共振器と受電共振器との間の距離、及び、受電共振器と受電コイルとの間の距離を固定した場合、給電コイルと給電共振器との間の距離を短くすることにより、給電コイルと給電共振器との間における結合係数k
12の値を大きくし、結合係数k
12の値を大きくすることにより被給電機器の受電電圧を小さくすることができる。逆に、給電コイルと給電共振器との間の距離を長くすることにより、給電コイルと給電共振器との間における結合係数k
12の値を小さくし、結合係数k
12の値を小さくすることにより被給電機器の受電電圧を大きくすることができる。
上記特性を利用した受電電圧制御方法では、給電コイルと給電共振器との間の距離を物理的に変化させるという簡易な作業によって、被給電機器の受電電圧を調整することができる。換言すると、被給電機器の受電電圧の調整を、無線電力伝送装置において新たな機器を設けずに実現することができる。即ち、無線電力伝送装置の部品点数を増やさずに、被給電機器の受電電圧を調整することが可能となる。
【0022】
また、上記課題を解決するための発明の一つは、前記給電コイルと前記給電共振器との間の距離、及び、前記給電共振器と前記受電共振器との間の距離を固定した場合、前記被給電機器の受電電圧は、前記受電共振器と前記受電コイルとの間の距離を短くするにつれて、前記受電共振器と前記受電コイルとの間における前記結合係数k
34の値が大きくなり、前記結合係数k
34の値が大きくなるにつれて、当該被給電機器の受電電圧が大きくなる特性に基づいて調整されることを特徴とする受電電圧制御方法である。
【0023】
上記方法によれば、給電コイルと給電共振器との間の距離、及び、給電共振器と受電共振器との間の距離を固定した場合、受電共振器と受電コイルとの間の距離を短くすることにより、受電共振器と受電コイルとの間における結合係数k
34の値を大きくし、結合係数k
34の値を大きくすることにより被給電機器の受電電圧を大きくすることができる。逆に、受電共振器と受電コイルとの間の距離を長くすることにより、受電共振器と受電コイルとの間における結合係数k
34の値を小さくし、結合係数k
34の値を小さくすることにより被給電機器の受電電圧を小さくすることができる。
上記特性を利用した受電電圧制御方法では、受電共振器と受電コイルとの間の距離を物理的に変化させるという簡易な作業によって、被給電機器の受電電圧を調整することができる。換言すると、被給電機器の受電電圧の調整を、無線電力伝送装置において新たな機器を設けずに実現することができる。即ち、無線電力伝送装置の部品点数を増やさずに、被給電機器の受電電圧を調整することが可能となる。
【0024】
また、上記課題を解決するための発明の一つは、前記コイルL
1、前記コイルL
2、前記コイルL
3、及び、前記コイルL
4におけるインダクタンスの値の少なくとも1つを調整することにより、前記被給電機器の受電電圧を調整することを特徴とする受電電圧制御方法である。
【0025】
上記方法によれば、少なくとも給電コイル及び給電共振器を備えた給電モジュールから、少なくとも受電共振器及び受電コイルを備えた受電モジュールに対して共振現象によって電力を供給し、供給された電力を受電コイルに接続された被給電機器に給電する際の被給電機器の受電電圧を制御することを目的に、給電コイルのコイルL
1、給電共振器のコイルL
2、受電共振器のコイルL
3、及び、受電コイルのコイルL
4におけるインダクタンスの値の少なくとも1つを調整することによって、被給電機器の受電電圧を調整することができる。
【0026】
また、上記課題を解決するための発明の一つは、前記コイルL
2、前記コイルL
3、及び、前記コイルL
4におけるインダクタンスの値を固定した場合、前記被給電機器の受電電圧は、前記コイルL
1の値が大きくなるにつれて、前記被給電機器の受電電圧が小さくなる特性に基づいて調整されることを特徴とする受電電圧制御方法である。
【0027】
上記方法によれば、コイルL
2、コイルL
3、及び、コイルL
4におけるインダクタンスの値を固定した場合、コイルL
1の値を大きくすることにより、被給電機器の受電電圧を小さくすることができる。逆に、コイルL
1の値を小さくすることにより、被給電機器の受電電圧を大きくすることができる。
【0028】
また、上記課題を解決するための発明の一つは、前記コイルL
1、前記コイルL
3、及び、前記コイルL
4におけるインダクタンスの値を固定した場合、前記被給電機器の受電電圧は、前記コイルL
2の値が大きくなるにつれて、前記被給電機器の受電電圧が小さくなる特性に基づいて調整されることを特徴とする受電電圧制御方法である。
【0029】
上記方法によれば、コイルL
1、コイルL
3、及び、コイルL
4におけるインダクタンスの値を固定した場合、コイルL
2の値を大きくすることにより、被給電機器の受電電圧を小さくすることができる。逆に、コイルL
2の値を小さくすることにより、被給電機器の受電電圧を大きくすることができる。
【0030】
また、上記課題を解決するための発明の一つは、前記コイルL
1、前記コイルL
2、及び、前記コイルL
4におけるインダクタンスの値を固定した場合、前記被給電機器の受電電圧は、前記コイルL
3の値が大きくなるにつれて、前記被給電機器の受電電圧が大きくなる特性に基づいて調整されることを特徴とする受電電圧制御方法である。
【0031】
上記方法によれば、コイルL
1、コイルL
2、及び、コイルL
4におけるインダクタンスの値を固定した場合、コイルL
3の値を大きくすることにより、被給電機器の受電電圧を大きくすることができる。逆に、コイルL
3の値を小さくすることにより、被給電機器の受電電圧を小さくすることができる。
【0032】
また、上記課題を解決するための発明の一つは、前記コイルL
1、前記コイルL
2、及び、前記コイルL
3におけるインダクタンスの値を固定した場合、前記被給電機器の受電電圧は、前記コイルL
4の値が大きくなるにつれて、前記被給電機器の受電電圧が大きくなる特性に基づいて調整されることを特徴とする受電電圧制御方法である。
【0033】
上記方法によれば、コイルL
1、コイルL
2、及び、コイルL
3におけるインダクタンスの値を固定した場合、コイルL
4の値を大きくすることにより、被給電機器の受電電圧を大きくすることができる。逆に、コイルL
4の値を小さくすることにより、被給電機器の受電電圧を小さくすることができる。
【0034】
また、上記課題を解決するための発明の一つは、前記給電モジュール及び前記受電モジュールを構成する前記複数の回路素子の各素子値、及び、前記相互インダクタンスをパラメータとして、当該パラメータをそれぞれ変えることにより、前記給電モジュールに供給する電力の前記駆動周波数に対する伝送特性の値が、前記共振周波数よりも低い駆動周波数帯域及び前記共振周波数よりも高い駆動周波数帯域にそれぞれピークを有するように設定し、前記給電モジュールに供給する電力の駆動周波数は、前記共振周波数よりも低い駆動周波数帯域に現れる伝送特性のピーク値に対応する帯域、又は、前記共振周波数よりも高い駆動周波数帯域に現れる伝送特性のピーク値に対応する帯域であることを特徴とする受電電圧制御方法である。
【0035】
上記方法によれば、給電モジュールに供給する電力の駆動周波数に対する伝送特性の値が、給電モジュール及び受電モジュールにおける共振周波数よりも低い駆動周波数帯域及び共振周波数よりも高い駆動周波数帯域にそれぞれピークを有するように設定した場合に、給電モジュールに供給する電力の駆動周波数を、共振周波数よりも低い駆動周波数帯域に現れる伝送特性のピーク値に対応する帯域の周波数に設定することにより、比較的高い伝送特性を確保することができる。
また、この場合、給電モジュールの外周側に発生する磁界と受電モジュールの外周側に発生する磁界とが打ち消し合うことにより、給電モジュール及び受電モジュールの外周側に、磁界による影響が低減されて、給電モジュール及び受電モジュールの外周側以外の磁界強度よりも小さな磁界強度を有する磁界空間を形成することができる。これにより、形成した磁界空間に、磁界の影響を受けたくない回路等を格納することで、スペースの有効活用ができ、無線電力伝送装置自体の小型化を図ることが可能になる。
一方、給電モジュールに供給する電力の駆動周波数を、共振周波数よりも高い駆動周波数帯域に現れる伝送特性のピーク値に対応する帯域の周波数に設定することにより、比較的高い伝送特性を確保することができる。
また、この場合、給電モジュールの内周側に発生する磁界と受電モジュールの内周側に発生する磁界とが打ち消し合うことにより、給電モジュール及び受電モジュールの内周側に、磁界による影響が低減されて、給電モジュール及び受電モジュールの内周側以外の磁界強度よりも小さな磁界強度を有する磁界空間を形成することができる。これにより、形成した磁界空間に、磁界の影響を受けたくない回路等を格納することで、スペースの有効活用ができ、無線電力伝送装置自体の小型化を図ることが可能になる。
【0036】
また、上記課題を解決するための発明の一つは、上記に記載の受電電圧制御方法により調整されたことを特徴とする無線電力伝送装置である。
【0037】
上記構成によれば、被給電機器の受電電圧の調整を、新たな機器を設けずに実現することができる。即ち、無線電力伝送装置の部品点数を増やさずに、被給電機器の受電電圧の調整が可能となる。
【0038】
また、上記課題を解決するための発明の一つは、給電モジュールから受電モジュールに対して磁界を変化させて供給する電力の駆動周波数を、前記給電モジュール及び受電モジュールにおける共振周波数とはならない値で供給する無線電力伝送装置の製造方法であって、前記給電モジュール及び前記受電モジュールを構成する複数の回路素子の各素子値をパラメータとして、当該パラメータをそれぞれ変えることにより、前記受電モジュールに接続された被給電機器に給電する際の当該被給電機器の受電電圧を調整する工程を含むことを特徴としている。
【0039】
上記方法によれば、被給電機器の受電電圧の調整を、新たな機器を設けずにできる無線電力伝送装置を製造することができる。即ち、無線電力伝送装置の部品点数を増やさずに、被給電機器の受電電圧の調整が可能な無線電力伝送装置を製造することができる。
【発明の効果】
【0040】
無線電力伝送を行う給電装置及び受電装置に設けられた回路素子の容量などを自由に調整することにより、被給電機器に印加される受電電圧を制御することができる受電電圧制御方法、当該受電電圧制御方法によって調整された無線電力伝送装置、及び、その無線電力伝送装置の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下に本発明に係る無線電力伝送によって電力供給される被給電機器の受電電圧制御方法、当該受電電圧制御方法によって調整された無線電力伝送装置、及び、その無線電力伝送装置の製造方法の実施形態について説明する。
【0043】
(実施形態)
まず、本実施形態における無線電力伝送を実現する無線電力伝送装置1について説明する。
【0044】
(無線電力伝送装置1の構成)
無線電力伝送装置1は、
図1に示すように、給電コイル21及び給電共振器22を備える給電モジュール2と、受電コイル31及び受電共振器32を備える受電モジュール3とを備えている。そして、給電モジュール2の給電コイル21に、給電モジュール2に供給する電力の駆動周波数を所定の値に設定した発振回路を備えた交流電源6を接続し、受電モジュール3の受電コイル31に、受電された交流電力を整流化する安定回路7及び過充電を防止する充電回路8を介して充電池9を接続している。なお、本実施形態における安定回路7、充電回路8、及び、充電池9は、
図1に示すように、最終的な電力の給電先となる被給電機器10であり、被給電機器10は、受電モジュール3に接続された電力の給電先の機器全体の総称である。
【0045】
給電コイル21は、交流電源6から得られた電力を電磁誘導によって給電共振器22に供給する役割を果たす。この給電コイル21は、
図1に示すように、抵抗器R
1、コイルL
1、及び、コンデンサC
1を要素とするRLC回路を構成している。なお、コイルL
1部分は、銅線材(絶縁被膜付)を使用して、コイル径を15mmφに設定している。また、給電コイル21を構成する回路素子が有する合計のインピーダンスをZ
1としており、本実施形態では、給電コイル21を構成する抵抗器R
1、コイルL
1、及び、コンデンサC
1を要素とするRLC回路(回路素子)が有する合計のインピーダンスをZ
1とする。また、給電コイル21に流れる電流をI
1する。なお、電流I
1は、無線電力伝送装置1に入力される入力電流I
inと同義である。
【0046】
受電コイル31は、給電共振器22から受電共振器32に磁界エネルギーとして伝送された電力を電磁誘導によって受電し、安定回路7及び充電回路8を介して充電池9に供給する役割を果たす。この受電コイル31は、給電コイル21同様に、
図1に示すように、抵抗器R
4、コイルL
4、及び、コンデンサC
4を要素とするRLC回路を構成している。なお、コイルL
4部分は、銅線材(絶縁被膜付)を使用して、コイル径15mmφに設定している。また、受電コイル31を構成する回路素子が有する合計のインピーダンスをZ
4としており、本実施形態では、受電コイル31を構成する抵抗器R
4、コイルL
4、及び、コンデンサC
4を要素とするRLC回路(回路素子)が有する合計のインピーダンスをZ
4とする。また、受電コイル31に接続された被給電機器10の合計のインピーダンスをZ
Lとするが、本実施形態では、
図1に示すように、受電コイル31に接続された安定回路7、充電回路8及び充電池9(被給電機器10)の各負荷インピーダンスを合わせたものを便宜的に抵抗器R
L(Z
Lに相当)としている。また、受電コイル31に流れる電流をI
4する。
【0047】
給電共振器22は、
図1に示すように、抵抗器R
2、コイルL
2、及び、コンデンサC
2を要素とするRLC回路を構成している。また、受電共振器32は、
図1に示すように、抵抗器R
3、コイルL
3、及び、コンデンサC
3を要素とするRLC回路を構成している。そして、給電共振器22及び受電共振器32は、それぞれ共振回路となり、磁界共鳴状態を創出する役割を果たす。ここで、磁界共鳴状態(共振現象)とは、2つ以上のコイルが共振周波数において共振することをいう。また、給電共振器22を構成する回路素子が有する合計のインピーダンスをZ
2とし、本実施形態では、給電共振器22を構成する、抵抗器R
2、コイルL
2、及び、コンデンサC
2を要素とするRLC回路(回路素子)が有する合計のインピーダンスをZ
2とする。また、受電共振器32を構成する回路素子が有する合計のインピーダンスをZ
3とし、本実施形態では、受電共振器32を構成する、抵抗器R
3、コイルL
3、及び、コンデンサC
3を要素とするRLC回路(回路素子)が有する合計のインピーダンスをZ
3とする。また、給電共振器22に流れる電流をI
2とし、受電共振器32に流れる電流をI
3とする。
【0048】
また、給電コイル21、給電共振器22、受電共振器32、及び、受電コイル31における共振回路としてのRLC回路では、インダクタンスをL、コンデンサ容量をCとすると、(式1)によって定まるfが共振周波数となる。そして、本実施形態における給電コイル21、給電共振器22、受電共振器32、及び、受電コイル31の共振周波数は、1.0MHzとしている。
・・・(式1)
【0049】
また、給電共振器22及び受電共振器32は、銅線材(絶縁被膜付)により構成したコイル径15mmφのソレノイド型のコイルを使用している。また、給電共振器22及び受電共振器32における共振周波数は上記のように一致させている。なお、給電共振器22及び受電共振器32は、コイルを使用した共振器であれば、スパイラル型やソレノイド型などのコイルであってもよい。
【0050】
また、給電コイル21と給電共振器22との間の距離をd12とし、給電共振器22と受電共振器32との間の距離をd23とし、受電共振器32と受電コイル31との間の距離をd34としている(
図1参照)。
【0051】
また、
図1に示すように、給電コイル21のコイルL
1と給電共振器22のコイルL
2との間の相互インダクタンスをM
12、給電共振器22のコイルL
2と受電共振器32のコイルL
3との間の相互インダクタンスをM
23、受電共振器32のコイルL
3と受電コイル31のコイルL
4との間の相互インダクタンスをM
34としている。また、無線電力伝送装置1において、コイルL
1とコイルL
2との間の結合係数をk
12と表記し、コイルL
2とコイルL
3との間の結合係数をk
23と表記し、コイルL
3とコイルL
4との間の結合係数をk
34と表記する。
【0052】
また、給電コイル21のRLC回路のR
1、L
1、C
1、給電共振器22のRLC回路のR
2、L
2、C
2、受電共振器32のRLC回路のR
3、L
3、C
3、受電コイル31のRLC回路のR
4、L
4、C
4における抵抗値、インダクタンス、コンデンサ容量、及び、結合係数k
12、k
23、k
34は、設計・製造段階等で変更可能なパラメータとして、後述する(式8)の関係式を満たすように設定されている(詳細は後述する)。
【0053】
上記無線電力伝送装置1によれば、給電共振器22の共振周波数と受電共振器32の共振周波数とを一致させた場合、給電共振器22と受電共振器32との間に磁界共鳴状態を創出することができる。給電共振器22及び受電共振器32が共振した状態で磁界共鳴状態が創出されると、給電共振器22から受電共振器32に電力を磁界エネルギーとして伝送することが可能となる。
【0054】
(被給電機器の受電電圧制御方法)
上記無線電力伝送装置1の構成を踏まえて、無線電力伝送装置1を介して給電される被給電機器10に印加される受電電圧の制御方法について説明する。
【0055】
まず、上記構成による無線電力伝送装置1(被給電機器10含む)の等価回路を示すと
図1の下図のようになる。この等価回路では、無線電力伝送装置1全体における入力インピーダンスをZ
inとしている。また、被給電機器10全体におけるインピーダンスをZ
Lとしている。そして、本実施形態において制御対象となる被給電機器10の受電電圧V
Lは、
図1の等価回路より、被給電機器10を含む受電コイル31に流れる電流I
4とZ
Lを踏まえた関係式で表すと(式2)のように示せる。
・・・(式2)
【0056】
ここで、受電電圧V
Lを制御する必要性を簡単に説明する。充電池9を含む被給電機器10に印加される受電電圧V
Lは、被給電機器10に印加される電圧が駆動電圧より小さいと、被給電機器10が動作しないことから駆動電圧以上(機器が性能を発揮する電圧)であることが求められる。一方、受電電圧V
Lは、被給電機器10が有する耐電圧より大きいと、被給電機器10が壊れてしまうおそれがあることから、被給電機器10が有する耐電圧以下にすることが求められる。そのため、受電電圧V
Lは、被給電機器10が動作する駆動電圧以上、被給電機器10が有する耐電圧以下の範囲で制御されることが求められる。
【0057】
上記理由から受電電圧V
Lの値を制御するためには、(式2)より、電流I
4によって制御する必要がある。なお、本実施形態のように被給電機器10には、予めそのインピーダンスZ
Lが規定されたもの(安定回路7、充電回路8、充電池9)が使用されるため、インピーダンスZ
Lの値は固定値として扱っている(安定回路7、充電回路8、充電池9などの被給電機器10の構成・仕様によってこの固定値は決定される)。
【0058】
そして、(式2)における受電電圧V
Lを、無線電力伝送装置1への入力電流I
in、即ち、I
1との関係で表すと、
図1の等価回路から導かれる関係式(式3)〜(式6)より、I
1とI
4との関係式が求められることから、(式7)を(式2)に代入して(式8)の関係式になる。
・・・(式3)
・・・(式4)
・・・(式5)
・・・(式6)
・・・(式7)
・・・(式8)
【0059】
そして、本実施形態における無線電力伝送装置1の給電コイル21、給電共振器22、受電共振器32、受電コイル31、及び、被給電機器10におけるインピーダンスZ
1、Z
2、Z
3、Z
4、Z
Lは、それぞれ(式9)のように表記することができる。なお、上述したように被給電機器10の合計のインピーダンスをZ
Lとするが、受電コイル31に接続された被給電機器10に係る負荷インピーダンスを合わせたものを便宜的に抵抗器R
Lとする。
・・・(式9)
【0060】
そして、上記(式8)及び(式9)の関係から、給電コイル21のRLC回路のR
1、L
1、C
1、給電共振器22のRLC回路のR
2、L
2、C
2、受電共振器32のRLC回路のR
3、L
3、C
3、受電コイル31のRLC回路のR
4、L
4、C
4における抵抗値、インダクタンス、コンデンサ容量、及び、結合係数k
12、k
23、k
34を設計・製造段階等で変更可能なパラメータとして、上記(式8)の関係式から導出される受電電圧V
Lが、被給電機器10が動作する駆動電圧以上、被給電機器10が有する耐電圧以下の範囲内に納まるように調整することができる。
【0061】
もっとも、上記のような無線電力伝送装置では、給電モジュール2に供給する電力の駆動周波数を、給電モジュール2が備える給電コイル21・給電共振器22及び受電モジュール3が備える受電コイル31・受電共振器32が有する共振周波数と一致させることにより、無線電力伝送における電力伝送効率を最大にすることができることが一般的に知られており、電力伝送効率の最大化を求めて駆動周波数を共振周波数に設定にするのが一般的である。ここで、電力伝送効率とは、給電モジュール2に供給される電力に対する、受電モジュール3が受電する電力の比率のことをいう。
【0062】
そうすると、無線電力伝送装置1において、電力伝送効率を最大化するには、駆動周波数と、給電モジュール2及び受電モジュール3の各RLC回路のそれぞれが有する共振周波数とが一致するようなコンデンサやコイルなどの容量条件・共振条件(ωL=1/ωC)を満たすことが求められる。
【0063】
具体的に、無線電力伝送装置1において、電力伝送効率を最大にするために共振条件(ωL=1/ωC)を満たした場合における受電電圧V
Lを、(式8)に当てはめてみると、(ωL
1−1/ωC
1=0)、(ωL
2−1/ωC
2=0)、(ωL
3−1/ωC
3=0)、(ωL
4−1/ωC
4=0)となり、(式10)の関係式になる。
・・・(式10)
【0064】
上記関係式(式10)によれば、受電電圧V
Lの値を、被給電機器10が動作する駆動電圧以上、被給電機器10が有する耐電圧以下の範囲内に納まるように調整するために変更可能な主なパラメータは、給電コイル21のRLC回路のR
1、給電共振器22のRLC回路のR
2、受電共振器32のRLC回路のR
3、受電コイル31のRLC回路のR
4などの抵抗値、及び、結合係数k
12、k
23、k
34しかないことが分かる。
【0065】
上記のように、無線電力伝送装置1における電力伝送効率を最大化するために、給電モジュール2に供給する電力の駆動周波数を共振周波数に一致させた場合、給電モジュール2及び受電モジュール3の各RLC回路のコンデンサやコイルなどの容量が予め決まってしまい、主に各RLC回路の抵抗値などでしか受電電圧V
Lの値を調整できなくなってしまう。これは、RLC回路のコンデンサやコイルなどの容量を、受電電圧V
Lの値を制御するパラメータとして自由に変更できず無線電力伝送装置1の設計的自由度が低くなってしまうことを意味している。
【0066】
一方、本実施形態に係る無線電力伝送装置1では、給電モジュール2に供給する電力の駆動周波数を、給電モジュール2が備える給電共振器22及び受電モジュール3が備える受電共振器32が有する共振周波数と一致させないことにより(ωL≠1/ωC)、受電電圧V
Lの値を制御するためのパラメータとして、給電コイル21のRLC回路のR
1、L
1、C
1、給電共振器22のRLC回路のR
2、L
2、C
2、受電共振器32のRLC回路のR
3、L
3、C
3、受電コイル31のRLC回路のR
4、L
4、C
4などの抵抗値、インダクタンス、コンデンサ容量、及び、結合係数k
12、k
23、k
34を変更可能に使用することができる。
【0067】
これにより、無線電力伝送装置1を構成する際に、被給電機器10の受電電圧V
Lの値を調整するために、パラメータとしての給電コイル21のR
1、L
1、C
1、給電共振器22のR
2、L
2、C
2、受電共振器32のR
3、L
3、C
3、受電コイル31のR
4、L
4、C
4などの抵抗値、インダクタンス、コンデンサ容量や、結合係数k
12、k
23、k
34を相互にバランスをとって変えることができるので、無線電力伝送装置1の容積・形状・総重量に合わせて適切な配置が可能となり無線電力伝送装置1の設計的自由度を高めることができるようになる。即ち、無線電力伝送装置1において、電力伝送効率を最大化することが一般的な従来のものよりも、被給電機器10の受電電圧V
Lの値を調整するパラメータ要素が多くなり、受電電圧V
Lの値のきめ細やかな制御が可能となる。
【0068】
上記より、パラメータとしての給電コイル21のR
1、L
1、C
1、給電共振器22のR
2、L
2、C
2、受電共振器32のR
3、L
3、C
3、受電コイル31のR
4、L
4、C
4などの抵抗値、インダクタンス、コンデンサ容量、及び、結合係数k
12、k
23、k
34を相互にバランスをとって変えることにより、(式8)により導出される被給電機器10の受電電圧V
Lを調整することが可能な受電電圧制御方法を実現することができる。
【0069】
したがって、上記方法によれば、給電モジュール2に供給する電力の駆動周波数を、給電モジュール2(給電コイル21、給電共振器22)及び受電モジュール3(受電コイル31、受電共振器32)における共振周波数とはならない値で供給することにより、給電モジュール2及び受電モジュール3を構成する複数の回路素子の各素子値(給電コイル21のR
1、L
1、C
1、給電共振器22のR
2、L
2、C
2、受電共振器32のR
3、L
3、C
3、受電コイル31のR
4、L
4、C
4などの抵抗値、インダクタンス、コンデンサ容量、及び、結合係数k
12、k
23、k
34など)を、被給電機器10の受電電圧V
Lを調整するパラメータとして自由に変更することができるようになる。そして、当該パラメータをそれぞれ変えることにより、被給電機器10の受電電圧V
Lを調整することができる。このように被給電機器10の受電電圧V
Lを調整することができれば、受電電圧V
Lを被給電機器10が有する耐電圧以下、且つ、受電電圧V
Lを被給電機器10が有する駆動電圧以上に保持することができる。
【0070】
また、被給電機器10の受電電圧V
Lを制御するために、給電モジュール2及び受電モジュール3を構成する複数の回路素子の各素子値(給電コイル21のR
1、L
1、C
1、給電共振器22のR
2、L
2、C
2、受電共振器32のR
3、L
3、C
3、受電コイル31のR
4、L
4、C
4などの抵抗値、インダクタンス、コンデンサ容量、及び、結合係数k
12、k
23、k
34など)をパラメータとして自由に設定できることになり、無線電力伝送装置1の設計自由度を高めて、無線電力伝送装置1自体の携帯性・コンパクト化・低コスト化を実現することができる。
【0071】
上記方法によれば、少なくとも給電コイル21及び給電共振器22を備えた給電モジュール2から、少なくとも受電共振器32及び受電コイル31を備えた受電モジュール3に対して共振現象によって電力を供給し、供給された電力を受電コイル31に接続された被給電機器10に給電する際の被給電機器10の受電電圧V
Lの制御方法に関して、上記関係式(式8)を満たすようにパラメータをそれぞれ変えることにより、被給電機器10の受電電圧V
Lを調整することができる。このように、被給電機器10の受電電圧V
Lを調整するために、給電モジュール2及び受電モジュール3を構成する複数の回路素子の各素子値(給電コイル21のR
1、L
1、C
1、給電共振器22のR
2、L
2、C
2、受電共振器32のR
3、L
3、C
3、受電コイル31のR
4、L
4、C
4などの抵抗値、インダクタンス、コンデンサ容量、及び、結合係数k
12、k
23、k
34など)をパラメータとして、上記関係式(式8)を満たすように自由に設定できることになり、無線電力伝送装置1の設計自由度を高めて、無線電力伝送装置1自体の携帯性・コンパクト化・低コスト化を実現することができる。
【0072】
(結合係数による受電電圧V
Lの制御)
上記のような無線電力伝送装置1において、給電モジュール2に供給する電力の駆動周波数を、給電モジュール2が備える給電コイル21・給電共振器22及び受電モジュール3が備える受電コイル31・受電共振器32が有する共振周波数と一致させることにより、無線電力伝送における電力伝送効率を最大にした場合(式10参照)、及び、給電モジュール2に供給する電力の駆動周波数を、給電モジュール2が備える給電コイル21・給電共振器22及び受電モジュール3が備える受電コイル31・受電共振器32が有する共振周波数とはならない値で供給した場合(式8参照)であっても、被給電機器10の受電電圧V
Lを調整するために変更可能な主なパラメータとして、結合係数k
12、k
23、k
34が挙げられる。
【0073】
(結合係数の変化による受電電圧V
Lの変化)
そこで、無線電力伝送装置1における上記結合係数k
12、k
34を変化させた場合に、受電電圧V
Lがどのような変化をするかを、条件を変えた測定実験1−1〜1−4により説明する。
【0074】
測定実験1−1〜1−4では、無線電力伝送装置1をオシロスコープ(本実施形態では、Agilent Technology社製のMSO−X3054Aを使用)に接続して、結合係数に対する受電電圧V
Lを測定した(
図2参照)。なお、測定実験1−1〜1−4では、安定回路7、充電回路8、及び、充電池9で構成される被給電機器10の代わりに可変抵抗器11(R
L)を接続して、無線電力伝送装置1への交流電源6からの入力電圧V
in=5V(最大値5V)、R
L=175Ωのときの受電電圧V
Lを測定した。
【0075】
また、本測定実験においては、無線電力伝送装置1に供給する電力の駆動周波数に対する無線電力伝送装置1の伝送特性『S21』が、双峰性の性質を有するもので測定している。
【0076】
ここで、伝送特性『S21』とは、ネットワークアナライザ(アジレント・テクノロジー株式会社製のE5061Bなど)を無線電力伝送装置1に接続して計測される信号を表しており、デシベル表示され、数値が大きいほど電力伝送効率が高いことを意味する。そして、無線電力伝送装置1に供給する電力の駆動周波数に対する無線電力伝送装置1の伝送特性『S21』は、給電モジュール2及び受電モジュール3の間の磁界による結びつき度合い(磁界結合)の強度により、単峰性の性質を有するものと双峰性の性質を有するものに分かれる。そして、単峰性とは、駆動周波数に対する伝送特性『S21』のピークが一つで、そのピークが共振周波数帯域(fo)において現れるものをいう(
図3の破線51参照)。一方、双峰性とは、駆動周波数に対する伝送特性『S21』のピークが二つあり、その二つのピークが共振周波数よりも低い駆動周波数帯域(fL)と共振周波数よりも高い駆動周波数帯域(fH)において現れるものをいう(
図3の実線52参照)。更に詳細に双峰性を定義すると、上記ネットワークアナライザに無線電力伝送装置1を接続して計測される反射特性『S11』が二つのピークを有する状態をいう。従って、駆動周波数に対する伝送特性『S21』のピークが一見して一つに見えたとしても、計測されている反射特性『S11』が二つのピークを有する場合には、双峰性の性質を有するものとする。
【0077】
上記単峰性の性質を有する無線電力伝送装置1においては、
図3の破線51に示すように、駆動周波数が共振周波数f
0で伝送特性『S21』が最大化する(電力伝送効率が最大化する)。
【0078】
一方、双峰性の性質を有する無線電力伝送装置1では、
図3の実線52に示すように、伝送特性『S21』は、共振周波数foよりも低い駆動周波数帯域(fL)と共振周波数foよりも高い駆動周波数帯域(fH)において最大化する。
【0079】
なお、一般的に、給電共振器と受電共振器との間の距離が同じであれば、双峰性における伝送特性『S21』の最大値(fL又はfHでの伝送特性『S21』の値)は、単峰性における伝送特性『S21』の最大値(f
0での伝送特性『S21』の値)よりも低い値になる(
図3のグラフ参照)。
【0080】
具体的には、双峰性における低周波側のピーク付近の周波数fLに、給電モジュール2に供給する交流電力の駆動周波数を設定した場合(同相共振モード)、給電共振器22及び受電共振器32が同位相で共振状態となり、給電共振器22に流れる電流の向きと受電共振器32に流れる電流の向きとが同じ向きになる。その結果、
図3のグラフに示すように、電力伝送効率の最大化を目的にした一般的な無線電力伝送装置における伝送特性『S21』(破線51)には及ばないが、駆動周波数を給電モジュール2が備える給電共振器22及び受電モジュール3が備える受電共振器32が有する共振周波数と一致させない場合でも、伝送特性『S21』の値を比較的高い値にすることができる。ここで、給電モジュール2におけるコイル(給電共振器22)に流れる電流の向きと受電モジュール3におけるコイル(受電共振器32)に流れる電流の向きとが同じ向きとなる共振状態を同相共振モードと呼ぶことにする。
【0081】
また、上記同相共振モードでは、給電共振器22の外周側に発生する磁界と受電共振器32の外周側に発生する磁界とが打ち消し合うことにより、給電共振器22及び受電共振器32の外周側に、磁界による影響が低減されて、給電共振器22及び受電共振器32の外周側以外の磁界強度(例えば、給電共振器22及び受電共振器32の内周側の磁界強度)よりも小さな磁界強度を有する磁界空間を形成することができる。そして、この磁界空間に磁界の影響を低減させたい安定回路7や充電回路8や充電池9などを収納した場合、安定回路7や充電回路8や充電池9などに対して、磁界に起因する渦電流の発生を低減・防止して、発熱による悪影響を抑制することが可能となる。
【0082】
一方、双峰性における高周波側のピーク付近の周波数fHに、給電モジュール2に供給する交流電力の駆動周波数を設定した場合(逆相共振モード)、給電共振器22及び受電共振器32が逆位相で共振状態となり、給電共振器22に流れる電流の向きと受電共振器32に流れる電流の向きとが逆向きになる。その結果、
図3のグラフに示すように、電力伝送効率の最大化を目的にした一般的な無線電力伝送装置における伝送特性『S21』(破線51)には及ばないが、駆動周波数を給電モジュール2が備える給電共振器22及び受電モジュール3が備える受電共振器32が有する共振周波数と一致させない場合でも、伝送特性『S21』の値を比較的高い値にすることができる。ここで、給電モジュール2におけるコイル(給電共振器22)に流れる電流の向きと受電モジュール3におけるコイル(受電共振器32)に流れる電流の向きとが逆向きとなる共振状態を逆相共振モードと呼ぶことにする。
【0083】
また、上記逆相共振モードでは、給電共振器22の内周側に発生する磁界と受電共振器32の内周側に発生する磁界とが打ち消し合うことにより、給電共振器22及び受電共振器32の内周側に、磁界による影響が低減されて、給電共振器22及び受電共振器32の内周側以外の磁界強度(例えば、給電共振器22及び受電共振器32の外周側の磁界強度)よりも小さな磁界強度を有する磁界空間を形成することができる。そして、この磁界空間に磁界の影響を低減させたい安定回路7や充電回路8や充電池9などを収納した場合、安定回路7や充電回路8や充電池9などに対して、磁界に起因する渦電流の発生を低減・防止して、発熱による悪影響を抑制することが可能となる。また、この逆相共振モードにより形成される磁界空間は、給電共振器22及び受電共振器32の内周側に形成されるので、この空間に安定回路7や充電回路8や充電池9などの電子部品を組み込むことにより無線電力伝送装置1自体のコンパクト化・設計自由度の向上が実現される。
【0084】
また、上記のように無線電力伝送装置1に供給する電力の駆動周波数に対する無線電力伝送装置1の伝送特性『S21』が、双峰性の性質を有する場合、給電モジュール2に供給する交流電力の駆動周波数を同相共振モード(fL)、又は、逆相共振モード(fH)に設定した際に、
図4に示すように、無線電力伝送装置1の入力インピーダンスZ
inがピークを持つ(実線55の2つの山の部分参照)。そして、本測定実験1−1〜1−4では、無線電力伝送装置1の入力インピーダンスZ
inが最大になる駆動周波数(同相共振モード(fL)、逆相共振モード(fH))における受電電圧V
Lを測定している。
【0085】
(測定実験1−1:結合係数k
12の値を変えた場合の受電電圧V
Lの変化)
測定実験1−1に使用する無線電力伝送装置1では、給電コイル21は、抵抗器R
1、コイルL
1、及び、コンデンサC
1を要素とするRLC回路を構成しており(共振あり)、コイルL
1部分は、コイル径を15mmφに設定している。同様に、受電コイル31も、抵抗器R
4、コイルL
4、及び、コンデンサC
4を要素とするRLC回路を構成しており、コイルL
4部分は、コイル径を15mmφに設定している。また、給電共振器22は、抵抗器R
2、コイルL
2、及び、コンデンサC
2を要素とするRLC回路を構成しており、コイルL
2部分は、コイル径15mmφのソレノイド型のコイルを使用している。また、受電共振器32は、抵抗器R
3、コイルL
3、及び、コンデンサC
3を要素とするRLC回路を構成しており、コイルL
3部分は、コイル径15mmφのソレノイド型のコイルを使用している。そして、測定実験1−1に使用する無線電力伝送装置1におけるR
1、R
2、R
3、R
4の値をそれぞれ、0.8Ωに設定した。また、L
1、L
2、L
3、L
4の値をそれぞれ、10μHに設定した。また、給電コイル21、給電共振器22、受電共振器32、及び、受電コイル31における共振周波数は1.0MHzである。なお、給電コイル21及び給電共振器22のコイルの内周側には、無線電力伝送装置1における電力伝送効率を向上させるために、給電コイル21及び給電共振器22のコイルの内周面に沿うように円筒状の厚み450μmの磁性シートを配置している。同様に、受電共振器32及び受電コイル31のコイルの内周側にも、受電共振器32及び受電コイル31のコイルの内周面に沿うように円筒状の厚み450μmの磁性シートを配置している。
【0086】
測定実験1−1では、結合係数k
23を0.27、結合係数k
34を0.27にそれぞれ固定したうえで、結合係数k
12の値を、0.21、0.28、0.40、0.48の4つの値に設定した場合における、無線電力伝送装置1の可変抵抗器11(175Ωに設定)の受電電圧V
Lの値を測定する(
図2参照、なお、結合係数の調整方法についての詳細は後述する)。そして、双峰性における低周波側のピーク付近の周波数fLに、給電モジュール2に供給する交流電力の駆動周波数を設定した場合(同相共振モード:890kHz)の測定値を
図5(A)に示す。また、双峰性における高周波側のピーク付近の周波数fHに、給電モジュール2に供給する交流電力の駆動周波数を設定した場合(逆相共振モード:1170kHz)の測定値を
図5(B)に示す。
【0087】
図5(A)の同相共振モードの測定結果より、結合係数k
12の値を0.21、→ 0.28、→ 0.40、→ 0.48の順に大きくしていくと、受電電圧V
Lの値は、6.0V、→5.0V、→3.7V、→3.1Vという具合に小さくなっていった。
上記のように、同相共振モードにおいて、結合係数k
12の値を大きくするにつれて、被給電機器10の受電電圧V
Lの値が小さくなる傾向にあることが分かる。逆に、結合係数k
12の値を小さくするにつれて、被給電機器10の受電電圧V
Lの値が大きくなる傾向にあることが分かる。
【0088】
また、
図5(B)の逆相共振モードの測定結果においても同様に、結合係数k
12の値を0.21、→ 0.28、→ 0.40、→ 0.48の順に大きくしていくと、受電電圧V
Lの値は、5.9V、→4.5V、→3.2V、→2.7Vという具合に小さくなっていった。
上記のように、逆相共振モードにおいても、結合係数k
12の値を大きくするにつれて、被給電機器10の受電電圧V
Lの値が小さくなる傾向にあることが分かる。逆に、結合係数k
12の値を小さくするにつれて、被給電機器10の受電電圧V
Lの値が大きくなる傾向にあることが分かる。
【0089】
(測定実験1−2:結合係数k
12の値を変えた場合の受電電圧V
Lの変化)
測定実験1−2に使用する無線電力伝送装置1では、測定実験1−1と異なり、給電コイル21、給電共振器22、受電共振器32、及び、受電コイル31に使用するコイル形状をソレノイド形状ではなく、平面状のパターンコイルとしている。具体的には、抵抗器R
1、コイルL
1、及び、コンデンサC
1を要素とするRLC回路を構成しており(共振あり)、コイルL
1部分は、銅箔のエッチングにより形成した12回巻き(渦巻き状)、コイル径35mmφのパターンコイルを使用している。同様に、受電コイル31も、抵抗器R
4、コイルL
4、及び、コンデンサC
4を要素とするRLC回路を構成しており、コイルL
4部分は、給電コイル21同様のパターンコイルである。また、給電共振器22は、抵抗器R
2、コイルL
2、及び、コンデンサC
2を要素とするRLC回路を構成しており、コイルL
2部分は、銅箔のエッチングにより形成した12回巻き、コイル径35mmφのパターンコイルを使用している。同様に、受電共振器32も、抵抗器R
3、コイルL
3、及び、コンデンサC
3を要素とするRLC回路を構成しており、コイルL
3部分は、給電共振器22同様のパターンコイルである。そして、測定実験1−2に使用する無線電力伝送装置1におけるR
1、R
2、R
3、R
4の値をそれぞれ、1.5Ωに設定した。また、L
1、L
2、L
3、L
4の値をそれぞれ、2.5μHに設定した。また、給電コイル21、給電共振器22、受電共振器32、及び、受電コイル31における共振周波数は1.0MHzである。
【0090】
測定実験1−2では、結合係数k
23を0.3、結合係数k
34を0.3にそれぞれ固定したうえで、結合係数k
12の値を、0.14、0.24、0.30、0.45の4つの値に設定した場合における、無線電力伝送装置1の可変抵抗器11(175Ωに設定)の受電電圧V
Lの値を測定する(
図2参照)。そして、双峰性における低周波側のピーク付近の周波数fLに、給電モジュール2に供給する交流電力の駆動周波数を設定した場合(同相共振モード:880kHz)の測定値を
図6(A)に示す。また、双峰性における高周波側のピーク付近の周波数fHに、給電モジュール2に供給する交流電力の駆動周波数を設定した場合(逆相共振モード:1200kHz)の測定値を
図6(B)に示す。
【0091】
図6(A)の同相共振モードの測定結果より、結合係数k
12の値を0.14、→ 0.24、→ 0.30、→ 0.45の順に大きくしていくと、受電電圧V
Lの値は、10.2V、→8.2V、→6.8V、→5.3Vという具合に小さくなっていった。
上記のように、同相共振モードにおいて、結合係数k
12の値を大きくするにつれて、被給電機器10の受電電圧V
Lの値が小さくなる傾向にあることが分かる。逆に、結合係数k
12の値を小さくするにつれて、被給電機器10の受電電圧V
Lの値が大きくなる傾向にあることが分かる。
【0092】
また、
図6(B)の逆相共振モードの測定結果においても同様に、結合係数k
12の値を0.14、→ 0.24、→ 0.30、→ 0.45の順に大きくしていくと、受電電圧V
Lの値は、5.9V、→5.4V、→4.7V、→3.3Vという具合に小さくなっていった。
上記のように、逆相共振モードにおいても、結合係数k
12の値を大きくするにつれて、被給電機器10の受電電圧V
Lの値が小さくなる傾向にあることが分かる。逆に、結合係数k
12の値を小さくするにつれて、被給電機器10の受電電圧V
Lの値が大きくなる傾向にあることが分かる。
【0093】
(測定実験1−3:結合係数k
34の値を変えた場合の受電電圧V
Lの変化)
測定実験1−3に使用する無線電力伝送装置1は、測定実験1−1と同様の構成であり、測定実験1−3に使用する無線電力伝送装置1におけるR
1、R
2、R
3、R
4の値をそれぞれ、0.8Ωに設定し、L
1、L
2、L
3、L
4の値をそれぞれ、10μHに設定した(測定実験1−1と同じである)。また、給電コイル21、給電共振器22、受電共振器32、及び、受電コイル31における共振周波数は1.0MHzである(測定実験1−1と同じ)。
【0094】
測定実験1−3では、結合係数k
12を0.27、結合係数k
23を0.27にそれぞれ固定したうえで、結合係数k
34の値を、0.13、0.21、0.28、0.45の4つの値に設定した場合における、無線電力伝送装置1の可変抵抗器11(175Ωに設定)の受電電圧V
Lの値を測定する(
図2参照)。そして、双峰性における低周波側のピーク付近の周波数fLに、給電モジュール2に供給する交流電力の駆動周波数を設定した場合(同相共振モード:890kHz)の測定値を
図7(A)に示す。また、双峰性における高周波側のピーク付近の周波数fHに、給電モジュール2に供給する交流電力の駆動周波数を設定した場合(逆相共振モード:1170kHz)の測定値を
図7(B)に示す。
【0095】
図7(A)の同相共振モードの測定結果より、結合係数k
34の値を0.13、→ 0.21、→ 0.28、→ 0.45の順に大きくしていくと、受電電圧V
Lの値は、2.3V、→3.8V、→5.0V、→7.6Vという具合に大きくなっていった。
上記のように、同相共振モードにおいて、結合係数k
34の値を大きくするにつれて、被給電機器10の受電電圧V
Lの値が大きくなる傾向にあることが分かる。逆に、結合係数k
34の値を小さくするにつれて、被給電機器10の受電電圧V
Lの値が小さくなる傾向にあることが分かる。
【0096】
また、
図7(B)の逆相共振モードの測定結果においても同様に、結合係数k
34の値を0.13、→ 0.21、→ 0.28、→ 0.45の順に大きくしていくと、受電電圧V
Lの値は、2.0V、→3.4V、→4.5V、→7.2Vという具合に大きくなっていった。
上記のように、逆相共振モードにおいても、結合係数k
34の値を大きくするにつれて、被給電機器10の受電電圧V
Lの値が大きくなる傾向にあることが分かる。逆に、結合係数k
34の値を小さくするにつれて、被給電機器10の受電電圧V
Lの値が小さくなる傾向にあることが分かる。
【0097】
(測定実験1−4:結合係数k
34の値を変えた場合の受電電圧V
Lの変化)
測定実験1−4に使用する無線電力伝送装置1は、測定実験1−2と同様の構成であり、測定実験1−4に使用する無線電力伝送装置1におけるR
1、R
2、R
3、R
4の値をそれぞれ、1.5Ωに設定し、L
1、L
2、L
3、L
4の値をそれぞれ、2.5μHに設定した(測定実験1−2と同じである)。また、給電コイル21、給電共振器22、受電共振器32、及び、受電コイル31における共振周波数は1.0MHzである(測定実験1−2と同じ)。
【0098】
測定実験1−4では、結合係数k
12を0.3、結合係数k
23を0.3にそれぞれ固定したうえで、結合係数k
34の値を、0.15、0.25、0.30、0.45の4つの値に設定した場合における、無線電力伝送装置1の可変抵抗器11(175Ωに設定)の受電電圧V
Lの値を測定する(
図2参照)。そして、双峰性における低周波側のピーク付近の周波数fLに、給電モジュール2に供給する交流電力の駆動周波数を設定した場合(同相共振モード:880kHz)の測定値を
図8(A)に示す。また、双峰性における高周波側のピーク付近の周波数fHに、給電モジュール2に供給する交流電力の駆動周波数を設定した場合(逆相共振モード:1200kHz)の測定値を
図8(B)に示す。
【0099】
図8(A)の同相共振モードの測定結果より、結合係数k
34の値を0.15、→ 0.25、→ 0.30、→ 0.45の順に大きくしていくと、受電電圧V
Lの値は、3.4V、→5.6V、→6.8V、→9.3Vという具合に大きくなっていった。
上記のように、同相共振モードにおいて、結合係数k
34の値を大きくするにつれて、被給電機器10の受電電圧V
Lの値が大きくなる傾向にあることが分かる。逆に、結合係数k
34の値を小さくするにつれて、被給電機器10の受電電圧V
Lの値が小さくなる傾向にあることが分かる。
【0100】
また、
図8(B)の逆相共振モードの測定結果においても同様に、結合係数k
34の値を0.15、→ 0.25、→ 0.30、→ 0.45の順に大きくしていくと、受電電圧V
Lの値は、2.8V、→4.8V、→6.2V、→9.5Vという具合に大きくなっていった。
上記のように、逆相共振モードにおいても、結合係数k
34の値を大きくするにつれて、被給電機器10の受電電圧V
Lの値が大きくなる傾向にあることが分かる。逆に、結合係数k
34の値を小さくするにつれて、被給電機器10の受電電圧V
Lの値が小さくなる傾向にあることが分かる。
【0101】
上記測定実験1−1〜1−4によれば、無線電力伝送装置1による電力の無線電力伝送を行うに際して、給電コイル21と給電共振器22との間における結合係数k
12、給電共振器22と受電共振器32との間における結合係数k
23、及び、受電共振器32と受電コイル31との間における結合係数k
34の値を調整することによって、被給電機器10の受電電圧V
Lを調整することができることが分かる。
【0102】
(結合係数の調整方法)
次に、上記無線電力伝送装置1における被給電機器10の受電電圧V
Lを制御するパラメータである結合係数k
12、k
23、k
34の調整方法について説明する。
【0103】
図9に示すように、無線電力伝送において、コイルとコイルとの間の距離と結合係数kとの関係は、コイルとコイルとの間の距離を縮める(短くする)と結合係数kの値が高くなる傾向にあることが分かる。これを本実施形態に係る無線電力伝送装置1に当てはめると、給電コイル21と給電共振器22との間の距離d12、給電共振器22と受電共振器32との間の距離d23、受電共振器32と受電コイル31との間の距離d34をそれぞれ縮めることによって、給電コイル21(コイルL
1)と給電共振器22(コイルL
2)との間の結合係数k
12、給電共振器22(コイルL
2)と受電共振器32(コイルL
3)との間の結合係数k
23、受電共振器32(コイルL
3)と受電コイル31(コイルL
4)との間の結合係数k
34を高めることができる。逆に、給電コイル21と給電共振器22との間の距離d12、給電共振器22と受電共振器32との間の距離d23、受電共振器32と受電コイル31との間の距離d34をそれぞれ伸ばすことによって、給電コイル21(コイルL
1)と給電共振器22(コイルL
2)との間の結合係数k
12、給電共振器22(コイルL
2)と受電共振器32(コイルL
3)との間の結合係数k
23、受電共振器32(コイルL
3)と受電コイル31(コイルL
4)との間の結合係数k
34を低めることができる。
【0104】
上記結合係数の調整方法、及び、結合係数の変化による受電電圧V
Lの変化の測定実験より、給電共振器22と受電共振器32との間の距離d23、及び、受電共振器32と受電コイル31との間の距離d34を固定した場合、給電コイル21と給電共振器22との間の距離d12を短くすることにより、給電コイル21と給電共振器22との間における結合係数k
12の値を大きくし、結合係数k
12の値を大きくすることにより、被給電機器10の受電電圧V
Lの値を小さくすることができる。逆に、給電コイル21と給電共振器22との間の距離d12を長くすることにより、給電コイル21と給電共振器22との間における結合係数k
12の値を小さくし、結合係数k
12の値を小さくすることにより、被給電機器10の受電電圧V
Lの値を大きくすることができる。
【0105】
また、給電コイル21と給電共振器22との間の距離d12、及び、給電共振器22と受電共振器32との間の距離d23を固定した場合、受電共振器32と受電コイル31との間の距離d34を短くすることにより、受電共振器32と受電コイル31との間における結合係数k
34の値を大きくし、結合係数k
34の値を大きくすることにより、被給電機器10の受電電圧V
Lの値を大きくすることができる。逆に、受電共振器32と受電コイル31との間の距離d34を長くすることにより、受電共振器32と受電コイル31との間における結合係数k
34の値を小さくし、結合係数k
34の値を小さくすることにより、被給電機器10の受電電圧V
Lの値を小さくすることができる。
【0106】
上記方法によれば、給電コイル21と給電共振器22との間の距離を物理的に変化させるという簡易な作業によって、被給電機器10の受電電圧V
Lを調整することができる。換言すると、被給電機器10の受電電圧V
Lの調整を、無線電力伝送装置1において新たな機器を設けずに実現することができる(無線電力伝送装置1の部品点数を増やさずに、被給電機器10の受電電圧V
Lを調整することが可能となる)。
【0107】
なお、上記では、無線電力伝送装置1において、被給電機器10の受電電圧V
Lを調整する結合係数k
12、k
23、k
34の調整方法として、給電コイル21と給電共振器22との間の距離d12、及び、受電共振器32と受電コイル31との間の距離d34をそれぞれ変化させる方法を例示して説明した。しかし、結合係数k
12、k
23、k
34の調整方法としては、これに限らず、給電共振器22の中心軸と受電共振器32の中心軸をずらす方法や、給電共振器22のコイル面と受電共振器32のコイル面に角度をつける方法や、給電コイル21・給電共振器22や受電共振器32・受電コイル31などの各素子(抵抗、コンデンサ、コイル)の容量を変化させる方法や、給電モジュール2に供給する交流電力の駆動周波数を変える方法などが挙げられる。
【0108】
(コイルのインダクタンスによる受電電圧V
Lの制御)
次に、無線電力伝送装置1において、被給電機器10の受電電圧V
Lを調整するために可変可能なパラメータとしてコイルのインダクタンスが挙げられる。そこで、無線電力伝送装置1におけるコイルのインダクタンスを変化させた場合に、受電電圧V
Lがどのような変化をするかを、条件を変えた測定実験2−1〜2−4により説明する。
【0109】
測定実験2−1〜2−4では、無線電力伝送装置1をオシロスコープに接続して、給電コイル21、給電共振器22、受電共振器32、及び、受電コイル31におけるコイルのインダクタンスの値の変化に対する受電電圧V
Lを測定した(
図2参照)。なお、測定実験2−1〜2−4では、安定回路7、充電回路8、及び、充電池9で構成される被給電機器10の代わりに可変抵抗器11(R
L)を接続して、無線電力伝送装置1への交流電源6からの入力電圧V
in=5V(最大値5V)、R
L=175Ωのときの受電電圧V
Lを測定した。
【0110】
また、本測定実験でも、無線電力伝送装置1に供給する電力の駆動周波数に対する無線電力伝送装置1の伝送特性『S21』が双峰性の性質を有する場合に、給電モジュール2に供給する交流電力の駆動周波数を同相共振モード(fL)、又は、逆相共振モード(fH)に設定した際における受電電圧V
Lを測定している。
【0111】
(測定実験2−1:給電コイル21のL
1の値を変えた場合の受電電圧V
Lの変化)
測定実験2−1に使用する無線電力伝送装置1では、給電コイル21は、抵抗器R
1、コイルL
1、及び、コンデンサC
1を要素とするRLC回路を構成しており(共振あり)、コイルL
1部分は、コイル径を15mmφに設定している。同様に、受電コイル31も、抵抗器R
4、コイルL
4、及び、コンデンサC
4を要素とするRLC回路を構成しており、コイルL
4部分は、コイル径を15mmφに設定している。また、給電共振器22は、抵抗器R
2、コイルL
2、及び、コンデンサC
2を要素とするRLC回路を構成しており、コイルL
2部分は、コイル径15mmφのソレノイド型のコイルを使用している。また、受電共振器32は、抵抗器R
3、コイルL
3、及び、コンデンサC
3を要素とするRLC回路を構成しており、コイルL
3部分は、コイル径15mmφのソレノイド型のコイルを使用している。測定実験2−1に使用する無線電力伝送装置1におけるR
1、R
2、R
3、R
4の値をそれぞれ、0.5Ωに設定した。また、給電コイル21、給電共振器22、受電共振器32、及び、受電コイル31における共振周波数は1.0MHzである。
【0112】
そして、結合係数k
12を0.27、結合係数k
23を0.27、結合係数k
34を0.27にそれぞれ固定し、L
2、L
3、L
4の値をそれぞれ、4.5μHに設定したうえで、L
1の値を、2.6μH、4.5μH、8.8μHの3つの値に設定した場合における、無線電力伝送装置1の可変抵抗器11(175Ωに設定)の受電電圧V
Lの値を測定する。そして、双峰性における低周波側のピーク付近の周波数fLに、給電モジュール2に供給する交流電力の駆動周波数を設定した場合(同相共振モード:890kHz)の測定値(◆の点)、及び、双峰性における高周波側のピーク付近の周波数fHに、給電モジュール2に供給する交流電力の駆動周波数を設定した場合(逆相共振モード:1170kHz)の測定値(■の点)を
図10の(測定実験2−1)に示す。
【0113】
図10の(測定実験2−1)の同相共振モードの測定結果より、L
1の値を、2.6μH、→ 4.5μH、→ 8.8μHの順に大きくしていくと、受電電圧V
Lの値は、5.84V、→5.60V、→3.84Vという具合に小さくなっていった。
上記のように、同相共振モードにおいて、L
1の値を大きくするにつれて、被給電機器10の受電電圧V
Lの値が小さくなる傾向にあることが分かる。逆に、L
1の値を小さくするにつれて、被給電機器10の受電電圧V
Lの値が大きくなる傾向にあることが分かる。
【0114】
また、
図10の(測定実験2−1)の逆相共振モードの測定結果においても同様に、L
1の値を、2.6μH、→ 4.5μH、→ 8.8μHの順に大きくしていくと、受電電圧V
Lの値は、6.64V、→6.24V、→4.48Vという具合に小さくなっていった。
上記のように、逆相共振モードにおいても、L
1の値を大きくするにつれて、被給電機器10の受電電圧V
Lの値が小さくなる傾向にあることが分かる。逆に、L
1の値を小さくするにつれて、被給電機器10の受電電圧V
Lの値が大きくなる傾向にあることが分かる。
【0115】
(測定実験2−2:給電共振器22のL
2の値を変えた場合の受電電圧V
Lの変化)
測定実験2−2に使用する無線電力伝送装置1の構成は、測定実験2−1で使用したものと同じである。
【0116】
そして、測定実験2−2では、L
1、L
3、L
4の値をそれぞれ、4.5μHに設定したうえで、L
2の値を、2.6μH、4.5μH、8.8μHの3つの値に設定した場合における、無線電力伝送装置1の可変抵抗器11(175Ωに設定)の受電電圧V
Lの値を測定する。そして、双峰性における低周波側のピーク付近の周波数fLに、給電モジュール2に供給する交流電力の駆動周波数を設定した場合(同相共振モード:890kHz)の測定値(◆の点)、及び、双峰性における高周波側のピーク付近の周波数fHに、給電モジュール2に供給する交流電力の駆動周波数を設定した場合(逆相共振モード:1170kHz)の測定値(■の点)を
図10の(測定実験2−2)に示す。
【0117】
図10の(測定実験2−2)の同相共振モードの測定結果より、L
2の値を、2.6μH、→ 4.5μH、→ 8.8μHの順に大きくしていくと、受電電圧V
Lの値は、5.84V、→5.60V、→0.98Vという具合に小さくなっていった。
上記のように、同相共振モードにおいて、L
2の値を大きくするにつれて、被給電機器10の受電電圧V
Lの値が小さくなる傾向にあることが分かる。逆に、L
2の値を小さくするにつれて、被給電機器10の受電電圧V
Lの値が大きくなる傾向にあることが分かる。
【0118】
また、
図10の(測定実験2−2)の逆相共振モードの測定結果においても同様に、L
2の値を、2.6μH、→ 4.5μH、→ 8.8μHの順に大きくしていくと、受電電圧V
Lの値は、6.32V、→6.24V、→0.65Vという具合に小さくなっていった。
上記のように、逆相共振モードにおいても、L
2の値を大きくするにつれて、被給電機器10の受電電圧V
Lの値が小さくなる傾向にあることが分かる。逆に、L
2の値を小さくするにつれて、被給電機器10の受電電圧V
Lの値が大きくなる傾向にあることが分かる。
【0119】
(測定実験2−3:受電共振器32のL
3の値を変えた場合の受電電圧V
Lの変化)
測定実験2−3に使用する無線電力伝送装置1の構成は、測定実験2−1で使用したものと同じである。
【0120】
そして、測定実験2−3では、L
1、L
2、L
4の値をそれぞれ、4.5μHに設定したうえで、L
3の値を、2.6μH、4.5μH、8.8μHの3つの値に設定した場合における、無線電力伝送装置1の可変抵抗器11(175Ωに設定)の受電電圧V
Lの値を測定する。そして、双峰性における低周波側のピーク付近の周波数fLに、給電モジュール2に供給する交流電力の駆動周波数を設定した場合(同相共振モード:890kHz)の測定値(◆の点)、及び、双峰性における高周波側のピーク付近の周波数fHに、給電モジュール2に供給する交流電力の駆動周波数を設定した場合(逆相共振モード:1170kHz)の測定値(■の点)を
図10の(測定実験2−3)に示す。
【0121】
図10の(測定実験2−3)の同相共振モードの測定結果より、L
3の値を、2.6μH、→ 4.5μH、→ 8.8μHの順に大きくしていくと、受電電圧V
Lの値は、4.88V、→5.60V、→6.16Vという具合に大きくなっていった。
上記のように、同相共振モードにおいて、L
3の値を大きくするにつれて、被給電機器10の受電電圧V
Lの値が大きくなる傾向にあることが分かる。逆に、L
3の値を小さくするにつれて、被給電機器10の受電電圧V
Lの値が小さくなる傾向にあることが分かる。
【0122】
また、
図10の(測定実験2−3)の逆相共振モードの測定結果においても同様に、L
3の値を、2.6μH、→ 4.5μH、→ 8.8μHの順に大きくしていくと、受電電圧V
Lの値は、5.60V、→6.24V、→7.04Vという具合に大きくなっていった。
上記のように、逆相共振モードにおいても、L
3の値を大きくするにつれて、被給電機器10の受電電圧V
Lの値が大きくなる傾向にあることが分かる。逆に、L
3の値を小さくするにつれて、被給電機器10の受電電圧V
Lの値が小さくなる傾向にあることが分かる。
【0123】
(測定実験2−4:受電コイル31のL
4の値を変えた場合の受電電圧V
Lの変化)
測定実験2−4に使用する無線電力伝送装置1の構成は、測定実験2−1で使用したものと同じである。
【0124】
そして、測定実験2−4では、L
1、L
2、L
3の値をそれぞれ、4.5μHに設定したうえで、L
4の値を、2.6μH、4.5μH、8.8μHの3つの値に設定した場合における、無線電力伝送装置1の可変抵抗器11(175Ωに設定)の受電電圧V
Lの値を測定する。そして、双峰性における低周波側のピーク付近の周波数fLに、給電モジュール2に供給する交流電力の駆動周波数を設定した場合(同相共振モード:890kHz)の測定値(◆の点)、及び、双峰性における高周波側のピーク付近の周波数fHに、給電モジュール2に供給する交流電力の駆動周波数を設定した場合(逆相共振モード:1170kHz)の測定値(■の点)を
図10の(測定実験2−4)に示す。
【0125】
図10の(測定実験2−4)の同相共振モードの測定結果より、L
4の値を、2.6μH、→ 4.5μH、→ 8.8μHの順に大きくしていくと、受電電圧V
Lの値は、5.36V、→5.60V、→6.72Vという具合に大きくなっていった。
上記のように、同相共振モードにおいて、L
4の値を大きくするにつれて、被給電機器10の受電電圧V
Lの値が大きくなる傾向にあることが分かる。逆に、L
4の値を小さくするにつれて、被給電機器10の受電電圧V
Lの値が小さくなる傾向にあることが分かる。
【0126】
また、
図10の(測定実験2−4)の逆相共振モードの測定結果においても同様に、L
4の値を、2.6μH、→ 4.5μH、→ 8.8μHの順に大きくしていくと、受電電圧V
Lの値は、6.16V、→6.24V、→9.00Vという具合に大きくなっていった。
上記のように、逆相共振モードにおいても、L
4の値を大きくするにつれて、被給電機器10の受電電圧V
Lの値が大きくなる傾向にあることが分かる。逆に、L
4の値を小さくするにつれて、被給電機器10の受電電圧V
Lの値が小さくなる傾向にあることが分かる。
【0127】
上記測定実験2−1〜2−4によれば、給電コイル21のコイルL
1、給電共振器22のコイルL
2、受電共振器32のコイルL
3、及び、受電コイル31のコイルL
4におけるインダクタンスの値を調整することによって、被給電機器10の受電電圧V
Lの値を調整することができることが分かる。
【0128】
(製造方法)
次に、上記無線電力伝送装置1を製造する一工程である、設計方法(設計工程)について、
図11及び
図12を参照して説明する。本説明では、無線電力伝送装置1を搭載する携帯機器としてイヤホンスピーカ部201aを備えた無線式ヘッドセット200、及び、充電器201を例にして説明する(
図11参照)。
【0129】
本設計方法で設計される無線電力伝送装置1は、
図11に示す無線式ヘッドセット200及び充電器201に、それぞれ受電モジュール3(受電コイル31・受電共振器32)及び給電モジュール2(給電コイル21・給電共振器22)として搭載されている。また、
図11では、説明の都合上、安定回路7、充電回路8及び充電池9を受電モジュール3の外に記載しているが、実際は、ソレノイド状の受電コイル31及び受電共振器32のコイル内周側に配置されている。即ち、無線式ヘッドセット200には、受電モジュール3、安定回路7、充電回路8及び充電池9が搭載されており、充電器201には、給電モジュール2が搭載されており、給電モジュール2の給電コイル21に交流電源6が接続された状態で使用される。
【0130】
(設計方法)
まず、
図12に示すように、被給電機器10(安定回路7、充電回路8及び充電池9)の仕様から、被給電機器10が有する耐電圧以下であり、被給電機器10が有する駆動電圧以上の範囲内にある被給電機器10の受電電圧V
Lの値が決定する(S1)。
【0131】
次に、給電モジュール2と受電モジュール3との間の距離を決定する(S2)。これは、受電モジュール3を内蔵した無線式ヘッドセット200を、給電モジュール2を内蔵した充電器201に載置した際の給電共振器22と受電共振器32との間の距離d23であり、使用形態としては充電中の状態である。より詳細には、給電共振器22と受電共振器32との間の距離d23は、無線式ヘッドセット200と充電器201の形状・構造を考慮して決定される。
【0132】
また、無線式ヘッドセット200の大きさ・形状・構造を踏まえて、受電モジュール3における受電コイル31及び受電共振器32のコイル径が決定される(S3)。
【0133】
また、充電器201の大きさ・形状・構造を踏まえて、給電モジュール2における給電コイル21及び給電共振器22のコイル径が決定される(S4)。
【0134】
上記S2〜S4の手順を経ることにより、無線電力伝送装置1の給電共振器22(コイルL
2)と受電共振器32(コイルL
3)との間の結合係数k
23と、電力伝送効率が決まることになる。
【0135】
上記S1で決定した受電電圧V
L、及び、S2〜S4の手順を経て決定された電力伝送効率より、給電モジュール2に給電する必要最低限の給電電力量が決定される(S5)。
【0136】
そして、被給電機器10の受電電圧V
L、電力伝送効率、及び、給電モジュール2に給電する必要最低限の給電電力量を踏まえて、受電コイル31のL
4、受電共振器32におけるL
3、及び、結合係数k
34の設計値(S6)が決められ、給電コイル21のL
1、給電共振器22におけるL
2、及び、結合係数k
12の設計値が決められる(S7)。具体的には、上記(式8)の関係を満たしつつ、給電共振器22と受電共振器32との間の距離d23、及び、受電共振器32と受電コイル31との間の距離d34を固定した場合、給電コイル21と給電共振器22との間の距離d12を短くすることにより、被給電機器10の受電電圧V
Lが小さくなる特性や、給電コイル21と給電共振器22との間の距離d12、及び、給電共振器22と受電共振器32との間の距離d23を固定した場合、受電共振器32と受電コイル31との間の距離d34を短くすることにより、被給電機器10の受電電圧V
Lが大きくなる特性や、給電コイル21のコイルL
1、給電共振器22のコイルL
2、受電共振器32のコイルL
3、及び、受電コイル31のコイルL
4におけるインダクタンスの値を調整することによって、被給電機器10の受電電圧V
Lの値を調整することができることに基づき、受電コイル31のL
4、受電共振器32におけるL
3、及び、結合係数k
34の設計値、並びに、給電コイル21のL
1、給電共振器22におけるL
2、及び、結合係数k
12の設計値が決定される。これにより、被給電機器10が有する耐電圧以下であり、被給電機器10が有する駆動電圧以上の範囲内にある受電電圧V
Lになるように、無線電力伝送装置1を構成する要素の各設計値が決定される。
【0137】
上記設計方法を含む無線電力伝送装置1の製造方法、及び、上記設計工程を経て製造された無線電力伝送装置1によれば、被給電機器10の受電電圧V
Lの調整を、新たな機器を設けずにできる無線電力伝送装置1を製造することができる。即ち、無線電力伝送装置1の部品点数を増やさずに、被給電機器10の受電電圧V
Lの調整が可能な無線電力伝送装置1を製造することができる。
【0138】
(その他の実施形態)
上記製造方法の説明では、無線式ヘッドセット200を例示して説明したが、充電池を備えた機器であれば、タブレット型PC、デジタルカメラ、携帯電話、イヤホン型音楽プレイヤー、補聴器、集音器などにも使用することができる。
【0139】
また、上記では、被給電機器10に充電池9を含む無線電力伝送装置1として説明したが、これに限らず、被給電機器10に直接電力を消費しながら可動する機器を採用してもよい。
【0140】
また、上記説明では、給電モジュール2及び受電モジュール3が備える共振器(コイル)間の共振現象(磁界共鳴状態)を利用して磁場を結合させることにより電力伝送を行う無線電力伝送装置1を例示して説明したが、コイル間の電磁誘導を利用して電力伝送を行う無線電力伝送装置1においても適用可能である。
【0141】
また、上記説明では、無線電力伝送装置1を携帯型の電子機器に搭載した場合を想定して説明したが、用途はこれら小型なものに限らず、必要電力量に合わせて仕様を変更することにより、例えば、比較的大型な電気自動車(EV)における無線充電システムや、より小型な医療用の無線式胃カメラなどにも搭載することができる。
【0142】
以上の詳細な説明では、本発明をより容易に理解できるように、特徴的部分を中心に説明したが、本発明は、以上の詳細な説明に記載する実施形態・実施例に限定されず、その他の実施形態・実施例にも適用することができ、その適用範囲は可能な限り広く解釈されるべきである。また、本明細書において用いた用語及び語法は、本発明を的確に説明するために用いたものであり、本発明の解釈を制限するために用いたものではない。また、当業者であれば、本明細書に記載された発明の概念から、本発明の概念に含まれる他の構成、システム、方法等を推考することは容易であると思われる。従って、請求の範囲の記載は、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲で均等な構成を含むものであるとみなされるべきである。また、本発明の目的及び本発明の効果を充分に理解するために、すでに開示されている文献等を充分に参酌することが望まれる。