【実施例】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0017】
図1は本発明の実施例を示す鉄道車両の台車の斜視図、
図2はその鉄道車両の台車の枠組みを示す平面図である。
【0018】
これらの図において、1は台車枠、2はブレーキ、3はパイプ状の横ばり、4は空気ばね、5はつり上金具(台車枠)、6は軸箱、11は一方の台車枠端に配置される加速度センサを装備可能な取付座(第1の取付座)、12は他方の台車枠端に配置される加速度センサを装備可能な取付座(第2の取付座)である。なお、ここでは、加速度センサを装備可能な取付座は台車枠端の2箇所に配置しているが、加速度センサを装備可能な取付座は、台車枠端の1箇所に配置するようにしてもよい。また、加速度センサを装備可能な取付座は、例えば、加速度計を2個装備する際に、
図1に
示すように、台車の左右片側にのみ2個配置するようにしてもよく、取付座11の対角、つまり取付座12の軸の左右反対側に取付座を取付座12の代わりに配置するようにしてもよい。さらに、各台車枠端の全ての4箇所に配置するようにしてもよい。
【0019】
このように、加速度センサを装備可能な取付座を台車枠端に配置するようにしたので、軸ダンパ
21、軸ばね、空気ばね
4、蛇行動、脱線の監視を精度がよく行うことができ、かつ効率的にそれらの異常を検知することができる。
【0020】
図3は軸はり方式の軸箱支持装置を有するボルスタ台車を示す図面代用写真であり、
図4は従来の台車の横ばりでの検知特性図、
図5は本発明の取付座での検知特性図である。
【0021】
図4に示す横ばりに取り付けた上下方向感度の加速度センサでは、軸ダンパ21のフェイルの違いはっきりしない。ここで、「2本」とは1軸の軸ダンパ左右2本をフェイルさせた条件、「8本」とは1軸から4軸までの軸ダンパ左右2本ずつ、計8本をフェイルさせた条件を指す。
【0022】
これに比べて、本発明の加速度センサを装備可能な取付座での検知はより感度良く検知できていることがわかる。さらに、「2本」条件の際にフェイルしていない軸の取付座でも検知できていることから、センサは各取付座に付いている必要はなく、取付座4箇所
のうち1箇所で良い。
【0023】
図5(a)は第1の取付座での検知特性図、
図5(b)は第2の取付座での検知特性図であり、13Hz付近は台車枠の剛体ビッチングモード、38Hz付近は左右台車枠逆位相の弾性変形モードが検知されている。
【0024】
図6は空気ばねパンク時の取付座の振動加速度を示す図であり、横軸は周波数〔Hz〕、縦軸は上下振動加速度PSD〔m/s
2 )
2 /Hz〕を示しており、空気ばねのパンク状態では、
図6の○印部分のように4.6Hz周波数の大きな変化が見られる。
【0025】
なお、
図4、
図5の方法によれば、加速度の大きさそのものを比較する方法なので、同じ線区でも走行日が大きく異なり軌道不整も大きく異なる際には、健全な軸ダンパでも異なった振動加速度PSDが観測されてしまう。
【0026】
もし、加速度計を装備する台車枠端の直下の軸箱に加速度計を付け、軸箱速度計に対する台車枠端の振幅を健全時と比較すれば、この問題を解決できることがわかった。
【0027】
振幅比=フェイル時の台車枠端の振動加速度/フェイル時の軸箱の振動加速度/(健全時の台車枠端の振動加速度/健全時の軸箱の振動加速度)
図8は、軸箱加速度に対する台車枠端の振幅を健全時と比較したもので、方法の信頼性を確保するために、軸ダンパの健全条件で3回、軸ダンパのフェイル健全条件で3回走行した結果を整理したものである。この図で健全であれば、台車枠端/軸箱の値は1になる。周波数13Hz付近と38Hz〜40Hz付近のピークがいずれの走行時も1から離れた値となる。一方、26Hz付近は1を超える走行と超えない走行があり、26Hz付近での判定は、異常検知に適さないことがわかった。
【0028】
また、この結果は、フェイルした軸ダンパの位置と台車内で対角位置にある加速度計の結果で、フェイルした軸ダンパの直近の加速度計の結果ではない。これより4台車枠端のそれぞれに加速度計無くとも軸ダンパフェイルが検知できることがわかった。
【0029】
次に、本発明の他の実施例を示す蛇行動・脱線の検出について説明する。
【0030】
図7は従来蛇行動を監視するにはばね帽付近に左右方向を感度方向とした加速度センサを付けた場合の加速度特性図、
図9は本発明に係る加速度センサの多方向測定化を示す模式図である。
【0031】
図7に示すように、従来蛇行動を監視するにはばね帽付近に左右方向を感度方向とした加速度センサを付け、監視してきた。
【0032】
そこで、本発明では、台車枠端に配置される取付座上の上下加速度センサ31においても、
図9に示すように、
加速度センサを傾けることにより、上下方向Zと左右方向Yの合成加速度を測定可能とする。つまり、感度方向32とした上下方向Zと左右方向Yの合成加速度を検知するようにした。
【0033】
鉄道車両の台車の仕様にもよるが、
図7に示すように蛇行動はおおよそ3Hz程度、前述の軸ダンパフェイルは、13Hz付近および38Hz付近、空気ばねパンクは4.6Hzであり、それぞれ周波数が異なるので周波数解析を行えば、容易に異常を検知することができる。
【0034】
さらに、鉄道車両の台車枠端に配置される取付座上の上下加速度センサを前方方向Xに傾けることにより、加速度センサによって検知する台車の項目を増加させるようにしてもよい。
【0035】
また、脱線検知においては、脱線時の上下振動加速度は通常走行時のそれより標準偏差の30倍以上大きい。よって、本発明でも、この差はセンサによって検知が可能なので、脱線の検知にも有効である。
【0036】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づき種々の変形が可能であり、これらを本発明の範囲から排除するものではない。