(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6199064
(24)【登録日】2017年9月1日
(45)【発行日】2017年9月20日
(54)【発明の名称】電力変換装置のDC電源バス上の欠陥を検出するための方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
H02M 7/48 20070101AFI20170911BHJP
【FI】
H02M7/48 M
【請求項の数】16
【外国語出願】
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-89088(P2013-89088)
(22)【出願日】2013年4月22日
(65)【公開番号】特開2013-236535(P2013-236535A)
(43)【公開日】2013年11月21日
【審査請求日】2015年10月30日
(31)【優先権主張番号】1254072
(32)【優先日】2012年5月3日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】502363191
【氏名又は名称】シュネーデル、トウシバ、インベーター、ヨーロッパ、ソシエテ、パル、アクション、セプリフエ
【氏名又は名称原語表記】SCHNEIDER TOSHIBA INVERTER EUROPE SAS
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100117787
【弁理士】
【氏名又は名称】勝沼 宏仁
(74)【代理人】
【識別番号】100124372
【弁理士】
【氏名又は名称】山ノ井 傑
(74)【代理人】
【識別番号】100096921
【弁理士】
【氏名又は名称】吉元 弘
(72)【発明者】
【氏名】ダビド、レヒャト
(72)【発明者】
【氏名】イブ、ローラン、アラール
【審査官】
坂東 博司
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−340532(JP,A)
【文献】
特開2006−133046(JP,A)
【文献】
特開2000−350456(JP,A)
【文献】
特開平11−215808(JP,A)
【文献】
特開2006−020475(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0072839(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配電網(RD)に接続された電力変換装置のDC電源バス上の欠陥を検出するための方法であって、前記電力変換装置が、前記配電網(RD)に接続され、前記配電網(RD)によって供給される電圧を、前記DC電源バスに印加される電圧(Vbus)に変換するように意図された整流器モジュール(REC)と、前記DC電源バスに接続されたバスキャパシタ(Cbus)、インダクタ(L1)、およびプリチャージ回路とを備え、前記方法が、
‐前記DC電源バスの前記電圧(Vbus)の平均値
【数1】
を決定するステップと、
‐前記DC電源バスの前記電圧(Vbus)のリップル
【数2】
を決定するステップと、
‐前記リップル
【数3】
に対する前記平均値
【数4】
の変化を監視するステップと、
‐前記DC電源バスの前記インダクタ(L1)上の異常、前記電力変換装置の電力過負荷、または前記バスキャパシタ(Cbus)の磨耗の進行から成る前記DC電源バス上の欠陥を、前記変化の率の関数として決定するステップとを備え
、
前記リップルに対する前記平均値の変化を監視するステップは、前記DC電源バスの前記電圧(Vbus)のリップル
【数5】
と前記DC電源バスの前記電圧(Vbus)の前記平均値
【数6】
との比(η)を監視することから成ることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記DC電源バスの前記電圧(Vbus)のリップルと前記DC電源バスの前記電圧(Vbus)の前記平均値との比(η)を監視するステップは、前記比(η)の変化率(Vη)を第1の率(v1)および第2の率(v2)と比較することから成ることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記比
(η)の前記変化率(Vη)が前記第1の率(v
1)よりも大きい場合、
前記DC電源バスの前記電圧(Vbus)のリップルを決定するステップは、前記DC電源バスの前記電圧(Vbus)の前記平均値
【数7】
が変化したかどうかを決定することから成ることを特徴とする、請求項
2に記載の方法。
【請求項4】
前記DC電源バスの前記電圧(Vbus)の前記平均値
【数8】
が変化した場合、前記欠陥は前記プリチャージ回路のプリチャージ継電器(Sw)上の異常から成り、前記DC電源バスの前記電圧(Vbus)の前記平均値
【数9】
が変化しなかった場合、前記欠陥は前記インダクタ(L1)上の異常から成ることを特徴とする、請求項
3に記載の方法。
【請求項5】
前記比(η)の前記変化率(Vη)が前記第2の率(v2)と前記第1の率(v1)の間である場合、前記DC電源バスの前記電圧(Vbus)のリップルを決定するステップは、前記電力変換装置から供給される電力(Pf)が増大したかどうかを決定することから成ることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記電力変換装置によって供給される前記電力(Pf)が増大した場合、前記欠陥は前記電力変換装置の電力過負荷から成り、前記電力変換装置によって供給される前記電力(Pf)が増大しなかった場合、前記DC電源バスの前記電圧(Vbus)のリップルを決定するステップは、前記比(η)に依存する値と制限値(lim)を比較するステップを備えることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記比(η)に依存する値と制限値(lim)を比較した結果に応じて、前記欠陥は、前記バスキャパシタ(Cbus)の磨耗の進行または前記配電網(RD)の周波数(fR)の変化から成ることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記リップルは、前記DC電源バスの前記電圧の第1高調波上でかつ2つの連続する極値間で測定されることを特徴とする、請求項1から7のうちの一項に記載の方法。
【請求項9】
配電網(RD)に接続された電力変換装置のDC電源バス上の欠陥を検出するためのシステムであって、前記電力変換装置が、前記配電網(RD)に接続され、前記配電網(RD)によって供給される電圧を、前記DC電源バスに印加される電圧(Vbus)に変換するように意図された整流器モジュール(REC)と、前記DC電源バスに接続されたバスキャパシタ(Cbus)、インダクタ(L1)、およびプリチャージ回路とを備え、前記システムが、
‐前記DC電源バスの前記電圧(Vbus)の平均値
【数10】
を決定するための第1の手段と、
‐前記DC電源バスの前記電圧(Vbus)のリップル
【数11】
を決定するための第2の手段と、
‐前記リップル
【数12】
に対する前記平均値
【数13】
の変化を監視するための手段と、
‐前記DC電源バスの前記インダクタ(L1)上の異常、前記電力変換装置の電力過負荷、または前記バスキャパシタ(Cbus)の磨耗の進行から成る前記DC電源バス上の欠陥を、前記変化の率の関数として決定するための第3の手段とを備え
、
前記DC電源バスの前記電圧(Vbus)の前記リップル
【数14】
と前記DC電源バスの前記電圧(Vbus)の平均値
【数15】
との比(η)を決定するための第4の手段を備えることを特徴とするシステム。
【請求項10】
前記リップルに対する前記平均値の変化を監視するための手段は、前記比の変化率(Vη)を第1の率(v1)および第2の率(v2)と比較するように設計されることを特徴とする、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記比の前記変化率(V
η)が前記第1の率(v
1)よりも大きい場合、前記
DC電源バス上の欠陥を、前記変化の率の関数として決定するための前記第3
の手段は、前記DC電源バスの前記電圧(Vbus)の前記平均値
【数16】
の変化を監視するように設計されることを特徴とする、請求項
10に記載のシステム。
【請求項12】
前記DC電源バスの前記電圧(Vbus)の前記平均値
【数17】
が変化した場合、前記欠陥は前記プリチャージ回路のプリチャージ継電器(Sw)上の異常から成り、前記DC電源バスの前記電圧(Vbus)の前記平均値
【数18】
が変化しなかった場合、前記欠陥は前記インダクタ(L1)上の異常から成ることを特徴とする、請求項
11に記載のシステム。
【請求項13】
前記比の前記変化率(Vη)が前記第2の率(v2)と前記第1の率(v1)の間である場合、前記DC電源バス上の欠陥を、前記変化の率の関数として決定するための前記第3の手段は、前記電力変換装置によって供給される電力(Pf)の変化を監視するように設計されることを特徴とする、請求項10に記載のシステム。
【請求項14】
前記電力変換装置によって供給される前記電力(Pf)が増大した場合、前記欠陥は前記電力変換装置の電力過負荷から成り、前記電力変換装置によって供給される前記電力が増大しなかった場合、前記DC電源バス上の欠陥を、前記変化の率の関数として決定するための前記第3の手段は、前記比(η)に依存する値と制限値(lim)との比較を実施するように設計されることを特徴とする、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記比(η)に依存する値と制限値(lim)を比較した結果に応じて、前記欠陥は、前記バスキャパシタ(Cbus)の磨耗の進行または前記配電網(RD)の周波数(fR)の変化から成ることを特徴とする、請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
前記バスキャパシタ(Cbus)の内部温度を測定または推定するための手段を備えることを特徴とする、請求項9から15のうちの一項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換装置のDC電源バス上の欠陥を検出するための方法に関する。
【0002】
本発明は、前記方法を実施することのできる検出システムにも関する。
【背景技術】
【0003】
周知のように、電力変換装置は、DC電圧が印加されるDC電源バスを備える。DC電源バスは、2本の電源線を備える。電力変換装置は、DC電源バスの上流側において、配電網(ネットワーク)によって供給されるAC電圧を整流し、AC電圧をバスに印加されるDC電圧に変換するように意図された整流器モジュールを備える。そのような電力変換装置は、バスの2本の電源線に接続され、バス電圧を一定の値に維持するように意図されたバスキャパシタ(bus capacitor)も備える。さらに、電力変換装置は、DC電源バスのいずれか一方または両方の電源線に接続されたフィルタリングインダクタと、プリチャージ継電器が備えられ可変速度駆動を開始するときに使用されるプリチャージ回路とを備えてもよい。
【0004】
様々な構成要素が存在するため、DC電源バスは、動作上のある欠陥を示しがちである。これらの欠陥は、たとえば、
‐バスキャパシタの磨耗の進行、
‐DC電源バスに接続されたインダクタの巻き線同士の間の短絡、
‐DC電源バスの電圧過負荷、
‐プリチャージ継電器の不適切な時間での開放またはその非接続である。
【0005】
現代の電力変換装置は、これらの欠陥に対して保護されておらず、これらの欠陥を検出するための単純な手段を何ら備えていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、電力変換装置のDC電源バス上の欠陥を検出するための方法およびシステムを提案することである。欠陥の検出に関して、検出システムは追加的なセンサを何ら必要としない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的は、配電網に接続された電力変換装置のDC電源バス上の欠陥を検出する方法であって、前記電力変換装置が、配電網に接続され、配電網によって供給される電圧をDC電源バスに印加される電圧に変換するように意図された整流器モジュールと、DC電源バスに接続されたバスキャパシタ、インダクタ、およびプリチャージ回路とを備え、前記方法が、
‐DC電源バスの電圧の平均値を決定するステップと、
‐DC電源バスの電圧のリップルを決定するステップと、
‐前記リップルに対する前記平均値の変化を監視するステップと、
‐DC電源バスのインダクタ上の異常、電力変換装置の電力過負荷、またはバスキャパシタの磨耗の進行から成るDC電源バス上の欠陥を前記変化の率の関数として決定するステップとを備える方法によって実現される。
【0008】
特定の特徴によれば、監視ステップは、DC電源バスの電圧のリップルとDC電源バスの電圧の平均値との比を監視することから成る。
【0009】
別の特定の特徴によれば、比を監視するステップは、前記変化率を第1の率および第2の率と比較することから成る。
【0010】
比の変化率が第1の率よりも大きい場合、決定ステップは、DC電源バスの電圧の平均値が変化したかどうかを決定することから成る。DC電源バスの電圧の平均値が変化した場合、欠陥はプリチャージ回路のプリチャージ継電器上の異常から成る。DC電源バスの電圧の平均値が変化しなかった場合、欠陥はインダクタ上の異常から成る。
【0011】
一方、比の変化率が第2の率と第1の率の間である場合、決定ステップは、電力変換装置によって供給される電力が増大したかどうかを決定することから成る。電力変換装置によって供給される電力が増大した場合、欠陥は電圧変換装置の電力過負荷から成る。電力変換装置によって供給される電力が増大しなかった場合、決定ステップは、比に依存する値と制限値を比較するステップを備える。行われた比較の結果に応じて、欠陥は、バスキャパシタの磨耗の進行または配電網の周波数の変化から成る。
【0012】
本発明によれば、リップルは、好ましくは、DC電源バスの電圧の第1高調波に対して2つの連続する極値間で測定される。
【0013】
本発明はまた、配電網に接続された電力変換装置のDC電源バス上の欠陥を検出するためのシステムであって、前記電力変換装置が、配電網に接続され、配電網によって供給される電圧をDC電源バスに印加される電圧に変換するように意図された整流器モジュールと、DC電源バスに接続されたバスキャパシタ、インダクタ、およびプリチャージ回路とを備え、前記システムが、
‐DC電源バスの電圧の平均値を決定するための第1の手段と、
‐DC電源バスの電圧のリップルを決定するための第2の手段と、
‐前記リップルに対する前記平均値の変化を監視するための手段と、
‐DC電源バスのインダクタ上の異常、電力変換装置の電力過負荷、またはバスキャパシタの磨耗の進行から成るDC電源バス上の欠陥を前記変化の率の関数として決定するための第3の手段とを備えるシステムに関する。
【0014】
特定の特徴によれば、システムは、DC電源バスの電圧のリップルとDC電源バスの電圧の平均値との比を決定するための第4の手段を備える。
【0015】
別の特定の特徴によれば、監視する手段は、比の変化率を第1の率および第2の率と比較するように設計される。
【0016】
比の変化率が第1の率よりも大きい場合、第3の決定手段は、DC電源バスの電圧の平均値の変化を監視するように設計される。DC電源バスの電圧の平均値が変化した場合、欠陥はプリチャージ回路のプリチャージ継電器上の異常から成る。DC電源バスの電圧の平均値が変化しなかった場合、欠陥はインダクタ上の異常から成る。
【0017】
比の変化率が第2の率と第1の率の間である場合、第3の決定手段は、電力変換装置によって供給される電力の変化を監視するように設計される。電力変換装置から供給される電力が増大した場合、欠陥は電圧変換装置の電力過負荷から成る。電力変換装置によって供給される電力が増大しなかった場合、第3の決定手段は、比に依存する値と制限値との比較を実施するように設計される。行われた比較の結果に応じて、欠陥は、バスキャパシタの磨耗の進行または配電網の周波数の変化から成る。
【0018】
本発明によれば、システムは、バスキャパシタの内部温度を測定または推定するための手段を備える。
【0019】
他の特徴および利点は、添付の図面に関して提供される以下の詳細な説明において明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の検出システムを含む電力変換装置を表す図である。
【
図2】本発明の検出方法で実施されるアルゴリズムを表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、電力変換装置のDC電源バス上の欠陥を検出するための方法に関する。この検出方法は、電力変換装置に含まれるかまたは接続された検出システムSにおいて実施される。
【0022】
本発明は、以下を備える電力変換装置に適用する。
【0023】
‐配電網RDに接続され、配電網RDによって供給されるAC電圧をDC電圧Vbusに変換するように意図された整流器モジュールREC。
【0024】
‐2本の電源線、すなわち正の電位の第1の電源線10および負の電位の第2の電源線11を備えるDC電源バス。整流器モジュールRECの出力において、電圧VbusがDC電源バスに印加される。
【0025】
‐バスの第1の電源線10および第2の電源線11に接続され、DC電源バスの電圧Vbusを一定の値に維持するように意図されたバスキャパシタCbus。もちろん、バスキャパシタCbusという表現は、互いに接続された幾つかのキャパシタを備えるバンクも意味するものと理解されたい。
【0026】
‐バスキャパシタCbusの上流側で、第1の電源線10および/または第2の電源線11と直列に接続された少なくとも1つのフィルタリングインダクタL1。
【0027】
‐(
図1におけるように)バスの第1の電源線10または第2の電源線11と直列に接続されるか、あるいはバスキャパシタCbusと直列に接続されたプリチャージ回路。通常、このプリチャージ回路は、制限抵抗器RLを備え、制限抵抗器RLに並列にプリチャージ継電器Swが取り付けられる。この制限抵抗器RLは、DC電源バス充電相の期間中の立上げ時にアクティブになる。制限抵抗器RLは、整流器モジュールRECを介して入力電流を制限するのを可能にする。バスキャパシタCbusが充電されると、制限抵抗器RLは、並列に取り付けられた継電器Swを閉じることによって短絡させられる。
【0028】
さらに、本発明はまた、DC電源バスの下流側に接続され、バスに印加されたDC電圧Vbusを電気負荷Cに向けられる可変電圧に変換するのに使用されるインバータモジュールINVを備える電力変換装置に適用することもできる。
【0029】
本発明の方法は、電力変換装置のDC電源バス上で生じる欠陥を検出するのを可能にする。この方法は、DC電源バスの電圧Vbusの測定のみに依存する検出システムSにおいて実施される。
【0030】
DC電源バスの電圧Vbusは、平均値
【数1】
およびその平均値に関するリップル
【数2】
に分解する。
【0031】
したがって、電圧Vbusは以下のように表される。
【数3】
【0032】
連続的な導通が実現されると、第1高調波のみを考慮する場合、DC電源バスの電圧Vbusは以下のように表される。
【数4】
DC電源バスの電圧Vbusの平均値
【数5】
は
【数6】
に等しく、V
mainは単純網電圧である。
【0033】
バスの電圧リップルの第1高調波は以下のように表される。
【数7】
上式で、
f
Rは網(ネットワーク)の周波数であり、
f
0はLCフィルタの遮断周波数である。
【0034】
本発明によれば、電力変換装置によって供給された電力が電源バスを連続的に導通させるのに十分であるときに、DC電源バスの電圧Vbusのリップル
【数8】
に対するDC電源バスの電圧Vbusの平均値
【数9】
の変化を観察することを伴う。リップルの測定は、第1高調波上でかつ連続する2つの極値間(
【数10】
=電圧ピークから電圧ピークリップルまで)で行われる。したがって、この監視は、DC電源バスの電圧Vbusのリップル
【数11】
とDC電源バスの電圧Vbusの平均値
【数12】
との比ηに基づいて行われる。
【0035】
したがって、この比は以下のように表される。
【数13】
【0036】
なお、
【数14】
一般に
【数15】
であるので、以下の近似を行うことが可能である。
【数16】
【0038】
上記の近似に基づいて、バス電圧のリップルとバス電圧の平均値との比ηは以下のように書かれてもよい。
【数18】
比ηは以下の形式に書き直されてもよい。
【数19】
【0039】
したがって、検出システムは、決定された時間間隔または無作為な時間間隔で、DC電源バスの電圧Vbusの測定を回復し、DC電源バスの電圧Vbusの平均値
【数20】
およびDC電源バスの電圧Vbusのリップル
【数21】
を決定するための手段3を実施する。次に、検出システムは、DC電源バスの電圧Vbusのこの平均値
【数22】
およびDC電源バスの電圧Vbusの対応するリップル
【数23】
に基づいて比ηを決定するための手段4を実施する。
【0040】
その後、本発明の検出システムSは、検出システムSが、DC電源バス上で生じ得る欠陥を検出できるようにする比ηを監視するためのアルゴリズムを実施する。
【0041】
検出システムは、このアルゴリズムにおいて、比ηの増大が速いかそれとも遅いかを考慮に入れる。比ηの増大が速いかそれとも遅いかの決定は、(1秒未満で生じる少なくとも10%の変化に相当する)、第1の率v
1に対するこの比の変化率V
ηと(数年にわたる25%の変化に相当する)、第1の率v
1より低い第2の率v
2に対するこの比の変化率V
ηを比較することによって実現され得ることになる。比の増大率V
ηが第1の率v
1よりも大きい場合、この増大は速いとみなされ、比の増大率V
ηが第2の率v
2と第1の率v
1との間である場合、増大は遅いとみなされるであろう。
【0042】
検出アルゴリズムは、
図2に図式的に示されている。
【0043】
ステップE1において、検出システムSは比ηを監視する。バスキャパシタCbusの熱モデルが利用可能である場合、検出システムSは、ηの測定精度を向上させるために比ηを基準温度とみなしてもよい。
【0044】
電力変換装置の動作時の比ηの速い増大は、
‐変換装置がそのようなプリチャージ継電器Swを備える場合の、プリチャージ継電器Swの開放、
‐DC電源バスのインダクタL1の数本の巻き線間の短絡
という2つの原因を有する。
【0045】
次いで、ステップE2において、検出システムSは、これら2つの欠陥を判別するために、この速い増大がDC電源バスの電圧Vbusの平均値
【数24】
の変化に関係付けられるかどうかを決定する。
【0046】
DC電源バスの電圧Vbusの平均値
【数25】
の変化が比ηの速い増大に付随する場合、この欠陥は確実にプリチャージ継電器Swの開放から生じている。したがって、ステップE3において、検出システムSは、プリチャージ継電器Sw上の欠陥を推定し、この欠陥をたとえばオペレータに信号で伝える。
【0047】
一方、比ηの速い増大がDC電源バスの電圧Vbusの平均値
【数26】
の変化に関係付けられない場合、このことは、この欠陥が確実にインダクタL1の巻き線同士の間の短絡から生じていることを示す。したがって、ステップE4において、検出システムSは、DC電源バスフィルタリングインダクタL1上の欠陥を推定し、この欠陥をたとえばオペレータに信号を送る。
【0048】
プリチャージ回路の位置にかかわらず、すなわち、(
図1におけるように)DC電源バスの電源線10、11と直列であるかそれともバスキャパシタCbusと直列であるかにかかわらず、これら2つの欠陥の検出は有効である。しかしながら、この第2の場合には、欠陥の特性を決定できるように、DC電源バスの電圧Vbusの測定に、プリチャージ回路の端子同士の間の電圧を含めてはならない。
【0049】
図2を参照すると、電力変換装置の正常な動作中の比ηの遅い増大は、
‐電力変換装置の電圧過負荷、
‐バスキャパシタの磨耗の進行、
‐配電網の周波数の変化
という3つの異なる原因を有する。
【0050】
比ηの増大が遅い場合、検出システムSは、ステップE5において、電力変換装置によって供給される電力Pfのレベルを確認する。電力変換装置によって供給される電力Pfが増大した場合、この欠陥は確実に電力変換装置の電力過負荷から生じている。したがって、ステップE6において、検出システムSは、電力変換装置の電力過負荷に関係付けられた欠陥を推定し、この欠陥をたとえばオペレータに信号で伝える。
【0051】
一方、電力変換装置によって供給される電力Pfが増大しなかった場合、検出システムSは、この欠陥がバスキャパシタCbusの磨耗の進行に関係付けられるかどうかを決定する。したがって、ステップE7において、検出システムSは、上記の比の基準値η
0に基づいて決定される制限値(lim)に対する比較を実行する。この基準値η
0はたとえば、検出システムSによって、変換装置の最初の電源投入時に決定され、記憶される。その場合、以下の2つの解決手段が考えられる。
【0052】
‐網の周波数f
Rが測定される場合、検出システムSは、比ηに網RDの周波数f
Rを掛け、その結果を、比の基準値η
0と網の周波数f
Rとの積と比較する。バスキャパシタCbusは、積η
*f
Rの値がη
0*f
Rよりも25%大きいときは寿命に達している。
【0053】
‐網の周波数f
Rが測定されない場合、検出システムは、比ηを数式
【数27】
と比較する。この数式において、「tol」は網周波数の値に関する公差である。バスキャパシタは、
【数28】
であるときには寿命に達している。
【0054】
図2のステップE7において、利用可能な網の周波数f
Rの測定を考慮することによって比較が行われる。
【0055】
配電網の周波数が測定される場合、積η
*f
Rの監視はまさに、バスキャパシタのキャパシタンスの値の逆数を監視することに相当する。したがって、検出システムが、バスキャパシタの内部温度を測定または推定する手段を使用するバスキャパシタの熱モデルを有する場合、検出システムは、バスキャパシタの残りの寿命をより正確に評価することができる。
【0056】
ステップE7において比較が実行されている間、検出システムSが、比ηまたは比ηと網の周波数f
Rとの積が制限値(lim)よりも大きいと推定する場合、検出システムSは、ステップE8において、バスキャパシタCbusの磨耗が進行していると推定し、そのことをたとえばオペレータに信号で伝える。
【0057】
一方、検出システムSが、ステップE7において、比ηまたは比ηと網の周波数との積が制限値(lim)以下であると推定する場合、検出システムSは、ステップE9において、電力変換装置には欠陥が存在しないと推定する。その場合、比ηの増大が遅いのは、配電網の周波数f
Rが変化したためであるに過ぎない。その場合、検出システムは、ステップE1において比の監視を再開することができる。
【符号の説明】
【0058】
3 手段
4 手段
10 第1の電源線
11 第2の電源線
L1 フィルタリングインダクタ
Cbus バスキャパシタ
f
R 周波数
INV インバータモジュール
lim 制限値
Pf 電力
RD 配電網
REC 整流器モジュール
RL 制限抵抗器
S 検出システム
Sw プリチャージ継電器
Vbus 電圧
V
η 変化率
η 比
η
0 基準値
η
*f
R 積