特許第6199077号(P6199077)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6199077
(24)【登録日】2017年9月1日
(45)【発行日】2017年9月20日
(54)【発明の名称】乾き度測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/22 20060101AFI20170911BHJP
   G01N 7/00 20060101ALI20170911BHJP
【FI】
   G01N1/22 A
   G01N7/00 Z
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-105535(P2013-105535)
(22)【出願日】2013年5月17日
(65)【公開番号】特開2014-228286(P2014-228286A)
(43)【公開日】2014年12月8日
【審査請求日】2016年4月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000133733
【氏名又は名称】株式会社テイエルブイ
(72)【発明者】
【氏名】森井 高之
【審査官】 西浦 昌哉
(56)【参考文献】
【文献】 特開平01−313748(JP,A)
【文献】 特開2003−075317(JP,A)
【文献】 特開昭62−076437(JP,A)
【文献】 特開昭51−096384(JP,A)
【文献】 特開昭62−015431(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0068035(US,A1)
【文献】 米国特許第5404745(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/00− 1/34
G01N 5/00− 9/36
G01F 1/56− 1/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平方向に配置された蒸気配管を流れる蒸気をサンプリングして乾き度を測定する乾き度測定装置であって、
前記蒸気配管中を流れる蒸気を、前記蒸気配管内のサンプリング位置からサンプリングするサンプリング部と、
前記サンプリングした蒸気を計測して乾き度を算出する乾き度算出部とを備え、
前記サンプリング部は、前記サンプリング位置を蒸気流速に応じて変更する機構を有し、蒸気流速が速くなるほど、前記蒸気配管の断面中心に近い位置をサンプリング位置とし、蒸気流速が遅くなるほど、前記蒸気配管の断面中心から遠い下方部の位置をサンプリング位置とする、乾き度測定装置。
【請求項2】
前記サンプリング部は、前記蒸気の流れ方向と直交する方向に回動軸を有し、
蒸気流速が速くなるほど前記回動軸の回動角を大きくし、蒸気流速が遅くなるほど前記回動軸の回動角を小さくすることによって、前記サンプリング位置を蒸気流速に応じて変更する、
請求項1に記載の乾き度測定装置。
【請求項3】
水平方向に配置された蒸気配管を流れる蒸気をサンプリングして乾き度を測定する乾き度測定方法であって、
前記蒸気配管中を流れる蒸気を、前記蒸気配管内のサンプリング位置からサンプリングするサンプリング工程と、
前記サンプリングした蒸気を計測して乾き度を算出する乾き度算出工程とを含み、
前記サンプリング工程は、前記サンプリング位置を蒸気流速に応じて変更し、蒸気流速が速くなるほど、前記蒸気配管の断面中心に近い位置をサンプリング位置とし、蒸気流速が遅くなるほど、前記蒸気配管の断面中心から遠い下方部の位置をサンプリング位置とする、乾き度測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば蒸気の乾き度を測定する乾き度測定装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
蒸気の乾き度とは、蒸気中の気相と液相との重量割合をいう。従来の乾き度測定装置には、蒸気配管に流れる水蒸気の一部をサンプリング管に導き入れてサンプリングし、このサンプリングした水蒸気を気液分離した際の液体水量と、このサンプリングした水蒸気を凝縮させた全体水量との比率に基づいて、蒸気の乾き度を測定するものがある(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−75317号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の乾き度測定装置は、配管の一部のみから蒸気をサンプリングしているので、配管を流れる蒸気の乾き度を正確に測定することが困難であった。
【0005】
例えば、水滴と蒸気とが混合している状態の水蒸気は、湿り蒸気といわれている。このような湿り蒸気においては、乾き度が1(100%)に近づくにつれて水滴の大きさや個数が減少していく。つまり、乾き度が1以下の水蒸気(湿り蒸気)が流れる蒸気配管中においては、大きさの異なる水滴が複数存在している。
【0006】
そして、これらの大きさの異なるそれぞれの水滴は、配管内において決して均一に存在していない。図7は、蒸気配管の断面における水滴の存在状態の一例を模式的に示す図である。
【0007】
図7に示すように、液滴径が比較的小さい水滴91は、配管断面90の全体にまばらに分布している。また、液滴径が中程度の水滴92は、配管断面90の中部及び下部に多く存在している。さらに、液滴径が比較的大きい水滴93は、配管断面90の下部に多く存在している。
【0008】
この場合において、配管断面90の中心部にある領域94においては、水滴91及び92をそれぞれ1つずつサンプリングすることができる。一方、配管断面90の右下部にある領域95においては、2つの水滴91(液滴径小)、1つの水滴92(液滴径中)及び、1つの水滴93(液滴径大)をそれぞれサンプリングすることができる。
【0009】
つまり、領域95においてサンプリングした水蒸気を気液分離した際の液体水量は、領域94においてサンプリングした水蒸気を気液分離した際の液体水量よりも、1つの水滴91及び1つの水滴93の分だけ多くなる。乾き度は、気液分離した際の液体水量を用いて算出されるため、サンプリングした位置によりサンプリングした水蒸気の液体水量が異なると、配管中における正確な乾き度を算出することができない。
【0010】
このように、上記従来の乾き度測定装置では、配管の一部のみから蒸気をサンプリングしているので、配管を流れる蒸気の乾き度を正確に測定することは困難である。
【0011】
したがって本発明が解決しようとする課題は、配管を流れる蒸気の乾き度を正確に測定することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するために、本発明の乾き度測定装置は、
蒸気配管を流れる蒸気をサンプリングして乾き度を測定する乾き度測定装置であって、
前記蒸気配管中を流れる蒸気を、前記蒸気配管内のサンプリング位置からサンプリングするサンプリング部と、
前記サンプリングした蒸気を計測して乾き度を算出する乾き度算出部とを備え、
前記サンプリング部は、前記サンプリング位置を蒸気流速に応じて変更する機構を有する。
【発明の効果】
【0013】
本願明細書の開示によれば、配管を流れる蒸気の乾き度を正確に測定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】乾き度測定装置1の構成図の一例を模式的に示す図である。
図2】配管4の長手方向の垂直断面から見た場合におけるサンプル採取管11のサンプリング部111の一例を模式的に示す図である。
図3】湿り蒸気の流速が遅い場合における、サンプル採取管11のサンプリング部111が回動した状態の一例を模式的に示す図である。
図4】湿り蒸気の流速が遅い場合における、配管断面の水滴の存在状態の一例を模式的に示す図である。
図5】湿り蒸気の流速が速い場合における、サンプル採取管11のサンプリング部111が回動した状態の一例を模式的に示す図である。
図6】湿り蒸気の流速が速い場合における、配管断面の水滴の存在状態の一例を模式的に示す図である。
図7】配管断面における水滴の存在状態の一例を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の乾き度測定装置の好ましい実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明では、サンプリングした水蒸気を加熱した場合におけるエンタルピ変化に基づいて、その乾き度を計測する例について説明する。また、各図中の構成部材の寸法は、実際の構成部材の寸法及び各構成部材の寸法比率等を忠実に表したものではない。
【0016】
[1.第1の実施形態]
[1−1.乾き度測定装置の構成]
図1は、乾き度測定装置1の構成図の一例を模式的に示す図である。図2は、配管4の長手方向の垂直断面から見た場合におけるサンプル採取管11のサンプリング部111の一例を模式的に示す図である。
【0017】
乾き度測定装置1は、サンプル採取管11、蒸気配管用(1次圧力用)の圧力センサ12、サンプル採取管用(2次圧力用)の圧力センサ13、サンプル採取管用の温度センサ14、オリフィス15、ヒータ16及び、乾き度算出部17を含む。
【0018】
サンプル採取管11は、サンプリング部111と加熱部112とを含む。サンプリング部111は、その一端が蒸気配管4の内部に配置されているサンプル採取管11の一部であり、蒸気配管4の内部を流れる湿り蒸気を、サンプリングすることができる。サンプリング部111は、「蒸気配管中を流れる蒸気を、蒸気配管内のサンプリング位置からサンプリングするサンプリング部」に該当する。
【0019】
サンプリング部111は、サンプリング開口111aと回動軸111bとを備える。サンプリング開口111aは、例えばサンプリング部111を構成する筒状の壁面の一部を切り欠くことにより形成することができる。サンプリング開口111aは、湿り蒸気をサンプル採取管11に流入させることができる。
【0020】
回動軸111bは、サンプリング部111が湿り蒸気の流体圧力を受けて回動するように構成される。例えば、回動軸111bは、蒸気の流れ方向又は配管4の長手方向と直交する方向に回動するように構成することができる。この場合、回動軸111bは、蒸気流速が速くなるほど回動軸111bの回動角が大きくなり、蒸気流速が遅くなるほど回動軸111bの回動角が小さくなるように回動することが好ましい。回動軸111bは、「サンプリング位置を蒸気流速に応じて変更する機構」に該当する。
【0021】
回転軸111bは、自らが回動することにより、サンプリング開口111aの位置を変更することができる。回動軸111bは、例えばフレキシブルジョイント又は可動式エルボジョイント等を用いて構成することができる。この場合、サンプリング部111と加熱部112とは、回転軸111bを介して互いに連通可能に接続される。
【0022】
加熱部112は、蒸気配管4の外部に配置されているサンプル採取管11の一部であり、サンプリング部111においてサンプリングした湿り蒸気を、ヒータ16により加熱させることができる。このため、加熱部112は、ヒータ16により加熱可能な位置に配置される。なお、サンプリング部111と加熱部112とは、それぞれ別体とし、それぞれを連結する構成としてもよい。
【0023】
圧力センサ12は、蒸気配管4の内部圧力を計測することができる。圧力センサ13は、サンプル採取管11における加熱部112の内部圧力を計測することができる。温度センサ14は、サンプル採取管11における加熱部112の内部温度を計測することができる。
【0024】
オリフィス15は、加熱部112の上流側と下流側の二箇所に配置されており、サンプル採取管11における加熱部112に存在する蒸気の圧力及び体積を一定に保持することができる。
【0025】
ヒータ16は、サンプル採取管11における加熱部112に存在する蒸気を加熱することができる。ヒータ16には、例えば電熱式ヒータを用いることができる。
【0026】
乾き度算出部17は、圧力センサ12、圧力センサ13、温度センサ14及び、ヒータ16からの情報に基づいて、サンプリングした蒸気の乾き度を算出することができる。乾き度算出部17には、例えばCPUを備えたコンピュータ装置を用いることができる。乾き度算出部17は、「サンプリングした蒸気を計測して乾き度を算出する乾き度算出部」に該当する。
【0027】
[1−2.サンプリング部の動き]
図3及び図5は、サンプル採取管11のサンプリング部111が回動した状態の一例を模式的に示す図である。具体的には、図3は湿り蒸気の流速が遅い場合(湿り蒸気の流体圧力が小さい場合)におけるサンプリング部111の回動状態を示しており、図5は湿り蒸気の流速が速い場合(湿り蒸気の流体圧力が大きい場合)におけるサンプリング部111の回動状態を示している。また、図4は、湿り蒸気の流速が遅い場合における、配管断面の水滴の存在状態の一例を模式的に示す図であり、図6は湿り蒸気の流速が速い場合における、配管断面の水滴の存在状態の一例を模式的に示す図である。
【0028】
湿り蒸気の流速が遅い場合、図4に示すように、液滴径の大きさに関わらず水滴51は、配管断面40の下方部に多く分布する。一方、湿り蒸気の流速が速い場合、図6に示すように、液滴径の大きさに関わらず水滴51は、配管断面40の中心部に多く分布する。これは、流速が速くなると配管断面中心付近の圧力が低下することにより、各水滴51が中心方向へ移動するためである。
【0029】
蒸気配管4の内部を流れる湿り蒸気は、サンプリング開口111aに流入する。湿り蒸気には、気相と液相が含まれているため、液相である水滴(液滴)がサンプリング開口111aに流入する。つまり、サンプリング開口111aを介して、水滴を含む蒸気を採取することができる。
【0030】
このように、蒸気配管4の中に発生している水滴を含む湿り蒸気を、蒸気の流速に応じて位置が変わるサンプリング開口111aに流入させることにより、蒸気配管4の内に発生する大きさの異なる水滴を、流速による影響を受けることなく、確実にサンプリングすることができる。湿り蒸気に含まれる水滴を流速によらず確実にサンプリングすることにより、流速の違いによるサンプリング誤差を低減して、以下に示す乾き度を精度よく算出することができる。
【0031】
[1−3.乾き度の算出例]
図1に示した度測定装置1において蒸気の乾き度を算出する例を以下に説明する。蒸気配管4を流れる蒸気は、サンプリング部111を介してサンプル採取管11に導かれる。蒸気配管4の圧力は、圧力センサ12により計測され、乾き度算出部17に通知される。
【0032】
サンプリング部111を介してサンプリングされた蒸気は、サンプル採取管11の上流側のオリフィス15を介して、加熱部112に流入する。加熱部112に流入した蒸気は、ヒータ16により加熱されて乾き度1(100%)の過熱蒸気となる。乾き度1の過熱蒸気が、圧力センサ13及び温度センサ14に導かれると、加熱部112における圧力及び温度が計測される。これら計測された、加熱部112における圧力及び温度は、乾き度算出部17に通知される。この過熱蒸気は、サンプル採取管11の下流側のオリフィス15を介して、サンプル採取管11の外部に排出される。
【0033】
なお、圧力センサ14及び下流側のオリフィス15は必須ではない。圧力センサ14及び下流側のオリフィス15を設けない場合、過熱蒸気は大気に放出される。この場合、乾き度算出装置17は、大気圧を用いて乾き度を算出することができる。
【0034】
また、サンプル採取管11の断面積、オリフィス15の孔断面積及び、オリフィスの流量係数等は、予め乾き度算出部17に設定されており、圧力センサ12及び13からの圧力値に基づいて加熱部112における蒸気流量が算出可能である。なお、オリフィス15に代えて、図示しない流量センサを用いてもよい。この場合、流量センサは、サンプル採取管11における加熱部112に流入した蒸気の流量を、乾き度算出部17に通知することができる。また、流量センサを用いた場合、圧力センサ12を設ける必要はない。
【0035】
乾き度算出部17は、圧力センサ13及び温度センサ14からの計測値に基づいて、加熱部112における過熱蒸気のエンタルピh1を算出する。また、乾き度算出部17は、ヒータ16において与えた熱量と、加熱部112に流入した蒸気の流量値とにより、単位流量当りのエンタルピ変化量Δhを算出する。過熱蒸気のエンタルピh1から、エンタルピ変化量Δhを減算することにより、湿り蒸気のエンタルピh2を求め、湿り蒸気のエンタルピh2に基づいて、湿り蒸気の乾き度を算出することができる。
【0036】
[1−4.まとめ]
上記乾き度測定装置1においては、サンプリング部は、蒸気配管4内を流れる蒸気を、流速に応じて変更した位置からサンプリングする。乾き度算出部は、サンプリング部にてサンプリングした蒸気を計測して乾き度を算出する。このため、上記乾き度測定装置1は、流速に応じて変更した位置からサンプリングした湿り蒸気を用いてその乾き度を算出することができる。この場合、湿り蒸気のサンプリング誤差を低減できる。このため、上記乾き度測定装置1は、湿り蒸気の乾き度を精度よく測定することが可能となる。
【0037】
[2.他の実施形態]
[2−1.サンプリング部の変形例]
上記実施形態においては、流体圧力により回動軸111bが回動することにより、サンプリング開口111aの位置を変動させる例について説明したが、流体圧力を検出するセンサからの出力に応じて、機械的にサンプリング開口111aの位置を変化させてもよい。この場合、例えばセンサ出力に応じて回動軸111bを回動させるモータを用いてもよい。
【0038】
なお、サンプリング開口111aの形状、大きさ又は個数は、上記において例示したものに限定されない。例えば、配管径や蒸気の質に応じて、上記サンプリング開口111aの形状、大きさ又は個数は適宜変更することができる。
【0039】
[2−2.乾き度算出部の変形例]
上記実施形態においては、サンプリングした湿り蒸気を加熱した際におけるエンタルピ変化に基づいて乾き度を算出する例を説明したが、他の方法を用いて乾き度を算出してもよい。
【0040】
例えば、湿り蒸気をノズルを通して測定容器内に噴射して断熱膨脹させて過熱蒸気とし、ノズルの上流側の圧力と測定容器内の圧力及び温度を検出することにより、モリエル線図あるいは飽和蒸気表及び過熱蒸気表を用いて乾き度を測定する方法により、蒸気の乾き度を算出してもよい。
【0041】
また、赤外線、超音波又はレーザー等を利用して検出した気相と液相の割合に基づいて、蒸気の乾き度を算出してもよい。
【0042】
[2−3.その他]
なお、上記各実施形態において説明した構成の一部または全部を、2以上組み合わせた構成としてもよい。
【符号の説明】
【0043】
1 乾き度測定装置
11 サンプル採取管
12 圧力センサ
13 圧力センサ
14 温度センサ
15 オリフィス
16 ヒータ
17 乾き度算出部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7