(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、これらの防音・吸音装置は、建築工事や解体工事等の防音や吸音が目的であり、レールの保線作業時における防音や吸音を目的としたものではなく、レールとの関係やレール上を走行する車輛との関係が考えられていないため、そのままレールの保線作業に直ぐに転用できるものではなかった。
【0005】
特に、建築工事や解体工事等は一定期間かかるので、建築工事や解体工事等の防音目的の保線作業用防音・吸音装置は一定期間据え置いて使用するのに対し、レールの保線作業はレールに沿って長距離に亘り電車の止まる夜間で、かつ、始発電車が発車するまでの短時間に行わなければならないという特殊性がある。また、レールには複線や単線の違いがあると共に、車両限界や建築限界という制限もある。
【0006】
そこで、本発明はこのような問題点に着目してなされたもので、レールの保線作業に最適な保線作業用防音・吸音装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明の保線作業用防音・吸音装置は、吸音部材を着脱自在に挿入するためのポケットを設けた防音シートと、前記
防音シートを支持してレールに沿って立設させる防音シート支持手段とを有することを特徴とする。
ここで、前記ポケットは、網目または多数の孔を有するネットを前記防音シートに溶着または縫い付けることにより複数設けると良い。
また、前記防音シート支持手段は、前記防音シートの上側ポール通し部に通されて防音シートを吊下げる吊下げポールと、前記吊下げポールの両側をそれぞれ支持する一対の支柱ポールと、前記一対の支柱ポールの基部それぞれを支持する一対のローラ付き移動台座部とを有し、その一対のローラ付き移動台座部は、それぞれ、レール方向に沿って支柱ポールの基部の両側に設けられ、レールの頭部の少なくとも上面に接触する縦ローラと、レール方向に沿って支柱ポールの基部の両側に設けられ、レールの頭部の少なくとも両側面を挟持するように接触する一対の横ローラとを有し、その一対の横ローラの内、少なくとも片側の横ローラは、ローラ付き移動台座部に対し回動軸を介して跳上げ可能に取り付けられた跳上げ式ローラ支持アームに取り付けられていると良い。
また、前記防音シート支持手段は、さらに、前記ローラ付き移動台座部におけるレール方向の横ローラ間に設けられ、レールの腹部の両側面に先端部が当接することにより前記支柱ポールの振れを止めると共に、前記縦ローラおよび一対の横ローラのブレーキとして機能する振止め・ブレーキボルトを有するとさらに良い。
また、前記防音シート支持手段は、前記防音シートの両側に設けられ、前記防音シートの上端部を吊下げワイヤを張ることにより前記防音シートを張る一対のシート張り用ポールと、前記一対のシート張り用ポールの基部それぞれを支持する一対のシート張り用ベースとを有し、その一対のシート張り用ベースは、それぞれ、前記レール上を走る車両よりも所定間隔だけずれた場所から前記一対のシート張り用ポールが立設するようにほぼL字形状を有しており、そのレール側先端部にはレールの底部に係合する一端側レール押え片が設けられ、その一端側レール押え片に対しほぼレールの底部の幅だけ離間して設けられた締め付けノブの他端側レール押え具とによりレールの底部を両側から挟持してレールに固定され、前記一対のシート張り用ポールのうち一方のシート張り用ポールの上端部には吊下げワイヤの一端が縛り付けられている一方、他方のシート張り用ポールには吊下げワイヤの一端が巻き付けられ、回転することによりその吊下げワイヤを緩めたり緊張させるためのウインチが設けられていても良い。
また、前記防音シート支持手段は、前記防音シートの上側ポール通し部に通されて防音シートを吊下げる吊下げポールと、前記吊下げポールの両側をそれぞれ支持する一対の支柱ポールと、前記一対の支柱ポールの基部それぞれを支持し、レールの長手方向に対し直交方向にスライドすることにより設置面積を増大させる一対のスライド式台座部とを有するようにしても良い。
【発明の効果】
【0008】
本発明の保線作業用防音・吸音装置では、吸音部材を着脱自在に挿入するためのポケットを設けた防音シートと、前記
防音シートを支持してレールに沿って立設させる防音シート支持手段とを有するため、レールの保線作業に最適な保線作業用防音・吸音装置を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る保線作業用防音・吸音装置の実施形態1〜3について、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0011】
実施形態1.
まず、実施形態1の保線作業用防音・吸音装置1について説明する。実施形態1の保線作業用防音・吸音装置1は、
図1〜
図4に示すように、例えば横幅4500mm、縦幅2500mmの防音シート11の表面に、網目または多数の孔を有する横幅4400mm、縦幅2100mmの耐水性のメッシュ素材等からなるネット12を横方向に1100mm間隔で溶着または縫い付けると共に下辺も溶着または縫い付けて4つのポケット12aを設けると共に、各ポケット12aの中に吸音部材である吸音スポンジ13を着脱自在に挿入し、その防音シート11を実施形態1の防音シート支持手段14によりレールRに沿って立設したものである。なお、ポケット12aの大きさのネット12をポケット12aの数だけ防音シート11の表面に溶着または縫い付けてポケット12aを設けても良い。また、ポケット12aの数は1つでも勿論良いが、ポケット12aの数を複数にした方が各ポケット12aの中に挿入する吸音スポンジ13の大きさが小さくなるので、吸音スポンジ13が取扱い易くなる。
【0012】
防音シート11は、
図3や
図4等に示すように防音シート支持手段14の吊下げポール14aが通される上側ポール通し部11aと、その両側に一対の支柱ポール14b,14bがそれぞれ通される一対の両側ポール通し部11b,11bと、防音シート支持手段14に取付けた場合でもその下端がレールRの下の地面まで届く長さのスカート部11cを有している。
【0013】
ネット12は、網目や孔の大小は問題としないが、各ポケット12aの中に吸音部材である吸音スポンジ13が挿入されているか否かを目視できる程度の網目であると良い。また、屋外で使用するため耐水性を有するものが良い。ただし、各ポケット12aの中に吸音スポンジ13が挿入されているか否かを目視できれば十分であるので、ビニール等の透明部材でも良く、また一部に吸音スポンジ13確認用の切欠き部や、吸音スポンジ13の頭部が突出するようにポケット12aを浅くしたネット12や透明部材以外でも良い。
【0014】
吸音スポンジ13は、周知のもので、吸音するため多孔質のスポンジからなる。吸音スポンジ13は雨水等の水に濡れ、長期間報知しておくと腐食し易いものである。
【0015】
防音シート支持手段14は、
図3に示すように防音シート11の上側ポール通し部11aに通されて防音シート11を吊下げる分割式の吊下げポール14aと、連結した吊下げポール14aの両側をそれぞれ支持する一対の支柱ポール14b,14bと、吊下げポール14aの両側と一対の支柱ポール14b,14bとをそれぞれ連結する一対のL字連結部14c,14cと、一対の支柱ポール14b,14bの基部それぞれを支持する
図5および
図6に示すような構成の一対のローラ付き移動台座部14d,14dとを有する。なお、
図3において、14a1は、分割式の吊下げポール14aを繋ぐジョイントである。
【0016】
ローラ付き移動台座部14dは、
図5および
図6に示すように支柱ポール14bの基部に挿入されるポール受部14d1と、そのポール受部14d1に対しレールRに沿って前後両側に設けられ、レールRの頭部の少なくとも上面に接触する一対の縦ローラ14d2,14d2と、一対の縦ローラ14d2,14d2それぞれの斜め下方であってレールRの左右両側に設けられ、レールRの頭部の少なくとも両側面を挟持するように接触する一対の横ローラ14d31,14d41、14d32,14d42と、ローラ付き移動台座部14dにおけるレール方向の横ローラ14d31,14d41と横ローラ14d32,14d42間であるポール受部14d1の左右両側に設けられ、レールRの腹部の両側面に先端部が当接することにより支柱ポール14b,14bの振れを止めると共に、縦ローラ14d2,14d2および一対の横ローラ14d31,14d41、14d32,14d42のブレーキとして機能する振止め・ブレーキボルト14d5,14d6とを有する。
【0017】
ここで、一対の横ローラ14d31,14d41、14d32,14d42の内、少なくとも片側(
図5(a)では下側)の横ローラ14d31.14d32と、振止め・ブレーキボルト14d5とは、ローラ付き移動台座部14dに対し回動軸14d71,14d71を介して跳ね上げ可能に取り付けられた跳上げ式ローラ支持アーム14d72,14d72と一体の跳上げ式ローラ支持板14d73に取り付けられている。なお、跳上げ式ローラ支持アーム14d72,14d72には、それぞれ、
図6(a)に示すようにロック孔14d74,14d74が設けられている一方、ローラ付き移動台座部14d側にはロック孔14d11,14d11が設けられており、ローラ付き移動台座部14dをレールRに設置する場合には、
図5(a),(b)や
図6(b)に示すようにロックピン14d9,14d9が挿入される。
【0018】
その一方、他方側(
図5(a)では上側)の横ローラ14d41,14d42と、振止め・ブレーキボルト14d6とは、ローラ付き移動台座部14dに固定された固定式ローラ支持アーム14d82,14d82と一体の固定式ローラ支持板14d83に取り付けられている。
【0019】
以上のように構成された実施形態1のローラ付き移動台座部14dをレールRに取り付ける場合は、
図6(a)に示すように跳上げ式ローラ支持アーム14d72,14d72を跳ね上げてローラ付き移動台座部14dをレールRにセットした後、
図6(b)に示すように跳上げ式ローラ支持アーム14d72,14d72を下ろす。
【0020】
次に、跳上げ式ローラ支持アーム14d72,14d72のロック孔14d74,14d74と、ローラ付き移動台座部14d側のロック孔14d11,14d11とを位置合わせした後、ロックピン14d9,14d9を挿入する。
【0021】
これにより、ローラ付き移動台座部14dをレールRに対し移動可能に取り付けることができたため、作業者はこの保線作業用防音・吸音装置1をレールRに沿って移動させることができる。
【0022】
そして、ローラ付き移動台座部14dの左右両側にはそれぞれ振止め・ブレーキボルト14d5,14d6が設けられているため、作業者はこの保線作業用防音・吸音装置1を最適な場所に移動させた後、振止め・ブレーキボルト14d5,14d6を締め付けそれらの先端部でレールRの腹部の両側面を挟持することにより、レールRに対しこの保線作業用防音・吸音装置1を簡単かつ確実に固定することができる。
【0023】
従って、実施形態1の保線作業用防音・吸音装置1では、防音シート11の表面にネット12により複数のポケット12aを設けると共に、そのポケット12aの中に吸音部材である吸音スポンジ13を着脱自在に挿入し、その防音シート11を実施形態1の防音シート支持手段14によりレールR上を移動可能に設けたため、この保線作業用防音・吸音装置1をレールRに沿って簡単に移動させることができ、保線作業に最適な保線作業用防音・吸音装置を提供できる。
【0024】
例えば、複線の一方の線で保線作業を行う場合には、平行して走るその直ぐ横の他方の線のレールR上に実施形態1の保線作業用防音・吸音装置1を設置すると、他方の線のレールR上で実施形態1の保線作業用防音・吸音装置1が移動可能になり、複線の保線作業で効率良く使用することができる。
【0025】
また、実施形態1の保線作業用防音・吸音装置1では、防音シート11の表面には、吸音スポンジ13を着脱自在に挿入可能な複数のポケット12aを設けたため、雨が降った時や降りそうな時などは、水に弱い吸音スポンジ13をポケット12aから取り外すことができ、この点でも保線作業に最適な保線作業用防音・吸音装置を提供できる。特に、その複数のポケット12aは、網目や複数の孔を有するネット12を所定間隔で溶着や縫い付ける等して設けているため、各ポケット12aにおける吸音スポンジ13の有無が外部から目視で簡単に確認することができ、雨が降った時などに吸音スポンジ13の取り外し忘れを確実に防止できる。
【0026】
また、実施形態1の保線作業用防音・吸音装置1では、防音シート11の表面に設けた複数のポケット12aの下端部は、
図1に示すようにレールRの頭部の頭頂面よりも上方に位置するようにしている。そのため、それらのポケット12aに挿入される吸音スポンジ13の下端部はレールRの頭部の頭頂面や地面に接することがなくなる。そのため、吸音スポンジ13の下端部の磨耗や汚れ、さらには吸音スポンジ13への濡れた地面による浸水を確実に防止して、吸音スポンジ13を長期に使用することが可能となり、この点でも保線作業に最適な保線作業用防音・吸音装置を提供できる。
【0027】
また、実施形態1の保線作業用防音・吸音装置1では、防音シート11の縦(鉛直)方向の長さを長くして防音シート11の下端部であるスカート部11cが地面に着くように構成したため、防音シート11の下方から騒音が外側に漏れることも防止でき、この点でも確実に保線作業時に発生する騒音を確実に防音することができる。
【0028】
実施形態2.
次に、実施形態2の保線作業用防音・吸音装置1’について説明する。
【0029】
実施形態2の保線作業用防音・吸音装置1’は、実施形態1の保線作業用防音・吸音装置1とは防音シート支持手段14’のみが異なり、複数のポケット12aに吸音スポンジ13を着脱自在に挿入するように構成した防音シート11の構成は同じである。そのため、実施形態2の保線作業用防音・吸音装置1’の特徴部分である防音シート支持手段14’を中心に説明する。
【0030】
図7は、実施形態2の保線作業用防音・吸音装置1’の正面図である。また、
図8は、実施形態2の保線作業用防音・吸音装置1’における防音シート支持手段14の拡大右側面図、
図9は、実施形態2の保線作業用防音・吸音装置1’をレール設置した状態を示す側面図である。
【0031】
実施形態2の防音シート支持手段14’は、
図7〜
図9に示すように、防音シート11の両側に設けられ、防音シート11上端の上側ポール通し部11aの中をケプラー等からなる吊下げワイヤ14a’を通すことにより防音シート11を張る一対のシート張り用ポール14b’,14c’と、その一対のシート張り用ポール14b’,14c’の基部それぞれを支持する一対のシート張り用ベース14d’,14d’と、吊下げワイヤ14a’の一端が巻き付けられ、回転することによりその吊下げワイヤ14a’を緩めたり緊張させるウインチ14e’を有している。なお、防音シート11上端の上側ポール通し部11aの中を吊下げワイヤ14a’を通す際に、予め上側ポール通し部11aの中に実施形態1の吊下げポール14aを挿入しておき、吊下げポール14aの中を吊下げワイヤ14a’を通すようにしても良い。
【0032】
ここで、
図7に示すように、シート張り用ポール14b’,14c’の内、一方のシート張り用ポール14b’の上端部には、吊下げワイヤ14a’の一端部が掛止される掛止部14b1’が設けられる。他方のシート張り用ポール14c’には、作業者の手の高さ程度の位置にウインチ14e’が設けられる一方、その上端部に吊下げワイヤ14a’がウインチ14e’に対し円滑に進退するようにローラ部14c1’が設けられている。
【0033】
一対のシート張り用ベース14d’,14d’は、それぞれレールRに取付け固定され、一対のシート張り用ポール14b’,14c’の基部を支持するもので、
図8に示すようにレールR上を走る車両よりも所定間隔、すなわち車両限界線L1および建築限界線L2よりも外側に位置するようにほぼL字形状を有している。なお、シート張り用ポール14b’,14c’は、
図8に示すように車両限界線L1よりも外側であれば建築限界線L2よりも内側つまりレールR側にあっても良いが、ウインチ14e’は、シート張り用ベース14d’,14d’と同様に車両限界線L1および建築限界線L2よりも外側に位置するように設けている。これにより、シート張り用ベース14d’,14d’の大型化することを防止できると共に、シート張り用ベース14d’,14d’やウインチ14e’等は車両からなるべく離れた建築限界線L2よりも外側に設けることが可能になる。
【0034】
シート張り用ベース14d’は、それぞれ、
図8に示すように所定幅の金属板を折り曲げて構成されており、レールRの底部に係合するレール係合部14d1’と、そのレール係合部14d1’から建築限界線L2より低い位置まで立ち上がる起立板部14d2’と、その起立板部14d2’の上端部から建築限界線L2に浸入しないように水平方向に延びる水平板部14d3’と、その平板部14d2’から建築限界線L2に浸入しないように垂直(鉛直)方向に立ち上がってシート張り用ポール14b’,14c’の基部を支持するポール支持部14d41’が設けられた垂直板部14d4’を有している。
【0035】
レール係合部14d1’は、
図8に示すようにその先端部がレールRの底部の一端側に係合する一端側レール押え片14d11’が設けられている一方、その一端側レール押え片14d11’に対しほぼレールRの底部の幅だけ離間して設けられ、締め付けノブ14d13’の回転によってレール係合部14d1’に対し螺合してレールRの他端側を押える他端側レール押え具14d12’とを有する。そのため、締め付けノブ14d13’を回転させて他端側レール押え具14d12’を上下動させてレールRの両側を挟持することにより、簡単にレールRに取り付けたり、レールRから取り外すことができる。
【0036】
また、起立板部14d2’の上端部、すなわち起立板部14d2’と水平板部14d3’との接続部と、レール係合部14d1’との間には、
図8に示すように他端側レール押え具14d12’の設置を妨害しないように第1傾斜補強片14d5’が斜めに設けられている。そのため、第1傾斜補強片14d5’が水平板部14d3’とレール係合部14d1’との間を補強すると共に、第1傾斜補強片14d5’の傾斜面によって他端側レール押え具14d12’をレール係合部14d1’における取付け場所まで案内することができる。
【0037】
また、起立板部14d2’と水平板部14d3’裏面との間には、第2補強片14d6’が設けられていると共に、水平板部14d3’と垂直板部14d4’と間には建築限界線L2を超えないように第3傾斜補強片14d7’が斜めに設けられている。そのため、起立板部14d2’と水平板部14d3’との間や水平板部14d3’と垂直板部14d4’と間を効果的に補強することができる。
【0038】
なお、垂直板部14d4’の上部には、シート張り用ポール14b’,14c’の基部が挿入されるポール支持部14d41’が設けられている。
【0039】
以上のように構成された実施形態2の保線作業用防音・吸音装置1’を設置する場合、まず、ほぼ防音シート11の幅ほど離間して一対のシート張り用ベース14d’,14d’をレールRに固定し、その一対のシート張り用ベース14d’,14d’のポール支持部14d41’,14d41’それぞれにシート張り用ポール14b’,14c’の基部を挿入して支持させる。
【0040】
ここで、防音シート11の上側ポール通し部11aに通した吊下げワイヤ14a’の先端部は、
図7に示すように一方のシート張り用ポール14b’の掛止部14b1’に引掛けてある一方、その後端部は他方のシート張り用ポール14c’のウインチ14e’に巻き付けられているため、
図9に示すように作業者がウインチ14e’によって吊下げワイヤ14a’を巻き上げることにより、保線作業用防音・吸音装置1’を設置したレールRにおける車両の走行を妨害しないように迅速に実施形態1と同様の防音シート11を張ることができる。
【0041】
従って、実施形態2の保線作業用防音・吸音装置1’によれば、実施形態1の保線作業用防音・吸音装置1と同様に、防音シート11の表面にネット12により複数のポケット12aを設けると共に、そのポケット12aの中に吸音スポンジ13を着脱自在にしたため、雨降り時等を考慮した保線作業に最適な保線作業用防音・吸音装置を提供できる。
【0042】
特に、実施形態2の保線作業用防音・吸音装置1’では、防音シート支持手段14’や防音シート11は少なくとも車両限界線L1から外側に設置されるため、実施形態1の保線作業用防音・吸音装置1とは異なり、マルチプルタイタンパーやレール削正機等の保線車両が走行するレールに設置して使用することができる。そのため、実施形態2の保線作業用防音・吸音装置1’は、実施形態1の保線作業用防音・吸音装置1とは異なり、複線だけでなく単線でも使用可能となり、この点で保線作業に最適な保線作業用防音・吸音装置を提供できる。
【0043】
また、実施形態2の保線作業用防音・吸音装置1’では、次に説明する実施形態3の保線作業用防音・吸音装置1”の防音シート支持手段14”とは異なり、一対のシート張り用ベース14d’,14d’をレールRに固定して保線作業用防音・吸音装置1’を設置するため、実施形態3の保線作業用防音・吸音装置1”の防音シート支持手段14”よりも倒れ難くなり、風などに強い保線作業用防音・吸音装置を提供できる。
【0044】
実施形態3.
次に、実施形態3の保線作業用防音・吸音装置1”について説明する。
【0045】
実施形態3の保線作業用防音・吸音装置1”は、実施形態1の保線作業用防音・吸音装置1や実施形態2の保線作業用防音・吸音装置1’とは防音シート支持手段14”だけが異なり、複数のポケット12aに吸音スポンジ13を着脱自在に挿入可能な防音シート11の構成は同じである。そのため、実施形態3の保線作業用防音・吸音装置1”の特徴部分である防音シート支持手段14”を中心に説明する。
【0046】
図10および
図11は、それぞれ実施形態3の保線作業用防音・吸音装置1”の正面図、右側面図である。また、
図12(a)〜(c)は、それぞれ実施形態3の保線作業用防音・吸音装置1”における閉じた状態の防音シート支持手段14”の平面図、正面図、右側面図である。
図13は実施形態3の保線作業用防音・吸音装置1”における拡げた状態の防音シート支持手段14”の平面図である。
【0047】
実施形態3の防音シート支持手段14”は、
図9〜
図13に示すように防音シート11の上側ポール通し部11aに通されて防音シート11を吊下げる吊下げポール14aと、吊下げポール14aの両側をそれぞれ支持する一対の支柱ポール14b,14bと、一対の支柱ポール14b,14bの基部それぞれに設けられ、レールRの長手方向に対し直交方向にスライドすることによりレールRの長手方向に対する垂直方向の長さを確保する一対のスライド式台座部14d”,14d”とを有する。なお、吊下げポール14aと支柱ポール14bは
図2等に示す実施形態1のものと同じである。
【0048】
一対のスライド式台座部14d”,14d”は、それぞれ、
図12および
図13に示すように、拡がる方向にスライドすることによって幅が広くなって設置面積が増大する主スライド式台座部14d1”と副スライド式台座部14d2”とから構成されている。
【0049】
つまり、主スライド式台座部14d1”は、一対の支柱ポール14b,14bの基部を支持するポール支持部14d1a”と、ポール支持部14d1a”が設けられた主前側板14d1b”と、主前側板14d1b”からスライド方向に所定間隔を空けて設けられた主後側板14d1c”と、主前側板14d1b”と主後側板14d1c”との間にスライド方向とは直交方向に所定間隔毎に設けられスライド方向に延びる5本の主櫛部14d1d”とから構成されている。
【0050】
副スライド式台座部14d2”は、主前側板14d2b”と、主前側板14d2b”からスライド方向に所定間隔を空けて設けられた主後側板14d2c”と、主前側板14d2b”と主後側板14d2c”との間で主スライド式台座部14d1”の5本の主櫛部14d1d”間でスライドする4本の副櫛部14d2d”とから構成されている。
【0051】
以上のように構成された実施形態3の保線作業用防音・吸音装置1”の格納時や運搬時には、
図12(a)〜(c)に示すように主スライド式台座部14d1”と副スライド式台座部14d2”とを縮めた状態にする。
【0052】
そして使用時には、
図13に示すように主スライド式台座部14d1”に対し副スライド式台座部14d2”をあるいはその逆にスライドさせて主スライド式台座部14d1”と副スライド式台座部14d2”の設置面積を2倍近く増大させて、実施形態3の保線作業用防音・吸音装置1”が風等により倒れ難くする。
【0053】
なお、使用時には、
図12に示すように主スライド式台座部14d1”と副スライド式台座部14d2”をスライドさせて主スライド式台座部14d1”と副スライド式台座部14d2”の設置面積を2倍近く増大させただけでは、風などにより倒れ易い場合には、
図11に示すように複数の重り15”を載せると良い。
【0054】
従って、実施形態3の保線作業用防音・吸音装置1”によれば、実施形態1の保線作業用防音・吸音装置1と同様に、防音シート11の表面にネット12により複数のポケット12aを設けると共に、そのポケット12aの中に吸音スポンジ13を着脱自在にしたため、雨降り時等を考慮した保線作業に最適な保線作業用防音・吸音装置を提供できる。
【0055】
特に、実施形態3の保線作業用防音・吸音装置1”では、主スライド式台座部14d1”と副スライド式台座部14d2”とからなる実施形態3の防音シート支持手段14”を設けたため、実施形態2の防音シート支持手段14’とは異なり、レールRに対し取付ける必要がない。そのため、レールRに沿って簡単に設置することが可能になり、設置作業が簡単な簡易な保線作業用防音・吸音装置を提供できる。また、レールRに対し取付ける必要がないため、実施形態2の保線作業用防音・吸音装置1’と同様に車両限界線L1等から外側に設置することが可能であり、複線だけでなく単線でも使用可能である。