(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6199093
(24)【登録日】2017年9月1日
(45)【発行日】2017年9月20日
(54)【発明の名称】軽量軌道自転車
(51)【国際特許分類】
B61D 15/12 20060101AFI20170911BHJP
B61D 15/00 20060101ALI20170911BHJP
【FI】
B61D15/12
B61D15/00 A
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-134953(P2013-134953)
(22)【出願日】2013年6月27日
(65)【公開番号】特開2015-9607(P2015-9607A)
(43)【公開日】2015年1月19日
【審査請求日】2016年3月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000221616
【氏名又は名称】東日本旅客鉄道株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】391030125
【氏名又は名称】保線機器整備株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074192
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100121496
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 重雄
(72)【発明者】
【氏名】玉山 光輝
(72)【発明者】
【氏名】菊池 泰弘
(72)【発明者】
【氏名】雪平 一二男
(72)【発明者】
【氏名】野田口 順弘
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 江里子
(72)【発明者】
【氏名】菊池 友実
(72)【発明者】
【氏名】高瀬 力男
(72)【発明者】
【氏名】細川 誠二
(72)【発明者】
【氏名】今井 国博
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 拓也
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 勝則
【審査官】
前原 義明
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−276676(JP,A)
【文献】
特開2012−062001(JP,A)
【文献】
特開2001−018793(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61D 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軌道レール上を転動する前後それぞれ一対の車輪で受支させた車体フレームに、少なくも座席と駆動エンジンユニットおよび照明用発電機を搭載し、前記車体フレームの先端部に、上杆部を作業員の安全を確保するための把手杆としたガードフレームを備えた風防体を、取り外し自在に立設した、軽量軌道自転車であって、
前記風防体は、
前記車体フレームに着脱可能に設けられる下部風防体と、
前記下部風防体の上部に回動可能に取り付けられ、回動することによって前記下部風防体の上に立設したり、前記下部風防体の後方に隠れるように折畳まれる上部風防体とを備えることを特徴とする軽量軌道自転車。
【請求項2】
請求項1記載の軽量軌道自転車において、
前記下部風防体は、当該下部風防体用の風防パネルと、当該下部風防体用の風防パネルの背面側に重ね合わせて組付けたガードフレームとを備え、
前記ガードフレームは、水平方向に配した上部杆と、該上部杆の左右両端をそれぞれ折り曲げて下方に延びる側部杆とを少なくとも有する枠体で成り、前記上部杆と前記風防パネルとの間には隙間を設けて前記上部杆を手先で握れる把手杆とする一方、前記上部杆に支持片を介し前記上部風防体が回動自在に枢着されていることを特徴とする軽量軌道自転車。
【請求項3】
請求項2記載の軽量軌道自転車において、
前記上部風防体は、当該上部風防体用の風防パネルと、当該上部風防体用の風防パネルが前記下部風防体に対し立設した状態では当該上部風防体用の風防パネルの下端部から後方に向かって突設する一対の腕片とを備え、それら一対の腕片の後端部が前記下部風防体の前記ガードフレームの前記上部杆に設けた前記支持片に回動自在に枢着されており、
前記上部風防体用の風防パネルが前記下部風防体に対し立設した状態では前記一対の腕片が前記支持片の前方に位置する一方、前記上部風防体用の風防パネルが前記下部風防体の後方に隠れるように折り畳まれた状態では前記一対の腕片が前記支持片の後方に位置することを特徴とする軽量軌道自転車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、架線の点検、線路の巡回等のために軌道レールに沿って移動する際に用いる軽量軌道自転車に関するものである。
【背景技術】
【0002】
軌道レール上を転動する前後それぞれ一対の車輪で受支させた車体フレーム上に、座席、駆動エンジンユニット、照明用の発電機等を搭載し、また、前記座席の前方には上杆部を作業員の安全を確保するための把手杆としたガードフレームを立設した構造のものがある(例えば、特許文献1)。
【0003】
前記従来例は、軌道レール上に於いて方向変換(転車)する際、或いは軌道レール外において一般道路を移動する(別途、トラックなどの運送車を用いる)際等に車体フレームに着脱自在に配した、重量の嵩む駆動エンジンユニットや発電機を車体フレームより取り外して車体フレーム側を軽量にして、前記方向変換操作や移動の際の取扱いに便利なようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−18793号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記従来例は、比較的重量の嵩む駆動エンジンユニット等を車体フレームと別体にすることにより車体フレーム自体は軽量になり、その分、取扱い上の便利さを得られるが、エンジンユニットの車体フレーム側からの取り外しは、該ユニット本体だけでは済まず、油圧回路構成材の除去作業等を必要とし、元の状態に戻すには煩雑な作業を要する。
【0006】
また、駆動エンジンユニットの取り外しは重量に対処し得ても(軽量化)、その搭載位置や大きさの関係から取り外しても嵩(体積)が小さくなることがないので、一般道路を搬送するには取り外し前の状態のものと同様の当該嵩に対応できる運搬車を必要とする。
【0007】
本発明は、運搬時に軽量化と嵩の低減を図れ、従来例の問題点を解決する一つの手段として提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、本発明の軌道自動自転車は、軌道レール上を転動する前後それぞれ一対の車輪で受支させた車体フレームに、少なくも座席と駆動エンジンユニットおよび照明用発電機を搭載し、前記車体フレームの先端部に、上杆部を作業員の安全を確保するための把手杆としたガードフレームを備えた風防体を、取り外し自在に立設した
、軽量軌道自転車であって、前記風防体は、前記車体フレームに着脱可能に設けられる下部風防体と、前記下部風防体の上部に回動可能に取り付けられ、回動することによって前記下部風防体の上に立設したり、前記下部風防体の後方に隠れるように折畳まれる上部風防体とを備えることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の軌道自動自転車では、前記下部風防体は、当該下部風防体用の風防パネルと、当該下部風防体用の風防パネルの背面側に重ね合わせて組付けたガードフレームとを備え、前記ガードフレームは、水平方向に配した上部杆と、該上部杆の左右両端をそれぞれ折り曲げて下方に延びる側部杆とを少なくとも有する枠体で成り、前記上部杆と前記風防パネルとの間には隙間を設けて前記上部杆を手先で握れる把手杆とする一方、前記上部杆に支持片を介し前記上部風防体が回動自在に枢着されていることも特徴とする。
【0010】
また、本発明の軌道自動自転車では、前記上部風防体は、当該上部風防体用の風防パネルと、当該上部風防体用の風防パネルが前記下部風防体に対し立設した状態では当該上部風防体用の風防パネルの下端部から後方に向かって突設する一対の腕片とを備え、それら一対の腕片の後端部が前記下部風防体の前記ガードフレームの前記上部杆に設けた前記支持片に回動自在に枢着されており、前記上部風防体用の風防パネルが前記下部風防体に対し立設した状態では前記一対の腕片が前記支持片の前方に位置する一方、前記上部風防体用の風防パネルが前記下部風防体の後方に隠れるように折り畳まれた状態では前記一対の腕片が前記支持片の後方に位置することも特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、前記の通り、把手杆部が座席より通常高所に位置するガードフレームを、車体フレームより取り外せるものであるから、車体フレーム前部において唯一立設物として存在する該ガードフレームを取り除いて嵩高を低くすることができ、従って、小形な運搬車に適用するに可能な(運搬経費を削減できる)軽量軌道自転車を提供できる。
また、本発明では、風防体は、下部風防体と、下部風防体の上部に回動可能に取り付けられ、回動することによって下部風防体の上に立設したり、下部風防体の後方に隠れるように折畳まれる上部風防体とを備えるため、上部風防体を所望に応じて使用・不使用を選択できると共に、上部風防体を使用時には起立させ、不使用時には折畳んで下部風防体に重ね合わせることによって運搬や保管時に際し、折畳んでコンパクト化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図4】車体フレームと風防体を分離して示した正面図。
【
図5】車体フレームと風防体を分離して示した側面図。
【
図13】車体フレームと風防体の関係を示す一部欠截拡大側面図。
【
図14】車体フレームと風防体の関係を示す一部拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図面は本発明に係る軽量軌道自転車の一実施形態を示し、図中、1は軽量軌道自転車Aの車体フレームで、車体フレーム1は、主体フレーム1aの内側に足場板(平板に透孔を並べて設けた)1bとフレーム杆1cを架設して構成した、平面視略方形状のフレーム体で成り(
図3、フレーム体で構成することにより重量の嵩む無駄な部分を省略して軽量化を図れる)、軌道レール上を転動する前後それぞれ一対の車輪(フランジ付き)2,2´で受支されて軌道に沿って移動する。この車体フレーム1には、該フレーム1の、足場板1bを残した後部分に、左右一対の座席3,3を、その脚部3aの下端を前記フレーム1に溶接するようにして配設すると共に、該座席3,3間には座席3の座盤3bより低位置にして軽量軌道自転車Aの駆動(後輪2´駆動用の)エンジンユニット4および照明灯(図示省略した、起伏自在にして前記車体フレーム1に設けた支柱に支持させた)用の発電機5を搭載してある(
図1乃至
図4)。
【0014】
また、車体フレーム1の先端(座席3,3の前方)には、風防体6を着脱自在に取付けて立設し、軽量軌道自転車Aの前進中に座席3に座る作業員の風除け用や安全用として適用するようにしてある。
【0015】
風防体6は、下部風防体8と該下部風防体8の上端に、前記座席3それぞれに対応させて設けた上部風防体7で構成してある(
図6、7)が、上下の風防体7,8を一体にしたものであっても良い。実施形態のように、上部風防体7を使用時には起立させ、不使用時には折畳んで下部風防体8に重ね合わせるようにしたのは(
図9乃至
図11)、上部風防体7を所望に応じて使用・不使用を選択できることと、運搬や保管時に際し、折畳んでコンパクト化を図れるためである。
【0016】
例えば、
図6、7で示すように、この風防体6の下部風防体8は、エンボス加工した風防パネル8´と該風防パネル8´の背面側に重ね合わせて組付けた(後記する側部杆8´´bの適所に該側部杆8´´bを抱持するようにしてU字ボルト15を組合わせ、背面側から前面側に貫通させて風防パネル8´より突出する前記U字ボルト15の先端にナット16を螺合して組付けてある)ガードフレーム8´´で成り、前記風防パネル8´は、横幅が前記車体フレーム1の横幅とほぼ同幅で、上端が前記ガードフレーム8´´の上端より低く位置させ、前記上部風防体7の風防パネル7´の間で隙間が形成されるようにして前記ガードフレーム8´´の上部杆8´´aで構成する把手杆を手先で保持できるようにしてある。なお、風防パネル8´をエンボス加工してあるのは、補強のためであり、エンボス加工の補強により風防パネル8´を成すアルミを薄くでき、軽量化を図ることができる。
【0017】
前記ガードフレーム8´´は、前記の通り、風防パネル8´の背面側に重ね合わせ一体的に取付けて前記風防体8を構成し、水平方向に配した上部杆8´´aと該上部杆8´´aの長手(横)方向の両端を折り曲げ状にして設けた側部杆8´´b,8´´bおよび側部杆8´´b,8´´b間の中央に該側部杆8´´bと平行させるようにして配した中間部杆8´´cを備えた枠体で成り、前記上部杆8´´aと風防パネル8´との間には指先を挿入できる隙間を設けて前記上部杆8´aを手先で握れる(着座中の作業員)把手杆として適用できるようにしてある。
【0018】
風防パネル8´とガードフレーム8´´で成る下部風防体8は、下部側を前記車体フレーム1に着脱(取外し)自在に取付け、上部側に前記上部風防体7を組付けて、座席に着座する作業員の風除けとなる。
【0019】
そして、下部風防体8は、ガードフレーム8´´の縦方向に延びる各杆(パイプで成る)8´´b,8´´cを下端部に外側から補強筒を嵌め込んで厚肉部9をそれぞれ設け、該厚肉部9に杆8´´b,8´´cの内外を連通する、横方向のねじ孔10を備え、このねじ孔10を利用して下部風防体8を車体フレーム1の先端に着脱自在に取付けてある。すなわち、前記車体フレーム1の前端部には、前記ガードフレーム8´´の側部杆8´´bと中間部杆8´´cに対応する位置にして支杆11,11´を立設し、該支杆11,11´に横設した係合穴12に、支杆11又は11´に上方から嵌挿した側部杆8´´b又は中間部杆8´´cに設けたねじ孔10を位置させ、ねじ孔10に基部の摘み13aにねじ杆13bを突設して成る固着具13のねじ杆13bを螺合して先端を前記係合穴12に係合することにより、風防体6(下部風防体8)は車体フレーム1に着脱(取外し)自在に取付けられる(
図13、14)。
【0020】
前記上部風防体7は、透明な合成樹脂板より成る風防パネル7´と該風防パネル7´の背面に相対して突設した一対の腕片7´´,7´´(互いに接続片で接続した枠体を構成する)で成り、腕片7´´,7´´の先端を、各腕片7´´に対応させて下部風防体8のガードフレーム8´´の前記上部杆8´´aに設けた支持片17に、ボルト18とナット19によって回動自在に枢着させ、上部風防体7は下部風防体8に一体的に組付けられ、風防体6を構成する。
【0021】
下部風防体8に、前記の通り、腕片7´´において回動自在に枢着、支持された上部風防体7の前記腕片7´´には、
図11、12で詳細に示すように、前記ボルト18を挿通する透孔20のパネル7´側にして位置決め孔21を設け、前記支持片17に設けたボルト用透孔22に、該ボルト用透孔22に対して等間隔にして設けた前後のねじ孔23,23´のいずれかに位置決め孔21を合わせ、位置決めビス24を螺合して上部風防体7(風防パネル7´´)の起伏時の状態を保つようにしてある。そして、ボルト18を中心にして、上部風防体8を回動させて前ねじ孔23と位置決め孔21を一致させてビス24を前ねじ孔23に螺合することにより上部風防体7は下部風防体8上に立設支持される。
【0022】
また、上部風防体7を回動させて後ねじ孔23´と位置決め孔21を一致させてビス24を後ねじ孔23´に螺合することにより上部風防体7は下部風防体8上から反転して該風防体8の後側に重なり合った状態が維持される(
図11の鎖線で示す)。
【0023】
なお、下部風防体8を構成する前記ガードフレーム8´´は、作業員の安全確保を意図して乗車領域を区画するものであるが、前記側部杆8´´bの中間部を傾斜状にして折り曲げて後方に延ばして前記上部杆8´´aに連続させ、上部杆8´´aの車幅方向の中央に前記中間部杆8´´cを前記側部杆8´´b(前記傾斜状部を含む)より短くして上部杆8´´aより重設して成るもので、側部杆8´´aの下端部は前記支杆11にねじ孔10を利用して固着具13のねじ杆13bを前記係合孔12に係合してその立ち上がり状態を維持するようにし、前記中間部杆8´´cの下端部は、前記脚部3aを支持部として隣接する座席3,3の脚部3a,3a間の横支持杆80aの長手方向の中央に片持ち梁状に腕杆80bを車体前方に向けて突設し、該腕杆80bの先端に前記主体フレーム1aに突設した柱杆80cの上端部を支持させ、この上端部に、前記中間部杆8´´cを外嵌して組付ける前記支杆11´を設けてある(主として
図13、14参照)。
【0024】
すなわち、上部風防体7を備えた下部風防体8(風防体6)は、ガードフレーム8´´の側部杆8´´bを、車体フレーム1(主体フレーム1a)の前端部両側に短く突設した前記支杆11,11に外側から係合して前記の通り固着具13で固着する一方、柱杆80cに突設した中央の支杆11´に中間部杆8´´cを同じく外嵌して係合して固着具13で該係合状態を維持させることにより車体フレーム1に着脱自在に取付けられる。ここで、支杆11,11´側を側部杆8´´b,8´´cの内側に係合するようにしてあるが、実施形態と逆に支杆11,11´側をパイプ状にし、側部杆8´´b,8´´c側を中実状にして支杆11,11´の内側に側杆部8´´b,8´´cを係合させるようにしても良い。この場合、係合穴12は側部杆8´´b,8´´c側に設けられることとなる。
【0025】
なお、中央部杆8´´cと支杆11´との係合関係は、該中間部杆8´´c等と側部杆8´´b(支杆11)部との間に三角形の頂点の位置関係にあるので、風防体6の車体フレーム1に取付け状態は簡単な構造に係らず安定し、着脱自在の風防体付軽量軌道自転車として有効である。
【0026】
そして、固着具13を操作することにより車体フレーム1に対して風防体6を別体にすることができ、車体フレーム1の運搬やレール上への載置作業時に嵩を減少させ(軽量化を図れ)、円滑に簡便に行うことができ、風防体6側を、上部側のもの7と下部風防体8を前後に重ね合わせてコンパクトにして嵩減らしを行うことができるものである。
【符号の説明】
【0027】
1 車体フレーム
2,2´ 車輪
4 駆動エンジンユニット
5 発電機
6 風防体
8´ 風防パネル
8´´ ガードフレーム
8´´a 上杆部
8´´b 側杆部
11,11´ 支杆
13 固着具