(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、特許文献1に記載の技術と、特許文献2に記載の技術とを組み合わせた場合、特許文献1に記載の名札装着具の名札保持部に、特許文献2に記載の警報笛部を取り付ける構成が考えられる。しかし、名札保持部は、名札などの表示物の大きさまたは形状に応じて種々のサイズまたは形状の保持部に取り替えられることから、警報笛部が取り付けられた保持部として多種類のサイズまたは形状の保持部を用意しておくことは、好ましくない。
【0006】
また、特許文献1に記載の名札装着具のクリップ部に、特許文献2に記載の警報笛部を取り付ける場合には、ユーザが警報時に警報笛部を容易に吹くことができるとともに、両挟持体により布地を挟持するときに警報笛部が邪魔にならない位置に、警報笛部を配置する必要がある。
【0007】
そこで、本発明は、ユーザが警報時にホイッスル部を容易に吹くことができるとともに、両挟持部分によりシート状物を挟持するときにホイッスル部が邪魔にならない位置に、ホイッスル部が配置された留め具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(第1の発明態様およびその具体的態様)
請求項1に記載の第1の発明態様は、挟持部分を有する第1挟持部と、第1挟持部の挟持部分と向き合う挟持部分を有し、第1挟持部に連結される弾性変形可能な第2挟持部と、第2挟持部の挟持部分を第1挟持部の挟持部分から離間させる離間回動位置と、第2挟持部の挟持部分を第1挟持部の挟持部分に接近させる接近回動位置との間で回動可能に第1挟持部または第2挟持部に連結され、離間回動位置から接近回動位置へ回動するときに第2挟持部を弾性変形させる回動部と、回動部が離間回動位置にあるときに第2挟持部から離間し、回動部が接近回動位置にあるときに第2挟持部に接近するように回動部に連結され、ユーザの手指で保持可能なホイッスル部と、を備え、ホイッスル部を保持して第2挟持部の弾性力に抗して回動部を接近回動位置に回動させたときに、第2挟持部の挟持部分が第1挟持部の挟持部分に接近してシート状物を両挟持部分の間で挟持する構成である。
【0009】
本発明態様では、第2挟持部は、第1挟持部と一体的に形成される構成でも、別体で形成されて第1挟持部に取り付けられる構成でもよい。また、第2挟持部は、少なくとも一部が弾性変形可能な構成であればよい。
【0010】
本発明態様では、回動部は、第1挟持部または第2挟持部に回動可能に連結される。回動部が第1挟持部に回動可能に連結される場合、回動部は、第2挟持部または第2挟持部に連結された部材に作用して第2挟持部を弾性変形させる。回動部が第2挟持部に回動可能に連結される場合、回動部は、第1挟持部または第1挟持部に連結された部材に作用して第2挟持部を弾性変形させる。
【0011】
本発明態様では、ホイッスル部は、第2挟持部に対して離間または接近を行うように回動部に連結される構成であれば、回動部に固定される構成でも、回動またはスライドなどの移動が可能なように回動部に連結される構成でもよい。
【0012】
本発明態様の留め具が名札などの表示物をシート状物に着脱可能に取り付けるために使用される場合には、名札などの表示物が取り付けられる部材が、第2挟持部に含まれる構成でも、回動部またはホイッスル部に連結される構成でもよい。また、本発明態様の留め具は、リボンまたは造花などの装飾品をシート状物に着脱可能に取り付けるためにも使用される。この場合には、装飾品が取り付けられる部材が、第2挟持部以外に、第1挟持部に含まれる構成でもよい。
【0013】
請求項2に記載の具体的態様では、ホイッスル部は、吹き込み口を有し、回動部の回動軸線と直交する長手方向に延び、吹き込み口は、ホイッスル部の長手方向において回動部と連結されるホイッスル部の連結部分と反対側の先端部に配置される。
【0014】
本具体的態様では、ホイッスル部は排気口も有するが、その排気口は、回動部が接近回動位置にあるときにホイッスル部が第2挟持部に向き合う外壁に配置される構成でも、その向き合う外壁と反対側の外壁に配置される構成でもよい。
【0015】
請求項3に記載の具体的態様では、吹き込み口は、第2挟持部の挟持部分よりも回動部の回動軸線から離れて配置される。
【0016】
本具体的態様では、吹き込み口が回動部の回動軸線から離れる距離は、発生されるべき警報音の周波数に基いたホイッスル部の長さに応じて定められる。
【0017】
請求項4に記載の具体的態様では、第2挟持部は、第1挟持部に連結され、第1挟持部と向き合って延びる支持部分と、名札などの表示物が取り付けられる取付部分とを有し、取付部分は、回動部の回動軸線および支持部分の延びる方向とそれぞれ直交する軸線の周りに回動可能に支持部分に連結される。
【0018】
本具体的態様では、第2挟持部の挟持部分は、支持部分および取付部分のうち、いずれの部分に配置されてもよい。
【0019】
請求項5に記載の具体的態様では、回動部が接近回動位置にあるときに第2挟持部の取付部分と向き合うホイッスル部の外壁であって、ホイッスル部の先端部の所定領域に、切欠部分が形成され、第2挟持部の取付部分が回動するときに、その取付部分の少なくとも一部が、ホイッスル部の切欠部分を通過する。
【0020】
本具体的態様では、ホイッスル部の先端部の所定領域は、切欠部分を通過する取付部分の一部の長さより長い領域であって、取付部分の全長よりも短い領域である。
【0021】
請求項6に記載の具体的態様では、第2挟持部の挟持部分は、支持部分と取付部分との連結箇所において取付部分に配置され、第1挟持部の挟持部分には、複数の係止突起が円形状に配列され、第2挟持部の挟持部分には、複数の係止突起が嵌入する円形状の係止溝が形成される。
【0022】
本具体的態様では、複数の係止突起は、挟持部分上の円形の全周領域にわたって配列される構成でも、挟持部分上の円形の部分的領域に配列される構成でもよい。また、円形状の係止溝は、複数の係止突起の配列状態に応じた形状であればよく、完全な円形形状でなく、円弧形状でもよい。
【0023】
請求項7に記載の具体的態様では、第2挟持部は、挟持部分が配置された面と反対側の面に当接部分を有し、回動部が接近回動位置にあるときに、第2挟持部と向き合うホイッスル部の長手方向に延びる外壁が当接部分に当接する。
【0024】
本具体的態様では、当接部分は、挟持部分が配置された面と反対側の面上の一部分として構成されても、挟持部分が配置された面と反対側の面から突出した部分として構成されてもよい。
【0025】
請求項8に記載の具体的態様では、紐などの長尺物が保持される保持部を備え、第1挟持部の挟持部分は、第1挟持部の長手方向における一端部に配置され、保持部は、第1挟持部の長手方向における他端部に連結される。
【0026】
本具体的態様では、保持部は、第1挟持部の長手方向における他端部に固定される構成でも、その他端部に対して着脱可能に連結される構成でもよい。
【0027】
請求項9に記載の具体的態様では、回動部は、その回動軸線と直交する方向に延び、
ホイッスル部は、回動部の回動軸線および回動部の延びる方向とそれぞれ直交する軸線の周りに回動可能に回動部に連結される。
【0028】
(第2の発明態様およびその具体的態様)
請求項10に記載の第2の発明態様は、挟持部分を有する第1挟持部と、第1挟持部の挟持部分に対向する挟持部分を有し、第1挟持部に連結される弾性変形可能な第2挟持部と、第2挟持部の挟持部分を第1挟持部の挟持部分から離間させる離間回動位置と、第2挟持部の挟持部分を第1挟持部の挟持部分に接近させる接近回動位置との間で回動可能に第1挟持部または第2挟持部に連結され、離間回動位置から接近回動位置へ回動するときに第2挟持部を弾性変形させる回動部と、回動部に連結され、ユーザの手指で操作可能な操作部と、第1挟持部に設けられたホイッスル部と、を備え、
第1挟持部は、回動部の回動軸線と直交する方向に延び、ホイッスル部は、回動部の回動軸線および第1挟持部の延びる方向とそれぞれ直交する軸線の周りに回動可能に第1挟持部に連結され、操作部を操作して第2挟持部の弾性力に抗して回動部を接近回動位置に回動させたときに、第2挟持部の挟持部分が第1挟持部の挟持部分に接近してシート状物を両挟持部分の間で挟持する構成である。
【0029】
本発明態様でも、第1の発明態様と同様に、第2挟持部および回動部を種々の形態で具現してもよい。
【0030】
本発明態様では、ホイッスル部は、第1挟持部に固定される構成でも、回動またはスライドなどの移動が可能なように第1挟持部に連結される構成でもよい。
【0031】
請求項11に記載の具体的態様では、ホイッスル部は、吹き込み口を有し、吹き込み口は、ホイッスル部が延びる長手方向において回動部の回動軸線に対して第1挟持部の挟持部分が配置される側とは反対側に配置されるとともに、第1挟持部と第2挟持部との連結部分よりも第1挟持部の挟持部分から離れて配置される
ように、ホイッスル部は回動可能に第1挟持部に連結される。
【0032】
本具体的態様では、ホイッスル部の長手方向において吹き込み口と反対側のホイッスル部の端部は、挟持部分が配置される第1挟持部の端部と、同じ位置に配置される構成でも、異なる位置に配置される構成でもよい。また、第1挟持部と第2挟持部との連結部分と、吹き込み口との間の距離は、ホイッスル部を吹くときにユーザがホイッスル部を口で咥えることができる長さである。
【0033】
請求項12に記載の具体的態様では、ホイッスル部は、回動部の回動軸線と直交する方向であって、第1挟持部が延びる長手方向に延び、互いに向き合う一対の壁を有し、ホイッスル部の一対の壁のうち一方の壁が第1挟持部に連結され、ホイッスル部の一対の壁のうち他方の壁に、ホイッスル部は排気口を有す。
【0034】
(第3の発明態様)
請求項13に記載の
第3の発明態様は、挟持部分を有する第1挟持部と、第1挟持部の挟持部分に対向する挟持部分を有し、第1挟持部に連結される弾性変形可能な第2挟持部と、第2挟持部の挟持部分を第1挟持部の挟持部分から離間させる離間回動位置と、第2挟持部の挟持部分を第1挟持部の挟持部分に接近させる接近回動位置との間で回動可能に第1挟持部または第2挟持部に連結され、離間回動位置から接近回動位置へ回動するときに第2挟持部を弾性変形させる回動部と、回動部に連結され、ユーザの手指で操作可能な操作部と、第1挟持部に設けられたホイッスル部と、を備え、第2挟持部は、挟持部分が配置された面と反対側の面に当接部分を有し、回動部が接近回動位置にあるときに、第2挟持部と向き合う操作部の長手方向に延びる部分が当接部分に当接し、ホイッスル部は、吹き込み口を有し、吹き込み口は、ホイッスル部が延びる長手方向において回動部の回動軸線に対して第1挟持部の挟持部分が配置される側とは反対側に配置されるとともに、第1挟持部と第2挟持部との連結部分よりも第1挟持部の挟持部分から離れて配置され、操作部を操作して第2挟持部の弾性力に抗して回動部を接近回動位置に回動させたときに、第2挟持部の挟持部分が第1挟持部の挟持部分に接近してシート状物を両挟持部分の間で挟持する構成である。
【発明の効果】
【0035】
(第1の発明態様およびその具体的態様の効果)
請求項1に記載の発明態様では、回動部は、第2挟持部の挟持部分を第1挟持部の挟持部分から離間させる離間回動位置と、第2挟持部の挟持部分を第1挟持部の挟持部分に接近させる接近回動位置との間で回動可能に第1挟持部または第2挟持部に連結される。ホイッスル部は、回動部が離間回動位置にあるときに第2挟持部から離間し、回動部が接近回動位置にあるときに第2挟持部に接近する。この結果、ホイッスル部を保持して第2挟持部の弾性力に抗して回動部を接近回動位置に回動させたときに、第2挟持部の挟持部分が第1挟持部の挟持部分に接近してシート状物を両挟持部分の間で挟持し、留め具をシート状物に装着することができる。この装着状態で、ホイッスル部は第2挟持部に接近した状態に位置することから、ユーザにとってホイッスル部が邪魔になることはない。また、ホイッスル部を保持して回動部を離間回動位置に回動させたときに、第2挟持部の挟持部分が第1挟持部の挟持部分から離間し、留め具をシート状物から離脱させることができる。この離脱状態で、ユーザは、回動部を離間回動位置に維持したまま、第2挟持部から離間したホイッスル部を容易に吹くことができる。
【0036】
請求項2に記載の具体的態様では、吹き込み口は、ホイッスル部の長手方向において回動部と連結されるホイッスル部の連結部分と反対側の先端部に配置される。この結果、留め具をシート状物から離脱させた状態で、ユーザは、第2挟持部に邪魔されることなく、第2挟持部から離間したホイッスル部の先端部に配置された吹き込み口から、ホイッスル部を一層容易に吹くことができる。
【0037】
請求項3に記載の具体的態様では、吹き込み口は、第2挟持部の挟持部分よりも回動部の回動軸線から離れて配置される。この結果、留め具をシート状物から離脱させた状態で、ユーザは、第2挟持部の挟持部分に邪魔されることなく、第2挟持部の挟持部分から大きく離れた吹き込み口から、ホイッスル部を一層容易に吹くことができる。また、ユーザは、吹き込み口の近傍のホイッスル部の先端部分を手指により保持して、比較的に小さい操作力により回動部を回動させることができる。
【0038】
請求項4に記載の具体的態様では、取付部分は、回動部の回動軸線および支持部分の延びる方向とそれぞれ直交する軸線の周りに回動可能に支持部分に連結される。この結果、留め具をシート状物に装着したときに、ユーザは、支持部分に対して取付部分が回動することにより、表示物を鉛直方向に吊り下げることができる。また、留め具をシート状物から離脱させたときに、ユーザは、取付部分を回動させることにより、取付部分に邪魔されることなく、ホイッスル部を一層容易に吹くことができる。
【0039】
請求項5に記載の具体的態様では、第2挟持部の取付部分が回動するときに、その取付部分の少なくとも一部が、ホイッスル部の切欠部分を通過する。この結果、留め具をシート状物に装着した状態で、ホイッスル部を第2挟持部に接近させたまま、取付部分を自由に回動させることができる。
【0040】
請求項6に記載の具体的態様では、留め具をシート状物に装着した状態で、取付部分に配置された第2挟持部の挟持部分が取付部分とともに回動するときに、第1挟持部の挟持部分に配列された複数の係止突起は移動せずに、第2挟持部の挟持部分に形成された係止溝がシート状物に接触して回動することから、シート状物を傷つけることがない。
【0041】
請求項7に記載の具体的態様では、回動部が接近回動位置にあるときに、第2挟持部と向き合うホイッスル部の長手方向に延びる外壁が第2挟持部の当接部分に当接する。この結果、留め具をシート状物に装着したときに、ホイッスル部の外壁が当接部分に当接する所定の位置にホイッスル部を確実に接近させることができる。
【0042】
請求項8に記載の具体的態様では、第1挟持部の挟持部分は、第1挟持部の長手方向における一端部に配置され、紐などの長尺物が保持される保持部は、第1挟持部の長手方向における他端部に連結される。この結果、回動部に連結されたホイッスル部が、回動部を離間回動位置に回動させたときに、保持部と干渉することはなく、ホイッスル部を第2挟持部から十分に離間させることができ、ユーザは第2挟持部およびその他の部材に邪魔されることなく、ホイッスル部を容易に吹くことができる。
【0043】
請求項9に記載の具体的態様では、ホイッスル部は、回動部の回動軸線および回動部の延びる方向とそれぞれ直交する軸線の周りに回動可能に回動部に連結される。この結果、留め具をシート状物から離脱させた状態で、ユーザは、ホイッスル部を回動部に対して回動させて、回動部およびその他の部材に邪魔されることがない回動位置で容易に吹くことができる。
【0044】
(第2の発明態様およびその具体的態様の効果)
請求項10に記載の第2の発明態様では、回動部は、第2挟持部の挟持部分を第1挟持部の挟持部分から離間させる離間回動位置と、第2挟持部の挟持部分を第1挟持部の挟持部分に接近させる接近回動位置との間で回動可能に第1挟持部または第2挟持部に連結される。操作部の操作により、回動部は回動する。ホイッスル部は、第1挟持部に設けられる。この結果、操作部を操作して第2挟持部の弾性力に抗して回動部を接近回動位置に回動させたときに、第2挟持部の挟持部分が第1挟持部の挟持部分に接近してシート状物を両挟持部分の間で挟持し、留め具をシート状物に装着することができる。この装着状態で、ホイッスル部は、第1挟持部とともに第2挟持部に接近した状態に位置することから、ユーザにとってホイッスル部が邪魔になることはない。また、操作部を操作して回動部を離間回動位置に回動させたときに、第2挟持部の挟持部分が第1挟持部の挟持部分から離間し、留め具をシート状物から離脱させることができる。この離脱状態で、ユーザは、回動部が離間回動位置および接近回動位置のいずれの回動位置にあっても、第1挟持部に設けられたホイッスル部を容易に吹くことができる。さらに、第1挟持部は、第2挟持部のように弾性変形する必要はなく、強固さが要求されるホイッスル部を設けるのに適した部位であり、しかも、操作部のように回動部とともに回動操作されることもないことから、他の部材との干渉の制約を受けることが少なく、第1挟持部上においてホイッスル部の配置位置を自由に設定することができる。
また、ホイッスル部は、回動部の回動軸線および第1挟持部の延びる方向とそれぞれ直交する軸線の周りに回動可能に第1挟持部に連結される。この結果、留め具をシート状物から離脱させた状態で、ユーザは、ホイッスル部を第1挟持部に対して回動させて、第1挟持部およびその他の部材に邪魔されることがない回動位置で容易に吹くことができる。
【0045】
請求項11に記載の具体的態様では、吹き込み口は、ホイッスル部が延びる長手方向において回動部の回動軸線に対して第1挟持部の挟持部分が配置される側とは反対側に配置されるとともに、第1挟持部と第2挟持部との連結部分よりも第1挟持部の挟持部分から離れて配置される
ように、ホイッスル部は回動可能に第1挟持部に連結される。この結果、留め具をシート状物から離脱させた状態で、ユーザは、両挟持部の挟持部分および両挟持部の連結部分に邪魔されることはなく、ホイッスル部を容易に吹くことができる。
【0046】
請求項12に記載の具体的態様では、ホイッスル部の一対の壁のうち一方の壁が第1挟持部に連結され、ホイッスル部の一対の壁のうち他方の壁に、ホイッスル部は排気口を有す。この結果、ホイッスル部を吹くときに、排気口からの空気の流れが、第2挟持部により妨げられることはなく、ユーザはホイッスル部を容易に吹くことができる。
【0047】
(第3の発明態様の効果)
請求項13に記載の
第3の発明態様では、
回動部は、第2挟持部の挟持部分を第1挟持部の挟持部分から離間させる離間回動位置と、第2挟持部の挟持部分を第1挟持部の挟持部分に接近させる接近回動位置との間で回動可能に第1挟持部または第2挟持部に連結される。操作部の操作により、回動部は回動する。ホイッスル部は、第1挟持部に設けられる。この結果、操作部を操作して第2挟持部の弾性力に抗して回動部を接近回動位置に回動させたときに、第2挟持部の挟持部分が第1挟持部の挟持部分に接近してシート状物を両挟持部分の間で挟持し、留め具をシート状物に装着することができる。この装着状態で、ホイッスル部は、第1挟持部とともに第2挟持部に接近した状態に位置することから、ユーザにとってホイッスル部が邪魔になることはない。また、操作部を操作して回動部を離間回動位置に回動させたときに、第2挟持部の挟持部分が第1挟持部の挟持部分から離間し、留め具をシート状物から離脱させることができる。この離脱状態で、ユーザは、回動部が離間回動位置および接近回動位置のいずれの回動位置にあっても、第1挟持部に設けられたホイッスル部を容易に吹くことができる。さらに、第1挟持部は、第2挟持部のように弾性変形する必要はなく、強固さが要求されるホイッスル部を設けるのに適した部位であり、しかも、操作部のように回動部とともに回動操作されることもないことから、他の部材との干渉の制約を受けることが少なく、第1挟持部上においてホイッスル部の配置位置を自由に設定することができる。吹き込み口は、ホイッスル部が延びる長手方向において回動部の回動軸線に対して第1挟持部の挟持部分が配置される側とは反対側に配置されるとともに、第1挟持部と第2挟持部との連結部分よりも第1挟持部の挟持部分から離れて配置される。この結果、留め具をシート状物から離脱させた状態で、ユーザは、両挟持部の挟持部分および両挟持部の連結部分に邪魔されることはなく、ホイッスル部を容易に吹くことができる。第2挟持部は、挟持部分が配置された面と反対側の面に当接部分を有し、回動部が接近回動位置にあるときに、第2挟持部と向き合う操作部の長手方向に延びる部分が当接部分に当接する。この結果、操作部は、第2挟持部と向き合う状態で配置され、吹き込み口から離れていることから、ユーザは、操作部に邪魔されることなく、ホイッスル部を容易に吹くことができる。
【発明を実施するための形態】
【0049】
<第1実施形態>
以下に、本発明の第1実施形態に係る名札装着用の留め具について、図面を参照して説明する。
図1は、ユーザが名札装着用の留め具1を上着TSの胸ポケットPTに装着した状態を示す。
図1において、名札NTが留め具1に取り付けられる。なお、
図1に矢印で示す2つの方向を、上下方向、および左右方向とし、両方向に直交する方向を、前後方向として、
図1以降の他の図面でも同様に、各方向を示す。
【0050】
[留め具1の構成]
留め具1の詳細な構成について、図面を参照して説明する。
図2は、名札NTを取り外した状態において、留め具1の全体を前方から見た斜視図であり、
図3は、留め具1の左側断面図である。
図2および
図3において、留め具1は、第1挟持部材10と、第2挟持部材11と、回動操作部材12とを主に備える。第1挟持部材10は、挟持部分13を備える。第2挟持部材11は、支持部材14と、取付部材15とを備え、支持部材14の上方部分が第1挟持部材10に取り付けられる。取付部材15は、挟持部分13と向き合う挟持部分16を備える。回動操作部材12は、回動部分17と、ホイッスル部分18とを備え、回動部分17が第1挟持部材10に回動可能に取り付けられる。
【0051】
(第1挟持部材10の詳細な構成)
第1挟持部材10の構成について、図面を参照して説明する。
図4は、第1挟持部材10を前方から見た斜視図である。第1挟持部材10は、弾力性がある合成樹脂材料から成形される。本実施形態では、第1挟持部材10の合成樹脂材料として、ポリアセタール樹脂が使用される。
図4において、第1挟持部材10は、上下方向に延びる板状の挟持基体部分20と、保持部分21と、一対の軸受け部分22、23とを備える。挟持部分13は、挟持基体部分20の下方部分であって、挟持基体部分20の前面に配置される。
【0052】
保持部分21は、挟持基体部分20から前方に延びる延出部分21Aと、その延出部分21Aの先端に形成された屈曲部分21Bと、一対の保持突起21C、21Dとを備える。一対の保持突起21C、21Dは、延出部分21Aの下面であって、延出部分21Aと挟持基体部分20との連結部分に近接した位置に、左右方向に所定間隔をおいて配置される。また、保持部分21は、後方に開放する開口部分21Eと、一対の円弧状の受け面とを備える。一対の円弧状の受け面は、開口部分21Eの左右両側に配置され、
図4において左側の受け面21Fのみが示される。
【0053】
一対の軸受け部分22、23は、前後方向に長い長孔22A、23Aを備える。また、軸受け部分22、23は、
図4に示すように、互いに向き合う内側面であって、長孔22A、23Aより前方に一対の傾斜面22B、23Bを有する。傾斜面22B、23Bは、前方に向かって互いに離れる方向に傾斜して形成される。挟持部分13は、円形状に配列された複数の係止突起24を備える。円形状の凹所25が、挟持部分13の中心部分に形成される。本実施形態では、8個の係止突起24が、凹所25の周囲に等間隔に配列される。
【0054】
(第2挟持部材11の詳細な構成)
第2挟持部材11の構成について、図面を参照して説明する。
図5は、第2挟持部材11の支持部材14の右側面図であり、
図6は、第2挟持部材11の取付部材15の右側面図であり、
図7は、第2挟持部材11の取付部材15を後方から見た背面図である。支持部材14は、弾力性がある合成樹脂材料から成形される。本実施形態では、支持部材14の合成樹脂材料として、ポリアセタール樹脂が使用される。
図5において、支持部材14は、支持基体部分30と、保持ヘッド部分31と、一対の連結片32、33とを備える。
【0055】
支持基体部分30は、上下方向に延び、上方湾曲部分30Aと、下方平坦部分30Bとを備える。当接突出部分34が、支持部材14の前面であって、上方湾曲部分30Aと下方平坦部分30Bとの連結部分に形成される。
【0056】
保持ヘッド部分31は、上方湾曲部分30Aの上方部分に連結され、前後方向に延びる。保持ヘッド部分31は、前方突出部分31Aと、後方突出部分31Bとを備える。前方突出部分31Aは、
図3に示すように、第1挟持部材10の保持部分21の屈曲部分21Bに嵌合して係止される。後方突出部分31Bは、円弧状の湾曲面を有し、第1挟持部材10の保持部分21の一対の円弧状の受け面と係合する。切欠部分31Cが、保持ヘッド部分31の上面に形成される。前方突出部分31Aが屈曲部分21Bに係止されるとともに、後方突出部分31Bが一対の円弧状の受け面と係合することにより、第2挟持部材11が第1挟持部材10に取り付けられる。第2挟持部材11が第1挟持部材10に取り付けられた状態において、前方から押圧力が上方湾曲部分30Aに加わったときに、保持ヘッド部分31と上方湾曲部分30Aとの連結部分を中心に、上方湾曲部分30Aが後方に回動することができるように、第2挟持部材11は弾性変形可能に構成される。上方湾曲部分30Aが後方に回動したときに、後方突出部分31Bは、一対の円弧状の受け面上を摺動する。切欠部分31Cは、この後方突出部分31Bの摺動を許容するために設けられる。
【0057】
一対の連結片32、33が、下方平坦部分30Bの下方部分であって、下方平坦部分30Bの後面から突出して形成される。一対の連結片32、33は、円弧状の軸部分32A、33Aと、それらの軸部分の先端に形成された係止部分32B、33Bとをそれぞれ備える。
【0058】
取付部材15は、合成樹脂材料から成形される。本実施形態では、取付部材15の合成樹脂材料として、ポリアセタール樹脂が使用される。
図6において、取付部材15は、取付回動部分35と、取付ループ部分36とを備える。挟持部分16が、取付回動部分35の後面に形成される。取付回動部分35は、
図7に示すように、略円形状を有する。円形連結孔35Aが、取付回動部分35の中心に形成される。挟持部分16は、円形内壁35Bと、円形外壁35Cとを備える。円形内壁35Bが、円形連結孔35Aの周囲に形成される。円形外壁35Cが、円形内壁35Bから所定間隔をおいて円形内壁35Bの周囲に形成される。円形の係止溝35Dが、円形内壁35Bと円形外壁35Cとにより構成される。円形連結孔35Aは、一対の連結片32、33の軸部分32A、33Aと嵌合する。円形連結孔35Aが軸部分32A、33Aと嵌合した状態において、一対の連結片32、33の係止部分32B、33Bが、円形内壁35Bの内部に画定された空間に収容され、取付回動部分35を下方平坦部分30Bに回動可能に係止する。第1挟持部材10の係止突起24が、係止溝35Dに嵌合する。
【0059】
取付ループ部分36が、取付回動部分35の下方部分に連結される。取付ループ部分36は、フック状に屈曲したフック部分36Aと、舌状部分36Bとを備える。舌状部分36Bの先端部36B1は、フック部分36Aの先端部36A1より僅かに下方まで取付回動部分35から垂下する。前方から押圧力が舌状部分36Bに加わったときに、舌状部分36Bは、取付回動部分35との連結部分を中心として後方に回動することができるように弾性変形可能に構成される。
図1に示す名札NTの取付用長孔AHが、フック部分36Aの先端部36A1に挿通されるときに、舌状部分36Bが弾性変形して後方に回動する。
【0060】
(回動操作部材12の詳細な構成)
回動操作部材12の構成について図面を参照して説明する。
図8は、中子部材40を取り外した状態にある回動操作部材12を前方から見た斜視図であり、
図9は、回動操作部材12を上方から見た平面図である。回動操作部材12は、合成樹脂材料から成形される。回動操作部材12の合成樹脂材料として、第1挟持部材10の合成樹脂材料、および、第2挟持部材11の支持部材14並びに取付部材15の合成樹脂材料とは、硬さおよび摩擦係数の異なる合成樹脂材料が使用されることが好ましい。本実施形態では、回動操作部材12の合成樹脂材料として、ABS樹脂が使用される。中子部材40も、合成樹脂材料から成形される。実施形態では、中子部材40の合成樹脂材料として、ABS樹脂が使用されるが、これ以外に、ポリカーボネート樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂などの合成樹脂材料も使用することができる。
【0061】
回動操作部材12の回動部分17は、ホイッスル部分18と一体に成形される。回動部分17は、左右方向に延びる一対の回動軸部分41、42と、押圧突出部分43と、一対の案内壁部分44、45とを備える。一対の回動軸部分41、42は、先端部に傾斜面41A、42Aを有する。傾斜面41A、42Aは、上方に向かって互いに接近する方向に傾斜して形成される。傾斜面41A、42Aが傾斜面22B、23Bと係合して一対の軸受け部分22、23を弾性変形させて外方に押し広げることにより、一対の回動軸部分41、42は、一対の軸受け部分22、23の長孔22A、23Aにそれぞれ嵌合する。押圧突出部分43は、第2挟持部材11の上方湾曲部分30Aの前面に接触する。一対の案内壁部分44、45は、第1挟持部材10の屈曲部分21Bの左右両側面とそれぞれ接触して、回動部分17が左右方向にずれないように回動部分17を案内する。
【0062】
ホイッスル部分18は、上下方向に延びる直方体形状を有し、前壁46と、後壁47と、右壁48と、左壁49とを備える。ホイッスル部分18の上方部分が、回動部分17に連結される。吹き込み口50が、ホイッスル部分の下方部分に開口して形成される。収容室51が吹き込み口50からホイッスル部分18の内部に形成され、共鳴室52が収容室51に連通してホイッスル部分18の内部に形成される。排気口53が、前壁46に形成される。
【0063】
中子部材40は、傾斜面40Aと、一対の保持突出部分40B、40Cと、係止突出部分40Dとを備える。
図8において、傾斜面40Aは、中子部材40の前面に形成され、一対の保持突出部分40B、40Cは、左右両側部において、傾斜面40Aから前方に突出する。一対の保持突出部分40B、40Cの側面は、収容室51の左右内壁にそれぞれ係合し、保持突出部分40B、40Cの前面は、収容室51の前内壁に係合する。係止突出部分40Dは、中子部材40の後面から後方に突出する。係止突出部分40Dは、ホイッスル部分18の後壁47から収容室51に貫通する係止孔54に嵌合する。係止突出部分40Dが係止孔54に嵌合するときに、ホイッスル部分18の吹き込み口50近傍の後壁は係止突出部分40Dからの押圧力により弾性変形する。中子部材40が収容室51に嵌入された状態において、傾斜面40Aは、収容室51の内部断面積が徐々に小さくなる内部空間を形成して排気口53に向かって延びる。
【0064】
切欠部分55が、ホイッスル部分18の後壁47において、吹き込み口50から上方に形成される。
図10は、ホイッスル部分18の後壁47が第2挟持部材11の支持部材14の当接突出部分34に当接した状態、すなわち第1挟持部材10の挟持部分13と第2挟持部材11の挟持部分16とが接近した状態における留め具1の左側断面図である。挟持部分13、16が接近した状態において、取付部材15のフック部分36Aの先端部36A1が、
図10に示すように、切欠部分55により画定される空間内に位置する。このため、切欠部分55は、フック部分36Aの先端部36A1を収容することができるように上下方向の長さおよび前後方向の深さを有する。
【0065】
[第1実施形態の動作および作用]
留め具1を組み立てる場合、留め具1を胸ポケットPTに対して装着および離脱する場合、および留め具1のホイッスル部分18を使用する場合における動作および作用について図面を参照して説明する。
【0066】
(留め具1を組み立てる場合)
留め具1を組み立てる場合について説明する。組み立て動作は、作業者による手作業でも、機械による自動化された工程でも実行可能である。先ず、
図5に示す第2挟持部材11の支持部材14に、
図6に示す第2挟持部材11の取付部材15を組み付ける。具体的には、取付部材15の円形連結孔35Aに、支持部材14の一対の連結片32、33を挿入する。この挿入に際して、連結片32、33の軸部分32A、33Aが互いに接近するように弾性変形することにより、連結片32、33の係止部分32B、33Bが円形連結孔35Aに挿通される。この結果、取付部材15が、軸部分32A、33Aの周りに回動可能に支持部材14に組み付けられる。
【0067】
次に、取付部材15が組み付けられた支持部材14を、
図4に示す第1挟持部材10に組み付ける。具体的には、支持部材14の前方突出部分31Aを、第1挟持部材10の屈曲部分21Bに嵌合させる。そして、支持部材14の後方突出部分31Bを、第1挟持部材10の一対の円弧状の受け面(
図4に左側の受け面21Fを示す)に嵌合させる。この後方突出部分31Bの嵌合に際して、後方突出部分31Bが円弧状の受け面の近傍に位置する挟持基体部分20の一部分を押圧して保持部分21に対して挟持基体部分20が後方に回動するように挟持基体部分20を弾性変形させることにより、後方突出部分31Bが円弧状の受け面にそれぞれ嵌合する。これにより、第2挟持部材11を第1挟持部材10に組み付けることができる。
【0068】
最後に、第2挟持部材11が組み付けられた第1挟持部材10に、
図8に示す回動操作部材12を組み付ける。具体的には、回動操作部材12を
図3に示す状態に保持した状態で、回動操作部材12の一対の回動軸部分41、42の傾斜面41A、42Aを、第1挟持部材10の軸受け部分22、23の傾斜面22B、23Bに押し付ける。この押し付けに伴って、軸受け部分22、23が互いに離間するように弾性変形することにより、回動軸部分41、42を第1挟持部材10の長孔22A、23Aに嵌合させる。これにより、回動操作部材12を第1挟持部材10に組み付けることができる。回動操作部材12を組み付けた状態において、回動操作部材12の押圧突出部分43は、
図3に示すように、支持部材14の上方湾曲部分30Aの前面に接触する状態に配置される。この配置により、支持部材14の前方突出部分31Aおよび後方突出部分31Bが、屈曲部分21Bおよび円弧状の受け面から離脱することを防止することができる。回動軸部分41、42が長孔22A、23Aに嵌合した状態において、上方湾曲部分30Aの前面から押圧突出部分43に作用する弾性力により、回動軸部分41、42は、
図3および
図10に示すように、長孔22A、23Aの左側の内面に押し付けられる。
【0069】
(留め具1を胸ポケットPTに対して装着または離脱する場合)
留め具1を上着TSの胸ポケットPTに対して装着または離脱する場合について図面を参照して説明する。
図3に示すように、挟持部分13、16が互いに離間した状態において、回動操作部材12の押圧突出部分43は支持部材14の上方湾曲部分30Aの前面に接触する。この接触状態において、上方湾曲部分30Aは、ほとんど弾性変形していない状態にある。回動軸部分41、42に向かう方向とは異なる方向に上方湾曲部分30Aから小さな弾性力が押圧突出部分43に作用し、その弾性力が回動操作部材12を時計回り方向に回動させるように作用する。回動操作部材12の回動部分17の一部分が屈曲部分21Bに当接することにより、または、回動操作部材12の自重と弾性力との均衡により、回動操作部材12は、第2挟持部材11から時計回り方向に約90度回動した角度位置に保持され、また第1挟持部材10から時計回り方向に90度以上回動した角度位置に保持される。
【0070】
先ず、挟持部分13が胸ポケットPTの内側に位置するとともに、挟持部分16が胸ポケットPTの外側に位置するように、ユーザは、
図3に示す状態の留め具1を胸ポケットPTに配置する。次に、ユーザは、回動操作部材12のホイッスル部分18を手指により保持して回動操作部材12を反時計回り方向に回動操作する。この回動操作により、押圧突出部分43は上方湾曲部分30Aの前面を押圧し、上方湾曲部分30Aの弾性力に抗して支持部材14が後方に回動する。支持部材14の回動に従って、挟持部分16が挟持部分13に接近する。押圧突出部分43が、
図10に示すように、上方湾曲部分30Aの前面に対して垂直に位置するまで、回動操作部材12が回動すると、ホイッスル部分18の後壁47は、胸ポケットPTの布地を介して屈曲部分21Bの当接突出部分34に当接する。このホイッスル部分18の後壁47の当接状態において、上方湾曲部分30Aの弾性変形に応じた大きな弾性力が回動軸部分41、42に向かう方向に押圧突出部分43に作用する。本実施形態では、回動操作部材12が回動するときに、上方湾曲部分30Aが弾性変形するとともに、支持部材14の前方突出部分31Aおよび後方突出部分31Bと嵌合する第1挟持部材10の保持部分21も弾性変形する。回動軸部分41、42に向かう方向の弾性力により、ホイッスル部分18の後壁47の当接状態が保持される。この当接状態が保持されている間、両挟持部分13、16は、上方湾曲部分30Aの弾性変形に応じた強い弾性力により胸ポケットPTの布地を挟持する。この結果、留め具1は胸ポケットPTに装着される。留め具1の装着状態において、ホイッスル部分18の下方端部は、
図10に示すように、取付ループ部分36の下方端部より上方に位置することから、ホイッスル部分18が名札NTの表示領域を覆うことはない。
【0071】
次に、胸ポケットPTに装着された留め具1を離脱させるために、ユーザは、
図10に示すように、挟持部分13、16が互いに接近した状態にある留め具1の回動操作部材12のホイッスル部分18を手指により保持して回動操作部材12を時計回り方向に回動操作する。この回動操作が開始されると、回動軸部分41、42に向かう方向と異なる方向に上方湾曲部分30Aから弾性力が押圧突出部分43に作用し、この弾性力と回動操作力とにより、回動操作部材12は、
図3に示すように、第2挟持部材11から時計回り方向に約90度回動した角度位置まで回動して、その角度位置に保持される。回動操作部材12の回動に伴って、支持部材14を含む第2挟持部材11が前方に回動する。第2挟持部材11の回動により、挟持部分16が挟持部分13から離間して、胸ポケットPTの布地の挟持が解除される。この結果、ユーザは、留め具1を胸ポケットPTから離脱させることができる。
【0072】
(ホイッスル部分18を使用する場合)
火災などの災害が発生したときに、ホイッスル部分18を使用する場合について図面を参照して説明する。災害が発生したときに、留め具1を装着しているユーザは、上述したように、留め具1を胸ポケットPTから離脱させる。離脱された留め具1は、
図3に示す状態にあることから、ユーザは、ホイッスル部分18を手指により保持し、吹き込み口50から空気を吹き込み、警報音を発生させる。回動操作部材12は、
図3に示すように、第2挟持部材11および第1挟持部材10から約90度回動した角度位置に保持されることから、ユーザは、第2挟持部材11および第1挟持部材10に邪魔されることなく、回動操作部材12の先端部に位置する吹き込み口50を容易に口に咥えることができる。
【0073】
[第1実施形態の効果]
本実施形態では、ユーザは、手指によりホイッスル部分18を保持して回動操作部材12を回動操作することにより、胸ポケットPTに対して留め具1を装着または離脱させることができる。また、留め具1を離脱させたときに、ホイッスル部分18は、第2挟持部材11および第1挟持部材10から約90度回動した角度位置に離間して位置することから、ユーザは、回動操作部材12の先端部分に位置する吹き込み口50を、第2挟持部材11および第1挟持部材10に邪魔されることなく、容易に口に咥えることができる。
【0074】
本実施形態では、ホイッスル部分18の吹き込み口50は、第2挟持部材11の挟持部分16よりも、回動操作部材12の回動軸部分41、42から離れて配置される。具体的には、
図10に示すように、吹き込み口50は、第2挟持部材11の挟持部分16より下方であって、取付部材15のフック部分36Aの最下方端部より僅かに上方の位置に配置されることから、留め具1を離脱させたときに、第2挟持部材11の挟持部分16および取付部材15から吹き込み口5を大きく離間させることができ、ユーザは吹き込み口50を第2挟持部材11に邪魔されることなく一層容易に口に咥えることができる。また、吹き込み口50が、第2挟持部材11の挟持部分16よりも回動軸部分41、42から離れて配置されることから、ユーザは、吹き込み口50の近傍のホイッスル部分18の先端部分を手指により保持して、比較的に小さい操作力により回動操作部材12を回動操作することができる。
【0075】
本実施形態では、第2挟持部材11の取付部材15は、支持部材14の軸部分32A、33Aの周りに回動可能に組み付けられる。この結果、挟持部分13と挟持部分16とが離間した
図3に示す状態、および挟持部分13と挟持部分16とが接近した
図10に示す状態のいずれの状態であっても、ユーザは、取付部材15を回動させることにより、取付部材15および取付部材15に取り付けられた名札NTを吹き込み口50から離間させることができ、取付部材15および取付部材15に取り付けられた名札NTに邪魔されることなく、吹き込み口50を一層容易に口に咥えることができる。
【0076】
本実施形態では、切欠部分55が、フック部分36Aの先端部36A1を収容するために、ホイッスル部分18の後壁47において、吹き込み口50から上方に形成される。この結果、ホイッスル部分18の後壁47が支持部材14の当接突出部分34と当接した
図10に示す状態であっても、取付部材15を支持部材14の軸部分32A、33Aの周りに回動させることができる。取付部材15を回動させることにより、ユーザは、吹き込み口50を一層容易に口に咥えることができる。
【0077】
本実施形態では、挟持部分13は、円形状に配列された複数の係止突起24を備え、取付部材15の挟持部分16は、円形内壁35Bと円形外壁35Cとにより構成される円形の係止溝35Dを備える。この結果、挟持部分13と挟持部分16との間で胸ポケットPTの布地を挟持した状態で、取付部材15を回動させたとしても、係止溝35Dは布地上を摺動することができることから、ユーザは、布地を損傷させることなく、取付部材15に取り付けられた名札NTの表示位置を調整することができる。
【0078】
本実施形態では、ホイッスル部分18の後壁47が支持部材14の当接突出部分34と当接した
図10に示す状態において、回動操作部材12の押圧突出部分43は、支持部材14の上方湾曲部分30Aから、回動軸部分41、42に向かう方向の大きな弾性力を受ける。この結果、ホイッスル部分18の後壁47と支持部材14の当接突出部分34との当接状態が強い弾性力により保持され、胸ポケットPTに対する留め具1の装着状態を確実に維持することができる。また、ホイッスル部分18の後壁47と支持部材14の当接突出部分34との当接状態において、フック部分36Aの先端部36A1が、切欠部分55を形成するホイッスル部分18の後壁と当接する。この結果、フック部分36Aに取り付けられた名札NTが、舌状部分36Bの先端部36B1とフック部分36Aの先端部36A1との間から脱落することを確実に防止することができる。
【0079】
<第2実施形態>
以下に、本発明の第2実施形態に係る名札装着用の留め具について、図面を参照して説明する。
図11は、中子部材40およびストラップ保持部材200が分離された状態において第2実施形態の留め具1を前方から見た斜視図であり、
図12は、第1挟持部材110の挟持部分113と第2挟持部材11の挟持部分16とが接近した状態において、中子部材40およびストラップ保持部材200が取り付けられた留め具1の左側断面図である。第2実施形態の留め具1は、第1挟持部材110およびストラップ保持部材200の構成について、第1実施形態の留め具1と相違するので、その相違する構成についてのみ詳述する。第2実施形態において、第1実施形態と同一部分には同一の番号または記号を付して説明する。
【0080】
第2実施形態の留め具1は、ストラップ保持部材200を備える。ストラップ保持部材200は、第1挟持部材110の上方部分に着脱可能に取り付けられる。
【0081】
(第1挟持部材110の詳細な構成)
第1挟持部材110は、弾力性がある合成樹脂材料から成形される。本実施形態では、第1挟持部材110の合成樹脂材料として、ポリアセタール樹脂が使用される。
図12において、第1挟持部材110は、上下方向に延びる板状の挟持基体部分120と、保持部分121と、一対の軸受け部分122、123と、装着部分124とを備える。
【0082】
挟持部分113は、挟持基体部分120の下方部分であって、挟持基体部分120の前面に配置され、第1実施形態の第1挟持部材10の挟持部分13と同じ構成を有する。保持部分121は、挟持基体部分120の上方部分から前方に延びる延出部分121Aと、その延出部分121Aの先端に形成された屈曲部分121Bと、一対の円弧状の受け面(
図12に受け面121Fのみを示す)とを備える。延出部分121A、屈曲部分121B、および円弧状の受け面121Fは、第1実施形態の第1挟持部材10の延出部分21A、屈曲部分21B、および円弧状の受け面21Fとほぼ同じ構成を有する。一対の軸受け部分122、123は、前後方向に長い長孔122A、123Aを備える。また、軸受け部分122、123は、
図11に示すように、互いに向き合う内側面であって、長孔122A、123Aより前方に一対の傾斜面122B、123Bを有する。軸受け部分122、123は、第1実施形態の第1挟持部材10の軸受け部分22、23と同じ構成を有する。
【0083】
装着部分124は、挟持基体部分120の上方部分の後方側に配置される。装着部分124は、収容凹所124Aと、一対の右側係止突起124B、124Cと、一対の左側係止突起とを備える。収容凹所124Aは、左右方向および上下方向に延び、左右方向および上方に開口して形成される。一対の右側係止突起124B、124Cは、収容凹所124Aの開口の右側の近傍に、互いに向かい合う状態で突出して形成される。一対の左側係止突起は、収容凹所124Aの開口の左側の近傍に、互いに向かい合う状態で突出して形成され、右側係止突起124B、124Cと同様な構成を有する。
図11には、右側係止突起124B、124Cのみが示される。開口部分121Eが、保持部分121の一対の円弧状の受け面が形成される領域を通って、挟持基体部分120および装着部分124を前後方向に貫通して形成される。
【0084】
(ストラップ保持部材200の詳細な構成)
ストラップ保持部材200は、弾力性がある合成樹脂材料から成形される。本実施形態では、ストラップ保持部材200の合成樹脂材料として、ポリアセタール樹脂が使用される。ストラップ保持部材200は、基体部分201と、ストラップ係止部分202と、一対の装着腕部分203、204とを主に備える。ストラップ係止部分202は、
図12に示すように、基体部分201から前方に延び、180度屈曲して形成される。ストラップ係止部分202は、複数の上方係止爪202Aと、複数の下方係止爪202Bとを備える。上方係止爪202Aおよび下方係止爪202Bは、
図12に示すように、互いに向き合った状態で突出して形成される。ユーザが首などから吊り下げるストラップの一部が、両係止爪202A、202Bの間に挿通されて挟持される。
【0085】
一対の装着腕部分203、204が、左右方向に並んだ状態で、基体部分201の下面から垂下して形成される。右側装着腕部分203は、略V字状に屈曲して形成され、垂下部分203Aと、弾性腕部分203Bと、張出し操作部分203Cとを備える。弾性腕部分203Bは、垂下部分203Aから右方に開くように垂下部分203Aの下方端部から上方に傾斜して延びる。弾性腕部分203Bの上方端部が垂下部分203Aに対して接近したり離間したりするように、弾性腕部分203Bは弾性変形可能に構成される。張出し操作部分203Cは、弾性腕部分203Bから右方に張り出して形成される。操作摘み部分203Dが、張出し操作部分203Cの右先端部に形成される。係止溝203Eが、弾性腕部分203Bと操作摘み部分203Dとの間で、上下方向に延びて形成される。係止溝203Eの延びる方向は、弾性腕部分203Bの傾斜する方向とほぼ同じ方向である。左側装着腕部分204も、右側装着腕部分203と同様な構成を有し、垂下部分204Aと、弾性腕部分204Bと、張出し操作部分204Cと、操作摘み部分204Dと、係止溝204Eとを備える。
【0086】
[第2実施形態の動作および作用]
第1挟持部材110に対してストラップ保持部材200を装着または離脱する場合における動作および作用について図面を参照して説明する。なお、留め具1を組み立てる場合、留め具1を胸ポケットPTに対して装着および離脱する場合、および留め具1のホイッスル部分18を使用する場合における動作および作用は、第1実施形態と同様であるので、その説明を省略する。
【0087】
(第1挟持部材110に対してストラップ保持部材200を装着または離脱する場合)
ユーザは、首に掛けたストラップに名札NTを取り付けたい場合には、ストラップの一部を保持するストラップ保持部材200を第1挟持部材110に取り付ける必要がある。先ず、ユーザは、手指により、2つの操作摘み部分203D、204Bを保持して両操作摘み部分203D、204Bが互いに接近するように両操作摘み部分203D、204Bを押圧する。この押圧操作により、弾性腕部分203B、204Bは垂下部分203A、204Aに接近するように弾性変形する。
【0088】
次に、ユーザは、弾性腕部分203B、204Bが弾性変形して垂下部分203A、204Aに接近した状態のまま、収容凹所124Aの上方に開口する部分から両装着腕部分203、204を収容凹所124Aに押し込む。この押し込み操作の際に、右側係止突起124B、124Cが、前方および後方の両側において、右側係止溝203Eにそれぞれ嵌合する。同時に、左側係止突起も、前方および後方の両側において、左側係止溝204Eにそれぞれ嵌合する。両装着腕部分203、204の押し込み操作に従って、右側係止溝203Eおよび左側係止溝204Eが下方に移動して右側係止突起124B、124Cおよび左側係止突起をそれぞれ通過したときに、両係止溝203E、204Eは左右両側の係止突起との嵌合から解放される。この嵌合からの解放により、右側弾性腕部分203Bは弾性変形から解放されて垂下部分203Aから右方に移動して開くとともに、左側弾性腕部分204Bも、同様に垂下部分204Aから左方に移動して開く。両弾性腕部分203B、204Bが開いたときに、右側弾性腕部分203Bの上方端部は右側係止突起124B、124Cの下方端部と係合する。同時に、左側弾性腕部分204Bの上方端部も左側係止突起の下方端部と係合する。両弾性腕部分203B、204Bの上方端部の係合により、両装着腕部分203、204が収容凹所124Aから脱落することが防止される。この結果、ストラップ保持部材200が第1挟持部材110に装着される。
【0089】
ユーザは、ストラップを使用せずに、胸ポケットPTに名札NTを装着したい場合には、留め具1からストラップ保持部材200を離脱させる必要がある。先ず、ユーザは、留め具1を胸ポケットPTから取り外した状態において、第1挟持部材110に装着されたストラップ保持部材200の両操作摘み部分203D、204Bが互いに接近するように、手指により両操作摘み部分203D、204Bを保持して押圧する。この押圧操作により、弾性腕部分203B、204Bは垂下部分203A、204Aに接近するように弾性変形する。両弾性腕部分203B、204Bの接近により、両弾性腕部分203B、204Bの上方端部が、右側係止突起124B、124Cの下方端部との係合、および左側係止突起の下方端部との係合からそれぞれ解放される。
【0090】
次に、ユーザは、右側係止突起124B、124Cが右側係止溝203Eに嵌合するとともに、左側係止突起が左側係止溝204Eに嵌合した状態のまま、両装着腕部分203、204を収容凹所124Aから上方に引き上げる。両装着腕部分203、204の引き上げに従って、両係止溝203E、204Eが、右側係止突起124B、124Cおよび左側係止突起をそれぞれ通過したときに、左右両側の係止突起との嵌合から解放される。この嵌合からの解放により、右側弾性腕部分203Bは弾性変形から解放されて垂下部分203Aから右方に移動して開くとともに、左側弾性腕部分204Bも、同様に垂下部分204Aから左方に移動して開く。この結果、ストラップ保持部材200が第1挟持部材110から離脱される。
【0091】
[第2実施形態の効果]
第2実施形態では、ストラップ保持部材200を第1挟持部材110に装着することにより、ユーザは首に掛けたストラップに名札NTを取り付けることができる。また、災害が発生した場合に、ストラップ保持部材200が第1挟持部材110に装着されている状態でも、ユーザは、ストラップ保持部材200に邪魔されることなく、回動操作部材12を自由に回動操作することができる。すなわち、第2実施形態でも、第1実施形態と同様に、
図3に示すように、第2挟持部材11および第1挟持部材110から時計回り方向に約90度回動した角度位置に回動操作部材12を回動させて保持することができ、ユーザは、災害が発生したときに、ホイッスル部分18の吹き込み口50を容易に口に咥えて、警報音を発生させることができる。
【0092】
さらに、第2実施形態では、ホイッスル部分18が回動部分17に連結される構成であることから、装着部分124を備える第1挟持部材110にホイッスル部分18を連結する構成に比べて、第1挟持部材110が上下方向に長くなったり、前後方向に厚くなったりすることを避けることができる。また、装着部分124が回動操作部材12の回動軸部分41、42の配置位置より上方に配置されることから、ユーザは、装着部分124およびストラップ保持部材200に邪魔されることなく、回動操作部材12を回動操作することができる。
【0093】
<第3実施形態>
以下に、本発明の第3実施形態に係る名札装着用の留め具について、図面を参照して説明する。
図13は、中子部材40およびホイッスル部材300を分離した状態において第3実施形態の留め具1を前方から見た斜視図であり、
図14は、第1挟持部材10の挟持部分13と第2挟持部材11の挟持部分16とが接近した状態において、中子部材40およびホイッスル部材300が組み付けられた留め具1の左側断面図である。第3実施形態の留め具1は、ホイッスル部材および回動部材の構成について、第1実施形態の留め具1と相違するので、その相違する構成についてのみ詳述する。第3実施形態において、第1実施形態と同一部分には同一の番号または記号を付して説明する。
【0094】
第3実施形態の留め具1は、第1実施形態の回動操作部材12に代えて、ホイッスル部材300と、回動部材400とを備える。ホイッスル部材300は、回動可能に回動部材400に取り付けられる。第3実施形態の第1挟持部材10および第2挟持部材11は、第1実施形態とほぼ同じ構成である。
【0095】
(ホイッスル部材300の詳細な構成)
中子部材40を除いたホイッスル部材300は、合成樹脂材料から成形される。本実施形態では、ホイッスル部材300の合成樹脂材料として、ABS樹脂が使用される。ホイッスル部材300は、上下方向に延びる直方体形状を有し、上壁345と、前壁346と、後壁347と、右壁348と、左壁349とを備える。吹き込み口350が、ホイッスル部材300の下方部分に開口して形成される。収容室351が吹き込み口350からホイッスル部材300の内部に形成され、共鳴室352が収容室351に連通してホイッスル部材300の内部に形成される。排気口353が、前壁346に形成される。中子部材40は、第1実施形態と同じ構成であり、第1実施形態と同じ方法により収容室351の内部に組み付けられる。
【0096】
回動軸部分301が、ホイッスル部材300の後壁347から後方に突出して形成される。係止鍔部分302は、円形状を有し、回動軸部分301の先端部分に連結される。係止鍔部分302は、回動軸部分301より大きな直径を有する。
図14において、回動軸部分301は、ホイッスル部材300の上下方向の中央位置より上方に配置される。
【0097】
(回動部材400の詳細な構成)
回動部材400は、合成樹脂材料から成形される。回動部材400の合成樹脂材料として、第1挟持部材10の合成樹脂材料、および、第2挟持部材11の支持部材14並びに取付部材15の合成樹脂材料とは、硬さおよび摩擦係数の異なる合成樹脂材料が使用されることが好ましい。本実施形態では、回動部材400の合成樹脂材料として、ABS樹脂が使用される。回動部材400は、回動部分401と、板状部分402とを備える。回動部分401は、左右方向に延びる一対の回動軸部分441、442と、押圧突出部分443とを備える。一対の回動軸部分441、442は、第1実施形態の回動軸部分41、42と同様に、先端部に傾斜面を有する。それらの傾斜面が一対の軸受け部分22、23を弾性変形させて外方に押し広げることにより、一対の回動軸部分441、442は、一対の軸受け部分22、23の長孔22A、23Aにそれぞれ嵌合する。押圧突出部分443は、第2挟持部材11の上方湾曲部分30Aの前面に接触する。
【0098】
板状部分402は、長方形の形状を有し、回動部分401の下方部分に連結される。板状部分402の左右方向の幅は、ホイッスル部材300とほぼ同じ幅であり、板状部分402の上下方向の長さは、上下方向において板状部分402の下端部分が第2挟持部材11の支持部材14の下端部分と同じ位置になるような長さに設定される。板状部分402は、
図14に示すように、下方端部に近接した領域に、係止開口部分403と、係止開口部分403と前後方向に連通する収容開口部分404とを備える。係止開口部分403は、板状部分402の前側の領域において前方に開口して形成される。係止開口部分403は、回動軸部分301の前後方向の長さとほぼ同じ深さを有し、大径部分403Aと、その大径部分403Aの上方部分に連続する小径部分403Bとを備える。大径部分403Aは、係止鍔部分302の直径より僅かに大きな直径を有する。小径部分403Bは、回動軸部分301の直径より僅かに大きく、かつ係止鍔部分302の直径より十分に小さい直径を有する。大径部分403Aと小径部分403Bとが連続する部分の左右方向の幅は、小径部分403Bの直径より小さい幅に設定される。
【0099】
収容開口部分404は、板状部分402の後側の領域において後方に開口して形成される。収容開口部分404は、長孔形状を有し、係止鍔部分302の前後方向の長さとほぼ同じ深さを有する。収容開口部分404は、大径部分403Aの直径より大きな左右方向の幅と、係止開口部分403より大きな上下方向の長さとを有する。
【0100】
[第3実施形態の動作および作用]
ホイッスル部材300を回動部材400に組み付ける場合、およびホイッスル部材300を使用する場合における動作および作用について図面を参照して説明する。なお、留め具1を組み立てる場合、および留め具1を胸ポケットPTに対して装着および離脱する場合における動作および作用は、第1実施形態と同様であるので、その説明を省略する。
【0101】
(ホイッスル部材300を回動部材400に組み付ける場合)
先ず、ユーザは、ホイッスル部材300の係止鍔部分302を、板状部分402の大径部分403Aから嵌入させて収容開口部分404の内部に収容する。係止鍔部分302を収容開口部分404の内部に収容した状態において、ホイッスル部材300の回動軸部分301は、板状部分402の大径部分403Aの内部に位置する。次に、回動軸部分301が大径部分403Aの内部に位置した状態において、ユーザは、ホイッスル部材300を上方に移動させて回動軸部分301を小径部分403Bに嵌合させる。大径部分403Aと小径部分403Bとが連続する部分の左右方向の幅が小径部分403Bの直径より小さいことから、回動軸部分301を小径部分403Bに嵌合させる際に、その連続する部分は、弾性変形して回動軸部分301により左右方向に押し広げられる。
【0102】
回動軸部分301が小径部分403Bに嵌合した状態において、大径部分403Aと小径部分403Bとが連続する部分の左右方向の幅が小径部分403Bの直径より小さいことから、回動軸部分301と小径部分403Bとの嵌合状態が保持される。この結果、ホイッスル部材300は、ホイッスル部材300の後壁347と板状部材402の前面とが圧着した状態で、回動部材400の板状部材402に回動可能に組み付けられる。ユーザは、回動部材400に対してホイッスル部材300を任意の角度位置に回動することができる。ホイッスル部材300の角度位置は、ホイッスル部材300の後壁347と板状部材402の前面との間に作用する摩擦抵抗により保持される。
【0103】
(ホイッスル部材300を使用する場合)
火災などの災害が発生したときに、ホイッスル部材300を使用する場合について説明する。災害が発生したときに、留め具1を装着しているユーザは、ホイッスル部材300を手指により保持してホイッスル部材300および回動部材400を時計回り方向に回動操作する。この回動操作により、第1実施形態と同様に、第3実施形態の留め具1を胸ポケットPTから離脱させることができる。離脱された留め具1のホイッスル部材300は、第2挟持部材11から時計回り方向に約90度回動していることから、ユーザは、ホイッスル部材300を手指により保持し、第2挟持部材11および第1挟持部材10に邪魔されることなく、吹き込み口350を容易に口に咥えることができる。また、ホイッスル部材300は、回動軸部分301の軸線の周りに、すなわち、回動部分401の回動軸部分441、442の軸線、および回動部分401から板状部分402が延びる方向とそれぞれ直交する軸線の周りに、回動可能に板状部材402に組み付けられることから、ホイッスル部材300を任意の角度位置に回動させて吹き込み口350を一層容易に口に咥えることができる。ホイッスル部材300を任意の角度位置に回動させたときには、
図14に示すように挟持部分13と挟持部分16とが接近した状態であっても、吹き込み口350を取付部材15などの他の部材から離間させることができ、留め具1の状態に関係なく吹き込み口350を容易に口に咥えることができる。
【0104】
[第3実施形態の効果]
第3実施形態では、ホイッスル部材300が回動部材400の板状部材402に回動可能に組み付けられることから、胸ポケットPTに対して留め具1を装着または離脱させるときに、ユーザはホイッスル部材300を手指により保持して回動操作することができ、留め具1の装着または離脱を容易に行うことができる。また、挟持部分13と挟持部分16とが接近した状態と離間した状態とのいずれの状態であっても、ユーザは、ホイッスル部材300を回動軸部分301の軸線の周りに任意な角度位置に回動させることにより、ホイッスル部材300の吹き込み口350を、第2挟持部材11の取付部材15から離すことができ、第2挟持部材11などの他の部材に邪魔されずに、吹き込み口350を容易に口に咥えることができる。
【0105】
第3実施形態では、
図14に示すように、回動軸部分301は、ホイッスル部材300の上下方向の中央位置より上方に配置される。この結果、ホイッスル部材300を回動軸部分301の軸線の周りに回動させたときに、ユーザは、吹き込み口350を第2挟持部材11の取付部材15から大きく離すことができ、第2挟持部材11などの他の部材に邪魔されずに、吹き込み口350を容易に口に咥えることができる。
【0106】
<第4実施形態>
以下に、本発明の第4実施形態に係る名札装着用の留め具について、図面を参照して説明する。
図15は、第4実施形態の留め具1を前方から見た斜視図であり、
図16は、第1挟持部材500の挟持部分513と第2挟持部材11の挟持部分16とが接近した状態における留め具1の左側断面図である。第4実施形態の留め具1は、第1挟持部材、ホイッスル部分、および回動操作部材の構成について、第1実施形態の留め具1と相違するので、その相違する構成についてのみ詳述する。第4実施形態において、第1実施形態と同一部分には同一の番号または記号を付して説明する。
【0107】
第4実施形態の留め具1は、第1挟持部材500と、第2挟持部材11と、回動操作部材600とを主に備える。第2挟持部材11は、第1実施形態とほぼ同じ構成である。
【0108】
(第1挟持部材500の詳細な構成)
第1挟持部材500は、中子部材40を除いて、弾力性がある合成樹脂材料から一体成形される。本実施形態では、第1挟持部材500の合成樹脂材料として、ポリアセタール樹脂が使用される。
図15において、第1挟持部材500は、ホイッスル部分518と、上下方向に延びる板状の挟持基体部分520と、保持部分521と、一対の軸受け部分522、523とを備える。挟持部分513は、挟持基体部分520の下方部分であって、挟持基体部分520の前面に配置される。ホイッスル部分518は、挟持基体部分520の後方側であって、上下方向の全領域に形成される。
【0109】
保持部分521は、挟持基体部分520から前方に延びる延出部分521Aと、その延出部分521Aの先端に形成された屈曲部分521Bと、一対の保持突起521C、521Dとを備える。一対の保持突起521C、521Dは、延出部分521Aの下面であって、延出部分521Aと挟持基体部分520との連結部分に近接した位置に、左右方向に所定間隔をおいて配置される。また、保持部分521は、一対の円弧状の受け面を備える。一対の円弧状の受け面は、挟持基体部分520と一対の軸受け部分522、523とが連結される左右両側の連結部分の近傍に配置され、
図16において左側の受け面521Fのみが示される。
【0110】
一対の軸受け部分522、523は、前後方向に長い長孔522A、523Aを備える。また、軸受け部分522、523は、
図15に示すように、互いに向き合う内側面であって、長孔522A、523Aより前方に一対の傾斜面522B、523Bを有する。保持部分521、一対の軸受け部分522、523、一対の円弧状の受け面、および挟持部分513は、第1実施形態の保持部分21、一対の軸受け部分22、23、一対の円弧状の受け面、および挟持部分13とほぼ同じ構成を有する。
【0111】
(ホイッスル部分518の詳細な構成)
ホイッスル部分518は、挟持基体部分520と向き合って上下方向に延びる後壁530と、右壁531と、左壁532と、円弧状の下壁533とを備え、挟持基体部分520がホイッスル部分518の前壁として機能する。挟持基体部分520前後方向の肉厚は、剛性を確保するために、後壁53より十分に厚く設定される。
【0112】
吹き込み口550が、ホイッスル部分518の上方部分に開口して形成される。収容室551が吹き込み口550からホイッスル部分518の内部に形成され、共鳴室552が収容室551に連通してホイッスル部分518の内部に形成される。排気口553が、後壁530に形成される。中子部材40が収容室551の内部に組み付けられる。中子部材40は、第1実施形態と同じ構成である。
【0113】
吹き込み口550は、保持部分521から上方に離間して配置される。その離間する距離は、ユーザが吹き込み口550を口に咥えたときに、保持部分521に邪魔されない距離であって、留め具1を胸ポケットPTに装着したときに、胸ポケットPTから上方に突出するホイッスル部分518の一部分がユーザにとって邪魔にならない距離に設定される。
【0114】
(回動操作部材600の詳細な構成)
回動操作部材600は、合成樹脂材料から成形される。回動操作部材600の合成樹脂材料として、第1挟持部材500の合成樹脂材料、および、第2挟持部材11の支持部材14並びに取付部材15の合成樹脂材料とは、硬さおよび摩擦係数の異なる合成樹脂材料が使用されることが好ましい。本実施形態では、回動操作部材600の合成樹脂材料として、ABS樹脂が使用される。回動操作部材600は、回動部分601と、その回動部分601の下方部分に連結された操作レバー部分602とを備える。回動部分601は、左右方向に延びる一対の回動軸部分641、642と、押圧突出部分643と、一対の案内壁部分644、645とを備える。一対の回動軸部分641、642は、先端部に一対の傾斜面(
図15に傾斜面641Aのみを示す)をそれぞれ有する。一対の傾斜面が一対の軸受け部分522、523を弾性変形させて外方に押し広げることにより、一対の回動軸部分641、642は、一対の軸受け部分522、523の長孔522A、523Aにそれぞれ嵌合する。押圧突出部分643は、第2挟持部材11の上方湾曲部分30Aの前面に接触する。一対の案内壁部分644、645は、第1挟持部材500の屈曲部分521Bの左右両側面とそれぞれ接触して、回動部分601が左右方向にずれないように回動部分601を案内する。回動部分601は、第1実施形態の回動部分17とほぼ同じ構成である。
【0115】
操作レバー部分602は、ユーザが手指により保持することができるように上下方向の長さおよび左右方向の幅を有する。挟持部分513と挟持部分16とが接近した状態において、操作レバー部分602の後面は、
図16に示すように第2挟持部材11の支持部材14の前面に当接する。
【0116】
[第4実施形態の動作および作用]
留め具1のホイッスル部分518を使用する場合における動作および作用について図面を参照して説明する。留め具1を組み立てる場合、および留め具1を胸ポケットPTに対して装着および離脱する場合における動作および作用は、第1実施形態とほぼ同じである。すなわち、第4実施形態の第1挟持部材500および回動操作部材600が、第1実施形態の第1挟持部材10および回動操作部材12に相当すると考えれば、両実施形態の動作および作用はほぼ同じになることから、その説明を省略する。
【0117】
(ホイッスル部分518を使用する場合)
火災などの災害が発生したときに、留め具1を装着しているユーザは、操作レバー部分602を手指により保持して時計回り方向に回動操作する。この回動操作により、第1実施形態と同様に、第4実施形態の留め具1を胸ポケットPTから離脱させることができる。離脱された留め具1のホイッスル部分518の吹き込み口550は、一対の回動軸部分641、642の軸線に対して第2挟持部材11の挟持部分16の配置位置と反対側、すなわち回動軸部分641、642より上方に配置されるとともに、第1挟持部材500の保持部分521より上方に離れて配置されていることから、ユーザは、ホイッスル部分518を手指により保持し、吹き込み口550を口に咥えて、警報音を発生させることができる。
【0118】
[第4実施形態の効果]
第4実施形態では、ホイッスル部分518の吹き込み口550は、一対の回動軸部分641、642の軸線に対して第2挟持部材11の配置位置と反対側に配置されるとともに、第1挟持部材500の保持部分521より離れて配置されていることから、ユーザは、ホイッスル部分518を手指により保持し、第2挟持部材11および第1挟持部材500などの他の部材に邪魔されることなく、吹き込み口550を容易に口に咥えることができる。また、
図16に示すように挟持部分513と挟持部分16とが接近した状態であっても、吹き込み口550は第2挟持部材11および第1挟持部材500などの他の部材から離間していることから、留め具1の状態に関係なく吹き込み口550を容易に口に咥えることができる。
【0119】
<第5実施形態>
以下に、本発明の第5実施形態に係る名札装着用の留め具について、図面を参照して説明する。
図17は、第5実施形態の留め具1を前方から見た斜視図であり、
図18は、第1挟持部材700の挟持部分713と第2挟持部材11の挟持部分16とが接近した状態における留め具1の左側断面図である。第5実施形態の留め具1は、第1挟持部材およびホイッスル部材の構成について、第4実施形態の留め具1と相違するので、その相違する構成についてのみ詳述する。第5実施形態において、第4実施形態と同一部分には同一の番号または記号を付して説明する。
【0120】
第5実施形態の留め具1は、第1挟持部材700と、第2挟持部材11と、回動操作部材600と、ホイッスル部材800とを主に備える。第2挟持部材11および回動操作部材600は、第4実施形態とほぼ同じ構成である。
【0121】
(第1挟持部材700の詳細な構成)
第1挟持部材700は、弾力性がある合成樹脂材料から成形される。本実施形態では、第1挟持部材700の合成樹脂材料として、ポリアセタール樹脂が使用される。第1挟持部材700は、第1実施形態の第1挟持部材10と同様な構成を有し、上下方向に延びる板状の挟持基体部分720と、保持部分721と、一対の軸受け部分722、723とを備える。挟持部分713は、挟持基体部分720の下方部分であって、挟持基体部分720の前面に配置される。
【0122】
保持部分721は、挟持基体部分720から前方に延びる延出部分721Aと、その延出部分721Aの先端に形成された屈曲部分721Bと、一対の保持突起721C、721Dとを備える。一対の保持突起721C、721Dは、延出部分721Aの下面であって、延出部分721Aと挟持基体部分720との連結部分に近接した位置に、左右方向に所定間隔をおいて配置される。また、保持部分721は、後方に開放する開口部分721Eと、一対の円弧状の受け面とを備える。一対の円弧状の受け面は、開口部分721Eの左右両側に配置され、
図18において左側の受け面721Fのみが示される。
【0123】
一対の軸受け部分722、723は、前後方向に長い長孔722A、723Aを備える。また、軸受け部分722、723は、
図17に示すように、互いに向き合う内側面であって、長孔722A、723Aより前方に一対の傾斜面722B、723Bを有する。保持部分721、一対の軸受け部分722、723、一対の円弧状の受け面、および挟持部分713は、第1実施形態の保持部分21、一対の軸受け部分22、23、一対の円弧状の受け面、および挟持部分13とほぼ同じ構成を有する。
【0124】
挟持基体部分720は、
図18に示すように、軸受け部分722、723と挟持部分713との間の領域に係止開口部分701を有する。係止開口部分701は、第3実施形態の板状部分402の係止開口部分403と同様な形状に形成され、後述するホイッスル部材800の回動軸部分801の前後方向の長さとほぼ同じ深さを有し、大径部分701Aと、その大径部分701Aの下方部分に連続する小径部分701Bとを備える。大径部分701Aは、後述するホイッスル部材800の係止鍔部分802の直径より僅かに大きな直径を有する。小径部分701Bは、回動軸部分801の直径より僅かに大きく、かつ係止鍔部分802の直径より十分に小さい直径を有する。大径部分701Aと小径部分701Bとが連続する部分の左右方向の幅は、小径部分701Bの直径より小さい幅に設定される。
【0125】
(ホイッスル部材800の詳細な構成)
中子部材40を除いたホイッスル部材800は、合成樹脂材料から成形される。本実施形態では、ホイッスル部材800の合成樹脂材料として、ABS樹脂が使用される。ホイッスル部材800は、前壁829と、後壁830と、右壁831と、左壁832と、円弧状の下壁833とを備える。吹き込み口850が、ホイッスル部材800の上方部分に開口して形成される。収容室851が吹き込み口850からホイッスル部材800の内部に形成され、共鳴室852が収容室851に連通してホイッスル部材800の内部に形成される。排気口853が、後壁830に形成される。中子部材40が収容室851の内部に組み付けられる。中子部材40は、第1実施形態と同じ構成である。
【0126】
ホイッスル部材800を第1挟持部材700に組み付けるために、第3実施形態の回動軸部分301および係止鍔部分302と同じ形状の回動軸部分801および係止鍔部分802が設けられる。回動軸部分801は、ホイッスル部材800の前壁829から前方に突出して形成される。係止鍔部分802は、円形状を有し、回動軸部分801の先端部分に連結される。係止鍔部分802は、回動軸部分801より大きな直径を有する。
図18において、回動軸部分801は、ホイッスル部材800の上下方向の中央位置より下方に配置される。
【0127】
ホイッスル部材800が第1挟持部材700に組み付けられた状態において、吹き込み口850は、保持部分721から上方に離間して配置される。その離間する距離は、ユーザが吹き込み口850を口に咥えたときに、保持部分721に邪魔されない距離であって、留め具1を胸ポケットPTに装着したときに、胸ポケットPTから上方に突出するホイッスル部材800の一部分がユーザにとって邪魔にならない距離に設定される。
【0128】
[第5実施形態の動作および作用]
ホイッスル部材800を第1挟持部材700に組み付ける場合、およびホイッスル部材800を使用する場合における動作および作用について図面を参照して説明する。なお、留め具1を組み立てる場合、および留め具1を胸ポケットPTに対して装着および離脱する場合における動作および作用は、第1実施形態と同様であるので、その説明を省略する。
【0129】
(ホイッスル部材800を第1挟持部材700に組み付ける場合)
先ず、ユーザは、ホイッスル部材800の係止鍔部分802を、挟持基体部分720の後方から大径部分701Aに嵌入させて挟持基体部分720の前方から突出させる。次に、係止鍔部分802を挟持基体部分720の前方から突出させた状態において、ユーザは、ホイッスル部材800を下方に移動させて回動軸部分801を小径部分701Bに嵌合させる。大径部分701Aと小径部分701Bとが連続する部分の左右方向の幅が小径部分701Bの直径より小さいことから、回動軸部分801を小径部分701Bに嵌合させる際に、その連続する部分は、弾性変形して回動軸部分801により左右方向に押し広げられる。
【0130】
回動軸部分801が小径部分701Bに嵌合した状態において、大径部分701Aと小径部分701Bとが連続する部分の左右方向の幅が小径部分701Bの直径より小さいことから、回動軸部分801と小径部分701Bとの嵌合状態が保持される。この結果、ホイッスル部材800は、ホイッスル部材300の前壁829と挟持基体部分720の後面とが圧着した状態で、第1挟持部材700の挟持基体部分720に回動可能に組み付けられる。ユーザは、第1挟持部材700に対してホイッスル部材800を任意の角度位置に回動することができる。ホイッスル部材800の角度位置は、ホイッスル部材800の前壁829と挟持基体部分720の後面との間に作用する摩擦抵抗により保持される。
【0131】
(ホイッスル部材800を使用する場合)
火災などの災害が発生したときに、ホイッスル部材800を使用する場合について説明する。災害が発生したときに、留め具1を装着しているユーザは、操作レバー部分602を手指により保持して時計回り方向に回動操作する。この回動操作により、第1実施形態と同様に、第5実施形態の留め具1を胸ポケットPTから離脱させることができる。離脱された留め具1のホイッスル部材800の吹き込み口850は、一対の回動軸部分641、642の軸線に対して第2挟持部材11の配置位置と反対側に配置されるとともに、第1挟持部材700の保持部分721より離れて配置されていることから、ユーザは、ホイッスル部材800を手指により保持し、吹き込み口850を口に咥えて、警報音を発生させることができる。
【0132】
また、ホイッスル部材800は、回動軸部分801の軸線の周りに、すなわち、回動操作部材600の回動軸部分641、642の軸線、および回動操作部材600の操作レバー部分602が延びる方向とそれぞれ直交する軸線の周りに、回動可能に挟持基体部分720に組み付けられることから、ホイッスル部材800を任意の角度位置に回動させて吹き込み口850を一層容易に口に咥えることができる。ホイッスル部材800を任意の角度位置に回動させたときには、
図18に示すように挟持部分713と挟持部分16とが接近した状態であっても、吹き込み口850を取付部材15などの他の部材から離間させることができ、留め具1の状態に関係なく吹き込み口850を容易に口に咥えることができる。
【0133】
[第5実施形態の効果]
第5実施形態では、ホイッスル部材800の吹き込み口850は、一対の回動軸部分641、642の軸線に対して第2挟持部材11の配置位置と反対側に配置されるとともに、第1挟持部材700の保持部分721より離れて配置されていることから、ユーザは、ホイッスル部材800を手指により保持し、吹き込み口850を容易に口に咥えることができる。また、ホイッスル部材800は、回動軸部分801の軸線の周りに回動可能に挟持基体部分720に組み付けられることから、ホイッスル部材800を任意の角度位置に回動させて吹き込み口850を一層容易に口に咥えることができる。
【0134】
第5実施形態では、
図18に示すように、回動軸部分801は、ホイッスル部材800の上下方向の中央位置より下方に配置される。この結果、ホイッスル部材800を回動軸部分801の軸線の周りに回動させたときに、ユーザは、吹き込み口850を第1挟持部材700から大きく離すことができ、第1挟持部材700などの他の部材に邪魔されずに、吹き込み口850を容易に口に咥えることができる。
【0135】
<構成の対応関係>
留め具1、胸ポケットPTの布地、および名札NTが、本発明の留め具、シート状物、および表示物の一例である。第1挟持部材10、110が、本発明の第1挟持部の一例であり、挟持部分13、113が、本発明の第1挟持部の挟持部分の一例である。第2挟持部材11、および挟持部分16が、本発明の第2挟持部、および、その挟持部分の一例である。回動部分17または回動部材400が、本発明の回動部の一例であり、ホイッスル部分18、518、またはホイッスル部材300、800が、本発明のホイッスル部の一例である。一対の回動軸部分41、42、441、442、641、642の軸線が、本発明の回動部の回動軸線の一例である。支持部材14、および取付部材15が、本発明の支持部材および取付部分の一例である。複数の係止突起24および円形の係止溝35Dが、本発明の複数の係止突起、および円形の係止溝の一例である。連結片32、33の軸部分32A、33Aの軸線が、本発明の取付部分の回動軸線の一例である。当接突出部分34が、本発明の当接部分の一例である。吹き込み口50、350、550、850が、本発明の吹き込み口の一例である。ストラップ保持部材200、およびストラップが、本発明の保持部、および長尺物の一例である。ホイッスル部材300の回動軸部分301の軸線が、本発明のホイッスル部の回動軸線の一例である。回動部分601、および操作レバー部分602が、本発明の回動部、および操作部の一例である。ホイッスル部材800の回動軸部分801の軸線が、本発明のホイッスル部の回動軸線の一例である。
図16に示す第1挟持部材500の挟持基体部分520の上下方向に延びる壁であって、共鳴室552を形成する後側の壁、または
図18に示すホイッスル部材800の前壁829が、本発明のホイッスル部の一対の壁のうちの一方の壁の一例である。
図16に示すホイッスル部518の後壁530、または
図18に示すホイッスル部材800の後壁830が、本発明のホイッスル部の一対の壁のうちの他方の壁の一例である。
図3に示す挟持部分13と挟持部分16とが離間した状態における回動操作部材12の回動部分17の角度位置が、本発明の離間回動位置の一例である。
図10または
図12に示す挟持部分13と挟持部分16とが接近した状態における回動操作部材12の回動部分17の角度位置、
図14に示す挟持部分13と挟持部分16とが接近した状態における回動部材400の回動部分401の角度位置、
図16または
図18に示す挟持部分513、713と挟持部分16とが接近した状態における回動操作部材600の回動部分601の角度位置が、本発明の接近回動位置の一例である。
【0136】
<変形例>
本発明は、本実施形態に限定されることはなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の変形が可能である。以下にその変形の一例を述べる。
【0137】
(1)第1〜第3実施形態では、ホイッスル部分18を備える回動操作部材12、または、ホイッスル部材300が組み付けられた回動部材400が回動操作されることにより、留め具1が胸ポケットPTから離脱される。この離脱状態において、回動操作部材12、または回動部材400は、
図3に示すように、第2挟持部材11から約90度回動した角度位置、すなわち離間回動位置に保持される。しかし、この離間回動位置は、第2挟持部材11から約90度回動した角度位置に限定されることはなく、ユーザが第2挟持部材11に邪魔されることなく吹き込み口50、350を口に咥えることができるのであれば、90度より小さい角度位置でもよい。また、第1〜第3実施形態では、第2挟持部材11の取付部材15が支持部材14に対して回動可能であることから、取付部材15を支持部材14から回動させれば、離間回動位置は90度よりも小さい角度位置に設定することができる。特に、第3実施形態では、ホイッスル部材300が回動部材400に対して回動可能であることから、離間回動位置は90度よりも、さらに小さい角度位置に設定することができる。
【0138】
(2)第1実施形態では、回動操作部材12の回動軸部分41、42が、回動操作部材12の一端側に配置され、ホイッスル部分18の吹き込み口50が、回動軸部分41、42とは反対側の先端部分に配置される構成であるが、この構成に限定されない。たとえば、
図10に示すように両挟持部分が接近した状態において、回動軸部分が回動操作部材の長手方向(上下方向)において中間位置に配置され、ホイッスル部分の吹き込み口が回動軸部分よりも上方に配置される構成でもよい。この変形例の構成では、第1挟持部材と第2挟持部材との連結部分が回動軸部分の配置位置より下方に位置すれば、回動操作部材が回動操作されるときにホイッスル部分が第1挟持部材と干渉することを避けることができる。
【0139】
(3)第1〜第5実施形態では、第2挟持部材11が、支持部材14と、支持部材14に回動可能に組み付けられる取付部材15とを備え、挟持部分16が取付部材15に備えられる構成であるが、この構成に限定されない。たとえば、挟持部分が支持部材に備えられる構成でも、取付部材が回動不能に支持部材に固定される構成でもよい。取付部材が回動不能に支持部材に固定される構成である場合、円形状の係止溝35Dを備える挟持部分16に代えて、複数の係止突起を備える挟持部分であってもよい。
【0140】
(4)第1〜第5実施形態では、第1挟持部材10、500、700と第2挟持部材11とを連結する連結部分、すなわち保持部分21、121、521、721が、回動軸部分41、42、441、442、641、642よりも上方に配置される構成であるが、この構成に限定されない。たとえば、第2挟持部材の上方端部分が、第1挟持部材と第2挟持部材とを連結する連結部分よりも上方に配置され、回動操作部材または回動部材が、第2挟持部材の上方端部分に回動可能に連結される構成でもよい。
【0141】
(5)第3および第5実施形態では、ホイッスル部材300、800が、回動部材400の板状部分402、または第1挟持部材700の挟持基体部分720に回動可能に組み付けられる構成であるが、この構成に限定されない。たとえば、ホイッスル部材が、板状部分または挟持基体部分に、上下方向などの所定の直線方向にスライド可能に組み付けられる構成でも、回動可能かつスライド可能に組み付けられる構成でもよい。
【0142】
(6)第1〜第3実施形態では、ホイッスル部分18、およびホイッスル部材300の幅は、第1挟持部材10、110の左右方向の幅とほぼ同じに設定され、ホイッスル部分18、およびホイッスル部材300の長手方向の長さは、挟持部分13、113と挟持部分16とが接近した状態において吹き込み口50、350が第2挟持部材11のフック部分36Aの最下方端部より下方に配置されないような上下方向の長さに設定される。このように幅および長さが設定されることにより、留め具1の外観形状がデザイン的にすっきりした印象をユーザに与えることができる。しかし、ホイッスル部分18、およびホイッスル部材300の外形寸法は、警報音の周波数と関係することから、ホイッスル部分、およびホイッスル部材の幅を広くしたり、その長手方向の長さを長くしたりする外観形状であってもよい。
【0143】
(7)第3および第5実施形態では、ホイッスル部材300、800の回動軸部分301、801の周りの回動位置は、ホイッスル部材300の後壁347またはホイッスル部材800の前壁829と、回動部材400の板状部分402の前面または第1挟持部材700の挟持基体部分720の後面との間の摩擦抵抗により保持される構成であるが、この構成に限定されない。たとえば、ホイッスル部材の回動保持位置に応じて、ホイッスル部材と板状部分または挟持基体部分とが接触する面に、複数の係止突起、および複数の係止溝を設ける構成でもよい。
【0144】
(8)第1〜第5実施形態では、第1挟持部材10、110、500、700と、第2挟持部材11の支持部材14および取付部材15とは、同じ合成樹脂材料であるポリアセタール樹脂から成形されるが、異なる合成樹脂材料から成形されてもよい。たとえば、第1挟持部材10、110、500、700が、ポリアセタール樹脂から成形され、第2挟持部材11の支持部材14および取付部材15が、ポリカーボネート樹脂から成形されてもよい。