特許第6199145号(P6199145)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6199145-複合型導電粒子の製造方法 図000005
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6199145
(24)【登録日】2017年9月1日
(45)【発行日】2017年9月20日
(54)【発明の名称】複合型導電粒子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/34 20060101AFI20170911BHJP
   C23C 14/00 20060101ALI20170911BHJP
   C23C 14/50 20060101ALI20170911BHJP
【FI】
   C23C14/34 J
   C23C14/34 H
   C23C14/00 A
   C23C14/50 K
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-205511(P2013-205511)
(22)【出願日】2013年9月30日
(65)【公開番号】特開2015-67890(P2015-67890A)
(43)【公開日】2015年4月13日
【審査請求日】2016年9月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000108410
【氏名又は名称】デクセリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102875
【弁理士】
【氏名又は名称】石島 茂男
(74)【代理人】
【識別番号】100106666
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 英樹
(72)【発明者】
【氏名】熊倉 博之
【審査官】 安齋 美佐子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−033668(JP,A)
【文献】 特開2003−080085(JP,A)
【文献】 特開2004−321973(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/00−14/58
H01B 1/00−1/24
B22F 1/02
B01J 21/00−38/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
成膜対象粒子と補助振動材とが配置された容器を振動させ、スパッタリングターゲットをスパッタし、前記成膜対象粒子の表面に表面金属層を形成して複合型導電粒子を製造する複合型導電粒子の製造方法であって、
平均直径が1μm以上20μm以下の前記成膜対象粒子を用い、
前記補助振動材には、直径Bが1mm以上10mm以下の攪拌球体を用い、前記容器の底面上に均一に積層された前記成膜対象粒子の積層層の層厚Aと前記攪拌球体の直径Bとの比の値は、0.1以上1.0以下(0.1≦A/B≦1)にし、
前記容器の底面の面積Cに対する、前記容器に配置された前記攪拌球体の中心を通る平面で切断したときの断面積の合計値である専有面積Eの比(E/C)は、70%以上にする複合型導電粒子の製造方法。
【請求項2】
前記成膜対象粒子は、樹脂粒子から成る粒子本体の表面に、ニッケル、銅、銀、金、白金、パラジウム、ルテニウムからなる群から選択される金属の下地層が一層以上形成された請求項1記載の複合型導電粒子の製造方法。
【請求項3】
前記容器を振動させる周波数は、15Hz以上65Hz以下の範囲にし、振幅は、±(0.5mm〜10mm)にする請求項1又は請求項2のいずれか1項記載の複合型導電粒子の製造方法。
【請求項4】
前記攪拌球体の比重は、3.0以上10.0以下にする請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載の複合型導電粒子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電粒子を製造する技術に係り、特に、粒子の表面に金属薄膜を形成する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
多数の電極を有する電子部品を、基板等に接続するための接続材料として、異方導電性接着剤(ACA)が使用されている。ACAはプリント配線基板、LCD用ガラス基板、フレキシブルプリント基板等の基板に、IC、LSI等の半導体素子やパッケージ等の被接続体を接続する際に、相対面する基板表面の基板側電極と半導体素子やパッケージの素子側電極との間を導通させ、その状態を維持しながら、隣接する電極間の絶縁を維持する電気的接続と、基板と被接続体との間の機械的固着を行う接続材料である。
【0003】
ACAに配合される導電粒子については、接続信頼性の向上および接続箇所の低抵抗化の観点から、様々な粒子が提案され、使用されている。例えば、錫、鉛、銀、アルミニウム、ニッケル等の金属粒子や、ガラス、セラミック等の無機微粒子や熱硬化性樹脂等の樹脂粒子に金属薄膜を被覆した粒子が文献に開示されている。
【0004】
特に粒度分布が狭く、ファインピッチ回路に対応できる事から、樹脂粒子の表面に無電解メッキ法によってNiメッキ層を形成し、更に、Niメッキ層の表面に、メッキ法によって、Auメッキ層を形成したものが多く使用されている。
【0005】
一方で、無電解メッキ法の問題点として、作業工程が煩雑、不純物の混入が不可避、めっき廃液の処理が必要等の欠点があり、それらの欠点を解決できる方法として、スパッタリングなどの真空蒸着法により粒子表面に金属を被覆させた導電粒子も検討されている。
【0006】
スパッタリング法による導電粒子の製造方法としては、金属薄膜を成膜する対象の粒子を「振動増幅手段」と同一容器に入れ、容器ごと粒子を振動させながらスパッタリングを行う方法(特開2004−321973号公報)や、円筒形の真空容器の中に多角形バレルを内蔵し、そのバレル内に粒子を導入し、バレルを回転させながらスパッタリングを行う方法(特開2004−250771号公報)などが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−321973号公報
【特許文献2】特開2004−250771号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、これらの先行例に示された方法では、ACAに使用されるような10μm以下の樹脂粒子の表面に、金、白金、銀等の接続信頼性に優れる金属層を形成しようとした場合には、スパッタリング処理中に粒子同士が凝集してしまい、粒子表面に均一な処理を行う事は非常に困難であった。
【0009】
また、スパッタ法によって金属層が表面に形成された粒子をACAに使用した場合は、前述の凝集部分が原因となってショートが多発してしまい、導電粒子の実用性に問題があった。また、スパッタ処理の際に凝集が発生しない場合であっても、粒子表面に形成された金属層の剥離が発生してしまい、導電性が低下するという問題点もあった。
本発明は、これらの問題点を解決するために、スパッタリング法によって粒子表面に均一に金属層を形成する事ができる導電粒子の製造方法に関するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために本発明は、成膜対象粒子と補助振動材とが配置された容器を振動させ、スパッタリングターゲットをスパッタし、前記成膜対象粒子の表面に表面金属層を形成して複合型導電粒子を製造する複合型導電粒子の製造方法であって、平均直径が1μm以上20μm以下の前記成膜対象粒子を用い、前記補助振動材には、直径Bが1mm以上10mm以下の攪拌球体を用い、前記容器の底面上に均一に積層された前記成膜対象粒子の積層層の層厚Aと前記攪拌球体の直径Bとの比の値は、0.1以上1.0以下(0.1≦A/B≦1)にし、前記容器の底面の面積Cに対する、前記容器に配置された前記攪拌球体の中心を通る平面で切断したときの断面積の合計値である専有面積Eの比(E/C)は、70%以上にする複合型導電粒子の製造方法である。
また、本発明は、前記成膜対象粒子は、樹脂粒子から成る粒子本体の表面に、ニッケル、銅、銀、金、白金、パラジウム、ルテニウムからなる群から選択される金属の下地層が一層以上形成された複合型導電粒子の製造方法である。
また、本発明は、前記容器を振動させる周波数は、15Hz以上65Hz以下の範囲にし、振幅は、±(0.5mm〜10mm)にする複合型導電粒子の製造方法である。
また、本発明は、前記攪拌球体の比重は、3.0以上10.0以下にする複合型導電粒子の製造方法である
【発明の効果】
【0011】
本発明は、成膜対象粒子と補助振動材としての攪拌球体の混合条件を規定する事で、従来の方法では困難であった成膜対象粒子の表面に均一に金属膜を形成させた導電粒子を得る事が可能になった。
【0012】
また、本発明は成膜対象粒子は容器内で振動されて十分に攪拌され、かつスパッタリング処理中に生成されてしまう凝集体も解砕する事ができるので、導電粒子を安定に製造することができる。
【0013】
また、容器内の成膜対象粒子の積層層の厚さを薄くさせる事になるので、容器の開口面積当たりのスパッタリング処理速度を増加させることができ、リードタイム面やコスト面でもメリットを出す事が可能になった。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に用いることができるスパッタリング装置の一例
図2】容器内の成膜対象粒子と攪拌球体の様子を説明するための図
図3】複合型導電粒子の構造を説明するための断面図
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1の符号10は、本発明に用いることが出来るスパッタリング装置を示している。
このスパッタリング装置10は、真空槽11を有しており、真空槽11の内部の上方には、アノード電極12に取り付けられたスパッタリングターゲット13が配置されている。真空槽11には、真空排気装置16が接続されており、真空排気装置16によって真空槽11内を真空排気して真空雰囲気にした後、スパッタリングガス導入装置17から真空槽11内にスパッタリングガスを導入し、電源18を起動して、スパッタリングターゲット13に電圧を印加すると、スパッタリングターゲット13がスパッタリングされ、スパッタリングターゲット13を構成する物質から成るスパッタリング粒子がスパッタリングターゲット13から飛び出す。図1の符号28は、スパッタリング粒子を示している。
【0016】
スパッタリングターゲット13の下方位置には、容器14が配置されており、容器14の内部には、成膜対象粒子21と、補助振動材とが配置されている。
補助振動材は、直径が1mm以上10mm以下の球形の攪拌球体(ボール)22であり、攪拌球体22は容器14内に、容器14の平坦な底面と接触して複数個が互いに離間して配置できる大きさである。
【0017】
また、攪拌球体22は、金属又はセラミックスの材料が、内部稠密にして球体に成形されて構成されているのに対し、成膜対象粒子21は、その平均直径が1μm以上20μm以下の例えば樹脂粒子であり、表面に樹脂が露出されている他、表面に金属膜から成る下地層が形成された樹脂粒子等も含まれる。従って、攪拌球体22は成膜対象粒子21よりも大きさが大きい。
【0018】
攪拌球体22と成膜対象粒子21とを容器14の底面上に配置すると、攪拌球体22は底面と接触して配置され、成膜対象粒子21は、一層又は二層以上に積層され、積層層19を形成して配置される。
【0019】
攪拌球体22と成膜対象粒子21とを容器14の底面上に配置し、容器14の底面から成膜対象粒子21の積層層19の表面までの高さを均一にしたとき、即ち、積層層19の厚さを均一にしたときの積層層19の厚さである層厚Aと、底面から攪拌球体22の頂上までの距離、即ち攪拌球体22の直径Bとの間には、下記(1)式、
0.1≦層厚A/直径B≦1 ……(1)
が成立するように、成膜対象粒子21と攪拌球体22との混合量の比を決めて、両方を容器14に配置する。
【0020】
攪拌球体22は、成膜対象粒子21と混合して容器14の底面上に配置したときに、攪拌球体22同士は離間して位置することができる量が配置されており、且つ、(1)式が成立する比率で配置されているので、成膜対象粒子21は、攪拌球体22の間に位置している。その様子を、図2に示す。攪拌球体22は下端を底面と接触させ、頂上を積層層19から露出させている。
【0021】
容器14の開口部分はスパッタリングターゲット13に向けられており、スパッタリング粒子28は、容器14の内部に入り、成膜対象粒子21と攪拌球体22とに入射する。
容器14は、振動装置15に取り付けられており、振動装置15が動作すると、容器14が上下に振動するようにされており、容器14の上下振動に伴い、成膜対象粒子21と攪拌球体22とはスパッタリングガスが導入された真空雰囲気中で上下に振動する。
【0022】
攪拌球体22は、セラミックスや金属の中から、その比重が3以上10以下の材料を選択しておき、また、その直径は1mm以上10mm以下で選択しておき、成膜対象粒子21が攪拌球体22に衝突すると弾かれるようにする。
【0023】
振動の周波数を15Hz以上65Hz以下の設定周波数範囲に含まれる一定値に固定した周波数、または、設定周波数範囲の中で変化させる周波数にし、振動の振幅は±(0.5〜10)mmにし、容器14の底面を水平にし、積層層19の層厚Aに対して攪拌球体22の直径Bは(1)式を満たす値にして成膜対象粒子21と攪拌球体22とを容器14と一緒に上下に振動させると、成膜対象粒子21は攪拌球体22に衝突して、攪拌球体22が成膜対象粒子21を横方向に移動させ、成膜対象粒子21を攪拌するので、成膜対象粒子21と攪拌球体22とは混合される。
【0024】
また、上下方向の振動により、横方向の成分を持つ力が印加される攪拌球体22は、上下に振動しながら不規則に横方向に移動するので、成膜対象粒子21は攪拌球体22によって攪拌され、積層層19の表面に位置する成膜対象粒子21は交代される。
【0025】
また、成膜対象粒子21は、振動によって回転し、スパッタリングターゲット13に向く面が変わり、その結果、各成膜対象粒子21の表面にスパッタリング粒子28が到達できるようになり、各成膜対象粒子21の表面に、均一な薄膜が形成される。
【0026】
攪拌球体22が少なすぎると、十分な攪拌が行えないので、本発明では、攪拌球体22を、その中心を通る平面で切断したときに得られる円形の切断面の面積の合計値を、攪拌球体22が底面上で占有する攪拌球体面積Eとすると、攪拌球体面積E(m2)は、容器14の底面積C(m2)の70%以上(E/C≧70%)になるようにしている。残りの面積(=C−E)は、成膜対象粒子21が占有する面積であると考えることができる。
【0027】
ここでは、スパッタリングターゲット13は金属であり、金属のスパッタリング粒子28により、成膜対象粒子21の表面に、所定膜厚の表面金属層が形成された複合型導電粒子が得られる。
【0028】
図3は、複合型導電粒子20の断面図であり、樹脂粒子である粒子本体26の表面に、金属薄膜である下地層27が形成された成膜対象粒子21の表面に、金属薄膜である表面金属層24が形成されている。
【0029】
複合型導電粒子20が形成されると、スパッタリングターゲット13に対する電圧印加と、振動装置15の動作とが停止され、複合型導電粒子20が配置された容器14は、真空槽11の外部に搬出される。
【実施例】
【0030】
上記スパッタリング装置10に、銀のスパッタリングターゲット13を配置し、容器14に、樹脂粒子である粒子本体(φ5μm)26の表面に、無電解Niメッキ層から成る下地層27が露出する成膜対象粒子21と、攪拌球体22とを配置し、振幅±2mm、振動数30Hzで容器14を振動させながら、スパッタリングガスとしてArを導入し、排気バルブを調整して圧力を2.0Paとした。スパッタリングターゲット13に直流電圧を印加し、300Wの電力でスパッタリングし、成膜対象粒子21の表面に、0.1μmの厚みの銀薄膜から成る表面金属層24を形成し、複合型導電粒子20を作成し、倍率1000倍のSEM観察により「凝集」と「被膜剥離」の評価を行った。
【0031】
用いた攪拌球体22を替えて、実施例1〜14と、比較例1〜5の表面金属層24を形成し、評価を行った。
攪拌球体22の直径、材質(ステンレス、アルミナ、又はジルコニア)、比重、比率(層厚A/直径B)、面積比率と、評価結果を下記表1〜3に記載する。
【0032】
【表1】
【0033】
【表2】
【0034】
【表3】
【0035】
表中、「凝集」の評価は、粒子中に20μm以上の凝集体がある場合は×とし、20μm以上の凝集体が無い場合を○とした。「被膜剥離」は、金属被膜の剥離した粒子が粒子数の5%より少ない場合を○とし、5%以上の場合を×とした。
【0036】
実施例1〜6と比較例1〜2より、0.1≦層厚A/直径B≦1(A:成膜対象粒子の積層層の厚さである層厚、B:攪拌球体の直径)を満たす条件では、「凝集」と「被膜剥離」が少ない良好な処理粒子が得られる事が判る。満たさない条件では、「凝集」または「被膜剥離」が多くなってしまう。
【0037】
実施例7〜9と比較例3〜4より、攪拌球体22は直径1mm以上10mm以下の条件が良い事が判る。実施例1〜14より、攪拌球体22の材質は比重3〜10のセラミックまたは金属が良い事が判る。
実施例12〜14と比較例5より、粒子の分布領域(容器内)に対するボールの面積比率が70%以上の条件が良い事が判る。
【0038】
なお、上記例では、容器14を上下方向に振動させたが、上下方向の振動成分に加え、横方向振動成分を有する振動で容器14を振動させてもよい。
また、上記例では、成膜対象粒子21は、樹脂粒子である粒子本体26に、Ni薄膜から成る下地層27が形成されていて、銀薄膜である表面金属層24を形成した。本発明では、下地層27と表面金属層24とが異なる金属であっても同じ金属であってもよい。
また、下地層27を有さず、粒子本体26の表面が露出する成膜対象粒子21も本発明に用いることができる。粒子本体26は、樹脂粒子に限定されず、金属粒子やセラミックス粒子も含まれる。
【0039】
また、上記スパッタリングターゲット13には銀を用いて銀薄膜から成る表面金属層24を形成したが、ニッケル、銅、金、白金、パラジウム、又は、ルテニウム等の金属のスパッタリングターゲットを用い、ニッケル薄膜、銅薄膜、金薄膜、白金薄膜、パラジウム薄膜、又は、ルテニウム薄膜等の金属薄膜から成る表面金属層24を形成することができる。
また、スパッタリングターゲット13と表面金属層24は、ニッケル、銅、銀、金、白金、パラジウム、又は、ルテニウムである主金属を50%よりも多く含有していれば、主金属とは異なる添加物を含有してあってもよい。
【符号の説明】
【0040】
14……容器
21……成膜対象粒子
22……攪拌球体
24……表面金属層
図1
図2
図3