特許第6199429号(P6199429)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6199429エレベータ制御装置及びエレベータ制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6199429
(24)【登録日】2017年9月1日
(45)【発行日】2017年9月20日
(54)【発明の名称】エレベータ制御装置及びエレベータ制御方法
(51)【国際特許分類】
   B66B 5/02 20060101AFI20170911BHJP
   B66B 1/06 20060101ALI20170911BHJP
【FI】
   B66B5/02 L
   B66B1/06 K
【請求項の数】9
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-52184(P2016-52184)
(22)【出願日】2016年3月16日
(65)【公開番号】特開2017-165542(P2017-165542A)
(43)【公開日】2017年9月21日
【審査請求日】2016年3月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】特許業務法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野島 秀一
【審査官】 大塚 多佳子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−246095(JP,A)
【文献】 特開2014−172761(JP,A)
【文献】 特開2014−051388(JP,A)
【文献】 特開2014−172705(JP,A)
【文献】 特開2014−172728(JP,A)
【文献】 特開2015−020859(JP,A)
【文献】 特開2001−240336(JP,A)
【文献】 特開2004−043078(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 5/02
B66B 1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
充電された電力を供給可能に構成されるバッテリを利用して停電時にエレベータの運転を制御するエレベータ制御装置において、
前記エレベータ制御装置に電力を供給することによって減少するバッテリの充電残量を検出する第1の検出手段と、
前記エレベータを利用する利用者が乗りかごに乗車する乗場を含む画像を取得する取得手段と、
前記取得された画像に基づいて、前記乗場から乗りかごに乗車すると予測される利用者の人数を検出する第2の検出手段と、
前記検出されたバッテリの充電残量及び前記検出された利用者の人数に基づいて、前記エレベータの運転速度を制御する制御手段と
を具備し、
前記制御手段は、
前記検出されたバッテリの充電残量が予め定められた値以上である場合、前記検出された利用者の人数に応じた第1の運転速度を前記エレベータの運転速度として決定し、
前記決定されたエレベータの運転速度に応じた電力を、前記バッテリから供給される電力を受けて巻上機を駆動する駆動装置に供給する
ことを特徴とするエレベータ制御装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記検出されたバッテリの充電残量が予め定められた値未満である場合、前記第1の運転速度よりも遅い第2の運転速度を前記エレベータの運転速度として決定することを特徴とする請求項記載のエレベータ制御装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記エレベータの回生運転時には前記第2の運転速度よりも早い第3の運転速度を前記エレベータの運転速度として決定することを特徴とする請求項記載のエレベータ制御装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記検出された利用者の人数が予め定められた値以下である場合、前記バッテリから前記駆動装置への電力の供給を遮断することを特徴とする請求項記載のエレベータ制御装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記検出されたバッテリの充電残量が予め定められた値未満である場合、前記乗場で待機する利用者に当該バッテリの充電残量が少ないことを通知することを特徴とする請求項1記載のエレベータ制御装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前記バッテリから前記乗場への電力の供給を遮断または抑制することによって当該乗場で待機する利用者に当該バッテリの充電残量が少ないことを通知することを特徴とする請求項記載のエレベータ制御装置。
【請求項7】
前記制御手段は、
前記検出されたバッテリの充電残量が予め定められた値未満である場合、前記検出された利用者の人数に基づいて、前記エレベータの回生運転を実施可能であるかを判定し、
前記エレベータの回生運転を実施可能であると判定された場合、前記利用者を乗車させるように前記エレベータの運転を制御する
ことを特徴とする請求項1記載のエレベータ制御装置。
【請求項8】
前記制御手段は、前記バッテリの劣化に対する影響を抑制するように前記バッテリの充放電量を制御することを特徴とする請求項1記載のエレベータ制御装置。
【請求項9】
充電された電力を供給可能に構成されるバッテリを利用して停電時にエレベータの運転を制御するエレベータ制御装置が実行するエレベータ制御方法であって、
前記エレベータ制御装置に電力を供給することによって減少するバッテリの充電残量を検出するステップと、
前記エレベータを利用する利用者が乗りかごに乗車する乗場を含む画像を取得するステップと、
前記取得された画像に基づいて、前記乗場から乗りかごに乗車すると予測される利用者の人数を検出するステップと、
前記検出されたバッテリの充電残量及び前記検出された利用者の人数に基づいて、前記エレベータの運転速度を制御するステップと
を具備し、
前記制御するステップは、
前記検出されたバッテリの充電残用が予め定められた値以上である場合、前記検出された利用者の人数に応じた第1の運転速度を前記エレベータの運転速度として決定するステップと、
前記決定されたエレベータの運転速度に応じた電力を、前記バッテリから供給される電力を受けて巻上機を駆動する駆動装置に供給するステップと
を含む
ことを特徴とするエレベータ制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、エレベータ制御装置及びエレベータ制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、エレベータでは、巻上機(電動機)の回転軸に巻き架けられたロープの両端に乗りかご及びカウンタウェイトが吊り下げられ、当該巻上機の回転によりロープを介して乗りかごがカウンタウェイトと反対方向につるべ式に昇降動作する。なお、巻上機の駆動制御等は、エレベータが設けられているビルの機械室等に設置されたエレベータ制御装置によって行われる。
【0003】
通常、エレベータ制御装置は、商用電源(三相交流電源)から供給される所要の電力によって動作する。しかしながら、停電時には商用電源からの電力供給が停止される。このため、停電時にエレベータの運転を継続するためには、停電時であってもエレベータ制御装置に電力を供給する仕組みが必要である。
【0004】
ここで、例えば昇降路の下方向に動く乗りかごの荷重がカウンタウェイトより重い場合、上記した巻上機が発電機として機能して電力が生じる。一方、昇降路の上方向に動く乗りかごの荷重がカウンタウェイトよりも軽い場合も同様に電力が生じる。このように巻上機が発電機として機能することにより生じる電力は回生電力と称され、当該回生電力が生じるようなエレベータの運転は回生運転と称される。
【0005】
近年のエレベータでは、このような回生電力を利用してバッテリを充電しておき、例えば停電時等に当該バッテリから電力を供給する構成が採用されている。なお、バッテリは、商用電源からの電力供給が可能な通常運転時に当該商用電源から供給される電力を利用して充電することも可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2015−037986号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、上記した停電時にバッテリから供給される電力によってエレベータを運転する場合を想定する。この場合、バッテリから供給可能な電力には限りがあるため、停電時においては消費電力を抑制するように例えばエレベータ(乗りかご)を低速で移動させる運転(以下、低速運転と表記)が行われるのが一般的である。
【0008】
この低速運転では、エレベータの運転状況等にかかわらず、予め設定された一定の速度(低速)でエレベータが運転される。しかしながら、エレベータを利用する利用者の利便性を向上させるためには、停電時であっても通常運転時と同程度の速度でエレベータを運転することが望まれている。
【0009】
また、上記した停電時における低速運転は、停電後の予め設定された時間帯にのみ実施される場合が多い。このため、停電時であっても継続的にエレベータの運転を実施することが望まれている。
【0010】
すなわち、停電時のエレベータの運転に関しては、例えば通常運転時と同程度の速度でエレベータを運転することによる利便性の向上と、継続的なエレベータの運転を実施する(つまり、エレベータの長時間継続運転を可能にする)ための省電力化とを両立する仕組みが必要である。
【0011】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、利便性の向上と省電力化との双方を実現することが可能なエレベータ制御装置及びエレベータ制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
実施形態によれば、充電された電力を供給可能に構成されるバッテリを利用して停電時にエレベータの運転を制御するエレベータ制御装置が提供される。前記エレベータ制御装置は、第1の検出手段と、取得手段と、第2の検出手段と、制御手段とを具備する。前記第1の検出手段は、前記エレベータ制御装置に電力を供給することによって減少するバッテリの充電残量を検出する。前記取得手段は、前記エレベータを利用する利用者が乗りかごに乗車する乗場を含む画像を取得する。前記第2の検出手段は、前記取得された画像に基づいて、前記乗場から乗りかごに乗車すると予測される利用者の人数を検出する。前記制御手段は、前記検出されたバッテリの充電残量及び前記検出された利用者の人数に基づいて、前記エレベータの運転速度を制御する。前記制御手段は、前記検出されたバッテリの充電残量が予め定められた値以上である場合、前記検出された利用者の人数に応じた第1の運転速度を前記エレベータの運転速度として決定し、前記決定されたエレベータの運転速度に応じた電力を、前記バッテリから供給される電力を受けて巻上機を駆動する駆動装置に供給する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施形態に係るエレベータ制御装置を備えるエレベータの構成の一例を示す図。
図2】エレベータ制御装置に備えられる制御マイコンの機能構成の一例を示すブロック図。
図3】本実施形態に係るエレベータ制御装置の処理手順を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、実施形態について説明する。
【0015】
図1は、本実施形態に係るエレベータ制御装置を備えるエレベータの構成を示す。図1に示すエレベータは、駆動装置10、バッテリ装置20及びエレベータ制御装置30を備える。
【0016】
駆動装置10は、コンバータ11、平滑コンデンサ12、インバータ13を有し、エレベータ制御装置30の駆動指示に従って巻上機2の駆動に必要な電力を供給する。
【0017】
なお、コンバータ11は、商用電源1から供給される交流電圧を直流電圧に変換する。商用電源1は、三相の交流電源からなる。平滑コンデンサ12は、コンバータ11によって変換された直流電流のリプルを平滑化する。インバータ13は、コンバータ11から平滑コンデンサ12を介して与えられた直流電圧をPWM(Pulse Width Modulation)制御により任意の周波数、電圧値の交流電圧に変換し、これを駆動電力として巻上機2に供給する。
【0018】
巻上機2は、同期電動機からなり、駆動装置10からの電力供給によって回転する。巻上機2にはシーブ(図示せず)を介してロープ3が巻回されており、当該ロープ3の一端には乗りかご4、他端にはカウンタウェイト5が連結されている。このような巻上機2が回転することによって、ロープ3を介して乗りかご4とカウンタウェイト5とがつるべ式に昇降動作する。
【0019】
バッテリ装置20は、駆動装置10を介して得られる商用電源1からの電力及びエレベータの回生運転時に生じた電力を蓄えるための蓄電装置である。また、バッテリ装置20は、蓄えられた電力をエレベータの力行運転時に駆動装置10に供給する。また、バッテリ装置20は、当該バッテリ装置20に蓄えられた電力を、エレベータ制御装置30にも供給可能に構成されている。
【0020】
なお、回生運転とは、例えば乗りかご4(及び当該乗りかご4に乗車している利用者)の荷重がカウンタウェイト5よりも重い状態で当該乗りかご4を下降方向に移動させる、または乗りかご4の荷重がカウンタウェイト5よりも軽い状態で当該乗りかご4を上昇方向に移動させるような電力を必要としない運転である。一方、力行運転とは、例えば乗りかご4がカウンタウェイト5よりも重い状態で当該乗りかご4を上昇方向に移動させる、または乗りかご4がカウンタウェイト5よりも軽い状態で当該乗りかご4を下降方向に移動させるような電力を必要とする運転である。
【0021】
バッテリ装置20は、AC/DC変換器21、DC/DC変換器22、DC/DC変換器23及びバッテリ24を備える。
【0022】
AC/DC変換器21のAC側は、エレベータ制御装置30に接続されている。一方、AC/DC変換器21のDC側は、バッテリ装置20の直流母線に接続されている。このAC/DC変換器21は、AC(交流電流)からDC(直流電流)への変換機能と、DC(直流電流)からAC(交流電流)への変換機能を有する。
【0023】
このようなAC/DC変換器21によれば、バッテリ装置20からエレベータ制御装置30に対して所要の電力を供給することができる。この場合、バッテリ装置20の電力(直流電流)をAC/DC変換器21で電圧の異なる交流電流に変換してエレベータ制御装置30に与えている。
【0024】
DC/DC変換器22は、バッテリ24の前段に設けられており、DC(直流電流)から電圧の異なるDC(直流電流)への変換機能を有する。本実施形態において、回生運転時に生じた電力(以下、回生電力と表記)は、駆動装置10からバッテリ24に蓄積(供給)される。その際、DC/DC変換器22でバッテリ24の規格電圧に変換してバッテリ24に蓄積する。また、DC/DC変換器22は、エレベータの力行運転時にバッテリ24の電力を駆動装置10に供給する際に、所定の電圧に変換する。
【0025】
DC/DC変換器23は、エレベータ制御装置30(の非常用電源装置)とバッテリ装置20の直流母線との間に設けられ、DC(直流電流)から電圧の異なるDC(直流電流)への変換機能を有する。このDC/DC変換器23は、駆動装置10で得られた回生電力またはバッテリ24の電力をエレベータ制御装置30の非常用電源として利用する場合に用いられる。
【0026】
バッテリ24は、上記したようにエレベータの回生運転によって生じる回生電力及び商用電源から供給される電力を利用して充電されるように構成されている。また、バッテリ24は、当該バッテリ24に充電された電力を、駆動装置10及びエレベータ制御装置30にを供給可能なように構成されている。バッテリ24は、大容量かつ高性能な充放電機能を有し、例えばリチウムイオン電池等によって構成される。
【0027】
エレベータ制御装置30は、例えば制御盤等と称され、エレベータ全体の制御を行う。エレベータ制御装置30は、制御電源トランス31、非常用電源装置32、制御電源装置33、照明電源装置34及び制御マイコン35を備える。
【0028】
制御電源トランス31は、一次側に2種類の異なる電圧を入力可能な構成を有する。この制御電源トランス31の一次側の一方に商用電源1が接続され、一次側の他方にバッテリ装置20のAC/DC変換器21が接続されており、これらの電力が変圧されて二次側に接続された制御電源装置33及び照明電源装置34に与えられる。なお、バッテリ装置20(バッテリ24)から供給される電力の電圧値V2は商用電源1から供給される電力の電圧値V1よりも低く設定されている(つまり、V2<V1)。
【0029】
非常用電源装置32は、非常灯やインターホン等の非常時に用いられる機器に対して所要の電力を供給する装置であり、電力供給回路等を含む。制御電源装置33は、制御マイコン35に対して所要の電力を供給する装置であり、電力供給回路等を含む。照明電源装置34は、乗りかご4内の照明及び空調機器に対して所要の電力を供給する装置であり、電力供給回路等を含む。
【0030】
これらのうち、制御電源装置33及び照明電源装置34は、制御電源トランス31にて変圧された電力を受けて動作し、非常用電源装置32についてはバッテリ装置20からDC/DC変換器23を介して直接電力を受けて動作する。
【0031】
制御マイコン35は、エレベータ運転制御用のコンピュータである。この制御マイコン35は、駆動装置10の駆動制御やバッテリ装置20の充放電制御等、エレベータの運転に関する全体制御を行う。
【0032】
また、図中のSW1〜4は、電力供給/遮断切り替え用のスイッチである。SW1は、商用電源1とエレベータ制御装置30の電力入力側である制御電源トランス31との間に接続された三相の電力供給ラインに設けられている。このSW1がONしている場合、商用電源1からエレベータ制御装置30に対して電力が供給される。
【0033】
SW2は、商用電源1と駆動装置10の電力入力側であるコンバータ11との間に接続された三相の電力供給ラインに設けられている。このSW2がONしている場合、商用電源1から駆動装置10に対して電力が供給される。
【0034】
SW3は、駆動装置10及びバッテリ装置20の直流母線間に接続された2本の電力供給ラインに設けられている。このSW3がONしている場合、駆動装置10からバッテリ装置20に対して電力が供給され、また、バッテリ装置20から駆動装置10に対して電力が供給される。
【0035】
SW4は、バッテリ装置20の電力出力側であるAC/DC変換器21とエレベータ制御装置30の電力入力側である制御電源トランス31に接続された三相の電力供給ラインに設けられている。このSW4がONしている場合、バッテリ装置20からエレベータ制御装置30に対して電力が供給され、また、エレベータ制御装置30を通じてバッテリ装置20に対して電力が供給される。
【0036】
このような構成によれば、バッテリ装置20は、駆動装置10及びエレベータ制御装置30に対して電力をやり取り可能に接続される。したがって、通常運転時に駆動装置10で得られた回生電力や商用電源1から供給される電力をバッテリ装置20に蓄え、当該蓄えた電力を停電時等に駆動装置10及びエレベータ制御装置30に与えてエレベータの運転に利用することができる。
【0037】
エレベータ制御装置30に備えられる制御マイコン35には、例えば停電が発生した場合等に、バッテリ24によって供給される電力を利用してエレベータ(乗りかご4)の運転を継続するための機能が備えられている。
【0038】
また、本実施形態において、エレベータを利用する利用者が乗りかご4に乗車する各階の乗場(つまり、乗りかご4が着床する乗場)には、当該乗場を含む画像を撮影する機能を有するカメラ40(画像センサ)が設置されている。このカメラ40は、エレベータ制御装置30(に備えられる制御マイコン35)と接続されている。
【0039】
図2は、図1に示す制御マイコン35の機能構成を示すブロック図である。図2に示すように、制御マイコン35は、停電検出部351、バッテリ残量検出部352、画像取得部353、格納部354及び運転制御部355を含む。
【0040】
停電検出部351は、商用電源1と駆動装置10の電力入力側であるコンバータ11との間に接続された三相の電力供給ラインに流れる電流の有無から停電状態(停電の発生)を検出する。
【0041】
ここで、上記したように停電時においては、バッテリ装置20に備えられるバッテリ24から供給される電力を利用してエレベータが運転される。この場合、バッテリ24の充電残量は、例えば当該バッテリ24から駆動装置10及びエレベータ制御装置30に電力が供給されることによって減少する。
【0042】
バッテリ残量検出部352は、このようなバッテリ24の充電残量(以下、バッテリ残量と表記)を検出する。なお、バッテリ残量は、例えばバッテリ24において測定される端子電圧の電圧レベルから検出(算出)することができる。
【0043】
画像取得部353は、上記したカメラ40によって撮影された画像(乗場を含む画像)をリアルタイムに順次取得する。
【0044】
格納部354には、例えば停電時におけるエレベータの運転に関する設定情報が予め格納されている。設定情報には、停電時におけるエレベータの運転速度等に関する情報が含まれる。
【0045】
運転制御部355は、駆動装置10の駆動を制御することによりエレベータの運転を制御する。運転制御部355は、解析部355a及び制御部355bを含む。
【0046】
解析部355aは、画像取得部353によって取得された画像を解析する。解析部355aは、画像の解析結果に基づいて、当該画像を撮影したカメラ40が設けられている乗場で待機する利用者の人数を検出する。この解析部355aによって検出される利用者の人数は、例えば乗りかご4に乗車すると予測される利用者の人数である。
【0047】
制御部355bは、バッテリ残量検出352によって検出されたバッテリ残量及び解析部355aによって検出された利用者の人数に基づいて、エレベータ(乗りかご4)の運転速度を制御する。この場合、制御部355bは、バッテリの残量及び利用者の人数等の状況(エレベータの運転状況)に応じて、エレベータの運転前に例えば運転速度の設定を変更する。エレベータの運転は、このように設定された運転速度に基づいて行われる。
【0048】
以下、図3のフローチャートを参照して、本実施形態に係るエレベータ制御装置30(に備えられる制御マイコン35)の処理手順について説明する。
【0049】
ここでは、停電が発生した場合の処理について説明する。すなわち、図3に示す処理は、上記した停電検出部351によって停電状態が検出された場合に実行される。
【0050】
上記したように停電状態が検出された場合、バッテリ残量検出部352は、バッテリ装置20に備えられるバッテリ24の現在の充電残量(バッテリ残量)を検出する(ステップS1)。
【0051】
次に、制御部335bは、ステップS1において検出されたバッテリ残量(値)が予め定められた値(以下、閾値と表記)以上であるか否かを判定する(ステップS2)。なお、ステップS2における閾値は、例えば設定情報として格納部354に格納されているものとする。
【0052】
バッテリ残量が閾値以上であると判定された場合(ステップS2のYES)、画像取得部353は、乗場に設けられているカメラ40によって撮影された画像を当該カメラ40から取得する(ステップS3)。なお、画像取得部353によって取得される画像には、乗りかご4に乗車するために乗場で待機する利用者等が含まれる。
【0053】
解析部355aは、ステップS3において取得された画像を解析することによって、当該画像に含まれる人物(利用者)を抽出する。解析部355aは、画像から抽出された人物に基づいて、乗場から乗りかご4に乗車すると予測される利用者の人数(以下、乗車予測人数と表記)を検出する(ステップS4)。
【0054】
なお、ステップS3においては各階の乗場に設けられたカメラ40の各々から画像が取得され、乗車予測人数は、ステップS4において当該乗場毎に検出されるものとする。
【0055】
ここで、利用者が乗りかご4に乗車する各階の乗場には、乗場呼び登録装置が設置されている。乗場呼び登録装置は、利用者が乗りかご4に乗車する乗場の位置(登録階)を登録するための乗場呼びボタンを含む。乗場において乗場呼びボタンを押下する操作が利用者によって行われた場合、利用者によって登録された当該乗場の位置及び行先方向(上方向/下方向)を表す情報(以下、乗場呼び登録情報と表記)が乗場呼び登録装置からエレベータ制御装置30に出力される。なお、乗場で待機する利用者を乗りかご4に乗車させる場合、運転制御部355は、この乗場呼び登録情報に基づいてエレベータの運転を制御する。
【0056】
なお、上記したステップS3における乗車予測人数の検出には、上記した乗場呼び登録装置から出力される乗場呼び登録情報が利用されるものとする。具体的には、例えば各階の乗場のうちの1つの乗場(以下、対象乗場と表記)に設けられたカメラ40によって撮影された画像から複数人の人物が抽出された場合には、当該人物の数が乗車予測人数として検出されるが、当該対象乗場に設置されている乗場呼び登録装置から乗場呼び登録情報が出力されていない場合には、これらの人物は乗りかご4に乗車する意思(以下、乗車意思と表記)がないものと推測することができる。このような場合、対象乗場における乗車予測人数としては0が検出される。一方、対象乗場に設置されている乗場呼び登録装置から乗場呼び登録情報が出力されている場合には、画像から抽出された人物には乗車意思があるものと推測することができるため、当該人物の数が乗車予測人数として検出される。
【0057】
ここでは、乗場呼び登録情報に基づいて乗場に存在する人物の乗車意思を推測するものとして説明したが、例えば乗場を含む画像に基づいて当該乗場に存在する人物の乗車意思を推測するような構成としてもよい。具体的には、乗場に存在する人物と当該乗場から乗りかご4に乗車する際に開閉する乗場ドアとの距離や当該人物の向き等に基づいて当該人物の乗車意思を推測してもよい。更に、カメラ40が動画像を撮影可能な場合には、乗場に存在する人物の動きに基づいて当該人物の乗車意思を推測してもよい。
【0058】
次に、制御部355bは、ステップS4において検出された乗車予測人数及び格納部354に格納されている設定情報に基づいて、エレベータ(乗りかご4)の運転速度を決定する(ステップS5)。
【0059】
ここで、格納部354に格納されている設定情報には、例えば乗車予測人数に応じた複数のエレベータの運転速度が予め定義されているものとする。このような設定情報によれば、制御部355bは、当該設定情報において定義されているステップS4において検出された乗車予測人数に応じた運転速度(第1の運転速度)をエレベータの運転速度として決定することができる。
【0060】
具体的には、例えば乗車予測人数が多い場合には、利用者の利便性を優先して通常運転時と同程度の運転速度(以下、定格速度と表記)がエレベータの運転速度として決定される。一方、例えば乗車予測人数が少ない場合には、定格速度よりも遅い運転速度がエレベータの運転速度として決定される。このように、エレベータの運転速度は、乗車予測人数に応じて段階的に変更されるものとする。なお、乗車予測人数が多いことまたは少ないことは、乗車予測人数が予め定められた閾値以上であるか等によって判定されるものとする。
【0061】
ここでは、乗車予測人数からエレベータの運転速度が決定されるものとして説明したが、運転速度は、例えば乗車予測人数に含まれる各利用者が待機している乗場の位置(階数)等を考慮して決定されても構わない。例えば停電時にはビル等の建物から外に退避することがあるが、このような場合において、当該ビルの上層階の乗場で多くの利用者が待機している場合には定格速度がエレベータの運転速度として決定されることができる。一方、多くの利用者が待機している場合であっても当該利用者が待機している乗場が比較的下層階である場合には、当該定格速度よりも遅い運転速度がエレベータの運転速度として決定されるような構成としてもよい。
【0062】
次に、制御部355bは、ステップS5において決定されたエレベータの運転速度で乗りかご4が移動するように、エレベータの運転を制御する(ステップS6)。この場合、ステップS5において決定されたエレベータの運転速度がエレベータの運転前に設定されることによって、エレベータの運転時には当該設定された運転速度に応じた電力がバッテリ24から駆動装置10に供給される。駆動装置10がこの電力に基づいて巻上機2を駆動することによって、エレベータ(乗りかご4)は、ステップS5において決定された運転速度で運転される。
【0063】
一方、ステップS2においてバッテリ残量が閾値以上でない(つまり、閾値未満である)と判定された場合(ステップS2のNO)、制御部355bは、エレベータの低速運転を実施する(ステップS7)。低速運転においては、制御部355bは、バッテリ残量の枯渇を回避するために、上記したステップS5において決定されるエレベータの運転速度(例えば、定格速度等)よりも遅い運転速度(第2の運転速度)で乗りかご4が移動するように、エレベータの運転を制御する。
【0064】
この場合、低速運転におけるエレベータの運転速度がエレベータの運転前に設定されることによって、エレベータの運転時には当該設定された運転速度に応じた電力がバッテリ24から駆動装置10に供給される。駆動装置10がこの電力に基づいて巻上機2を駆動することによって、エレベータ(乗りかご4)は、低速運転における運転速度で運転される。これによれば、ステップS6においてバッテリ24から駆動装置10に供給される電力と比較して、より少ない電力でエレベータの運転を実施することができる。
【0065】
なお、上記したステップS5において乗車予測人数が少ない場合に決定される運転速度は、低速運転における運転速度と同程度の速度であってもよいし、当該運転速度よりも早い速度であってもよい。
【0066】
また、本実施形態においてはバッテリ残量が閾値未満である場合には上記したように低速運転を実施するが、回生運転時にはバッテリ24から電力を供給する必要がない。このため、バッテリ残量が閾値未満である場合であっても回生運転時には例えば定格速度でエレベータを運転する構成としてもよい。
【0067】
更に、バッテリ残量が閾値未満である場合には、回生運転が実施可能な場合にのみ乗場呼び登録情報に応答するようにエレベータを運転するようにしてもよい。換言すれば、乗りかご4を回生運転方向に移動させる乗場呼び登録情報にのみ応答して乗りかご4を移動させ、利用者を乗車させるようにしてもよい。この場合、電力消費の抑制のため、力行運転となる乗場呼び登録情報については応答しないものとする。なお、回生運転を実施可能か否かについては、各階の乗場の乗車予測人数(つまり、当該乗場において乗車する利用者の人数)及び乗場呼び登録情報によって示される乗場の位置及び行先方向から判定することが可能である。
【0068】
また、バッテリ残量が閾値未満である場合には、各階の乗場の利用者にバッテリ残量が少ないことを通知するようにしてもよい。停電時には上記した駆動装置10及びエレベータ制御装置30以外に乗場(乗場呼び登録装置等)に対してもバッテリ24から電力が供給される。このため、例えば乗場への電力の供給を遮断または抑制した場合には、乗場に設けられている照明を消灯または減灯させることができる。これによれば、バッテリ残量が閾値未満である場合に、乗場で待機する利用者にバッテリ残量が少ないことを通知することができる。
【0069】
上記した図3に示す処理は停電時に実行されるため、例えばバッテリ残量が閾値以上である場合であっても省電力化を図ることは重要である。このため、乗車予測人数が0である(または少ない)場合には、例えばエレベータ制御装置30(に備えられる制御マイコン35)以外の駆動装置10及び乗場等への電力の供給を遮断する構成としてもよい。
【0070】
なお、上記した図3に示す処理は、例えば予め定められた数(例えば、1つ)の乗場呼び登録情報に応答してエレベータ(乗りかご4)が運転される度に実行されてもよいし、予め定められた時間毎に実行されても構わない。
【0071】
また、図3においてはエレベータの運転速度が制御されるものとして説明したが、当該運転速度に加えて、例えばエレベータの加減速度が制御される構成としてもよい。
【0072】
上記したように本実施形態においては、停電時におけるエレベータの運転時に、エレベータ制御装置30に電力を供給することによって減少するバッテリ残量(バッテリ24の充電残量)を検出し、乗場を含む画像に基づいて乗車予測人数(乗場から乗りかご4に乗車すると予測される利用者の人数)を検出し、当該バッテリ残量及び当該乗車予測人数に基づいてエレベータの運転速度を制御する(つまり、停電時における運転速度の設定を可変とする)。
【0073】
この場合、本実施形態においては、バッテリ残量及び乗車予測人数に基づいてエレベータの運転速度を決定し、当該エレベータの運転速度に応じた電力がバッテリ24から巻上機2を駆動する駆動装置10に供給される。具体的には、バッテリ残量が予め定められた値以上である場合には、乗車予測人数に応じた運転速度(第1の運転速度)がエレベータの運転速度として決定される。一方、バッテリ残量が予め定められた値未満である場合には、乗車予測人数に応じて決定される運転速度よりも遅い運転速度(第2の運転速度)がエレベータの運転速度として決定される。
【0074】
本実施形態においては、このような構成により、乗場で待機する利用者の人数の変化等に基づくエレベータの用途に応じて停電時であってもエレベータを高速運転をすることができると共に、バッテリ残量が少ない場合には低速運転を実施することによりエレベータの長時間継続運転を可能とする。
【0075】
すなわち、本実施形態においては、バッテリ残量及び乗車予測人数に基づく最適制御により、運転効率のよい運転速度でエレベータを運転することが可能となるため、輸送能力向上による利用者の利便性の向上及び省電力化の双方を実現することが可能となる。
【0076】
また、本実施形態においては、バッテリ残量が閾値未満である場合であっても、例えばエレベータの回生運転時には上記した低速運転時よりも早い速度(第3の運転速度)でエレベータを運転する構成としてもよい。このような構成によれば、バッテリ24から供給される電力を使用することなく、通常運転時と同程度の速度でエレベータを運転することが可能となるため、利用者の利便性の向上と省電力化を両立させることができる。
【0077】
また、本実施形態においては、乗車予測人数が予め定められた値以下である場合、バッテリ24から駆動装置10への電力の供給を遮断する構成とすることによって、省電力化を図る構成としてもよい。なお、この場合においては、エレベータ制御装置30(に備えられる制御マイコン35)に電力が供給されていればよいため、当該エレベータ制御装置30以外の他の構成要素への電力の供給が遮断されればよい。この他の構成要素には、例えば乗りかご4及び各階の乗場に設置されている乗場呼び登録装置等が含まれる。なお、エレベータ制御装置30以外の他の構成要素への電力供給が遮断された後にカメラ40によって撮影された画像から乗場で待機する利用者が検出された場合には、当該電力供給の遮断を解除してもよい。
【0078】
更に、本実施形態においては、バッテリ残量が閾値未満である場合に、例えばバッテリ24から乗場への電力の供給を遮断すること等によって、当該バッテリ残量が少ないことを当該乗場で待機する利用者に通知するような構成であってもよい。このような構成によれば、乗場で待機する利用者にエレベータを利用しないことを促すことができるため、エレベータが利用されることによる電力消費を回避することができる。
【0079】
また、本実施形態においては、バッテリ残量が閾値未満である場合であって、エレベータの回生運転が実施可能であると判定される場合にのみ利用者を乗車させるようにエレベータの運転が制御される構成としてもよい。このような構成によれば、力行運転による電力消費を回避するとともに、回生運転によって生じる電力を利用してバッテリを充電することができるため、エレベータの長時間継続運転に寄与することができる。
【0080】
ここで、上記した構成によれば停電時におけるエレベータの利用者の利便性向上と省電力化(長時間継続運転)の双方を実現することが可能であるが、本実施形態においては、更にバッテリ24の長寿命化をも考慮したエレベータの運転制御を行うものとする。
【0081】
具体的には、本実施形態における制御部355bは、バッテリ24の劣化に対する影響を抑制するように当該バッテリ24の充放電量を制御(調整)するものとする。
【0082】
一般的に、バッテリ24は充放電を繰り返すことによって劣化するが、特に急速な充放電が行われた場合には、当該バッテリ24の劣化に対する影響が大きい。このため、本実施形態においては、例えばバッテリ残量が予め定められた範囲内にある場合には、急速な充放電が行われないように(つまり、バッテリ24が長寿命となるように)、力行運転時におけるバッテリ24からの放電量のパターン及び回生運転時におけるバッテリ24への充電量のパターンを可変制御する。これによれば、バッテリ24の長寿命化を実現することができる。
【0083】
また、バッテリ24からの急速な放電は、エレベータ(乗りかご4)の加減速時に行われる場合が多い。このため、本実施形態においてはエレベータの運転速度を制御するものとして主に説明したが、例えばバッテリ24の長寿命化の観点からエレベータの加減速度を制御するような構成としてもよい。
【0084】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0085】
1…商用電源、2…巻上機、3…ロープ、4…乗りかご、5…カウンタウェイト、10…駆動装置、11…コンバータ、12…平滑コンデンサ、13…インバータ、20…バッテリ装置、21…AC/DC変換器、22…DC/DC変換器、23…DC/DC変換器、24…バッテリ、30…エレベータ制御装置、31…制御電源トランス、32…非常用電源装置、33…制御電源装置、34…照明電源装置、35…制御マイコン、40…カメラ、351…停電検出部、352…バッテリ残量検出部(第1の検出部)、353…画像取得部、354…格納部、355…運転制御部、355a…解析部(第2の検出部)、355b…制御部。
図1
図2
図3