(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
面圧が高い方の前記接触部には、面圧が低い方の前記接触部よりも摩擦力が大きくなる高摩擦材が設けられ、および/または、面圧が低い方の前記接触部には、面圧が高い方の前記接触部よりも摩擦力が小さくなる低摩擦材が設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載のスクロール型流体機械。
前記ピン部材が前記リング部材に対して嵌合されている場合には、前記リング部材の外周と前記円形溝の内周とが接触する接触部の方が、前記ピン部材の外周と前記リング部材の内周とが接触する接触部よりも、摩擦トルクが大きいことを特徴とする請求項6又は7に記載のスクロール型流体機械。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のように、ピンとリングとを用いる動力伝達機構では、ピンの外周とリングの内周との接触部と、リングの外周とリングを収容する円形溝の内周との接触部が存在し、これら接触部で摺動(相対的な滑り)が生じ得るようになっている。
本発明者等は、これら接触部での摺動による摩耗によって、動力伝達機構の信頼性が損なわれるおそれがあることに着目し、鋭意検討したところ、ピンとリングを有する動力伝達機構の構造によって、これら接触部のうち相対的に面圧が高い方が存在し、高い面圧となる接触部が摺動することによって動力伝達機構の信頼性が損なわれるおそれがあることを見出した。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、ピン部材とリング部材を有する動力伝達機構の摩耗に対する信頼性を向上させることができるスクロール型流体機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のスクロール型流体機械は、以下の手段を採用する。
すなわち、本発明にかかるスクロール型流体機械は、渦巻状の第一壁体を有する第一スクロール部材と、前記第一壁体に対して噛み合わされて圧縮空間を形成する渦巻状の第二壁体を有する第二スクロール部材と、両前記スクロール部材を同期して回転させるとともに相対的に公転旋回運動を行うように動力を伝達する動力伝達機構とを備え、前記動力伝達機構は、一方の前記スクロール部材に取り付けられたピン部材と、他方の前記スクロール部材に設けられ、内周が前記ピン部材の外周と接触するリング部材と、前記他方の前記スクロール部材に形成され、前記リング部材を収容するとともに内周が該リング部材の外周に接触する円形溝とを備え、前記ピン部材の外周と前記リング部材の内周とが接触する接触部の面圧と、前記リング部材の外周と前記円形溝の内周とが接触する接触部の面圧とのうち、面圧が高い方の前記接触部が、摩擦トルクが大きいことを特徴とする。
【0008】
第一スクロール部材の第一壁体と第二スクロール部材の第二壁体とを噛み合わせて圧縮室を形成し、第一スクロール部材と第二スクロール部材とを同期して回転させるとともに相対的に公転旋回運動をさせることによって、第一スクロール部材と第二スクロール部材とが共に回転する両回転式のスクロール圧縮機が構成される。第一スクロール部材と第二スクロール部材とを共に回転させるために、第一スクロール部材と第二スクロール部材との間で動力を伝達する動力伝達機構が設けられている。例えば、一方のスクロール部材にモータ等の動力源から回転動力が入力されると、動力伝達機構を介して、他方のスクロール部材に動力が伝達されて他方のスクロール部材が同期して回転する。ここで、同期して回転するとは、同方向、同角速度、同位相で回転することを意味する。
動力伝達機構は、ピン部材と、リング部材と、リング部材を収容する円形溝とを備えている。ピン部材の外周とリング部材の内周との接触、及び、リング部材の外周と円形溝の内周との接触を介して、両スクロール部材間で動力の伝達が行われる。
ピン部材の外周とリング部材の内周との接触部の面圧と、リング部材の外周と円形溝の内周との接触部の面圧とのうち、面圧が高い方の接触部が、摩擦トルクが大きくなるようになっている。これにより、面圧が高い方の接触部に相対的な滑りを生じさせない転がり接触を行わせ、かつ、面圧が低い方の接触部に相対的な滑りを生じさせることによって、動力を伝達することができる。したがって、面圧が高い方の接触部に相対的な滑りを生じさせずに転がり接触が行われるように管理できるので、面圧が高い方の接触部に相対的な滑りを発生させる可能性がある場合に比べて、動力伝達機構の摩耗に対する信頼性を確保することができる。
リング部材としては、無端円環状のリング体や、玉軸受等の転がり軸受が挙げられる。
【0009】
さらに、本発明のスクロール型流体機械では、前記リング部材は、転がり軸受とされ、前記面圧が高い方の前記接触部は、前記転がり軸受の摩擦トルクよりも大きいことを特徴とする。
【0010】
転がり軸受の摩擦トルクよりも面圧が高い方の接触部の方が摩擦トルクが大きいので、面圧が高い方の接触部に相対的な滑りを生じさせない転がり接触を行わせた上で、転がり軸受自身も転動させることが可能となる。
なお、ピン部材と転がり軸受との接触部および円形溝と転がり軸受との接触部よりも、転がり軸受の摩擦トルクを小さくしておき、優先的に転がり軸受自身が転動するようにしておくことが好ましい。
【0011】
さらに、本発明のスクロール型流体機械では、前記リング部材が前記円形溝に対して嵌合されている場合には、前記ピン部材の外周と前記リング部材の内周とが接触する接触部の方が、前記リング部材の外周と前記円形溝の内周とが接触する接触部よりも、摩擦トルクが大きいことを特徴とする。
【0012】
リング部材が円形溝に嵌合されている場合には、ピン部材の外周とリング部材の内周との接触部の方が、リング部材の外周と円形溝の内周との接触部よりも、面圧が高い。したがって、この場合には、ピン部材の外周とリング部材の内周との接触部の摩擦トルクを大きくして、転がり接触を行わせるようにする。
【0013】
さらに、本発明のスクロール型流体機械では、前記ピン部材が前記リング部材に対して嵌合されている場合には、前記リング部材の外周と前記円形溝の内周とが接触する接触部の方が、前記ピン部材の外周と前記リング部材の内周とが接触する接触部よりも、摩擦トルクが大きいことを特徴とする。
【0014】
ピン部材がリング部材に嵌合されている場合には、リング部材の外周と円形溝の内周との接触部の方が、ピン部材の外周とリング部材の内周との接触部よりも、面圧が高い。したがって、この場合には、リング部材の外周と円形溝の内周との接触部の摩擦トルクを大きくして、転がり接触を行わせるようにする。
【0015】
さらに、本発明のスクロール型流体機械では、面圧が高い方の前記接触部の表面粗さが、面圧が低い方の前記接触部の表面粗さよりも大きくされていることを特徴とする。
【0016】
面圧が高い方の接触部の表面粗さを、面圧が低い方の接触部の表面粗さよりも大きくすることで、摩擦トルクを大きくすることができる。なお、表面粗さは相対的に大小関係が設けられていれば良いので、面圧が高い方の接触部の表面粗さを大きくしても良いし、面圧が低い方の表面粗さを小さくしても良い。
【0017】
さらに、本発明のスクロール型流体機械では、面圧が高い方の前記接触部には、面圧が低い方の前記接触部よりも摩擦力が大きくなる高摩擦材が設けられ、および/または、面圧が低い方の前記接触部には、面圧が高い方の前記接触部よりも摩擦力が小さくなる低摩擦材が設けられていることを特徴とする。
【0018】
面圧が高い方の接触部に、面圧が低い方の接触部よりも摩擦力が大きくなる高摩擦材を設けることにより、摩擦トルクを大きくすることができる。また、面圧が低い方の接触部に、面圧が高い方の接触部よりも摩擦力が小さくなる低摩擦材を設けることにより、摩擦トルクを小さくすることができる。
高摩擦材としては、例えば、滑り止めとしての性質を有する材料として弾性を有する高分子材(エラストマー)が挙げられ、例えばゴム等が用いられる。
低摩擦材としては、例えば、滑り易くする材質を有する材料として、DLC(Diamond−Like Carbon)コーティング、テフロン等のPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)コーティング(「テフロン」は登録商標)、二硫化モリブデンコーティング、表面マイクロテクスチャー等が挙げられる。
高摩擦材および低摩擦材は、例えば、ピン部材、リング部材及び円形溝の母材に対して貼り付けたり、表面処理したりすることによって設けることができる。
【0019】
さらに、本発明のスクロール型流体機械では、前記接触部のうちの一部に前記高摩擦材、および/または、前記接触部のうちの一部に前記低摩擦材が設けられていることを特徴とする。
【0020】
接触部のうちの一部に高摩擦材や低摩擦材を設けることで、接触力を高摩擦材や低摩擦材のみで受けずに母材と共に負担させることができる。これにより、高摩擦材や低摩擦材の耐久性を向上させることができる。
また、母材に比べて弾性を有する材料を高摩擦材や低摩擦材に用いた場合には、母材よりも先に高摩擦材や低摩擦材を接触させるようにすれば、接触時のダンピング効果を得ることができ、騒音振動を低減することができる。
【発明の効果】
【0021】
ピン部材とリング部材との接触部と、リング部材と円形溝との接触部のうち面圧が高い方の接触部の摩擦トルクを大きくして相対的な滑りを回避することとしたので、動力伝達機構の摩耗に対する信頼性を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、本発明にかかる実施形態について、図面を参照して説明する。
[第1実施形態]
図1には、本発明の第1実施形態に係るスクロール型圧縮機(スクロール型流体機械)1の縦断面が示されている。同図に示されているように、スクロール型圧縮機1は、ハウジング9内に、駆動部3と、圧縮機構部5とを備えている。
【0024】
駆動部3は、ハウジング9の小径部9a内に収容された電動モータ7を備えている。ハウジング9の小径部9aの外周には放熱フィンが設けられている。電動モータ7は、ハウジング9側に固定されたステータ11と、ステータ11の内側で駆動側中心軸線L1回りに回転するロータ13とを備えている。ロータ13は、回転軸15の外周に固定されている。
回転軸15は、両端が軸受17,19によって支持されている。回転軸15の一端(
図1において左端)には、駆動スクロール部材20の軸部20aが接続されている。したがって、回転軸15と駆動スクロール部材20とが回転する駆動側中心軸線L1は一致している。
【0025】
圧縮機構部5は、ハウジング9の大径部9b内に収容され、金属製とされた駆動スクロール部材(第一スクロール部材)20と、金属製とされた従動スクロール部材(第二スクロール部材)22とを備えている。
【0026】
駆動スクロール部材20は、回転軸15からの回転駆動力が軸部20aを介して伝達されることによって、駆動側中心軸線L1回りに回転する。駆動スクロール部材20は、円板形状とされた端板20bと、端板20bに対して略垂直方向に立設された渦巻状壁体(第一壁体)20cとを備えている。渦巻状壁体20cは、
図2に示されているように、中央側に巻き始め部20c1を有し、外周側に巻き終わり部20c2を有する渦巻き形状とされている。渦巻状壁体20cの内周面および外周面の形状は、例えばインボリュート曲線によって形成されている。ただし、巻き始め部20c1は、種々の曲線を用いて形成されている。
【0027】
従動スクロール部材22は、円板形状とされた端板22bと、端板22bに対して略垂直方向に立設された渦巻状壁体(第二壁体)22cと、端板22bの中心に設けられた軸部22aとを備えている。
軸部22aの外周には、ハウジング9との間に軸受24が取り付けられている。これにより、従動スクロール部材22は、従動側中心軸線L2回りに回転する。駆動側中心軸線L1と従動側中心軸線L2とは所定距離ρだけオフセットされており、この所定距離ρが、駆動スクロール部材20と従動スクロール部材22とが相対的に公転旋回運動する際の旋回半径となる。
軸部22aは円筒形状とされており、軸部22aの中心側に形成された貫通孔22a1を介して圧縮後の流体(例えば空気)が吐出される。
渦巻状壁体22cは、
図2に示されているように、中央側に巻き始め部22c1を有し、外周側に巻き終わり部22c2を有する渦巻き形状とされている。渦巻状壁体22cの内周面および外周面の形状は、駆動スクロール部材20の渦巻状壁体20cに噛み合うように、例えばインボリュート曲線によって形成されている。ただし、巻き始め部22c1の部分は、種々の曲線を用いて形成されている。
【0028】
駆動スクロール部材20と従動スクロール部材22との間には、両スクロール部材20,22を同期して回転させるとともに相対的に公転旋回運動を行うように動力を伝達する動力伝達機構26が設けられている。ここで、同期して回転するとは、同方向、同角速度、同位相で回転することを意味する。
【0029】
動力伝達機構26は、
図1(より詳しくは
図3)に示されているように、従動スクロール部材22に固定されたピン(ピン部材)30と、駆動スクロール部材20の端板20bに形成された円形溝32と、円形溝32内に嵌合されるリング体(リング部材)34とを備えている。
ピン30は、金属製とされており、駆動スクロール部材20の端板20bに対向する従動スクロール部材22の外周壁部22dに固定されている。ピン30は、一端が外周壁部22dに埋め込まれ、他端がリング体34の内周側に突出するように設けられている。
【0030】
円形溝32は、リング体34の外径に対応する内径とされた円形の溝とされてり、本実施形態では端板20bを貫通する穴となっている。
【0031】
リング体34は、金属製とされており、無端状の円環形状とされている。
図1に示されているように、ピン30の外周とリング体34の内周との間に接触部が形成され、リング体34の外周と円形溝32の内周との間に接触部が形成されている。これら接触部を介して、動力が伝達される。
【0032】
図2に示されているように、ピン30、円形溝32及びリング体34の対は、駆動スクロール部材20の中心C1回りに4つ設けられている。なお、ピン30、円形溝32及びリング体34の対は、本実施形態では4つとされているが、3つ以上であれば良く、例えば6つとされていても良い。
このような動力伝達機構26によって、駆動スクロール部材20に入力された回転駆動力が従動スクロール部材22に伝達される。
【0033】
本実施形態では、ピン30の外周とリング体34の内周との接触部における摩擦トルクが、リング体34の外周と円形溝32の内周との接触部よりも摩擦トルクが大きくされている。具体的には、ピン30の外周とリング体34の内周との接触部における表面粗さが、ピン30の外周とリング体34の内周との接触部におけるよりも大きくされている。ヤスリやブラスト処理等を用いて、ピン30の外周やリング体34の内周を荒らすことによって表面粗さを大きくすることができる。また、研磨等を用いてリング体34の外周や円形溝32の内周を平滑化することによって表面粗さを小さくしてもよい。
【0034】
上記構成のスクロール型圧縮機1は、以下のように動作する。
図示しない電力源からの供給電力によって電動モータ7が駆動され、ロータ13が回転することによって、回転軸15が駆動側中心軸線L1回りに回転する。回転軸15の回転駆動力は、軸部20aを介して駆動スクロール部材20に伝達され、駆動スクロール部材20が駆動側中心軸線L1回りに回転する。駆動スクロール部材20の回転力は、動力伝達機構26によって従動スクロール部材22に伝達される。このとき、動力伝達機構26のピン30がリング体34の内周に沿って接触しながら回転することで、駆動スクロール部材20と従動スクロール部材22とが相対的に公転旋回運動する。
駆動スクロール部材20と従動スクロール部材22とが相対的に公転旋回運動することによって、駆動スクロール部材20の渦巻状壁体20cと従動スクロール部材22の渦巻状壁体22cとの間に形成された圧縮空間が外周側から中心側に移動するにしたがって縮小されて、スクロール部材20,22の外周側から吸い込んだ流体の圧縮が行われる。圧縮された流体は、従動スクロール部材22の軸部22aに形成された貫通孔22a1から外部へと吐出される。
【0035】
本実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
ピン30の外周とリング体34の内周との間に接触部における摩擦トルクが、リング体34の外周と円形溝32の内周との間に接触部よりも摩擦トルクが大きくされている。これにより、面圧が高い方の接触部であるピン30の外周とリング体34の内周との間に相対的な滑りを生じさせない転がり接触を行わせ、かつ、面圧が低い方の接触部であるリング体34の外周と円形溝32の内周との間に相対的な滑りを生じさせることによって、動力を伝達することができる。したがって、面圧が高い方の接触部に相対的な滑りを生じさせずに転がり接触が行われるように管理できるので、面圧が高い方の接触部に相対的な滑りを発生させる可能性がある場合に比べて、動力伝達機構26の摩耗に対する信頼性を確保することができる。
【0036】
[変形例1−1]
本実施形態の変形例として、
図4に示すように、リング体34に代えて、玉軸受(転がり軸受)35としてもよい。玉軸受35とした場合でも、ピン30の外周と玉軸受35の内輪の内周との接触部における摩擦トルクが、玉軸受35の外輪の外周と円形溝32の内周との接触部よりも摩擦トルクが大きくなるように表面粗さが調整されている。そして、玉軸受35の摩擦トルクは、ピン30の外周と玉軸受35の内輪の内周との接触部における摩擦トルクよりも小さくされている。これにより、上述と同じような作用効果を奏することができる。特に、玉軸受35の外輪と円形溝32との嵌め合いが相対的な滑りを許容しないタイトな嵌め合いとされている場合には、玉軸受35自身が転がるため、玉軸受35の外輪の外周と円形溝32の内周との滑り接触がなくなり、信頼性がさらに向上する。また、玉軸受35の外輪と円形溝32との嵌め合いが相対的な滑りを許容するルーズな嵌め合いとされている場合でも、玉軸受35の外輪の外周と円形溝32の内周との滑り接触が軽減され、摩耗に対する信頼性がさらに向上する。
【0037】
[変形例1−2]
本実施形態の変形例として、接触部の表面粗さを調整する方法に代えて、面圧が高い方の接触部には、面圧が低い方の接触部よりも摩擦力が大きくなる高摩擦材を設けても良い。これにより、面圧が高い方の接触部の摩擦トルクを大きくすることができる。高摩擦材としては、例えば、滑り止めとしての性質を有しかつ弾性を有する高分子材(エラストマー)が挙げられ、例えばゴム等が用いられる。
【0038】
さらに、面圧が低い方の接触部には、面圧が高い方の接触部よりも摩擦力が小さくなる低摩擦材が設けても良い。これにより、面圧が低い方の接触部の摩擦トルクを小さくすることができる。低摩擦材としては、例えば、滑り易くする性質を有する材料として、DLC(Diamond−Like Carbon)コーティング、テフロン等のPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)コーティング(「テフロン」は登録商標)、二硫化モリブデンコーティング、表面マイクロテクスチャー等が挙げられる。
【0039】
高摩擦材および低摩擦材は、例えば、ピン部材、リング部材及び円形溝の母材に対して貼り付けたり、表面処理したりすることによって設けることができる。
【0040】
[変形例1−3]
本実施形態の変形例として、
図5に示すように、ピン30の外周とリング体34の内周との接触部の一部に高摩擦材40を設けても良い。これにより、接触力を高摩擦材40のみで受けずにピン30の母材と共に負担させることができる。これにより、高摩擦材40の耐久性を向上させることができる。好ましくは、ピン30の外径よりも高摩擦材40の外径を大きくしておき、ピン30の母材よりも先に高摩擦材40がリング体34に接触するようにする。これにより、接触時のダンピング効果を得ることができ、騒音振動を低減することができる。
なお、リング体34の内周側に、接触部の一部を構成するように高摩擦材を設けても良い。
また、図示しないが、リング体34の外周または円形溝32の内周に、接触部の一部を構成するように低摩擦材を設けても良い。
【0041】
[変形例1−4]
上記変形例1−3の変形例として、
図6に示すように、リング体34に代えて、玉軸受(転がり軸受)35としてもよい。リング体34に代えて玉軸受35を設けた場合の作用効果は、上記変形例1−1に説明した通りである。
【0042】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について、
図7を用いて説明する。以下の説明では、上述した第1実施形態およびその変形例に対して相違する点のみを説明する。したがって、第1実施形態およびその変形例と共通する事項については説明を省略する。
【0043】
図7に示されているように、ピン30の先端がリング体34’の内周に挿入された状態で嵌合されている。このような構成の場合は、リング体34’の外周と円形溝32の内周との接触部の方が、ピン30の外周とリング体34’の内周との接触部よりも、面圧が高い。したがって、リング体34’の外周と円形溝32の内周とが接触する接触部の方が、ピン30の外周とリング体34’の内周とが接触する接触部よりも、摩擦トルクが大きくされている。
これにより、面圧が高い方の接触部であるリング体34’の外周と円形溝32の内周との間に相対的な滑りを生じさせない転がり接触を行わせ、かつ、面圧が低い方の接触部であるピン30の外周とリング体34’の内周との間に相対的な滑りを生じさせることによって、動力を伝達することができる。したがって、面圧が高い方の接触部に相対的な滑りを生じさせずに転がり接触が行われるように管理できるので、面圧が高い方の接触部に相対的な滑りを発生させる可能性がある場合に比べて、動力伝達機構26の摩耗に対する信頼性を確保することができる。
【0044】
[変形例2−1]
本実施形態の変形例として、
図8に示すように、リング体34’に代えて、玉軸受(転がり軸受)35’としてもよい、玉軸受35’とした場合でも、玉軸受35’の外輪の外周と円形溝32の内周との間の接触部における摩擦トルクが、ピン30の外周と玉軸受35’の内輪の内周との間に接触部よりも摩擦トルクが大きくなるように表面粗さが調整されている。そして、玉軸受35の摩擦トルクは、玉軸受35’の外輪の外周と円形溝32の内周との間の接触部における摩擦トルクよりも小さくされている。これにより、上述と同じような作用効果を奏することができる。特に、玉軸受35’の内輪とピン30の外周との嵌め合いが相対的な滑りを許容しないタイトな嵌め合いとされている場合には、玉軸受35’自身が転がるため、玉軸受35の内輪の内周とピン30の外周との滑り接触がなくなり、摩耗に対する信頼性がさらに向上する。また、玉軸受35’の内輪とピン30の外周との嵌め合いが相対的な滑りを許容するルーズな嵌め合いとされている場合でも、玉軸受35’の内輪とピン30の外周との滑り接触が軽減され、摩耗に対する信頼性がさらに向上する。
【0045】
[変形例2−2]
本実施形態の変形例として、接触部の表面粗さを調整する方法に代えて、面圧が高い方の接触部には、面圧が低い方の接触部よりも摩擦力が大きくなる高摩擦材を設けても良い。これにより、面圧が高い方の接触部の摩擦トルクを大きくすることができる。高摩擦材としては、例えば、滑り止めとしての性質を有しかつ弾性を有する高分子材(エラストマー)が挙げられ、例えばゴム等が用いられる。
さらに、面圧が低い方の接触部には、面圧が高い方の接触部よりも摩擦力が小さくなる低摩擦材が設けても良い。これにより、面圧が低い方の接触部の摩擦トルクを小さくすることができる。低摩擦材としては、例えば、滑り易い性質を有する材料として、DLC(Diamond−Like Carbon)コーティング、テフロン等のPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)コーティング(「テフロン」は登録商標)、二硫化モリブデンコーティング、表面マイクロテクスチャー等が挙げられる。
高摩擦材および低摩擦材は、例えば、ピン部材、リング部材及び円形溝の母材に対して貼り付けたり、表面処理したりすることによって設けることができる。
【0046】
[変形例2−3]
本実施形態の変形例として、
図9に示すように、ピン30の外周とリング体34’の内周との接触部の一部に低摩擦材42を設けても良い。これにより、接触力を低摩擦材42のみで受けずにピン30の母材と共に負担させることができる。これにより、低摩擦材42の耐久性を向上させることができる。好ましくは、低摩擦材42が弾性を有する場合には、ピン30の外径よりも低摩擦材42の外径を大きくしておき、ピン30の母材よりも先に低摩擦材42がリング体34’に接触するようにする。これにより、接触時のダンピング効果を得ることができ、騒音振動を低減することができる。
なお、リング体34’の内周側に、接触部の一部を構成するように低摩擦材を設けても良い。
また、図示しないが、リング体34’の外周または円形溝32の内周に、接触部の一部を構成するように高摩擦材を設けても良い。
【0047】
[変形例2−4]
上記変形例2−3の変形例として、
図10に示すように、リング体34’に代えて、玉軸受(転がり軸受)35’としてもよい。リング体34’に代えて玉軸受35’を設けた場合の作用効果は、上記変形例2−1に説明した通りである。
なお、
図10の低摩擦材42に代えて、玉軸受35’の外輪の外周または円形溝32の内周に、接触部の一部を構成するように高摩擦材を設けても良い。
【0048】
なお、各上記実施形態では、圧縮機として説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、スーパチャージャ、空制装置(空気式の制動装置)、空気圧縮機、真空ポンプ等にも適用することができる。
【0049】
また、各上記実施形態では、摩擦トルクを大きくするために表面粗さや高摩擦材を用いることとしたが、接触部に歯車形状を付与して噛み合う構成としても良い。
【0050】
また、各上記実施形態では、ピン30を従動スクロール部材22に取り付け、リング体34,34’又は玉軸受35,35’を駆動スクロール部材20に取り付ける構造としたが、この逆の関係、すなわちピン30を駆動スクロール部材20に取り付け、リング体34,34’又は玉軸受35,35’を従動スクロール部材22に取り付ける構造としても良い。
さらには、駆動スクロール部材20と従動スクロール部材22との間で動力を伝達する部材にピン30やリング体34,34’、玉軸受35,35’等の動力伝達機構26を設ければよく、駆動スクロール部材20及び従動スクロール部材22に対して直接的に動力伝達機構26を設ける必要はない。
【解決手段】駆動スクロール部材20と、従動スクロール部材22と、両スクロール部材20,22とを同期して回転させるとともに相対的に公転旋回運動を行うように動力を伝達する動力伝達機構26とを備え、動力伝達機構26は、従動スクロール部材22に取り付けられたピン30と、駆動スクロール部材20に設けられ、内周がピン30の外周と接触するリング体34と、駆動スクロール部材20に形成され、リング体34を収容するとともに内周がリング体34の外周に接触する円形溝32とを備え、ピン30の外周とリング体34の内周とが接触する接触部の面圧と、リング体34の外周と円形溝32の内周とが接触する接触部の面圧とのうち、面圧が高い方の接触部が摩擦トルクが大きい。