(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6199448
(24)【登録日】2017年9月1日
(45)【発行日】2017年9月20日
(54)【発明の名称】含浸マンドレル上に繊維組織を巻き取るための機械のための圧密成形装置
(51)【国際特許分類】
B29C 70/32 20060101AFI20170911BHJP
B29K 105/08 20060101ALN20170911BHJP
B29L 22/00 20060101ALN20170911BHJP
【FI】
B29C70/32
B29K105:08
B29L22:00
【請求項の数】8
【外国語出願】
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-138202(P2016-138202)
(22)【出願日】2016年7月13日
(62)【分割の表示】特願2014-504374(P2014-504374)の分割
【原出願日】2012年4月10日
(65)【公開番号】特開2017-19278(P2017-19278A)
(43)【公開日】2017年1月26日
【審査請求日】2016年7月14日
(31)【優先権主張番号】1153213
(32)【優先日】2011年4月13日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】516227272
【氏名又は名称】サフラン・エアクラフト・エンジンズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リシヤール・マトン
(72)【発明者】
【氏名】アントワーヌ・フエリツポー
(72)【発明者】
【氏名】マイカ・ガメル
(72)【発明者】
【氏名】ジャン−フランソワ・デユラン
【審査官】
辰己 雅夫
(56)【参考文献】
【文献】
特許第6014117(JP,B2)
【文献】
特表2009−538261(JP,A)
【文献】
特開2003−211447(JP,A)
【文献】
特開2008−240724(JP,A)
【文献】
特開平03−112630(JP,A)
【文献】
実開平04−083714(JP,U)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0093026(US,A1)
【文献】
特開2003−269408(JP,A)
【文献】
特表2007−501140(JP,A)
【文献】
特開2009−107337(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2007/0272346(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0206048(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C70/00−70/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
含浸マンドレルに繊維組織を巻き取るための機械のための圧密成形装置(100)にして、巻取機(10)の含浸マンドレル(16)の外表面(28)を圧迫するための圧密成形ローラ(104)と、それぞれが、含浸マンドレルの外表面と側面板(30)との間に形成される隅部を圧迫するように設計された2つの圧密成形ホイール(106)とが取り付けられたフレーム(102)を備える装置であって、圧密成形ローラおよび圧密成形ホイールに振動を加えるための手段(112)を更に備え、圧密成形ローラ(104)が、フレームに固定される2つの板(114)の間で回転するように取り付けられ、各板が、圧密成形ローラの位置をフレームに対して調整できるようになるようにウォームスクリュー(120)と噛み合わせることによって、水平軸(118)を中心に枢動するのに適した歯付きホイール(116)を用いて枢動するように強いられる1つの端部を有することを特徴とする、装置。
【請求項2】
圧密成形ローラおよび圧密成形ホイールに振動を加えるための手段が、フレームに取り付けられる少なくとも1つの電気バイブレータ(112)を備える、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
圧密成形ローラの外表面は、圧密成形ローラが圧迫することになる含浸マンドレルの外表面のプロファイルに対応するプロファイルを提示する、請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
圧密成形ローラ(104)が、回転時に互いに独立した複数の長手方向ローラ部(104a、104b、104c、・・・)を備える、請求項1から3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
圧密成形ホイールの位置をフレームに対して調整するための手段をさらに備える、請求項1から4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
圧密成形ローラおよび圧密成形ホイールが、エラストマー材料で作られたコーティングで覆われる、請求項1から5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
含浸マンドレルに繊維組織を巻き取るための機械(10)であって、
三次元製織によって得られた繊維組織(18)が蓄積されることになる巻取マンドレル(14)であり、実質的に水平な回転軸(20)を有する巻取マンドレルと、
巻取マンドレルに蓄積された繊維組織の重なり合った層が巻き取られることになる含浸マンドレル(16)であり、巻取マンドレルの回転軸に実質的に水平で平行な回転軸(32)を有する含浸マンドレルと、
巻取マンドレル及び含浸マンドレルのそれぞれの回転軸を中心に巻取マンドレル及び含浸マンドレルを回転で駆動するための電気モータ(22、34)と、
巻取マンドレル及び含浸マンドレルを回転駆動するための電気モータを制御するための制御ユニット(36)と、
請求項1から6のいずれか一項に記載の圧密成形装置(100)と
を備える機械。
【請求項8】
実質的な水平軸(110)を中心に枢動するように支持構造(12)に取り付けられる圧密成形装置(100)を有する支持構造と、ならびに支持構造に締結されるアクチュエータ(112)の本体、および圧密成形装置を水平軸を中心に枢動できるようになるように装置のフレームに締結されるアクチュエータのロッドを有する、少なくとも1つのアクチュエータと、をさらに備える、請求項7に記載の機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスタービンケーシングを複合材料から製造する一般的分野に関し、より詳細には、本発明は、航空エンジン用のガスタービンファン保持ケーシングに関する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービン航空エンジンにおいては、ファンケーシングがいくつかの機能を実行する。すなわち、これは、エンジンの中に空気入口通路を画定し、ファンブレードの先端に面するアブレイダブル材料を支持し、エンジンの入口での音響処理のために音波を吸収するための任意の構造を支持し、かつ、保持シールドを組み込むか、または支持する。シールドは、破片などがケーシングを通過し、航空機の他の部分に達するのを防止するために、遠心力を作用させることによって吸い込まれた物品や外側に投げ出された損傷したブレードの破片などの、破片を保持するためのトラップを構成する。
【0003】
ファン保持ケーシングは、一般に、空気入口通路を画定し、かつファンブレードの先端に倣う通路に重なるアブレイダブル材料を支持する比較的薄い壁、ならびにもしあるなら音響処理被膜によって、およびまたファンと同じ高さにこの壁の外側に締結されるシールド構造によって構成される。
【0004】
ファン保持ケーシングを複合材料から製造する提案がすでに行われている。例示として、文献欧州特許第EP1961923号明細書を参照することができ、これは、変化する厚さの複合材料ケーシングを製造することを説明しており、これには、繊維組織の重なり合った層の形の繊維強化材を形成すること、およびマトリックスで繊維強化材を緻密化することが含まれている。より正確には、その文献は、繊維組織の三次元製織のための巻取マンドレルを用いることに備えており、次いで、その組織は、ケーシングを締結するためのフランジに対応する2つの側面板と共に、製造されることになるケーシングの中央部分のプロファイルに対応するプロファイルを有する外表面を有する含浸マンドレル上に重なり合った層として巻き取られる。そのように得られた繊維プリフォームは、含浸マンドレルに保持され、かつ、樹脂が重合される前に樹脂で含浸される。
【0005】
その方法を実際に実施すると、巻取マンドレルから含浸マンドレル上まで繊維組織を移送させるという問題が提起される。巻取が行われている間、特に、含浸マンドレルの繊維組織の重なり合った層に適切なレベルの圧密成形を確保することが必要である。繊維組織層が巻き取られている間にこれが受ける圧密成形量は、結果として生じるプリフォームの繊維密度に対し直接的な影響を有する。特に、繊維組織の層を、含浸マンドレルの外表面に対しても、マンドレルの前記表面と側面板との間に形成される隅部においても圧密成形することができなければならない。
【0006】
したがって、繊維組織のさまざまな層が含浸マンドレル上に巻き取られている間にこれらが有効かつ適切な方法で圧密成形され得るようになる工具の必要性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】欧州特許第1961923号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の主な目的は、含浸マンドレルに繊維組織を巻き取るための機械のための圧密成形装置を提案することによってこのような必要性を緩和することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本装置は、本発明によれば、巻取機の含浸マンドレルの外表面を圧迫するための圧密成形ローラと、それぞれが、含浸マンドレルの外表面と側面板との間に形成される隅部を圧迫するように設計された2つの圧密成形ホイールとが取り付けられたフレームを備える。
【0010】
操作時に、本発明の装置の圧密成形ローラは、製造されることになるケーシングの今後の中央部分について含浸マンドレルに重なり合った繊維組織の層に圧力を加え、この圧力はこれらの層の圧密成形に寄与する。
【0011】
同様に、中央部分の間に形成され、製造されることになるケーシングの締結フランジを構成することになる、隅部を覆った繊維組織の層は、圧密成形装置のホイールによって加えられる圧力によって圧密成形される。
【0012】
さらに、圧密成形装置により、繊維組織が含浸マンドレル上に巻き取られている間に、繊維組織に張力を加えることが最適化できる。したがって、圧密成形効果により、プリフォームをその最終圧密成形レベルで与えることができるようになり、プリフォームがもはや圧密成形ローラおよびホイールの下にない場合でさえプリフォームの圧密成形のこのレベルを固定するように、巻取張力(500ニュートン(N)〜1500Nの範囲内にある)を加えることができるようになる。
【0013】
本圧密成形装置は、圧密成形ローラおよびホイールに振動を加えるための手段をさらに備えることが好ましい。圧密成形ローラおよびホイールに振動を与えると、繊維組織の層にマイクロピーニングが引き起こされ、それによって、プリフォームに対する圧密成形効果が増幅される。
【0014】
圧密成形ローラおよびホイールに振動を加えるための手段は、フレームに取り付けられる少なくとも1つの電気バイブレータを備えることができる。
【0015】
また、本圧密成形装置は、フレームに対して圧密成形ローラの位置を調整するための手段をさらに備えることが好ましい。この調整オプションにより、圧密成形ローラの位置を含浸マンドレルに巻き取られる繊維組織の層に正確に調整することができる。
【0016】
このような環境の下で、圧密成形ローラは、フレームに固定される2つの板の間で回転するように取り付けられることができ、各板は、ウォームスクリューと噛み合わせることによって水平軸を中心に枢動するのに適した歯付きホイールを用いて枢動するように強いられる1つの端部を有する。
【0017】
圧密成形ローラの外表面は、圧密成形ローラが圧迫することになる含浸マンドレルの外表面のプロファイルに対応するプロファイルを有することが有利である。
【0018】
圧密成形ローラは、回転時に互いに独立した複数の長手方向ローラ部分を備えることができる。保持ケーシングの全体として変化する直径を仮定すれば、圧密成形装置のこのフィーチャにより、マンドレルの全ての点が摩擦なしでローリングを受けることを確実にするように、ローラのさまざまな部分の間の回転差を許容することができる。
【0019】
また、本圧密成形装置は、圧密成形ホイールの位置をフレームに対して調整するための手段をさらに備えることが好ましい。この調整オプションにより、圧密成形ホイールの位置を含浸マンドレルの外表面と側面板との間に形成される隅部に対して正確に調整することができる。
【0020】
このような環境の下で、各圧密成形ホイールは、圧密成形ホイールをフレーム対して長手方向に所定の位置に調整できるようになるように、フレームの静止した長手方向ロッド上で摺動するのに適したクランプを形成する第1の部分と、第1の部分に取り付けられ、かつ圧密成形ホイールの位置をフレームに対して半径方向に調整できるようになるように、第1の部分に対して半径方向に摺動するのに適したスライダを形成する第2の部分とを有する、ホイール支持体に取り付けられ得る。
【0021】
圧密成形ローラおよび圧密成形ホイールは、エラストマー材料で作られたコーティングで覆われることが好ましい。エラストマーコーティングを用いると、圧密成形ローラおよびホイールは、マンドレルの全てに点に対して実質的に均一な圧力を加えるために含浸マンドレルの外側プロファイルに対してより良好に適合することができるようになる。
【0022】
また、本発明は、含浸マンドレルに繊維組織を巻き取るための機械を提供し、本機械は、三次元製織によって得られた繊維組織が蓄積されることになる巻取マンドレルであり、実質的に水平な回転軸を有する巻取マンドレルと、巻取マンドレルに蓄積された繊維組織の重なり合った層が巻き取られることになる含浸マンドレルであり、巻取マンドレルの回転軸に実質的に水平で平行な回転軸を有する含浸マンドレルと、マンドレルのそれぞれの回転軸を中心にマンドレルを回転駆動するための電気モータと、マンドレルを回転駆動するための電気モータを制御するための制御ユニットと、上記で定義された圧密成形装置と、を備える。
【0023】
巻取機は、実質的な水平軸を中心に枢動するように支持構造に取り付けられる圧密成形装置と、ならびに支持構造に締結されるアクチュエータの本体、および圧密成形装置を水平軸を中心に枢動できるようになるように装置のフレームに締結されるアクチュエータのロッドを有する、少なくとも1つのアクチュエータと、をさらに備えることが好ましい。
【0024】
本発明の他の特徴および利点は、いかなる限定的な特徴も持たない実施形態を示す添付の図面を参照して行われる次の説明から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の圧密成形装置を含む含浸マンドレルに繊維組織を巻き取るための機械の斜視図である。
【
図4】
図1の巻取機に取り付けられる本発明の圧密成形装置の斜視図である。
【
図5】
図1の巻取機に取り付けられる本発明の圧密成形装置の側面図である。
【
図6】
図1の巻取機に取り付けられる本発明の圧密成形装置の側面図である。
【
図7A】圧密成形ローラの位置の調整を示す
図4〜
図6の圧密成形装置の図である。
【
図7B】圧密成形ローラの位置の調整を示す
図4〜
図6の圧密成形装置の図である。
【
図8A】圧密成形ホイールの位置の調整を示す
図4〜
図6の装置の図である。
【
図8B】圧密成形ホイールの位置の調整を示す
図4〜
図6の装置の図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明は、ガスタービン航空エンジン用のファンケーシングの製造についてその適用の文脈において下記に説明される。
【0027】
この種のファンケーシングを製造する方法の一例は、文献欧州特許第EP1961923号明細書に説明されており、それについて参照することができる。
【0028】
ケーシングは、マトリックスで緻密化された繊維強化材を含む複合材料で作られる。強化材は、繊維、例えば炭素、ガラス、アラミド、またはセラミック繊維で作られ、マトリックスは、ポリマー、例えばエポキシ樹脂、ビスマレイミド、またはポリイミドで作られる。
【0029】
簡単に言えば、この文献で説明された製造方法は、製造されるべきケーシングのプロファイルに応じて決定されるプロファイルを有するドラム(下記で「巻取マンドレル」と呼ばれる)に経糸巻取を伴う三次元製織によって繊維組織を製造することにある。特に、繊維組織は、製造されることになるケーシングの中央部分に対応する中央部分と、ケーシングの締結フランジに対応する2つのフランジとを備える単一体として作られる。
【0030】
次いで、このように作られた繊維構造は、製造されるべきケーシングの内側プロファイルに対応する外側プロファイルの樹脂射出成形用モールドのマンドレル(下記で「含浸」マンドレルと呼ばれる)上に移送される。プリフォームを含浸マンドレルに保持した状態で、次いで樹脂を用いて含浸が行われる。このために、プリフォームの上に被覆が適用され、このように構成されたモールドの中に樹脂が注入される。含浸は、プリフォームが配置されるモールドの内側と外側との間の圧力差を確立することによって助けられ得る。含浸の後に、樹脂を重合させるステップが行われる。
【0031】
図1〜
図3に示された巻取機は、樹脂射出成形用モールドの含浸マンドレルまで、巻取マンドレルに蓄積された繊維組織の自動移送を行う働きをする。
【0032】
巻取機10は、特に巻取マンドレル14および含浸マンドレル16を支持する支持構造12を備える。これらのマンドレルは取り外し可能であり、すなわち、これらは支持構造から取り外され得る。
【0033】
巻取マンドレル14は、三次元製織によって得られた繊維構造18を受け取る。これは、巻取機の支持構造12に対して回転するように取り付けられた1つの端部を有し、かつ電気モータ22、例えば交流(AC)電気歯車モータの出口シャフトに接続されるその他方の端部を有する水平シャフト20によって担持される。
【0034】
巻取マンドレル14、そのシャフト20、およびその電気モータ22によって構成されたアセンブリは、巻取マンドレルの回転軸に沿って支持構造に対して並進で移動され得る。巻取マンドレルが並進で移動するこの自由度により、含浸マンドレル上に繊維組織を巻き取るのを開始する前にこのマンドレルを含浸マンドレルと位置合わせさせることができる。
【0035】
巻取マンドレルを並進で移動させるためのシステムは、例えばウォームスクリュータイプのロッド24によって形成されることができ、このウォームスクリュータイプのロッド24は、巻取マンドレルに結合され、巻取機の支持構造12に締結される1つの端部とハンドホイール26が取り付けられるその他の端部とを有する。したがって、ハンドホイールによる駆動によってロッドを回転させると、巻取マンドレル14、そのシャフト20、およびその電気モータ22によって構成されるアセンブリは、支持構造に対して並進で移動することになる。
【0036】
巻取機の含浸マンドレル16は、巻取マンドレルに蓄積された繊維組織の重なり合った層を受け取ることになる。これは、製造されることになるケーシングの内表面のプロファイルに対応するプロファイルの外表面28、ならびに2つの側面板30を有する。
【0037】
含浸マンドレルは、水平シャフト32(
図3)によって担持され、これは、巻取マンドレルの回転軸20に平行であり、巻取機の支持構造12に回転するように取り付けられる1つの端部と、電気モータ34、例えばAC電気歯車モータの出口シャフトに結合されるその他の端部とを有する。
【0038】
制御ユニット36は、2つのマンドレルの電気モータ22および34に接続され、各マンドレルの回転速度が監視され制御され得るようになる。より一般的には、制御ユニットは、巻取機の運転パラメータの全て、および特にモータ駆動される場合の巻取マンドレルの並進での移動を管理する働きをする。
【0039】
巻取機10の支持構造12は、含浸マンドレル上に繊維組織を巻き取る前に巻取マンドレルを含浸マンドレルに位置合わせさせるのに寄与するために、マンドレルから上方へ垂直方向に取り付けられる光学的観測手段を有するクロスビーム38を支持する。
【0040】
より正確には、光学的観測システム40(例えば、光ビームを放射するレーザ)は、マンドレルの上方のクロスビームに回転自在に取り付けられる。
図1に示されるように、この光学的観測システムは、巻取機のマンドレルのうちの一方または他方を視認することができるように取り付けられるクロスビーム38を中心に枢動することができる。また、光学的観測システムは、含浸マンドレルの外表面28の全幅にわたって任意の点を視認することができるようになる、横方向に移動する自由度を持っている(
図3)。
【0041】
巻取マンドレル14は、次のように繊維組織を巻き取る前に含浸マンドレル16に位置合わせされる。
【0042】
初めに、視覚的マーカー42が、含浸マンドレルの外表面28に配置され、光学的観測システム40が、その光ビームを視覚的マーカーに位置合わせさせるように横方向に作動され、移動される。次いで、光学的観測システムは、この位置で横方向にロックされ、巻取マンドレルから上方へ垂直方向になるようにクロスビーム38を中心に枢動される。この位置において、光学的観測システムは、巻取マンドレル14上で丸くされた繊維組織18を視認する。
【0043】
含浸マンドレルに対して適切に位置合わせされる巻取マンドレルを得るためには、(「トレーサヤーン」と呼ばれる)繊維組織の、および含浸マンドレルの視覚的マーカーの位置と関連付けられる繊維組織の位置の、特定の経糸44を、光学的観測システムによって放射される光ビームと位置合わせ状態にもって来ることが必要である。このために、巻取マンドレルは、トレーサヤーン44が光学的観測システムによって放射される光ビームと位置合わせ状態になるまで、ハンドホイール26を作動させることによってその回転軸に沿って並進で移動される。
【0044】
いったん巻取マンドレルが含浸マンドレルに対して適切に位置合わせされると、含浸マンドレル上での繊維組織の巻取を開始することができる。巻取マンドレルの繊維組織の自由端は、初めは含浸マンドレルに締結され、次いで、マンドレルを回転駆動するためのモータが、作動され、制御される。
【0045】
より正確には、マンドレルを回転駆動するための電気モータは、繊維組織に適切な巻取張力を加えるように制御ユニットによって制御され、この張力は、制御ユニットによって所定の誘導電流に変換されるあらかじめ定義された設定値張力を適用することによって監視され、この所定の誘導電流は、巻取に対抗するトルクを有するマンドレルの1つ(通常、巻取マンドレル)に加えられる。マンドレルの回転速度は、同様に制御ユニットによって制御される。
【0046】
また、巻取機10は、
図4〜
図6に示されるような本発明の圧密成形装置100を有する。この装置は、繊維組織層が含浸マンドレル16上に巻き取られている間に繊維組織層の圧密成形を改善する働きをする。
【0047】
圧密成形装置100は、主として、圧密成形ローラ104および2つの圧密成形ホイール106がその上に取り付けられたフレーム102を備えている。
【0048】
図2に示されるように、この圧密成形装置は、圧密成形ローラが含浸マンドレルの外表面28を圧迫し、圧密成形ホイールが含浸マンドレルの外表面と側面板との間に形成される隅部を圧迫する作業位置(
図2の実線)と、圧密成形ローラおよびホイールが含浸マンドレルから分離される上昇位置(
図2の破線)との間を移動可能である。
【0049】
圧密成形装置は、巻取および含浸マンドレルを支持する巻取機の支持構造12に締結される。より正確には、圧密成形装置のフレーム102は、水平軸110を中心に回転するように支持構造の1つの端部に取り付けられるアーム108を有する。その本体を支持構造に締結させ、そのロッドをフレームに締結させるアクチュエータ112は、圧密成形装置を水平軸110を中心に枢動させる働きをし(
図2を参照されたい)、したがって、その作業位置からこれを上昇させる。
【0050】
また、圧密成形装置は、圧密成形ローラおよびホイールに振動を与えるための手段を有する。例えば、これらの手段は、フレームに取り付けられる2つの電気バイブレータ112によって構成され得る。これらのバイブレータは、それ自体よく知られている機能を実行し、これらは、フレームから圧密成形ローラおよびホイールまで伝達する振動を発生させ、次いで、この振動は、繊維組織の層が巻き取られている間に繊維組織の層へのマイクロピーニングに変換される。したがって、このマイクロピーニングは、プリフォームを圧密成形する効果を増幅する働きをする。
【0051】
圧密成形装置の圧密成形ローラのさまざまな有利な構成が下記に説明される。
【0052】
これらの有利な構成のうちの1つによれば、ローラの位置を、含浸マンドレルに巻き取られるプリフォーム上に正確に調整するために、フレームに対して圧密成形ローラの位置を調整することができるように、準備が行われる。
【0053】
このために、圧密成形ローラ104は、圧密成形装置のフレーム102に固定される2つの板114の間で回転するように取り付けられる。より正確には、各板は、フレームの残部に対して水平軸118を中心に枢動することができる歯付きホイール116を使って枢動するように強いられる1つの端部を有する。各板114については、ハンドホイール122によって作動されるのに適したウォームスクリュー120は、歯付きホイール116、したがって板を水平軸118を中心に枢動させる働きをし、それによって、圧密成形ローラをフレームに対して枢動させる。
【0054】
したがって、
図7Aおよび
図7Bに示されるように、ハンドホイール122のうちの1つが回転されると、それに固定されたウォームスクリュー120によって、結合する板が水平軸118を中心に枢動することになる。これにより、圧密成形ローラ104の対応する端部がフレームに対して移動することになる。このように、2つのハンドホイール122を操作することによって、圧密成形ローラの位置をフレームに対して調整することができる。
【0055】
もう1つの有利な構成によれば、圧密成形ローラ104の外表面は、圧密成形装置がその作業位置にあるときに圧密成形ローラが圧迫する含浸マンドレル16の外表面28のプロファイルに対応するプロファイルを有する。
【0056】
さらに、
図4に示されるように、圧密成形ローラ104は、互いから独立して回転可能な複数の長手方向ローラ部分104a、104b、104c等を有することが好ましい。通常、保持ケーシングの直径は、その2つの端部の間で変化する。したがって、互いに対して回転するのが自由なローラの長手方向部分を有することにより、圧密成形ローラが含浸マンドレルの全ての点で転動できるようになるように、その部分の間の回転速度差を許容することができる。
【0057】
圧密成形装置の圧密成形ホイールのさまざまな有利な構成が下記に説明される。
【0058】
圧密成形ローラに関する限りでは、フレームに対して圧密成形ホイールの位置を調整することができるように準備を行うことが有利である。
【0059】
このために、各圧密成形ホイール106は、クランプを形成する第1の部分と、スライダを形成する第2の部分とを有するホイール支持体124に取り付けられる。
【0060】
図8Aおよび
図8Bに示されるように、ホイール支持体の第1の部分126は、圧密成形ホイールの位置をフレーム対して長手方向に調整できるようになるように、フレーム102に締結された長手方向ロッド130上を摺動するのに適している。ロッキングシステム(図示せず)により、クランプを所定の位置に保持できるようになる。
【0061】
ホイール支持体の第2の部分128は、第1の部分に締結され、これは、圧密成形ホイールの位置をフレームに対して半径方向に調整できるようになるように、第1の部分に対して半径方向に摺動するのに適している。
【0062】
このために、各ホイール支持体の2つの部分の間の締結が、ウォームスクリューおよびナットを備えるタイプの接続部を使って行われ、一方向または他方向に回転されると、第1の部分に固定されたウォームスクリュー132は、第2の部分を第1の部分の案内レール134に沿って摺動させる働きをし、そのレールは半径方向に延在している。換言すれば、ウォームスクリューを一方向または他方向に回転させると、ホイール支持体の第2の部分は、静止したままである第1の部分に対して半径方向に移動することになる。ウォームスクリュー132を中心に、かつホイール支持体の2つの部分の板の間に取り付けられたばね136は、まず第1にホイールによってプリフォームに加えられる圧密成形力を調整し、第2にプリフォームの形状の不規則を吸収する働きをする。
【0063】
圧密成形装置の他の有利な構成が下記に説明される。
【0064】
特に、圧密成形ローラ104および圧密成形ホイール106は、エラストマー材料で作られたコーティングで覆われ得る。この種のコーティングは、均一な圧力が含浸マンドレルの外表面の全てに点に加えられることを確実にするように、圧密成形ローラおよびホイールのプロファイルを、含浸マンドレルに巻き取られるプリフォームのプロファイルに正確に適合できるようにする働きをする。
【0065】
さらに、
図2に示されるように、含浸マンドレル16の作業位置にある場合、圧密成形装置100は、圧密成形ローラ104の軸がマンドレルの回転中心を含む垂直平面Pに対して約20°の角αに設定され、次に圧密成形ホイール106の軸が30°〜45°の範囲内にある角βによって前記平面Pから間隔を置かれるように、角度をなして配置される。
【0066】
図2のこの作業位置において、圧密成形ホイール106は含浸マンドレルの繊維組織の前方方向に対して圧密成形ローラ104の後ろに位置していることが観察されるべきである。もちろん、逆の構成を考えることもできる。