【実施例】
【0051】
以下、本発明について、実施例に基づいて、さらに詳細に説明する。本発明は、以下の実施例に何ら限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲において適宜変更して実施することが可能である。
【0052】
[ゼオライト]
(合成例1)
10質量%酢酸銅水溶液1000mlとZSM−5型ゼオライト(HSZ−840NHA、東ソー株式会社製)400gとを混合し、60℃で12時間撹拌することでスラリーを調製した。調製したスラリーの固形分を濾別し、1000mlのイオン交換水で洗浄した後、110℃にて6時間乾燥した。
【0053】
得られた粒子状固体を蛍光X線にて測定し、ゼオライトのイオン交換サイトが銅にイオン交換されていることを確認した。なお、得られたゼオライトは実施例16及び比較例3で使用した。
【0054】
[酸化物]
(合成例2)
炭酸ナトリウム32.3質量部、酸化アルミニウム31.1質量部、及び酸化ケイ素36.6質量部を混合し、1200℃で4時間焼成した。得られた粒子状固体が、X線回折によりNaAlSiO
4の単相であることを確認した。
【0055】
〔排ガス浄化フィルタの製造〕
(実施例1)
ZSM‐5型ゼオライト(HSZ‐840NHA:東ソー株式会社製)20質量部に対し、チタン酸アルミニウム(丸ス釉薬社製)80質量部、合成例2で製造したNaAlSiO
4を10質量部、黒鉛3質量部、メチルセルロース10質量部、及び脂肪酸石鹸0.5質量部を配合し、さらに水を適当量添加して混練し、押出成形可能な坏土を得た。
【0056】
得られた坏土を押出成形機にてハニカム構造体となるように押し出して成形し、成形体を得た。金型のセル密度は、300セル/平方インチ(46.5セル/cm
2)とし、隔壁厚みは300μmとした。
【0057】
固形分がほぼ上記の粒状チタン酸アルミニウム粒子とゼオライトとからなり、粘度調整材等の添加物を加えたスラリーを調製した。なお、スラリー中における固形分の比率は上記と同様である。ハニカム構造体である成形体において、開口したセルと封止したセルが交互に市松模様となるように、ハニカム構造体のセルに、このスラリーを注入し、目封じを行った。
【0058】
得られた成形体を、600℃で10時間保持し、その後25℃/時間で1000℃まで昇温し、1000℃で10時間保持して焼成することで、細孔径11μm、気孔率48%のハニカム構造体を得た。
【0059】
得られたハニカム構造体をpH10.0に調整したケイ酸ナトリウム水溶液に含浸させ、80℃で24時間保持した後、流水で充分に洗浄し60℃にて乾燥を行った。
【0060】
次に、10質量%酢酸銅水溶液に含浸させ、60℃で12時間保持した。その後イオン交換水で充分洗浄し、600℃で2時間加熱することで排ガス浄化フィルタを製造した。
【0061】
(実施例2)
pH10.0に調整したケイ酸ナトリウム水溶液を、pHを11.0に調整したケイ酸ナトリウム水溶液に変更した以外は、実施例1と同様の方法で排ガス浄化フィルタを製造した。
【0062】
(実施例3)
pH10.0に調整したケイ酸ナトリウム水溶液を、pHを12.0に調整したケイ酸ナトリウム水溶液に変更した以外は、実施例1と同様の方法で排ガス浄化フィルタを製造した。
【0063】
(実施例4)
pH10.0に調整したケイ酸ナトリウム水溶液を、pHを10.0に調整した水酸化ナトリウム水溶液に変更した以外は、実施例1と同様の方法で行った。
【0064】
(実施例5)
pH10.0に調整したケイ酸ナトリウム水溶液を、pHを10.0に調整した水酸化カリウム水溶液に変更した以外は、実施例1と同様の方法で排ガス浄化フィルタを製造した。
【0065】
(実施例6)
合成例2で製造したNaAlSiO
4を、TISMO−N(大塚化学株式会社製)に変更した以外は、実施例1と同様の方法で排ガス浄化フィルタを製造した。
【0066】
(実施例7)
合成例2で製造したNaAlSiO
4を、TISMO−N(大塚化学株式会社製)に変更し、pH10.0に調整したケイ酸ナトリウム水溶液を、pHを11.0に調整したケイ酸ナトリウム水溶液に変更した以外は、実施例1と同様の方法で排ガス浄化フィルタを製造した。
【0067】
(実施例8)
合成例2で製造したNaAlSiO
4を、TISMO−N(大塚化学株式会社製)に変更し、pH10.0に調整したケイ酸ナトリウム水溶液を、pHを12.0に調整したケイ酸ナトリウム水溶液に変更した以外は、実施例1と同様の方法で排ガス浄化フィルタを製造した。
【0068】
(実施例9)
合成例2で製造したNaAlSiO
4を、TISMO−N(大塚化学株式会社製)に変更し、pH10.0に調整したケイ酸ナトリウム水溶液を、pHを10.0に調整した水酸化ナトリウム水溶液に変更した以外は、実施例1と同様の方法で排ガス浄化フィルタを製造した。
【0069】
(実施例10)
合成例2で製造したNaAlSiO
4を、TISMO−N(大塚化学株式会社製)に変更し、pH10.0に調整したケイ酸ナトリウム水溶液を、pHを10.0に調整した水酸化カリウム水溶液に変更した以外は、実施例1と同様の方法で排ガス浄化フィルタを製造した。
【0070】
(実施例11)
合成例2で製造したNaAlSiO
4を、TISMO−D(大塚化学株式会社製)に変更した以外は、実施例1と同様の方法で排ガス浄化フィルタを製造した。
【0071】
(実施例12)
合成例2で製造したNaAlSiO
4を、TISMO−D(大塚化学株式会社製)に変更し、pH10.0に調整したケイ酸ナトリウム水溶液を、pHを11.0に調整したケイ酸ナトリウム水溶液に変更した以外は、実施例1と同様の方法で排ガス浄化フィルタを製造した。
【0072】
(実施例13)
合成例2で製造したNaAlSiO
4を、TISMO−D(大塚化学株式会社製)に変更し、pH10.0に調整したケイ酸ナトリウム水溶液を、pHを12.0に調整したケイ酸ナトリウム水溶液に変更した以外は、実施例1と同様の方法で排ガス浄化フィルタを製造した。
【0073】
(実施例14)
合成例2で製造したNaAlSiO
4を、TISMO−D(大塚化学株式会社製)に変更し、pH10.0に調整したケイ酸ナトリウム水溶液を、pHを10.0に調整した水酸化ナトリウム水溶液に変更した以外は、実施例1と同様の方法で排ガス浄化フィルタを製造した。
【0074】
(実施例15)
合成例2で製造したNaAlSiO
4を、TISMO−D(大塚化学株式会社製)に変更し、pH10.0に調整したケイ酸ナトリウム水溶液を、pHを10.0に調整した水酸化カリウム水溶液に変更した以外は、実施例1と同様の方法で排ガス浄化フィルタを製造した。
【0075】
(実施例16)
ZSM‐5型ゼオライト(HSZ‐840NHA:東ソー株式会社製)20質量部に対し、チタン酸アルミニウム(丸ス釉薬社製)80質量部、合成例2で製造したNaAlSiO
4を10質量部、黒鉛3質量部、メチルセルロース10質量部、及び脂肪酸石鹸0.5質量部を配合し、さらに水を適当量添加して混練し、押出成形可能な坏土を得た。
【0076】
得られた坏土を押出成形機にてハニカム構造体となるように押し出して成形し、成形体を得た。金型のセル密度は、300セル/平方インチ(46.5セル/cm
2)とし、隔壁厚みは300μmとした。
【0077】
固形分がほぼ上記の粒状チタン酸アルミニウム粒子とゼオライトとからなり、粘度調整材等の添加物を加えたスラリーを調製した。なお、スラリー中における固形分の比率は上記と同様である。ハニカム構造体である成形体において、開口したセルと封止したセルが交互に市松模様となるように、ハニカム構造体のセルに、このスラリーを注入し、目封じを行った。
【0078】
得られた成形体を、600℃で10時間保持し、その後25℃/時間で1000℃まで昇温し、1000℃で10時間保持して焼成することで、細孔径11μm、気孔率48%のハニカム構造体を得た。
【0079】
得られたハニカム構造体をpH10.0に調整したケイ酸ナトリウム水溶液に含浸させ、80℃で24時間保持した後、流水で充分に洗浄し60℃にて乾燥を行った。
【0080】
次に、アルカリ処理後のハニカム構造体を、10質量%酢酸銅水溶液に含浸させ、60℃で12時間保持した。その後イオン交換水で充分洗浄し、600℃で2時間加熱した。
【0081】
次に、合成例1で製造したゼオライト40質量部を、シリカゾル20質量部と水40質量部とに混ぜ合わせスラリーを調製した。調製したスラリーに上記処理後のハニカム構造体の先端を含浸し反対側の端面から吸引することでゼオライトを担持した。担持後600℃〜700℃で約4時間焼成し、排ガス浄化フィルタを製造した。
【0082】
ハニカム構造体に担持されたゼオライトの量は、チタン酸アルミニウム90質量部に対して10質量部であった。
【0083】
(比較例1)
pH10.0に調整したケイ酸ナトリウム水溶液を、pHを9.0に調整したケイ酸ナトリウム水溶液に変更した以外は、実施例1と同様の方法で排ガス浄化フィルタを製造した。
【0084】
(比較例2)
ZSM−5型ゼオライト(HSZ−840NHA:東ソー株式会社製)20質量部に対し、チタン酸アルミニウム(丸ス釉薬社製)80質量部、合成例2で製造したNaAlSiO
4を10質量部、黒鉛3質量部、メチルセルロース10質量部、及び脂肪酸石鹸0.5質量部を配合し、さらに水を適当量添加して混練し、押出成形可能な坏土を得た。
【0085】
得られた坏土を押出成形機にてハニカム構造体となるように押し出して成形し、成形体を得た。金型のセル密度は、300セル/平方インチ(46.5セル/cm
2)とし、隔壁厚みは300μmとした。
【0086】
固形分がほぼ上記の粒状チタン酸アルミニウム粒子とゼオライトからなり、粘度調整材等の添加物を加えたスラリーを調製した。なお、スラリー中における固形分の比率は上記と同様である。ハニカム構造体である成形体において、開口したセルと封止したセルが交互に市松模様となるように、ハニカム構造体のセルに、このスラリーを注入し、目封じを行った。
【0087】
得られた成形体を、600℃で10時間保持し、その後25℃/時間で1000℃まで昇温し、1000℃で10時間保持して焼成することで、細孔径11μm、気孔率48%のハニカム構造体を得た。
【0088】
得られたハニカム構造体を、10質量%酢酸銅水溶液に含浸させ、60℃で12時間保持した。その後イオン交換水で充分洗浄し、600℃で2時間加熱することで排ガス浄化フィルタを製造した。
【0089】
(比較例3)
チタン酸アルミニウム(丸ス釉薬社製)90質量部、黒鉛10質量部、メチルセルロース10質量部、及び脂肪酸石鹸0.5質量部を配合し、さらに水を適当量添加して混練し、押出成形可能な坏土を得た。
【0090】
得られた坏土を押出成形機にてハニカム構造体となるように押し出して成形し、成形体を得た。金型のセル密度は、300セル/平方インチ(46.5セル/cm
2)とし、隔壁厚みは300μmとした。
【0091】
固形分がほぼ上記の粒状チタン酸アルミニウム粒子からなり、粘度調整材等の添加物を加えたスラリーを調製した。なお、スラリー中における固形分の比率は上記と同様である。ハニカム構造体である成形体において、開口したセルと封止したセルが交互に市松模様となるように、ハニカム構造体のセルに、このスラリーを注入し、目封じを行った。
【0092】
得られた成形体を、600℃で10時間保持し、その後25℃/時間で1450℃まで昇温し、1450℃で10時間保持して焼成することで、細孔径12μm、気孔率51%のハニカム構造体を得た。
【0093】
次に、合成例1で製造したゼオライト40質量部を、シリカゾル20質量部と水40質量部とに混ぜ合わせスラリーを調製した。調製したスラリーにハニカム構造体を浸漬した。浸漬後600℃〜700℃で約4時間焼成し、排ガス浄化フィルタを製造した。
【0094】
ハニカム構造体に担持されたゼオライトの量は、チタン酸アルミニウム90質量部に対して19質量部であった。
【0095】
[排ガス浄化装置の評価]
(NOx濃度評価)
予め排ガス浄化フィルタを尿素水溶液に含浸し、50℃にて乾燥しておき、排ガス浄化フィルタを模擬排ガス排気ラインに設置する。その後、模擬排ガス(O
2:10%、N
2:90%、NO:200ppm、NO
2:200ppm)を300℃まで上昇させ、NOx濃度を測定した。結果を表1に示した。
【0096】
(PM堆積圧力損失評価)
予め排ガス浄化フィルタの初期重量を測定しておき、ディーゼルエンジンの排気ラインに、酸化触媒(DOC)と排ガス浄化フィルタを順に設置する。次いで、ディーゼルエンジンを始動させ、低温でPMを所定量(約4g/L)堆積させた後、排ガス浄化フィルタを取り外し、堆積したPMの重量を確認した後、圧力損失を測定した。結果を表1に示した。
【0097】
(フィルタ再生率)
予め排ガス浄化フィルタの初期重量を測定しておき、ディーゼルエンジンの排気ラインに、酸化触媒(DOC)と排ガス浄化フィルタを順に設置する。次いで、ディーゼルエンジンを始動させ、低温でPMを所定量(約8g/L)堆積させた後、一度排ガス浄化フィルタを取り外し、堆積したPMの重量を測定する。
【0098】
次いで、排ガス浄化フィルタを模擬排ガス排気ラインに設置した後、模擬排ガスを540℃まで上昇させ再生試験を開始した。540℃に到達した時点から30分間540℃±10℃の温度を保持し、30分経過後、模擬ガスを全量N
2に切り替えた。
【0099】
温度が室温まで低下後、再度、排ガス浄化フィルタを取り出し、重量減少分(=PM燃焼重量)を測定した。
【0100】
以下の計算式により再生率を算出した。結果を表2に示した。
【0101】
再生率(%)=100−[(PM堆積重量(g)−PM燃焼重量(g))/PM堆積重量(g)]×100
【0102】
【表1】
【0103】
【表2】
【0104】
表1に示す結果から明らかなように、本発明に従う実施例1〜15の排ガス浄化フィルタを用いた場合、NOx濃度が低下し、かつ圧力損失も低く抑えられている。これに対し、pH9.5以上の条件下でアルカリ処理を行っていない比較例1〜2の排ガス浄化フィルタを用いた場合、NOx濃度が高くなっている。又、浸漬法でゼオライトを担持した比較例3は、NOx濃度は低いが、圧力損失が大きい。また、実施例16の排ガス浄化フィルタを使用した場合は、圧力損失のわずかな増加はあるが十分に抑制されており、しかもNOx濃度を著しく低くすることができている。