【実施例1】
【0017】
図1(a)および
図1(b)は、実施例1に係るタッチ入力装置のタッチ部の平面図および斜視図である。タッチ部15はフィルム10で覆われている。フィルム10は、上方向に膨らんだ膨出部12から平坦面14に延在している。フィルム10の表面には、第1検出領域13と第2検出領域18が形成されている。第1検出領域13は、膨出部12に形成され、第2検出領域18は、平坦面に形成されている。第1検出領域13は、指等の対象物が接触することによりX方向(第1方向)とX方向に交差するY方向(第2方向)との座標を検出する。第1検出領域13は、膨出部12内に設け、平坦面14には設けなくてもよい。また、第1検出領域13は膨出部12と平坦面14に設けられてもよい。第2検出領域18は、第1検出領域13以外において、対象物がフィルム10の表面に接触することにより座標は検出せず接触の有無を検出する。フィルムタッチ部15には信号を入出力するためのケーブル16が接続されている。
【0018】
図2は、
図1(b)のA−A断面図である。タッチ部15は、樹脂台座20、下部フィルム22、下部導電膜31、ドットスペーサ26、上部導電膜33および上部フィルム10が積層して設けられている。樹脂台座20上に下部フィルム22、下部フィルム22上に下部導電膜31が設けられている。樹脂台座20の代わりにフィルムが用いられてもよい。ドットスペーサ26は互いに離間しており、上部導電膜33はドットスペーサ26と離間している。下部導電膜31と上部導電膜33とは貼付部材28により貼り付けられている。下部導電膜31と上部導電膜33との間には空隙23が形成される。
【0019】
樹脂台座20は、例えばプラスチック等の変形を抑制する材料を用いる。下部フィルム22および上部フィルム10は、例えば透明なフィルムであり、ポリエチレンテレフタレートを用いることができる。下部導電膜31および上部導電膜33は、例えば透明導電膜であり、ITO(酸化インジウム錫)を用いることができる。ドットスペーサ26は、例えば絶縁性の材料であり、アクリル樹脂を用いることができる。貼付部材28は、例えば両面テープである。
【0020】
タッチ部15においては、通常は、第1上部導電膜33と第1下部導電膜31とは接触していない。上部フィルム10に指等の対象物が接触すると、上部フィルム10および上部導電膜33が撓む。上部導電膜33がドットスペーサ26の隙間から下部導電膜31に接触する。上部導電膜33と下部導電膜31とが接触した位置を検出することにより、対象物が接触した座標を検出できる。
【0021】
例えば平坦面14におけるドットスペーサ26の間隔は、膨出部12における間隔より狭い。これにより、膨出部12においては、指等の対象物の接触により、下部導電膜31と上部導電膜33とが接触し易く、平坦部14においては、下部導電膜31と上部導電膜33とを接触し難くすることができる。このように、ドットスペーサ26の間隔を狭くする領域を設定することにより、第1上部導電膜33と第1下部導電膜31とが設けられた領域においても、対象物の接触しても検出しない不感領域とすることもできる。また、ドットスペーサ26は、下部導電膜31および上部導電膜33の少なくとも一方側に設けられていればよい。
【0022】
平坦面14と膨出部12との境界において、上部フィルム10および上部導電膜33が曲線状25をしている。これにより、境界における応力を緩和し、応力に起因した上部フィルム10および上部導電膜33の破損を抑制できる。
【0023】
図3は、実施例1のタッチ部の解体斜視図である。
図3においては、上部フィルム10と下部フィルム22とを分離して図示している。なお、第1上部導電膜33、第2上部導電膜34、上部端子35および36並びに配線59は、上部フィルム10を透視して図示している。上部フィルム10の下面には、第1上部導電膜33および第2上部導電膜34が形成されている。第1上部導電膜33および第2上部導電膜34は、それぞれ導電性の配線59を介し導電性の上部端子35および36に電気的に接続されている。下部フィルム22の上面には、第1下部導電膜31および第2下部導電膜32が形成されている。第1下部導電膜31の4辺には、X方向に対向したX電極40および41、Y方向に対向したY電極42および43が設けられている。下部フィルム22の上面に、上部端子35および36と電気的に接続するための下部端子37および38が形成されている。X電極40および41、Y電極42および43、第2下部導電膜32、並びに下部端子37および38は、導電性の配線58を介しケーブル16と電気的に接続されている。
【0024】
第1下部導電膜31、第2下部導電膜32、下部端子37および38は、例えば下部フィルム22上に導電膜を形成し、導電膜をレーザエッチング等で選択的に除去することにより形成できる。第1上部導電膜33、第2上部導電膜34、上部端子35および36も同様に形成できる。
【0025】
図4は、実施例1に係るタッチ入力装置を示す図である。タッチ入力装置100は、タッチ部15と制御部50とを備える。タッチ部15は、
図3において説明した構成とほぼ同じであり説明を省略する。制御部50は、検出部52および54、負荷Z、スイッチSW1およびSW2並びに電源V1およびV2を備えている。電源V1は直流電圧をX電極40および41間に印加する。スイッチSW1は、電源V1とX電極40または41との間に設けられている。電源V2は直流電圧をY電極42および43間に印加する。スイッチSW2は、電源V2とY電極42または43との間に設けられている。
【0026】
第1検出領域13において、対象物がフィルム10に接触し、フィルム10の第1検出領域13内の座標Pに応力Fが加わった場合について説明する。第1下部導電膜31の点Qにおいて、第1下部導電膜31と第1上部導電膜33とが電気的に接触する。まず、スイッチSW2をオフ、スイッチSW1をオンする。X電極40と41との間に電圧V1が印加される。第1下部導電膜31は、点QにおいてX方向の抵抗R0とR1とに分割される。よって、第1上部導電膜33の電位は、電圧V1が抵抗R0とR1とで抵抗分割された電圧Vxとなる。検出部52は、電圧Vxから座標PのX座標を検出する。次にスイッチSW1をオフ、スイッチSW2をオンする。Y電極42と43との間に電圧V2が印加される。第1下部導電膜31は、点Qにおいて
Y方向の抵抗R2とR3とに分割される。よって、第1上部導電膜31の電位は、電圧V2が抵抗R2と
R3とで抵抗分割された電圧Vyとなる。検出部52は、電圧Vyから座標PのY座標を検出する。以上のように、対象物がフィルム10に接触した座標P(X,Y)を検出できる。このように、第1検出領域13を、5線式抵抗膜方式を用い形成することができる。
【0027】
図5は、第2検出領域における検出を説明する図である。
図4および
図5に示すように、第2下部導電膜32はグランドに電気的に接続されている。第2上部導電膜34は、検出部54に電気的に接続されている。第2上部導電膜34と検出部54と間のノードは負荷Zを介し電源Vddに電気的に接続されている。フィルム10の第2検出領域18内に応力が加わった場合、第2上部導電膜34が第2下部導電膜32に接触する。これにより、検出部54にはグランドレベルが入力する。一方、第2上部導電膜34と第2下部導電膜32とが接触していない場合、検出部54には電源レベルが入力する。これにより、検出部54は、第2検出領域18において、対象物がフィルム10に接触したか否かを検出できる。なお、グランドと電源Vddは、2つの電位差のある電源であればよい。
【0028】
実施例1によれば、第1検出領域13が膨出部12に形成されている。これにより、ユーザがカーソル等を移動させる際に、立体的な感覚で操作できる。膨出部12としては半球形以外にもドーム状または多面体等でもよい。さらに、第1検出領域13と同一フィルム10の表面に第2検出領域18が形成されている。第2検出領域18は、座標は検出せず、対象物の接触の有無を検出する。これにより、スイッチ機能を設けることができる。同じフィルムの表面に第1検出領域13と第2検出領域18を設けているため、操作性を向上できる。
【0029】
また、第1検出領域13と第2検出領域18との間の領域は、フィルム10の表面に対象物が接触されても検出されない不感領域である。これにより、第1検出領域13を操作するつもりで第2検出領域18を操作してしまう等の誤動作を抑制できる。よって、より操作性が向上する。
【0030】
図3のように、第1上部導電膜33は、第1下部導電膜31直上に離間し設けられている。第2上部導電膜34は、第2下部導電膜32直上に離間し設けられている。検出部52は、第1検出領域13において、第1上部導電膜33と第1下部導電膜31とが接触した箇所から座標を検出する。検出部54は、第2検出領域18において、第2上部導電膜34と第2下部導電膜32が接触したことを検出する。このように、第1検出領域13と第2検出領域18との上部導電膜は電気的に分離され、下部導電膜も電気的に分離されている。これにより、第1検出領域13を操作するつもりで第2検出領域18を操作してしまう等の誤動作を抑制できる。よって、より操作性が向上する。
【0031】
図6(a)は、実施例1の変形例1のタッチ部の斜視図である。
図6(a)に示すように、第1検出領域13を膨出部12以外には設けず、第2検出領域18を平坦面14に設けることもできる。さらに、複数の第2検出領域18を膨出部12の同じ方向に設けてもよい。
【0032】
実施例1および変形例1においては、第2検出領域18が平坦面14に設けられている。これにより、ユーザは、第2検出領域18と第1検出領域13とを間違えて操作することを抑制できる。例えば、実施例1の変形例1のように、第1検出領域13は平坦面14に設けられていない。例えば、第1検出領域13と膨出部12とが一致している。これにより、ユーザは、第2検出領域18と第1検出領域13とを感触により区別することができる。また、第1検出領域13と第2検出領域18との距離を片手で操作できる範囲とすることが好ましい。
【0033】
図6(b)は、実施例1の変形例2のタッチ部の斜視図である。
図6(b)に示すように、第2検出領域18を膨出部12に設けてもよい。
【0034】
実施例1の変形例1および2のように、複数の第2検出領域18を膨出部12の同一方向に設けることにより、第2検出領域18をマウスボタンとして用いることができる。
【0035】
図7は、表示画面を示す図である。
図7に示すように、表示画面70にカーソル72が表示されている。表示画面70は、例えば検出部52および54からの出力信号が入力する表示装置の表示画面である。第1検出領域13を用い、表示画面70上のカーソル72を移動させる。一方、第2検出領域18を、マウスボタンに対応させることができる。このように、膨出部12を用い、XY方向にカーソルを動かす操作を行ない、第2検出領域18を用いマウスの右クリックおよび左クリックを行なうことができる。これにより、タッチ入力装置をマウス感覚で操作することができる。
【実施例2】
【0036】
図8は、実施例2のタッチ部の斜視図である。
図8に示すように、実施例1の変形例1に比べ、平坦面14に第3検出領域60が設けられている。その他の構成は、実施例1の変形例1と同じであり、説明を省略する。
【0037】
図9は、実施例2のタッチ部の解体斜視図である。上部フィルム10の下面には、第3上部導電膜62が形成されている。第3上部導電膜62は、配線59を介し導電性の上部端子65に接続されている。下部フィルム22の上面には、第3下部導電膜61が形成されている。第3下部導電膜61には、Y方向に対向したY電極63および64が設けられている。下部フィルム22上に、上部端子65と電気的に接続するための下部端子66。Y電極63および64、並びに下部端子66は、導電性の配線58を介しケーブル16と電気的に接続されている。その他の構成は、実施例1の
図3と同じであり説明を省略する。
【0038】
図10は、第3検出領域における検出を説明する図である。制御部50は、スイッチSW3および電源V3を備えている。電源V3は直流電圧をY電極63および64間に印加する。スイッチSW3は、電源V3とY電極63または64との間に設けられている。第3検出領域60において、対象物がフィルム10に接触した場合について説明する。第3下部導電膜61の点Rにおいて、第3下部導電膜61と第3上部導電膜62とが電気的に接触する。まず、スイッチSW3をオンする。Y電極63と64との間に電圧V3が印加される。第3下部導電膜61は、点RにおいてY方向の抵抗R4とR5とに分割される。よって、第3上部導電膜62の電位は、電圧V3が抵抗R4とR5とで抵抗分割された電圧Vyとなる。検出部68は、電圧Vyから点RのY座標を検出する。このように、第3検出領域60は、3線式抵抗膜方式のタッチパネルである。なお、
図10では、第3検出領域60は、Y方向の座標を検出しているが、第3検出領域60は、任意の一方向の座標を検出できる。このように、第3検出領域60を、3線式抵抗膜方式を用い形成することができる。
【0039】
実施例2によれば、第3検出領域60は、第1検出領域13および第2検出領域18以外において、対象物がフィルム10の表面に接触することにより一方向の座標を検出する。第3検出領域60は、例えば、表示画面の輝度、カーソルの移動量を設定するためのスライドボリュームとして用いることができる。このように、一方向の座標を検出できる第3検出領域60を設けることにより、ユーザの操作性を向上できる。
【0040】
第3検出領域60と、を第1検出領域13および第2検出領域18と、の間の領域を不感領域とする。これにより、第1検出領域13または第2検出領域18を操作するつもりで、第3検出領域60を操作してしまう等の誤動作を抑制できる。
【0041】
実施例1から2においては、主にタッチパネルを例に説明したが、タッチパッドであってもよいことは言うまでもない。また、5線抵抗方式を例に説明したが、静電容量方式等他の方式のタッチパネルまたはタッチパッドであってもよい。
【0042】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明は係る特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。