(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6199594
(24)【登録日】2017年9月1日
(45)【発行日】2017年9月20日
(54)【発明の名称】テープカッター
(51)【国際特許分類】
B65H 35/07 20060101AFI20170911BHJP
B26D 1/02 20060101ALI20170911BHJP
【FI】
B65H35/07 F
B26D1/02 F
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-86932(P2013-86932)
(22)【出願日】2013年4月1日
(65)【公開番号】特開2014-201443(P2014-201443A)
(43)【公開日】2014年10月27日
【審査請求日】2016年3月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】502029633
【氏名又は名称】株式会社プレーン
(74)【代理人】
【識別番号】100099357
【弁理士】
【氏名又は名称】日高 一樹
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 弘明
【審査官】
西本 浩司
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2002/0185512(US,A1)
【文献】
実開昭59−093896(JP,U)
【文献】
特許第4118911(JP,B2)
【文献】
特開2012−056772(JP,A)
【文献】
米国特許第04210043(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 35/00,35/07
B26D 1/00 − 1/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘着材が塗布され巻回された粘着テープがケースに収納され、該ケースの一端に該粘着テープを切断する刃先が植設されたテープカッターであって、該刃先が三角形の山形状を多数連接させた形状で、かつ該粘着テープに当接する該三角形の山形状の頂点が、隣接する該三角形の山形状とのピッチの3倍以上の長さを粘着テープ長手方向に有する刃稜線を成したことを特徴とし、かつ、前記粘着テープが当接する平坦な粘着テープ仮留め部が、前記刃稜線の粘着テープロール支持部側に連接されており、かつ該刃稜線と、該粘着テープが当接する平坦な該粘着テープ仮留め部は同一面にあるか、あるいは該刃稜線が該粘着テープ仮留め部の平坦な面より低い位置にあることを特徴とするテープカッター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着テープが巻回されたロールから、粘着テープを引き出して任意の位置で切断するテープカッターに関するものである。
【背景技術】
【0002】
携帯可能な、または机上に置かれる小型の粘着テープカッターに於いては、金属板を打ち抜いた刃を植設した従来例が多く存在する。この従来例の刃形状に於いては、三角形の山形状を連接した鋸刃として切断性を確保したものが代表的である。
【0003】
しかしながら、三角形の山形状を多数連接させた鋸刃においては、粘着テープの切断跡がぎざぎざで美観を損なうため、金属板を直線状にプレスで打ち抜き、その際に発生する鋭利なバリを刃としたものも知られている。(特許文献1)
【0004】
さらに、三角形の山形状を多数連接させた鋸刃においては、粘着テープの切断跡がぎざぎざで美観を損なうと同時に、使用者にとって鋸刃の頂点が鋭利で危険であるため、美観と安全性の両面から改良した矩形の刃形状を有したものも知られている。(特許文献2、特許文献3)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開S59−54451号公報
【特許文献2】特許4118911号公報
【特許文献3】特開2012−56772号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記ひとつ目の提案(特許文献1)に於いては、プレス製造過程におけるバリの高さの制御が難しく、またバリは容易に磨耗するため耐久性に乏しい。
【0007】
前記ふたつ目の提案(特許文献2)及び三つ目の提案(特許文献3)に於いては、鋸刃に代えて矩形の刃形状としたことが特徴であるが、粘着テープを破断するきっかけとなる刃先の一点が鋭角でなく、ほぼ90度に直交した
二つの面の交線で構成され、さらに切断方向に一定の長さを有する線状であるため、粘着テープの基材が、伸張性が少なく容易にせん断可能な硬いものでないと所望の切断ができない、などの欠点を有する。【0008】
以上のように、従来知られている方法では実用性が乏しく、また切断性も劣るため、さらなる改良が望まれていた。
【0009】
そこで、本発明は、簡単な構成で、粘着テープの切断跡がぎざぎざにならず、切断性と安全性を両立させた刃を実現させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、三角形の山形状を多数連接した刃形状を、粘着テープ長手方向に押し出して隣接する三角形の山形状とのピッチの3倍以上の量の厚さとすることで、粘着テープの粘着面に当接する三角形の山形状の頂点が、テープが引き出される方向に刃稜線を形成し、その刃稜線で粘着テープが仮留めされる構成とした。
前記刃稜線は、連接した平坦な粘着テープ仮留め部と同面上に位置するか、あるいは低い位置とした。
【発明の効果】
【0011】
本発明の解決手段によれば、
使用者が粘着テープ引き出し部を所望の長さまで引き出して粘着テープ仮留め部で位置決めした後、三角形の山形状の頂点で粘着テープを切断すると同時に、一定の長さを有する線状の刃稜線で
粘着テープの伸張を抑えるので切断跡がぎざぎざにならない。
また、点状の刃先が粘着テープ引き出し方向に三角形ピッチの3倍以上の長さを有する稜線を成すため、刃の強度が保たれ不意に触っても安全である。
また、刃稜線と同じか、あるいはそれより高い位置に平坦な粘着テープ仮留め部が連接しているので位置決めしやすい。また刃稜線は鋭利な点状突起を有さないため安全性が高い。【0012】
以上のように、テープ長手方向に一定の長さを有する刃稜線によって粘着テープ切断性向上と安全性を両立させた本発明の効果は明らかなものである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図2】本発明の実施例のカバーを外した状態の斜視図である。
【
図3】本発明によらない従来例のひとつのカッターの拡大斜視図である。
【
図4】本発明によらないもうひとつの従来例の刃先の拡大斜視図である。
【
図6】
図5におけるB−B断面図である。尚、
図5で省略された粘着テープも表している。
【
図7】本発明によらない、さらにもうひとつの従来例の刃先の拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を、図を基に説明する。
【0015】
図1に示す通り、本発明の実施例のテープカッター1はケース2とカバー3からなる箱体で、ケース本体21に配設されたローラー22に案内された粘着テープ4aがケース本体21の外部に導かれ、粘着テープ仮留め部23に仮留めされている。
【0016】
図2に示す通り、ケース本体21の内部には粘着テープロール支持部20が配設され、巻回された粘着テープ4を回転可能に保持している。
【0017】
図3から
図7までを用いて、従来例を説明する。
【0018】
図3は従来例のひとつで、薄い金属板を打ち抜いたカッター5がケース本体21の一端に固定され、カッター5の背後(図で右側)には、ケース本体21の一部であるくぼみ23aと粘着テープ仮留め部23が位置している。くぼみ23aは、カッター刃5aを突出させて、図示されていない粘着テープ引き出し部4aに当設させるために設けられている。カッター刃5aは三角形の山形状が多数連接された鋸刃形状を成している。
【0019】
図4はもうひとつの従来例で、刃先23bはケース21と一体に形成されている。この例においても
図5同様、くぼみ23aが設けられ、また刃先23bは三角形の山形状が多数連接された鋸刃形状を成している。
【0020】
図5、
図6を用いて、粘着テープの切断跡がぎざぎざになる上記二つの従来例の欠点を説明する。
図5に示す通り、三角の山形状と隣接する山形状とはピッチPで多数連設されている。また山形状の頂点はごくわずか刃稜線長さLを有しており、この刃稜線長さLはピッチPと同等か、あるいはより小さい値である。
【0021】
このような刃を使用して粘着テープを切断するとき、
図6に示すように、使用者が引き出した粘着テープ引き出し部4aは、刃先23bに当設した部分が伸ばされ、粘着テープ伸張部4bに弾性限度を超えた歪みとして残留する。
この歪みが粘着テープの切断線をぎざぎざにする大きな要因となっている。
【0022】
図7は、その粘着テープの切断線に残るぎざぎざを解消したもうひとつの従来例である。
【0023】
この従来例に於いては、鋸刃に代えて矩形の刃形状としたことが特徴であり、刃先23bは縦構成面231と横構成面232の交線でありスリット233に於いて分断されて複数の刃先23bとされている。その刃先23bの一端において、図示していないが粘着テープ引き出し部4aを破断するきっかけをつくり、刃先23bに沿って切断する方法を採っている。
【0024】
しかしながら、粘着テープ引き出し部4aを破断するきっかけとなる刃先23bの一端は、ほぼ90度に直行した3つの面の交点で、鋭利とは言いがたく、ほぼ90度に直交した2つの面の交線である刃先23bも同様に鋭利とは言いがたい。
【0025】
以上の要因で、
図7の従来例は、実用的には、粘着テープは弾性が小さくせん断しやすい材料をテープ基材としたものに限られる。
【0026】
図8は本発明の実施例で、三角形の山形状が連接された刃先23bは、山形状の頂点が粘着テープ引き出し部4a(図省略)長手方向に刃稜線長さLだけ押し出されて刃稜線23cを形成している。
【0027】
刃先23bは、山形状の頂点の集合なので、粘着テープの切断性は良好である。
【0028】
また、刃稜線23cは背後(図示右側)の粘着テープ仮留め部23の平坦な面と同じ高さ
か、あるいは若干低い位置で連接している。
【0029】
また、三角形の山形状のピッチPに対し、刃稜線長さLは十分に長く、粘着テープ引き出し部(図示省略)を仮留めすることが可能であると同時に、粘着テープ伸張部4b(図示省略)の発生を抑制することが可能である。
【0030】
ここで、本発明の実施例におけるピッチPと刃稜線長さLの関係について説明する。
【0031】
粘着材が塗布されるテープ基材は、巻回されるためBOPP等の弾性材料が使用される。弾性材料においては、一方向に加えられた力による歪みは、直交する方向にも伝播し、その両者の比率はポアソン比として知られている。
【0032】
一般の弾性材料の場合、このポアソン比は0.4から0.5の間にある。つまり一方向に加えられた力と同じ方向に生じた歪みの半分以下の歪みが、その直行方向に発生することを示す。
【0033】
本発明の実施例の場合、粘着テープ引き出し部4aには、その長手方向、言い換えると刃稜線長さLに沿った方向に引き出し力が加わる。その結果、その直行方向、言い換えるとピッチPに沿った方向にも歪む。
【0034】
ピッチPに沿った方向の歪みを抑制するにはピッチPを出来るだけ小さくすることが有効であることは、従来の多くの例で実施、検証されているが、刃稜線長さLに沿った方向の歪みを押さえる手段は、従来例にはない。
このピッチPは使用するテープの材質、厚み当により適宜設定されるべきものである。
【0035】
そこで、本発明ではその点に着目し、粘着テープのポアソン比を0.4と仮定し、ピッチPに対して、その逆数1÷0.4=2.5倍以上の長さの刃稜線長さ
Lによって粘着テープを仮留めし、粘着テープ長手方向の歪みを抑え、粘着テープ切断線に生じるぎざぎざを抑制した。
【0036】
以上、本発明の実施例を示したが、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、様々な応用が可能であり、特に、コンパクトな携帯型テープカッターにおいては、本発明の効果は顕著なものである。
【符号の説明】
【0037】
1 テープカッター
2 ケース
20 粘着テープロール支持部 21 ケース本体
22 ローラー 23 粘着テープ仮留め部
23a くぼみ 23b 刃先
23c 刃稜線 23d バリ
231 縦構成面 232 横構成面
233 スリット
3 カバー
4 粘着テープ
4a 粘着テープ引き出し部 4b 粘着テープ仮留め部
5 カッター
5a カッター刃
6c 金型突合せ部
L 刃稜線長さ P ピッチ