特許第6199631号(P6199631)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6199631魚肉すり身入り菓子様加工食品及び該食品の食感改良及び/又は魚臭低減方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6199631
(24)【登録日】2017年9月1日
(45)【発行日】2017年9月20日
(54)【発明の名称】魚肉すり身入り菓子様加工食品及び該食品の食感改良及び/又は魚臭低減方法
(51)【国際特許分類】
   A21D 2/34 20060101AFI20170911BHJP
   A21D 13/60 20170101ALI20170911BHJP
   A21D 13/80 20170101ALI20170911BHJP
   A23L 5/20 20160101ALI20170911BHJP
   A23G 3/34 20060101ALI20170911BHJP
【FI】
   A21D2/34
   A21D13/60
   A21D13/80
   A23L5/20
   A23G3/00 108
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-139603(P2013-139603)
(22)【出願日】2013年7月3日
(65)【公開番号】特開2015-12810(P2015-12810A)
(43)【公開日】2015年1月22日
【審査請求日】2016年6月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000175283
【氏名又は名称】三栄源エフ・エフ・アイ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】岩井 和美
【審査官】 坂崎 恵美子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−236229(JP,A)
【文献】 特開平01−247064(JP,A)
【文献】 特開2011−015624(JP,A)
【文献】 特開2006−180812(JP,A)
【文献】 特開昭64−027452(JP,A)
【文献】 特開昭55−077875(JP,A)
【文献】 特開2004−187526(JP,A)
【文献】 特開2010−154801(JP,A)
【文献】 特開昭61−104774(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/113655(WO,A1)
【文献】 特開2004−215646(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A21D 2/34
A21D 13/60
A21D 13/80
A23G 3/34
A23L 5/20
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/WPIDS/FSTA/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
魚肉すり身及び以下の性質(a)を有するデキストリンを含有することを特徴とする、魚肉すり身入り菓子様加工食品
(a)馬鈴薯由来であり、DE値が2〜5である
【請求項2】
前記デキストリンが、さらに、以下の性質(b)を有する、請求項1に記載の菓子様加工食品;
(b)25℃の蒸留水で調製したデキストリン30質量%水溶液を、25℃で5分間静置した時の粘度が200mPa・s以下である
【請求項3】
菓子様加工食品が、ドーナツ、ケーキ、マフィン、カステラ、マドレーヌ又はフィナンシェのいずれか一種である、請求項1又は2に記載の菓子様加工食品。
【請求項4】
魚肉すり身100質量部に対し、0.5〜100質量部のデキストリンを含有する、請求項1乃至のいずれか一項に記載の菓子様加工食品。
【請求項5】
以下の性質(a)を有するデキストリンを添加することを特徴とする、魚肉すり身を含む菓子様加工食品の食感改良方
(a)馬鈴薯由来であり、DE値が2〜5である
【請求項6】
菓子様加工食品が、ドーナツ、ケーキ、マフィン、カステラ、マドレーヌ又はフィナンシェのいずれか一種である、請求項5に記載の魚肉すり身を含む菓子様加工食品の食感改良方法。
【請求項7】
以下の性質(a)及び(b)を有するデキストリンを添加することを特徴とする、魚肉すり身を含む菓子様加工食品の食感改良方法、又は、食感改良及び魚臭低減方法;
(a)馬鈴薯由来であり、DE値が2〜5である、
(b)25℃の蒸留水で調製したデキストリン30質量%水溶液を、25℃で5分間静置した時の粘度が200mPa・s以下である。
【請求項8】
菓子様加工食品が、ドーナツ、ケーキ、マフィン、カステラ、マドレーヌ又はフィナンシェのいずれか一種である、請求項7に記載の魚肉すり身を含む菓子様加工食品の食感改良方法、又は、食感改良及び魚臭低減方法。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、魚肉すり身を用いた菓子様加工食品に関する。具体的には、魚肉すり身を含有したドーナツやケーキ等の菓子様加工食品であって、軽くソフトな食感を有し、魚肉すり身特有の魚臭も低減された菓子様加工食品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の健康嗜好、食の多様化に伴い、魚肉すり身を用いたドーナツ、ケーキ等の菓子様加工食品が提案されてきた。例えば、特許文献1には、蛋白分解エキスと糖類とを含む変性防止剤を含有し、かつすり身を含有する焼物又は揚げ物澱粉代替食品として、ケーキ類、ドーナツ等が開示されている。同様にして、魚肉すり身を含有するドーナツ(特許文献2)、澱粉、すり身、乾燥ポテト及び卵白を必須原料とする、すり身含有揚げ菓子(特許文献3)等が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公平04−65668号公報
【特許文献2】特開2007−236229号公報
【特許文献3】特開2011−15624号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
魚肉すり身は加熱により、筋肉タンパク質であるアクトミオシンが熱変性を起こし、ゲルにより三次元構造を形成する。結果として、最終製品は弾力のある食感を呈し、蒲鉾、竹輪等の水産練り製品として好ましい食感を付与する。
しかし、ドーナツやケーキといった、菓子様加工食品に魚肉すり身を応用した場合は、焼成、油ちょうやスチーム等の加熱工程時は生地が膨張するものの、製品の品温が低下すると共に生地が収縮し、密な組織を形成して重い食感となることは避けられなかった。
また、魚肉すり身含量を増加すると、魚肉すり身特有の魚臭が最終食品に影響を与え、商品価値を下げるといった課題も抱えていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記のごとき課題を解決すべく、魚肉すり身加工食品について鋭意研究した結果、デキストリン、殊に馬鈴薯由来でDE値が2〜5のデキストリンを用いることで、水産練り製品特有の弾力ある食感とは異なり、ドーナツやケーキ等の菓子に求められるような軽くてソフトな食感を有する、魚肉すり身入り菓子様加工食品を提供できることを見出した。
更に、本発明で得られた菓子様加工食品は、風味が向上し、すり身特有の魚臭も低減されていることを見出した。
【0006】
本発明は、以下の態様を有する魚肉すり身加工食品に関する;
項1
魚肉すり身及びデキストリンを含有することを特徴とする、魚肉すり身入り菓子様加工食品。
項2
デキストリンが、馬鈴薯由来のものでDE値が2〜5である項1に記載の魚肉すり身入り菓子様加工食品。
項3
菓子様加工食品が、ドーナツ、ケーキ、マフィン、カステラ、マドレーヌ又はフィナンシェのいずれか一種である、項1又は2に記載の菓子様加工食品。
項4
さらに、乾燥こんにゃく加工品を含有する項1乃至3に記載の菓子様加工食品。
項5
魚肉すり身含量が10〜50質量部である、項1乃至4に記載の菓子様加工食品。
項6
魚肉すり身100質量部に対し、0.5〜100質量部のデキストリンを含有する、項1乃至5のいずれかに記載の菓子様加工食品。
項7
魚肉すり身による軽くてソフトな食感を有し、魚臭を低減した項1乃至6に記載の菓子様加工食品。
【0007】
また、本発明は以下の魚肉すり身を含む菓子様加工食品の食感改良及び/又は魚臭低減方法に関する;
項8
デキストリンを添加することを特徴とする、魚肉すり身を含む菓子様加工食品の食感改良及び/又は魚臭低減方法。
項9
デキストリンが、馬鈴薯由来のものでDE値が2〜5である項8に記載の魚肉すり身を含む菓子様加工食品の食感改良及び/又は魚臭低減方法。
項10
さらに、乾燥こんにゃく加工品を添加する項8又は9に記載の魚肉すり身を含む菓子様加工食品の食感改良及び/又は魚臭低減方法。
項11
菓子様加工食品が、ドーナツ、ケーキ、マフィン、カステラ、マドレーヌ又はフィナンシェのいずれか一種である、項8乃至10記載の魚肉すり身を含む菓子様加工食品の食感改良及び/又は魚臭低減方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、魚肉すり身を含有しながらも、軽くてソフトな食感を有する菓子様の加工食品を提供できる。具体的には、加熱、冷却工程を経ることで、弾力的食感となる魚肉すり身の生地を改良し、水産練り製品とは異なった、軽くてソフトな食感を有する菓子様加工食品をできる。更に、本発明で得られた菓子様加工食品は、魚肉すり身特有の魚臭も低減されており、魚が苦手な人でも抵抗なく食せる、魚肉すり身入りドーナツ、ケーキ等を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、ドーナツやケーキ等の、魚肉すり身を含有する菓子様加工食品に関する発明であり、デキストリン、殊に馬鈴薯由来でDE値が2〜5であるデキストリンを含有することを特徴とする。
本発明で用いるデキストリンは馬鈴薯を由来原料とし、原料中に含有されるでん粉を加水分解して得ることができる。現在市販されているデキストリンの原料は馬鈴薯、コーン、ワキシーコーン、小麦、米、もち米、タピオカ等が存在するが、馬鈴薯以外の原料を由来とするデキストリンを用いた場合は、加工食品の油切れが悪く油っぽいドーナツになったり、製造段階において生地に粘りがでて、製造に不都合が生じるといった事態が生じていた。
【0010】
本発明で用いるデキストリンは、更に、DE値が2〜5、好ましくは3以上5未満、更に好ましくは3.5〜4.5の範囲であることを特徴とする。
DE値とは、一般にはでん粉の分解程度を示す指標であり、でん粉を加水分解したときに生成するデキストリンおよびぶどう糖や麦芽糖等の還元糖の割合を示すものである。全ての還元糖をぶどう糖(dextrose)の量に換算し、その割合を全体の乾燥固形分に対する重量%で表わしたものである。DE値が大きい程、還元糖の含有量が多くデキストリンが少なく、逆にDE値が小さい程、還元糖の含有量が少なくデキストリンが多いことを意味する。
【0011】
本発明ではDE値が2〜5の範囲であるデキストリンを用いることを特徴とするが、DE値が5を超えるデキストリンを用いた場合は、十分な食感を付与することができず、保形性が悪く重い食感となる。また、DE値が2未満のデキストリンを用いた場合でも、本願発明の効果が十分に発揮されないため好ましくない。DE値が2〜5の範囲内であっても、馬鈴薯以外の原料を由来とするデキストリンを用いた場合は、本発明の十分な効果、即ち軽いソフトな食感を与え、魚臭を抑える効果、油っぽさを抑える効果、また製造中の原料の粘度上昇を抑え操作性を向上する効果が十分に発揮されない。
【0012】
更に好ましくは、本発明では、以下の性質(a)を兼ね備えたデキストリンを用いることが望ましい;
(a)25℃の蒸留水で調製したデキストリン30質量%水溶液を、25℃で5分間静置した時の粘度が200mPa・s以下である。
【0013】
粘度は、25℃の蒸留水で調製したデキストリン30質量%水溶液を、25℃で5分間静置した後、25℃条件下で、B型回転粘度計(ローターNo.2)を用いて回転数12rpmで1分間測定することによって求めることができる。以下、本明細書中で「粘度」とはかかる方法で算出される値をいう。当該粘度の下限は、制限されないが、通常20mPa・sを挙げることができる。粘度として、好ましくは20〜100mPa・s、より好ましくは30〜70mPa・sである。粘度が上記範囲外である場合は、本願発明の効果を十分に発揮できない。
【0014】
上記性質を有するデキストリンは、原料となる馬鈴薯を加水分解することによって調製できる。加水分解は酵素処理、酸処理等を用いて実施することができ、DE値や粘度を指標として分解の程度を調整可能である。また、本デキストリンは商業上入手可能であり、例えば三栄源エフ・エフ・アイ(株)製の「スマートテイスト[商標]」を挙げることができる。
【0015】
本発明で用いるすり身は、常法に従って製造可能である。例えば、タラ、グチ、ハモ、イワシ、タイ、ホキ、タチウオ、スズキ、ホッケ等の原料魚から頭、内臓、骨、皮等を除去し、さらに小骨等を裏ごしして除去した魚肉をすり潰して得られるすり身を使用できる。簡便には市販されている冷凍のすり身を使用してもよい。
【0016】
蒲鉾や竹輪などの水産練り製品を製造する場合は、得られたすり身に塩を添加し、タンパク質であるアクトミオシンを溶出、水和させる「塩摺り」工程を行う。本工程を行うことで、魚肉中の筋肉たん白質を溶かし出し、筋肉たん白質の網状構造を形成させ弾力を持ったゲルを作り、足(弾力)のある水産練り製品ができる。
【0017】
本発明が対象とする食品は、上記デキストリン及び魚肉すり身を含有する菓子様加工食品である。本発明において、菓子様加工食品とは、菓子様の外観や食感を有する魚肉すり身を含む加工食品であり、具体的には、ドーナツ、ケーキ、マフィン、カステラ、マドレーヌ又はフィナンシェ等が例示できる。
【0018】
本発明の菓子様加工食品は、油ちょう、焼成、スチーム工程等、加工食品を調製する際に利用される一般的な加熱工程を経て製造されるものが挙げられる。具体的な加熱工程の条件としては、165〜175℃で3〜5分間の油ちょう工程や、145〜155℃で30〜40分間の焼成工程、80〜90℃で30〜40分間のスチーム工程等が例示できるが、いずれも調製する加工食品に応じた温度と加熱時間を適宜組み合わせた条件を設定することが可能である。
【0019】
菓子様加工食品中の魚肉すり身含量は、商品コンセプト等に応じて適宜調整できるが、通常は原料の全量に対し50質量部以下、好ましくは10〜40質量部である。魚肉すり身含量が50質量部より高くなると、生地のふくらみが悪化し、重い食感となりやすい。一方、本発明の効果は十分に発揮されているが、魚肉すり身含量が低いとすり身を添加すること自体のメリットが現れにくいが、概ね10質量部以上の添加で、すり身特有の食感や風味を発現することが可能となる。
【0020】
ドーナツのような菓子様加工食品に魚肉すり身を添加すると、魚肉練り製品特有の弾力ある食感となりやすいが、本発明によれば、ソフトで軽い食感の菓子様加工食品を提供できる。
【0021】
魚肉すり身100質量部に対する、本発明で用いるデキストリンの添加量は、対象食品によって適宜調整することが可能であるが、概ね0.5〜100質量部が例示できる。デキストリンの添加量は、製造する菓子様加工食品の種類に応じて適宜調節すればよく、例えばドーナツには、魚肉すり身100質量部に対して1〜40質量部、ケーキには0.5〜20質量部があげられる。魚肉すり身100質量部に対するデキストリンの添加量が上記対象食品に示すもの以上である場合、作業効率の低下が生じてしまい、また添加量が少なくなると、魚臭の抑制や食感の改善効果が不十分となりやすい。
【0022】
本発明の菓子様加工食品は、調製直後のみならず、得られた食品の品温が低下した場合や、冷凍解凍した場合であっても、ソフトで軽い食感が保持される。
例えば、魚肉すり身を含有したドーナツを製造した場合、油ちょう時や焼成時は生地が膨張するが、品温の低下と共に生地が縮んで密となり、重い食感、魚肉すり身特有の弾力ある食感となりやすい。生地が密になると、電子レンジを用いてドーナツを加温しても重い食感は回避できず、目的とするソフトで軽い食感が得られない。
【0023】
しかし、本発明では、馬鈴薯由来でDE値2〜5のデキストリンを用いることで、品温が低下した場合や、冷凍解凍した場合であっても、ソフトで軽い食感が保持された油ちょう、焼成食品を提供できる。
【0024】
本発明の菓子様加工食品は、魚肉すり身及び上記デキストリンを用いる以外は、通常用いられる原料を使用できる。
例えば、魚肉すり身入りドーナツであれば、魚肉すり身、上記デキストリンに小麦粉、砂糖、食塩などを加え、混合、成型後、油ちょう若しくは焼成することで製造できる。同様にして、魚肉すり身入りケーキであれば、魚肉すり身、上記デキストリンに卵、砂糖、必要に応じて小麦粉を添加、混合後、焼成することで製造できる。
【0025】
本発明では、上記デキストリンに加え、さらに乾燥こんにゃく加工品を併用することができる。デキストリンに加え乾燥こんにゃく加工品を併用することで、魚肉すり身含有加工食品の保型性が向上し、作業工程におけるハンドリング性が向上する。
乾燥こんにゃく加工品は、こんにゃく粉、糖質及びでん粉の複合組成物であり、粒状、糸状、粉末状等の任意形状に加工したものである。具体的には、こんにゃく芋から常法にてグルコマンナンを抽出して乾燥し、でん粉と混合し、水を添加して膨潤し、少量のアルカリを添加することによる脱アセチル化処理を行った後、成型、加熱ゲル化、中和、糖質溶液浸漬、乾燥することで製造できる。更には、特許第2866609号或いは特許第3159104号に記載の方法で製造することができる。乾燥こんにゃく加工品は、商業上入手可能であり、例えば、三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製の「サンスマート[登録商標]400」等のサンスマート[登録商標]シリーズを例示できる。
【0026】
上記デキストリンに加えて乾燥こんにゃく加工品を併用する場合は、菓子様加工食品に対して乾燥こんにゃく加工品を0.5〜8質量部添加することが望ましい。添加量が0.5質量部未満の場合は保形性が十分に得られず、添加量が8質量部を超えると粘度が高くなり製造機器への付着が生じ、作業効率の低下が生じる。また、乾燥こんにゃく加工品に含まれる水あめにより、加工食品に若干の甘味が影響を及ぼす可能性がある。
【実施例】
【0027】
以下に、実施例を用いて本発明を更に詳しく説明する。ただし、これらの例は本発明を制限するものではない。なお、実施例中の「部」「%」は、それぞれ「質量部」「質量%」、文中「*」印は、三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製、文中「※」印は三栄源エフ・エフ・アイ株式会社の登録商標であることを意味する。
【0028】
実施例1:魚肉すり身入り菓子様加工食品(ドーナツ)
表1、2の処方に従って魚肉すり身入りドーナツを調製した。
<魚肉すり身ペーストの調製>
冷凍すり身をカッターで粗ずりし、食塩を加えて塩摺りした。次いで、砂糖、水産練り製品用品質改良剤、乳清タンパク、氷(半量)を加え、カッティングした。更に、加工でん粉、日持向上剤、サイクロデキストリン、残りの氷を加え、最終品温8℃まで擂り上げた。
【0029】
【表1】
【0030】
【表2】
【0031】
<ドーナツの調製>
表2に記載の処方にて、本発明にかかるドーナツを調製した。
まず、万能混合撹拌機のボールに砂糖、食塩、乳化剤、香料を加え、126rpmで1分間撹拌した。次いで表1に記載の処方に基づいて調製した魚肉すり身ペーストを添加し、126rpmで2分間混合後、残りの材料を加えて126rpmで30秒間混合しドーナツの生地とした。ここで、乾燥こんにゃく加工品(サンスマート[登録商標]400)を添加していない系を実施例1−A、添加した系を実施例1−Bとした。
【0032】
得られたドーナツの生地を約18g/1ヶとなるよう搾り出し袋で計量成形後、170℃で3分間油ちょうし、魚肉すり身含有油ちょう食品(ドーナツ)を調製した。得られたドーナツに含まれる魚肉すり身の保存のため急速凍結し、10日間凍結保存後電子レンジで加熱して、食感及び風味を評価した。使用したデキストリンの由来、DE値及び粘度(25℃の蒸留水で調製したデキストリン30質量%水溶液を、25℃で5分間静置した後、25℃条件下で、B型粘度計 ローターNo.2を用いて回転数12rpmで1分間測定)の測定値と併せて、結果を表3に示す。
【0033】
【表3】
【0034】
<備考>
実施例1-A :スマートテイスト※*
実施例1-B-1:スマートテイスト※*
実施例1-B-2:スマートテイスト※*
実施例1-B-3:松谷化学工業(株)社 パセリSA II
比較例1-B-1:松谷化学工業(株)社 パインデックス♯100
比較例1-B-2:松谷化学工業(株)社 パインデックス♯1
比較例1-B-3:松谷化学工業(株)社 TK−16
【0035】
実施例1−Aで調製したドーナツは、生地の保形性がやや悪くなり、実施例Bに比べ若干作業効率の低下が感じられた。食した際の食感は、ソフトで軽い食感であり実施例1−Bのものと大差なく、魚臭も気にならないものであった。
実施例1−Bで調製したドーナツは、表3に評価を記載したとおり、DE値が2〜5の範囲にある馬鈴薯由来のデキストリンを使用することにより、ソフトな食感であり風味もよく、成形性にも優れているとの結果が得られた。一方、馬鈴薯以外を由来とするデキストリンを使用した比較例では、DE値が5を超えるものだけでなく、DE値が2〜5の範囲内にあっても油っぽい仕上がりとなり、また成形性に問題が生じていた(1−B−1)。
【0036】
実施例2 魚肉すり身入り菓子様加工食品(チョコドーナツ風)
表4の処方に基づき、魚肉すり身ペーストを調製した(単位:部)。
【0037】
【表4】
【0038】
<調製方法>
(1)カッターに1を加え、粗ずりした。
(2)(1)に2を加え、塩ずりした。
(3)(2)に3・5・6の全量と、9の半分量を加え、カッティングした。
(4)(3)に4・7・8と残りの9を加え、最終品温8℃まで擂り上げた。
【0039】
<ドーナツ処方>
次いで、表5の処方に基づいてチョコドーナツを調製した。(単位:部)
【0040】
【表5】
【0041】
<ドーナツの製造方法>
(1)万能混合攪拌機のボールに6〜9・11〜13を加え、126rpmで1分間混合した。
(2)(1)に5を加えて126rpmで2分間混合した。
(3)(2)に1〜4・10を加えて126rpmで30秒間混合し、生地が約18g/1ヶになるように成形(絞り出し)した。
(4)(3)を油ちょう(170℃ 3分)した。
(5)(4)をチョコレートコーティングし、急速凍結した。
【0042】
<試食、評価>
試食前に、室温又は冷蔵庫にて自然解凍した。得られたドーナツ(実施例2)は、ソフトで軽い食感を有し、魚肉すり身を25%も含有する加工食品とは思えない菓子様食感に類似したドーナツであった。また、得られたドーナツは魚肉特有の臭いも低減され、チョコレートの風味には何ら影響は感じられないチョコドーナツであった。
【0043】
実施例3:魚肉すり身入り菓子様加工食品(ケーキ)
表6の処方に従って魚肉すり身入りケーキを調製した。
具体的には、フードカッターにて冷凍すり身を粗ずりし、食塩を添加して塩ずりした。3〜5を加え、カッティングした。引き続き、6〜11、16〜18を加えカッティングした。12〜15を加え、品温8℃まで擂りあげ、マドレーヌ型のカップに充填した。150℃で30分間オーブンで焼成後、急速凍結した。
【0044】
【表6】
【0045】
調製した魚肉すり身入りケーキについて、10日間凍結後、電子レンジで加熱して、食感及び風味を評価した。
得られたケーキ(実施例3)は、ソフトで軽い食感を有し、魚肉すり身を25%も含有する加工食品とは思えないほど菓子様の食感を有するケーキであった。また、得られたケーキは魚肉特有の臭いも低減され、風味も改善されたケーキであった。
【0046】
実施例4:魚肉すり身入り菓子様加工食品(チョコレートケーキ)
表7の処方に従って魚肉すり身入りケーキを調製した。
<ホイップ部の調製>
水に、加工でん粉、乳清タンパク、砂糖及びグァーガムの粉体混合物を添加し、ハンドミキサーにてホイップした。
<ケーキ部の調製>
フードカッターにて冷凍すり身を粗ずりし、食塩を添加して塩ずりした。処方中の4〜5、及び氷の半量を加えカッティングした。引き続き、6〜13と残りの氷を加えカッティングした。3を加えて品温8℃まで擂りあげた後、14のホイップを加えて軽く混合した。カップに充填し、85℃で30分間スチーム処理して、チョコレートケーキを調製した。
【0047】
【表7】
【0048】
得られたチョコレートケーキ(実施例4)は、ソフトで軽い食感を有し、魚肉すり身を25%も含有する加工食品とは思えない菓子様食感に類似したチョコレートケーキであった。また、得られたチョコレートケーキは魚肉特有の臭いも低減され、風味も改善されたケーキであった。
一方、表7のデキストリンを添加しない以外は、実施例4と同様にチョコレートケーキを調製したが(比較例4)、重い食感となり、魚臭さも感じられた。
【0049】
上記実施例に示す通り、魚肉すり身入り菓子様加工食品にデキストリンを添加することにより、軽いソフトな食感を付与することができ、魚肉すり身による魚臭をも抑制できることが明らかとなった。また、さらに乾燥こんにゃく加工品を併用することにより、菓子様加工食品の生地を適度な粘度に保ち、成形性の向上を図ることができた。