特許第6199632号(P6199632)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6199632
(24)【登録日】2017年9月1日
(45)【発行日】2017年9月20日
(54)【発明の名称】免震支持装置
(51)【国際特許分類】
   F16F 15/02 20060101AFI20170911BHJP
   A47B 91/02 20060101ALI20170911BHJP
   A47B 97/00 20060101ALI20170911BHJP
【FI】
   F16F15/02 K
   F16F15/02 L
   A47B91/02
   A47B97/00 A
【請求項の数】11
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-141052(P2013-141052)
(22)【出願日】2013年7月4日
(65)【公開番号】特開2015-14319(P2015-14319A)
(43)【公開日】2015年1月22日
【審査請求日】2016年6月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000103644
【氏名又は名称】オイレス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098095
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 武志
(72)【発明者】
【氏名】下田 郁夫
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 清春
【審査官】 葛原 怜士郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−308068(JP,A)
【文献】 特開2000−199540(JP,A)
【文献】 特開平07−310459(JP,A)
【文献】 特開2006−291680(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47B 91/02,97/00
E04H 9/02
F16F 15/00−15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤又は基台上で支持すべき免震支持対象物の荷重を受けるべく、当該地盤又は基台及び免震支持対象物のうちの一方に固定されるようになっていると共に断面円弧外面を有した支持体と、この支持体の断面円弧外面に相補的な形状の断面円弧外面を有すると共に当該支持体の断面円弧外面に相補的な形状の断面円弧外面で支持体の断面円弧外面に摺動自在に接触する一方、地盤又は基台及び免震支持対象物のうちの他方における平坦面に転がり自在に断面円弧凸外面で接触するようになっていると共に支持体と共に免震支持対象物の荷重を受ける回転体とを具備しており、回転体の断面円弧凸外面は、回転体の断面円弧外面の曲率半径よりも大きな曲率半径を有しており、静止状態において、回転体の断面円弧凸外面の曲率中心は、回転体の断面円弧外面の曲率中心に対して鉛直方向において地盤又は基台及び免震支持対象物のうちの一方の側に偏芯して位置しており、回転体は、断面円弧外面を有した剛体と、この剛体に固着されていると共に断面円弧凸外面を有した弾性体とを具備している免震支持装置。
【請求項2】
地盤又は基台上で支持すべき免震支持対象物の荷重を受けるべく、当該地盤又は基台及び免震支持対象物のうちの一方に固定されるようになっていると共に断面円弧外面を有した支持体と、この支持体の断面円弧外面に相補的な形状の断面円弧外面を有すると共に当該支持体の断面円弧外面に相補的な形状の断面円弧外面で支持体の断面円弧外面に摺動自在に接触する一方、地盤又は基台及び免震支持対象物のうちの他方における平坦面に転がり自在に断面円弧凸外面で接触するようになっていると共に支持体と共に免震支持対象物の荷重を受ける回転体とを具備しており、回転体の断面円弧凸外面は、回転体の断面円弧外面の曲率半径よりも大きな曲率半径を有しており、静止状態において、回転体の断面円弧凸外面の曲率中心は、回転体の断面円弧外面の曲率中心に対して鉛直方向において地盤又は基台及び免震支持対象物のうちの一方の側に偏芯して位置しており、回転体は、断面円弧外面を有した弾性体と、この弾性体に固着されていると共に断面円弧凸外面を有した剛体とを具備している免震支持装置。
【請求項3】
地盤又は基台上で支持すべき免震支持対象物の荷重を受けるべく、当該地盤又は基台及び免震支持対象物のうちの一方に固定されるようになっていると共に断面円弧外面を有した支持体と、この支持体の断面円弧外面に相補的な形状の断面円弧外面を有すると共に当該支持体の断面円弧外面に相補的な形状の断面円弧外面で支持体の断面円弧外面に摺動自在に接触する一方、地盤又は基台及び免震支持対象物のうちの他方における平坦面に転がり自在に断面円弧凸外面で接触するようになっていると共に支持体と共に免震支持対象物の荷重を受ける回転体と、支持体の断面円弧外面の曲率中心を中心とした回転体の回転において当該回転体の衝突でその一定以上の回転を禁止して支持体からの回転体の離脱を防止する離脱防止機構とを具備しており、回転体の断面円弧凸外面は、回転体の断面円弧外面の曲率半径よりも大きな曲率半径を有しており、静止状態において、回転体の断面円弧凸外面の曲率中心は、回転体の断面円弧外面の曲率中心に対して鉛直方向において地盤又は基台及び免震支持対象物のうちの一方の側に偏芯して位置しており、離脱防止機構は、支持体に取付けられていると共に回転体を囲繞している囲繞体を具備しており、囲繞体は、支持体の断面円弧外面の曲率中心を中心とした回転体の一定以上の回転において、当該回転体が接触する内面を有している免震支持装置。
【請求項4】
支持体の断面円弧外面は、断面円弧凸面であり、回転体の断面円弧外面は、断面円弧凹面である請求項1から3のいずれか一項に記載の免震支持装置。
【請求項5】
支持体の断面円弧外面は、断面円弧凹面であり、回転体の断面円弧外面は、断面円弧凸面である請求項1から3のいずれか一項に記載の免震支持装置。
【請求項6】
支持体の断面円弧外面並びに回転体の断面円弧外面及び断面円弧凸外面は、円筒面の一部からなる請求項1から5のいずれか一項に記載の免震支持装置。
【請求項7】
支持体の断面円弧外面並びに回転体の断面円弧外面及び断面円弧凸外面は、円球面の一部からなる請求項1から5のいずれか一項に記載の免震支持装置。
【請求項8】
回転体は、支持体に対して、支持体の断面円弧外面の曲率中心を中心として、回転自在である請求項1から7のいずれか一項に記載の免震支持装置。
【請求項9】
静止状態において、支持体の断面円弧外面の曲率中心と回転体の断面円弧凸外面の曲率中心とは、同一の鉛直線上に位置している請求項8に記載の免震支持装置。
【請求項10】
支持体は、免震支持対象物に固定されるようになっており、回転体は、その断面円弧凸外面で地盤又は基台の平坦面に転がり自在に接触するようになっており、回転体の断面円弧凸外面の曲率中心は、回転体の断面円弧外面の曲率中心に対して当該回転体の断面円弧外面の曲率中心を通る鉛直線上において上方に偏芯して位置している請求項1から9のいずれか一項に記載の免震支持装置。
【請求項11】
支持体は、地盤又は基台に固定されるようになっており、回転体は、その断面円弧凸外面で免震支持対象物の平坦面に転がり自在に接触するようになっており、回転体の断面円弧凸外面の曲率中心は、回転体の断面円弧外面の曲率中心に対して当該回転体の断面円弧外面の曲率中心を通る鉛直線上において下方に偏芯して位置している請求項1から9のいずれか一項に記載の免震支持装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏芯転がり振り子型の免震支持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
陳列台等の什器、書棚等を免震支持するには、滑り板若しくは滑り面を用いた滑り免震支持装置又は転がり部材を用いた転がり免震支持装置等が用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−310459号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、滑り免震支持装置及び転がり免震支持装置等には、復元力がなく、震動後においては、什器、書棚等を人手により押して元の位置に戻す復帰作業が必要となる。
【0005】
斯かる煩雑であって力の掛かる復帰作業をなくすべく、例えば、特許文献1に記載の振り子型の免震装置が提案されているが、本提案の免震装置では、凹部の中心部の周囲の周辺部が回転体の下面の曲面より緩やかな曲率に形成されて、この下面の曲面の曲率半径により免震装置の周期が決定されるようになっている。
【0006】
しかしながら、特許文献1記載の振り子型の免震装置では、凹部をもった支持基盤を必要とするために、陳列台等の什器、書棚等が設置される建物床等を免震装置に直接利用し難く、しかも、長周期地震に対応すべく、斯かる振り子型の免震装置の長周期化を図るには、大きな支持基盤を必要する結果、設置対象が限定されることになる。
【0007】
本発明は、前記諸点に鑑みてなされたものであり、その目的は、陳列台等の什器、書棚等の免震支持対象物が設置される建物床等をそのまま利用して設置でき、しかも、容易に長周期化を図り得る免震支持装置を提供すことにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の免震支持装置は、地盤又は基台上で支持すべき免震支持対象物の荷重を受けるべく、当該地盤又は基台及び免震支持対象物のうちの一方に固定されるようになっていると共に断面円弧外面を有した支持体と、この支持体の断面円弧外面に相補的な形状の断面円弧外面を有すると共に当該支持体の断面円弧外面に相補的な形状の断面円弧外面で支持体の断面円弧外面に摺動自在に接触する一方、地盤又は基台及び免震支持対象物のうちの他方における平坦面に転がり自在に断面円弧凸外面で接触するようになっていると共に支持体と共に免震支持対象物の荷重を受ける回転体とを具備しており、回転体の断面円弧凸外面は、回転体の断面円弧外面の曲率半径よりも大きな曲率半径を有しており、静止状態において、回転体の断面円弧凸外面の曲率中心は、回転体の断面円弧外面の曲率中心に対して鉛直方向において地盤又は基台及び免震支持対象物のうちの一方の側に偏芯して位置している。
【0009】
本発明による免震支持装置によれば、回転体が地盤又は基台及び免震支持対象物のうちの他方における平坦面に転がり自在にその断面円弧凸外面で接触するようになっていると共に、静止状態において、回転体の断面円弧凸外面の曲率中心が回転体の断面円弧外面の曲率中心に対して鉛直方向において地盤又は基台及び免震支持対象物のうちの一方の側に偏芯して位置している結果、陳列台等の什器、書棚等が設置される建物床等をそのまま利用して設置できて、しかも、振動周期を、静止状態における回転体の断面円弧凸外面の曲率中心と回転体の断面円弧外面の曲率中心との鉛直方向の偏芯量で決定できるために、容易に長周期化を図り得る。
【0010】
本発明において、支持すべき免震支持対象物としては、商店等の陳列台等の什器、事務所、図書館若しくは一般家屋等の書棚、事務機器、工場の機械類及び機械類が搭載されたベッド、病院の検査、診断機器、小型の倉庫等を挙げることができるが、本発明は、これらに限定されなく、また、基台としては、地盤に構築された基礎床、商店、事務所、図書館若しくは一般家屋、病院、倉庫等の構造物の床等を挙げることができるが、本発明は、これらに限定されない。
【0011】
本発明では、支持体の断面円弧外面は、断面円弧凸面であり、回転体の断面円弧外面は、断面円弧凹面であってもよく、これに代えて、支持体の断面円弧外面は、断面円弧凹面であり、回転体の断面円弧外面は、断面円弧凸面であってもよい。
【0012】
これら摺動面となる支持体の断面円弧外面及び回転体の断面円弧外面は、トリガ機能(一定以下の振動加速度では摺動が生じなく、一定以上の振動加速度では当該摺動が生じる機能)及び振動減衰機能(摺動において振動を熱とし放散して摺動の起因となる振動エネルギーを吸収する機能)を求めない場合には、摩擦係数の極めて小さい面からなっているとよく、これに対して、トリガ機能及び振動減衰機能を求める場合には、適度の大きさの摩擦係数をもった面からなっているとよい。トリガ機能を有していると、地盤又は基台の小さな振動加速度及び免震支持対象物への小さな振動加速度の付与による免震支持対象物の不必要であって過敏な相対振動を避けることができ、振動減衰機能を有していると、地盤又は基台に対して一旦相対振動した免震支持対象物を早期に静止状態に復帰させることができる。
【0013】
一方、転がり面となる回転体の断面円弧凸外面は、水平方向の地震の震動において、地盤若しくは基台又は免震支持対象物の平坦面に対して容易に滑らないで転がるように、適度の大きさの摩擦係数を有しているのが好ましい。
【0014】
本発明における支持体の断面円弧外面並びに回転体の断面円弧外面及び断面円弧凸外面は、円筒面の一部からなっていても、円球面の一部からなっていてもよく、円筒面の一部からなっている場合には、免震効果に方向性をもたせることができ、円球面の一部からなっている場合には、水平面の全方向の振動に対して免震効果を発揮できる。免震効果に方向性をもたせる場合、支持体の断面円弧外面並びに回転体の断面円弧外面及び断面円弧凸外面の全てを円筒面の一部から構成する必要はなく、いずれかを円筒面の一部から構成すればよい。
【0015】
本発明では、回転体は、支持体の断面円弧外面の曲率中心を中心として回転自在であればよく、この場合、免震支持装置の静止状態(支持する免震支持対象物が地盤又は基台に対して水平方向に相対的に振動していなく、免震支持装置が免震機能を発揮していない状態)では、支持体の断面円弧外面の曲率中心と回転体の断面円弧凸外面の曲率中心とは、同一の鉛直線上に位置しているとよい。
【0016】
回転体は、本発明では、その全体が剛性部材からなっていてもよいが、断面円弧外面を有した剛体と、この剛体に固着されていると共に断面円弧凸外面を有した弾性体とを具備していてもよく、これとは反対に、断面円弧外面を有した弾性体と、この弾性体に固着されていると共に断面円弧凸外面を有した剛体とを具備していてもよく、このように支持体と平坦面との間に弾性体が介在するようにすると、弾性体により地盤又は基台の鉛直方向の振動をも吸収できる上に、免震支持装置の静止状態における弾性体の多少の弾性変形でトリガ作用を得ることができ、更に、断面円弧凸外面を有した弾性体を回転体が具備している場合には、平坦面と接触する断面円弧凸外面での意図しない平坦面に対する滑りを防止し得て、確実に回転体の回転、転動を行うことができ、また、斯かる弾性体を支持体に適用して、支持体の弾性体の弾性変形で地盤又は基台の鉛直方向の振動をも吸収できるようにしてもよい。
【0017】
弾性体は、天然ゴム、合成ゴム又は弾性を有する合成樹脂材料からなっていてもよく、斯かる弾性体は、それが天然ゴム又は合成ゴムからなる場合には、剛体に加硫接着により固着されていてもよいが、その他の接着剤を用いて剛体に固着されてもよい。
【0018】
本発明では、支持体は、免震支持対象物に固定されるようになっていてもよく、この場合、回転体は、その断面円弧凸外面で地盤又は基台の平坦面に転がり自在に接触するようになっており、回転体の断面円弧凸外面の曲率中心は、回転体の断面円弧外面の曲率中心に対して鉛直方向の上方に偏芯して位置していればよく、これとは逆に、支持体は、地盤又は基台に固定されるようになっていてもよく、この場合には、回転体は、その断面円弧凸外面で免震支持対象物の平坦面に転がり自在に接触するようになっており、回転体の断面円弧凸外面の曲率中心は、回転体の断面円弧外面の曲率中心に対して鉛直方向の下方に偏芯して位置していればよい。
【0019】
本発明による免震支持装置は、支持体の断面円弧外面の曲率中心を中心とした回転体の回転において当該回転体の衝突でその一定以上の回転を禁止して支持体からの回転体の離脱を防止する離脱防止機構を更に具備していてもよく、斯かる離脱防止機構は、支持体に取付けられていると共に回転体を囲繞している囲繞体を具備していてもよく、この場合、囲繞体は、支持体の断面円弧外面の曲率中心を中心とした回転体の一定以上の回転において、当該回転体が接触する内面を有していてもよい。
【0020】
離脱防止機構を具備している免震支持装置では、意図しない大きな震動で回転体が大きく回転されようとしても、回転体の一定以上の回転を禁止して支持体からの回転体の離脱を防止し得る結果、免震支持対象物の転倒等を防ぐことができ、地震による被害を最小限にし得る。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、陳列台等の什器、書棚等の免震支持対象物が設置される建物床等をそのまま利用できて設置でき、しかも、容易に長周期化を図り得る免震支持装置を提供すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、本発明による好ましい実施態様の一例の側面説明図である。
図2図2は、図1に示す例の動作説明図である。
図3図3は、本発明による好ましい実施態様の他の例の側面説明図である。
図4図4は、本発明による好ましい実施態様の更に他の例の側面説明図である。
図5図5は、図4に示す例の動作説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
次に本発明を、図に示す好ましい実施の形態の例に基づいて更に詳細に説明する。なお、本発明はこれら例に何等限定されないのである。
【0024】
図1において、本例の免震支持装置1は、地盤又は基台である商店の床2上で支持すべき免震支持対象物である商店の陳列台等の什器3の鉛直方向Vの荷重を受けるべく、当該什器3の外函4の下部に螺子5等により取付具6を介して固定されるようになっていると共に断面円弧凸外面7を有した支持体8と、支持体8の断面円弧凸外面7に相補的な形状の一方の断面円弧凹外面9を有すると共に当該断面円弧外面9で支持体8の断面円弧凸外面7に中心O1を中心としてR方向に摺動自在であって回転自在に接触する一方、床2の平坦面10に中心O1を中心としてR方向に断面円弧凸外面11で回転自在に接触、即ち、中心O1を中心として断面円弧凸外面11で転がり自在に接触するようになっていると共に支持体8を介する什器3の鉛直方向Vの荷重を支持体8と共に受ける回転体13とを具備している。
【0025】
支持体8は、螺子部21及び括れ部22を有する円柱状の本体23と、本体23の括れ部22に一体的に設けられた部分円球部24とを有しており、螺子部21に螺合されたナット25により鉛直方向Vに関して位置調整可能に当該螺子部21において取付具6に固定されており、断面円弧凸外面7は、円球面の一部としての部分円球部24の部分円球凸面26からなっている。
【0026】
回転体13は、円球面の一部としての部分円球凹面31からなっている断面円弧凹外面9と、円球面の一部としての部分円球凸面32からなっている断面円弧凸外面11と、一方では、断面円弧凹外面9に連接し、他方では、断面円弧凸外面11に連接した截頭円錐外面又は截頭四角錐外面等を含む截頭多角錐外面、本例では、截頭円錐外面33とを具備しており、支持体8の断面円弧凸外面7に対して、支持体8の断面円弧凸外面7の曲率中心であって回転体13の断面円弧凹外面9の曲率中心でもある中心O1を中心として、R方向に回転自在であり、回転体13の断面円弧凸外面11の曲率中心である中心O2は、免震支持装置1の静止状態(図1に示す状態)において、回転体13の断面円弧凹外面9の曲率中心である中心O1に対して鉛直方向Vにおいて什器3の側である上方に偏芯量δをもって偏芯して位置しており、支持体8の断面円弧凸外面7の曲率中心である中心O1と回転体13の断面円弧凸外面11の曲率中心である中心O2とは、免震支持装置1の静止状態において、同一の鉛直線35上に位置しており、回転体13の断面円弧凸外面11は、免震支持装置1の静止状態において当該断面円弧凸外面11が床2の平坦面10に接触する位置Pと中心O1との間の距離r1よりも大きな曲率半径r2を有しており、而して、偏芯量δは、r2−r1となっている。
【0027】
什器3の外函4の下部に複数個、少なくとも3個配される前述の免震支持装置1の夫々は、地震による水平方向Hの震動が床2に加わらない場合は、図1に示す静止状態にあって、床2上で什器3の荷重を分担して当該什器3を支持しており、地震による水平方向Hの震動が床2に加わると、各免震支持装置1の回転体13は、図2に示すように、床2の平坦面10上で部分円球部24に対して中心O1を中心としてR方向に転がって回転し、この回転により各免震支持装置1は、床2に加わる水平方向Hの震動の什器3への伝達を阻止して、而して、什器3を免震支持する一方、中心O1と中心O2との偏芯量δに起因する断面円弧凸外面11の曲率半径r2と距離r1との相違により、R方向の回転と共に什器3を鉛直方向Vに持ち上げるようになっている回転体13には、回転体13の各回転位置で静止状態への復帰モーメントM=W・δ・sinθ(但し、Wは、回転体13に加わる荷重、δは、偏芯量δ=(r2−r1)、θは、回転体13の回転角である)が生じ、この復帰モーメントMにより、所謂、周期Tをもった振り子運動を行う回転体13は、地震による水平方向Hの床2の震動の消滅後、断面円弧凸外面7に対する断面円弧凹外面9の滑り摩擦及び床2の平坦面10に対する回転体13の転がり摩擦による震動エネルギーの消散による振り子運動の収斂と共に静止状態における回転位置に復帰されて、什器3を地震震動前の元の位置に戻すようになっている。
【0028】
回転体13の振り子運動の周期Tは、式(1)で表され、θが小さい場合には、θ/sinθ≒1となる結果、周期Tは、式(2)で表されて、断面円弧凸外面11の曲率半径r2と距離r1との差である偏芯量δ(=r2−r1)が小さければ小さい程、長くなり、逆に、偏芯量δ(=r2−r1)が大きければ大きい程、短くなる。
【0029】
【数1】
ここで、gは、重力加速度である。
【0030】
【数2】
【0031】
以上の免震支持装置1では、回転体13が床2の平坦面10にその断面円弧凸外面11で転がり回転自在に接触するようになっていると共に、静止状態において、断面円弧凸外面11の曲率中心である中心O2が断面円弧凹外面9の曲率中心である中心O1に対して鉛直方向Vの上方に偏芯量δだけ偏芯している結果、床2の平坦面10をそのまま利用して設置できて、しかも、回転体13の振り子運動の周期Tを距離r1と断面円弧凸外面11の曲率半径r2との差である偏芯量δで決定できるために、容易に長周期化を図り得る上に、断面円弧凸外面7が部分円球凸面26からなっていると共に断面円弧凹外面9が部分円球凹面31からなって、しかも、断面円弧凸外面11が部分円球凸面32からなっているために、即ち、夫々が円球面からなっているために、水平方向Hに関しての全方向の地震の震動に対して什器3を免震支持でき、加えて、螺子部21及びナット25により支持体8の取付具6への取付位置を調整できるようになっているために、鉛直方向Vに関する任意の位置で什器3を免震支持できる。
【0032】
ところで、図1に示す免震支持装置1では、回転体13を剛性体からの一体物で形成したが、これに代えて、例えば、図3に示すように、回転体13は、断面円弧凹外面9、截頭円錐外面33及び部分円球凸面41を有した剛体42と、剛体42の部分円球凸面41に加硫接着により固着されていると共に断面円弧凸外面11を有した天然ゴム製の弾性体43とを具備していてもよく、このように回転体13が剛体42に対する被覆層として弾性体43を具備していると、水平方向Hに関しての全方向の地震の震動に対して什器3を免震支持できる上に、弾性体43の弾性変形で、床2に加わる鉛直方向Vの地震による震動に対しても什器3を免震支持できて、什器3自体及び什器3内の物品をも保護でき、加えて、静止状態において鉛直方向Vの荷重を受ける弾性体43の部分の部分的弾性変形による当該部分の凹みに起因する断面円弧凸外面11の平坦化でトリガ作用を得ることができることになる。
【0033】
図1及び図3に示す免震支持装置1では、回転体13の大きな回転角θを伴う地震の震動において、回転体13が支持体8から外れる虞れが生じ得るが、図4に示すように、免震支持装置1は、支持体8の断面円弧凸外面7の曲率中心である中心O1を中心とした回転体13のR方向の回転において当該回転体13の衝突でその一定以上の回転を禁止して支持体8からの回転体13の離脱を防止する離脱防止機構51を更に具備していてもよく、離脱防止機構51は、支持体8に取付けられていると共に回転体13を囲繞している囲繞体52を具備している。
【0034】
囲繞体52は、取付具6及びナット25に挟持されて支持体8の螺子部21に固着された円盤状の天井部55と、天井部55の外周縁に上端で一体となって回転体13を周りから取り囲んだ円筒部56と、円筒部56の下端に一体となって当該円筒部56の下端から水平方向H外方に突出していると共に環状下面57で床2の平坦面10に接触した環状外側鍔部58と、環状外側鍔部58に上方において円筒部56に一体となって当該円筒部56の円筒内面59から水平方向Hの内方に突出していると共に回転体13が回転し得る開口60を規定した円筒状の内周面61を有した環状内側鍔部62とを具備している。
【0035】
斯かる離脱防止機構51を具備した免震支持装置1では、図5に示すように、支持体8の断面円弧凸外面7の曲率中心である中心O1を中心とした回転体13の大きな回転角θを伴う水平方向Hの地震の震動による回転体13の一定以上のR方向の回転において、回転体13は、囲繞体52の内面である天井部55の下面63に衝突して接触し、それ以上の回転が禁止されるようになっており、而して、支持体8の断面円弧凸外面7の曲率中心である中心O1を中心とした回転体13の一定以上の回転において、当該回転体13が接触する内面である天井部55の下面63を有している囲繞体52は、支持体8の部分円球部24からの回転体13の離脱を防止するようになっている。
【0036】
離脱防止機構51を具備した免震支持装置1によれば、意図しない大きな水平方向Hの震動で回転体13が大きく回転されようとしても、回転体13の一定以上の回転を禁止して支持体8からの回転体13の離脱を防止し得る結果、什器3の転倒等を防ぐことができ、地震による被害を最小限にし得る。
【0037】
囲繞体52を有した離脱防止機構51では、免震支持装置1の静止状態で、環状下面57で平坦面10に接触した環状外側鍔部58を具備しているために、免震支持装置1の静止状態での囲繞体52の内部65を外部に対して密閉でき当該内部65への塵埃の侵入を防ぐこともでき、塵埃による免震支持装置1の動作不良を回避できる。
【0038】
以上の免震支持装置1では、支持体8を什器3の外函4に固定し、回転体13をその断面円弧凸外面11で床2の平坦面10に転がり自在に接触させたが、これに代えて、支持体8を螺子部21で床2に固定し、回転体13の断面円弧凸外面11を什器3の外函4の下面である平坦面71に回転自在に接触させてもよく、換言すれば、支持体8と回転体13との組み合わせ体を天地逆にしてもよく、斯かる天地逆にした免震支持装置では、回転体13の断面円弧凸外面11の曲率中心である中心O2は、免震支持装置の静止状態において、回転体13の断面円弧凹外面9の曲率中心である中心O1に対して鉛直方向Vにおいて床2の側である下方に偏芯量δをもって偏芯して位置されるとよい。
【符号の説明】
【0039】
1 免震支持装置
2 床
3 什器
4 外函
5 螺子
6 取付具
7、11 断面円弧凸外面
8 支持体
9 断面円弧凹外面
10 平坦面
13 回転体
O1、O2 中心
r1 距離
r2 曲率半径
図1
図2
図3
図4
図5