特許第6199675号(P6199675)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6199675焼結金属軸受、及びこの軸受を備えた流体動圧軸受装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6199675
(24)【登録日】2017年9月1日
(45)【発行日】2017年9月20日
(54)【発明の名称】焼結金属軸受、及びこの軸受を備えた流体動圧軸受装置
(51)【国際特許分類】
   F16C 33/10 20060101AFI20170911BHJP
   F16C 17/10 20060101ALI20170911BHJP
   F16C 33/14 20060101ALI20170911BHJP
   H02K 7/08 20060101ALI20170911BHJP
   H02K 7/14 20060101ALI20170911BHJP
【FI】
   F16C33/10 A
   F16C17/10 A
   F16C33/10 Z
   F16C33/14 A
   H02K7/08 A
   H02K7/14 A
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-196973(P2013-196973)
(22)【出願日】2013年9月24日
(65)【公開番号】特開2015-64019(P2015-64019A)
(43)【公開日】2015年4月9日
【審査請求日】2016年8月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000102692
【氏名又は名称】NTN株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100155457
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 祐輔
(72)【発明者】
【氏名】小松原 慎治
【審査官】 前田 浩
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−231966(JP,A)
【文献】 特開2002−97503(JP,A)
【文献】 特開2007−211973(JP,A)
【文献】 特開2006−118594(JP,A)
【文献】 特開2008−266376(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 33/10
F16C 17/10
F16C 33/14
H02K 7/08
H02K 7/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料粉末を軸方向に圧縮成形したものを焼結することで形成された筒状の多孔質体であって、内周面に動圧発生部設けられると共に、内部気孔に潤滑油が充填されている焼結含油軸受において、
動圧発生部として、円周方向に対して傾斜させた複数の動圧溝を配列してなる動圧溝配列領域が軸方向に連続して形成され、
表面を含む表層部の気孔は封止剤で封止されることなく開孔しており、
軸方向寸法が6mm以下とされると共に、軸受全体の密度比が80%以上でかつ95%以下であって、かつ
軸受内部における表層部と芯部との間での密度比のばらつき、又は軸方向一方側と軸方向他方側との間での密度比のばらつきが何れも3%以下に抑えられていることを特徴とする焼結含油軸受。
【請求項2】
軸方向で連続する動圧溝配列領域は何れもヘリングボーン形状をなし、各動圧溝配列領域を構成する動圧溝がその軸方向中央側で連続している請求項1に記載の焼結含油軸受。
【請求項3】
内径寸法が3mm以下で、かつ外径寸法が6mm以下とされる請求項1に記載の焼結含油軸受。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか一項に記載の焼結含油軸受と、焼結含油軸受の内周に挿通される軸部と、焼結含油軸受の内周面と軸部の外周面との間に形成されるラジアル軸受隙間とを備え、少なくとも焼結含油軸受の内部空孔と、ラジアル軸受隙間に潤滑油が充填されている流体動圧軸受装置。
【請求項5】
潤滑油は、40℃での動粘度が20cSt以上でかつ170cSt以下を示し、100℃での動粘度が2cSt以上でかつ50cSt以下を示すものである請求項に記載の流体動圧軸受装置。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の流体動圧軸受装置と、軸部に取付けられるファンとを備えたファンモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焼結金属軸受、及びこの軸受を備えた流体動圧軸受装置に関する。
【背景技術】
【0002】
焼結金属軸受は、内部気孔に潤滑油を含浸させて使用されるものであって、内周に挿入された軸の相対回転に伴い内部に含浸された潤滑油が軸との摺動部に滲み出して油膜を形成し、この油膜を介して軸を回転支持するものである。このような焼結金属軸受は、その優れた回転精度および静粛性から、情報機器をはじめ種々の電気機器に搭載されるモータ用の軸受装置として、より具体的には、HDDや、CD、DVD、ブルーレイディスク用のディスク駆動装置におけるスピンドルモータ軸受用途として、あるいは、レーザビームプリンタ(LBP)のポリゴンスキャナモータ、ファンモータ等の軸受用途として好適に利用されている。
【0003】
この種の焼結金属軸受においては、更なる静音性向上並びに高寿命化を狙って、当該軸受の内周面及び/又は端面に動圧発生部としての動圧溝を所定の態様で配列したものが知られている。この場合、動圧溝を成形する方法として、いわゆる動圧溝サイジングが提案されている。このサイジングは、例えば焼結体をダイの内周に圧入すると共に、上下パンチで軸方向に圧迫することで、予め焼結体の内周に挿入しておいたサイジングピン外周の成形型に焼結体を食い付かせる。これにより、焼結体の内周面に成形型の形状、すなわち動圧溝に対応した形状が転写され、動圧溝が所定の形状に成形される(例えば、特許文献1を参照)。
【0004】
上述した動圧溝の配列態様としては、例えば、複数の動圧溝を配列した領域を軸方向に離隔して軸受内周面の2ヶ所に設けたものがある。この動圧溝配列領域においては、各動圧溝配列領域の軸方向中央に向けて潤滑油の引き込みを生じる向きに動圧溝が配列されているため、配列領域間での負圧の発生を防止する目的で、内周面又はこれに対向する軸の外周面に潤滑油溜りとしての凹部(軸受側なら大径部、軸側なら小径部)を設けたものが提案されている(例えば、特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3607492号公報
【特許文献2】特許第4006810号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、最近では、情報機器の小型化、薄肉化に伴い、情報機器に搭載される各種モータに対しても小型化が求められている。例えばノートパソコンなどに使用される冷却用ファンモータは薄型化しており、このモータに使用される軸受装置も薄型化が要求されている。その一方で、冷却性能は従来と同等のレベルが要求されるため、インペラ(ファン)のサイズを大きくする等して対応する必要がある。ところが、このようにファンを巨大化すると、その分回転体重量が増すため、軸受に作用する負荷はむしろ増加する。負荷の増加に対応するには、軸受剛性を高めるのがよく、そのためには例えば動圧溝の長さ(長手方向寸法)を増加させる方法が考えられる。
【0007】
しかしながら、特許文献2に記載のように、動圧溝配列領域を内周面の2ヶ所に設けた焼結金属軸受では、動圧溝の長さを増加させようとしても、モータ及びこれに組み込まれる流体動圧軸受装置に対しても薄肉化の要請があるため、焼結金属軸受の軸方向寸法自体はむしろ縮小の方向にある。そのため、動圧溝の長さを容易に伸ばすことは難しい。これを無理に伸ばすとなると、必然的に配列領域間の領域(例えば軸受内周面に設けた潤滑油溜りとしての凹部)の軸方向寸法を縮小することになるため、この凹部で保持できる潤滑油の体積も減少する。これでは、当該領域に負圧が発生することで気泡が発生し、軸受すき間への侵入による軸受性能の低下や、気泡の膨張による潤滑油のバッファ容積の減少が懸念される。
【0008】
以上の事情に鑑み、流体動圧軸受装置の小型化を図りつつも、軸受内部空間での負圧の発生を防止して、必要十分な軸受剛性を発揮することのできる焼結金属軸受を提供することを、本発明により解決すべき技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題の解決は、本発明に係る焼結含油軸受により達成される。すなわち、この軸受は、原料粉末を軸方向に圧縮成形したものを焼結することで形成された筒状の多孔質体であって、内周面に動圧発生部設けられると共に、内部気孔に潤滑油が充填されている焼結含油軸受において、動圧発生部として、円周方向に対して傾斜させた複数の動圧溝を配列してなる動圧溝配列領域が軸方向に連続して形成され、表面を含む表層部の気孔は封止剤で封止されることなく開孔しており、軸方向寸法が6mm以下とされると共に、軸受全体の密度比が80%以上でかつ95%以下であって、かつ軸受内部における表層部と芯部との間での密度比のばらつき、又は軸方向一方側と軸方向他方側との間での密度比のばらつきが何れも3%以下に抑えられている点をもって特徴付けられる。なお、ここでいう「密度比」とは、焼結含油軸受をなす多孔質体の密度を、その多孔質体に気孔がないとした仮定した場合の密度で除した値(百分率)を意味する。
【0010】
本発明は、焼結金属軸受の軸方向寸法を6mm以下とし、かつ軸受全体の密度比を80%以上でかつ95%以下の範囲に設定した場合に、当該密度比が従来に比べて均一化される点に鑑みて成されたものである。すなわち、この種の軸受の圧粉成形工程では成形型に充填された原料粉末を、成形すべき圧粉成形体の軸方向に沿って加圧することで所定の形状(通常は筒状)に成形するのが一般的である。そのため、従来のように6mmを超える軸方向寸法に原料粉末を圧縮成形する場合、直接の加圧側(例えば軸方向上側)あるいは直接成形型と接触する表層部が密となり易く、加圧側や成形型から遠く離れた側(例えば軸方向下側や圧粉成形体の芯部)ほど疎となり易い。一方で、本発明のように、6mm以下にまで軸方向寸法を縮小し、かつその密度比が80%以上でかつ95%以下となるように設定(例えば原料粉末の軸方向の圧縮量を調整)することで、表層側と芯側、軸方向一方側と他方側とで密度比の差が非常に小さくなることが判明した。これにより、動圧溝配列領域を軸方向に連続して例えば特許文献2に記載の如き凹部を省略しても、軸受面(動圧溝配列領域)を介して軸受内部と軸受すき間との間で適度な潤滑流体の流通を図ることができる。よって、潤滑流体溜り(凹部)がなくても動圧溝配列領域間の領域に負圧が発生する事態を可及的に回避できつつ、十分な動圧作用を発揮させて高い軸受剛性を得ることが可能となる。また、軸方向寸法との兼ね合いによっては、動圧溝配列領域間の領域を省略した分、動圧溝を従来に比べて長く取ることができるので、更なる動圧作用の向上を図ることができる。
【0011】
また、本発明に係る焼結金属軸受は、軸受内部における密度比のばらつきが3%以下に抑えられているものであってもよい。軸受全体の密度比を上述した範囲に設定すると共に軸受内部における密度比のばらつきを上記範囲に収めるようにすることで、表層部の密度比を、軸受表面からの動圧の逃げを防ぎつつも軸受すき間への潤滑油等の滲み出しを適切に行い得る程度に設定することができる。また、表層部を除く領域(表層部よりも内側の領域)の密度比を、当該内側領域による潤滑油等の含浸量が適量となるように設定することが可能となる。
【0012】
また、本発明に係る焼結金属軸受は、軸方向で連続する動圧溝配列領域が何れもヘリングボーン形状をなし、各動圧溝配列領域を構成する動圧溝がその軸方向中央側で連続しているものであってもよい。
【0013】
また、本発明に係る焼結金属軸受は、内径寸法が3mm以下で、かつ外径寸法が6mm以下とされるものであってもよい。本発明では、軸方向寸法とその密度比で軸受剛性対策を可能としたので、径方向についてはその寸法を従来と同等のレベルに維持できる。具体的には、内径寸法及び外径寸法が上記範囲に収まっていれば、径方向への相応のスプリングバック量を得ることができる。よって、所定深さ(数μmレベル)の動圧溝を成形でき、所要の動圧効果が期待できる。
【0014】
以上の説明に係る焼結金属軸受は、例えばこの焼結金属軸受と、焼結金属軸受の内周に挿通される軸部と、焼結金属軸受を含む固定側と軸部を含む回転側との間に形成されるシール空間と、焼結金属軸受の内部を含む軸受内部空間に充填される潤滑油とを備えた流体動圧軸受装置として好適に提供することも可能である。
【0015】
また、この場合、本発明に係る流体動圧軸受装置は、潤滑油が、40℃での動粘度が20cSt以上でかつ170cSt以下を示し、100℃での動粘度が2cSt以上でかつ50cSt以下を示すものであるものであってもよい。このように、焼結金属軸受の密度比を調整してその内部構造の最適化を図ると共に、潤滑油についても用途に応じて比較的高粘度のものを使用することで、軸受性能の更なる向上に寄与し、かつ潤滑油の劣化を抑えることができる。よって、薄型化を図った場合にあっても、高性能かつ信頼性の高い流体動圧軸受装置を提供することが可能となる。
【0016】
また、以上の説明に係る流体動圧軸受装置は、回転体の重量増加によっても長期にわたって適度かつ安定した軸受剛性を発揮し得ることから、上記流体動圧軸受装置と、前記軸部に取付けられるファンとを備えたファンモータとして好適に提供することも可能である。
【発明の効果】
【0017】
以上のように、本発明によれば、流体動圧軸受装置の小型化を図りつつも、軸受内部空間での負圧の発生を防止して、必要十分な軸受剛性を発揮することのできる焼結金属軸受を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態に係るファンモータの概念図である。
図2図1のモータを構成する流体動圧軸受装置の断面図である。
図3】本発明の一実施形態に係る焼結金属軸受の断面図である。
図4図3に示す焼結金属軸受を軸方向から見た図で、(a)は上側端面を軸方向上側から見た図、(b)は下側端面を軸方向下側から見た図である。
図5】本発明の他の実施形態に係る焼結金属軸受の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の説明においては、焼結金属軸受から見て、ハブ部の円盤部の側を「上側」、蓋部材の側を「下側」として取り扱う。もちろん、この上下方向は、実際の製品の設置態様、使用態様を限定するものではない。
【0020】
図1は、本発明に係る流体動圧軸受装置1を備えたファンモータ2、及びこのファンモータ2を搭載した情報機器3の概略断面図を示している。このファンモータ2は、いわゆる遠心タイプのファンモータ2であって、冷却すべき部品(情報機器3)のベース4に取付けられる。
【0021】
このファンモータ2は、流体動圧軸受装置1と、流体動圧軸受装置1の回転部材9に設けられた複数枚のファン5と、これらファン5を回転部材9と一体に回転させるための駆動部6とを備える。駆動部6は、例えば半径方向のギャップを介して対向させたコイル6a及びマグネット6bからなり、本実施形態では、コイル6aが固定側(ベース4)に、マグネット6bが回転側(回転部材9を構成するハブ部10)にそれぞれ固定される。
【0022】
コイル6aに通電すると、コイル6aとマグネット6bとの間の励磁力でマグネット6bが回転し、それによって、回転部材9(本実施形態ではハブ部10)の外周縁に立設された複数枚のファン5が回転部材9と一体に回転する。この回転により、各ファン5は外径方向外側への気流を生じ、この気流に引き込まれる形で、ファンモータ2の軸方向上側に設けたベース4の穴4aから吸気流が軸方向下側に向けて生じる。このようにして情報機器3の内部に気流を発生させることで、情報機器3の内部に発生した熱を外部に放出(冷却)可能としている。
【0023】
図2は、ファンモータ2に組み込まれた流体動圧軸受装置1の断面図を示している。この流体動圧軸受装置1は、主にハウジング7と、ハウジング7の内周に固定される焼結金属軸受8、および、焼結金属軸受8に対して相対回転する回転部材9とを備えている。
【0024】
回転部材9は、ハウジング7の上端開口側に配置されるハブ部10と、焼結金属軸受8の内周に挿入される軸部11とを有する。
【0025】
ハブ部10は、ハウジング7の上端開口側を覆う円盤部10aと、円盤部10aから軸方向下側に伸びる第1筒状部10bと、第1筒状部10bよりも外径側に位置し、円盤部10aから軸方向下側に伸びる第2筒状部10cと、第2筒状部10cの軸方向下端からさらに外径側に伸びる鍔部10dとで構成される。円盤部10aは、ハウジング7の内周に固定された焼結金属軸受8の一方の端面(上端面8b)と対向している。また、複数枚のファン5は、鍔部10dの外周縁から立設する形でハブ部10と一体的に設けられている。
【0026】
軸部11は、この実施形態ではハブ部10と一体に形成され、その下端にフランジ部12を別体に有する。この場合、フランジ部12の上端面12aは焼結金属軸受8の他方の端面(下端面8c)と対向する。もちろん、軸部11をハブ部10と別体に形成することもでき、その際には、軸部11の上端をハブ部10の中央に設けた孔に圧入、接着等の手段により固定することも可能である。あるいは、異材料で形成される軸部11とハブ部10の一方をインサート部品として他方を金属や樹脂の射出成形で形成することもできる。
【0027】
ハウジング7は、その軸方向両端を開口した筒状をなし、その下端開口側を蓋部材13で封口している。また、ハウジング7の内周面7aは焼結金属軸受8に固定されると共に、その外周面7bは情報機器3のベース4に固定されている。ハウジング7の上端面7cと、ハブ部10の円盤部10aの下端面10a1との軸方向の対向間隔は、焼結金属軸受8の上端面8bと円盤部10aの下端面10a1との対向間隔より大きく、ここでは、回転駆動時のロストルク増加に実質的に影響しないとみなせる程度の大きさに設定されている。
【0028】
ハウジング7の外周上側には、上方に向かうにつれて外径寸法が増加するテーパ状のシール面7dが形成される。このテーパ状のシール面7dは、第1筒状部10bの内周面10b1との間に、ハウジング7の閉塞側(下方)から開口側(上方)に向けて半径方向寸法を漸次縮小させた環状のシール空間Sを形成する。このシール空間Sは、軸部11およびハブ部10の回転時、後述する第1スラスト軸受部T1のスラスト軸受すき間の外径側と連通しており、各軸受すき間を含む軸受内部空間との間で潤滑油の流通を可能としている。また、潤滑油を軸受内部空間に充填した状態では、潤滑油の油面(気液界面)は、常にシール空間S内に維持されるよう、潤滑油の充填量が調整される(図2を参照)。
【0029】
焼結金属軸受8は、例えば銅(純銅だけでなく銅合金を含む)や鉄(純鉄だけでなくステンレスなどの鉄合金を含む)などの金属を主成分とする原料粉末を圧縮成形し、焼結してなる焼結金属の多孔質体であり、概して円筒形状をなす。焼結金属軸受8の内周面8aの全面又は一部には、動圧発生部として複数の動圧溝8a1を配列した領域が形成される。本実施形態では、この動圧溝配列領域は、図3に示すように、円周方向に対して所定角傾斜させた複数の動圧溝8a1と、これら動圧溝8a1を円周方向に区画する傾斜丘部8a2と、円周方向に伸びて各動圧溝8a1を軸方向で区画する帯部8a3(傾斜丘部8a2、帯部8a3ともに図3でクロスハッチングを付した部分)とをヘリングボーン形状に配列してなるもので、軸方向に連続して2箇所に形成される。この場合、上側の動圧溝配列領域A1と、下側の動圧溝配列領域A2はともに、軸方向中心線(帯部8a3の軸方向中央を円周方向につなぐ仮想線)に対して軸方向対称に形成されており、その軸方向寸法は互いに等しい。
【0030】
焼結金属軸受8の上端面8bの全面又は一部には、動圧発生部としての複数の動圧溝8b1を配列した領域が形成される。この実施形態では、例えば図4(a)に示すように、スパイラル状に伸びる複数の動圧溝8b1を円周方向に並べて配列した領域が形成されている。この際、動圧溝8b1のスパイラルの向きは、回転部材9の回転方向に対応した向きに設定される。上記構成の動圧溝配列領域は、図2に示す流体動圧軸受装置1を回転駆動させた状態では、対向するハブ部10の円盤部10aの下端面10a1との間に後述する第1スラスト軸受部T1のスラスト軸受すき間を形成する。
【0031】
また、焼結金属軸受8の下端面8cの全面又は一部には、動圧発生部としての複数の動圧溝8c1を配列した領域が形成される。この実施形態では、例えば図4(b)に示すように、スパイラル状に伸びる複数の動圧溝8c1を円周方向に並べて配列した領域が形成されている。この際、動圧溝8c1のスパイラルの向きは、回転部材9の回転方向に対応した向きに設定される。すなわち、図2に示す設置態様では、回転部材9のフランジ部12の回転方向に対応した向き(フランジ部12との間に動圧を発生可能な向き)となる。よって、上記構成の動圧溝配列領域は、図2に示す流体動圧軸受装置1を回転駆動させた状態では、対向するフランジ部12の上端面12aとの間に後述する第2スラスト軸受部T2のスラスト軸受すき間を形成する(図2を参照)。
【0032】
スラスト軸受すき間は、流体動圧軸受装置1を組立てた時点で自動的に設定される。すなわち、流体動圧軸受装置1を図2の如く組立てた状態では、ハウジング7に固定した焼結金属軸受8を軸方向に挟む位置に、フランジ部12とハブ部10の円盤部10aとが配置される。よって、ハブ部10の下端面10a1とフランジ部12の上端面12aとの対向間隔から、焼結金属軸受8の軸方向寸法を減じた値が双方のスラスト軸受すき間の総和に設定される。
【0033】
焼結金属軸受8の外周面8dには、1又は複数本(本実施形態では3本)の軸方向溝8d1が形成される。この軸方向溝8d1は、ハウジング7に焼結金属軸受8を固定した状態では、ハウジング7の内周面7aとの間に潤滑油の流路を形成する(図2を参照)。
【0034】
また、焼結金属軸受8の各種寸法について述べると、その軸方向寸法L(両端面8b,8cの軸方向離間距離)は、6mm以下に設定される。内径寸法D1(正確には、内周面8aのうち傾斜丘部8a2と共に最小径部となる帯部8a3の内径寸法)は3mm以下、外径寸法D2は6mm以下にそれぞれ設定される。
【0035】
次に、焼結金属軸受8の密度比について述べる。この焼結金属軸受8は、その軸受全体の密度比(焼結金属軸受8をなす多孔質体の密度/当該多孔質体に気孔がないとした仮定した場合の密度)が80%以上でかつ95%となるように設定される。また、この焼結金属軸受8においては、軸受内部における密度比のばらつきが従来に比べて小さくなって(均一化されて)いる。具体的には、当該軸受内部における密度比のばらつきが3%以下に抑えられていることが好ましい。なお、この際の密度比のばらつきは、密度比と一定の相間が認められる細孔率を用いて評価することができる。ここで細孔率とは、当該軸受の単位体積当りに占める細孔の体積割合(百分率)で表され、経験則上、密度比とはほぼ負の相間(−1の相関係数)を示す。
【0036】
また、内周面8a、特にラジアル軸受面となる傾斜丘部8a2及び帯部8a3の内周面の表面開孔率は、例えば2%以上かつ15%以下に調整される。
【0037】
上記構成の焼結金属軸受8は、例えば以下に示す工程を経て製造される。
【0038】
すなわち、上記構成の焼結金属軸受8は、原料粉末を圧縮成形して圧粉成形体を得る圧粉成形工程(S1)と、圧粉成形体を焼結して焼結体を得る焼結工程(S2)と、焼結体にサイジングを施して、焼結体の少なくとも内周面8aに動圧発生部としての動圧溝8a1を成形する動圧溝サイジング工程(S3)とを主に備える。本実施形態では、焼結工程(S2)の後で動圧溝サイジング工程(S3)の前に、焼結体に寸法サイジングを施す寸法サイジング工程(S031)と、焼結体の内周面8aに回転サイジングを施す回転サイジング工程(S032)とをさらに備える。動圧溝サイジング工程(S3)を中心に各工程(S1)〜(S3)を説明する。
【0039】
(S1)圧粉成形工程
まず、最終的な製品となる焼結金属軸受8の材料となる原料粉末を用意し、これを金型プレス成形により所定の形状に圧縮成形する。具体的には、図示は省略するが、ダイと、ダイの孔内に挿入配置されるコアピンと、ダイとコアピンとの間に配設され、ダイに対して昇降可能に構成された下パンチ、および、ダイと下パンチの何れに対しても相対変位(昇降)可能に構成された上パンチとで構成される成形金型を用いて原料粉末の圧縮成形を行う。この場合、ダイの内周面とコアピンの外周面、および、下パンチの上端面とで区画形成される空間に原料粉末を充填し、然る後、下パンチを固定した状態で上パンチを下降させ、充填状態の原料粉末を軸方向に加圧する。そして、加圧しながら所定の位置まで上パンチを下降させ、原料粉末を所定の軸方向寸法にまで圧縮することで、圧粉成形体が成形される。この際、圧粉成形体の軸方向寸法は、上パンチの下端面と、下パンチの上端面との距離、より具体的には上パンチの下死点を、目標とすべき軸方向寸法(この後の焼結、各種サイジングによる寸法変化を考慮して設定)に応じて制御することで、適切な範囲に設定可能となる。
【0040】
(S2)焼結工程
上述のようにして、圧粉成形体を得た後、この圧粉成形体を原料粉末に応じた温度で焼結することにより、焼結体を得る。
【0041】
(S031)寸法サイジング工程、及び(S032)回転サイジング工程
そして、焼結体に対して寸法サイジングを施して、焼結体の外径寸法や内径寸法、及び軸方向寸法を最終製品に準じた寸法に矯正すると共に、内周面8aの表面開孔率を、動圧軸受として好適な割合に調整する。この段階では、焼結体の内周面8aに所定の動圧溝8a1配列領域は未だ形成されてない。同様に、図示は省略するが、焼結体の両端面8b,8cに所定の動圧溝8b1,8c1配列領域は未だ形成されていない。
【0042】
(S3)動圧溝サイジング工程
上記一連の工程を経て得られた焼結体に対して所定の動圧溝サイジングを施すことで、焼結体の内周面8aに動圧溝配列領域A1,A2を成形する。ここで使用する成形装置は、図示は省略するが、焼結体の圧入穴を有するダイと、ダイの圧入穴に挿入可能に配置されるサイジングピンと、ダイとサイジングピンとの間に配設され、ダイに対して相対的に昇降可能に構成された下パンチ、および、ダイと下パンチの何れに対しても昇降可能に構成された上パンチとを有する。この場合、ダイの圧入穴の内径寸法は、サイジングすべき焼結体の圧入代に応じて適宜設定される。また、サイジングピンの外周面には、成形すべき内周面8aの動圧溝配列領域A1,A2(図3)に対応する形状の成形型が設けられると共に、上パンチの下端面、及び下パンチの上端面にはそれぞれ、成形すべき上端面8bの動圧溝8b1配列領域、下端面8cの動圧溝8c1配列領域(図4(a)(b))に対応する形状の成形型がそれぞれ設けられる。
【0043】
次に、上記成形装置を用いた動圧溝サイジングの一態様を説明する。まず、ダイ21の上端面21bに焼結体を配置した状態で、その上方から上パンチとサイジングピンを下降させる。これにより、焼結体の内周にサイジングピンを挿入し、サイジングピンの外周に設けておいた成形型を焼結体の内周面と半径方向で対向させる。そして、この成形型が内周面の軸方向所定位置にまで到達したら、上パンチのみを引き続き下降させて焼結体の上端面を押圧する。これにより、焼結体がダイの圧入穴に押込まれ、焼結体の外周面が圧迫されると共に、予め内周に挿入したサイジングピンの成形型に焼結体の内周面が食い付く。また、この状態から、さらに上パンチを下降させて、焼結体を上パンチと下パンチとで挟持し、外径方向への変形をダイにより拘束された状態の焼結体を軸方向に圧迫することで、さらに内周面が成形型に食い付く。このようにして、成形型の形状が焼結体の内周面に転写され、この内周面に動圧溝配列領域A1,A2が成形される。また、この際、上パンチの下端面及び下パンチの上端面に設けた成形型がそれぞれ焼結体の上端面及び下端面に食い込むことで、これら上端面と下端面とに各成形型の形状が転写され、対応する動圧溝8b1,8c1の配列領域が成形される。
【0044】
このようにして焼結体の内周面及び両端面に所定の動圧溝8a1〜8c1配列領域を成形した後、ダイを下パンチに対して相対的に下降させて、ダイによる焼結体の拘束状態を解除する。これにより、焼結体は外径方向へのスプリングバックを生じ、サイジングピンから焼結体を取り外すことが可能となる。この際、要求されるスプリングバック量は、サイジングピンに設けた成形型がサイジング後の焼結体内周面(特に動圧溝配列領域)と軸方向で引っ掛かりを生じない程度の大きさになるため、成形すべき動圧溝8a1の溝深さ(数μm)を考慮して、焼結体の肉厚、すなわち完成品としての焼結金属軸受8の肉厚(外径寸法D2−内径寸法D1)が設定される。本実施形態では、内径寸法D1を3mm以下、外径寸法D2を6mm以下とすることで、必要な深さの動圧溝8a1を成形しつつ、成形に供したサイジングピンをサイジング後の焼結体から引っ掛かりなく引抜くことができる。
【0045】
上記構成の流体動圧軸受装置1の内部(軸受内部空間)には潤滑流体としての潤滑油が充填される。ここで、潤滑油としては、種々のものが使用可能であり、例えば、蒸発率が小さく、かつ低温時の粘度低下が少ないエステル系の潤滑油や、エステル系よりも耐性に優れたフッ素系の潤滑油などが好適に使用される。また、動粘度の観点からは、例えば40℃での動粘度が20cSt以上でかつ170cSt以下を示し、100℃での動粘度が2cSt以上でかつ50cSt以下を示す潤滑油が好適に使用される。
【0046】
上記構成の流体動圧軸受装置1において、軸部11(回転部材9)の回転時、焼結金属軸受8の内周面8aのラジアル軸受面となる領域(上下2ヶ所の動圧溝配列領域A1,A2)は、軸部11の外周面とラジアル軸受すき間を介して対向する。そして、軸部11の回転に伴い、上記ラジアル軸受すき間の潤滑油が各動圧溝配列領域A1,A2の軸方向中心側に押し込まれ、軸方向中心側の領域(ここでは帯部8a3)において潤滑油の圧力が上昇する。このような動圧溝8a1の動圧作用によって、軸部11をラジアル方向に回転自在に非接触支持する第1ラジアル軸受部R1と第2ラジアル軸受部R2とが軸方向に離隔してそれぞれ構成される。
【0047】
また、焼結金属軸受8の上端面8b(動圧溝8b1を配列した領域)とこれに対向するハブ部10の下端面10a1との間のスラスト軸受すき間に、動圧溝8b1の動圧作用により潤滑油の油膜が形成される。また、焼結金属軸受8の下端面8c(動圧溝8c1を配列した領域)とこれに対向するフランジ部12の上端面12aとの間のスラスト軸受すき間に、動圧溝8c1の動圧作用により潤滑油の油膜が形成される。そして、これらの油膜の圧力によって、回転部材9をスラスト双方向に非接触支持する第1スラスト軸受部T1および第2スラスト軸受部T2が構成される。
【0048】
このように、本発明では、焼結金属軸受8の軸方向寸法を6mm以下とし、かつ軸受全体の密度比を80%以上でかつ95%以下の範囲に設定したので、表層部の側と芯部の側、軸方向上側と下側とで密度比の差が非常に小さくすることができる。これにより、動圧溝配列領域A1,A2を軸方向に連続した構成とした場合にあっても、動圧溝配列領域A1,A2(特に動圧溝8a1の底面)を介して焼結金属軸受8の内部と軸受すき間との間で適度な潤滑油の流通を図ることができる。よって、特許文献1の如き潤滑流体溜り(凹部)がなくても動圧溝配列領域A1,A2間の領域に負圧が発生する事態を可及的に回避しつつも、十分な動圧作用を発揮させて高い軸受剛性を得ることが可能となる。
【0049】
また、この際、焼結金属軸受8の内部における密度比のばらつきが3%以下となるように、サイズや成形条件を調整することで、焼結金属軸受8の表層部の密度比を、軸受表面からの動圧の逃げを防ぎつつも軸受すき間への潤滑油等の滲み出しを適切に行い得る程度に設定することができる。また、表層部を除く領域(表層部よりも芯部に近い内側の領域)の密度比を、当該内側領域による潤滑油等の含浸量が適量となるように設定することが可能となる。これにより、温度変化によるバッファ性能を考慮したシール空間Sの設計が成立する。
【0050】
また、本実施形態では、焼結金属軸受8の内部気孔を含む軸受内部空間に含浸させる潤滑油として、40℃での動粘度が20cSt以上でかつ170cSt以下を示し、100℃での動粘度が2cSt以上でかつ50cSt以下を示すものを用いた。このように、焼結金属軸受8の密度比を調整してその内部構造の最適化を図ると共に、潤滑油についても用途に応じて比較的高粘度のものを使用することで、軸受性能の更なる向上に寄与し、かつ潤滑油の劣化を抑えることができる。よって、薄型化を図った場合にあっても、高性能かつ信頼性の高い流体動圧軸受装置1を提供することが可能となる。
【0051】
以上、本発明の一実施形態を説明したが、本発明に係る焼結金属軸受8及びその製造方法は上記形態には限られることなく、本発明の範囲内において種々の変形、変更が可能なことはもちろんである。
【0052】
例えば、上記実施形態では、動圧溝サイジング工程において、ダイに焼結体を圧入すると共に、上パンチ及び下パンチで焼結体を軸方向に圧縮することで焼結体内周面への動圧溝配列領域A1,A2の成形を行う場合を例示したが、可能であれば、ダイへの圧入なしで軸方向への圧入のみで焼結体の内周面に動圧溝配列領域A1,A2を形成しても構わない。また、軸方向圧縮に際しての上パンチ及び下パンチの移動態様についても上記例示の形態には限られない。例えば、上パンチを下降させて下パンチとの間で焼結体を軸方向にある程度圧縮した状態から下パンチを上昇させてさらに焼結体を圧縮する等、他の押圧態様を採用することも可能である。
【0053】
また、上記実施形態では、内周面8aの動圧発生部として、ヘリングボーン形状をなす動圧溝配列領域A1,A2を形成する場合を例示したが、もちろんこれ以外の形状をなす動圧溝配列領域を形成することも可能である。例えば図5に示すように、動圧溝配列領域A1,A2において、各動圧溝配列領域A1,A2中の帯部8a3をなくし、帯部8a3を介して上下に配置されていた動圧溝8a1と傾斜丘部8a2とをそれぞれ連続させた形態をとることも可能である。また、各動圧溝配列領域A1,A2につき、その軸方向中央位置を境として必ずしも対称的な形状をなすものであっても無くてもよい。また、軸方向に連続する動圧溝配列領域A1,A2についても、その境界に対して対称的な形状をなすものであっても無くてもよい。要は、各動圧溝配列領域A1,A2が、その軸方向中央側に向けて潤滑油の引き込みを生じる向きに動圧溝が配列されている限りにおいてその形状は任意である。もっといえば、動圧溝配列領域A1,A2の境界位置からそれぞれ各端面8b,8c側に遠ざかる向きに潤滑油の引き込みを生じる形態をなす限りにおいて任意の形態をとることが可能である。
【0054】
また、上記実施形態では、上端面8bと下端面8cとに動圧溝8b1,8c1をそれぞれ形成した場合を例示したが、上端面8bと下端面8cの一方のみに動圧溝を成形しても良く、あるいは何れの端面8b,8cにも動圧溝を設けずにおく構成をとっても構わない。
【0055】
また、上記実施形態では、焼結金属軸受8をハウジング7に固定してから(流体動圧軸受装置1を組立ててから)焼結金属軸受8の内部気孔を含めた軸受内部空間に潤滑油を含浸させる方法を例示したが、もちろん軸受完成時点(組込み前の時点)で焼結金属軸受8に潤滑油を含浸させても構わない。
【0056】
また、以上の説明に係る焼結金属軸受8は、上記例示の如き薄型タイプ(シール空間Sをラジアル軸受部R1,R2の外径側に配した形態)の流体動圧軸受装置1だけでなく、他タイプの流体動圧軸受装置にも適用可能なことはもちろんである。
【0057】
また、本発明に係る流体動圧軸受装置1は、上記例示の如き遠心タイプのファンモータ2だけでなく、軸流タイプなど他のタイプのファンモータ2にも適用可能である。もちろん、ファンモータ2に限ることなく、HDD等のディスク駆動装置に用いられるスピンドルモータや、光ディスクの光磁気ディスク駆動用のスピンドルモータ等、高速回転下で使用される情報機器3用の小型モータ、レーザビームプリンタのポリゴンスキャナモータ等、種々のモータ駆動用軸受装置として好適に使用することが可能である。
【符号の説明】
【0058】
1 流体動圧軸受装置
2 ファンモータ
3 情報機器
4 ベース
5 ファン
6 駆動部
7 ハウジング
7a 内周面
8 焼結金属軸受
8a 内周面
8a1 動圧溝(内周面)
8a2 傾斜丘部
8a3 帯部
8b 上端面
8b1 動圧溝(上端面)
8c 下端面
8c1 動圧溝(下端面)
9 回転部材
10 ハブ部
10a 円盤部
10a1 下端面
12 フランジ部
13 蓋部材
A1,A2 動圧溝配列領域
R1,R2 ラジアル軸受部
T1,T2 スラスト軸受部
S シール空間
図1
図2
図3
図4
図5