特許第6199688号(P6199688)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6199688
(24)【登録日】2017年9月1日
(45)【発行日】2017年9月20日
(54)【発明の名称】糖蜜固形化肥料及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C05F 5/00 20060101AFI20170911BHJP
   C05D 3/02 20060101ALI20170911BHJP
   C05G 5/00 20060101ALI20170911BHJP
【FI】
   C05F5/00
   C05D3/02
   C05G5/00 Z
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-212186(P2013-212186)
(22)【出願日】2013年10月9日
(65)【公開番号】特開2014-12639(P2014-12639A)
(43)【公開日】2014年1月23日
【審査請求日】2016年7月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】591033168
【氏名又は名称】南西糖業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113033
【弁理士】
【氏名又は名称】平山 精孝
(72)【発明者】
【氏名】橋口 英文
(72)【発明者】
【氏名】亀澤 功一
(72)【発明者】
【氏名】廣 敬造
(72)【発明者】
【氏名】守 憲吾
【審査官】 井上 恵理
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭63−089485(JP,A)
【文献】 特開平01−282119(JP,A)
【文献】 特開2008−266042(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C05B 1/00− 21/00
C05C 1/00− 13/00
C05D 1/00− 11/00
C05F 1/00− 17/02
C05G 1/00− 5/00
C02F11/00− 11/20
A23L 5/00− 29/10
A23L21/00− 29/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
消石灰に、糖蜜又は廃糖蜜のみを加えて混合し、ここで、消石灰と糖蜜又は廃糖蜜との混合比率は、消石灰100質量部に対して、糖蜜又は廃糖蜜中に含まれる固形分量として140〜250質量部であり、少なくとも、該混合物の粘度が略一定になるまで混合を継続して、粒状の糖蜜固形化肥料を製造する方法。
【請求項2】
上記の糖蜜又は廃糖蜜量が160〜220質量部である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
上記の混合が、消石灰に糖蜜又は廃糖蜜を滴下添加することにより実行される、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
上記の混合が、三次元方向の流動状態を与え得る混合装置により実行される、請求項1〜3のいずれか一つに記載の方法。
【請求項5】
得られた粒状の糖蜜固形化肥料の粒度分布において、1.0〜20.0mmの範囲に存在する粒子が全体の90%以上である、請求項1〜4のいずれか一つに記載の方法。
【請求項6】
サトウキビ生産地に立地された原料糖製造工場から廃棄される廃糖蜜を使用し、かつ、得られた粒状の糖蜜固形化肥料を、該サトウキビ生産地において肥料として使用する、請求項1〜5のいずれか一つに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、糖蜜固形化肥料及びその製造方法に関し、更に詳しくは、糖蜜、又は、原料糖を製造する工程若しくは精製糖を製造する工程において発生する廃糖蜜を原料とする糖蜜固形化肥料及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
サトウキビから原料糖を製造する工程において、副産物としての廃糖蜜が、サトウキビ処理量のおよそ2〜3質量%発生する。例えば、某サトウキビ産地では、サトウキビの平年作約20万トンに対して約6千トンの廃糖蜜が発生する。該廃糖蜜は、通常、その全量が飼料製造用として極めて安価に引き取られているのが現状である。しかし、飼料製造用として取引するためには、廃糖蜜を出荷するまで工場内に貯蔵しておくための貯槽が必要となり、十分な量の貯蔵を確保するためには、貯槽の設置及びその保守に費用が嵩む。一方、貯槽の数を制限すれば、廃糖蜜を出荷できないときには貯槽が満杯となり、工場の操業自体を停止せざるを得ないという事態を招くこともある。このような問題は、原料糖を製造する工程のみならず、精製糖を製造する工程においても同様に問題となっている。また、廃糖蜜をそのまま圃場、例えば、サトウキビ圃場に散布して肥料として使用することも考えられる。しかし、糖蜜は高粘性の液体であることから、散布に際して特殊な散布装置を備えたトラクター等を使用する必要があり、コスト高になると共に、糖蜜及びトラクターの取扱いが煩雑で多大な労力が必要であった。また、その肥効は、上記のような多大な労力を費やしてまで散布するほどのものではなかった。
【0003】
上記の問題を解決するために、糖蜜又は廃糖蜜を固形化することが提案されている。例えば、糖蜜又は糖蜜から糖分を除去した液から固形物を製造する方法であって、糖蜜又は糖蜜から糖分を除去した液と、150g/リットル以上の見掛け比重を有する二酸化ケイ素とを混合すること、当該混合物を乾燥して、上記固形物を得ることを含み、糖蜜又は糖蜜から糖分を除去した液の固形分重量と二酸化ケイ素の重量との比が50:50〜80:20であり、及び上記固形物の水分が10重量%以下である方法が知られている(特許文献1)。該発明は、固形化するための賦形剤として所定の見掛け比重を有する二酸化ケイ素を使用する。そして、それにより、賦形剤として、米ぬか、パン粉及びデキストリンを使用した場合と比較して、糖蜜中の固形分及び有効成分量を高めようとするものである。また、該方法により得られた固形物を食品、飼料、肥料に応用しようとするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−229484号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、肥効に優れるばかりではなく、肥料としての取り扱いを著しく容易にし得るところの、消石灰と糖蜜又は廃糖蜜とから得られる粒状の糖蜜固形化肥料、及び、該粒状の糖蜜固形化肥料を製造する方法を提供するものである。また、本発明の糖蜜固形化肥料は、サトウキビから原料糖を製造する工程等において発生する副産物としての廃糖蜜を固形化して得られる故、原料糖を製造する工程等の操業中の廃糖蜜の貯蔵問題を効果的に解決し得る。
【課題を解決するための手段】
【0006】
サトウキビから原料糖を製造する工程等において発生する副産物としての廃糖蜜を固形化できれば、操業中の廃糖蜜の貯蔵問題を解決できる。即ち、廃糖蜜を貯蔵するための貯槽を設置する必要がない。また、その固形化物をそのまま肥料として使用することができれば、廃糖蜜を液状で圃場に散布する場合に比べて、その散布作業等を著しく改善することができる。本発明者らは、かかる観点に立って鋭意検討を重ねた結果、糖蜜又は廃糖蜜を消石灰と所定量で混合すれば、その生成物を粒状化することができ、そして、得られた粒状化された固形化糖蜜は、サトウキビから原料糖を製造する工程等における操業中の廃棄処理に際して著しく取扱い易く、貯槽の設置の必要もなく、かつ、従来技術(特許文献1)の二酸化ケイ素を使用する方法と比較して、消石灰は入手し易く、安価であり、加えて、取扱いが容易であることを見出した。更には、このようにして得られた固形化糖蜜は、圃場への散布等の作業に際して著しく取扱い易く、かつ、各種植物の肥料として良好な効果があることをも見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
即ち、本発明は、
(1)消石灰100質量部と、糖蜜又は廃糖蜜(固形分)140〜250質量部とを混合して得られる粒状の糖蜜固形化肥料である。
【0008】
好ましい態様として、
(2)上記の糖蜜又は廃糖蜜量が150〜230質量部である、上記(1)記載の糖蜜固形化肥料、
(3)上記の糖蜜又は廃糖蜜量が160〜220質量部である、上記(1)記載の糖蜜固形化肥料、
(4)粒度分布において、1.0〜20.0mmの範囲に存在する粒子が全体の90%以上である、上記(1)又は(2)記載の糖蜜固形化肥料、
(5)粒度分布において、5.0〜15.0mmの範囲に存在する粒子が全体の90%以上である、上記(1)又は(2)記載の糖蜜固形化肥料、
(6)粒度分布において、7.0〜13.0mmの範囲に存在する粒子が全体の90%以上である、上記(1)又は(2)記載の糖蜜固形化肥料、
(7)糖蜜又は廃糖蜜が、サトウキビを原料とする原料糖製造工程から排出される廃糖蜜である、上記(1)〜(6)のいずれか一つに記載の糖蜜固形化肥料、
(8)糖蜜又は廃糖蜜のブリックス(Brix)値が75〜85%である、上記(1)〜(7)のいずれか一つに記載の糖蜜固形化肥料
を挙げることができる。
【0009】
また、本発明者らは、上記の粒状の糖蜜固形化肥料を製造するに際して、消石灰に所定量の糖蜜又は廃糖蜜を加えて、そして、該混合物の粘度が略一定になるまで混合すれば、簡便に粒状の糖蜜固形化肥料を製造し得ることを見出した。好ましくは、消石灰に糖蜜又は廃糖蜜を滴下添加し、また、所定の装置を使用して実施すれば、更に簡便に糖蜜固形化肥料を製造し得ることを見出した。
【0010】
本発明は、また、
(9)消石灰に、糖蜜又は廃糖蜜のみを加えて混合し、ここで、消石灰と糖蜜又は廃糖蜜との混合比率は、消石灰100質量部に対して、糖蜜又は廃糖蜜中に含まれる固形分量として140〜250質量部であり、少なくとも、該混合物の粘度が略一定になるまで混合を継続して、粒状の糖蜜固形化肥料を製造する方法である。
【0011】
好ましい態様として、
(10)上記の糖蜜又は廃糖蜜量が150〜230質量部である、上記(9)記載の方法、
(11)上記の糖蜜又は廃糖蜜量が160〜220質量部である、上記(9)記載の方法、
(12)上記の混合が、消石灰に糖蜜又は廃糖蜜を滴下添加することにより実行される、上記(9)〜(11)のいずれか一つに記載の方法、
(13)上記の混合が、5〜15分間実行される、上記(9)〜(12)のいずれか一つに記載の方法、
(14)上記の混合が、7〜10分間実行される、上記(9)〜(12)のいずれか一つに記載の方法、
(15)上記の混合が、三次元方向の流動状態を与え得る混合装置により実行される、上記(9)〜(14)のいずれか一つに記載の方法、
(16)上記の混合が、横型ドラム中にすき状ショベルを配し、その形状、取付け角度、回転速度により遠心拡散及び渦流作用を起こさせ、三次元流動するような状態を与え得る装置により実行される、上記(9)〜(14)のいずれか一つに記載の方法、
(17)得られた粒状の糖蜜固形化肥料の粒度分布において、1.0〜20.0mmの範囲に存在する粒子が全体の90%以上である、上記(9)〜(16)のいずれか一つに記載の方法
(18)サトウキビ生産地に立地された原料糖製造工場から廃棄される廃糖蜜を使用し、かつ、得られた粒状の糖蜜固形化肥料を、該サトウキビ生産地において肥料として使用する、上記(9)〜(17)のいずれか一つに記載の方法
を挙げることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、原料糖製造工程及び精製糖製造工程において発生する廃糖蜜を、短時間及び簡便に固形化することができるので、副産物として発生する廃糖蜜の貯蔵問題を効果的に解決し得る。また、得られた糖蜜固形化肥料は粒状であることから、圃場への散布が著しく簡便かつ容易となり、例えば、特殊な散布装置を備えたトラクター等を使用する必要がなく、従って、肥料としての取り扱いが著しく容易となる。また、得られた糖蜜固形化肥料は、種々の植物、例えば、サトウキビに対する肥効に優れているものであることから、原料糖製造工程及び精製糖製造工程の立地周辺における種々の植物、例えば、サトウキビに対する肥料として有効に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本発明の粒状の糖蜜固形化肥料を示した図である。(実施例1)
図2図2は、粉状の固形化糖蜜を示した図である。(比較例1)
図3図3は、本発明の粒状の糖蜜固形化肥料の肥効を示す説明図である。(実施例8)
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の糖蜜固形化肥料は、消石灰(水酸化カルシウム)と糖蜜又は廃糖蜜とを混合して得られる生成物である。消石灰と糖蜜又は廃糖蜜との混合比率は、消石灰100質量部に対して、糖蜜又は廃糖蜜中に含まれる固形分量として、糖蜜又は廃糖蜜の上限が250質量部であり、好ましくは230質量部であり、より好ましくは220質量部である。一方、下限が140質量部であり、好ましくは150質量部であり、より好ましくは160質量部である。上記上限を超えては、糖蜜又は廃糖蜜を十分に固形化することができずに粘土状となり易く、上記下限未満では、粉状となることがある。糖蜜固形化肥料が粉状であると、貯蔵中又は肥料として散布中に飛散することがあり、作業性に悪影響を及ぼすばかりではなく、飛散による損失量が大となることがある。一方、糖蜜固形化肥料が粒状であると、飛散を極力防止し得て作業性が著しく良好となり、損失量を極力低減することができるため好ましい。上記の糖蜜又は廃糖蜜の固形分量は、ブリックス(Brix)値に基づき、ブリックス(Brix)値が固形分量と等しいものとして算出したものである。使用する糖蜜又は廃糖蜜のブリックス(Brix)値は、好ましくは75〜85%、より好ましくは78〜83%、更に好ましくは80〜83%である。ここで、ブリックス(Brix)値は、糖度屈折計、例えば、京都電子工業株式会社製ブリックス計RA‐410(商標)を使用して、糖蜜及び廃糖蜜を5倍希釈して測定した値である。ここで、粒状の糖蜜固形化肥料の粒度分布は、好ましくは1.0〜20.0mm、より好ましくは5.0〜15.0mm、更に好ましくは7.0〜13.0mmの範囲に存在する粒子が、好ましくは、全体の90質量%以上であり、より好ましくは、全体の95%以上である。また、その平均粒径は、好ましくは1.0〜20.0mm、より好ましくは5.0〜15.0mm、更に好ましくは7.0〜13.0mm程度である。また、廃糖蜜とは、原料糖製造工程及び精製糖製造工程において発生する副産物しての糖蜜を言う。原料糖製造工程には、サトウキビを原料とする場合のみならず、テンサイを原料とする場合も含む。
【0015】
本発明の糖蜜固形化肥料は、消石灰(水酸化カルシウム)に、上記の糖蜜又は廃糖蜜を加えて混合し、少なくとも、混合物の粘度が略一定になるまで混合を継続することにより製造することができる。それにより、得られる糖蜜固形化肥料を粒状にすることができる。ここで、消石灰と糖蜜又は廃糖蜜との混合比率は、上記と同一である。本発明の方法における消石灰と糖蜜又は廃糖蜜との混合時間は、粘度によって決定することができ、該混合は、少なくとも、混合物の粘度が略一定になるまでの時間実施される。混合物の粘度は、主として消石灰と糖蜜又は廃糖蜜との配合量に依存するが、使用した混合装置により混合し得る粘度であれば特に問題はない。混合物の粘度は、消石灰に、糖蜜又は廃糖蜜を加えて混合を開始したときから、しばらくの時間は上昇し、その後、徐々に低下して略一定の値を示すようになる。該粘度の変化は任意の粘度計を混合装置に装備することにより測定することができ、また、混合装置の所要電流値を監視することにより便宜的に測定することもできる。混合物の粘度が略一定になるまでの時間、即ち、混合時間は、消石灰と糖蜜又は廃糖蜜との配合量、混合装置へのこれら原料の装入量、混合装置の種類、規模、形状等に依存する。該混合時間は、通常、5〜15分間、より好ましくは7〜10分間である。また、混合は、好ましくは10〜40℃で実施され、通常、環境温度で実施される。
【0016】
消石灰に、糖蜜又は廃糖蜜を加えて混合するに際して、糖蜜又は廃糖蜜の全量を一度に添加して混合してもよいが、好ましくは、糖蜜又は廃糖蜜を何段階かに分けて添加して混合することが好ましい。また、消石灰に、糖蜜又は廃糖蜜を滴下して添加することがより好ましく、これにより糖蜜固形化肥料の粒状化をより効果的に成し遂げることができる。
【0017】
消石灰と糖蜜又は廃糖蜜との混合に使用する混合装置としては、両者を三次元流動により良好に混合し得る混合装置、三次元方向の流動状態を与え得る混合装置であれば特に制限はない。粒状化のし易さ、所要時間等の観点から、横型ドラム中にすき状ショベルを配し、その形状、取付け角度、回転速度により遠心拡散及び渦流作用を起こさせ、三次元流動するような状態を与え得る装置、例えば、レーディゲミキサー(株式会社マツボー製)等が好ましく使用される。また、実験室的に実施するに際しては、例えば、フードプロセッサー[株式会社テスコム製フードプロセッサーTK410(商標)等]等で代用することもできる。例えば、コンクリートミキサー、プラネタリーミキサー等の二次元流動の状態を与える装置を使用した際には、糖蜜固形化肥料を製造することはできるものの、大きな1つから数個の塊状物として得られ、粒状の糖蜜固形化肥料を製造することはできない。
【0018】
以下の実施例において、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例により限定されるものではない。
【実施例】
【0019】
下記の実施例及び比較例において使用した物質及び装置は、下記の通りである。
【0020】
廃糖蜜:南西糖業株式会社徳和瀬工場の、サトウキビを原料とする原料糖製造工程より排出された、ブリックス値の異なる4種類の原料糖最終糖蜜(ブリックス(Brix)値:81%、80%、78%、75%)
消石灰:株式会社丸京石灰製
【0021】
混合装置:バッチ式レーディゲミキサーM−20型、型式FKM−130D(ドラム容量130リットル)(株式会社マツボー製)
【0022】
(実施例1)
消石灰10.0キログラム及び廃糖蜜27.0キログラム(ブリックス値80%)を使用した(消石灰100質量部に対して廃糖蜜(固形分)216質量部である)。まず、消石灰の全量を、混合装置であるレーディゲミキサーのドラム中に仕込んだ。次いで、レーディゲミキサーを起動して撹拌混合を開始した。撹拌混合開始後、直ちに廃糖蜜をレーディゲミキサーのドラム中に滴下添加して、約3分間で廃糖蜜全量の添加を完了した。その後、更に、運転を継続して撹拌混合を実施した。この間、レーディゲミキサーの所要電流値を監視した。電流値は廃糖蜜の添加に伴って上昇し、添加終了後も、更に、電流値は上昇したが、その後、電流値は低下してほぼ一定となった。レーディゲミキサーの電流値がほぼ一定となったところで、レーディゲミキサーの運転を停止した。撹拌混合時間は、運転開始から合計約8分間であった。撹拌混合中のレーディゲミキサーのショベル回転数を160回転/分とし、チョッパー回転数を1,800回転/分とした。また、撹拌混合中、内容物の温度上昇を防止するために空気送風を実施した。運転終了後、内容物を取り出したところ、図1に示すような粒状の造粒物、即ち、固形化糖蜜が得られた。該粒状の造粒物の粒度分布は、1.0〜20.0mmの範囲に存在するものが、全体の90質量%以上であった。ここで、造粒物の粒度は、目開き1.0mm及び20.0mmの篩を用意し、それを使用して測定したものである。
【0023】
(実施例2)
廃糖蜜26.0キログラム(ブリックス値80%)を使用したこと以外は、実施例1と同一に実施した(消石灰100質量部に対して廃糖蜜(固形分)208質量部である)。運転終了後、内容物を取り出したところ、実施例1で得られた造粒物とほぼ同様の粒状の造粒物が得られた。
【0024】
(実施例3)
廃糖蜜20.0キログラム(ブリックス値80%)を使用したこと以外は、実施例1と同一に実施した(消石灰100質量部に対して廃糖蜜(固形分)160質量部である)。運転終了後、内容物を取り出したところ、実施例1で得られた造粒物とほぼ同様の粒状の造粒物が得られた。
【0025】
(実施例4)
ブリックス値81%の廃糖蜜20.0キログラムを使用したこと以外は、実施例1と同一に実施した(消石灰100質量部に対して廃糖蜜(固形分)162質量部である)。運転終了後、内容物を取り出したところ、実施例1で得られた造粒物とほぼ同様の粒状の造粒物が得られた。
【0026】
(実施例5)
ブリックス値78%の廃糖蜜20.0キログラムを使用したこと以外は、実施例1と同一に実施した(消石灰100質量部に対して廃糖蜜(固形分)156質量部である)。運転終了後、内容物を取り出したところ、実施例1で得られた造粒物とほぼ同様の粒状の造粒物が得られた。
【0027】
(実施例6)
ブリックス値75%の廃糖蜜20.0キログラムを使用したこと以外は、実施例1と同一に実施した(消石灰100質量部に対して廃糖蜜(固形分)150質量部である)。運転終了後、内容物を取り出したところ、実施例1で得られた造粒物とほぼ同様の粒状の造粒物が得られた。
【0028】
(実施例7)
ブリックス値81%の廃糖蜜30.0キログラムを使用したこと以外は、実施例1と同一に実施した(消石灰100質量部に対して廃糖蜜(固形分)243質量部である)。運転終了後、内容物を取り出したところ、実施例1で得られた造粒物とほぼ同様の粒状の造粒物が得られた。
【0029】
(比較例1)
廃糖蜜15.0キログラム(固形分80質量%)を使用したこと以外は、実施例1と同一に実施した(消石灰100質量部に対して廃糖蜜(固形分)120質量部である)。運転終了後、内容物を取り出したところ、図2に示すような粉状の造粒物が得られた。該粉状の造粒物の粒度は、90質量%以上が1.0mm未満であった。
【0030】
(比較例2)
廃糖蜜35.0キログラム(固形分80質量%)を使用したこと以外は、実施例1と同一に実施した(消石灰100質量部に対して廃糖蜜(固形分)280質量部である)。運転終了後、内容物を取り出したところ、硬い粘土状物が得られ粒状化されていなかった。また、該粘土状物は、時間の経過と共に、更に硬化してコンクリート様の塊状物に変化した。
【0031】
(比較例3)
ブリックス値81%の廃糖蜜10.0キログラムを使用したこと以外は、実施例1と同一に実施した(消石灰100質量部に対して廃糖蜜(固形分)81質量部である)。運転終了後、内容物を取り出したところ、比較例1とほぼ同様の粉状の造粒物が得られた。該粉状の造粒物の粒度は、90質量%以上が1.0mm未満であった。
【0032】
(比較例4)
混合装置として、バッチ式レーディゲミキサーに代えて、プラネタリーミキサー(株式会社井上製作所製PLM−50、タンク全容量57リットル)を使用し、かつ、消石灰及び廃糖蜜の仕込量をいずれも半分にした以外は、実施例1と同様にして実施した。運転終了後、内容物を取り出したところ、大きな1つの塊状物が得られ粒状化されていなかった。
【0033】
上記の実施例1〜7及び比較例1〜4の結果を下記の表1に示した。
【0034】
【表1】
表1中、*印は、混合装置として、プラネタリーミキサーを使用したものである。
【0035】
実施例1〜7は、本発明の範囲内で消石灰と廃糖蜜(固形分)との配合比を変化させたものである。いずれも、製造された固形化糖蜜は粒状の形態を示していた。一方、比較例1及び3は、いずれも廃糖蜜(固形分)の配合比を本発明の範囲未満にしたものである。製造された固形化糖蜜はいずれも粉状となった。比較例2は、廃糖蜜(固形分)の配合比を本発明の範囲を超えるものにしたものである。製造された固形化糖蜜は硬い粘土状のものとなった。また、比較例4は、混合装置として、三次元流動の状態を与えるバッチ式レーディゲミキサーに代えて、プラネタリーミキサーを使用したものである。このような二次元流動の状態を与える装置では、固形化糖蜜は粒状化せず、大きな塊状物として得られることが分かった。
【0036】
(実施例8)
実施例1で得られた固形化糖蜜を肥料として使用して、クロタラリア(マメ科)の栽培試験を実施した。約500mの圃場にクロタラリアの種子約1キログラムをほぼ均等に播種した。次いで、実施例1で得られた固形化糖蜜200キログラムを該圃場にほぼ均等になるように散布した。一方、比較のため、同一の広さに同量のクロタラリアの種子を播種した圃場を準備し、こちらには実施例1で得られた造粒物及びその他の肥料を散布しなかった。これらの圃場は隣接しており、播種前のpH値はいずれも4.6であった。クロタラリアの種子を撒いてから25日後、45日後、60日後に両者の圃場におけるクロタラリアの成長度合いを目視により観察した。
【0037】
クロタラリアの種子を撒いてから45日後において、両者の圃場でのクロタラリアの成長に顕著な差が見られ始めた。60日後には、両者の間でその成長に著しい相違が生じた。図3にその様子を示した。このように、実施例1で得られた固形化糖蜜は、非常に良好な肥効を有していることが分かった。
【符号の説明】
【0038】
1 実施例1で得られた固形化糖蜜を肥料として使用した圃場
2 肥料を使用しなかった圃場
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明の糖蜜固形化肥料は、種々の植物、例えば、サトウキビ栽培の肥料としての効果にも優れているばかりではなく、粒状であることから、圃場への散布が著しく簡便かつ容易である。このように、肥料として取り扱い易く、かつ、本発明の糖蜜固形化肥料及びその製造方法は、サトウキビ等から原料糖を製造する工程及び精製糖を製造する工程において、副産物として発生する廃糖蜜の貯蔵問題を有効に解決し得る。従って、原料糖及び精製糖製造工場において、とりわけ、原料、例えば、サトウキビの生産地に立地された原料糖製造工場において利用されることが、今後、大いに期待される。
図1
図2
図3